米国は「130/80以上」が高血圧!あなたは大丈夫?
「末梢血管」を鍛えると、血圧がみるみる下がる!
2019.11.30 ダイヤモンドオンライン
池谷敏郎:医学博士
「末梢血管」とは、手や足など末梢にまで血液を届ける動脈の末端部分のこと。
この末梢血管が血圧を左右する重要なカギとなります。
このたび新著『「末梢血管」を鍛えると、血圧がみるみる下がる!』を出版した人気医師・池谷敏郎先生が、「末梢血管を開いて血圧を下げる」コツを教える本連載。
初回は、そもそも血圧とは何なのか、高血圧になると何が怖いのかについてのレクチャーからです。
生活習慣に問題がある人ほど 血圧は改善の余地がある
みなさん、高血圧でお悩みですか?
高血圧の方は本当に多いです。
現在日本では、高血圧者の数は、4300万人と推定されています。
しかし、放置できないレベルの高血圧であっても治療を受けていない人も多く、その数はおよそ1850万人と推定されています(日本高血圧学会『高血圧治療ガイドライン2019』)。
高血圧は高齢者になるほど増え、現在70代の2人に1人は薬を飲んでいるという調査結果が出ています(厚生労働省「平成 年度国民健康・栄養調査」)。
みなさんの中にも高血圧で治療をしていて、薬を飲んでいる方も多いことでしょう。
薬に関して言えば、「血圧の薬は飲み始めると一生飲まなければいけない」と思っている人も多くいますし、私も患者さんからよく聞かれることです。
実際に主治医にそのように言われたという人も少なくないでしょう。
しかし、そんなことは決してありません。
生活習慣を改善することで、薬を減らしたり、やめたりすることだってできるのです。
とくに現在、生活習慣に問題がある人、たとえば暴飲暴食によってメタボになっているという人ほど、改善の余地があります。
健康的な生活習慣に自信のない方は、このタイミングを「チャンス」と思って、ぜひ生活改善に取り組んでいただきたいと思います。
血圧をいかに下げるかという話の前に、まず「血圧とは何か」簡単に説明しておきましょう。
血圧とは、心臓が体の隅々にまで血液を送り出すときに「血管の壁にかかる圧力」です。
「血液が血管を押す力」と言ってもいいでしょう。
ホースに水を流すところをイメージしていただくとわかりやすいでしょう。
水の勢いが強かったり、水の量が多かったり、ホース自体が狭くなっていたりすると、ホースにかかる力(圧力)は高くなりますね。
心臓は、ポンプのように「収縮」と「拡張」を繰り返 しながら、全身に血液を送り出します。
「収縮」した瞬間に血液が送り出され、「拡張」とともに全身から血液が戻ってきます。
この心臓が血液を送り出している(収縮している)ときの最高圧を「収縮期血圧」、いわゆる「上の血圧」といいます。
そして拡張しているときの最低圧が、「拡張期血圧」、いわゆる「下の血圧」です。
血圧は全身のすべての血管にかかっていて、部位によって数値も異なりますが、通常は血圧といえば、上腕で測る血圧のことを指し、これを「上腕血圧」と呼びます。
「140/90」を超えると 急に死亡リスクが高まる
日本における高血圧の基準値は、「140/mmHg以上(診察室血圧)」とされています。
この値は時代とともに移り変わってきていて、1987年には「180/100mmHg(以下単位省略)」だったものが、どんどん引き下げられてきた経緯があります。
また現在、アメリカでは高血圧の基準は「130/80」となっています。
日本も将来的には高血圧の基準値が引き下げられる可能性はあると思います。
ところが、高血圧の基準値の話になると、よくこのような意見が出ます。
「高血圧患者を増やして製薬会社を儲けさせようとする陰謀ではないか」
「個人差があるのだから血圧の基準値など意味がない」
高血圧の人からは「そうだ、そうだ!」と歓迎されそうな(?) 意見ですが、ちょっと待ってほしいのです。
高血圧の基準は決して国の方針や製薬会社の陰謀によって決められているのではなく、ちゃんと医学的根拠によって定められています。
いままでは血圧をどこまで下げればいいのか、なかなかはっきりしたことがわからなかったのですが、近年では研究が進んで、やはり血圧が高い人ほど脳卒中や心筋梗塞などの「血管事故」で死亡する率が高いことが明らかになってきたのです。
そしてその数値は「上の血圧が140、下の血圧が90」で、これを超えると急に、死亡リスクが高まるのです。
このため140/90以上が高血圧の基準値となっているのです。
さらに、120/80未満の場合がもっとも循環器病のリスクが低いため、「至適血圧」とされています。
血圧が130〜139/80〜89であっても、120/80未満の人に比べると、心血管系死亡リスクは1.5倍以上高いといわれます。
このためアメリカでは130/80を高血圧の基準としているのです。
もちろん個人差はあります。
しかしこの基準内に血圧が収まっていれば、脳卒中や心筋梗塞などの血管事故を起こさず、健康で長生きできる確率が高いのです。
この範囲に入っていたほうが断然安心なのです。