2019年11月13日

血液クレンジングだけじゃない……“トンデモ医療”で大金を稼ぐ「自由診療クリニック」はなぜ野放しなのか?

血液クレンジングだけじゃない……
“トンデモ医療”で大金を稼ぐ
「自由診療クリニック」はなぜ野放しなのか?
2019年11月12日 文春オンライン鳥集 徹

 先月、「血液クレンジング」なる治療法をめぐって、ちょっとした炎上騒ぎが起きました。
今もニュースサイトで記事が掲載され、厚生労働省が実態調査に乗り出すなど、関心の高い話題となっています。

 血液クレンジングは患者から100〜200ccの血液を採取し、オゾンガスを混ぜてから体内に戻す治療法だそうです。
グーグルで「血液クレンジング」と検索してトップに出たクリニックの宣伝によると、「抗酸化力の向上・血液の流れの改善・免疫力のアップなどの効果が期待でき、身体がもつ本来の力を高めます」とありました。
がんや心筋梗塞、HIV除去にまで効果があるとうたっているクリニックもあるようです。

■インフルエンサーたちがブログやSNSで発信
 私は20年以上、医療現場を取材して記事を書いていますが、恥ずかしながらこんな治療法があるとは知りませんでした。
この治療法は保険適用ではなく、自由診療として1回数万円の料金で提供しているクリニックが多いようです。
しかし、保険診療を行っている通常の医療機関でこの治療を実施しているところは、私が知る限りないと思います。

 この治療法に対して、医師などから医療効果を疑問視する声が相次ぎました。
この問題を追及しているBuzzFeedの記事によれば、NIH(米国国立衛生研究所)で免疫学やウイルス学を研究する峰宗太郎医師が論文を検索して科学的に検証したところ「オゾンの医療利用は、医学的にははっきりとした有用性は極めて限定的であり、かつ弱いエビデンス(証拠)しかなく、ほぼ無効であろうと言えます」とのことです(BuzzFeedNews 「『トンデモ医療であると、断言します』血液クレンジング、医学的に徹底検証してみた」 2019年10月21日)。 

 にもかかわらず、有名ブロガーの「はあちゅう」こと伊藤春香さんはじめ、歌舞伎役者の市川海老蔵さんや元AKBの高橋みなみさん、女優の仲里依紗さん、タレントの田中律子さん、総合プロデューサーの秋元康さん、幻冬舎社長の見城徹さんなどが、ブログやSNS等で血液クレンジングを受けたと発信していたことが判明。
「インフルエンサー」と呼ばれる影響力の大きな人たちが、このようなトンデモ医療を人びとに広めるような発信をするのはケシカランと、医師などから批判が渦巻いたわけです。

■「がん治療」にも多い怪しげな治療法
 医療行為としての疑問点や有名人が宣伝に加担する問題(ステマ疑惑を含む)についてはさまざまなニュースサイトで取り上げられ、当「文春オンライン」でも個人投資家で有名ブロガー・作家の山本一郎さんがお書きになっています( 「『血液クレンジング』なるニセ医療をめぐる健康情報の修羅を追って」 2019年10月31日)

ですから、すでに触れられていることはそちらに任せて、ここではあえて別の視点をクローズアップしたいと思います。
それは高度な専門職能集団としての「医師の責任」です。
 血液クレンジングに限らず、医療効果が証明されていないのに、自由診療で高額な料金をとって提供されている医療行為は、他にもたくさんあります。
たとえば、「がん治療」に限ってネットで探してみても、こうした治療法が出てきます。
「免疫細胞療法(活性化自己リンパ球療法や樹状細胞療法など)」「がんワクチン療法」「全身温熱療法」「高濃度ビタミンC療法」「サプリメント療法」「p53遺伝子治療」「還元電子治療」「アルテスネイトがん治療」「重水素減少水療法」……。

 こうした治療法の名前を見て、一目で「医学的効果は証明されていない」と見抜ける人がどれだけいるでしょうか。
「活性化自己リンパ球療法」「樹状細胞療法」「がんワクチン療法」「p53遺伝子治療」など、難しそうな医学専門用語が並んだ言葉を見て、がん専門医も認める最先端治療だと誤認してしまう人も多いはずです。

■「最先端のいい治療だ」と錯覚させ、大金を手にする
 さらに問題なのは、これらの治療をすべて「医師」が行っていることです。
「医師がやっているのだから、効果があるだろう」「医師がやっているのだから安全だろう」と、鵜呑みにしてしまう人が多いのではないでしょうか。
費用も高いだけに、「最先端のいい治療だ」と錯覚してしまう人もいることでしょう。

 インフルエンサーたる有名人は、一般の人にトンデモ医療を広めないよう注意し、その言動に責任を持つべきです。
ですが、EBM(科学的根拠に基づく医療)云々、エビデンスレベル云々、ランダム化比較試験云々、標準治療云々と言っても、一般の人に理解してもらうのは簡単なことではありません。
医療の素人である芸能人が、セレブ扱いされて気持ちよくなり、医師の言葉を鵜呑みにしてしまうのは、致し方ない面があります。
それだけ、日本最高の高偏差値エリート集団である医師の権威は一般の人にとって大きいのです。

 そう考えると、高額なお金をとって患者に効果の証明されていない治療を施している医師、そして、それを野放しにしている医学・医療界の責任は大きいと私は思います。

■多くのクリニックが堂々とネット広告を出している
 もちろん、こうした問題のある医療行為の横行を黙ってみている医師ばかりではありません。
今回の血液クレンジング騒動でも「トンデモ医療ハンター」とも呼べるような医師の方々が、血液クレンジングを行っている医師を非難し、専門職能集団たる医師の責任についても言及していました。

しかし、それが医学・医療界全体の責任問題にまで広がっていないことが問題だと私は思うのです。
 たとえば、冒頭にあげた「免疫細胞療法」は、6回程度を1クールとする治療を受けると全額自己負担で300万円前後の治療費がかかります。
活性化自己リンパ球療法や樹状細胞療法、がんワクチン療法などは、大学病院やがんセンターなどでも研究されてきました。しかし、目立った成果を上げることができず、今のところ保険適用とはなっていません。
にもかかわらず、多くのクリニックが堂々とネット広告を出しており、患者集めのセミナーなども開催され、現在もたくさんのがん患者が治療を受けています。

■医師が法的なペナルティを受けることはほとんどない
 科学的に効果が証明された「標準治療」を基準とする治療を行っている、まともながん専門医に取材すると、こうした効果が証明されていない治療を行って、藁にも縋る思いでいる患者や家族から多額のお金を取るのは問題だと眉を顰める人が少なくありません。
実際にがん専門医から構成される 日本臨床腫瘍学会 は、今年5月30日にがん免疫療法に関して、一般市民に注意喚起する文書を公表しています。
 こうした取り組みがされたことは、大いに評価すべきだと思います。
しかし、これくらいの注意喚起では、なかなか一般市民に広まらないでしょう。

なによりがん免疫療法をはじめ非証明治療を行っている自由診療クリニックには、ほとんど影響がなかったはずです。
 なぜ、医療界全体でもっと大きな声にできないのでしょうか。
それは医師に認められている医療行為の裁量権が大きく、いかにエビデンスのないトンデモ医療だと批判されようと、患者に傷害を負わせたり、明らかな詐欺を行ったりしない限り、法的にペナルティを受けることがほとんどないからです。

■有名人を批判するだけで終わってはいけない
  それだけでなく、たとえば大手のがん免疫細胞療法クリニックには、有名大学医学部出身の医師、有名大学病院の元准教授、有名がん専門病院の元部長などが所属しており、そのバックにある細胞培養会社の経営陣には、超有名企業のOBたちが名を連ねています。
そうしたこともあるせいか、現役のがん専門医が批判する際も「ここだけの話」といった感じで、大っぴらに批判する医師は、ほんの一部の気骨ある人に限られています。

 今回の血液クレンジング騒動も、有名人を批判するのはいいのですが、批判しやすいところを叩いているだけのように見えます。
もし医師の方々が本気でトンデモ医療を駆逐すべきだと思っているのならば、こうした問題のある医療に関わっている医師たちをどう処遇すべきか、またこうした問題ある医療行為の被害から患者をどう守るのか、これを機会に医学・医療界全体として徹底的に議論すべきではないでしょうか。

■「我々は間違っていない」と反論してくるなら……
 たとえば、日本医学会、日本外科学会、日本内科学会といった各学会の上に立つ中心的な組織が、「標準治療を基準とする適正な医療を行う」と誓った医師や医療機関に認証マークを発行し、患者が一目でわかるよう医療機関の玄関やホームページに表示させるような対策が考えられます。
 そうすれば、標準治療を基準とした適正な医療を行っている医療機関かどうか一般の人でも見分けられますし、有名人も認証マークがついていない医療機関の宣伝に加担するのはマズいと判断できるようになるでしょう。
さらに、認証マークの規約に違反した医師・医療機関や認証マークのない医師・医療機関があった場合は学会から厚生労働省に調査を依頼し、医療内容、ネット広告等に違法行為やガイドライン違反があれば摘発・指導してもらうといいのではないでしょうか。

 もしトンデモ医療だと名指しされた医師・医療機関側が「我々は間違っていない」と反論してくるなら、学会に呼んで徹底的に議論し、臨床試験を実施させるなど、適正な方向に向かうよう指導することもできるはずです。

 医師は日本有数の高偏差値を誇る超エリート集団です。
優秀な頭脳と良心を持つ医師の方々なら、きっといい知恵を出してくれて、すぐに実行してくれると信じています。
血液クレンジングを叩くことで終わるのではなく、これを機会にぜひ専門職能集団としての自浄作用を発揮していただきたいと願っています。
posted by 小だぬき at 12:00| 神奈川 ☁| Comment(4) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ボール遊びも大声も禁止…「そして誰もいなくなった」 荒れ行く公園が問い掛けるもの

ボール遊びも大声も禁止…「そして誰もいなくなった」
荒れ行く公園が問い掛けるもの
11/12(火) まいどなニュース(広畑 千春)

日中なのに人気がなく、ひっそりとした公園。
長く訪れる人もいないのか、地面は雑草に覆われ始めていた―。
そんなもの悲しい公園の写真がツイッター上で話題になっています。

「『危ないから』と遊具を撤去し、
『危ないから』とボール遊びを禁じ、
『危ないから』と花火を禁じ、
『危ないから』と外遊びを禁じ(中略)
やがて老人たちもこの世を去り、誰もいなくなった」といったコメントとともにツイートしたのは、冒険ファンタジー系オールドスクール・ファンタジーミニチュアの輸入販売や執筆業を手がける籾山庸爾(@Paint_Hermit)さん。

投稿には「公園が公園でなくなる」「危険な場所で安全に遊ぶのが真の危機管理能力なのに」など、公園制度や自治会問題、世代間対立、子育て論などさまざまな観点からリツイートが寄せられ、3日余りで約1万4千件に上っています。

 籾山さんによると、この公園は仕事場近くにあり、子どもどころか「誰も居なくなっている」とか。
脇にはボール遊びや花火、大声を出すことを禁止するボードが掲げられているといいます。
ツイートについて「この公園については僕は門外漢で、『たとえ話』として使わせて頂いただけなんです。
ただ、僕はいま42歳ですが、さまざまなものが禁止されていくのをリアルタイムで体感してきた世代
子どもにとどまらず、『危ないから』『もめるから』などと、良かれと思って先回りして禁止したり制止したりすること自体の弊害を、問い掛けずにはいられなかった」と打ち明けます

 籾山さんが育ったのは横浜市内の住宅街。
子どもがサッカーや野球、ドッジボールなどに明け暮れていた公園は、ある時から「ボール遊び禁止」になり、ゲートボールの練習場に。
そのお年寄りいわく「ゲートボールは遊びではない」だったといい、花火も保護者同伴なら大丈夫だったのが、新しく建ったマンションの住人の苦情で全面禁止になったそうです。

 それから20年ほど過ぎ、結婚して娘が生まれると再び自宅近くの公園を訪れるようになりましたが、相次ぐ遊具の事故の影響か遊具はほとんどなく、籾山さんは落ち葉や枯れ木を使った家づくりなど「道具がなくても創れる遊び」を考え、娘と遊んでいたそうです。

 実際、国土交通省の公園利用実態調査では、住宅街にある0.25㏊以下の「街区公園」と2㏊以下の「近隣公園」の平均利用者の年齢構成は、少子高齢化の影響もあり65歳以上の高齢者の割合が急増。
利用者数全体もこの40年ほどで半分以下に減っています。
また同省が2015年に行った遊具の安全性に関する調査では、全般的に遊具の老朽化が進み、回転塔など撤去が進む半面、新設は全世代型の健康器具などが目立っています。

 さらに、街区公園などの管理を担う自治会にも心労は尽きません。
籾山さん自身も実家の自治会の手伝いをしているそうですが、新住民から地域で長く続く盆踊りの太鼓の音が「うるさい」と言われたり、「かき氷は子どもがお腹を壊す」と苦情が出たりし、中止や変更を検討せざるを得なくなっているとも。

町や子どもたちのことではなく、自分の住環境にしか興味がない人が増えたような…
自治会にも参加せず文句だけ言う『お客様住人』も少なくないのでは」と籾山さん。
今回ツイートが話題になったことについて「本来の意図は別でしたが、多くの方に考えるきっかけを提供できたとすれば、うれしいです」と話します。

 「遊び」は創造力や体力づくりの原点のはず
大人も子どもも、もっと伸び伸びと気兼ねなく「遊べる」環境が欲しいと思うのは、贅沢なことなのでしょうか
posted by 小だぬき at 00:00| 神奈川 ☀| Comment(0) | 教育・学習 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする