2020年03月01日

安倍「なんでもあり」政権が民主主義を破壊する

安倍「なんでもあり」政権が民主主義を破壊する
「安倍一強」のもとにひれ伏す独立行政機関
2020/02/29 東洋経済オンライン
薬師寺 克行 : 東洋大学教授

「今や安倍政権はなんでもありだ」
最近、こんな言葉が永田町や霞が関に広がっている。

森友学園や加計学園問題に始まり、安倍晋三首相主催の「桜を見る会」、さらには検察官の定年延長問題と、政権中枢が関わる問題が表面化すると、場当たり的な説明で切り抜けようとし、それが破たんすると関連する公文書を改ざんしたり、廃棄したり。
揚げ句の果てには法律解釈を強引に変更したりと、やりたい放題だ。

目の前の問題を処理するために、歴代内閣が積み重ね、作ってきた手続きや法秩序をいとも簡単に無視し続けているのだ。

失われつつある独立機関の政治的中立性
為政者が政権維持のために短期的な成果を上げようと強引な手法をとりたがるのは、安倍政権に始まったことではない。
だからと言って手続きや法律などを軽視すれば、法秩序が揺らぎ、倫理観が壊れ、社会全体が混乱するなど、中長期的にはより大きな公益が失われる。

ゆえに、政権の行う政策などが公平さや公正さを保っているか、法律に抵触していないかを常にチェックする必要があり、そのために内閣からある程度独立した組織が政府の中にも作られている。
具体的には会計検査院や人事院、内閣法制局などだ。
広い意味では日本銀行なども独立性が認められている。

ところが今、これら独立性の高い組織が本来の役割である行政のチェックを行うどころか、安倍政権が起こす問題の対応に巻き込まれ、政治的中立性を失いつつある。

コロナウイルスとともに国会で大きな問題となっている東京高検の黒川弘務検事長の定年延長問題では、人事院と内閣法制局が重要な役割を果たしている。
森雅子法相は、定年が近づいてきた黒川氏の定年延長を認めるため、1月17日に法解釈の変更を「口頭」で決済し、その後、内閣法制局や人事院と協議し、了承を得たと説明している。

この説明をすんなりと受け入れられないのは、2月12日の国会審議で、人事院の松尾恵美子・給与局長が「現在まで特に、(検察官の定年をめぐる)議論はない」と答え、検察官には国家公務員法の定年制は適用されないという従来からの政府の法解釈について、「同じ解釈が続いている」と答弁しているからだ。
この答弁を見る限り、人事院が中立的な立場から内閣の対応にくぎを刺していると受け止めることができる。

「口頭」で法解釈を変更
ところが、松尾局長の答弁の翌13日、安倍首相が衆院本会議でいきなり「法解釈を変更した」と発言した。
ここから人事院の姿勢が一変する。
松尾局長は12日の発言を「言い間違えた」と取り繕った。
ところが、法解釈変更の決裁について、松尾局長は「内部で決裁をとっていない」と発言している。
このあたりに心の揺らぎが見て取れる。

一方の森法相は「口頭で決済した」と強弁している。
そして、もう1つの独立機関である内閣法制局は、近藤正春長官が安倍首相にしっかりと歩調を合わせて答弁をしている。
さらに人事院や内閣法制局との協議の記録がないとしている。

法律の解釈を変更してやりたいことをやるというのは、安倍政権の好む手法のようで、すでに憲法9条の解釈を180度転換し、集団的自衛権の行使を容認している。
今回の法解釈変更というのは法律の世界では非常に重要なことであり、その目的や必要性、それが合理的であるかどうかなど説明ができなければならない。
当然、内閣法制局などとの協議の経過や最終的な決済などの文書がなければならないが、それが「口頭」というのである。
まさに「なんでもあり」状態である。

人事院は自らの組織について、「国家公務員法に基づき、人事行政に関する公正の確保及び国家公務員の利益の保護等に関する事務をつかさどる中立・第三者機関として、内閣の所轄の下に設けられた」(人事院ホームページ)と説明している。
為政者が政治的目的などのために人事を歪めたりすることをチェックすることも、人事院の重要な役割なのである。

松尾局長の初期の答弁には人事院の「矜持」を感じたが、安倍首相の本会議発言を機に一変してしまったのは残念としか言いようがない。
内閣法制局は官邸の追認機関になった 一方、内閣法制局は内閣に付属する機関ではあるものの、「法律問題に関し内閣並びに内閣総理大臣及び各省大臣に対し意見を述べる」(内閣法制局ホームページ)ことが業務の1つである。
憲法解釈をはじめ、法解釈の最終的なゲートキーパーの役割を果たし、歴代首相と言えども内閣法制局を無視して好き勝手な解釈を振り回すことはできない。
それゆえに為政者から嫌われることの多かった組織でもあった。

ところが周知のとおり、安倍首相は外交官出身の小松一郎氏を強引に長官に起用した。
小松氏は安倍首相の意向に沿った形で憲法9条の解釈を変更し、集団的自衛権を容認する姿勢を示して実現させた。
この人事がターニングポイントとなって、今や内閣法制局は独立性を弱め、首相官邸の意思決定の追認機関となってしまっている。
当然のことながら今回の検察官の定年延長問題でも、中立的立場からの発言は見られない。

会計検査院の変質も見逃せない。
森友問題に関して会計検査院は国有地売却に関して説明がつかないほど価格が値引きされていること、あるいは関連する公文書が改ざんされていることにいち早く気づいていた。
にもかかわらず、そのことを指摘しなかった。
会計検査院は国会や裁判所と同じように憲法に定められた極めて独立性の強い組織である。
ホームページには組織の責務を「この国のお金が正しく、また、ムダなく有効に使われているかどうかをチェックする機関です。
会計検査院は、このような重要な仕事を他から制約を受けることなく厳正に果たせるよう、国会、内閣、裁判所いずれの機関からも独立しています」と高らかに紹介している。

ところが実態は、積極的に政権に物申すことができなくなっている。
「安倍一強」と言われる政治状況のもとで、中央省庁は本来期待されていたボトムアップの政策の企画立案の役割が縮小し、主要な政策が官邸主導のもとトップダウンで決められ、役所はその下請け機関、執行機関となっている。
その結果、官僚の士気は下がり、転職者が増え、モラルも低下していると言われている。

繰り返される思いつきの政策 であれば余計に、首相官邸が打ち出す政策などについて第三者的組織のチェックが重要になるのだが、すでに述べてきたように会計検査院や人事院、内閣法制局などの独立性の高いはずの組織が、本来の役割を果たせないばかりか、安倍一強のもとにひれ伏しているかのような状況になっている。

長く政権を維持してきた自民党だが、歴代首相でここまで統治システムの根幹部分に手を突っ込み、独立性の強い組織の主体性を奪ったケースはないだろう。
その結果、安倍首相やその周辺の一部の人間が思いついた政策などが専門的な知識もなく、時間をかけた慎重な検討もなく打ち出されている。
そして、何か問題が見つかると、場当たり的な理屈を作って切り抜けようとする。
その際、関連する公文書が改ざんされたり、廃棄される。
今回のように、突然法律解釈が変更されることも起きた。
それを会計検査院などの組織がチェックし問題点を指摘しなければならないのだが、逆に政権の意向に沿って追認を繰り返している。
これが今の安倍政権である。

これでは権力の中枢から法秩序も倫理観も消えてしまい、統治システムの混乱は避けられない。
そういう意味で今、日本はまさに危機的状況にあるといえる。
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2020年03月02日

臨時休校「一生の思い出」奪われた子たちの本音

臨時休校「一生の思い出」奪われた子たちの本音
卒業は人生の節目、なおざりにしてはいけない
2020/03/01 東洋経済オンライン
二宮 未央 : ライター、コラムニスト

「今日は泣いている友だちが何人もいました。
小学校を卒業したら、進路はそれぞれでバラバラ。
今日を最後に、今のクラスのみんなと同じ教室で集まれなくなるんだな、って。
だから今日はクラスのみんなで集まって、校庭で思いっきり鬼ごっこをしたんだけど、いつも遊んでいるはずの『ただの鬼ごっこ』がこんなにも楽しいなんて初めて思った」

2月28日(金)夜、東京都内の小学校に通う小学6年生の佐和田美海さん(仮名、12歳)は、涙ながらにこんな話を打ち明けてくれた。
「あまりにも突然過ぎた」(美海さん)

政府の決定は2月27日(木)夜に安倍晋三首相から全国に伝えられた。
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、全国すべての小中学校や高校、特別支援学校などに3月2日(月)から春休みに入るまでの臨時休校を要請すると発表したのだ。
2月28日、政府は各都道府県の教育委員会などを通じて、正式に臨時休校を要請した。
一部の自治体では受け入れに反発し、従わないとする動きも出ているが、私立学校を含めて多くの小中学校や高校が政府の要請に沿う恰好で対応を始めた。

首相の方針表明からわずか1日で3学期終了
一部の学校は土曜授業により2月29日(土)も生徒が登校したが、原則週休2日制が定着している昨今、安倍首相による方針表明のわずか1日後の2月28日(金)をもって、3学期は終了。
新学期が始まる4月上旬まで大多数の学校は授業を行わない見込みだ。
各校の個別対応を除けば大半の生徒が事実上、今年度はもう学校には登校できなくなったわけで、これを受けて、28日は大量の荷物を抱えて帰宅する学生が全国津々浦々で見受けられた。

「起きてしまったことは仕方がないけれど、もっと早い段階で手を打っていれば、こんな突発的なことにはならなかったかもしれないと思うと、憤りを感じます」。
都内私立高校に通う高校3年生の渡部亜紀さん(仮名、18歳)はそう語る。

新型コロナウイルスは、年齢が高くなるほど感染した後の重症化や命を失うリスクが高まる一方、10代以下の子どもたちの多くは比較的軽症で済むというのが、先行している発症例の分析結果から明らかになっている。
それでも、全国で約1300万人にも及ぶ小中高生の動きを政府が止めたいのは、児童生徒自体が重症にならなくても、地域外から感染したコロナウイルスが親を介して地域に持ち込まれ、その子供である児童生徒に移り、さらに児童生徒同士の感染を経由して地域内に広がるだけでなく、それが他地域へとさらに感染が連鎖していくことを阻止する狙いがあると推察できる。

安倍首相は2月29日(土)18時から開いた記者会見で、臨時休校についてはこのように言及した。
「新型コロナウイルスは集団による感染をいかに防ぐかが重要です。
子どもたちの健康、安全を第一に考えました。
学校は教職員、子どもたちが集まって、同じ空間を共有することに感染リスクを伴います。
万が一にも学校において子どもたちの集団感染を起こしてはならない。
学校が休みとなることで親御さんにはご負担をおかけする。
小さなお子さんをお持ちの家庭には大変なご負担を強いる。
急な対応に全力を尽くしてくださっている自治体や教育現場の皆さんにも感謝します」

ようやく表に出てきた安倍首相だったが 一定程度は理解できる。
ただし、生徒たちはもちろん、教師をはじめとする学校関係者、放課後に子どもを受け入れる学童関係者、子どもの親たちなどはさまざまな対応を迫られる。

生活に大きな変化を迫られたり、経済的に困ったりする人もいて、それらについての不満や政府への批判・反発の声なども巻き起こっている。
これまでの政府のコロナウイルス対策が後手に回り続けていた印象が拭えなかった中で、主には加藤勝信・厚生労働相に説明役を任せ、やっと前面に出てきた安倍首相が打ち出した決断は用意周到で準備された印象は薄く、唐突に映ってしまった。

学校関係者や親たちの対応による社会的なインパクトはもちろんながら、最も影響が大きいのは子どもたちだ。
筆者も2人の子どもを持つ親の1人として、自分の子どもはもちろん、周囲の親を経由して多くの子どもたちの複雑な心境の声をたくさん耳にしている。

思いがけない休みが突如訪れ、「ラッキー!オンラインゲームで友だちと遊べる!」(小学5年生男子)、「期末試験なくなってホッとした!」(高校1年生男子)と浮かれている子どもたちもいるが、戸惑いも少なくない。
「せっかく勉強したのに期末試験がないのは残念。
部活ができないのも嫌だ」(中学2年生女子)というような不満の声のほか、ある高校3年生男子は「ホワイトデーのお返しをどのタイミングで渡せばいいのか…」と落ち込んでいた。

何よりもあまりに唐突で準備期間もほとんどなく、年度最後の3月の授業をすっ飛ばしてしまう臨時休校が始まったことで懸念されるのは、小学6年生、中学3年生、高校3年生の「卒業」という人生の節目が中途半端になりかねないことだ。
特に心が成熟してから仲間との別れを初めて経験する小学校の卒業式は、人生において一生の思い出に残る節目の1つである。

政府は臨時休校を求めるにあたり、入試や卒業式を実施する場合は感染防止など万全の対応を取るよう求めている。
安倍首相は2月29日(土)の記者会見で「子どもたちにとって3月は学年の最後、卒業前、進学前の大切な時期。
学年をともに過ごしたともだちとの思い出をつくるこの時期に学校を休む措置を講じるのは断腸の思いです。
卒業式は必要最小限の人数に絞って実施していただきたいと考えています」と話した。

ただ、一部の大学も含めて、早々と卒業式の中止を決めてしまった自治体や学校も少なくない。
開かれるとしても、保護者や在校生の参加を自粛するなどの規模を縮小した格好で行われることになる可能性が高い。

当の子どもたちはこんな風に思っている
これに対して当の子どもたちはどう思っているのか。
筆者が複数の子どもたちから聞いた率直な声は以下のようなものだ。

・「卒業文集を書き終えて、卒業式の台本も配られていたのにやらなくなって悔しい。卒業式は保護者抜きで簡単に短縮してやる方向だけど、練習してきたのに掛け合いや歌はナシ。みんなと本当にバラバラになってしまう。いきなり断ち切られてしまった」(小学6年生男子)
・「6年生を送る準備に備えてずっと取り組んできたものを披露できなくて残念。受験を控えているので学習面で不安があるし、6年生とはお別れの実感がわかない」(小学校5年生女子)
「最後の1カ月が、コロナによって潰された。コロナが憎い。せっかく6年やってきた最後の1カ月は、思い出を作るうえで重要なので、とにかく悲しい。卒業の会は笑顔でがんばる」(小学6年生男子)。
・「(卒業式の中止がすでに決まり)学校は好きじゃなかったから卒業式がなくなるのはいいけど、一生の思い出が1つ失ったと思うと悔しい。準備の期間、心の準備が欲しかった」(高校3年生女子)

2月28日(金)朝、突如「ランドセルを背負える最後の日」が訪れた小学6年生の子どもを持つ母親による、わが子の“最後のランドセル姿”を写真に収めたSNS投稿も多く見られた。
「心の準備が欲しかったです。
卒業前の最後の1カ月は、子どもにとって思い出作りにとても大事な時期なのに、その大切な時間を奪われてしまったような気持ちです。もちろんどうしようもないことなのは分かっていますが…」。
そう語るのは、冒頭の美海さんの母である、母親の佐和田真知子さん(38歳)。

命を守るため感染拡大を阻止することが最優先であるから、致し方ないことは重々承知しているものの、卒業に向かってカウントダウンもなく、突然「今日で終わり」と突き付けられ、この虚しさと憤りをどこにぶつけたらいいのか分からないと佐和田さんは語った。

「卒業式の掛け合いの言葉や、卒業の歌で在校生に見送られながら卒業する、日本人の誰もが経験する感極まる初めての体験をさせてあげられないのは悲しい」と、筆者に話してくれた親もいた。

3.11で卒業式を経験できなかった人たちの本音
式典やイベントの自粛といえば、3.11が思い起こされる。
2011年3月11日の東日本震災発生直後は、教育機関における卒業式や祝賀ムードのイベントの中止が相次いだ。
当時、卒業式を経験できなかった多くの人が、誰のせいでもない、ぶつけようのない悔やまれる思いを未だに抱えているという話も聞く。

感情的な部分を論じている面もあるが、そうはいっても人間は感情の生き物だ。
そして何事も物事の「区切り」や「終わり」には、そのための段階的な心の準備を経て、けじめをつけるための「儀式」が必要となる。
子どもたちにとっての卒業式がまさにそれだ。

お笑いコンビ「ロンドンブーツ1号2号」の田村淳さんは2月29日、自身のツイッターを更新し、卒業式が中止となった学生たちへ「YouTubeのロンブーチャンネルで、3月15日にリモート卒業式をやろうと思うのですが…家から出ずともネットで繋がって卒業式をやりませんか?」と呼びかけた。
こうしたケアは親たちにとってもありがたいものだろう。

このようなどうしようもない事態に陥ってしまったのであれば、この与えられた時間をいかに有効活用して次のステップに進めるように考えることが、大切なのではないだろうか。
限られた条件の中であっても、子どもたちの心に一生残る「卒業式」あるいは「卒業の儀式」をなおざりにしてはいけない。学校関係者に限らず、私たち大人にもできることはあるはずだ。
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「換気悪い密集空間を避けて」 感染場所の特徴公表

「換気悪い密集空間を避けて」
 感染場所の特徴公表
3/1(日) 朝日新聞デジタル

 新型コロナウイルスの感染が広がっていることを受け、安倍晋三首相は1日、政府対策本部の会合で、換気が悪く、人が密集するような空間に集まることを避けるよう国民に求めた。

専門家による調査で、スポーツジムや屋形船などで小規模な患者の集団(クラスター)が発生し、1人が12人に感染させた例があったという。

 厚生労働省によると、2月26日までに明らかになった国内の感染者110人の濃厚接触者らを調べた結果、屋形船での集団発生では1人が12人に、スポーツジムの事例では1人が9人に感染を広げていたことがわかった。
政府は、密閉空間など換気が悪く、人が密に集まって過ごすような場所が集団感染の共通点と判断
こうした場所を避けるよう国民に呼びかけた。

一方、感染者の約8割は誰にも感染させていなかったという。
 また、イベントの大小にかかわらず、開催の必要性について検討するよう要請。
開催する場合は、風通しの悪い空間や、人が至近距離で会話する環境をなるべくつくらない実施方法の検討を求めた。

 イベントや集まりに対する政府の要請は段階的に強まっている。
政府が25日に公表した基本方針では、主催者に開催の必要性の検討を求めたものの、「全国一律の自粛要請ではない」としていた。
だが翌26日には一転、大規模な文化イベントなどを2週間、中止か延期、縮小するよう求めた。

 新型コロナウイルスは、感染者のせきやくしゃみのしぶきを吸い込む飛沫(ひまつ)感染や、ウイルスが付いた手で口や鼻を触ることによる接触感染でうつる。
潜伏期間が1〜14日ほどと、インフルエンザの1〜3日に対して長く、発症前でも感染を広げる恐れがある。
発症後もしばらくは症状がかぜと同じで気づきにくい。

 こうしたことから、若い人を中心に、本人が気づかないまま感染を拡大させる事態が懸念されている。
中国でも、湖北省の女性が南京市で家族と会食し、結果的に10人に感染を広げた事例が報告されている。
 安倍首相はまた、政府がマスクをメーカーから買い取り、感染者が増えている北海道で配る方針を明らかにした。

■集団感染が起こった場所や状況
・スポーツジム
・屋形船 ・ビュッフェスタイルの会食
・雀荘(じゃんそう)
・スキーのゲストハウス
・密閉された仮設テント

■集団感染の共通点
・換気が悪い
・人が密に集まって過ごすような空間
・不特定多数が接触するおそれが高い場所

朝日新聞社
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2020年03月03日

国民の不安を煽るだけの安倍首相と、国民に寄り添う他国リーダーとの本質的違い

国民の不安を煽るだけの安倍首相と、国民に寄り添う他国リーダーとの本質的違い
2020年03月02日 PRESIDENT Online
コミュニケーション・ストラテジスト 岡本 純子

2月29日、安倍晋三首相は新型コロナウイルス対策について初めて記者会見を開いた。
その内容をスピーチのプロはどう見たか。
コミュニケーションストラテジストの岡本純子氏は「なにが伝えたいのがわからず、国民の不安を煽るだけだった。ニュージーランドやシンガポールの首相とは対照的だ」という――。

■安倍首相会見は、国民の不安を煽るだけだった
2月29日、安倍晋三首相は新型コロナウイルスの対策について、初めて会見を行った。
この「国難」を乗り越えるため、国のトップのスピーチはどうあるべきか。
他国の事例を踏まえながら考えたい。

まず、このタイミングで「初の会見」というのが驚きだった。
トップがきっちりと直接メッセージを発するというのは危機管理の定石だ。
なぜ安倍首相が率先して迅速な情報開示を行わなかったのか。

この間、安倍首相は感染症の専門家や実務家とコミュニケーションを密にとっていたわけでもなかった。
1月30日になって「新型コロナウイルス感染症対策本部」が設置されたが、当初の会議時間は10分〜15分程度。
また夜は懇意にしている評論家や作家、経営者らとの会食を繰り返し、身内の議員の誕生会に出席することもあった。
オフタイムにはしっかり休養を取るというのも重要だ。
だが、不眠不休で身を挺して働いている現場はそれをどう受け止めるか。

その関心と興味は半径10メートル以内の近しい人々のみ、という印象さえ受ける。
そして国民は完全に取り残されている。

マスクはない、除菌スプレーもない、おまけにパニック状態にあるからなのか、トイレットペーパー、ティッシュ、おむつ、生理用品、飲料水なども店頭から消えている。
学校現場は、突然3月2日からの臨時休校を言い渡され、混乱を極めた。
休講を告げられて喜ぶ子供も多かったようだが、休みが長引くにつれて「外に出てはいけない」という事態に戸惑っている。しかも友達にしっかりと別れを告げることもないままに、卒業式という一生に一回の晴れの機会も奪われてしまった。

親たちは、遊び盛りの子供たちの面倒をどう見ればいいのか途方に暮れ、仕事と育児の両立に悩んでいる。
それだけではない。
続々と仕事がキャンセルになり、「自粛」「自粛」と連呼され、一体、これから、どうやって生活を成り立たせればいいのか。
国民の間には不安が広がっている……。

■連夜の「お友達」との会食を指摘され「何かいけないのか」と開き直る
われわれは「当たり前の日常」を失った。
その一方で、2月28日の衆院総務委員会では立憲民主党の議員から「会食が相次いでいる」と指摘されると、「何かいけないことなのか」と開き直る。
その様子をみると、国民や医療現場の痛みや悲鳴が首相の耳に届いているようには思えないのである。

今回の会見の内容もそんな「ひとごと」のような言葉が並んでいた。
この会見には多くの問題点があった。
左右に置いたプロンプターを振り子のように順番に見ながら、一言一句漏らさず読み上げたために、自身の言葉という感じがまったくしなかった。
首相の「気持ち」が伝わってこないのだ。

記者会見は約36分間だった。
そのうち19分間は安倍首相のスピーチ。
質疑応答は残りの17分間だけで、しかも事前に提出されていた5つのメディアに応じるだけだった。
安倍首相は国民の疑問には答えず、一方的に説明するだけで、すぐさま私邸へ引き上げた。

■いったい何を伝えたいのかがわからない
最大の問題点は「いったい何を伝えたいのかがわからない」ということだ。
経営者や政治家などのスピーチで重要なことは、伝えたい「キーメッセージ」を明確にすることだ。
それができていなければ、メッセージを聞き手に刷り込むことができない。

木に例えると、幹(キーメッセージ、結論)があって、枝(根拠、ポイント)があって、最後に葉(具体的事例)がある。
この会見では具体性の乏しい無数の葉が、だらだらと羅列されただけだった。

イベントの中止、学校休止、事業者への話、おくやみ、PCR検査、治療体制……。
ずらずらと話は続いたが、@問題→A原因→B解決法→C展望→Dアクション、というロジカルスピーキングの基本にのっとって説明すれば、もっとわかりやすくなったはずだ。

つまり、@Aしっかりと現状説明し、現在わかっている原因・背景を簡潔に述べる→Bその解決策として、例えば、A:教育現場での対策、B:経済施策、C:医療体制といったようにポイントを分け、順番に話す→Cそれにより収束するという展望を見せる→Dそのために、「ですから皆さんぜひ、●●をお願いします」と協力を呼びかける、という格好だ。

しかし安倍首相のスピーチは、このロジカルスピーチの基本がおろそかになっていた。
最初に現状説明をしなければいけないのに、それは省かれており、いきなり「躊躇なく対策を講じてきた」と胸を張る。
すべてが後手後手に回ったと思っている聞き手の耳には、その先の言葉が入ってこない。

■戦時中の「欲しがりません勝つまでは」を彷彿とさせる根性ワード
また、解決法については、「盤石な医療体制を構築していきます」「未来を先取りする変革を一気に進めます」「努めてまいります」「増強されます」「整えます」とどれもぼんやりした未来形だった。
「ということは、今まで何もやってこなかったのか」という絶望感にとらわれた人もいたはずだ。
会見は「キーメッセージ」が見えないまま進んだが、その途中で「自分はその最前線に立っている」とでもいうような勇者めいた発言があった。

「今回のウイルスについてはいまだ未知の部分がたくさんあります。
よく見えない、よくわからない敵との戦いは容易ではありません。
政府の力だけでこの戦いに勝利を収めることはできません」 これでは不安を煽るだけだ。

続けて、「一人ひとりの国民の皆さんのご理解、ご協力が欠かせません」と呼びかけた。
一体なにを理解して、なにに協力すればいいのかわからない。
戦時中の「欲しがりません勝つまでは」を彷彿とさせる根性ワードが散りばめられ、聞き手にはモヤモヤ感だけが残る。
首相は「さまざまな課題・不安・意見」と繰り返したが、これは「いろいろありすぎて、整理できていない」と言っているのと同じだ。

われわれは日本のリーダーである首相に寄り添ってほしかったし、不安をしずめてもらいたかった。
しかし、国民の不安を分かち合おう、軽くしようという気概は微塵も感じられなかった。

■NZ首相は何度も何度も「prepared(準備完了)」と繰り返した
ここで、ほかの国のリーダーの例を見てみよう。
例えば、ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相。
2月29日に、最初の感染者が出たことを受け、会見でこう話した。
「私が訴えたいのは、ニュージーランドはこうしたシチュエーションに適切に対応できるということです。
公衆衛生に携わる官僚や専門家(の知見)は世界でもトップクラスであり、医療施設も十分に準備できています」

アーダーン首相は相談センターの電話番号を書いたパネルの前で会見し、何度も何度も「prepared(準備はできている)」と繰り返した。

■安倍首相がお手本にすべきシンガポール首相のメッセージ
また、シンガポールでは、2月8日、リー・シェンロン首相がスピーチという形でこんなメッセージを出した。
「今日はあなた方に直接、今の状況、そして何が待ち受けているのかをお話したいと思います。
われわれは17年前にSARSを経験しており、コロナウイルスに対応できるよう、しっかりと準備ができています。
われわれは十分な量のマスクと個人用の保護用品を確保しており、医療施設も拡張し、改善させてきました。
ウイルスについて、より高度な研究能力を実現し、医師・看護師はさらに訓練されており、心理的にも準備ができています。

シンガポール人は何を予期し、どのように対応するのかを知っているのです。
何より大事なのは、SARSを克服し、私たちはこの問題を乗り越えることができることをわかっていることです」

国民の不安をやわらげようと、語り口はとてもやさしく、聞き手を勇気づけるものだった。
さらに、「頻繁に手を洗い、目や顔に触れないように」、「医師に相談するように」、「インスタントラーメンや缶詰、トイレットペーパーを買う必要はない」などの具体的なアドバイスをしたうえで、「団結して解決をしていきましょう。 良識ある予防策をとり、お互いに助け合い、落ち着き、私たちの生活を続けていきましょう」と結んだ。

■一国のリーダーが友人との会食ごっこをしている時間はない
シンガポール在住で現地の会社役員を務める日本人女性・簡 希実子さんは、こうした対応を手放しで評価した。
「旧正月のころ(1月の終わり)のずいぶん早い時点から政府(健康省)が段階的に厳しくいろいろと規定を発令したので、そろそろ収束への道が見えてくる予感がする。
マスクが入手できなくなるパニックを避けるためにも対策が練られるなど、徹底的な対策がとられてきた。
首相のスピーチは、国民がパニックに陥らないようにと、助け合いと一体感を呼びかけており、一連の対応は機敏で、本当に素晴らしい。
あっぱれだ」
筆者は長年、コミュニケーション研究家として、安倍首相の伝え方戦略を中立の立場からウォッチし続けてきた。
これまで安倍首相は、アメリカ議会での英語演説やリオ五輪閉会式でのパフォーマンスなど、徹底的に「見せ方」を意識し、スピーチにはこだわりを見せてきた。
しかし、そういう「お祭り」ではそれなりに人々に訴えることができても、「国難」というここぞのときのスピーチはおざなりな印象をもつ。

これは超長期政権のレイムダック(死に体)を意味しているのかもしれない。
それほどまでに生気もやる気も感じられないのだ。
世界的危機の中で、一国のリーダーが友人との会食ごっこをしている時間はないはずだ。
この国難には全国民が一丸となって立ち向かうしかないのだから。

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岡本 純子(おかもと・じゅんこ)
コミュニケーション・ストラテジスト
早稲田大学政治経済学部卒、英ケンブリッジ大学大学院国際関係学修士、元・米マサチューセッツ工科大学比較メディア学客員研究員。大学卒業後、読売新聞経済部記者、電通パブリックリレーションコンサルタントを経て、現在、株式会社グローコム代表取締役社長(http://glocomm.co.jp/)。
企業やビジネスプロフェッショナルの「コミュ力」強化を支援するスペシャリストとして、グローバルな最先端のノウハウやスキルをもとにしたリーダーシップ人材育成・研修、企業PRのコンサルティングを手がける。
1000人近い社長、企業幹部のプレゼンテーション・スピーチなどのコミュニケーションコーチングを手がけ、「オジサン」観察に励む。
その経験をもとに、「オジサン」の「コミュ力」改善や「孤独にならない生き方」探求をライフワークとしている。
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2020年03月04日

「睡眠が上手に取れる人」に共通する5つの法則

「睡眠が上手に取れる人」に共通する5つの法則
ムダな眠気に悩まず、すっきり仕事できる
2020/03/03 東洋経済オンライン
小林 孝徳 : ニューロスペース社長

よい眠りが取れているビジネスパーソンは、日中高い集中力を発揮し、ここぞというときの判断力にも長けています。
拙著『ハイパフォーマーの睡眠技術 人生100年時代、人と組織の成長を支える眠りの戦略』でも詳しく解説していますが、私が運営する会社が1万人以上のビジネスパーソンから睡眠に関わるデータを集めてわかったことは、よりよい睡眠を取れている人ほど、会社からの評価だけでなく、周囲からの信頼が厚く、数字での結果を残していることです。

ハイパフォーマーの睡眠の定義
仕事ができる人――つまり、「ハイパフォーマーであるビジネスパーソン」の睡眠の定義は3つです。

<1>朝起きたときに頭がすっきりしている
<2>日中に来る眠気をコントロールできている
<3>リラックスしたいときに眠気が来る

<1>は、とくに起きてから4時間以内に強い眠気が来ないことが指標となります。
前の晩に質のよい眠りがとれていれば、起床後4時間以内に強い眠気は起きづらい傾向があります。

<2>は、眠気によって仕事に支障をきたしていないことがハイパフォーマーの睡眠の定義の1つです。
「そもそも、ハイパフォーマーは眠気を感じないのでは?」という声が聞こえてきそうですが、そんなことはありません。
私たち人間には、起きて光を浴びたタイミングからだいたい7〜8時間後に眠気を感じる「サーカディアンリズム」と呼ばれる身体のメカニズムが備わっています。
これは、正常な睡眠がとれているのであれば誰しもに訪れるもので、この日中の眠りに対して適切に対応できているのが、ハイパフォーマーの特徴です。

<3>は、寝る時間、つまりリラックスしたい時間帯にちゃんと眠気が来ているかどうかということが重要です。
ハイパフォーマーには、身体のオンとオフの切り替えがしっかりとあり、寝たいときに眠れる身体のリズムを持っています。

【ハイパフォーマーの睡眠の法則】

@ベッドに入ってからの寝つきがいい
A起床時間が整っている
B本睡眠前にうとうとしていない
C仮眠をフルに活用している
D寝る時間に拘束されない

ビジネスパーソン1万人以上の睡眠データから導き出した法則は、以上の5つです。
順番に解説していきましょう。
(外部配信先では図表やグラフを全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

効率のいい睡眠とは?
@ベッドに入ってからの寝つきがいい
N(Normal)は、一般的なビジネスパーソンのもの、H(High)はハイパフォーマーの定義に当てはまるビジネスパーソンの睡眠習慣を表した図です。
@の部分に着目すると、Hはベッドにいた時間と寝た時間にほとんど差が見られないのに対し、Nは、ベッドに入ってからしばらくの間、眠れていないことがわかります。
寝つきのよさは「睡眠効率」といい、次の公式によって割り出すことができます。

(寝ていた時間)/(ベッドにいた時間)×100=睡眠効率(%)
このパーセンテージが高いほうが効率よく睡眠がとれたことになり、逆に低くなるほど睡眠効率が悪いことを示します。
例えば23時にベッドに入り、眠りに落ちたのは午前1時。起床時間が6時だったとすると、睡眠効率は「5時間(寝ていた時間)/7時間(ベッドにいた時間)×100」となり、71.4%となります。

質のよい睡眠は、睡眠効率85%以上になります。
そもそもなぜ、Nはベッドに入ってからなかなか寝ついていないのか。
それは、眠りに関係のないこと、スマートフォンやパソコンをいじる、読書をするなどの行為をベッドの上で行っているのです。
これを習慣化してしまうと、脳は寝室を「遊ぶ部屋」「学習をする場」と認識します。
脳は行為をセットで記憶するため、こういった行動を続けていると寝室を「眠る場所」として認識しなくなり、その結果、寝つきにくくなったり、眠りの質が悪化したりしてしまいます。

ただ、寝つきがよすぎるのも問題。
ベッドに入ってから1分以内に眠ってしまう状態は慢性的な睡眠不足の証拠です。

理想的な寝つき方は3〜10分かけてまどろみを感じ、徐々に入眠していくことです。

A起床時間が整っている
次に、2つの図のAの部分、起床時間を見比べてみましょう。
Hは土日を含めて起きる時間がほとんど整っていますが、Nは起床時間にばらつきがあります。
とくに土日は、昼頃まで寝ている様子がうかがえます。

結論からいうと、ハイパフォーマーと呼ばれるビジネスパーソンは、1週間を通して起床時間が整っています。
一定の時間に起床し、光を浴びる。
このセットを継続することによって身体のサーカディアンリズム(概日リズム、一般的に体内時計とも言う)が規則的になります。
逆に、極端なズレが生じると、リズムが後ろ倒しになり、眠気に襲われやすくパフォーマンスの低下につながってしまうのです。

平日と休日の生活リズムに悩むBさん
起床時間を整えろと言われて悩むのが平日と休日の生活リズムです。
私が睡眠アドバイスを行ったコンサルティング業界に勤めている30代OLのBさんは、毎週月曜の朝に「会社に行きたくない……」という気持ちに悩まされていました。
いわゆるブルーマンデー症候群といいますが、月曜日に限らず、長期連休明けなどにこの症状に陥る人も多いです。

私は、Bさんにサーカディアンリズムを整えることを提案し、土日の起床時間も平日と同じ時間にそろえることを推奨しました。
睡眠のリズムを一定に保つことを徹底し、週末の過ごし方を変えたBさんは、ブルーマンデー症候群の特徴である、だるさや意欲の低下を感じなくなったことはもちろん、自分のベストパフォーマンスが発揮できる時間帯を見つけられたと言います。

起床時間を整えたことで、「平日のとくに13時頃になると眠たくなる」「10時頃は集中力を出しやすい」といった自分のパフォーマンスの傾向が見えてきたBさんは、うまく業務の振り分けができようになったのです。

重大な決断をする会議や頭を使う資料作成をパフォーマンスが発揮しやすい時間帯に、逆に眠気に襲われやすい時間帯は頭を使わない単純作業をするなど、仕事を割り振ることで業務効率は飛躍的にアップします。

B本睡眠前にうとうとしていない
仕事を終え、帰りの電車内。座ったとたん、つい、うたた寝をして最寄り駅を乗り過ごしてしまった……多くの人がこのような経験をしています。
座席も温かく、電車のゆらぎによって寝つきやすくなってしまうことは否定しません。
しかし、この時間帯に寝てしまうと、夜の睡眠に悪影響が出てしまいます。
図の帰宅時間帯の部分Bを見比べてみると、Nのほうは平日の21時前後に短時間眠っている箇所がいくつかありますね。
帰りの電車でのうたた寝、もしくは帰宅後に自宅のソファーに座ってそのまま寝落ちしてしまったといったところでしょう。

逆にハイパフォーマーであるHの図を見てみると、眠気を感じてはいるものの、帰宅時間帯に寝ている様子は見当たりません。
睡眠の仕組みは、バネの原理に似ており、起きている時間が長いほど眠る力がたまっていきます。
これを専門用語で「睡眠圧(睡眠の恒常性)」といい、深く長い眠りである「本睡眠」に向け、この睡眠圧をしっかりと貯蓄していくことが大切になってきます。
ためにためてきた睡眠圧を本睡眠の直前に一気に解放することが、深い眠りに入るための条件となるのです。

C仮眠をフルに活用している
先ほども書いたように、私たちは起きて光を浴びてから7〜8時間後には、眠気が訪れます。
また、睡眠圧の原理によって、起きている時間が長ければ長いほど眠気を感じやすくなることにも抗えません。
これらの眠気を感じることは、身体の異常ではなくむしろ正常なリズムを持っている証しです。

ここで重要になってくるのは、日中に感じてしまうこの眠気をどう解消していくかです。
眠気を解消したいとき、多くの人はコーヒーなどカフェインを取っていますが、それはただ眠気を一時的にブロックしているにすぎません。
この対処法はドーピングのようなもので、根本的な眠気の解決にはならず、一定の時間をすぎるとまた眠気が押し寄せて、再びパフォーマンスが低下します。

質のよい仮眠を取るための方法
質のよい仮眠をとるためには、以下の3つが重要です。
(1)仮眠時間は15〜30分
(2)心臓より頭が上にくるように眠る
(3)仮眠前にカフェインを取る

この3つを意識すると、質のよい仮眠が取れ、その後のパフォーマンスがアップします。

D寝る時間に拘束されない
これは大変シンプルなことですが、ハイパフォーマーは早く眠れるときは、潔く早く寝ています。
睡眠において大切なのは、リズムであり、寝る時間を一定にすることではありません。
早く寝られるときに、早く寝ることが、日頃の睡眠不足を解消するために大切なのです。

なぜ、改めてこのことに言及するのかというと、「睡眠のリズムを一定に保つ」という強い意識のせいで、かたくなに寝る時間を一定に保とうとする人がいるからです。
「絶対に0時に寝て6時に起きる。6時間睡眠を死守する」という意識の人は思いのほか多いのですが、眠れるときは眠る時間を確保することが大切です。

基本的には「眠い」と感じたら、それは身体が眠りを求めているサイン。
疲れ具合や脳の負担は毎日同じではないため、身体と脳の状態に耳を傾け、早く寝たいときは身体に正直になるといいでしょう。
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2020年03月05日

コロナ禍が景気直撃 倒産・失業ラッシュ本格化はこれから

コロナ禍が景気直撃
倒産・失業ラッシュ本格化はこれから
2020/03/03 日刊ゲンダイ

 ウイルスは職をも奪っていきそうだ。
財務省が2日発表した2019年10〜12月期の法人企業統計によると、金融・保険業を除く全産業の売上高は前年同期比6.4%減の347兆8257億円。
2四半期連続のマイナスとなった。

 空恐ろしいのは、今回の法人企業統計がコロナ禍が本格化する前のデータであることだ。
イベントの自粛や休校が続けば、経済活動の停滞は必至。
さらに景気が悪化するのは確実だ。

経済評論家の斎藤満氏が言う。
「日本に経済的な体力がない状況で、コロナウイルスと戦わねばならないことがはっきりしました。
しかも、政府の対応は後手後手です。
日銀総裁が金融緩和を示唆する談話を発表したものの、正体不明のウイルスが蔓延する中で追加の経済政策を持ち出しても気休めでしかありません。
誰でも検査できるようにするなど、不安解消が第一です。
外出を控える人が続出し始めたら、経済活動へのダメージは計り知れません」

■有効求人倍率も急落
 安倍首相が事あるごとに誇る“雇用”状況も悪化している。
厚労省が先月28日に発表した1月の有効求人倍率は、前月比0.08ポイント低下の1.49倍に急落。
完全失業率も0.2ポイント上昇の2.4%となり、4カ月ぶりに悪化。
厚労省は雇用情勢に関する判断を「着実に改善が進む」から「改善が進む」に下方修正した。

完全失業者数は164万人で、12万人増えた。
 コロナ禍による企業倒産が本格化するのもこれからだ。  
コロッケ製造販売会社「北海道三富屋」は先月25日、自己破産を申請。
販売不振に加え、出店していた札幌市内のイベント来場者が新型コロナの影響で伸び悩んだことなどが倒産の引き金を引いたという。

 企業の業績が悪化すれば、直撃されるのがサラリーマンだ。
免税店を全国に展開する「ラオックス」は、コロナ禍による業績悪化を見越して160人規模の早期退職者の募集を開始。
終息のメドが立たなければ、コロナ失業が相次ぐのは間違いない。

「すでにホテルや百貨店、娯楽施設などへの影響が甚大ですが、1〜3月期の売り上げはさらに落ち込むと予想されます。
利益が出ない以上、人件費カットに乗り出す企業が出てきても不思議ではありません」(斎藤満氏)

「国民の生命と財産を守る」と繰り返してきた安倍政権。
デタラメにもほどがある。
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2020年03月06日

コロナショック「食の中国依存」露呈した危うさ

コロナショック「食の中国依存」露呈した危うさ
2月2週にはニンニク・タマネギの輸入量激減
2020/03/05 東洋経済オンライン
山田 稔 : ジャーナリスト

新型コロナウイルス感染の歯止めなき拡大で日本列島はもはやパニック寸前の状況に陥っている。
影響は、連日伝えられる感染者数拡大だけではない。
昨秋の消費税増税でGDP大幅減の日本経済に強烈なダメージを与えている。

観光・宿泊関連、運輸、百貨店、製造業、そして株価。
旅館やコロッケ業者、クルーズ船会社が経営破綻するなど、コロナ倒産危機が現実のものとなってきた。
見過ごせないのが食の輸入現場だ。

日本にとって中国は、アメリカに次ぐ世界第2位の農林水産物輸入相手国である。
その依存の実態を明らかにしよう。

中国はアメリカに次ぐ第2の食材供給基地
2019年の農林水産物の輸出はトータルで約9121億円。
輸入合計は9兆5166億円。
圧倒的な輸入大国である。

国別の輸入金額は、
@アメリカ:1兆6470億円
A中国:1兆1911億円
Bカナダ:5694億円の順。

中国のシェアは全体の12.5%となっている(農林水産省「農林水産物輸出入情報」)。
日本の食卓にとって、中国はアメリカに次ぐ、なくてはならない食料供給地なのである。
その中国国内での新型コロナウイルスの爆発的感染と移動制限などで食材の収穫、流通が滞り、中国からの輸入が大きく落ち込んだ。

家庭の食卓でもなじみの深いニンニクと外食産業で欠かせないタマネギの最近の輸入状況を農水省の植物検疫統計で前年の同時期と比べてみよう。

■ニンニク 2019年2月第2週:31万3709s・第3週:11万7863s 2020年2月第2週: 1万0632s・第3週:17万9372s
■タマネギ​(加工) 2019年2月第2週:516万4450s・第3週:317万0860s 2020年2月第2週: 57万9300s・第3週:291万9180s

2月第2週(2〜8日)の落ち込みが強烈だ。
ニンニクは、前年同期比でなんと96%減となってしまった。
タマネギも前年同期比で89%減である。

第2週は、ネギ、ニンジン、ゴボウ、キャベツなども軒並み8、9割減となった。
価格も上昇し、仕入れ値は一時的に通常の7割高になったという。

輸入量は第3週に入って持ち直しているものの、先行きは中国国内の状況次第で不透明だ。
日本は中国からどんな食材を輸入しているのか。

輸入品は肉類、畜産品、野菜、果実、水産物、各種加工品まであらゆる分野に及ぶ。
輸入金額合計に占める中国のシェアは12.5%だが、輸入農林水産物約400品目中、中国がシェアトップは110以上もあり、輸入品目のシェアは25%を超える。
対中依存度の高さを示す数字である。

農水省の農林水産物輸出入情報で年間の輸入金額が大きい品目を調べてみた。

農産物:合計7171億8110万円
水産物:合計3147億9726万円
林産物:合計1591億0282万円
農産物が全体の60%を占めている。

農産物の内訳はどうなっているのか。
もっとも多いのが「野菜・その調製品」で2498億円。
さらに、その細目を見ていくと次のような品目が上位となっている。

●その他の野菜調製品:1084億6035万円
●冷凍野菜:934億2815万円
●野菜缶・びん詰類等:615億7146万円
野菜調製品というとわかりにくい。

農水省の国際経済課に確認したところ「冷凍、加熱、味付け処理したもの」だという。
冷凍野菜などの調製品や野菜缶など加工された形で輸入された農産物の比率が高いことがわかる。

個別の野菜などで輸入額の多いもの
個別の野菜などで輸入額が多いのはどんなものがあるか。

●タケノコ調製品:140億9947万円
●たまねぎ:128億9091万円
●乾燥した豆:110億4001万円
●茶・マテ:78億3481万円
●ネギ:70億9382万円
●冷凍ブロッコリー:49億7820万円
●冷凍枝豆:39億1292万円

スーパーで見かけるタケノコの水煮や冷凍枝豆が上位に入っているのだが、中国産のタマネギはまず見かけない。
それもそのはず、大半が外食業界や惣菜業界での需要なのだ。
「中国からのタマネギは皮がむかれた形で入ってきます。
調理現場で皮むきの手間が省けるわけです。
飲食業界は人件費がアップし、人手が足りない状況が続いていますから、少しでも手間が省ける食材の需要が高い。
皮がむかれた里イモも人気ですね」(外食業界関係者)

食品企業や飲食店の中には「中国産食材は使用しない」と宣言しているところもあるが、人手不足に加え価格競争が厳しい外食業界にとって中国産野菜は必需品となっているようだ。

水産物も中国依存が高い。
中国からの輸入総額3148億円は水産物輸入総額1兆7397億円の18%。
輸入品の代表的存在はウナギとイカだろう。
・中国産ウナギは、生きている活ウナギが182億2520万円で、2位台湾(63億6300万円)の3倍。
加工品の調製ウナギは342億4503万円で、2位台湾(4億2195万円)のなんと81倍。断トツである。
・イカも高シェアだ。
イカ(活・生・蔵・凍モンゴウ含む)は289億9597万円で2位ベトナム(63億5413万円)の4.6倍。
イカ(調製)は268億6219万円で2位ペルー(21億4647万円)の12.5倍となっている。
・マグロ類も輸入額が大きい。
生・冷蔵・冷凍含めた輸入額は241億9889万円で、1位台湾(360億3743万円)に次いで2位。

このほか、中国産がシェアトップとなっている品目は、フグ、ハマグリ、ホタテ貝、貝柱、タラの卵などがある。
近年、サンマやイカの日本近海での不漁が深刻化している。
スルメイカ漁が記録的な不漁となっている函館では、函館港の11月のイカ輸入額が16億1400万円となり、1979年以降で最高となった。

これまでの中国産に加えロシア産が増えているという。
水産加工業者にとって輸入イカの存在は生命線だ。
中国産水産物の需要はスーパーで売られているウナギやアサリ、ワカメなど一般家庭向けだけではない。
回転ずしや居酒屋、中華料理店など外食業界にとってもなくてはならない存在だ。

イカ、ネギトロ、ウナギ、アナゴ、そしてガリや海苔。中国産の食材や加工品を扱っているチェーン店は少なくない。

意外な食材、物品も中国産だった
主だった食材関連の中国からの輸入品目の実情を見てきたが、意外な農林水産物も中国から入ってきている。
シェアトップの品目の中から、拾ってみると……。

羊毛98億2221万円、
カシミヤ山羊の毛11億6293万円、
生糸14億3551万円、
ワッフル・パイ・ケーキ65億3667万円、
梅(調製品)39億9980円、
リンゴジュース67億2137万円、
フレンチマッシュルーム(缶詰)11億1288万円、
こんにゃく20億2661万円、
朝鮮人参56億5263万円、
飼料用ビタミン調製品9億9660万円、
すだれ19億7181万円、
木炭30億3829万円など。

日常生活のあらゆる場面に中国産の食材や製品が組み込まれているのである。
今回のコロナショックで野菜など一部食材で輸入の大幅減と価格上昇がみられたが、事態が長期化して中国産物品の輸入が大きく減るようなことになったら、外食業界はもちろん、スーパーをはじめとする小売店舗の食品売り場、惣菜製造業者らは大きな影響を受けることになる。

それは消費者の食卓、食事の現場にも及んでくる。
すでに食品企業、外食業界などでは中国に代わる調達ルートを探しているというが、輸入依存率、そして中国依存率があまりにも高い現実が変わらなければ、食の危機はいつ起きても不思議ではない。

この先、国際的な資源戦争が懸念される中、日本は食料自給率の引き上げをはじめ、根本的な資源確保対策の構築が必要だ。
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2020年03月07日

「取り立て屋」さながらに生活保護費を召し上げる自治体の変質ぶり

「取り立て屋」さながらに生活保護費を召し上げる自治体の変質ぶり
2020.3.6 ダイヤモンドオンライン
みわよしこ:フリーランス・ライター

生活保護費の不正受給は問題だが どこに向けた対策か
 国であれ地方であれ、政府は強力な権限を持っている。
行政は常に、「全員が賛成しているわけでも納得しているわけでもない」という状況下で、何かを行わなくてはならない。
役所の仕事の1つは、納税したくない億万長者や、建築基準法違反のタワーマンションを建てたいディベロッパーや、生活保護も利用したい年収1000万円超の守銭奴に対して、毅然と「ダメです」と言うことだ。
「ダメ」の根拠は、法律・省令・条例・通知・通達などに示されている。

 特に生活保護の世界では、毅然たる「ダメ」を貫くために、長年にわたって注意が払われてきた。
生活保護の対象になれば、医療サービスなどを含めて、1人あたり年間約200万円の給付を受けることができる。
他人に生活保護を利用してもらって上前をハネる貧困ビジネスも、なかなか美味しい商売だ。

 資金難ではあるけれど愛人を囲っておきたい社長は、愛人に生活保護を受けさせれば、小遣いやプレゼントや旅行の費用だけで維持できる。
行政としては、そういう不適切な生活保護の使い方をさせず、生活保護を必要とする人に確実に提供する必要がある。
少なくとも、名目上はそういうことになっている。

 もちろん、名目だけではない。
不正受給対策は実際に行われ、その体制は年々強化され、今や多くの福祉事務所に警察OBが配置されている。
不正受給の対策に関連する費用は、人件費だけでも膨大な金額になるだろう。

 しかし、もしもケースワーカーが自分の担当する生活保護受給者に対して不法行為を行っており、「不法行為を受け入れなくては保護費を渡さない」と迫り続けているようなことがあれば、そのケースワーカー自身や福祉事務所の「不正受給対策」を信用するわけにはいかないだろう。
そして、それは「もしも」ではなく、筆者が約30年にわたって居住している東京都杉並区で実際に起こった出来事だ。

生活保護費で借金返済 気づきにくい不正受給の罠  
杉並区に住むサクラさん(仮名・68歳)は、病気のため就労を継続できなくなり、2015年から生活保護で暮らし始めた。
当時はローンの残っているマンションに住んでいたが、生活保護費をローンの返却に充てることはできない。
このため、杉並区はマンションの売却を指導した。
サクラさんは指導に応じ、2016年にマンションを売却した。
売却益は366万円だった。

 サクラさんは生活保護が開始されるまで、なんとか自力で頑張ろうと必死の努力を重ねたようだ。
マンションのローンは、親族からの借金を重ねて返済し続けていた。
回復して再び働けるようになるまでの期間が半年未満なら、もしかすると、その選択は「正解」になるかもしれない。
しかし、結局は生活保護以外の選択肢がなくなり、親族からの借金は多額に達していた。
 マンションの売却益を手にしたサクラさんは、そのほぼ全額を、すぐに親族からの借金を返済することに充てた。
ところがサクラさんは、生活保護で暮らしている以上、生活保護基準以上の生活をすることができない。
過去に自ら購入し、ローンを払ってきたマンションの売却益は、生活保護費以外の収入である。
この収入には手を付けず、まず、福祉事務所に「収入申告」を行う義務がある。
いずれにしても、この売却益を返済に用いることはできなかった。
 サクラさんにも不正受給のつもりはなく、売却完了時には福祉事務所に報告をしており、区に対して特段の隠し立てはしていなかった。
そのことは、毎年末に杉並区に提出する資産申告書にも示されていた。
しかし、杉並区は不正受給と判断した。

 この経緯は複雑で、マンション売却益の返還処分と取り消し、保護費に関する返還処分が重なっている。
保護費の返還処分には、不正受給ではないものと不正受給とされたものの2つが含まれる。
いずれにしても、現在のルールでは、原則として返還すべきものである。
ただし、「生活保護開始にあたっての厳しすぎる資産要件」というルールには、見直しが必要かもしれない。
 サクラさんは、2017年2月、東京都に対して不正受給扱いに対する審査請求を行った。
2019年8月、東京都は訴えを棄却したが、2020年2月、サクラさんは処分の取り消しを求めて東京地裁に提訴している。

審査請求の棄却を偽り返還を強要
悪徳商法にも似た杉並区職員の言動  
問題は、審査請求の結果がまだ判明していない段階で、担当ケースワーカーが「もう棄却された」という事実に反する説明をし、サクラさんに保護費の返還を求め、関連する書類への署名捺印を求め続けたことである。
書類は当初、返還義務と金額を承認して返還を誓約する書類であった。
審査請求の棄却後は、保護費からの天引きを認める書類が加わった。

 担当ケースワーカーは、保護費を金融機関振り込みにせず、毎月、福祉事務所に受け取りにくるように求めた。
ちなみに、窓口での保護費の手渡しは、ケースワーカーによる横領などの犯罪につながる可能性があるため、厚労省はなるべく行わせない方針としている。
 むろんサクラさんは、生きるために、保護費を受け取りに行かざるを得ない。
するとケースワーカーは、「書類にサインしないと保護費を渡さない」と、毎回1時間以上粘ったという。

 2019年5月8日の電話のやりとりの録音によれば、ケースワーカーはやりとりの中で、審査請求の結果が「ぱぱんと出て」棄却となっており、「審査庁、小池百合子」の名でそのように記されていると語った。
結果として棄却されたのであるが、その時点ではまだ棄却されていなかった。
女性初の東京都知事となった小池百合子氏は、自分の名前がそのように利用され、働いてきた1人の女性を苦しめることを想定していたであろうか。

保護費を盾にした 「兵糧攻め」という実態
 費用の徴収を急ぐ担当ケースワーカーは、「この件も、もうバシッと結論付けて、次の、たとえば口座振り込みにするとか、あるじゃないですか。
次のステップに行きましょう」と語ったという。
「口座振り込み」が月々の保護費のことであるとすれば、窓口で保護費を手渡ししていた目的は何だったのだろうか。
どうしても、考えざるを得ない。

 さらにこのとき、別の福祉事務所職員が、「応じないと月々の天引きが高くなっちゃいますよ」と口添えしている。
むろん、そんなことはない。
不正受給した生活保護費の返還額の上限については、厚労省が目安を示しており、単身者の場合で5000円である。
 筆者は、やりとりを本記事に記しながら、「この人たちは何者なのだろうか?」と思ってしまう。
ヤミ金の取り立てだろうか。
「腎臓を売れ」と言っていないだけ、まだ本物のヤミ金よりは紳士的なのかもしれないが、福祉の現場で働く公務員とは思えない。
また、「保護費をダシにした兵糧攻め」という表現も思い浮かべてしまう。

 サクラさんは結局、2019年9月に保護費を受け取りに行った際、保護費からの天引きを承諾する書類にサインしてしまった。
このとき審査請求は棄却されていたが、サクラさんは処分の取消訴訟を検討しているところだった。
一部でも保護費を返還すると訴訟で不利になる可能性を考えたサクラさんは、サインするつもりはなかった。
しかし担当ケースワーカーは、「その話は(中略)裁判所でやってください。
ここは生活費を渡して、そのうち1万円を返してもらう場所なんです」と言った。

住むことに恐怖感も 変質した自治体の姿
 サクラさんは、その日は保護費を受け取らずに帰ることにした。
ケースワーカーは「これ(保護費)いらないんですか?」と言ったが、ケースワーカーの手元にはサクラさんの印鑑があった。
窓口での保護費の受け取りの場合、まず担当者に印鑑を渡し、担当者が目の前で受領書に捺印し、保護費とともに印鑑を返す習慣があるからだ。
しかし、サクラさんはまだ保護費を受け取っていない。
当然のこととして、サクラさんは印鑑の返還を求めた。
 ところがケースワーカーは、「私が個人的にお金を取っちゃうことになるから、横領になっちゃうの」「即決で(筆者注:天引き額が)8000円。
もう次だったら、また1万円からの交渉になりますよ」
「今、今日決めたら8000円」などと繰り返し、結局サクラさんに署名捺印させてしまったのである。

 筆者は再び、ため息をついてしまう。
どうしても、地方公務員の言動とは思えないのだ。
少なくとも正規職員なら、東京特別区の採用試験を突破し、人物と学力をそれなりに保障されているはずである。
 もっとも、杉並区が「紛争になりそうな再開発計画があるし、福祉制度を利用希望者から守る必要もあるから、地上げ屋や取り立て屋といった“民間活力“を活用する」という方針をとり、求められる人材の雇用と確保と育成に務めているのなら、その限りではない。

 なお、サクラさんと代理人弁護士は、2020年2月21日、この精神的苦痛に関する損害賠償を求める訴訟を起こした。
要求している損害賠償金は100万円。
付け加えておくと、もしもサクラさんが勝訴して杉並区から100万円が支払われても、収入認定されて杉並区に戻ることになり、サクラさんの手元には残らない。
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2020年03月08日

神戸「教師いじめ」、男性教師2人は懲戒解雇でも45歳「女帝」は停職3か月の不可解

神戸「教師いじめ」、
男性教師2人は懲戒解雇でも45歳「女帝」は停職3か月の不可解
3/6(金) 週刊新潮WEB取材班編集
粟野仁雄(あわの・まさお) ジャーナリスト。

 昨年秋に発覚した神戸市立東須磨小学校の「教員いじめ事件」で、神戸市教委は2月28日、男性教員二人を懲戒免職にするなどの処分を発表した。
“クビ”になったのは蔀俊(しとみ・しゅん)教諭(34)と柴田祐介教諭(34)。
刑事処分も決まらないうちの懲戒免職は異例ではある。

 先立つ21日、弁護士らの調査委員会は報告書を発表し、二人の蛮行を明らかにした。
そこに記されていたのは、テレビ報道などで有名になった「家庭科教室内で『激辛カレーの会」を開き、被害教員を羽交い絞めにして、カレーをスプーンで口元に持って行き食べさせた(2018年9月)』の他にも
「運動会の準備中、頭にボンドや洗濯糊を塗った」「プール掃除中、頭と足を持ってプールに放り込んだ」「釘打ちの時、わざと被害教員の指を金づちで打った」「体育館で(足首を持って体を振り回す)プロレス技をかけた」「被害教員のすね毛を束ねて引き抜き、ライターで焼いた」「頭を押さえて卒業写真に写らないようにした」「給食室前で児童の目前で殴った」「被害教員に女性教員にわいせつなメールを送らせた」…など枚挙に暇がない。「おふざけ」「いたずら」のレベルを超え刑事事案にすべき内容も多い。

 この日夜、同小学校で開かれた保護者説明会で仁王美貴校長(55)が処分を伝え謝罪した。
柴田教諭の「取り返しのつかないことをして反省と後悔しかありません」という保護者への謝罪、「先生のような大人にならないでください」という生徒たちへの言葉を伝えた。

神戸「教師いじめ」、男性教師2人は懲戒解雇でも45歳「女帝」は停職3か月の不可解  
新型コロナウィルスの影響で、保護者らを教室に集め、仁王校長と教頭が別室からライブ中継する前代未聞の説明会。
まさに「保護者の皆さんが感染するのは勝手ですが私には移ささないでくださいね」と言わんばかり。
おまけに2時間もの保護者会も保護者に直接対峙せずに済み、コロナウィルスに感謝といったところか。

 仁王校長は昨年、会見で「校長室が遠くて気づかなかった」ことを強調していた。
校長になったのは昨年春だが、それ以前も同校で教頭として教員にずっと近い位置にいた。
知らなかったはずはない。
加害教員らは職員室内でも堂々と蛮行を繰り返し、激辛カレー事件についても隠すどころか生徒の前で自慢までしていたのだ。
まともな神経なら辞表届を出してもいいはずの現校長の処分は3か月の減給10分の1という軽さだ。

 この事件をきっかけにした同市のハラスメント調査では別の学校で先輩教員が後輩に、蚕のサナギを無理やり食べさせる、丸刈りにするなどの仰天行為があったことも判明した。

神戸の教員たちの程度の低さに言葉もない。
「労働条件がきつい」と敬遠され教員のなり手不足となった結果、採用試験が易しくなりこんな連中でも合格できてしまったのか。

「女帝」と報じられた女性教諭
 さて、市教委の発表で最も違和感を持ったのは、事件発覚後、「いじめの主導的立場」として「女帝」などと散々、報じられた45歳の女性教諭Hの処分だ。
激辛カレー事件では自らはしゃぎながら食べさせ、生徒にも自慢げに話していた彼女は停職3か月にとどまった。

調査委員会の報告では「激辛ラーメン」大会でも無理やり汁を飲ませたりしたとされている。
それだけではない。「日常的に、被害教員を叩く蹴る、ビンタをする。椅子を蹴る」「児童の前で被害教員に『きもい』と言って被害教員の尻を蹴り腹を殴った」など、二人の男と比べると件数は少ないが、信じられない行為が認定されている。

 それにしても学校で教員が教員を罵倒して蹴るなど聞いたこともない。ヤクザなのか。
 H教諭が「指導力がある」と高く評価されていたのが筆者は不思議だった。
28日の会見で長田淳教育長に問うと開口一番、「調査委員会の報告では首謀者とされていません。いろんな報道で黒幕のように言われている。
どこからそんな話が出てきたのか。
そのような事実があれば教えてください」と自信を見せた。

調査委で「一部の報道のようにH教諭が他の加害教員を助長した関係は見られない」と認定したのを錦の御旗にしていた。
そうした報道は「一部」などではない。
ならば昨年、新聞、テレビ、雑誌などで報じられた「女帝」報道はすべて出鱈目かマスコミの捏造だったのか。それを問うと教育長は頷いた。
多少の誇張はあったかもしれないがメディアも事件後、様々な人たちの話を直接、聞いている。

調査委について長田氏が「よく調査してくれた」と強調するのも却って不自然に聞こえた。
 H教諭の評判がよかったのは、保護者会などで「声の大きい」(発言力の強い)保護者の子弟を可愛がり、そうした評判を流布させていたからだと筆者は想像する。
保護者たちには「贔屓の激しい先生だった」という声が多かった。
H教諭は児童の胸ぐらをつかんだり、椅子を引いて転倒させる、などという事案もあった。気に入らない児童だったのだろう。

 しかし、長田教育長は「生徒さんの気持ちを捉える力があったようです。
よく観察していた」などと称えた。
 同教育長は「懲戒審査会では停職1か月としたのを(市教委は)3か月にした。
厳しい対応を取った」と盛んに「厳しい処置」を強調した。
1か月と3か月など大した差ではなかろう。

そもそも3か月停職が厳しいのか。
今後について「H教諭は停職期間が過ぎれば異動させる。
教壇には立たせない」としたが「未来永劫にわたってとは判断できない」の但し書き付き。
彼女は教員免状をはく奪されたわけではなく、「父兄たちから現場復帰の要望が強い」などと世論操作して戻す可能性も高い。

 二人の男性教諭は実名を出しながら、H教諭を匿名にし、驚くほど軽い処分にする市教委の対応は「H教員を守りたい何かがある」と感じさせるに十分だった。
H教諭は教育関係者一族の生まれだ。
父は教育委員会関係者、祖父は市教委の大物、兄二人も教員と教育委員会関係という。
市教委にとって蔀教諭や柴田教諭はもはやどうでもいい存在だったが彼女だけは守らなくてはならなかったようだ。

被害教員の今は  
この小学校、一年毎に校長が代わっている。
前々校長が校長同士の話し合いで教員の人事異動ができるとい 独自の「神戸方式」でH教諭を垂水区の神陵台小学校から招聘した。
次の芝本力前校長はH教諭と男女関係が噂されるほどに大事にした。
「いじめはないな」と被害教諭を威圧し、訴えられないようにしてH教諭を守った。
高圧的態度で「プチヒトラー」と言われ、被害教諭について「あいつは公開処刑や」と言ったり、「俺のメンツをつぶす気か」と懇親会の出席を強要した。

芝本校長はH教諭と同じく停職3か月だけだ。
 蔀、柴田の二人は懲戒免職をまぬかれるものではないが、市教委は世間の目を「アホ男」二人の愚行に向けさせる陰で「女帝」Hを守っているとしか思えない。彼女の親族の教育関係者たちへの「忖度」だろう。

兵庫県警は「暴行罪」などで書類送検する方向で加害教員らを捜査している。
地元記者によれば、ある捜査関係者はH教諭について、「調査委員会の調査とは、全然違う結果になると思いますよ」と話している。

 さて、被害教員の健康状態、精神状態はかなり回復しているという。
調査委の発表時に出したコメントでは、加害者へは「単なるいじりと思うかもしれませんが、やられている側は笑顔でいても辛い思いをしていることをわかってほしい」とし、生徒ヘは「君たちのおかげでもう一度立ち上がろうと思うことができました」と受け持っていた生徒から手紙で励まされたことを喜んだ。

 代理人の奥見司弁護士は「本人は早く復職したいと言っていますが、東須磨小学校へ復職するのは難しいのではないか」と話す。
加害教員らは消えていても仁王校長を含め「見て見ぬふり」の教員仲間たちが残る職場に戻らなくてはならない。

5年生を受け持っているから、4月から6年生になる彼らを再び受け持ってほしいとは思う。
「本人は東須磨小学校に戻りたがっているのですか?」と筆者が長田教育長に聞くと「まだそれは聞いてません」。
すでに事件発覚から半年経っているのに。


粟野仁雄(あわの・まさお) ジャーナリスト。
1956年、兵庫県生まれ。大阪大学文学部を卒業。2001年まで共同通信記者。
著書に「サハリンに残されて」「警察の犯罪」「検察に、殺される」「ルポ 原発難民」など。

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2020年03月09日

YOSHIKI「3.11 はまだ終わっていない」 「みなさんの健康と安全を祈っています」コロナウィルス対策にも支援を表明

YOSHIKI「3.11 はまだ終わっていない」
「みなさんの健康と安全を祈っています」コロナウ ィルス対策にも支援を表明
3/8(日) BARKS

YOSHIKIが、東日本大震災から9年目となるこの3月に、YOSHIKIFOUNDATION AMERICAを通じて、日本赤十字社に1,000万円の寄付を行った。
今回の寄付に際し、YOSHIKIは以下のようにコメントしている。
◆   ◆   ◆
「世界的な規模で新型コロナウィルスが猛威を振るっていますが、2011年に日本を襲った震災の後、苦しみや哀しみの中、日本人一人一人がとった、冷静な行動、助け合いの気持ちが、世界から絶賛されました。

今、自分達に何ができるのか、何をしなければいけないのか、をもう一度考えなければと思っています。
未知のウイルスとの戦い、または長期的な意味では共存なのかもしれないですが、その解決策を模索している間に、僕らが今、どのような行動を取ればいいのか、冷静な判断が必要だと思います。

今、皆さんが行っている経済的なダメージを伴う自粛や、治療薬やワクチンの開発などの研究に対して、国や企業そして僕らも支援できる受け皿となる機関が至急必要なのでは、と思っています。
その場合、自分も支援をさせていただきます。

今は国境を超えて、世界中のこの分野の専門家の人達がそれぞれの情報を共有し、1日も早い事態の終息に務めることが大切だと思います。
そんな中、東日本大震災から9年が経過しましたが、まだまだ復興に向けての支援が必要とされています。
3.11はまだ終わっていません。
復興が進まない地域や、心身の痛みが癒えない方々に対しても、支援が継続的に行われることを願っています。
微力ながら、ファンの皆さんと共に続けているチャリティ活動が、少しでも世の中のために役立つことができれば、と思います。
みなさんの健康と安全を祈っています」  
 ◆   ◆   ◆
自らの基金を通して東日本大震災以外にも世界中で人道的支援を続けているYOSHIKIだが、その積極的な慈善活動と影響力が評価され、2019年末に『Forbes Asia』が発表した“アジア太平洋地域の最も優れた慈善家30人”のひとりに選ばれている。
東日本大震災に対する支援だけでも、
主なところで2011年に愛用のクリスタルピアノのオークション落札額約1,100万円、
X JAPANとして出演したライブイベントの出演料全額、
2015年に石巻で行ったX JAPANの震災復興ライブの収益金約2,800万円、
2016年に復興支援オークションのドラムセット落札額約600万円の寄付を行なっている。

なお、日本赤十字社は、義援金の受付を2021年3月31日(水)まで延長している状況だ。
自身の基金YOSHIKIFOUNDATION AMERICAを2010年に設立して以来、様々な支援活動を行っているYOSHIKIだが、2020年に入ってからも、オーストラリア森林火災の災害救助と復興支援を行っている豪赤十字と、熱帯雨林の保護活動を行っている米レインフォレスト・トラストの保全活動基金に対し、総額10万ドル(約1,000万円)の寄付を行ったばかりだった。

ここ近年の主な支援活動は以下の通り。
2019年
・台風19 号の被災者支援の為、日本赤十字社に対し1,000万円 ・台風15 号の千葉県の被災者支援の為、日本赤十字社に対し1,000万円
・レオナルド・ディカプリオが立ち上げたEarth Allianceによる「アマゾン熱帯雨林基金」へ10万ドル(約1,000万円) ・「京都アニメーション支援金の預かり専用口座」へ1,000万円
・アメリカのマイアミ大学フロスト音楽校へ15万ドル(約1,600万円)
・韓国・江原道山林火災で被災した子供達の支援の為、「ChildFund Korea」へ1億ウォン(約1,000万円)

2018年
・北海道胆振東部地震の際、日本赤十字社に対し1,000万円
・西日本豪雨災害の際、日本赤十字社に対し1,000万円 2017年
・アメリカで発生したハリケーン・ハービーの被災者の為、グラミー賞を主催することで知られるレコーディング・アカデミーのチャリティ財団MusiCares(C)を通じて10万ドル(約1,000万円)

2016年
・熊本地震の際に日本赤十字社に対し1,000万円 その他にも、日本赤十字社、メイク・ア・ウィッシュ財団、米グラミーファウンデーションや小児がんの子供達を支援する米パブラブファウンデーションなど、国内外問わず、継続的な支援を行っている。
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2020年03月10日

サリン犯人扱いを…河野義行さん語る警察の理不尽な自白強要

サリン犯人扱いを…河野義行さん語る警察の理不尽な自白強要
3/9(月)  女性自身

94年6月の松本サリン事件で警察やメディアに犯人扱いされた河野義行さん(70)。
無実を訴え、サリン被害を受けた妻を懸命に看護し、3人の子供を守った。
95年3月のオウム真理教による地下鉄サリン事件で、ようやく疑いは晴れる方向に向かった――。

事件の日、河野さん宅に隣接する駐車場から、オウム真理教信者らが撒いた“サリン”によって、近隣住民ら約600人が重軽傷に。
河野さんの妻・澄子さんを含む8人が死亡する大惨事となった。
真っ先に疑われたのが、第一通報者で、自宅に農薬や写真現像用の薬剤を保管していた河野さんだった。
「(病院に)見舞いにきた長男から、『お父さんが殺人犯にされている』と聞いて、えーっ! という感じですよ。

報道を見たら、NHKや朝日新聞は、『薬品の調合間違えた』と、私が救急隊員に話したと報じていましたし、地元の中日新聞も、私が妻と薬品を混ぜていて『白い煙がぱっと上がった』と。
信濃毎日新聞は、『会社員が関与ほのめかす。家族に“覚悟して”』などと、言ってもない事が記事になっていました。
妻は心肺停止、私も入院して苦しんでいるのに、いったいどうなっているんだと。

後から知ったのですが、メディアは警察関係者が流した、いわゆる“リーク情報”をもとに見切り発車で記事を書いていたんです」
事件から約1カ月後、河野さんは多くの報道陣が待ち構えるなか、退院。
その日から、理不尽な取り調べが始まった。
「警察署に着くなり、いきなりポリグラフ(うそ発見器)にかけられて。

〈取り調べは1日2時間まで〉という医師の診断書は無視され、初日から7時間の取り調べ。
翌2日目には、自白まで強要されました。
角刈りでこわもての刑事が取調室に入ってきたかと思ったら、いきなり〈お前が犯人だ!〉とすごんできたんです」
刑事ドラマのような世界がそこにあった。

「これが自白を促すための捜査なんだろうと感じました。
きっと私を脅した警部も、家に帰ればいいお父さんなんだろうと思いながらね」
緊迫した状況のなか、河野さんは弁護士と戦略を練り、メディアを逆に利用して世論を味方につけるという賭けに出た。
「警察に押収された薬品のリストも家の間取り図も全部メディアに公開して、うちでサリンを作れるのか専門家も呼んで検証してもらいました。

年内逮捕という話もあったので、11月には講演会も開いて無実を訴えました」
年が改まった95年の元日、河野さんの疑いを晴らす大きな出来事があった。
オウム真理教の拠点から、サリンの残留物が検出されたと読売新聞が報じたのだ。

その後、長野県警が松本警察署で記者会見を開いた。
〈河野氏は“被害者”であり松本サリン事件には無関係である〉一連の事件をオウム真理教によるものだと断定した結果だった。

「4月に朝日新聞が紙面に謝罪文を掲載したのを皮切りに、おかしな記事を書いていなかったメディアまで謝罪してね。
この一年間は長かった。
世間を敵に回して、マスコミの取材攻勢を受けながら警察と戦っていたわけですから。
朝、起きたらいつも外にパトカーが止まっていて、妻や子供を守らなきゃ、と」 河野さんは、今でも警察やメディアに厳しい目を向ける。

「中にいる個人が〈これはおかしい〉と思ったら声をあげてほしい。
私の場合もある刑事が〈河野を逮捕したら証拠不十分で公判が持たない〉と上に反対してくれたから逮捕されずに済んだんです」
今も月2回、講演を続ける。
自分のように理不尽な目に遭う人を二度と出さないために――。

「女性自身」2020年3月17日号 掲載
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パンデミック「現実味増した」=新型コロナでWHOトップ

パンデミック「現実味増した」=新型コロナでWHOトップ
2020年03月10日 時事通信  

【ベルリン時事】
世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は9日にジュネーブで行った記者会見で、新型コロナウイルスがパンデミック(世界的流行)に発展する可能性について「脅威はかなり現実味を増した」という認識を示した。

 感染者は100カ国以上で10万人を突破。
テドロス氏は「これほど多くの人々と国々に、ここまで早く広がったのは、厄介な事態であるのは確かだ」と述べた。

一方で、パンデミックとなっても、まだ封じ込めは可能だと強調した。
 WHOは2009年に新型インフルエンザについてパンデミックを宣言。当時は流行状況と必要な対策を6段階で表し、最高の段階をパンデミックとしていたが、その後の制度改正により明確な定義はなくなった。

 このため、パンデミック宣言は国際社会に強い対応を求める象徴的意味合いが強い。
テドロス氏は「ゲームのルールは同じだ」と述べ、パンデミックか否かにかかわらず、各国が最大限の対応を取るよう促した。 【時事通信社】
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東京大空襲で10万人の死者、「3・10」を忘れるな 原爆よりも犠牲者が多かった米軍の非道な「無差別殺戮」

東京大空襲で10万人の死者、「3・10」を忘れるな
 原爆よりも犠牲者が多かった米軍の非道な「無差別殺戮」
2020年03月10日 日本ビジネスプレス
佐藤 けんいち
著述家・経営コンサルタント、ケン・マネジメント代表

 自然災害か人災かにかかわらず、大事件を発生した月日の数字で表すことがある。
2001年の米国の同時多発テロ事件「9・11」や、2011年の東日本大震災と原発事故の「3・11」がその代表であろう。  

まもなく、また「3・11」を迎えることになる。
東日本大震災と福島原発事故からまもなく9年になるのである。
月日がたつのは早いものだ。
猛威を振るっている新型コロナウイルス関連の記事や番組があふれている現在どうしても隠れがちだが、福島の復興の状況が気になるところだ。

 だが、本日3月10日にも大量に死者がでた大事件があったことにも注目してほしい。
ここでは「3・10」と名付けておくが、「3・11」だけでなく、「3・10」についても考えてほしいと思うのである。

いや、この2つの出来事は一緒に考えるべきものかもしれない。
日本の弱みや問題点が集約的にあらわれているからだ。

狙われた東京下町、2時間の空襲で死者10万人
 3・10とは、東京大空襲のことである。
1945年(昭和20年)3月10日、大東亜戦争末期の帝都東京に対して行われた、米軍の大規模空爆による大被害のことである。
夜間の超低空から実行された、焼夷弾による都市攻撃である。
攻撃を行ったのはマリアナ基地から発進したB29であった。

 死者はなんと10万人超、負傷者は4万〜11万人、被災者全体で100万人超となった。
しかも空襲が行われたのは、3月10日の午前0時8分から、空襲警報が解除された午前2時37分までの約2時間たらずのことだった。
まったくの深夜のことであった。

 空襲が集中したのは東京の下町である。
山の手ではない。
米軍は、最初から意図的に東京下町の住宅密集地帯を狙って実行したのである。
 焼夷弾は破壊を目的としていないので爆発はしないが、充填されているナパームなどの焼夷剤が燃焼して攻撃対象を焼き払うことを目的としている。
木造建築が圧倒的であった当時の民家に焼夷弾が被弾すると、一気に火が拡がって投下された地帯が焼け野原になってしまったのである。
posted by 小だぬき at 20:29 | 神奈川 ☔ | Comment(2) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年03月11日

安倍政権が「緊急事態」を宣言したとき、私たちがすべきことは何か

安倍政権が「緊急事態」を宣言したとき、私たちがすべきことは何か
2020.3.10 ダイヤモンドオンライン
上久保誠人:立命館大学政策科学部教授

安倍政権は「緊急事態宣言」を可能にする法案の成立を急いでいる。
安倍政権が私権制限を含む「緊急事態法制」の成立を目指すことについて、納得できない、または不安な国民は少なくないだろう。
そんな人を含めた全ての人に、法案が成立してしまった後こそ本当の「戦い」が始まることを伝えたい。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)

緊急事態宣言を可能にする法改正に 中国・韓国の「入国制限」強化  安倍晋三内閣は、全国の小学校・中学校・高校に臨時休校を要請して以降、新型コロナウイルス対策を矢継ぎ早に打ち出し始めた。
「緊急事態条項」を柱とする既存の「新型インフルエンザ対策特別措置法」の改正を表明。

首相は野党党首と会談し、早期成立へ協力を求めた。
 また、安倍内閣は中国や韓国からの入国者に対し、宿泊施設や医療施設など検疫所長の指定する場所で2週間待機し、公共交通機関を利用しないことを要請した。
発行済みの中国約280万件、韓国約1万7000件のビザ(査証)を無効とし、両国からの航空便の到着も成田国際空港と関西国際空港に限定する、「入国制限」の強化を行う。

 急に動き始めた安倍内閣に対して、賛否入り乱れて百家争鳴状態となっている。
首相の指導力発揮については肯定的な意見もないわけではない。
しかし、これまで「対応が後手に回った」と批判されたことに焦り、首相主導をアピールしたいという狙いが露骨に見られる。
専門家の意見を無視して「唐突」に決定を行ったことで、現場の混乱を招いたと、厳しく批判されている。

 中国、韓国からの入国制限の強化は、既に水際対策を強化する段階が過ぎており、遅きに失したと散々な評価だ。
「韓国の新型ウイルス感染者は516人増の累計5328人、数千人が入院待ち」(ロイター)といった記事を読むに、明らかに医療崩壊を起こしているようにみえる韓国からの入国制限はまだ理解できる。
だが、新たな感染者の公表数が減少傾向の中国からの入国制限は、本当に意味があるのかと疑問視されている。
 また、中国の習近平国家主席の来日延期が発表されたわずか3時間後に中韓からの入国制限強化を発表したことが問題視されている。
中国への「忖度」(本連載第232回)が、国民の生命や健康よりも優先されていたのではないかという疑いが出ているのだ。

全国一斉休校は「結果オーライ」 「緊急事態宣言」の是非は?
 筆者は、前回述べた通り、安倍内閣の新型肺炎対策は、後手に回ったのは確かだろうが概ね適切だと考えている。
首相独断の全国一斉休校の決断も、その決定のプロセスは大問題だが、「結果オーライ」なのだろう(第234回)

 実際、3月8日現在の「感染者(死亡者数)」を確認すると、中国本土8万0895人(3097人)、韓国7134人(50人)、イタリア5883人(233人)、イラン5823人(145人)、フランス949人(16人)に対し、ダイヤモンド・プリンセス号を除く日本は455人(6人)だ(厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の現在の状況について〈3月8日12時時点版〉」)。  

日本は、早期から新型コロナウイルスが上陸していたにもかかわらず、感染者・死亡者が急増していない。
あくまで結果論ではあるが、PCR検査実施を抑制し、医療崩壊を起こさない慎重な方針は、概ねうまく進んでいる。
 また、中国からの入国制限についてだが、前回指摘したように中国からの入国は事実上ゼロに近い状態だった(第234回・P4)
だが、人工衛星が映した情報によれば、中国は工場を徐々に再稼働させつつあるという(Bloomberg Green“Satellite Pollution Data Shows China Is Getting Back to Work”)。
今後、中国人の移動は活発化していくだろう。
中国からの入国制限強化は妥当なタイミングだと思われる。
 そして、「緊急事態宣言」を可能にする立法の是非である。

安倍首相は、民主党政権時の2012年に制定された「新型インフル特措法」が今回の新型コロナウイルスには適用できないというのが政府の解釈だとした上で、「同等の措置を行うことが可能になる立法措置を早急に進める」と表明した。
「新型インフル特措法」がベースだとすると、政府が「緊急事態宣言」を発令すれば、
具体的には都道府県知事が
・「生活の維持に必要な場合を除く、住民の外出自粛」
・「学校、社会福祉施設、興行場(映画、演劇、音楽、スポーツ、演芸などの施設)の施設の使用制限もしくは停止」
・「イベント開催の制限もしくは停止」
・「医療品、食品など物資の売り渡し」を要請できるようになる。

 また、・「臨時医療施設開設のため、土地、家屋の強制使用」
・「国民生活との関連性が高い物資などが価格の高騰や供給不足が生じないような措置」も可能になる。

緊急事態宣言の焦点は 「私権制限」の是非
「緊急事態宣言」を巡る議論の焦点は、「私権制限」の是非である。
「有事」における「私権制限」の導入は、自民党の保守派にとって長年の主張であり「悲願」である。
12年の「自民党憲法草案」に私権制限は明記されている(自民党憲法改正推進本部「日本国憲法改正草案Q&A」)
また、17年10月に行われた衆議院選挙の公約における主要4項目の1つでもある。  

一方、日本社会には「私権制限」に対しては強い反発がある。
かつて民主党政権で「新型インフル特措法」を成立させたことがある立憲民主党・国民民主党は審議には応じる意向だ。
ただし、立憲民主党の枝野幸男代表は「現状は、緊急事態宣言の要件を満たした状況ではない。安易な緊急事態宣言は避ける必要がある」と述べ、
国民民主党の玉木雄一郎代表は「現行法で対応できる」とした上で、「緊急事態宣言を出す場合の事前・事後の国会報告を担保すること」などを求めるなど、私権制限には慎重な姿勢だ。

「新型インフル特措法」の採決の際に反対していた社民党・共産党は、私権制限に対してより厳しい立場だ。
社民党の福島瑞穂党首は、「基本的人権への制限が行政サイドの判断で事実上できてしまうのが最大の懸念事項だ。憲法改正の緊急事態条項の地ならし、雰囲気づくりに使われたら大変だ」と懸念を示した。  
共産党の志位和夫委員長は「安倍政権のもとでの『緊急事態宣言』による私権の制限には国民に疑念や不安が広範にある」と指摘し、「たとえば、施設の使用中止の要請・指示ができるようになる。普通に集まって相談をすることもできなくなる恐れがあります。集会の自由への制約になる」と主張する(しんぶん赤旗「新型インフル特措法『改正』案 志位委員長が会見 国民の不安にこたえた徹底審議が必要 人権制約への歯止めあいまい」)

 識者からも、私権制限について慎重な意見が多く出ている。
例えば、前東京都知事・元厚労相の舛添要一氏は、ツイッターで「歴史に学ばねばならない」と発信。
「民主的選挙で首相となったヒトラーは、ワイマール憲法48条の非常事態の時の大統領緊急命令を使って独裁者となった」と指摘し、「乱用は禁物である」と警鐘を鳴らしている。

「侵略戦争を起こしたならず者国家」 だった歴史を忘れてはならない
 これまでも、「安全保障関連」の法案が政治課題となるとき、保守派は常に「諸外国では当たり前のことだ」と訴えてきた。
確かに、さまざまな国で、戦争や内乱、大災害など、国家が存立の危機にさらされる事態にどのように対処するのかを定めた「緊急事態法制」が設けられている(防衛省 情報検索サービス「解説 諸外国の緊急事態法制」)
だから、「日本も緊急事態法制を定めて、自分の国を自分で守れる『普通の国』になるべきだ」というのが保守派の主張である。

 だが、日本が「普通の国」となるには、簡単には乗り越えられない高いハードルがある。
日本は「かつて侵略戦争を起こした、ならず者国家」であり、日本国憲法が制定されたのは、再び軍事的冒険に走ることがないように抑え込むためであったことを忘れてはならない(第59回)
 言い換えれば、日本国憲法で抑え込まれているから日本は「平和国家」のフリをしているのであって、戦争放棄を定めた「憲法9条」が撤廃される改憲が行われれば、再び「ならず者国家」に戻るのではないかと、近隣諸国や国内の左派勢力から疑われてきたのだ

 要するに、日本政府は先の大戦での過ちによって、基本的に他の民主主義国と比べて国内外で「信頼性」が低いということだ。
かつての自民党政権の指導者は、そのことをよく自覚し、権力・権限の行使には、極めて抑制的であった。
 ところが、近年の自民党は、「ならず者国家」と見なされてきたことに「無自覚」である
むしろ、「他国では当たり前」の暴力装置を自分たちにも持たせろと声高に主張する。
その上、権力の私的乱用を平気で行い、批判されたら開き直ったような態度をとる。
品格のかけらもなく、先人たちがコツコツと築き直してきた国内外の「信頼」を、崩し続けてきたのだ(第233回)

 だから、安倍内閣が私権制限を含む「緊急事態法制」の成立を目指すことについて、納得できない国民は少なくないと思う。
安倍首相に私権制限の強力な権限を行使させるのは危険であり、不安なのだ。
だが、安倍政権は衆参両院で「一強」と呼ばれる圧倒的な多数派を形成している。
国民がどんなに懸念を強めても、数の力の前には無力感を持たざるを得ないように思える。

「緊急事態法制」を持ったときに 見習うべき英国のシステムとは?
 だが、日本国民は安倍内閣が「緊急事態法制」を持つことに、なすすべがないわけではない。
緊急事態法制を持つ国では政府が無制限に権限を行使できているかといえば、そうではないからだ。
 この連載では、英国の「政権交代ある民主主義」が、権力に対する厳しいチェック機能を果たしていることを論じたことがある(第72回)
英国政治の特徴は「密室」での意思決定であり、「交代可能な独裁」だ。

 英国民の民主主義に対する基本的な考え方は「選挙によってある人物なりある党に委ねた以上、原則としてその任期いっぱいは、その人物なり党の判断に任せるべき。
間違っていたら、次の選挙で交代させればいい」というものだ。

英国人は政治の「独裁」を認める一方で、「失政を犯した政権は交代させることができる」ということに、強い自信を持っている。
そして、実際に政権を交代させた豊富な実績を持っている(第9回)

 また、英国には反権力で、非常に批判精神の強いジャーナリズムが存在していることも重要だ
英国は階級社会で、ジャーナリストは伝統的に階級が低く、社会的地位や名誉、財産のない家庭に生まれ、学歴の低い人たちだった。
だから、上流階級出身の権力者に媚びることはなく徹底的な権力批判ができる。
もちろん、現在ではジャーナリストも高学歴者だが、反権力の伝統は今も生きている(第72回・P3)

 例えば、英紙「ガーディアン」は、米中央情報局(CIA)のエドワード・スノーデン元職員から内部資料の提供を受け、米国家安全保障局(NSA)と英政府通信本部(GCHQ)による通信傍受の実態をスクープした。
 デービッド・キャメロン英首相(当時)は、警察を動員して英ロンドンのガーディアン本社のホストコンピューターを破壊する強硬措置に出たが、ガーディアンは「データは世界中に保存してある」と言い放ち、徹底抗戦を貫いた。
 要するに、英国のジャーナリストは権力が言論統制を試みても委縮することはない

たとえ、言論弾圧で500人、1000人と逮捕されようが、会社が潰れてしまおうが、英国のジャーナリズムは権力に屈することはないということだ。
 そして、英国では政権が言論封殺によってジャーナリストを抑え込もうとし、国民がそれを不当な権力乱用と見なした場合、政権は容赦なく次の選挙で敗れ、政権の座を失ってしまう

言い換えれば、政権と国民・ジャーナリズムの間で緊張関係が保たれてこそ、政権は権力・権限を適切に運用することができるのだ。

「記者クラブ」は権力との馴れ合いを ジャーナリストは首相との会食をやめよ
 衆参両院で圧倒的多数派を形成する安倍政権は、私権制限を可能にする緊急事態法制を問題なく成立させるだろう。
しかし、日本のジャーナリズム・国民の戦いがこれで終わりであってはならない。
 権力による情報統制がどんなに強まっても、ジャーナリズムは怯まず権力批判を続けなければならないのだ。
「記者クラブ」は権力との馴れ合いをやめる必要がある
メディア各社の幹部や大物ジャーナリストが安倍首相と会食していたりもするが、こうしたこともすぐにやめるべきだ。

 また、国民も「安倍一強」と弱小野党という構図によって気付いていないが、小選挙区比例代表並立制の定着により、「政権交代のある民主主義」が自らの手中にあることをしっかりと自覚することが重要だ。
 安倍政権が権力の乱用を行ったら、国民は次の選挙で安倍政権を引きずり下ろして、国会で法律を廃止させることは可能なのである。
国民がその厳しさを持ち続けることで政権が緊張感を失うことがなければ、民主主義は守られるのである

私権制限を含む緊急事態法制に 筆者が賛成である理由
 最後に、筆者は日本が私権制限を含む緊急事態法制を持つことに賛成であることを明確にしておきたい。
それは、一般的な賛成派が語る「権力を自由に行使できるようにする」という主張とは一線を画している。

 筆者は「日本が権力を抑制的に行使でき、決して私的乱用に陥らないこと」を証明するために、あえて緊急事態法制を持つべきだと考えている。
 繰り返すが、日本は「ならず者国家」のレッテルを貼られているために緊急事態法制を持つことができないでいた。
そのレッテルをはがすには、緊急事態法制を持ち、かつ決して権限の乱用に陥ることなく、抑制的に運用できることを50年くらい海外諸国に見せ続ける必要がある。

 緊急事態法制を持つことは、「世界で最も権力を抑制的に使える民主国家」としての国際的地位を確立し、二度と国内外から言われなき批判を受けることがないようにするために行うべきだ。
日本の政治家、メディア、国民がその覚悟を持てるかどうかが、何よりもまず問われるべきなのである。
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東日本大震災から間もなく9年、初めて被災地に行って感じたこと

東日本大震災から間もなく9年、
初めて被災地に行って感じたこと
0ロケットニュース24
原田たかし3日前

すべての人にとって平等なのが時計の針。
1分1秒、同じ時を過ごして年老いていくうちに記憶は薄れていく。
しかし、生きていくなかで決して忘れてはいけないことがある。
その1つが東日本大震災だ。

2011年3月11日、宮城県牡鹿半島の東南東沖130kmの海底を震源とした地震が発生した。
黒く巨大な津波が東北地方の日常を飲み込み、沿岸部は壊滅的状況。あれから9年が経とうとしている──。

昨年夏、私は三陸海岸沿いに位置する岩手県宮古市を訪れた。
そこにあったのはごく自然な人々の暮らし。

ただ、復旧して日常を取り戻した街で見られたのが「津波浸水深の表示」だった。
あの痛ましい震災が風化しないように作ったのだろう。
「2011・3・11 東日本大震災 津波浸水深ここまで」というプレートをはじめに発見したのは宮古駅の近く。
海が見える場所ではないにもかかわらず、津波浸水深は大人の腰ほどの位置を示していた。
こんな街中にまで津波が来たのか……と改めて自然の恐ろしさを実感し、驚きを隠せなかったのを覚えている。

・いたるところに津波浸水深
しかしながら、驚きはそれで終わらなかった。
そう、津波浸水深の表示は街のいたるところに設置されており、観光名所としても知られる「浄土ヶ浜」へ移動する途中はもちろん、到着するとさらに目を疑うような爪痕が残っていたのだ。
海が近づくにつれ、津波浸水深は徐々に上昇……そしてついには建物の1Fを丸ごと飲み込む高さに。

浄土ヶ浜は壮大な景色で出迎えてくれたが……
海沿いにあるレストハウスに目を移すと…… 津波は2Fフロアの天井にまで届いていた。

2012年6月に復旧したレストハウス、今ではお土産も売っているが…
2011年3月末に撮影された写真を見ると、2Fフロアのガラスは粉々。
一瞬にして建物を飲み込み、中にあったものもすべてが流された様子も確認できる。
なお、外階段を上ったら展望台に行けるのだが…… 下と上ではまた見える景色が違った。

2F天井部分から見下ろすと、信じられないほど高い津波が襲ってきたことがよく分かる。
当時、浄土ヶ浜の近くで建物2Fはあろうかという防波堤が建設中。
すでに過去の教訓が未来に活かされているのも印象に残った。
わずか数日の滞在ではあったものの、宮古市で体験したことは私にとって忘れられない出来事であった。
映像じゃなく自分の目で見ると、あの日のことを絶対に忘れてはいけないと痛感した次第だ。

・間もなく9年
間もなく東日本大震災から9年が経つが、おそらく当日は各地で黙祷が捧げられると思われる。
発生時刻の午後2時46分、足を止めて記憶を風化させないようにしたい。
日本はいつどこで災害が起きても不思議ではないため、防災の意識を常に持っておこう。
Report:原田たかし
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2020年03月12日

災害時に家族の運命を左右する「備蓄品」、家のどこに保管すべきか

災害時に家族の運命を左右する「備蓄品」、
家のどこに保管すべきか
2020.3.11 ダイヤモンドオンライン(ホームライフ取材班)

2011年3月11日の東日本大震災が発生してから今年で9年。
近年では激しい集中豪雨が頻発し、昨年の台風19号は各地で甚大な被害をもたらしました。
さらに、首都直下地震や南海トラフ地震なども予想されています。
こうした災害から命を守るには、適切な判断や日頃の備えが重要になってきます。

そこで前回に続き、『「防災」のやってはいけない』(青春出版社)から、災害に備えて日頃ができる正しい対策を具体的に紹介します。

家でできる!リビングでの地震対策とは
 いつか来る地震の対策を心がけることは大切ですが、意識し過ぎるとしんどくて、続かなくなってしまうでしょう。
しかし日常のなかでも無理なく地震に備えることは可能です。

たとえば、家の中で地震の揺れから身を守れるのは次のうちどちらでしょうか?

(1)リビングにはクッション、和室には座布団をいつも置いている
(2)すっきりさせたいので、クッションや座布団は置いていない
 正解は(1)。

震度6強や7の激しい揺れが発生したら、這って逃げることも難しくなります。
こういった場合、とにかく頭だけは守りたいところですが、手近にガードできるものがなければ、無防備なままでいなければなりません。
 そこでリビングにクッションや座布団があれば、それを頭にかぶって、危険な落下物からガードできます。
リビングや子ども部屋にはクッション、和室には座布団を出しておくだけOK。
何の手間もかからず、意外に有効な防災対策になるので、やっておかない手はないでしょう。

地震で揺れても割れない食器の重ね方とは
 地震が発生すると、悲惨な状態になりやすいのが食器棚。
コップが倒れて粉々になるのはもちろん、重ねて収納していた皿も揺れでずれ落ちて割れることもあります。

安全性の高い収納方法は次のうちどちらでしょうか?

(1)大皿を一番下にして、次に中皿を置き、その上に小皿の順で重ねる
(2)中皿を一番下にして、次に大皿を置き、その上に小皿の順に重ねる  
正解は(2)。

食器棚の中で、皿は数枚を重ねて収納されることが多いでしょう。
圧倒的多数の人がやっているのが、最も下に大皿を敷き、その上に中皿、さらに小皿という順番で重ねる方法です。
 しかし、じつは揺れると、より広い大皿の上で中皿が、中皿の上で小皿が動きやすく、あっけなく崩れてしまいます。
揺れても皿が動きにくいのは、最も下に中皿を置き、その上に大皿、そして小皿を乗せる重ね方です。
こうすると、大皿が動きにくいため、小皿の動きも小さくなり、地震が起こっても崩れにくいのです。
 かなり変則的な方法ですが、試してみる価値は十分にあります。

サイズの違う皿の間には、キッチンペーパーを敷いておくと、滑り止めになって揺れにくくなるので、この方法も試してみてください。

1週間をしのげる量の食料を気軽に備蓄できる方法
 首都直下地震などの大規模災害を想定すると、被災後1週間をしのげる量の水や食料を備蓄しておくことが望ましいでしょう。
とはいえ、その膨大な量をどのように用意して備蓄しておけばよいのでしょうか?

(1)普段食べるものも備蓄品として、カウントし1週間分を備えておく
(2)災害用の非常食を、常に1週間分備蓄しておく
 正解は(1)。

1週間分の備蓄が必要といわれると、頑張って乾パンをはじめとする非常食を大量に購入し、マンションの収納スペースや家の押し入れに目いっぱい入れておいている人も少なくないでしょう。
 しかし、「備蓄品=防災用の非常食」というわけではありません。
普段の暮らしのなかで食べているレトルト食品や乾麺、缶詰なども備蓄品にカウントしてかまわないのです。

 おすすめは「ローリングストック」という備蓄の仕方。
普段から、レトルト食品などを多めに買っておき、食べたら追加する方法です。
こうすれば、常に相当な量が備蓄できていることになります。
食べ慣れたものを被災時に口にできるというメリットもあり、食のストレスが小さくなって一石二鳥です。

災害時用の備蓄品は家のどこに保管しておくのが正解?
 いざというときの災害に備えてストックしておく備蓄品。
被災したときの使いやすさを考えると、家のどこに保管しておくのがよいのでしょうか。

(1)取り出しやすいように1カ所にまとめて保管しておく
(2)玄関や納戸などに分散して保管しておく  
正解は(2)。

最低でも3日分、大規模災害が予想される地域では1週間分を備蓄すると、先ほど紹介した「ローリングストック」を心がけても、やはりそれなりの量になります。
どこにストックしておくのがいいのでしょうか。
 必要になるのは何年先なのかわからないからと、押し入れやクローゼットの奥などに、まとめて詰め込んでおくケースもあるでしょう。
けれども、1カ所に集約しておくのは問題です。

地震の揺れによって、そこまでの通路がふさがれてしまうと、せっかく用意していた備蓄品をまったく使えなくなってしまうからです。
 こうしたリスクを避けるため、備蓄品は分散して保管しておくのがよいでしょう。
マンションの場合、キッチンや玄関、廊下収納、クローゼットなどに分散させるのがおすすめでです。
一戸建てなら、1階と2階に分けておくと、水害の際にも対応できます。

停電になっても安心な冷凍庫の使い方
 災害時に停電になった時、冷凍庫に保存している食べ物が気がかりになるでしょう。
防災面から見た場合、冷凍庫での保存の仕方が優れているのは次のうちどちらでしょうか?

(1)冷凍庫にはいつも食品をいっぱい詰めている
(2)冷凍庫にはいつも食品を少なめに入れている  
正解は(1)。

地震や台風で停電になった時のことを考えると、冷凍庫内はぎゅうぎゅう詰めにしておくのがよいでしょう。
冷凍庫に食品が詰まっていると、それら自体が保冷剤の役割を果たし、停電後、冷凍状態をより長くキープできるからです。

 これに対して、冷凍庫に入っている食品が少ないと、電源がオフになったあと、庫内の温度が早めに上昇してしまいます。冷凍庫をいっぱいにしておくのは、防災だけではなく、省エネの面からもおすすめなのです。
凍った食品同士が接することにより、効率良く冷やせるので、無駄な電気代がかかりません。

 いつどこで発生するかわからない災害。
もしもの時に正しい判断で行動できるよう、日頃から防災対策を確認しておくことが大切です。
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☀ | Comment(5) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

病院でいい治療を受けるため「避けたほうがいい」言葉遣い

病院でいい治療を受けるため「避けたほうがいい」言葉遣い
2020年03月12日 PRESIDENT Online
東京医療センター 総合内科医 尾藤 誠司

最善の治療を受けるためには、どうすればいいのか。
東京医療センターで総合内科医を務める尾藤誠司氏は「最善の治療は、患者の価値観や希望と、医師の専門知識の両方を考え合わせて実現する。
たとえば『お任せします』とは言わないほうがいい」という??。
※本稿は、尾藤誠司『医者のトリセツ 最善の治療を受けるための20の心得』(世界文化社)の一部を再編集したものです。

■患者と「白衣の人たち」との間に溝がある
私は、都内の総合病院で「総合内科」という看板で医師をしています。
総合内科という診療科名は聞きなれないかもしれませんが、要するに皆さんが体に変調をきたしたときに最初に会う医者、と考えていただければ結構です。
そして、そんな立場で医者を続けている中で感じていることが、医療を受ける主体である患者さんと提供する側である医師や看護師など「白衣の人たち」との間にある、深くて大きな溝のようなものの存在です。

例えば、治療法を選択する場面で、“患者が気をつけたい言葉”の一つが、「お任せします」です。
安易に使うと医師との間に認識のズレが生じ、思わぬ方向に進んでしまう事態になりかねません。
医師の説明を聞き終わると、いよいよ治療法の選択という重大な局面を迎えます。
このとき、患者が医師に対して使いがちだけれど、安易に口に出してしまうと望まない結果を招きかねない危ない言葉が「お任せします」です。

■「自分で考えるのが面倒くさい」のではないか
この言葉が頭に浮かんだら、どのような思いで任せようとしているのかを自分に問いかけたほうがいいでしょう。
つきあいの長いかかりつけ医など、相手への信頼がベースにあり、「この先生なら間違いなく私を、私にとって最善の道に導いてくれるだろう」との確信に基づいて積極的に任せようと思うのか。
それとも「自分で考えるのが面倒くさいから任せてしまおう」「難しくて手に負えないので任せるしかない」など、消極的な動機からなのか……。

たとえば、がんのような重大な疾患で大病院にかかり、まだつきあいの浅い医師と向き合った場合は、自ずと後者のケースが多くなるでしょう。
これは患者さんの“主体性の放棄”にほかならず、治療方針が不本意な方向に進んでしまう可能性があります。
なぜなら「お任せします」といわれた医師は、「患者さんは私の説明をきちんと理解し、私を信頼して任せてくれた」と勘違いし、患者さんにとってではなく医師が最善と思う治療法を迷わず選択することになるからです。

■最善の治療は「患者の価値観」と「医師の専門知識」で実現する
安易に医師に委ねるのでなく、自分自身で最善の決断をするための基本は、時間と心の余裕を持って対応すること。
結論をいつまで待てるかを確かめ、その間に情報や自分の考えを整理し、信頼できる人と相談する期間などを設けることが大事です。
この場合、治療のバリエーションは多いほうが、望ましい道を選べる可能性も広がります。
より多くの選択肢を提案してもらうには、医師に自分の情報を伝えることが必要です

患者さんが医療に関する専門知識や十分な情報を持たないのと同じように、医師には患者さんの仕事や家庭の事情、生きがいや趣味など価値観に関する十分な情報がありません。
それらを医師と共有することで、治療を受けないという道も含めて選択肢が増え、より主体的に医療を受けることができます。

ポイントは、自分が「絶対に嫌だ。これだけは譲れない」と思う事柄や心配事を伝えること。
痛いのは耐えられない、仕事を長期間休むわけにはいかない、食べる楽しみだけは奪われたくない、など。それらは裏を返せば自分が望む状況であり、医師の頭を刺激して「それならこういう方法もあります」と新たな提案がもたらされることにもつながります。
最善の医療は、患者さんの価値観や希望と、医学的専門知識の両方を考え合わせて初めて実現するのです。

■治療に迷った時に集める「4つの情報」

【ケース1】 医師が、手術を前提に詳しく説明をしている……。
できれば切りたくないのだが MRI検査で胸部動脈瘤が見つかったAさん(55歳)。
直径は5ミリ程度で、自覚症状はありません。
医師はパソコンの画面を見せながら、人工血管に置き換える手術法について詳しく説明し始めました。
しかし、Aさん自身は手術の必要性を感じておらず、痛いのが苦手なこともあって極力手術は受けたくないと考えています。

医師の説明内容も専門的で難しかったのですが、そのことよりも手術を前提に話が進んでいくことに大きな不安と不満を感じ、この流れをどう変えたらよいものかと戸惑っています。
患者の心得 「治療を受けないという選択肢」もあることを念頭に置くどんな症状や病気にも、手術を受けない、薬を飲まないなど「治療を受けないという選択肢」が存在します。

ところが医師の説明は、患者さんは治療を受けるのが当然であり、受けないのであれば私のやることはないといったニュアンスで行われる場合が往々にしてあります。
その治療を受ける場合と受けない場合、それぞれのメリットとデメリット(つまり、合計4つの情報)は、知っておくべき重要な判断材料です

不安な気持ちを伝え、手術を受けない場合、今後どのような展開が予想され、病気とどうつきあっていけばいいかを聞いてみるとよいでしょう。

■「緊急度」がわからなくて困った時の対処法
【ケース2】 糖尿病の薬をすすめられた。 どれほど必要な薬なのか、緊急度がよくわからない
健康診断で糖尿病が見つかり、かかりつけ医の指導のもと、生活習慣に気をつけているBさん(52歳)。
しかし思うように効果が上がらず、医師から「そろそろ血糖値を下げる薬を飲み始めてはどうでしょうか。
すぐに処方しますよ」と薬物療法を提案されました。
副作用や、飲み始めると長く続けなければならないことを考えると、薬に頼るのは最終手段としたいBさん。
もうしばらくは食事療法と運動療法を頑張って血糖値をコントロールしたいのですが、病状の緊急度がよくわからず対応に迷っています。

患者の心得
医師の”おすすめ度”を 五段階で具体的に聞いてみる糖尿病、高血圧、高脂血症などの年単位で飲み続ける必要のある薬は、それほど焦って飲み始めなくても問題のないケースが多いものです。
ただ、せっかちな医師は少なくないので、自分がどれほど“のっぴきならない”状況なのかを確かめ、「少し考えたいので2〜3週間先に決めても問題はないでしょうか」などと尋ねることです。

また、医師がその治療法をすすめる度合いを知ることも判断の目安になります。
たとえば薬ならば、「どちらでもいい」を真ん中に「飲まなくてもいい」から「飲むべきだ」まで医師の考える必要度を五段階で聞いてみるとよいでしょう。

■「先生の母親だったら?」がダメな理由

【ケース3】 ある質問が医師を困らせた
認知症で寝たきりの90歳の母親に、胃ろうによる人工栄養を提案されたCさん。
判断に迷い、主治医に「先生の母親だったらどうしますか」と聞くと、困惑されただけで何も答えてもらえませんでした。
患者の心得 「親だったら?」と聞くのは避ける医師には医療の専門家としての意見を聞くべきで、息子(娘)の立場の考えを尋ねることは医療の範囲外だといえます。
多くの医師は答えることに躊躇(ちゅうちょ)するでしょうし、答えたとしても参考にはなりません。
原則として避けたほうがいい質問です。

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尾藤 誠司(びとう・せいじ)
東京医療センター 総合内科医
1965年、愛知県生まれ。
岐阜大学医学部卒業後、国立長崎中央病院、国立東京第二病院(現・東京医療センター)、国立佐渡療養所に勤務。
95~97年UCLAに留学、臨床疫学を学び、医療と社会との関わりを研究。
総合内科医として東京医療センターでの診療、研修医の教育、医師・看護師の臨床研究の支援、診療の質の向上を目指す事業に
関わる。
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posted by 小だぬき at 21:12 | 神奈川 ☀ | Comment(2) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年03月14日

コロナ禍で見えた日本のセーフティネットの実態、結局は生活保護しかない

コロナ禍で見えた日本のセーフティネットの実態、
結局は生活保護しかない
2020.3.13 ダイヤモンドオンライン
みわよしこ:フリーランス・ライター

リーマンショックの教訓は Covid-19にどこまで通用するか
 Covid-19(新型コロナウイルス)の影響による経済的打撃は、過去に類例のないものとなりそうだ。
何よりも、「広範囲・長期間にわたって、先行き不透明」というストレスは、計り知れない

 とりあえず、2009年のリーマンショックと世界同時不況の教訓は、よくも悪くも世界の制度に反映されている。
日本においては、働ける人や働いている人に対する施策の必要性に注目が集まり、数多くの制度改革や制度創設が重ねられた。
 生活保護には、当初から就労継続支援が含まれている。
しかし、それは現在、おおむね忘れられてしまっているようだ。
大蔵省(当時)や財務省の締め付けが厳しくなるたびに、働ける人や働いている人を生活保護の対象から除外する傾向が強まり続け、現在に至っている。

 セーフティネットの構造を考えると、このことには一定の合理性がある。
通常、セーフティネットは「雇用」「公的保険」「公的扶助」の3層モデルで考えられている

雇用のネットで支えられなくなった人は、失業給付や年金といった公的保険で支えられるはずだ。
公的保険でも支えられなかった人は、公的扶助で支えられる。
雇用で支えられるはずの人を、生活保護や児童扶養手当のような公的扶助で支える必要はないかもしれない。
 しかし1990年代のバブル崩壊以後、日本の雇用の劣化は進行するばかりだ。
このことは、雇用・公的保険・公的扶助の各層に対するニーズを重ね、混ぜ合わせた。
もしかすると、どの層にも救われず、「制度の谷間」に落ちてしまう人々が増えてしまっているのかもしれない。

 既存の、あるいは新設された官民の支援策をフル活用して、今回のCovid-19のインパクトに立ち向かうことは可能だろうか。
 まず、セーフティネット3層モデルの最上層の「雇用」から、“使えそう”なものを整理してみよう。

「雇用」を守る政策は 何があれば機能するのか
 2月までに政府が公表した施策は、経営を通じて雇用を守ることに集中していた。
 経済産業省が公表した数々の施策は、「新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ」というパンフに分かりやすくまとめられている。
また厚労省も、雇用調整助成金やテレワーク推進を含む時間外労働等改善助成金に特例を設け、小学校の休校に伴う保護者支援を創設、個人事業者も対象としている。
日本政策金融公庫も、災害時に準じる形で、融資や返済の相談に応じている。

 現在、何らかの形で雇用され報酬を受け取って生活を営んできている人々にとって、最も望ましいのは、現在の雇用と労働環境がそのまま続くこと、できれば改善することであろう。
「トリクルダウンは起こらない」という認識が常識化した現在ではあるが、経営を支えなければ雇用が守られないことも事実である。
 ただし、結果として雇用が守られるためには、「助成金のうち、人件費に使用する比率は最低70%以上(例)のこと」といった条件が必要であろう。
ただし、人件費への確実な使用を求めるのであれば、企業を通さず、本人に直接配布する方が確実かつ効果的かもしれない。

 また融資に関しては、当然ながら、「将来、返済が待っている」という点に関する注意が必要だ。

民間の支援は 小規模事業者を守れるか
 Covid-19の影響に最初に直撃されたのは、飲食・イベント・音楽・芸能・芸術などの分野だ。
「不要不急業種」だからかもしれない。
 アーティストの助成金申請を支援してきた株式会社ペイノアは、今回のCovid-19の影響を受け、2月15日以後にキャンセルされたコンサート等による損害を全額助成する方針を打ち出している。
ただし、将来、予定どおりに開催された場合の収益は、ペイノアのものとなる。

 類似の支援策は、他業種にも見られる。
たとえばフードテックのGigi株式会社は、サービス「さきめし」を開始し、各消費者が応援したい飲食店に対して飲食料を先払いすることを支援している。
営業時間の短縮や休業を迫られ、減収を避けられない状況下で、店舗の賃貸料などの固定費を支払わなくてはならない飲食店にとっては、救いとなるかもしれない。

 しかし筆者は、「根本的な救済になるのだろうか」という疑問も抱く。
ロックバンドのコンサート1回分、あるいは飲食店の1カ月分にあたる収益が現在得られれば、目先の危機を乗り切ることは可能になるかもしれない。
しかし将来、まだ打撃から回復しきっていない状況で、目の前の収入にならないコンサートを1回開催したり、今日の収入にならない1カ月分の来客に飲食物を提供したりすることになる。
とはいえ、打撃の緩和に役立つ可能性は高い。
異なるタイプの支援策との組み合わせがポイントとなりそうだ。

学術研究の特性をフル活用した 「オンライン学会」の試みも
 多様な研究者支援を展開するするアカデミスト株式会社も、ユニークな企画を用意している。
同社は「お蔵入りになってしまった学会発表、オンラインで聞かせて下さい!」というキャッチフレーズで、オンライン配信の「アカデミスト学会」を開催する。
3月は各学会の大会シーズンなのだが、数え切れないほどの大会が中止となったため、急遽企画された。
配信予定は3月14日、オーディエンスから最多の称賛を獲得した研究者には10万円が贈呈されるという。

 研究者たちは、大会中止によって、直接的に経済的損失を被っているわけではなく、むしろ旅費が浮くことになる。
しかし研究費の多くは単年度予算、しかも、よりによって年度末である。
浮いた旅費に関し、多様な負荷が発生するはずだ。
もちろん、「せっかく準備した発表資料と、そのために使った自分や同僚や指導者たちの労力がムダになる」
「大会に行って研究成果を発表し、同じ分野の参加者から質問やコメントをぶつけてもらい、夜は居酒屋で人脈を広げてホンネの議論をする貴重な機会が、失われてしまう」という損失もある。

「既に完成していた発表資料を使って、オンライン配信で幅広い関心層に聞いてもらう」という機会は、どのような意味でも新たなダメージをもたらさず、メリットのみなのだ。
このことは、アカデミスト社の創業者が過去に研究者を志していたことと、大いに関係があるだろう。

 その人・そのグループ・そのお店の業務のスタイルや業種によって、適切かつ有効な支援は、それぞれに異なるのが当然だ。
さらに数多くの支援策が出現し、誰もが「確実に自分の役に立つ組み合わせ」を見いだせるようになることを期待したい。

「最後のセーフティネット」の手前で 社協の貸付を利用することの是非
 とはいえ、事業や職業に関する支援は、間に合わなかったり不足したりしがちだ。
既に、自分と家族の目先のサバイバルが課題になっている多数の人々がいるはずだ。
失業してしまった人々のうち「社保完」の職場にいた人々は、失業給付の対象となる。
しかし、それ以外の場合は、いきなり無収入状態となりかねない。

 国民健康保険料や年金保険料は、新規に支払う前に減免を申請しておくのが賢明だ。
窓口は、自治体の役所となる。
条件は厳しく、自治体によっては条件を公表していない。
その上、計算にあたっては前年の所得が対象となる。
すぐに適用を受けるのは困難かもしれない。
しかしながら、無保険状態の住民が増えると自治体も困るはずだ。
何らかの救済措置の出現を期待したい。

 既に「手持ち資金がない」「もう無保険状態」という場合には、無料低額診療事業を利用することができる。
対象医療機関は、各都道府県のホームページなどで確認できる(例:東京都)。

 並行して、あるいは先立って、目先の現金を確保する必要があるだろう。
生活に困窮する個人を対象として政府が最初に打ち出した方針は、社会福祉協議会の「生活福祉資金貸付制度」の利用を勧めることであった。
しかし、この貸付は低利子ではあるが、審査が非常に厳しい。
安定した収入または確実な保証人が条件となる。
緊急に貸付が必要な状況なら、利用できない可能性が高い。
貸付が受けられたとしても、返済期間中に生活保護が必要になった場合、保護費のやりくりで返済することになる。

長年にわたって東京都内の生活保護の現場で働いてきた田川英信さん(社会福祉士)は、「福祉事務所は、たとえば月あたり3000円ずつでも返済していただくようにお伝えします。
場合によっては、返済していることを確認したり、社協に同行したりすることもあります」と言う。

なんとか就労して生活保護から脱却すると、まだまだ苦しい暮らしの中から返済を続けることになる。
生活保護が視野に入る状況で貸付を利用すると、生活再建がより困難になってしまうのだ。

結局は「生活保護しかない」 日本のセーフティネットの実態
「仕事と収入が復旧するまでの短期間をしのげれば充分」という場合には、生活困窮者自立支援制度に基づく住宅確保給付金(その地域の生活保護の家賃援助の上限まで)、およびハローワークの求職者支援制度による職業訓練と給付(月10万円)の組み合わせが使える。
しかし、住宅確保給付金は、最長で9カ月までしか受け取れない。
ひとり親世帯なら児童扶養手当もあるのだが、それだけで暮らせる金額ではない。
いずれにしても、雇用状況の悪化が継続すると、「結局は生活保護」ということになるだろう。

生活保護に対するニーズは確実に高まっているはずだ。
しかし政府はいまだ、「まず、向こう1年間の保護費として、20兆円を用意しますから、大いに使ってください」とは言ってくれていない。
さらに2018年、生活保護基準が見直され、生活保護の利用資格を自己判断することは困難になっている。
 日本の複雑で不完全なセーフティネットを利用して生き延びるには、練達の専門家による支援がどうしても必要だ。3月13日(金)・14日(土)には「ユニオンみえ」による多言語対応の無料電話ホットライン、15日(日)には、ホームレス総合相談ネットワーク及び困窮者支援にかかわる弁護士・司法書士の無料電話ホットラインが、それぞれ予定されている。

いずれも、対象としている地域は日本全国だ。
必要としていそうな方に、ぜひお勧めいただきたい。
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2020年03月15日

安倍首相、国民に外出自粛要請するも自身はグルメ三昧

安倍首相、国民に外出自粛要請するも自身はグルメ三昧
2020/03/14 NEWSポストセブン

新型コロナウイルスの感染が拡大するなか、安倍晋三首相の要請によって、多くの文化的イベントの開催が中止となり、スポーツは無観客で実施されている。
さらに、全国の小中高校は臨時休校となった。

 しかし、安倍首相には不用意な行動が目立つ。
国民に不要不急の外出を控えることを求めながら、一方で自らは「会合」という外出を繰り返す。
 朝日新聞の首相動静によると、最初の感染者が出た1月15日以降、安倍首相は3月8日までに計35回もの会食や懇親会をこなした。
「国民に不要不急の外出を控えるよう求めた2月16日以降の約3週間で安倍首相は8回、会食に出かけました。
安倍首相がひいきにする超高級ホテル・グランドハイアット東京内にある中国料理店『CHINAROOM』や、東京・六本木の京料理、鉄板焼き『花郷』といった高級店が並びます」(全国紙政治部記者)

 野党から「民間企業は飲み会を自粛している。
首相の危機管理のなさが国民を不安にしている」と批判の声が上がるが、安倍首相は「いわゆる宴会をやっているわけではなく、さまざまなかたと意見交換を行っている」と反論し、どこ吹く風だ。

 一方で、国のコロナ対策の司令塔の役割を担う新型コロナウイルス感染症対策本部への出席時間は驚くほど短い。
「安倍首相が対策本部に出席するのは10〜20分ほどで、全国の小中高校に休校を要請した2月27日の出席時間はわずか10分でした。
国民に外出を控えろと言いつつ、自らは情報交換を名目にグルメ三昧で、対策本部にはわずかな時間しか顔を見せません」(前出・全国紙政治部記者)

 2月29日、コロナ危機に関する初の記者会見を開いた。
「36分ほどの会見後、“まだ質問があります”と挙手する記者がいたのに首相は会見を打ち切りました。
しかも会見で出た質問は、事前に記者クラブから官邸に通告済みという完全な“出来レース”。
今回の危機について国民にしっかり説明しようという姿勢は見られませんでした」(前出・全国紙政治部記者)

 トップ同様、閣僚や側近も危機意識に欠ける。
 小泉進次郎環境相(38才)は2月16日の対策本部を欠席して地元で滝川クリステル夫人(42才)をお披露目する新年会に出席。
そのことについて、野党から謝罪を求められると「謝罪をということだが、私が横須賀に戻った事実は謝罪しても変わらない」と反省の色はなかった。
 さらに、安倍首相が小中高校の休校要請をした2月29日には、茂木敏充外務大臣(64才)が神奈川県内で友人とゴルフに興じている。

「いずれも国内で感染が拡大し、死者も出ていた時期にあたります。
閣僚や側近が先頭に立ってコロナ対策を進める必要があるのに、ゆるみ切った対応ばかりが目立ちました。
“出席時間はわずかだった”“その時間帯は人が少なかった”などと言い訳をしていますが、危機の迫った時期にそんな行動をしたら、国民がどう受け取るかという想像力が決定的に欠けています」(前出・全国紙政治部記者)

 百歩譲って、しっかり仕事をしてくれれば、ゴルフや会食をしてもいい。
だが肝心の医療体制は乏しいままで、国民の不安は増すばかりだ。

 ※女性セブン2020年3月26日・4月2日号
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2020年03月16日

安倍晋三が総理大臣という悲劇…早急に常識人を据えるべき

安倍晋三が総理大臣という悲劇…
早急に常識人を据えるべき
2020/03/14 日刊ゲンダイ
適菜収  作家

 コロナウイルス騒動で東京オリンピックは中止になるかもしれないし、株は大暴落。
そこに国のトップが安倍晋三という悲劇が重なった。
当然、次の総理を急いで決めなければならないという話になってきた。

先日私はツイッターにこう書いた。
〈「だったらどんな総理大臣がいいんだ?」と聞かれました。
私は総理大臣は哲人である必要はないと思っております。
まずは常識人であること。
人の痛みがわかること。義務教育修了程度の学力。
最低限の品性。
そして自分の役職や権限がわかっていること。
「私は立法府の長」とか言う狂人は論外です〉

 このツイートのインプレッションは84万を超え、「いいね」が2万以上ついた。
多くの人が同じことを感じているのだろう。
 さらに言えば、嘘をつかない人がいい。

「移民政策はとりません」「採択されている多くの教科書で自衛隊が違憲であるという記述がある」「土砂投入に当たって、あそこ(埋め立て区域2―1)のサンゴは移している」「(福島の原発事故の)状況は、統御されています」といった膨大な数の嘘とデマを垂れ流すような人物は論外だ。

また、沖縄県沖で米軍のF15戦闘機が墜落した件について「(飛行)中止を申し出た」とか、「北方領土問題を解決した上で平和条約を締結するのが日本の原則だと(プーチンに)直接反論した」などと外交の場においても平気な顔で嘘をつくやつは安全保障上大きな問題がある。

 北方領土の主権を棚上げし、不平等条約の締結に邁進し、皇室に嫌がらせを続け、沖縄を見捨てる国賊・売国奴も総理にふさわしくない。
結局、最初の「常識人であること」という条件に戻ってくる。

無知は怖いが無恥はもっと怖い。
ポツダム宣言と原爆投下の時系列も知らずに「戦後レジームからの脱却」を唱え、表現の自由も法の支配も理解せずに憲法を変えるという究極のバカが7年間も総理をやっていた。

 安倍によると、総理大臣の説明が正しい理由は私が総理大臣であるからであり、総理大臣は森羅万象を担当しているとのこと。
要するにカルトだ。

現実と嘘の間に矛盾が発生すれば、言葉の定義自体を変えてしまう。
「そもそも」「反社会勢力」の定義も勝手に変えてきた。
わが国に残された時間はない。まずは早急に政権の座からバカを引きずり降ろすことだ。
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2020年03月17日

相模原障害者殺傷事件に死刑判決、植松被告の差別思想と安倍政権

*小だぬき・・彼岸の入りで 茨城県水戸市、福島県双葉郡広野町に 1泊で墓参りにでかけます。
両日 ブログ訪問ができないことをお許しください。
相模原障害者殺傷事件に死刑判決、
植松被告の差別思想と安倍政権
2020.03.16 リテラ

 神奈川県相模原市の障がい者福祉施設「津久井やまゆり園」での入所者19人が殺害された事件。
2016年7月に起きた同事件で、殺人及び殺人未遂で起訴された元職員の植松聖被告に、本日横浜地裁で、死刑判決が言い渡された。
本サイトでは事件当時から度々指摘してきたように、この事件は障害者差別に基づいたヘイトクライムだ。
裁判では、この事件の本質である植松被告の差別思想がいかにして生まれたかなど、十分解明されたとは言えない。

 ひとつだけ改めて指摘しておかなければいけないのは、この相模原事件がいまの安倍政権の障がい者切り捨て政策や排外主義と差別を丸出しにする社会状況とけっして無関係ではないということだ。

 植松被告は事件前、衆院議長公邸に「私の目標は重複障害者の方が家庭内での生活および社会的活動が極めて困難な場合、保護者の同意を得て安楽死できる世界です」といった手紙を届け、「(障がい者)ひとりにつき税金がこれだけ使われている」「何人殺せばいくら税金が浮く」などと語っていたことがわかっていた。

 また、逮捕後も「障害者なんていなくなればいい」と供述し、事件から1年経ったころ、時事通信社の取材に手紙で応じ、「不幸がまん延している世界を変えることができればと考えた」と記したうえで、「意思疎通ができない重度障害者は不幸をばらまく存在で、安楽死させるべきだ」と主張していたという。

その後の様々なメディアやジャーナリストなどの取材に対しても、また裁判を通じても、植松被告は同様の差別的主張を繰り返していた。
 しかし、こうした思想をもっているのは植松被告だけではない。
そもそも、小泉政権と安倍政権は障がい者に税金を投入するのは無駄とばかりに、障がい者とその家族に負担増を強いる法改悪を行っているし、石原慎太郎や息子の石原伸晃、安倍政権の重鎮である麻生太郎、安倍政権のブレーンである曽野綾子は、「安楽死させたほうがいい」「いつまで生きているんだ」「税金を使っているのを申し訳なく思え」などと、障がい者や老人に対して信じられないような攻撃を、口にしてきた。

 植松被告のツイッターには、安倍晋三、百田尚樹、橋下徹、中山成彬、テキサス親父日本事務局、ケント・ギルバート、上念司、西村幸祐、つるの剛士、高須克弥、村西とおると、ネトウヨが好みそうな極右政治家、文化人がすらりと並んでいたが、こうした思想に大きな影響を受けたのは間違いないだろう。
 いや、植松被告だけではない。事件後、安倍政権を盲信するネトウヨたちの間では、〈そうやってみんなすぐ植松容疑者が異常だと言い張るけど行動がよくなかっただけで言ってることは正論だと思う〉
〈植松の言ってることはこれからの日本を考えるとあながち間違ってはいない〉
〈穀潰しして連中に使われる予定だった税金を節約して、国の役にたったよ彼は。

弱いものって誰?
 精神障害者はどんなに暴力や暴言はいても罪に問われない無敵の強者だよ?〉といった、植松被告の考え方に賛同する声があふれた。
 さらに、自民党のネット応援部隊であるJ-NSC会員(=ネトサポ)がブログで、「植松が言うように障害者はいなくなるべき」と全面的な賛同を示し、障がい者の子どもがいる野田聖子衆議院議員にまで「自民党の改憲案との矛盾をなくすために障害者の子ども殺せ」と迫っていたことも発覚した。  

本サイトは、相模原事件は、2000年代から始まった、弱肉強食の新自由主義政策と安倍政権下でエスカレートする排外差別主義が合体した結果であり、起こるべくして起きた事件だと考えている。
 そのことを確認するために、事件が発生したあと、本サイトが掲載した検証記事を再録するので、ぜひ読んでほしい。 (編集部)

・「障がい者を殺せば税金が浮く」植松容疑者の狂気は自民党政権の障がい者切り捨て、新自由主主義政策と地続きだ

・障がい者大量殺害、相模原事件の容疑者はネトウヨ? 安倍首相、百田尚樹、橋下徹、Kギルバートらをフォローhttps://lite-ra.com/2016/07/post-2447.html
・ 自民党のネット応援部隊が「植松容疑者の主張は間違ってない」「障がい者は死んだほうがいい」と障がい者ヘイト!https://lite-ra.com/2016/07/post-2459.html
・障がい者抹殺思想は相模原事件の容疑者だけじゃない! 石原慎太郎も「安楽死」発言、ネットでは「障がい者不要論」が跋扈

・安倍首相の盟友・曽野綾子も野田聖子議員に障がい者ヘイト!「子どもの治療に税金を使っているのを申し訳なく思え」https://lite-ra.com/2016/08/post-2463.html
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2020年03月18日

安倍会見の怒号をNHK流さず “やってる感”演出に加担の茶番

安倍会見の怒号をNHK流さず
“やってる感”演出に加担の茶番
2020/03/16 日刊ゲンダイ

 安倍首相の14日の会見に日刊ゲンダイ記者も出席してきた。
前回2月29日の会見より「時間が長かった」「質問が増えた」と報じられてはいるが、“やってる感”が鼻につくのは変わらなかった。
  ◇  ◇  ◇  
安倍首相は例によって、まず用意された原稿を20分以上にわたって読み上げるも、「心をひとつに」「ワンチームで」と抽象論に終始。
かと思うと唐突に、「卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます」と、子どもたちへの祝辞を述べ始めた。

 大規模な経済対策の金額や中身、終息への数値目標などについての具体的な数字はまったく示されず、これでは国民の不安は解消されない。
何のために開いたのかと言いたくなる空虚な内容だったが、この日の会見には“異変”があった。

 通常、首相会見は記者の質問を4つ程度しか受け付けない。
ところが、この日はいつもより長めに質疑応答の時間が取られた。
 8人目の質疑が終わった時点で会見開始から42分ほど。

進行役の長谷川広報官が会見終了を告げると、会見場は騒然となった。
「待ってください!」「おかしいじゃないか!」「これ、記者会見と呼べますか!」
 首相番ではない記者たちから怒号が上がり、質疑は続行。
ちなみに、NHKの中継は怒号の直前に打ち切られ、“アベ友”岩田明子記者のスタジオ解説に切り替わっている。
 結局、計12人が質問したところで「次の予定がある」と会見は終了。
日刊ゲンダイ含め、まだ多くの記者が挙手していたのだが……。

動静を見ると安倍首相はそのまま自宅に帰っているのだからフザケている。

ガス抜きで終わるのか
 2月29日の会見でフリージャーナリストの江川紹子氏らが挙手しているのに30分あまりで会見を打ち切ったことには、世論の批判が集中していた。
メディア系労組の「日本マスコミ文化情報労組会議」は「オープンで十分な時間を確保した記者会見の実現」を求めるネット署名を始め、3万筆超が集まった。
国会でも問題視され、首相官邸の記者クラブが、今回は十分な質疑時間の確保を要請していた。

 しかし、通常より多くの質問に答えたといっても再質問できないのは変わらず、NHKが最後まで中継しなかったから、会見を打ち切って退席する安倍首相の姿や怒号は国民に届かなかった。“
質問に答えてる感”を見せたに過ぎないのではないか。

 午後6時から始まった会見は実質52分ほど。
NHKは午後7時のニュースの時間まで中継できたはずだ。
実際、トランプ大統領との共同記者会見などは予定時間を延長しても最後まで中継してきた。

 脳科学者の茂木健一郎氏はツイッターで<さすがに前回の記者会見に寄せられた苛烈な批判から、幹事社とか、いつもの談合質問以外のニコニコ動画やIWJからの質問も出て、そこでは安倍さんも原稿じゃなくて応答していて、とてもよかった>と評価しつつ、<でも、NHKはそこは中継を打ち切ってスタジオから愚にもつかない解説をしていた>と指摘していた。  

批判をかわすため、質問に丁寧に答えているように見せる茶番シナリオにNHKが協力したと言われても仕方ない。
これがガス抜きで終わるのかどうか、次回会見に注目だ。
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2020年03月19日

安倍首相の会見は「意欲」のみ なぜ肝心の具体策を発表しない?

安倍首相の会見は「意欲」のみ なぜ肝心の具体策を発表しない?
3/18(水) THE PRGE

 安倍首相は3月14日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、記者会見を行いました。
経済への影響が深刻になっていることから、大型の経済対策が発表されるとの観測がありましたが、結局は意欲を示したのみで、具体的なプランは発表されませんでした。
なぜ安倍政権は大型の経済対策に関して消極的なのでしょうか。

 政府はこれまで緊急経済対策の第1弾と第2弾を打ち出していますが、これは緊急措置という位置付けのものであり、一斉休校で経済的に困窮する個人を支援したり、信用不安による連鎖倒産を防ぐことに主眼が置かれています。
したがって、コロナウイルスの感染によって落ち込みが確実な経済を底上げする効果はあまり期待できません。

 14日の会見は、同日に緊急事態宣言も可能な改正新型インフルエンザ等対策特別措置法が施行されたこともあり、大きな発表があると期待されていました。
しかしフタを開けてみると、これまでの経済対策について説明があっただけで、より規模の大きい対策については、意欲を示すにとどまりました。
いつものことではありますが「間髪を入れずに」「笑顔を取り戻すため」「一気呵成(いっきかせい)に」「これまでにない発想」でという情緒的な文言ばかりが並び、肝心の具体策への言及がなかったことから、ネットでは落胆の声が大きいようです。

「五輪開催」「国会対応」を意識か
 安倍政権が大型の経済対策について消極的な理由は2つあるといわれています。

ひとつはオリンピックの開催です。
会見で安倍首相はオリンピックについて「感染拡大を乗り越えて、無事、予定通り開催したい」と述べるなど、中止という選択肢は存在しないことを強調しました。
ここで大型の経済対策が必要という話になってしまうと、事態が深刻であることを認める結果となり、オリンピックの開催問題を避けて通れなくなります。
オリンピックは日本だけで決められるものではありませんから、諸外国の様子を見ながら、少し時間稼ぎをしたいというのがホンネでしょう。

 もうひとつの理由は国会対応です。
今は通常国会の会期中で2020年度予算を審議している最中であり、政府としてはまずは予算を通すことが最優先となっています。
ここで大型の景気対策の議論を行うと、財源の問題などが出てくるため、2020年度予算の審議にも影響を与える可能性があります。
実際、与党の若手議員からは消費税をゼロにするよう求める声が上がっており、こうした動きが活発になるとポスト安倍をめぐる政局につながりかねません。

予算は年度内に成立する可能性が高いですから、その状況を見ながら判断したいとの思惑があるようです。
 しかしながら、今は非常事態であり、政治的な駆け引きをしている場合ではありません。
一般国民の多くは、このような時になぜ、リーダーシップを発揮しないのだろうかと疑問に思っているでしょう。

(The Capital Tribune Japan)
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2020年03月20日

「不謹慎」と他人を叩く人たちが映す深刻な問題

「不謹慎」と他人を叩く人たちが映す深刻な問題
コロナの自粛ムードまとう「同調圧力」の危険
2020/03/19 東洋経済オンライン
真鍋 厚 : 評論家、著述家

新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない。
社会全体が「コロナ不安症」とでも評すべき症状に覆われているかのようだ。
デマや流言の氾濫、買い占めや窃盗の勃発、外国人や医療従事者、感染者への差別などはもはや珍しい現象ではなくなった。

今や「安心」と引き換えに「自由」を犠牲にする政策が日本を含む世界各国で積極的に採用されている。
大規模な集会の禁止や公的施設の閉鎖、移動制限、学校の休校がそれだ。
世界保健機関(WHO)が実施を強く求めている「社会距離戦略」(人と人の接触を極力減らすこと)はまさにその象徴といえる。

だが、この「安心」と「自由」のジレンマこそが新たな問題の温床になりつつある。
日本では、それが休校により屋外で遊ぶ子どもたちに対するクレームという「いびつな形」で噴出した。

3月12日の毎日新聞は、児童らが公園などで遊ぶのは「休校の趣旨に反するのでは」という住民の声が各地の学校や教育委員会に寄せられていると報じた。
千葉県松戸市の教育委員会には「子どもが昼間から公園に集まってうるさい」との苦情もあったという。

「社会の目が、相当厳しくなっている」
3月17日の北海道新聞でも、道内の自治体や学校には2月下旬の休校以降、「温水プールに子どもが集まっていた」「商業施設に生徒がたむろしている」「なんで自粛させないんだ」などの意見が地域住民から寄せられているとし、教諭の「社会の目が相当、厳しくなっているのを感じる」とのコメントを紹介した。

3月9日には文部科学省が「適度な運動や散歩を妨げるものではない」とする見解を示す事態になった。
これは一端にすぎない。
恐らく誰もが多かれ少なかれ政府の要請から派生した「自粛ムード」というあいまいなものを基準に他人の行動を評価し始めているのではないだろうか

政府が国民に不要不急の外出を控えることを求めると同時に、「人が集まる風通しが悪い場所を避けること」を呼びかけたことがきっかけになっているが、「中高生が街中を出歩いているのはけしからん」「この時期にレジャーに行くのは神経を疑う」などといった、自粛ムードを金科玉条のごとく内面化した人々による「不謹慎狩り」の様相を呈してきている。

自粛ムードで気晴らしの機会を奪われた(我慢を強いられていると感じる)人々が、他者の挙動を逐一監視し、摘発や抗議、果ては公的機関に通報して「溜飲を下げる」構図は最もわかりやすいだろう。
しかも、これらの言動は感染症特有の健康不安が後押ししている面がある。

重症化する可能性が高い高齢者などであればなおさらかもしれない。
だが、その肝心の中身はといえば、深く考えずに多数派の意見を押し付ける「同調圧力」のようなものでしかない
先の教諭が語った「社会の目」とは「世間の目」のことである。

クレームをする側は必ずと言っていいほど、自分が「世間の代弁者」であるように振る舞う。
そうなると、その人物の主観から見て「不快」なものはすべて「感染拡大を助長する行為」になりうる。
つまり、自粛ムードが独り歩きすることによって、究極的には、さまざまな工夫によって政府や自治体が課す条件をクリアして、楽しい一時を過ごしている人々にですら「逸脱」のレッテルが貼られる可能性がある。

「ウイルス」ではなく「人に」いら立つ
こういった世間の目を気にする状況に置かれたり、無言のプレッシャーを感じたりする局面がある人は少なくないと思われる。
今後さらなる感染拡大へと突き進むことになれば、自粛ムードをまとった「同調圧力」はより激しいものになることが想像できる。
つまり、わたしたちは心の余裕がなくなればなくなるほど、「ウイルスに」ではなく「人に」いら立つようになるのだ
このような物騒な事態が出来している主な理由は、わたしたちの社会がパンデミックという自然災害(生物災害に分類される)にあまりに無防備だったということが挙げられるが、そもそも長期間にわたって「人間の都合」よりも「自然の都合」に従わなければならない状況に馴れていないことも大きい。

皮肉な話ではあるが、わたしたちの社会を成り立たせている根幹の機能がリスクにさらされているのだ。
「現代生活の根本問題の多くは、各人が自律性と個性を保ち、社会的圧力や歴史的伝統、外来文化、生活技術の巨大な圧力に押しつぶされたくないと思うことから生じている」と述べたのは社会学者のジョック・ヤングである(『排除型社会 後期近代における犯罪・雇用・差異』青木秀男ほか訳、洛北出版)。

わたしたちは自分のことを自分で決められること、自分の人生をコントロールできていてアイデンティティーの感覚が得られることに意義を見いだす。
そのような価値観が尊厳のベースにもなっているからだ。

しかし、わたしたち一人ひとりの「自律性と個性」というものは、現代社会を支えているインフラとそれに基づく生活や慣習が何の問題もなく維持されていることに依存している。
買いたいときに買いたい物が買える、会いたいときに会いたい人に会えるといった「人間の都合」が実現されている環境下で初めて得られる脆弱なものにすぎない。

今回のパンデミックは地震や台風などの物理的な脅威と異なり、必要な行動・コミュニケーションを困難にする心理的な脅威として強く現れる。
自粛ムードはその副産物の1つだ。
「未知のウイルス」であり、まだ特性に不確かな部分も多いことから、どこまで気をつけるべきかの見極めに悩むこととなる。
とりわけ無症状感染者や風邪と見分けがつかない軽症者がいることが事態を複雑にしている。

「安心」と「自由」のジレンマをギリギリで
社会距離戦略の「社会距離」は、文化人類学者であるエドワード・T・ホールが提唱した対人距離に関する概念に由来する。

ホールは、距離帯を
密接距離(相手との距離が0〜45cm)、
個体距離(相手との距離が45〜120cm)、
社会距離(相手との距離が120〜350cm)、
公共距離(相手との距離が350cm以上)の4つに区分した(『かくれた次元』日高敏隆・佐藤信行訳、みすず書房)。

社会距離は、知らない者同士や、ビジネスシーンでの会話で多用されるという。
日本では相変わらず満員電車が容認されているが、欧米では、この社会距離を取るということが目下急務というわけだ。
例えば、アメリカ・カリフォルニア州の一部で3月17日から発効された「屋内退避指示」では、市民は6フィート(約183cm)の社会距離を維持することが求められている。
これは「人間の都合」を「自然の都合」にできるだけ合わせようと試みる、「安心」と「自由」のジレンマをぎりぎりのところで解消しようとする苦肉の策だ。

普段わたしたちは自分たちが動物であることをあまり意識しないが、ウイルスに感染してしまうのは当然わたしたちが動物であり、望むと望まざるとにかかわらず「自然の都合」の中で生きているからだ。
しかもわたしたちは社会的動物であるのでコミュニケーションが必須であり、デジタルデバイスが不足の大半を補うとはいえゼロにすることは困難である。
だが、わずかな接触の機会が新たな感染者を生んでしまう。

現在、「巣ごもり」によるメンタルヘルスへの影響が世界各国で懸念されているが、「自律性と個性」の危機が作り出す不満と嫉妬のスパイラルにも注意が必要だ。
だからこそ軽はずみな対処法は避けなければならない。

「犯人」を見つけてたたき出したりすることである。
公衆衛生学者のハンス・ロスリングらは、そのような人間の傾向を「犯人探し本能」と命名した。
誰かを責めれば物事は解決すると思い込むことであり、ほかの原因に目が向かなくなってしまうために、将来同じ間違いを防げなくなってしまうと警告を発した(ハンス・ロスリングほか『FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』上杉周作・ 関美和訳、日経BP)。

新たな法規制への抵抗感が低くなるかも 新型コロナウイルスの起源をめぐる米中の争いが典型といえよう。
中国はアメリカ軍にウイルスを持ち込んだ疑いをかけ、トランプ大統領などは「中国ウイルス」「武漢ウイルス」と返す。
マクロレベルでは「自然の都合」が世界経済を大きく揺るがし、超大国同士を子どもじみたケンカに向かわせる。

ミクロレベルでは、市民の間で「誰がルールを破ったか」「誰がウイルスをばらまいたか」といった犯人探しに傾倒する。
すでにいくつかのメディアが報道しているが、イスラエルは感染者の行動を追跡することを可能にするため、防諜機関であるイスラエル公安庁がスマートフォンの通信データを傍受できるようにした。
「安心」のために「プライバシー」(個人の秘密)を犠牲にする方向性だが、現在のような疑心暗鬼と恐怖感で張り詰めた空気が継続すれば、新たな法規制に対するわたしたちの抵抗感はかなり低くなるかもしれない。
これは、自発的な「分割統治」(被支配者同士の対立をあおり立てて、支配者への批判をかわす統治手法)のようなもので、国の防疫体制などの方針に対する批判や国民的な議論をも吹き飛ばしかねない。

最悪の場合、危機に乗じて国は「国民の安全」を大義名分に個人の監視を合法化してしまう可能性もあるだろう。
新型コロナウイルスのパンデミックに伴う「安心」と「自由」をめぐるジレンマは、多様な局面においてわたしたちの人間性を試す厳しい試練になろうとしている
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2020年03月21日

自己責任という言葉に踊らされる現代人の哀れ

自己責任という言葉に踊らされる現代人の哀れ
自分さえよければいいという人を作り出した
2020/03/20 東洋経済オンライン
佐藤 優 : 作家・元外務省主任分析官

今から20年前の2000年を超えたあたりから、アメリカ流の新自由主義的な考え方が日本に流れ込んできました。
そのとき、セットで取り上げられたのが「自己責任論」です。
実はこの「自己責任論」が大手を振るう中で、それに振り回される形でさまざまなものを抱え込み、心を病んでしまう人が少なくありません。

「自己責任論」が持つ矛盾と、それを振りかざす論者たちの本当の思惑を知ることで、心の病に陥るスパイラルから脱することが大切です。
拙著『メンタルの強化書』をもとに解説します。

一見、まともに見える自己責任論
まず「自己責任」が声高に言われ始めたのが金融業界でした。
金融自由化で銀行をはじめ金融機関はさまざまな商品を扱えるようになります。
そしてリテール部門、つまり個人顧客の開拓に力点が置かれるようになりました。
ここで「自己責任論」が出てくるのです。

要は、顧客が購入した金融商品が元本割れをした際、その責任を誰が取るのかという問題です。
当時、金融機関はバブル処理がまだ完全に終わっていないところもあり、決して安定している状況ではありませんでした。
まして護送船団方式が解除され、諸外国の金融機関も含めた競争の激化が予想されました。

リテール部門での責任をいちいち追及されたらたまったものではありません。
先手を打って自己責任という言葉を出してきたと思われます。
商品にリスクがあることを自分たちはしっかりと説明する責任を果たす。
購入する方はその説明を聞いたうえで、自分で判断する。
だから結果に対しては「自己責任」を取らなければいけないという論理でした。
一見、至極当然のようにも聞こえるところがミソなのです。

しかし、言葉の意味をしっかりと吟味したら、この「自己責任論」がおかしいことがわかります。
まず、彼らの言う「自己責任」とは、英語で言うところの「own risk」です。
すなわち「危険の負担」であって、責任の概念とは違うものです。

own riskとは「自分で利益を求めようとして自分で決定した場合には、予期せぬ不利益(リスク)も併せて背負わなければいけない」という考え方です。
これは、株式投資などで資本を調達する資本主義の大前提であり、改めて自己責任などという、いかめしい言葉を出す必要などありません。
「商品購入の際はリスクも併せて負担しましょう」ということでいいのです。

「自己責任」は不自然な言葉だ
そもそも「自己責任」という言葉自体がおかしな言葉です。
まず、「責任」という言葉は英語でresponsibilityと訳されますが、そのもとはラテン語のrespondereだとされます。
その本来の意味は、古代ローマにおいては法廷で訴えられた人物が、自分の行為について説明したり弁明したりすることを指しているとされます。
また、近代の市民革命によって市民が自由を獲得した際、「自由」の行使には「責任」が伴うとされました。
「自由なきところに責任なし。責任なきところに自由なし」と言われ、「自由」と「責任」は表裏、セットの概念となりました。

先ほどのラテン語の意味と合わせると、「責任とは自由意思に基づいて行動した結果に対して、その本人が他者に対して説明し、しかるべき対応をすること」というのが、近代以降の「責任」の考え方です。
ですから欧米で責任(responsibility)と言った場合、他者とのコミュニケーションが前提とされます。
なぜなら説明義務が生じるのは本人であることは自明ですから、改めて「自己」をつける必要がないからです。
さらに言えば、「own responsibility」という言葉もありますが、日本語の責任とはニュアンスを異にする独断という意味です。
このような言葉をあえて掲げなければならない状況自体がすでに不自然であり、おかしいのです。

この不自然な言葉である「自己責任」が、やたらと使われた場面がもう1つありました。
それが非正規雇用の拡大の場面です。
小泉内閣のときに行われた労働法の改正で、非正規雇用の枠組みが広げられました。
それによって非正規雇用が一気に増え、ワーキングプアなどの問題が噴出しました。
当時、年末の日比谷公園などに、ネットカフェで寝泊まりする非正規雇用者や路上生活者などが集まり、ボランティアの人たちから炊き出しを受けている光景がニュースになったのを覚えているでしょうか?

そのときにしきりに論じられたのが「自己責任」という言葉です。
彼らは職業選択の自由の中であえて非正規雇用を選んだのであり、その結果に対する責任は当然彼ら本人にあるとされました。
あるいは正社員になれなかったのは自由な競争の中で彼らが努力することを怠り、しかるべき能力を身に付けてこなかったからで、それも自己責任だというものでした。

当時は、職場でもプライベートでも「自己責任でやってくれ」とか、「自己責任をきちんと果たしてください」などと、猫も杓子も「自己責任」という言葉を使っていました。
その言葉とともに使われるようになったのが「努力」という言葉でした。
先ほどのワーキングプアも、結局彼らの「努力」が足りないために非正規雇用で働かざるをえなかったのだから、それは「自己責任」だという論理です。

「自己責任」はいつしか「自助努力」とパラレルで語られるようになりました。
いかにも新自由主義的な発想だと考えますが、ここにこの問題のすり替えがあります。

労働者に責任を転嫁する人たち
そもそも「責任」という概念は「自由」という概念とはつながっていますが、「努力の有無」とはまったく関係のない概念です。
「努力しなかったことの責任が問われる」としたら、それはいったいどういう社会なのでしょう?
 もちろん「努力しなかった結果はしっかりと受け入れなければならない」という道義的な理屈は成り立っても、そこに「責任」が生じるという理屈は、あまりにも飛躍があります。

新自由主義的な競争社会においては、まさにそのような考え方がフィットするのだと思いますが、本質をはき違えた論理だと思います。
努力は本人が自主的、主体的にするものであって、第三者が努力しろと強制する権利は本来どこにもありませんし、努力しなければいけないという義務など存在しないのです。
当然そこに責任など生じるものではありません

「責任」は「自由」と表裏だとしたら、雇用者と被雇用者ではどちらの自由度が高いでしょうか?
 マルクスは、資本家は生産手段を持っていて、だからこそ労働者よりもはるかに有利で自由な立場に立っていると言います。
自由と責任は表裏一体だとするならば、自由度の高い雇用者のほうがより責任が大きくなるということは当然の帰結です。
そう考えるならば、正規雇用と非正規雇用の二極化によって起きるさまざまな出来事に対して、本来責任を持つべきは雇用者であり、資本家の側だという結論になるはずです。

私は、非正規雇用者に向けられた「自己責任論」は、雇用者側が本来取るべき責任を、自由度の少ない弱者に転嫁する「責任転嫁論」にほかならないと考えます。
むしろ「自己責任」を追及されるべきは雇用者側ではないでしょうか?

流動性が高く、いつでも辞めさせることができる安い労働力を必要としていたのは、雇用者のほうです。
自分たちの都合で仕組みを変えておきながら、その責任を被雇用者に押し付けるというのは、二重の意味で厚かましい。
それこそ「下品」なやり方です。

ことほどさように、世の中は下品力あふれる人たちの厚かましい論理が、あたかも正論のようにマスメディアに乗って流布されるのです。
この転倒した世の中で、下品になりきれない多くの人たちが、心を折り、心を病んでしまっています。
ですが、世の中の構造やカラクリを解きほぐし、その欺瞞や嘘を知ることで、少しは心が軽くなるのではないでしょうか? 

少なくとも自己責任論のようなめちゃくちゃなロジックに振り回される必要などないということが、わかっていただけると思います。

神の前で反省し、悔い改めればいい
ちなみに、先ほどの「責任」という考えは、キリスト教ではまったく違った捉え方をします。
キリスト教では人間は堕落した存在であり、到底自由を与えられるべき存在ではありません。
「自由」がもともと与えられていないのですから、「責任」など人間には最初からないということになります。
逆に、自分のしたことに対して「責任」を取ろう、あるいは取れると考えること自体が、愚かで不完全な人間の傲慢なのです。

人間は不完全で愚かであるから、必ずどこかで失敗し、罪を犯します。
その時に神に向かってrespons、すなわち弁明することは許されています。
そして神の前で反省し、悔い改めることだけが求められているのです。
では、人間の罪の責任はだれが負うのでしょう? 
それは人間を作り出した神が自ら負うのです。

神の子イエスがゴルゴタの丘で自らの命を捧げたのは、まさに愚かな人間の罪を贖うためでした。
そんな視点から改めて世の中を見ると、巷間言われている「自己責任論」など、なんともちっぽけでつまらないものに思えてこないでしょうか?
 詳しくは拙著『メンタルの強化書』に書きましたが、愚かな人間は互いに手を取り合うことなく、取ることもできない責任を勝手に作り出し、それによって同胞をおとしめ、自分だけが這い上がろうと足掻いているのです。
なんとも哀れで滑稽な姿に見えてきます。

現代社会の価値観にどっぷりつかっていると、えてしてその価値だけが唯一のように錯覚してしまいます。
しかし、視野を広げ、時間と空間を広げてみれば、考え方や価値観、生き方の解は決して1つではないことに気がつくでしょう。
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2020年03月22日

国鉄民営化という名の「私物化」で地方を切り捨てた自民党<安田浩一氏>

国鉄民営化という名の「私物化」で地方を切り捨てた自民党
            <安田浩一氏>
3/21(土)  ハーバービジネス

「民営化」は何もかも解決する魔法のコトバではない
 電電公社、郵政、国鉄、そして水道……。
80年代の中曽根内閣以来、「民営化」という言葉は、まるでなにもかも解決する素晴らしい魔法のコトバのように取り沙汰されてきた。
しかし、果たして本当にそうだろうか?

 本来、公共サービスとは、国民の生命、安全と直結しており、効率だけで行われるべきものではない。
経済学者の宇沢弘文が喝破したように、それらは「社会的共通資本」であり、市場原理に委ねるべきものではない。

 中曽根政権時代に実行された国鉄民営化では、国鉄が保有していた土地が払い下げるなど、一部企業にだけ利益をもたらす他、住民がいるにも関わらず不採算路線として切り捨てるようなことが罷り通った。

小泉政権が推進した郵政民営化は、国民の資産である郵政マネーをアメリカに売り渡し、郵便遅配・誤配の増加だけでなく、かんぽの不正営業などの弊害をもたらした。

 これらのデメリットは当然、安倍政権が断行した水道民営化でも十分起こり得るものだとして当初から指摘されてきた。  3月21日発売の日本の自立と再生を目指す闘う言論誌『月刊日本 4月号』では、こうした民営化と規制改革の美辞麗句のもとに構築された利権構造にメスを入れ、その弊害について改めて考えるべく、第2特集として「民営化とは私物化するということだ」という特集記事が組まれている。

 今回は同特集から、ノンフィクション作家の安田浩一氏による国鉄民営化についての論考を転載、紹介したい。

民営化のせいで事故が多発
―― 安田さんは著書『JRのレールが危ない』(金曜日)で、国鉄分割民営化がもたらした弊害を明らかにしています。

安田浩一(以下、安田)
国鉄分割民営化を進めたのは自民党です。その際、彼らは国民の支持を得るため、北海道新聞をはじめとするブロック紙や一部全国紙に「国鉄が…あなたの鉄道になります」という広告を掲載しました。
ここには「会社間をまたがっても乗りかえもなく、不便になりません。運賃も高くなりません」、「ブルートレインなど長距離列車もなくなりません」、「ローカル線(特定地方交通線以外)もなくなりません」といったことが書かれていました。  しかし、端的に言って、これらはすべて嘘でした。

現在では会社間の相互乗り入れは減ってきていますし、ローカル線を維持することも難しくなっています。
 特に深刻なのがJR北海道です。
JR北海道は赤字続きで、自社単独では現有路線の半分も維持できないという状況になっています。
その他の地方も同様です。
私は地方出張のたびに痛感しますが、地方では無人駅がどんどん増えており、小さな駅ではみどりの窓口を廃止するのが当たり前になっています。

 民営化の過程で大幅な人員削減が行われたことも問題です。
国鉄時代には「レールセンター」という部署があり、保線作業員たちがレールの破断などを歩いてチェックしていました。
しかし、現在のJRには保線作業員は一人もいません。
保線作業はすべてパートナー会社や協力会社に丸投げしています。
そのため、JRという組織の中で保線の技術が継承されなくなってしまっています。

 どのような理屈をつけようとも、民営化の目的はコスト削減です。
儲かる部門は存続させ、儲からない部門は切り捨てる。
それが民営化の内実です。
しかし、利益を優先すれば、安全性が犠牲になるのは避けられません。

 実際、民営化後のJRでは大きな事故が何度も起こっています。
最大の事故は、2005年に起こったJR西日本の尼崎脱線事故です。
乗客と運転士合わせて107名が亡くなる凄惨な事故でした。
この事故は民営化の弊害を象徴するものでした。

JR西日本は人員削減を行う一方で、利益を最大化するため、運転手たちに効率的な運転を求めていました。
効率的な運転とは、要するに列車のスピードアップです。
それが結果として大惨事をもたらしたのです。

 JR西日本では尼崎脱線事故から一年もたたないうちに再び死傷事故が起こっています。
伯備線の根雨―武庫間の線路上で保線担当者4名が列車にはねられ、そのうち3名が亡くなったのです。
この事故は、きちんと見張り員を配置しておけば防ぐことができました。
しかし、人員削減のため、見張りを立てる余裕さえなくなっていたのです。
まさに民営化がもたらした事故だったと言えます。

国鉄用地に群がるマスコミ
―― 国鉄民営化を実行したのは、昨年亡くなった中曽根康弘総理大臣です。
中曽根総理の狙いはどこにあったと思いますか。

安田:
中曽根は2005年11月にNHKのインタビューで、分割民営化の狙いについてわかりやすい言葉で語っています。
中曽根はおおよそ次のように言っています。
国鉄民営化を実行したのは国労(国鉄労働組合)を潰すためだ
国労は総評(日本労働組合総評議会)の中心だから、いずれ崩壊させなければならない。
それで総理大臣になったとき、国鉄民営化を真剣にやった。
国鉄民営化ができたから、国労は崩壊した。
その結果、総評が崩壊し、社会党が崩壊した。
それは一念でやった」。

 これは当時から言われていましたが、中曽根の目的は労働組合潰しというより、社会党を潰して55年体制を終結させることでした。
その後、実際に社会党はなくなり、55年体制は終結しました
中曽根の思惑通りになったわけです。

 国鉄民営化を進めるにあたって中曽根が重宝したのが、経団連会長を務めた土光敏夫でした。
土光は第二次臨調(臨時行政調査会)の会長に就任し、分割民営化に精力的に取り組みました。
 メディアもこの流れを後押ししました。
土光がメザシを食べている姿をテレビで流し、質素で清廉な人間であるかのような演出を行ったのです。
私からすれば、本当に生活に苦しい人はマクドナルドなどで食事を済まし、むしろ金持ちほどメザシのようなものを食べるのではないかと皮肉を言いたくなりますが、これによって国民の間で土光への支持が高まったことは間違いありません。

―― マスコミの責任は重大です。
なぜ彼らは国鉄民営化を応援したのでしょうか。

安田:
当時の国鉄本社には「ときわクラブ」という記者クラブがありました。
私はそこに所属していた記者に話を聞いたことがあります。
その記者は分割民営化に疑問を感じ、批判記事を書こうとしたそうですが、会社から「分割民営化は批判すべきものではない」と圧力をかけられ、記事にできなかったと言っていました。

 マスコミが民営化に賛成したのは、一つには利権が関係していると思います。
国鉄民営化の結果、それまで国鉄が保有していた土地が民間に払い下げられることになりました。
たとえば、汐留がそうです。
いま汐留には共同通信や日本テレビ、電通などのビルが建っています。
これは綿密な検証が必要ですが、マスコミは分割民営化を応援した論功行賞として国鉄用地をわけてもらったという見方をする人も一部に存在します。

国土の荒廃に手を貸した保守派
――麻生太郎財務相は2017年に衆院予算委員会で、「貨物も入れて7分割して、これが黒字になるか。
なるのは3つで、他のところはならないと当時からみんな言っていたんです。
鉄道関係者なら例外なく思っていましたよ」と述べ、国鉄民営化は失敗だったという認識を示しました。

安田:
「お前が言うな」と言いたくなりますが、発言の内容自体は正しいと思います。
もっとも、分割民営化を考える上で重要なのは、黒字になるかどうかではなく、公共サービスをビジネス化することが適切かどうかという視点です。

 鉄道をはじめとする公共サービスは、人の命や生活に直結します。
それは決してコストがかかるからという理由で廃止したり、切り売りしていいものではありません。
たとえ儲からなかったとしても、全国津々浦々まで必要なサービスを届けるのが「公共」というものです。

 そういう意味では、分割民営化を食い止められなかった責任は、国労にもあると思います。
当初、国労はこの問題を労働問題としてのみ捉え、民営化に反対しました。
確かに労働組合の役割は、組合員の待遇向上や労働環境の改善などを実現することです。
しかし、この問題を労働問題に限定してしまったことで、鉄道の公共性という観点をなかなか打ち出すことができませんでした。
それもまた国民の支持を得られなかった一つの要因だと思います。

 また、保守派や愛国者を自称する人たちにも責任があります。
先ほど述べたように、国鉄分割民営化は鉄路の安全を脅かし、地方に荒廃をもたらしました。
私にしては珍しい物言いかもしれませんが、民営化は国土を破壊し、国の安全を脅かしたのです。

普段は国家の安全保障といったことを声高に唱えている保守派や愛国者が、なぜこのことに無頓着なのか。
理解に苦しみます。
 もちろん一部の保守派は民営化に反対したのかもしれませんが、その多くが国の方針に賛同したことは否定できないでしょう。
いったい彼らは何を保守したのか。
なぜそれで保守派を名乗れるのか。
そんなものは愛国者でもなんでもないということは強調しておきたいと思います。
(3月4日インタビュー、聞き手・構成 中村友哉)

【月刊日本】 げっかんにっぽん
●Twitter ID=@GekkanNippon。
「日本の自立と再生を目指す、闘う言論誌」を標榜する保守系オピニオン誌。
「左右」という偏狭な枠組みに囚われない硬派な論調とスタンスで知られる。

ハーバー・ビジネス・オンライン
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2020年03月23日

社会を分断する「水貧困」を生み出す水道民営化。日本の水道が危ない<岸本聡子氏>

社会を分断する「水貧困」を生み出す水道民営化
日本の水道が危ない<岸本聡子氏>
2020/03/22 ハーバー・ビジネス・オンライン

「社会的共通資本」を外資に売り渡す水道民営化の愚
 公共サービスとは、国民の生命、安全と直結しており、効率だけで行われるべきものではない。
経済学者の宇沢弘文が喝破したように、それらは「社会的共通資本」であり、市場原理に委ねるべきものではない。
 特に「水道」は生命と直結しており、「水は人権」という考え方が広く言われるようになっている。
そのため、世界でも水道民営化の失敗から「再公営化」に踏み切る国が増えているのが現実だ。

 しかし、安倍政権はフランスなどの水メジャーに、日本人の水を売り渡しかねない水道民営化を強行採決した。
 危機に瀕する「日本人の水」について、3月21日発売の日本の自立と再生を目指す闘う言論誌『月刊日本 4月号』では、「トランスナショナル研究所」(TNI)研究員であり、経済的公正プログラム、オルタナティブ公共政策プロジェクトのコーディネーターでもある岸本聡子氏の論考を紹介している。
今回はこの記事を転載、紹介したい。

民営化によって水道料金が高騰
―― 岸本さんは新著『水道、再び公営化! 欧州・水の闘いから日本が学ぶこと』(集英社新書)で、欧州での水道民営化の弊害を明らかにし、再公営化を求める市民の運動にスポットをあてています。
欧州で水道と民主主義の問題に取り組んできた視点から、欧州の水道民営化のどこに問題があったのか教えてください。

岸本聡子(以下、岸本)
欧州の市民の怒りの発端は、水道料金の高騰でした。
民営化すれば経営が効率化し、水道料金が下がるというふれこみで民営化をしたら、実際には料金が上がってしまった。
そんなケースがじつに多いのです
 極端な例ですが、ポルトガルの地方都市では、民間企業が水道料金を以前の4倍に値上げしました。
そのうえ、人口減少により予測利益に到達しなかったといって、市に対して1億ユーロ(約120億円)の補償請求書まで送りつけてきたのです。
 料金の値上げは、そうした人口減少に悩む町だけの話ではありません。

パリ、ロンドン、ベルリンなど大都市でも、大幅な値上げがあり、市民の怒りが爆発し、「再び公営化を!」という運動に火がつきました。
 考えてみれば簡単なことです。
民間企業の場合、株主配当や役員報酬などが発生します。
設備投資をするときも、利率の低い公的融資を受けるのではなく、金融市場から資金を調達し、利息を払っていかなくてはなりません。
これらはすべて公営時代には、不要だったコストです。
当然、その分は水道料金に反映されてしまうでしょう。

 加えて、水道事業は自然独占(消費者は水道管を選ぶことができないため、自然と地域一社独占になること)なので、いったん運営権を手にすれば、その後は競合する他社がいません。
水道料金値上げを目指すのは自明です。

AEしかも、多くの場合、民間水道サービス企業の収支は、会計上のテクニックを駆使して不透明にされています。
 欧州では、噴出するこうした問題に気づいた市民と地方自治体が手を取り合って、再び公営化する方向に舵を切り、すでに178件もの水道事業が民営から公営に戻っています。

 ところが、日本はその逆の道を進もうとしています。
2018年暮れに可決した改正水道法により、上水道の民営化が可能になったのです。

民営化は効率化なのか?
―― しかし、大企業の手によって民営化したほうが事業は「効率化」しますよね?

岸本
その効率はどこからくるものだと思いますか。
要は、人員削減や賃金カット、そして必要な設備投資の先延ばしによって、数字が改善したように見えるだけです。
 あるいは災害対策に必要な経費を削減するわけですよ。
もし災害が起こって水道管にトラブルがおこれば、公営の場合は水道職員が真っ先に現場に駆けつけます。
しかし、民間企業であれば、危険を顧みずに現場に駆けつけるようなことは絶対にしません。
そんなことをしても利益にならないからです。
 結局、民間企業の「効率化」のツケは、その地域にまわってきます。

水道を管理できる人材が自治体から消え、徴収された水道料金は、グローバル資本に吸い取られ、町の外に流れていく。
 水道民営化とはすなわち、人材もお金も失う、地域窮乏化政策です。
そのうえ、さらに高額な水道料金という負担を地域住民全員が強いられるのです。

―― とはいえ、水道料金が多少あがっても、影響は限定的なのではないですか。

岸本
一般に、上下水道料金が世帯収入の3%超えると支払いの負担を大きく感じ、5%を超えると支払いが困難な状態に追い込まれると言われています。
この状態のことを「水貧困」(water poverty)と呼びます。

 水道を完全民営化したイギリスでは、2011年の段階ですでに、収入の3%以上を上下水道料金にあてている世帯が23.5%、収入の5%以上をあてている世帯は1割にも達していました。
今はもっとひどいと思います。(ヨーク大学研究プロジェクト「イングランドとウェールズにおける水貧困」より)

 「水貧困」に苦しむ家庭では、トイレの水洗やシャワーの回数を減らすなど極端な節約を強いられていて、社会参加に支障をきたすほどです。
「水貧困」は、社会の分断につながっていくのです。
 日本でも民営化後の水貧困の蔓延は、リアルな可能性として考えたほうがいい
年間の上下水道料金が9万円、月額で7500円ほどになると、年収300万円の世帯は水貧困に陥りますが、現状月額5000円程度の水道料金が1.5倍になるだけで、そうなるわけです。

国家と結託する水メジャー
―― 欧州で水道民営化への批判が強くなっている中、なぜ日本は周回遅れの民営化に踏み切ったのでしょうか。

岸本
インフラの老朽化に対応する財源がないことが表向きには理由にされていますが、五輪やカジノ、リニアといった無駄なものにお金が使われている現状からすると、これは正しい説明にはなっていません。
 むしろ、水メジャーの視点から見たほうが分かりやすい。
欧州の市場が縮小しているために、新たな市場として日本を見出したという側面が否定できないからです。

欧州では水道民営化のデメリットが知れわたり、新たな民営化の契約を獲得することが難しくなっています。
数十年にわたる契約の満期を迎えた自治体も、契約の更新をせず、再公営化を選ぶようになってきています。
 また、水メジャーにとって日本市場は魅力的。
水質もよく、漏水率もわずか5%前後。
少ない投資で多くの利潤の見込める大都市もたくさんある。
たとえば東京都の水道局の純利益は333億円です。

 さらにいえば、水メジャーは水道以外の公共サービスも狙っています。
彼らは複合企業化しており、交通やゴミ処理、清掃など、様々な公共サービスのアウトソーシングを受注したり、民営化したサービスの経営を手がけたりしています。
日本は欧州に比べて公共サービスの民営化が進んでいないので、新たなビジネスチャンスの宝庫なのです。

 しかも日本政府が民営化ビジネスの市場を7兆円規模にまで拡大させる方針を打ち出しています。
ようは日本の国家の指導層とグローバル資本が結託しているのです。
それに対抗して、市民が地方自治体とともに立ち上がってNOといえるかどうかが分岐点です

奪われた「水への権利」を取り戻す
―― 欧州での再公営化の起爆剤は市民運動にあると指摘なさっていますね。

岸本
ええ。先ほど178件の水道再公営化があったと申し上げましたが、それは間違いなく、「水への権利」を市民の手に取り戻そうとする運動が巻き起こった結果です。
 水は誰にとっても必要なもの。人権なのです。
あるいは、みんなの公共財・共有材〈コモン〉だとも言えます。

民間企業の独占的な経営にゆだねるのではなく、公のものとして、市民も参加しながら管理するという方向を打ち出した運動が欧州では広がってきているのです。
 たとえば、スペインのバルセロナ市では、水道の再公営化を求める市民運動から地域政党「バルセロナ・イン・コモン」が誕生し、市長を二期連続して擁立することに成功しました。
 いま、その勇気ある市長が、水メジャーと必死に闘っています。
それを常に支えているのは、地域の市民運動です。

―― なぜ、中央ではなく、地方から再公営化運動は立ち上がってきたのでしょうか。

岸本
日本でも水道民営化に熱心で地方にそれを押し付けているのは、グローバル資本と結びついた国家のほうですよね?
それは欧州でも同じです。
新自由主義的な中央政府やEUに対して、地方からNOという運動が展開しているのです。
 水道民営化に反対する自治体は、世界中の自治体と協力し、国境を超えた運動に発展してきました。
こうした動きは「ミュニシパリズム」(地方自治体主義)と呼ばれ、さらには「フィアレス・シティ」(恐れぬ自治体)と呼ばれる世界的な自治体運動ネットワークに発展してきました。
恐れぬ、というのは、国家やグローバル資本に対して恐れずNOをつきつけるという意味です。

 2020年現在、フィアレス・シティの拠点数は欧州49都市をはじめ、総計77にも及んでいて、東アジアではデモで北京に抵抗するあの香港が参加しています。
 フィアレス・シティのネットワークでは、市長や市議などが参加して活発に国際会議などを行い、地方から民主主義を活性化し、〈コモン〉である水やエネルギーや交通の運営権を再び自治体の手に取り戻す道を探っています。
 要は闘い方の戦略会議です。

知識も〈コモン〉ですから、お互い、惜しみなく情報と戦略の交換をしています。
そうでもしなければ、グローバル資本と闘うことはできません。
実際、パリとジャカルタとバルセロナが闘っている企業は、同一の水メジャーです。
だから自治体どうしの連帯が非常に有効なのです。

水から変わる日本の民主主義
―― 日本の地方経済の衰退や地方議会政治の沈滞ぶりとはだいぶ違うようで、「フィアレス・シティ」など遠い話に感じます。

岸本
いえ、地方の政治家の汚職が絶えなかったり、経済が苦しかったりするのは欧州も同じです。
むしろ経済の状況はもっと悪い国もあるくらいです。
EUの財政規律のせいで苦しい思いをしているのも地方自治体です。
その財政規律も、民営化に誘う絶好のカードになっています。

 しかし、だからこそ、水という、生きていくためにはどうしても必要なもののためにこそ、市民運動が活発になっているのです。
 日本では「フィアレス・シティ」の運動がほとんど報じられていないので、イメージしづらいだけで、でもその萌芽はいくらでもあります。
 たとえば、安倍政権が新型コロナウイルス感染予防のために学校に対して一斉休校を要請しましたよね。
あまりに唐突で、生活している人たちの姿や地方経済の構造がまったく見えていない。
単に「やってる感」の演出でした。

 そんな稚拙なトップダウンに対して、地方自治体にはむしろ住民の暮らしや生命、そして地元の経済を守ろうという気概がまだ残っている。
実際、多くの自治体の首長が、安倍政権を恐れず、一斉休校に反発しましたよね。
 それがすなわち、「恐れぬ自治体」の精神です。
そういう気概をもった議員や首長たちを、住民は声をあげて支えるべきです。
それがあと少しで、大きな波として可視化されていく気配を感じています。

―― しかし、地方議会も自民党が与党のところが大半です。

岸本
だから、起点は住民でなくてはならないのです。
浜松市の水道民営化反対運動は、地元住民たちが立ち上がって、きちんと成果をあげました。
水道民営化に反対する3万筆以上の署名を集め、民営化検討作業を一時中止に追い込んだ。
 浜松市の市長は自民党系ではありませんが、民営化の旗振り役は市長。
その市長が、民営化反対運動の勢いに怖気づいたのです。
ちょうど市長選の前でした。

 自民党支持であろうが、保守系議員を応援していようが、水という共有材〈コモン〉の運営が民間企業の手にわたったときの弊害の情報を共有できれば、住民は運動に参加していきます。
共有材〈コモン〉を企業の儲けの論理で、好き勝手にされていいのか、という「怒り」が、運動の起爆剤になるからです。  この署名活動を主導したのは「浜松水道ネット」(浜松市の水道民営化を考える市民ネットワーク)という市民グループです。
彼らは地道に勉強会を開き、毎週水曜日には駅前に立ち、商店街で署名を集めました。
選挙前には各政党に質問状を送り、水道民営化に対する立場を聞き出す。
ある意味、古き良き草の根運動を展開し、市政を変えたのです。
これを日本中に広げていきたい。

 水という国民全員にかかわる問題だからこそ、日本の民主主義を変えていく力を秘めていると思うからです。

(聞き手・構成 中村友哉)
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☁ | Comment(4) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年03月24日

森友問題で自殺職員が名指し 財務官僚「全員栄転」の仰天

森友問題で自殺職員が名指し
財務官僚「全員栄転」の仰天
2020/03/23 日刊ゲンダイ

 森友問題を巡り公文書改ざんを強要され、自殺に追い込まれた財務省職員、赤木俊夫さん(享年54)が残した「手記」が永田町を揺るがしている。
特に火がつきそうなのは、赤木さんが名指しで批判した財務官僚が、シレッと「栄転」を果たしていることだ。

 赤木さんが「刑事罰、懲戒処分を受けるべき者」と記したのは、佐川宣寿元国税庁長官(62)以下、財務省本省所属だった6官僚。
いずれも、2017年2月以降、赤木さんが所属していた近畿財務局に改ざんを指示した人物だが、6人中5人の栄転が確認できた。
 さらに当初、改ざんを拒否していた近財内部に対し「全責任を負う」と言ってゴーサインを出したとされる美並義人近財局長(59)には、東京国税局長と“花道”ポストが用意された。
全員、公文書改ざん問題を受け18年6月に懲戒処分されたにもかかわらず、出世街道を爆走しているのだから驚くしかない(別表)

■官邸の「口封じ人事」
 さらに不自然なのは、全員が本省を離れ、改ざん当初の所属先とはほぼ関係のない部署に移っていること。
理財局総務課長だった中村稔氏(53)に至っては駐英公使と、財務省とは全く無関係なポストに就いた。
 国会招致逃れのため、経産省から在イタリア大使館の1等書記官となった元昭恵夫人付職員の谷査恵子氏のケースが思い浮かぶ。

「内閣人事局」を通じて省庁の幹部人事を握る安倍官邸が、再び招致逃れのため、“キーマン”を本省から切り離した可能性も考えられる。

公務員の人事に詳しいジャーナリストの若林亜紀氏はこう言う。
「内閣人事局の承認が必要となるのは部長級以上ですから、6人全員が人事局の承認、または内閣の任命を経ています。
いずれの人も懲戒処分を受けたとは思えない順調な異動を続け、東京国税局長や横浜税関長に出世したり、外国公使といった名誉職につけてもらっています。

それに伴い給料だけでなく退職金も跳ね上がるので、官邸が疑惑についての『口止め料』を税金から手当てした、とみることもできる。
また、退職したり、外国に行ったりしていると、国会で与党が『参考人招致が難しい』と言い訳をしやすくなることも考えられます」

 部下を死に追いやった官僚は甘い汁を吸えるということだ。
全員国会に呼んで“ゲロ”させるしかない。
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2020年03月25日

中止はあり得ないのか 世界が呆れる安倍政権の“五輪命”

中止はあり得ないのか
世界が呆れる安倍政権の“五輪命”
2020/03/24 日刊ゲンダイ

 当たり前の判断だろう。
安倍首相が23日、IOC(国際オリンピック委員会)が今夏の東京五輪の開催延期を決めた場合には受け入れる意向を表明した。
 首相が延期を容認する姿勢を示したのは初めて。

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、IOCは22日に臨時理事会を開き、東京五輪について延期を含めて検討。
その結果、今後4週間以内に結論を出す方針を固めた。
23日の参院予算委で、このIOCの判断を問われた安倍は、22日夜に東京五輪の組織委員会会長を務める森喜朗元首相を通じ、バッハIOC会長に対して中止や規模縮小ではなく、「完全な形で実施すべき」という自らの考えを伝えたと説明。
その上で、「仮にそれ(完全実施)が困難な場合は、アスリートの皆さんのことを第一に考え、延期の判断も行わざるを得ない」と答弁した。
安倍は「中止は選択肢にない」とも言い切っていたが、なぜ中止はあり得ないのか。

同日の参院予算委で、安倍は26日午前0時から4月末まで、米国からの全ての入国者と帰国者に対し、指定場所での2週間の待機と国内公共交通機関の利用自粛を要請する方針を表明していたが、新型コロナウイルスは終息するどころか、感染地域、感染者数ともに拡大する一方なのだ。
このままだと入国を制限する対象国は増えるだろうし、そうなればいつまでも延期などと言っていられなくなるのは明々白々ではないか。

■IOCはボイコットが怖くて開催見直し
<東京五輪を延期せよという批判は絶え間なく、日を追うごとに大きくなっていた。(IOCの決断は)遅過ぎる>
 IOCの東京五輪の延期検討について、米紙USAトゥデー(電子版)は批判的に報じていたが、そりゃあそうだろう。
米国では五輪スポンサーなどに影響力を持つといわれる陸上競技連盟や水泳連盟が開催延期を求め、ブラジル・オリンピック委員会は21日に五輪の1年延期を求める声明を発表。
ノルウェー・オリンピック委員会も20日、IOCのバッハ会長に「新型コロナが世界規模で終息するまで開催すべきではない」と要望する文書を送っていたことを明らかにした。

「7月の開催はできない」(スロベニア・オリンピック委員会のガブロベツ会長)、「(練習のための)施設が閉鎖されれば、選手たちは自身を最高の状態に導くことができない」(英国陸連のカワード会長)と、各国・地域のオリンピック委員会や競技団体は、選手の健康不安や施設封鎖に伴う練習不足から、予定通りの開催については強い懸念を示してきたのだ。
 そして、とうとうドイツではフェンシング男子の代表選手が予定通りに五輪が開催された場合は出場を辞退する――と表明。
カナダのオリンピック委員会とパラリンピック委員会も、現状日程では選手団を派遣しないと宣言した。

オーストラリアのオリンピック委員会も自国選手に「2021年夏」に向けて準備するよう方針を示したというから、IOCや東京五輪組織委がズルズルと結論を先延ばしするほど、カナダやオーストラリアと同じように「ボイコット」する国・地域も出てくるだろう。

「オリンピックの終わりの始まり」(コモンズ)などの著書があるスポーツジャーナリストの谷口源太郎氏がこう言う。
「IOCや日本政府、東京五輪組織委は、選手よりも商業ビジネスを優先するあまり、新型コロナウイルスの感染拡大に目をつぶってきたわけですが、ここにきて選手や競技団体からボイコットを言い出されたため、やむを得ず見直しを打ち出さざるを得なくなったのでしょう。
いわば追い込まれたと言っていい。
これほど恥ずかしい事態はなく、この先、東京五輪が開催されたとしても最悪の負のレガシーとなるに違いないでしょう」

安倍政権の本音は「マネーファースト」
 極限にまで鍛え上げた肉体と、研ぎ澄まされた感覚を競い合う五輪選手にしてみれば、新型コロナウイルスの影響で外出機会が制限され、練習どころか、日常生活すら不便極まりない環境に対して不安やストレスを感じていないわけがない。
だからこそ、各国・地域のオリンピック委員会は開催の再考を求めてきたのであり、この状況がすでにアスリートファーストじゃないのだが、そんな中でも予定通りの五輪開催を強く主張してきたのが他ならぬ日本政府だ。

 23日の参院予算委で、安倍は「今現在、五輪が開けるかといったら、世界はそんな状態ではないと思う」と言っていたが、WHO(世界保健機関)が「パンデミック(世界的大流行)」を宣言した以降も、日本政府はIOCと一緒に通常開催を強く訴えてきた。

16日夜のG7(主要7カ国)の緊急電話協議の後も、安倍は東京五輪について「人類が新型コロナウイルスに打ち勝つ証しとして、完全な形で実現する」と言い放っていたのだ。
IOCの延期検討を受け、橋本五輪相は「中止はないということで正直、ほっとしている」と安堵の表情を浮かべていたが、欧米の人々や選手にとって、「コロナに打ち勝つ証し」とまで言って五輪に固執する日本の総理大臣や、五輪担当相の発言はどう聞こえたのか。

 20日付の米紙ワシントン・ポスト(電子版)は<IOCや日本の当局者が五輪を開催できるかのように振る舞うのは全く無責任だ>と指摘していたが、これが彼らの目に映る異様な今の日本の姿ではないのか。

■コトはヒトの命にかかわる重要問題
 厚労省などによると、日本国内で新型コロナウイルスの感染が確認された人は、武漢からのチャーター機で帰国した人やクルーズ船の乗客・乗員を含めて1800人超。
PCR検査の数が少ないのか、政府が意図的に数値を隠しているのかはともかく、米国やイタリアなどと違って感染者が急激に増えていないのはたまたまだろう。

政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議も、現状は持ちこたえているものの、ある日突然、患者が爆発的に広がる「オーバーシュート」の可能性を指摘している。
つまり、感染者が増えていないのは単なるラッキーに過ぎないのに、一昨日(22日)までは26日からの聖火リレーをランナー参加で強行する方針だったから唖然呆然だ。

 K―1などの大規模イベントを開催した主催者を批判的に報じるテレビも、なぜか聖火リレーの実施に対しては「やめろ」と言わなかった。
それよりも、五輪が中止や延期になったらカネがかかると大騒ぎだからワケが分からない。
「東京五輪開催」という政府や世論の同調圧力に隠れて見えなくなっているのかもしれないが、コトはヒトの命にかかわる重大問題なのだ。

 民間の調査によると、五輪延期で20年の日本全体の経済損失は3・2兆円に上るというが、各国にとっては自国民が生きるか死ぬかの“戦争状態”と同じと言っていいのに、安倍だけが「完全な形で実施」なんて言っているのだから正気の沙汰じゃない。

五輪に関する各国の報道を見ている元外務省国際情報局長の孫崎享氏はこう言う。
「本来であれば、ホスト国である日本の政府や東京五輪組織委から五輪開催の再考を求める意見が出てもおかしくはなかったのに静かなまま。
安倍首相に至ってはG7の首脳が新型コロナ対策で国境封鎖などを議論していたにもかかわらず、『完全な形で五輪実施』などと言っていました。
あの発言で、他国は、日本という国は生命よりも経済を重視する国なのかと受け取ったはず。
各国はかなり呆れた視線で今の日本を見ています」

 人命よりもカネカネカネ……。
安倍政権のホンネはアスリートファーストじゃない。マネーファーストなのだ。
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2020年03月26日

安倍首相、歴代最長政権で何をしてきた? 「嘘ばかり内閣」数々の愚策とお友達人事

安倍首相、歴代最長政権で何をしてきた?
「嘘ばかり内閣」数々の愚策とお友達人事
2020/03/25 週刊女性PRIME [シュージョプライム]

「7年間という長期政権で安倍さんは権力を持ちすぎてしまった。
安倍さんを守るために官僚も大臣も平気で嘘をつき、国民ではなく安倍さんのための政治になっている」  山井和則衆院議員は第2次安倍政権をそう批判する。

 通算すると歴代最長の長期政権となり、権力を恐れる周囲は“忖度”をしていく。
その様子を“まるで戦前の日本だ”と評する人もいるが、この異常な状況はいつから始まったのか。
アベノミクスならぬ“安倍の愚策”を振り返る。

次から次へと政策の看板をかけ替える
「安倍さんは20年にわたるデフレからの脱却を至上命題として掲げ、これを実現するために“金融緩和”“財政出動”“成長戦略”という三本の矢を打ち出しました。
株価が上昇して一見、成功しているように見えたアベノミクスですが、実際はそんなことはありません。
株価対策として年金資金が80兆円以上も使われているのです と、ジャーナリストの須田慎一郎さんがアベノミクス成功の目くらましを解説。

続けて、こう批判する。
「安倍さん同様に長期政権だった小泉(純一郎)さんは、5年半の任期中に郵政改革を、中曽根(康弘)さんは5年で国鉄民営化、佐藤栄作さんは7年半で沖縄返還を実現しました。
政策のよい悪いは置いておいて、実際に掲げた目標はそれぞれ達成しています。
じゃあ、安倍さんは何をしたの? というと標語を発表するばかりで、達成できたのか検証もないまま次から次へと政策の看板をかけ替えている

 これまで安倍首相が掲げた標語は、
《デフレ脱却/三本の矢/女性活躍/地方創生/一億総活躍/働き方改革/人生100年構想/人づくり革命》  などといったもの。

「どれも聞きざわりのよい言葉ですが、例えば“人生100年構想”は定年を70歳まで延長して、さらに年金の普及を遅らせる狙いがあります。
 “働き方改革”は電通の新入社員だった女性が長時間労働で自殺した事件や過労死が取りざたされ急きょでてきたスローガンです。
長時間労働の是正や非正規社員の待遇改善がなされるのかと思いきや、現場企業を混乱させただけで9割の企業が働き方改革に成功していない(クロスリバー調べ)と答えています」(政治評論家の有馬晴海さん)

数の力で押し切り、お友達は次々に出世
「安倍さんがしたことで、最も許せないのは憲法9条の法解釈を変えて集団的自衛権を合憲とし、自衛隊が専守防衛の枠を超えて武力行使できるようにしたこと。
戦争に巻き込まれる国になったんです。
大事なことなのに審議を尽くさず数の力で押し切っていく。まさに“独裁政治”です」  と、前出の山井議員。

そんな“独裁”は数々の犠牲者を生んできた。
 安倍昭恵夫人の関与が囁かれ、国有地が大幅に値引きして売却された森友学園問題。
「籠池夫妻は昭恵さんと出会わなかったら逮捕されなかった。
ほかにも赤木俊夫さんという方が犠牲に。
彼は財務省近畿財務局の上席国有財産管理者という立場で、文書改ざんを強いられ自殺されました。
改ざん前の文書には昭恵夫人の名前が繰り返し出ているのに、安倍さんが国会で“私や妻が関係しているということになれば、間違いなく総理大臣も国会議員も辞める”と言い放ったことが文書改ざんの引き金です」(山井議員)

 さらに52年間どの大学も認められなかった獣医学部を新設する『国家戦略特区』の指定について官邸の働きかけがあったとされる加計学園問題。
いずれも周囲が安倍首相に“忖度”し、起きたこと。
 なぜ安倍首相の“独裁”が続くのか。

前出の山井議員は、 「安倍さんの意向に逆らうものは冷遇され、従うものは好待遇を受けるというお友達人事があるからです。
 例えば、与党内でも安倍さんに批判的だった溝手(顕正前参院議員)さんは、同じ選挙区に河井案里議員をぶつけられました。
河井さんには1億5000万円もの選挙資金が投入され、溝手さんは落選。
溝手さんを落としたことで夫の河井克行さんは法務大臣にまで出世しました」  と、お友達優遇人事を批判する。

しかも案里議員は、その選挙で公職選挙法違反を疑われ夫は法相を辞任。
先日ついに夫妻の秘書が逮捕された。

 山井議員は続けて、 「森友問題だって、自殺された赤木さんの上司の佐川局長は出世しています。
安倍内閣では安倍さんのほうを向いて嘘をつけば出世できるから、みんな言いなりになる
これまで20年近く議員を務めていますが、こんなに嘘ばかりの内閣は初めて!  お友達議員は大臣にふさわしくなくても次々に出世。
口利き問題の甘利明さん、防衛省をあれだけ混乱させた稲田朋美議員も守りました」

 ほかにも“お友達記者”の山口敬之氏によるレイプ事件。
「山口氏に逮捕状が出たにもかかわらず官邸の鶴のひと声で取り下げられたと言われています」(全国紙社会部記者)

ツイッターで『#安倍辞めろ』がトレンド1位に  
昨年から今年にかけても、公費の私物化が問題視された “桜を見る会”問題や、検察幹部の定年延長人事への介入問題など続々と疑惑が。
 いつまで国民はこの“独裁”に振り回されるのだろうか。
「順調にいけば、東京五輪を花道にして来年9月の満期まで首相を務める予定だったと思います。
しかしコロナでの対応が後手にまわり、反感情は高まるばかり。
ある婦人団体は自民党に“一刻も早く総理をお辞めになってください”と手紙を出したそうです」(前出の須田さん)

 ツイッターでも『安倍辞めろ』というハッシュタグがトレンド1位になったが、数時間後には圏外になるという不思議な現象が起きた。
「絶対的権力は絶対的に腐敗する」(イギリスの格言)
 忖度国家に警鐘を鳴らすのにぴったりの言葉だろう。

第2次安倍政権と“独裁”疑惑の数々
■2012年 12月 第2次安倍政権スタート

■2013年 12月 特定秘密保護法を強行、国民の“知る権利”が脅かされることに

■2015年 3月 安倍政権を批判していた元経産省の古賀茂明氏はレギュラー出演していた『報道ステーション』を降板させられたとし、自身の最終出演回に「I am not ABE(私は安倍首相ではない)」と書いた手製のパネルを掲げた
              6月 安倍首相の元番記者の山口敬之・元TBSワシントン支局長に出されていた準強姦逮捕状を握りつぶす(伊藤詩織さんレイプ事件)
              9月 集団的自衛権の一部行使容認を含む安全保障関連法が成立

■2017年 2月 国有地売却をめぐる森友学園問題が発覚。首相の妻・安倍昭恵氏の関与が焦点に
              5月 獣医学部新設をめぐる加計学園問題で「総理のご意向」文書が発覚 
              6月 共謀罪法を強行

■2018年 3月 森友問題で財務省の公文書改ざんが発覚
            12月 沖縄・辺野古への米軍新基地建設で埋め立てを強行

■2019年 7月 衆院選で改憲勢力3分の2を割るも与党過半数を維持/安倍首相に批判的なことを言った一般人が複数の警察官に取り囲まれる事態に
            11月 桜を見る会問題が発覚/'16年当時に安倍首相の元秘書の子息とトラブルを起こした相手が暴行容疑で逮捕されていたことが発覚(通常なら口頭注意ですむようなケンカだったと言われる) 

■2020年 2月 従来の法解釈を変更し、東京高検の黒川検事長の定年を半年延長。官邸に近い黒川氏を次の検事総長にするため!?
              3月 コロナで小中学校一斉休校要請 新型コロナ対策特別措置法施行
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2020年03月27日

剥き出しになった偽善の醜悪 五輪はもう廃止した方がいい

剥き出しになった偽善の醜悪
五輪はもう廃止した方がいい
2020/03/26 日刊ゲンダイ

「2020東京五輪」の1年程度の延期決定を受けて25日、安倍首相はトランプ米大統領と電話会談した。
「人類が新型コロナウイルス感染症に打ち勝った証しとして東京大会を完全な形で開催するため、緊密な連携で一致した」というが、開催都市にもIOC(国際オリンピック委員会)にも関係のないトランプに、なぜ延期を直接伝える必要があるのか。

 五輪運営費の大部分を占める巨額の放映権料は、米国のテレビ局が支払っている。
来年8月に予定されていた陸上の世界選手権は米国開催だ。
今後の日程調整には米国が大きな影響力を持つ。

 加えてトランプは今月13日、いち早く「1年延期」を口にしていた。
同じ延期でも“年内”では自らの11月の大統領選に絡むから避けたい。
トランプが電話会談で1年延期を「素晴らしい決定だ」と賛同したのは、「シンゾー、俺の言う通り、よくやったぞ」というお褒めの言葉だったのか。

「スポーツと選手を政治的または商業的に不適切に利用することに反対する」とうたう五輪憲章などどこへやら、だ。
 そんな五輪の汚れた正体は今回の中止・延期騒動で嫌というほど露呈した。
アスリートファーストとうそぶきながら、安倍もIOCのバッハ会長も「予定通りの開催」に固執。
コロナ禍がアジアから欧米、そして全世界へと拡大し、選手の健康や安全を考えれば練習どころではない。

 とても今夏に五輪など開けないのは火を見るより明らかなのに、延期・中止の決断をズルズル先延ばしにした。
 我慢の限界に達した各国オリンピック委員会や当事者の選手から悲鳴が上がり、「今夏なら選手を派遣しない」と言い出す国まで出てきて、仕方なく延期を決めたわけだが、五輪憲章に従えば「2020年内の開催」が絶対だ
それが無理なら中止しかないのに、延期としたのは、安倍の政治的メンツとIOCの懐事情
IOCにとっては放映権料、スポンサー料などカネが入ってこないと今後の運営に支障を来すからだろう。

■延期はマネーファースト
 招致段階では7340億円だった大会経費は、どんどん膨れ上がり、大会組織委員会の公式発表でも今や1兆3500億円。
会計検査院は関連経費を含めれば3兆円を超えると試算している。
これに延期に伴う追加費用が加わることになる。
一体、誰が負担するのか。

 バッハ会長は「人類の生命を守ることが大切。
財政などは最優先事項ではない」なんてカッコつけていたが、マラソン開催地の札幌変更でのゴタゴタで分かる通り、IOCはカネを出す気などさらさらない。
 既に組織委は追加費用を3000億円規模と見積もっている。現状の270億円の予備費ではとても足りないし、金額はさらに膨らみかねない。
スポンサー企業は延期決定に「さらなるスポンサー料を取られるのかが心配」とか言っているらしい。
 負担は国か東京都か。いずれにしても税金が使われる可能性が高いのだ。

 そもそも、裏金でIOC委員の親族を買収して招致した疑いのある金満五輪だ。
そうした暗部に目をつぶり、スポンサーとして関わる新聞・テレビは、「中止にならず希望が出た」「来年の聖火リレーも、今年決まっていた人が優先だからよかった」などと延期による沈滞ムードの払拭に躍起だ。

 アスリートファーストの偽善と反吐が出るような商業主義。
東京五輪に関し「ブラックボランティア」の著書がある作家で広告代理店出身の本間龍氏はこう言う。
「東京五輪は結局、ずっとマネーファーストの論理で動いてきました。
中止にしたら、今後こんなリスキーなイベントに手を挙げる都市はいなくなるから、IOCは絶対に前例をつくりたくなかったのでしょう。
見切り発車の延期なので、今の体制のまま、1年間ただ時間稼ぎをするだけ。
本当にアスリートファーストならば、真夏の酷暑問題を考えて、時期の変更も真剣に検討していいのに、そこには手を付けない。
無責任です

理念を捨て、4年に1度の形式まで崩す断末魔
 大体、1年後だって本当に安全に開催できるのか不透明だ。
米保健福祉省がホワイトハウスに提出した内部文書では、新型コロナの終息には「最低でも18カ月かかる」としている。
大流行は1年半以上続くというのである。
花形の陸上など、多くの五輪選手がいるアフリカは、これから感染拡大が本格化すると懸念されてもいる。

 安倍は「各国と連携してワクチンの開発を急ぐ」と、1年後には治療薬が間に合うかのような発言をしたが、ただの希望的観測に過ぎない。
それでも1年以内にこだわったのには、安倍の身勝手な政治的思惑が透けて見える。
来夏までの延期なら、来年9月の総裁任期内に開催できるからだ。
何よりも「自分の手で五輪」というレガシーづくりに執着した結果だろう。
延期幅の“政治利用”は25日の国会でも野党が問題にしていた。
選手不在、国民不在、人命軽視が甚だしい。

 スポーツジャーナリストの谷口源太郎氏が言う。
「政治利用はオリンピズムと相反するものです。
そこには『人間の尊厳の保持』に重きを置く五輪の精神はひとかけらもありません。
本来ならここまでくれば中止にすべきでした。

五輪憲章では五輪の開催は4年に1度です。
つまり、2021年への延期は憲章に反する。
今後、憲章を変えることになるでしょう。
1984年のロサンゼルス開催から、五輪はスポンサーやテレビ局による収入に頼った“興行”と化し、オリンピズムの理念はすでに消えうせていますが、今回、4年に1度というオリンピアードの形式さえ取っ払う。
断末魔もいいところです」

■「復興五輪」が「コロナ勝利五輪」へ  
そして、開催後に残されるのは負のレガシーだ。
新国立競技場はいまだ五輪後の利用方法が決まっていない。
16年リオデジャネイロ五輪で、後利用計画が不十分だった結果、多くの施設が廃虚化したが、その二の舞いになりかねない。
お祭り騒ぎの後は、日本中が徒労感とむなしさに覆われることになる。
 こんな無意味で無駄な“祭典”に今後、手を挙げる都市があるのか。

すでに、東京の次は、24年パリと28年ロサンゼルスの2開催の都市を一度に決定するという異例の方法が取られた。
手が挙がるうちに決めておきたい、というIOCの焦りからだっだ。
今後は海を越えた複数都市開催もあり得る、がIOCの方針だが、そこまでして五輪を続ける必要が、果たしてあるのだろうか。
4年に1度、さまざまな競技の選手が1都市に集まり、世界最強を決める。
交通の便が悪かった昔だからの大会で、今は世界各地で国際大会が開かれ、競技別に世界選手権がある。
もはや、五輪に全ての競技を集約する意味は消滅しています」(本間龍氏=前出)

「アンダーコントロール」という原発汚染水を巡る招致時の嘘。
公式エンブレムの盗作。
招致に絡むワイロ疑惑――。
まさにデタラメだらけの呪われた五輪である。

 ついこの前までは、原発事故からの「復興五輪」と叫んでいたのに、今はコロナ禍からの克服を掲げる「勝利五輪」というご都合主義
五輪延期が決まった翌25日、東京都の感染者数が一気に41人と急激に増えたのも、これまで言われてきた「五輪のため検査を少なくして感染者数を抑えている」という疑惑の証左のようで怪しい。

 前出の谷口源太郎氏は「誰のため、何のための五輪なのか。
今度のことは、五輪そのものをなくすいい機会なのではないか」と言ったが、その通り。
もう五輪なんて、廃止した方がいい。
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2020年03月28日

昭恵のNEWS手越ら芸能人と花見報道に安倍首相が逆ギレも説得力なし

昭恵夫人「NEWS手越らと花見」報道に安倍首相が逆ギレ反論も説得力なし…
近畿財務局職員の自殺報道の日も神田うのらとパーティ
2020.03.27  リテラ編集部

 国民に喧嘩を打っているとしか思えない行動を、またもあの人が繰り出した
政府が不要不急の外出を自粛するよう国民に呼びかけている最中の3月下旬、安倍首相の妻・昭恵氏が芸能人らに囲まれて花見を楽しんでいた、という報道が飛び出したからだ。

 この、昭恵氏による「桜を見る会」開催問題をスクープしたのは、来週発売の「週刊ポスト」(小学館)。
昨日夕方に「NEWSポストセブン」が先出し記事を配信したのだが、そこに掲載された写真には、ライトアップされ美しく咲き誇る桜の木をバックに、ニッコリと満面の笑みを浮かべる昭恵氏の姿が。
そして、昭恵氏の前方には、ジャニーズ事務所所属のアイドルグループ・NEWSの手越祐也が親指を立てて微笑み、さらに昭恵氏の隣ではモデルの藤井リナが昭恵氏に親しげに顔を寄せて写真に収まっている。

昭恵氏と手越、藤井以外の参加者の姿はボカシが入っているため判然としないが、10人近くで集合写真が撮られたものと見られる。
 繰り返すが、現在、政府は国民に不要不急の外出を控えるよう呼びかけ、12日には夫の安倍首相が小池百合子・東京都知事と「お花見はどうしようか」と花見の扱いについて相談までおこない、東京都は都立公園や河川敷での飲食を伴う宴会の自粛を呼びかけている。
そんななかで、あろうことか総理大臣夫人である昭恵氏が団体で花見を楽しんでいた──。
当然、我慢を強いられている国民からは「総理の妻なら何でも許されるのか」「本当に危機感があるのか」と反発が起こっている。

 だが、この政府の呼びかけを無視した昭恵氏の振る舞いについて、夫の安倍首相は必死に擁護。
本日おこなわれている参院予算委員会でこの問題が取り上げられると、安倍首相はこう答弁した。
「都内のプライベートなスペース、これはレストランであったということでございますが、知人と会合を持った際に、それはあの、みんなで記念写真を撮る際にですね、そういう桜を背景に記念の撮影をおこなったと」
「いわゆる公の場で花見をおこなっていた、また東京都が自粛を求めている公園での花見のような宴会をおこなっていたという事実はない」
「花見をしたのではない、桜の前で写真を撮っただけだ」って、この主張に何の意味があるのか。
当然、質疑に立っていた立憲民主党の杉尾秀哉議員も「レストランなら問題ないのか」と返したのだが、すると安倍首相は逆ギレし、こんなこと言い出したのだ。
「これは、いわば、レストランに行ってはいけないのか。その時点でですね、といういうことではないのだろうと思います。いわばまさに、そのとき自粛が何を求められていたのかということをですね、杉尾委員も正確に把握した上でご意見を述べられたら」

 ようするに、安倍首相は「公園ではなくレストランの敷地内の桜の前で撮っただけだから問題ない」「レストランまで行くなとは要請していない」と言い張ったわけだが、そもそも政府の専門家会議は2月24日の時点で立食パーティや飲み会を避けるよう呼びかけている。
国民には不要不急の外出を控えろと言っておいて、総理大臣の妻が芸能人らと十数人で仲良く「会合」を開いていることは問題ないって、そんなの納得できるはずがない。

それとも安倍首相は、立派な桜の木が植えられたレストランのプライベートなスペースを貸し切れるほどの金がある者なら、「感染爆発拡大に警戒」と政府が訴えるなかで不要不急の会合を開き、桜を愛でるのは良しとでも言うのか。

赤木さんの上司にも自殺の恐れがあることを訴えても昭恵夫人は知らんぷりだった
 いや、そもそも昭恵氏がプライベートな「桜を見る会」を開催していたことに対して大きな反発が起こっているのは、政府の自粛呼びかけの最中であることだけが原因ではない。
そう。
森友問題の決裁文書改ざんを強要され、自殺した近畿財務局職員・赤木俊夫さんが遺した遺書と手記が18日に公表されたタイミングで昭恵氏が花見に浮かれていた、という事実の大きさだ。

 じつは、今週発売の「女性セブン」(小学館)によると、官邸は18日の1週間前には遺書と手記が発表されるという情報を掴んでいたというが、それよりずっと前、昨年の10月の段階で、昭恵氏には赤木さんの妻のある訴えが届けられていた、というのだ。
「女性セブン」の記事では、「赤木さんの直属の上司だったAさんも相当に追いつめられていて、もしかして自殺するかもしれないという情報」を赤木さんの妻が知り、ある政界関係者に連絡。
その関係者は昭恵氏と「旧知の仲」だったため、昨年の10月ごろ、昭恵氏に「赤木さんの上司だったかたが自殺するかもしれません」と伝えたのだという。

 だが、昭恵氏は「痛くも痒くもない様子」で、「“どうしたらいいでしょう”と言うばかりで何もしようとしませんでした」(政界関係者)というのである。
 そして、ついに赤木さんによる悲痛な遺書と手記が明らかになったというのに、昭恵氏はその内容を重く受け止めるどころか、芸能人らと花見に興じていた──。
一体、どんな精神をしていたら、こんな行動をとることができるというのだろうか。

 そもそも、8億円もの不当な値引きがされて森友学園に国有地が売却された背景には、名誉校長を務めていた昭恵氏の存在があった。
実際、昭恵氏付の職員・谷査恵子氏は財務省に直接、口利きFAXを送り、“満額回答”を引き出していたという証拠もある。
さらに、公文書改ざんという国家的犯罪がおこなわれたのも、安倍首相が「私や妻がかかわっていたら総理大臣も国会議員も辞める」と国会で宣言したことがきっかけだったが、真っ先に公文書から削られたのは、昭恵氏の名前だったのだ。

 自分の言動が行政を歪め、さらには自殺者まで出してしまった。
その事実はあまりにも重い。
遺書や手記が公開されたことを受け、反省はもちろん、自分の責任をしっかり考えるのが当たり前だ。
だが、昭恵氏は芸能人らと会合をおこない、桜の木の前で笑顔で記念撮影までしていた。

「人の命を何だと思っているのか」と猛批判を浴びるのは、あまりにも当然のことだ。
 だが、このことであらためてはっきりとしたのは、昭恵氏は赤木さんの命を、虫けらのようにしか捉えていない、ということだ。

赤木さん自殺が報じられた当日も昭恵夫人は神田うのや中田英寿とパーティ
 実際、昭恵氏は赤木さんが自殺した直後にも、信じられないような行動に出ていた。
赤木さんが自殺したのは2018年3月7日。
その2日後の9日昼過ぎに自殺の事実がメディアで大々的に報じられたのだが、その夜、昭恵氏はなんと、銀座で開かれたパーティに参加していたからだ。
 当時も本サイトではこの問題を取り上げたが、昭恵氏がパーティに参加していた事実が発覚したのは、タレントの神田うののInstagramへの投稿だった。
うのは同夜出席したパーティで撮影した写真を投稿しており、元サッカー日本代表の中田英寿や女優の真矢ミキ、俳優の別所哲也らとのツーショットをアップ。
そのなかに、昭恵氏とのツーショット写真もあり、うのは「いつもキュートで素敵な昭恵夫人」という文面を添えて投稿。
昭恵夫人もにこやかな表情を浮かべていたのである。

 この日、世間ではついに自殺者が出てしまったことの衝撃が広がり、午後からは改ざん当時理財局長だった佐川宣寿・国税庁長官が辞任の意向を固めたと相次いで速報されていた。
つまり、昭恵氏がこのニュースを知らなかったはずはない。
にもかかわらず、昭恵氏は芸能人が多数参加する華やかなパーティにのこのこと出かけ、仲良く写真を撮っていたのだ。

 しかし、昭恵氏はこうした無神経な行動を繰り返しているだけではない。
自分や夫の責任を回避しようと、自らデマをも流していた。
 安倍政権が公文書改ざんを事実だと認めたあと、安倍官邸は改ざん前文書にあった〈本件の特殊性〉という文言をクローズアップして「特殊性というのは同和絡みの土地という意味」などという悪質なデマを流したが、これと同様の話を当時葛飾区議だった「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏もYouTubeで拡散。
そして、立花氏は、この話をFacebookでつながりを持っていた「昭恵から聞いた」と話しているのだ(詳しくは既報参照→ https://lite-ra.com/2018/04/post-3924.html

「桜を見る会」問題でも、招待者に「昭恵枠」があったこと、さらに「桜を見る会」に参加したことをマルチ商法の勧誘に使っていた会社の代表は、昭恵氏が下関に立ち上げた複合施設「uzuhouse」(ウズハウス)に資金提供していたことが判明(詳しくは既報参照→https://lite-ra.com/2020/02/post-5278.html
また、安倍政権下での「桜を見る会」のケータリング業務を独占して請け負ってきた企業も、そもそもは昭恵氏人脈だったこともわかっている。

こうした昭恵氏の「総理大臣の妻」という権力を濫用した公私混同の事例は枚挙に暇がなく、森友問題発覚後もつづいていることだ。
 本来であれば森友問題が発覚した際に昭恵氏の責任追及がなされ、全貌を解明すべきだった。
それが安倍政権の力によって証人喚問をなされず、昭恵氏の責任は闇の中に葬られた。
そして、その裏で昭恵氏の名前が消されるという改ざん問題が起こり、赤木さんは死にまで追い詰められたのだ。
だが、その悲痛な叫びが公表されても、昭恵氏に反省はない。

──ならば、国民は国家を私物化しつづける昭恵氏に、今度こそ真実を明らかにし反省させるしかない。
森友改ざん問題の第三者による調査開始はもちろん、不当な国有地売却がおこなわれたことの真相を究明するためには、昭恵氏の証人喚問が絶対に必要だ。
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2020年03月29日

聖火リレーコース上でもベクレル値は高止まり!福島があきれる復興五輪のウソ

聖火リレーコース上でもベクレル値は高止まり!
福島があきれる復興五輪のウソ
2020/03/28 週刊女性PRIME [シュージョプライム]
(取材・文/吉田千亜

3月26日の聖火リレーで「復興五輪」は幕をあけるはずだった。
新型コロナ禍で、9回目になる東日本大震災追悼式は早々に中止にしたが、東京オリンピックはリレー開始が目前に迫る24日まで判断を留保し、聖火は福島県まで到着したものの「1年程度の延期」が決定した。

 諸外国と比べ、日本の新型コロナウイルスの検査数は今なおケタ違いに少ない。
それでも東京都では連日40人以上の感染者が確認され、東京を含む関東圏で今週末の「外出自粛要請」が相次ぐなど切迫した状況だ。
五輪を延期した1年の間に感染拡大が収束するという保証はない。

「蔓延のおそれがある」としながらも学校再開の指示を出し、感染拡大による生活困窮者の増加を認めつつ、その対策に「お肉券」「旅行券」の発行を検討する。
そんな唐突で場当たり的な政府与党の姿勢は、オリンピックをめぐる発言からもうかがえる。

 菅官房長官は開催延期の発表後、3月25日の記者会見で、「コロナに完全勝利して五輪を迎えたい」と語った。
もはや「復興五輪」を掲げたことすら忘れるつもりかもしれない
 現在、聖火が保管されている楢葉町のJヴィレッジは、原発事故後に、収束作業の中継地点として東京電力が使用していた場所だ。
福島県に施設が返還されてからは、子どもたちがサッカーなどを行なっていた。
しかし、聖火リレー開始予定日の3日前、東電が除染をしないまま返還したという、原発事故を起こした加害者として不誠実極まりないニュースが飛び込んできた。

「復興五輪」の聖火リレーはJヴィレッジからスタートする予定だった。
 そんな中での「復興五輪」を原発事故の被害者はどう見ているのだろうか。
開催延期が決定する直前、被害者から話を聞いた。
まだ避難者がいる、事故は終わっていない
「また(福島第一原発事故の当時と)同じような状態が訪れた感じがする」と話すのは、福島県郡山市から埼玉県に避難をしている瀬川由希さん(45)だ。

放射能汚染も、ウイルスも目に見えない怖さがある。
由希さんは原発事故後、4人の子どもたちと避難先で暮らしてきた。
夫は福島県内で教師を続けている。
「4年に1度の五輪自体は楽しみ。
でも、日本での開催は今じゃないと思う」と言い、「復興五輪」には懐疑的だ。

 福島には、放射能汚染を気にしている人も、自宅に戻っていない人もいる。
海外の人も被ばくが気になるのではないかと思う。
建築資材や人手が五輪に取られ、復興に回らなくなることも問題だ。
 夫の芳伸さん(57)は「原発事故後の被ばくと同じように、新型コロナウイルスも調べませんよね」と指摘、国の対応への不信感を隠さない。
五輪の応援に行く人は“コロナがあるからやめたほうがいいのかな”と、漠然と不安を抱えながら行くことになりますよね。これ、原発事故当時の“被ばくしているのかな”という不安と重なるんです」(芳伸さん)

 由希さんが避難生活を送るにあたり、唯一の支援策だった無償の「借上住宅の提供」は2017年3月に打ち切られた。
その後、家賃を払い2年間は居住できる契約を結んだが、'19年3月、退去が命じられた。
しかし、子どもの生活環境を変えられない事情があった。
そのため近くに引っ越し先を探したが見つからず、現在に至るまで同じ部屋に住み続けている。

退去できなかった損害金として、由希さんはこれまでの家賃の2倍の額を請求されている。
 理不尽な思いをし続けているのに、国や周囲の人たちは、原発事故は終わったかのように振る舞う。
由希さんは、オリンピックで海外の人が日本を訪れるなら「まだ避難者がいる、事故は終わっていないと知ってほしい」と話す。 

 芳伸さんが言葉を継ぐ。
「原発事故もコロナも、コントロールされていないのが現実だと思います」

「今、本当にこれでいいのか」さえ言えない
「子どもも、子どもなりに考えているから、思いを聞いてほしい」
 そう訴えるのは斎藤さとみさん(仮名=16)。
新型コロナや、今なお残る放射能汚染を思うと、人々の健康より世界的イベントのほうが大事なのだろうかと疑問が湧く。  さとみさんは小学1年生で震災に遭い、一家で福島県から避難した。
それから各地を転々としたが、地震のたびに当時の恐怖に襲われる。
医師からはPTSDと診断された。
今も心の傷は癒えず、服薬しながら学校生活を送る。

 オリンピックでスポーツ選手が活躍し、盛り上がることはいいけれど、原発事故で苦しむ人、自分のように避難を続ける人がいるなかで「開催していいのかな」と思う。
「東京オリンピック」なのに、聖火リレーは「福島」からスタートするのも不可解だ。
「復興しましたと世界にアピールしたいのかな。
でも、まだ復興していないと思う」

 今も一生懸命、廃炉作業をする方だっているのに、と原発作業員にも思いをはせる。

 聖火リレーが行われることが最後に決定した双葉町は、3月4日に町の避難指示区域の一部が先行解除されたばかり。
2月には、放射線量の確認をしないまま解除を決めていたことを朝日新聞が報じ、五輪に前のめりになる国の姿勢が露呈した。

 郡山市の佐藤茂紀さん(56)は最近、リレーのコースとなる双葉駅周辺に行ってきた。
「きれいに整備された駅周辺だけを走るのは違和感がある。
テレビで放映されれば、なんとなく“双葉町はOK”のイメージになるんだろう」
 佐藤さんは、避難先からいつ帰るか、あるいは帰らないか、住民が真剣に悩んでいることを蔑(ないがし)ろにされているように感じている。

報道も、「必死に除染をしたから、なんとか聖火リレーで走ることが可能になった」と伝えるべきではないかと思う。
だが現実には、「復興五輪」という大号令だけが喧伝(けんでん)されている。
「帰りたい」「故郷を何とかしたい」と頑張っている人には、オリンピックはプラスになるのだろう。
だから「『復興五輪』はおかしい」と言うのを佐藤さんはためらう。

上からの圧力、原発事故に対する人々の考えの違い、判断材料となる情報の少なさで“今、本当にこれでいいのか”さえ言えない」(佐藤さん)
 高校教師の佐藤さんには、かつての教え子に、富岡町から郡山市へ避難してきた生徒がいた。
東日本大震災が起きた'11年3月11日、学校の教室にいたというその生徒は、あるとき、「机の上にノートを開きっぱなしで避難してきてしまった」と佐藤さんに明かした。
そして、いつか帰る日がきたら、そのノートを閉じに学校に行きたい、と。
「元どおりになって、マスクもいらない、笑顔で帰れる状況になれば学校が開くはずだと、その生徒は言ったんです。
そうした純粋な思いが踏みにじられ、ゆがめられているように思えてしかたない」

 住民の命と健康を守るため、真っ先に考えるべき放射線量を確認しないで避難解除が決まり、ロボット産業の誘致など開発型の「復興」が浜通りを変貌させていく。
これでは「元どおり」とは言い難い。
教え子の願いを大切に思うからこそ、佐藤さんは憤る。

もう、よその国の話のよう
 双葉町から埼玉県加須市に避難をしている鵜沼久江さん(66)は「もう、勝手にやればー、だよ。最近、双葉町民9人くらいで聖火リレーの話が出たけど、みんな冷めていたよね」と、あきれ返る。
 かつて「30年帰れない」と言われた故郷に、10年で「帰れる」と言われた鵜沼さんは、避難指示解除には時期尚早と反対だった。
そもそも、町の特定復興再生拠点区域に居住できるのは2年後。
しかし町の一部は避難解除され、聖火リレーコースになった。
双葉町や大熊町を走る人は無用な被ばくをするのではないかと心配だよね。
時間が短いからいいでしょ、という話ではないよ。
それに、もし、そのときに原発で何かあったら……ということも考える

 3月のお彼岸過ぎの春の風は、海から陸へ吹くことを鵜沼さんは肌身で知っている。
五輪の話が決まったときも“何を言っているんだろう”と驚いたが、時間がたてば私も気持ちが盛り上がるのかな、とも思っていた。
今となっては開いた口がふさがらない。
「私たちのためじゃなくて、もう、よその国の話のようなんだもの」(鵜沼さん)

 聖火リレーを行うにあたり、福島県はコースの放射線量を測定し発表したが、独自に検証を行う人たちもいる。
 市民による放射能測定所『ちくりん舎』(NPO法人市民放射能監視センター)もそのひとつ。
原発事故の影響が特に懸念される浜通りの調査を行い、3月11日に結果をまとめたパンフレットを発行した。
大気中の放射線量、地表面の放射線量、土壌汚染を計測、細かく数値化している。
 理事の青木一政さん(67)は予想以上に汚染が残っていることに驚いた。
「少なくとも聖火リレーのコース上は、安全のために徹底的に除染をしているだろうと予想して、その周辺との対比をするつもりだったんです」

 だが実際、聖火リレーコース上であっても高い汚染が検知された。
例えば飯舘村では、1平方メートルあたり214万ベクレルにも及んだ。
事故前はせいぜい500〜1500ベクレルだった。
その事実があっても「原発は安全でクリーン」という宣伝のために聖火リレーが利用されるだろう、と青木さんは懸念する。

そもそもオリンピックは巨額の金を投じ、目先の経済だけをよくするイベントで原発と同じ負の遺産。
私はオリンピック自体にも反対です

 また3月11日には、全国の市民放射能測定所のネットワークである『みんなのデータサイト』が、東京オリンピック開催時に予測される土壌の放射能汚染を地図で示し、ホームページ上で無償公開した。
原発事故が起きた'11年3月を起点に、五輪が開催される'20年7月時点の数値(理論値)をマップ化したものだ。
「新型コロナウイルスのせいで、原発事故を考えるイベントの中止が相次ぎ、このままスルーされたらいけない、人が集まらなくてもできる活動は何か、という考えから、公開に踏み切りました」  と、事務局長の小山貴弓さん(55)は話す。

 小山さんは以前から東京五輪の開催に疑問を抱いてきた。
新型コロナ騒動をきっかけに「本当に開催していいの?」と言いやすくなったが、スポーツの祭典として好意的に思う人もいるだろうと考え、これまで明言してこなかった。

 その「語りにくさ」を振り返り、こう言い表す。
日本の病なのかもしれない。
人と違うことを言ってはいけない。
同じ方向を向け。
“オリンピックはおかしい”と言わせない。この不寛容をいつまで続けるんだろう……
「復興」はひとりひとり、速度もゴールも違う。
だが、「復興五輪」で束ねる圧力を前に人々は口をつぐむしかない。

復興のオリンピックと言えるのか
 2月29日と3月1日に、福島では東京オリンピックに反対する市民のスタンディング抗議が行われた。
聖火リレーがスタートするJヴィレッジ前、それから野球が行われる福島市のあづま球場前には県内外から約50人が集まり、「汚染水はコントロールされていない」「避難者はまだ5万人」と、8か国語で書かれたプラカードが掲げられた。

 参加者のひとり、福島県三春町の武藤類子さん(66)は日に日に増える五輪報道に、「福島の人たちは、本当はどんなふうに思っているのかな」と考えていたという。
 ある日、新聞で大熊町の避難者が「福島はオリンピックどころでねぇ」と語っている記事を目にした。
表には出さないけれど、被害を受けた人の共通の思いだと感じた。
 一方、「復興五輪」を銘打つ聖火リレーには、希望に胸を膨らませた子どもたちも走り、故郷をアピールする。
大人は何をやっているんだろう──、そんな思いが募る。
汚染水の問題は解決せず、事故が起きた原子炉の排気筒には被ばくを覚悟で何人も上り、被害者の賠償は打ち切られ、生活は再建されていない。
産業も元どおりとは言えないでしょう。
アスリートや五輪を応援する人が被ばくする可能性もあるのに、本当に復興のオリンピックと言えるの? と思います」

 原発事故の直後、「ただちに影響はない」のでマスクをするな、怖がるなという空気があったことを覚えている。
「すぐに症状が出るコロナは怖がってもいいんだ……と思うと、複雑です」(武藤さん)
 マスク姿があふれる景色にそんなことを思う。
 スタンディング抗議の際、武藤さんは「さまざまな問題がオリンピックの陰に隠され、遠のいていきます。
終わったあとに何が残るのか、とても不安です」と訴えた。

 原発事故は終わっていない。
そして、新型コロナウイルスという新たな問題も抱えている。
東京オリンピックの開催延期が決まった2021年は、福島第一原発事故から10年に当たる。
これまでに述べたとおり、原発事故による被害は常に矮小化され、「なかったこと」にされてきた。
その傾向は、コロナ騒動が目くらましとなって拍車をかけ、さらに顕著になるかもしれない。

 そもそも、日本は「原子力緊急事態宣言」が解除されておらず、しかも新たな「緊急事態宣言」も出しかねない国だ。
たとえ1年延期されようとも、「復興五輪」は、本当に必要なのだろうか
(取材・文/吉田千亜)

吉田千亜 ◎1977年生まれ。フリーライター。
福島第一原発事故で引き起こされたさまざまな問題や、その被害者を精力的に取材している。
近著に『孤塁 双葉郡消防士たちの3・11』(岩波書店)がある
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2020年03月30日

「ニセ医学」にだまされる人がハマる落とし穴

「ニセ医学」にだまされる人がハマる落とし穴
ウソ情報に振り回されないための7箇条伝授
2020/03/28 東洋経済オンライン
桑満 おさむ : 五本木クリニック院長

近年、SNSなどで誰もが気軽に情報を発信できるようになり、巷には「ニセ医学」が蔓延しています。
例えば、「ワクチンを打つと自閉症になる」「アトピーでステロイドを使うのは危険」など、標準医療を否定して、医学的には根拠のない、矛盾だらけのトンデモ健康法を吹聴するのです。
知らず知らずのうちに身近なところへと忍び寄る「ニセ医学」に惑わされないための心得を桑満おさむ氏の著書『”意識高い系”がハマるニセ医学が危ない!』より紹介します。

みんな「コラーゲンでお肌プルプル」にダマされてる!
身近なところでいえば、「コラーゲンでお肌プルプル」というのもニセ医学。
確かにコラーゲンは人間にとってとても重要な成分であり、肌の弾力を支える成分の1つです。
しかし、コラーゲンを摂取しても、体の中でコラーゲンとは似ても似つかない物質にまで分解されてしまいます。
中には「私は効果を感じている!」という人もいるかもしれません。
しかし、その実感は、おそらくプラセボ(偽薬)効果でしょう。

プラセボというのは、効き目のある成分は何も含まれていない「偽」の「薬」です。
「肌がいつもよりプルっとしてる気がする!」と言っている人がいますが、これなども、まさしくプラセボ効果だといえます。
効果がないものを売ってもよいのかと疑問に思うかもしれませんが、事実、コラーゲン食品の宣伝をよく見てみると、「たるみが治る」「肌が若返る」など、直接的に効果効能をうたってはいません。
きれいな女性が出てきてコラーゲン食品をとったあと、肌を触りながら「プルルン」など弾力を思わせる言葉を言っているだけなのです。

テレビも新しい情報を求め、結果、小さなトピックを盛りに盛って紹介したり、スポンサーに配慮した偏った情報を流すなど、ニセ医学に加担しています。
このような例は「メジャーなニセ医学」といえるでしょう。

マスメディアは影響力が大きいため、間違った情報が広がりやすいのが問題です。
十数年前、健康情報番組がブームになったときがありました。
各局がこぞって簡単なダイエット法や、よりセンセーショナルな健康情報を流そうとしのぎを削った結果、行われたのが悪質なヤラセともいわれています。

それよりもさらに近年、私が危ぶんでいるのは、インターネットを中心に広がる反医療の「マイナーなニセ医学」。
ニセ医学にハマっている人は、総合していうと、言葉は悪いかもしれませんが、ヒステリックな自然派といえます。
ネットの情報には玉石混淆で、トンデモない嘘があふれています。

一方で公的機関のホームページなどを当たれば正確な情報が簡単に手に入ります。
しかし、自然派をこじらせるタイプの人は、自分の考えが正しいという視点でスタートするため、賛否両論を比較して公正に判断しようとはしません。
そのため、インターネット上で見かけた「ニセ医学」に対して感情的になり、簡単に受け入れてしまうのです。

ダニング=クルーガー効果と意識高い系
ダニング=クルーガー効果というのは、能力が低い人ほど、自分に対して過大評価をするという認知バイアスであり、つまり、自分が信じたものは正しいと信じて疑わず、周りの人に否定されても、相手は「正しいことを知らないのだ」と見下し、他人にも認めさせようとしてしまいます。
つまりヒステリックな自然派になりやすいのは、「意識高い系」と呼ばれるタイプの人に多いと考えられます。

ここから、ニセ医学にダマされないための7箇条をお伝えします。
ニセ医学を勧める人とそれに影響されやすい特徴や状況があり、特に注意するべき事象を解説します。

1:「始めると体から毒が排泄されたことを示す身体的変化が現れます」
そのニセ医学を取り入れることで、毒が出たことを意味する身体的な変化が現れる、もしくは、逆に「身体的変化が現れないと毒がたまっている」などと言われます。
後者は「○○しても変化がなければ、免疫力が低下している証拠」などとも言われます。
毒や毒素などそれっぽいが抽象的な表現には理屈がないことが多く、注意が必要です。

2:「好転反応」という言葉
ニセ医学を取り入れることで不調が起こっても、好転反応であり、よい兆しのように言われます。
例えば対象者がアトピーであれば、ステロイド剤を止めさせてニセ医学をすすめるわけですから、せっかく抑えていた炎症が再燃します。
それは別にニセ医学によって毒出ししている時期なのではなく、単にステロイドを止めたことで症状が悪くなっているだけです。
つまり、悪化すれば好転反応であり、そのうちによくなればニセ医学の手柄になるという、「負けなし」の、好都合なシステムになっているということです。
さらにいえば、ニセ医学の広告やSNSの体験談などは、「治った人だけ」であることを忘れてはいけません。

3:不妊に悩む人、妊娠中、育児中の人は狙われやすい
妊娠したい人、妊娠している人、育児中の人をコアターゲットにするというのも、最近のニセ医学の特徴です。
子どもができないのは冷えているから、心が整っていないから、ひどいものでは前世のカルマなどと、人の弱みにつけこんで怪しい施術や物を売り込んできます。
妊娠、出産すれば、妊娠中に取り入れた添加物や化学物質が「胎毒」となり、子どものアレルギーや発達障害につながるから「毒出しをさせろ」と言い始めます。
ニセ医学は次から次へと怖い言葉を作るのが上手ですが、そんな事実はないので、まともに取り合ってはいけません。

4:「何でも治せます。がんでも治せます」
現代医学では完治が難しい病気について、例えばがんであっても「治せる」と安請け合いするのがニセ医学の特徴です。
がんであれば種類を問わず、ステージ4で全身状態が悪化した末期がんと呼ばれる場合でも、「何でも来い」と無責任に受け入れます。

5:「海外では当たり前。日本は遅れている」
日本は世界的に見ても添加物大国だとか、トランス脂肪酸を規制していないのは先進国では日本だけというような、国ごとの特徴を考慮せず、おまけに正しくもない情報を好みます。
また、「(対象のニセ医学は)日本ではあまり知られていないけれど、海外では当たり前だよ」という決めゼリフも得意です。

6:難しい言葉を使ったもっともらしい説明
例えば、「エントロピー」、「量子力学」など、難しい単語を多く繰り出して、「もっともらしいような説明」を行うなど、ニセ医学を吹聴する人たちは特異な話術に長けていることが多いです。

7:批判に対して攻撃的
ニセ医学の施術者もそのファンもなぜか攻撃的な人が多く、批判的なことを言う人にはこぞってSNSに攻撃的な反論を寄せてきます。
さらには、それならば科学的根拠を示せと疑問を投げかけられた場合、「6:難しい言葉を使ったもっともらしい説明」を行います。

正しい知識を身につけることが重要
ニセ医学を信じてしまうと、誤った知識を披露してしまった際に自分が恥ずかしい思いをするだけではなく、自分や自分が一生懸命守ろうとしている家族や友人に、深刻な健康被害がおよぶ可能性があります。
大げさな話に思われるかもしれませんが、医療現場にはニセ医学を信じた挙句、最終的にはさじを投げられた人たちが実際にやってきます。
だからこそ、ニセ医学に取り込まれる人が少しでも減るようにと、私は情報を発信し続けています。
皆さんも自分がニセ医学に取り込まれないように正しい知識を身につけていきましょう。
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2020年03月31日

4月から事実上の「首都封鎖」、その先に待ち受ける事態は?

4月から事実上の「首都封鎖」、その先に待ち受ける事態は?
2020.03.30 週刊ポスト

 小池百合子・都知事は3月25日の緊急会見で「(新型コロナウイルスの)感染爆発が懸念される重大局面だ」として、週末の不要不急の外出自粛、平日は自宅で仕事し、夜間外出も控えるように要請した。
 会見2日前に厚労省が推計した「東京での感染者が4月8日までに530人増える」という予想をさらに上回るペースで伸び、感染爆発が迫っているからだ。

「即、ロックダウンということではございません」
 小池氏はそう説明したが、東京は事実上、4月から封鎖状態に入る。
 東大をはじめ多くの大学が入学式を中止。
慶應大は授業開始を4月末、早稲田、東京都立大などは5月の大型連休明けまで延期することを決め、小池氏は都内の他の大学にも「効果のある対策を取っていただきたい」と呼びかけた。

春休みで帰省中の学生の多くは5月まで東京に戻らない。
 東京の大学生数は約74万人、そのうち地方出身者が3分の2を占めている。
都内の全大学が4月休校を決めた場合、大学生だけでざっと50万人が東京から消えることになる。

 休日の行楽自粛の影響でJR東日本は4月の臨時列車を軒並み運休、東京メトロはイベント自粛とテレワークの広がりで平日の利用者がすでに20%減少しているが、今後、自社の社員の4割が欠勤した場合を想定した大幅減便ダイヤを検討していることを明らかにした。
 空の玄関・羽田空港でも航空各社が大幅運休・減便を決めた。
全日空は新入社員の入社の先延ばしに加え、客室乗務員の6割、約5000人の「一時帰休」を労働組合に提案している。
これは平均賃金の6割を保障して休暇をとらせる制度で、リーマンショックの際には、自動車、電機、鉄鋼はじめ多くの企業が一時帰休を実施した。

 東京への流入人口は1日約300万人だが、テレワークと一時帰休、イベント中止やレジャー自粛で映画館、劇場、飲食店は休業、公共交通機関の減便がさらに進めば、昼間人口300万人が消え、夜は外出自粛で灯が消えた街になる。

◆待ち受ける生活制限
 その先に待ち受けているのはどんな事態か。
感染爆発が起きている欧米の都市の光景を見ればいい。
 3月23日に全土に外出禁止令を出したイギリスでは、食料品や生活必需品を扱う商店以外は閉鎖、外出が認められるのは必要最低限の買い物と1日1回の運動のみ。
公園などで3人以上が集まることも禁止され、結婚式を含めた社会的行事も中止。
ルールに従わなければ警察は罰金や集会解散を命じることができる。
旅行者も対象だ。

 フランスも幼稚園から大学まで無期限の休校、生活必需品以外のすべての商店が閉鎖され、国民には厳しい移動制限措置をとっている。
自宅勤務できない通勤者や買い物の外出には「証明書」が必要で、こちらも違反すれば罰金が科される。

 米国はカリフォルニア州、ニューヨーク州などが次々に外出禁止令を出している。
トルコでは、重症化リスクが高いとされる65歳以上や持病がある人の外出を禁止した。

 そうした厳しい生活制限を敷いてでも感染爆発を抑えられなければ、最悪の場合、イタリアのように死亡者が続出、火葬場がパンクすることになりかねない。
 東京はいま、その入り口に足を踏み込んだ。

  ※週刊ポスト2020年4月10日号
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