【私説・論説室から】
暑さは凶器と知った夏
2019年10月7日 東京新聞
台風15号による停電で苦しむ千葉の人々のニュースを気が気でない思いで見つめていた。
そのご苦労にははるかに及ばないけれど、この夏、暑さは凶器だと身をもって知った。
エアコンが故障していたのだ。
風が冷たくならない。
ずぼらな性格なので、このままではまずいと思い始めたのは暑さが本格化した八月に入ってからだった。
管理会社に連絡し、最初に来たのはエアコンの設置業者だった。
冷媒ガスが漏れている可能性を指摘された。
配管からは漏れはなく、エアコン本体の修理が必要と分かった。
同様のトラブルが相次いでいたらしく、メーカーが来てくれたのはそれから何日も後だった。
結局十日以上、エアコンが壊れた状態で過ごした。
水風呂で身体を冷やして眠り、ビジネスホテルに泊まった日もあった。
どんどん疲れはたまり、最後は床に寝転がって手足を投げ出しじっとしていた。
同じ姿勢で夏を過ごす犬や猫の気持ちがよく分かった。
長期の大規模停電を経ても、電力業界は負担増となることを警戒し、電柱の耐風性強化や無電柱化には消極的だ。
この夏は京急の衝突事故もあり、踏切の立体交差化の必要性をあらためて感じた。
コストがかかる地味な作業を後回しにしてきたつけを、人口減少で縮んでいく社会でいかに解消していくか。
涼しさで人間性が回復してきた頭で考え始めている。 (早川由紀美)