<消費税10%に>景気減速の懸念は強く
2019年9月30日 東京新聞「社説」
消費税率が十月から現行の8%から10%に引き上げられ、飲食料品などに軽減税率が導入される。
少子高齢化時代を迎え、社会保障財源を確保するのが目的だが、景気減速に対する懸念も根強い。
今回の消費税率引き上げは、二〇一二年の三党合意に端を発する。
〇九年に政権に就いた旧民主党は当初、消費税増税を否定していたが、その後一転して増税を主張。
野田佳彦首相当時の一二年、当時5%だった税率を、二段階で10%に引き上げることに旧民主、自民、公明の三党が合意し、消費税増税を柱とする一体改革関連法を成立させた。
旧民主党はこの過程で分裂、この年十二月の衆院選で惨敗して野党に転落した。
後を継いだ自民党の安倍晋三首相は成長重視の経済政策を採り、消費を冷やしかねない消費税増税には消極姿勢がうかがえる。
当初は三党合意通り、一四年四月に税率を8%に引き上げたが、10%への増税については経済情勢を理由に当初の一五年十月から二度延期した。
今回の引き上げでは社会保障政策を高齢者重視から子育てや現役世代を含めた全世代型に転換するため、消費税の使途を変更して踏み切った。
さらなる税率引き上げにも否定的だ。
そもそも消費税は、政権にとって長年「鬼門」であり続けた。
さかのぼれば、自民党の大平正芳、中曽根康弘両首相が導入を目指したが、世論の反発が強く、いずれも断念。
現行の消費税導入を主導した竹下登首相は導入二カ月後、リクルート事件への反発などもあって退陣を余儀なくされた。
消費税には財政再建や社会保障財源の確保という大義名分があるにせよ、モノやサービスに広く課税する「大衆課税」として、有権者に根強い反発があったためだ。
低所得者の実質的な税負担が重くなる逆進性も指摘されてきた。
さらに懸念されるのは、景気への影響だ。
一九九七年、それまでの3%から5%に引き上げた後、景気は悪化し、日本経済は長い低迷期に入った。
8%に上がった二〇一四年は増税前に駆け込み需要が膨らみ、その反動で増税後に個人消費が冷え込んだ。
政府は今回、ポイント還元制度や軽減税率などの対策を組み合わせて負担感を和らげようとしているが、消費への影響は本当にないのか、注視する必要がある。
税収を増やすための増税が消費や景気を冷やし、全体の税収を下げては本末転倒である。