2019年11月05日

どの口が言うアスリートファースト、IOCは何様だ

どの口が言うアスリートファースト、IOCは何様だ
2019/11/05 Japan Business Press
筆坂 秀世:元参議院議員、政治評論家

 来年(2020年)の東京五輪でのマラソンと競歩がIOCの独断で札幌市に変更されることが決まった。
 私はもともと東京でのオリンピック・パラリンピックには反対だった。
この考えは今も変わりはない。

東京には、あまりにも何もかもが集中し過ぎている。
働く場所も、人口も、交通量もすべてが東京に集まっている。
飽和状態と言っても良い。
観光客も多数が東京に押しかけている。
日本の他の都市でオリンピック・パラリンピックを開催することは結構だが、東京で行う必要などない。

 だが、たとえそうであったとしても、今回のIOCの一方的な開催場所の変更には“ふざけるな”と言いたい。
小池百合子東京都知事があくまでも東京での実施を求めたのは、当然のことだ。
東京都はこれまで暑さ対策として多額の経費と時間、エネルギーをかけ、さまざまな対策を講じてきた。
「地元の人の気持ちをないがしろにできない」と語り、今回の決定を「合意なき決定」と言った小池都知事の思いはよく分かる。

IOCの傲慢と森会長の無責任に呆れる
 解せないのは東京五輪大会組織委員会の森喜朗会長らの態度だ。
IOCの一方的な決定に一切抵抗することなく、すんなりと受け入れているからだ。
しかも東京都には知らせてもいない。
一体、どこの会長なのか。

仮にIOCから話があれば、主催者である東京都の意向は聞いたのか、東京都は納得しているのか、などを問いただすべきだろう。
小池都知事が「どうして私には電話をくださらなかったのか」と怒りをぶつけていたのも当然だ。

 いくらIOCが傲慢だとしても、日本側の誰とも一切話し合わずに札幌への変更を決めたとは思えない。
誰かが相談していたはずだ。
森氏から事前に官邸などへの連絡があったという報道もある。
小池都知事だけが、外されていたのだ。
この一件1つとっても森氏に会長の資格はない。

 IOC、組織委、東京都、政府の4者会議でも森会長は、「暑さは自然相手なので、何が起こるかわからない。
その中でIOCから提案されたことは十分理解できる」などと平気で語っている。
何という無責任さだろうか。
自分も東京への招致活動をしてきた中心人物の1人ではないか。
東京の夏が暑いのを知らなかったとでも言うのか。

 森氏は小池都知事が嫌いなようだが、そんな個人的、政治的思惑を東京五輪に持ち込んでいるとすれば、会長の資格などない。
そもそも森氏は、かつては支持率8%という「超」がつくほどの低支持率しかなかった政権のトップであった。
それが東京五輪会長とは、他に人はいないのか。
情けない。

暑すぎて注意報が出るのが日本の夏
 IOCのバッハ会長やコーツ調整委員長らは、9月に行われたドーハでのマラソンや競歩で多くの棄権者が出たことを札幌への変更の理由にしている。
 五輪招致委員会と東京都が作成した立候補ファイルには、「この時期の天候は晴れる日が多く、且つ温暖であるため、アスリート が最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候である」と書かれていた。
当時の知事であった猪瀬直樹氏はこれについて、「酷暑と書けるわけがない」という趣旨のことをテレビのインタビューで語っていたが、それはその通りであろう。

 しかし、東京の7月、8月が何日も猛暑に襲われ、熱中症で死者まで出ていることは、誰でも知っていることだ。
一生懸命招致活動をした人たちも、IOCのメンバーだってそんなことは百も承知のことだったはずだ。
それでも東京を選んだのだ。  

私が7月、8月の東京五輪に反対する理由の1つがこの猛暑である。
“できるだけ外に出ないように”“家ではクーラーをつけるように”という注意報が出るのが日本の夏なのだ。
 それをわかっていながら今さら「アスリートファースト」などとよく言えたものだ。
IOCにアスリートファーストなどと語る資格ない。

マラソンと競歩を札幌に移したが、他にも心配な協議(競技)はいくらでもある。
暑さに弱い馬の馬術などもそうだろう。

北半球の夏季オリンピック、もう止めるべきだ
 小池都知事が、11月1日の定例会見で、東京五輪のマラソンと競歩が、暑さ問題を理由に札幌に会場が変更となったことに関連して、「7、8月のこの時期の(五輪)開催は難しい。
10月だって台風が来る。
近年の地球温暖化、気候変動という現状を考え、大会のあり方を議論すべきだと思う」と指摘し、「(現状の気候では)北半球のどこをとっても、過酷な状況になるのではないか」と語った。

 この日、IOCなどとの4者協議の場でも「持続可能性ある五輪の将来に向けて、問題点を指摘した」とも述べたそうだ。2023年の次回開催地に予定されているフランスのパリでも、今年気温40度に達したことを引き合いに、小池都知事は「アスリートファーストというなら、この点がいちばん大きいと思う。

議論の前に、リアルな問題でもあり、今後どうするか早く議論するテーマではないか」と述べ、IOCなどに早急な議論開始を求めたそうである。
 もっともな指摘である。
私は、この時期のオリンピックはもう止めるべきだと思う。
IOCの無責任な連中に振り回されてはならない。

それでも酷暑の時期にやる理由とは  1964年の東京オリンピックは10月開催だった。
開会式が行なわれた10月10日は、長い間「体育の日」とされてきた。
温暖化が進んだ今では、10月も決して涼しいわけではない。
何しろ11月に入っても25度を超える夏日があるくらいだ。
 それよりもさらに暑い7月、8月にやるのはそもそも無理がある。
五輪憲章には、「競技実施期間は16日間を超えてはならない」という規定があるが、夏季五輪の開催時期に関する規定はないそうである。
したがって7月、8月でなければならない理由はないのだ。

 なぜこんな無理な時期に行うのか。
それは巨額の放映権料を得るためだ。
 IOCの財政の約6割は放映権料が占めているそうである。
その額は驚くほど巨額だ。

アメリカの放送局NBCは、2014年の冬季ソチ五輪から、まだ開催地も決まっていない2032年の夏季五輪までの10の大会に対して120億ドル(約1兆3000億円)を支払うそうである。
単純に計算すれば、東京五輪でも約1300億円の放映権料がIOCに支払われるということである。
 ちなみに日本のNHKと民間放送局も合同で2018年の平昌(ピョンチャン)五輪から、2024年のパリ五輪までの4大会に約1100億円を支払うことになっている。
平均すると1大会275億円である。
 このアメリカの放送局の意向がオリンピック開催時期に大きく影響するということだ。
ヨーロッパではワールドカップ以上にサッカーファンが熱狂するといわれるヨーロッパチャンピオンズリーグが9月に始まる。アメリカでは10月にメジャーリーグのワールドシリーズが行われ、アメリカンフットボールも始まる。
この放送と重ならないために、7月、8月の猛暑にオリンピックを開催するようになってしまったということだ。

 平昌五輪でも、アメリカの放送局の都合に合わせるために、異常な競技日程が組まれていた。
羽生結弦のフィギュアスケートはお昼に行われ、葛西紀明のスキージャンプは、日付が変わるような真夜中に行われた。
 東京五輪も実は同じことが行なわれる。
陸上のトラック、フィールド種目の一部や、バスケットボール、ビーチバレーの決勝を午前開始のセッションで実施することが、すでに確定しているのだ。
競泳も準決勝、決勝はすべて午前10時30分から12時30分に設定されている。
普通は、この時間こそ予選なのだが、予選と決勝が逆転しているのだ。
すべてアメリカのテレビ放送に配慮したものなのだ。

「アスリートファースト」より、カネが大事、それがIOCなのだ。
posted by 小だぬき at 14:00 | 神奈川 ☀ | Comment(5) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

活用されないマイナンバー、無駄の多さにウンザリ

活用されないマイナンバー、無駄の多さにウンザリ
まいどなニュース 2019/11/04
(まいどなニュース特約・平藤 清刀)

昨年父が亡くなり、残された家族が行わなければならない手続きの大変さに直面した。
父の遺産相続、母が独りで住み続けることになった市営住宅の名義変更、遺族年金の請求など…。
手続きに次ぐ手続きの中で、マイナンバーがまったく活用されていない現実に愕然とした。
いささか愚痴っぽい内容かもしれないが、「手続きがもっと簡潔に効率よく進むようになってほしい」との思いを込めて、気になったことをまとめたい。

遺産相続からスタートして市営住宅の名義変更、そして遺族年金の請求と、すべての手続きが終わるまでに3カ月ほどの日数を要した。
一連の手続き書類を作成する際に何が面倒なのかを一言で言い表すと「同じことを何度も書かされること」だ
記入する内容に重複が多すぎる
どんな書類にもほぼ共通している記入事項は氏名・住所・生年月日・電話番号で、提出先によってはほかに死亡年月日・年金番号・続柄・金融機関の口座情報が加わる。
それを書類ごとに、いちいち書かねばならない。

なぜそうなってしまうのか理由は明らかで、書類ごとにフォーマットが異なるからだ。
同じ役所へ提出するのであれば、書類の名目が異なっても記入欄が同じ位置(たとえばA4サイズの左上など)になるようにフォーマットを整理して、カーボンで複写すれば1回の記入で済むはずだ。
   ◇   ◇
相続も遺族年金も、ひととおり手続きが済んで落ち着いた頃、区役所から1通の封書が届いた。
開けてみると「後期高齢者医療保険料還付通知書」という書類で、上半分が「納めた金額」と「返される金額」の内訳。
下半分が「還付請求書兼口座振替申出書」になっていた。

父が亡くなったことで、納め過ぎになっている保険料を返すから請求書に記入して提出しなさいという趣旨の書類である。
同封されていた記入方法の説明によると、被保険人(亡父)と入金先口座の名義人が異なる場合は、戸籍謄本を添えて提出するように書いてあった。

そのような手続きが発生することは仕方ないが、区役所へ提出する書類を区役所へ取りに行くという、まるで冗談のような無駄を強いられることが釈然としない
しかもこの書類は、これ以降、なぜか五月雨式に毎月送られてくるようになった。
何故こんなことになるのか、3回目が送られてきたときに役所へ電話をかけて問い合わせてみた。
「まだ続くのですか?」 「還付が発生している月数分あります」
「いっぺんに計算して、合算できないの?」 「月ごとに計算しますので――」

毎月続くということは、戸籍謄本もその都度取らないといけないのかと尋ねたら、電話の相手は「そうなりますね」という。もっとも請求期限が2年あるから、2回目以降の分は溜めておいて、あとから一度に出せばいい。
幸い、2回目に届いた請求書は提出せず、まだ手元にあった。

そもそもマイナンバーカードを使ってコンビニで戸籍謄本を取れる時代なのに、わざわざ「紙」で提出する必要があるのだろうか
請求書にマイナンバーを記入させて、データベースに照会すれば済む話ではないだろうか
さらに言えば、そうやって毎月のように還付請求書を送ってくるのであれば、口座情報も氏名もその都度書かせる意味があるのか疑問である。
変更があったら、そこだけ修正すれば済むはずなのに、わざわざ無駄に無駄を重ねているようにしか見えない。

後日、役所の保険担当職員と電話で話す機会があったとき、現状の手続き方法に無駄や重複が多いことと、改善に向けた検討をするよう上級機関へ進言してほしいと要望を伝えたことがある。
反応は予想に違わず、要約すると「現状を変えるつもりはない」と受け取れた。

思い返せば、遺族年金の手続きをする際にも、黙っていても年金事務所から「手続きを開始してください」という通知が届くことになっていたそうだが、区役所で死亡届を受理したあと年金事務所から通知を出すまで3カ月かかるといわれた。
あのときも、互いにデータをリンクさせておけば一夜で済む話ではないかと思ったので、窓口でそのように伝えてみたが返答は芳しくなかった。
そもそも遺族年金の請求書1ページ目には、マイナンバーを記入する欄が設けられていた。
あれは何のために書かせたのだろうか。

役所の手続き方法を決める権限のある方々には、利用者の負担を最小限に抑えるべく、手続きの簡素化に向けて努力をしていただきたく、切に願う
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☀ | Comment(0) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする