2019年10月04日

消費増税で、国民の財布のヒモがきつく締まり始める「Xデー」とは

消費増税で、国民の財布のヒモがきつく締まり始める「Xデー」とは
2019/10/04 ダイヤモンドオンライン(鈴木貴博 )

特売の終了と増税で 負担感が一気に増加
 先日、引越しをした友人の家を訪ねるとき、差し入れとしてスコッチウイスキーの「ジョニーウォーカー黒ラベル」を買ったのですが、支払いが2618円でした。
10月に入って消費増税になった後の話です。
で、「あれ、こんなに高かったっけ?」と思ったのです。

 この驚きにはからくりがあって、ちょうど先月も同じ店で「ジョニ黒」を買ったのです。
そのときと比べて「結構高いな」と思った理由は、当時は増税前の大セールをやっていたからです。
つまり、以前の記憶はそもそも特売のときのもので、しかも消費税が安かった。
ところが今回は通常価格で、しかも消費税が10%へ増税された後でした。
だから、余計に高く感じたのです。

「それはあなたの個別事情じゃないの?」と思うかもしれませんが、実はこれが特殊な事情とも言い切れないのです。
9月は日本中で増税前の駆け込み大セールをやっていたので、行動経済学的に捉えれば、10月の消費増税の影響は、増えた税金分と先月の大セールからの反動分を合わせて、ダブルで効いてくるはずです。

「消費税、高いなあ」と思う人は私だけでなく世の中の多数派なので、この後、消費は目に見えて冷え込み始める可能性が高いでしょう。
では、どれくらいの消費が消えてなくなるのか。
今回はそのことを、過去の例から類推してみましょう。

 消費税が5%から8%へ増税された2014年にも、駆け込み需要とその後長らく続いた個人消費の冷え込みがありました。
総務省の家計調査を見ると、増税直前の2014年3月の実質的な世帯支出は前年同月比で7.2%も増加しています。
個人消費というものは1ヵ月でだいたい25兆円くらいの規模なので、増税前のセールのインパクトだけで2兆円弱の駆け込み消費が起きたのです。
 その後、消費税が8%に増税されたところ、予想通り消費が冷え込んで、その後の1年間の平均で約マイナス5%に消費が減ったのです。
金額にして約15兆円。
とんでもない規模の節約です。

 現在小売業界では、この過去の例に鑑み、今回はどのように消費が冷え込むかを予想することに力を入れています。
特に前回は、住宅分野以外では政府がそれほど増税対策に力を入れなかったため、増税のインパクトがダイレクトに消費を冷やしました。
今回導入された軽減税率やキャッシュレス決済時のポイント還元によって、それがどう緩和されるのかを含め、みんな高い関心を持っているのです。  

2014年4月、消費増税が行われた最初の月の世帯消費の冷え込みは、実質ベースでマイナス4.6%でした。
前述した1年間の平均よりも増税直後の冷え込みは少ないですが、消費者も実感がわくまでに時間がかかるであろうことを考えると、「1ヵ月目はこんなもの」という感じでしょうか。
 しかし、月末になって家計簿をまとめてみると、みんな消費税が増えたことで家計が苦しくなっていることに気づく。
だから増税後1ヵ月のタイムラグで2014年5月の消費はマイナス8.0%まで激減しました。
増税による本格的な消費冷え込みは、1ヵ月遅れでやってきたのです。

消費者の財布の紐が本格的に 締まるまで3ヵ月のタイムラグ
 では、今回の増税ではどうなるのでしょう。
冒頭で紹介したような「高いな」という経験をみな10月に実体験するので、11月から消費が減りそうなものですが、実はここに別の事情が関係してきます。
ここが今回の増税の特殊事情です。
 先に結論を言いましょう。
今回の増税で小売業界が本格的な消費の冷え込みを実感するのは、2020年1月から。
消費者の財布の紐が本格的に固くなるまでに、約3ヵ月のタイムラグがあると思われます。

 そのタイムラグをもたらすものの正体は、クリスマスです。
例年11月と12月は、1年で一番消費が活発になるシーズンです。
2014年の増税時も、1年を通じて約マイナス5%に消費は冷え込みましたが、11月と12月だけは景気は2ポイントほど底上げされています。

「彼女へのクリスマスプレゼントまでは削らなくても」
「自分へのご褒美の分ぐらいは奮発しなきゃ」
 このように、行動経済学的な観点から見れば、年末は気分的に消費が底上げされるのは当たり前なのです。

 冒頭でお話した「ジョニ黒」もそれと同じ。
友人が引っ越して、そのお祝いに駆けつける。
それで、以前差し入れした「ジョニ黒」を彼が「あれ、このウィスキー滅茶苦茶おいしい」と言ってくれた。
そういうときは、財布の紐とは関係なく、消費はプライスレスになります。
そして、こうした「特別な消費は別腹だ」という思考に基づく消費行動がそこら中で行われ、それが集まると経済統計の数字にその影響が如実に表れるものなのです。

消費の冷え込みは こんな感じで始まる?
 今回の増税でも、おそらくそのような現象が起きて、消費の冷え込みはこんな感じで始まるはずです。

・【10月】増税のインパクトにみんな気づいて、消費に対してやや警戒感を抱き始める。
ただ、ポイント還元などが宣伝されている効果で、前回よりは緩い節約となり、消費支出はやや下がる程度。

・【11月】警戒感は続くものの、年末が近づいて冬物を買ったり、飲み会や食事会の数が増えたりして、そこそこ消費をする。
消費支出はやや下がる程度。

・【12月】冬の外気は寒いけど、消費マインドはこの時期暖かく、特別な気持ちで消費を続ける。
消費支出はやや下がる程度。

 こういう感じで、前回と違って思ったほど消費が冷え込まない3ヵ月間を、小売業界は経験することになりそうです。
 さて12月下旬になると、10月の家計調査が発表されます。
その結果は「前回ほどは消費は冷え込んでいない」というものになるでしょう。
それを受けて、「今回の消費増税は結局、それほど消費の冷え込みに繋がらなかった」という誤ったニュースが世間に広まる可能性があります。
ここが危険なところです。
 次の段階として、そろそろ消費の転換点が訪れます。

・【1月】増税後、初めて消費者が「素」で節約を始める。
消費支出のマイナスが初めて5.0%を突破。
 この転換点は2020年の3月下旬に、家計支出の統計で「本格的な消費冷え込み」として、初めてデータ的に認識されることになります。  そして消費増税の対策として、「消費者が財布の紐を締めている」というニュースが広まり始めると、「うちもやらなきゃ」という共感が広まり、このへんから本格的に消費が冷え込んでいく。

こうした傾向が、その後約半年間、夏のオリンピックが近づくまで続くことになるでしょう。

増税直後に報道される景気動向の 速報値を鵜呑みにすべからず
 それで収まればいいのですが、オリンピック後には首都圏の住宅価格が下がるという悪い予測も囁かれています。
前回の増税で冷え込んだ消費マインドは、その後2年間以上にわたり、わが国の消費を冷やしてしまいました。
そう考えると、今回もそれと同じことが起きかねないというわけです。

 話をまとめると、ビジネスパーソンの皆さんは、増税直後に報道される景気動向の速報値を鵜呑みにせず、様子を見ることです。
1万円使うたびに1000円納税しなければならないという新しい増税のルールは、それなりに懐にとって厳しいことを、消費者は誰もが実感しているのですから。

(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)
posted by 小だぬき at 14:00 | 神奈川 ☔ | Comment(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

会社の言いなり労組は無用の長物 自民党支持に転換しては

社の言いなり労組は無用の長物
自民党支持に転換しては
2019/10/03 日刊ゲンダイ(高野孟)

 なかなか進まないだろうとみられていた立憲民主党と国民民主党の統一会派結成が、立憲が主導権を握る形で進展しているため、電力総連が慌てているという。

電力会社の労組からなる同総連は、脱原発をはっきりと掲げている立憲に見切りをつけ、国民を支持することで何とか原発推進の旗を死守しようとしてきた。
 そのため、先の参院選で連合傘下の労組は、電力はじめ民間大企業労組は国民、自治労や日教組など官公労中心の旧総評系は立憲と2つに分かれ、それぞれの比例名簿に組織内候補を並べた。

それなのに国民が次第に立憲に寄っていくのは心外で、国民の玉木雄一郎代表にたびたび「政策を曲げてまで立憲に合流すべきではない」と申し入れ、ブレーキをかけようと躍起になってきた。
 しかし、立憲の中堅議員に聞くと「玉木とウチの枝野幸男代表との間では、裏で話がついているんじゃないか」と言う。

「玉木も本気で原発推進しようなどと考えていないから、電力総連に対しては『ハイハイ、分かりました』と言ってあしらいながら、結局、枝野の原発ゼロに限りなく近づいていくのだろう」と。 それでは電力や連合は怒るだろう。

「いや、怒ってもいいんです。
世間ではまだ旧民進党系の組織基盤は労組だなんて言っている人がいるが、とんでもない。
今や選挙でも、特に民間労組なんか何の力にもならない。
どうしても原発推進にこだわるなら、早く離れていって自民党支持に転換すればいいんじゃないですか。
そのほうがお互いにスッキリする」と冷たい態度である。

 実際、電力総連もいつまでも会社と一体になって原発にしがみついていても仕方がないだろう。
ドイツのメルケル政権は日本の福島第1原発事故を見てサッサと脱原発に舵を切ったが、その時、原発メーカーのシーメンスの労組を含むドイツ最大の労組である金属産業労組(IGM)は真っ先に脱原発を打ち出してこの転換に大いに貢献した。  

会社の経営者は目先の利益のことばかり考えてなかなか踏み切れないが、労組はもっと広い社会的な視野と未来への展望を持って独自の判断をし、経営陣に対して堂々と論争をしかけていく。
会社の言いなりになって金魚のふんのように後を付いていくだけの労組なんて、もはや無用の長物ということである。
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☁ | Comment(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする