2020年03月06日

コロナショック「食の中国依存」露呈した危うさ

コロナショック「食の中国依存」露呈した危うさ
2月2週にはニンニク・タマネギの輸入量激減
2020/03/05 東洋経済オンライン
山田 稔 : ジャーナリスト

新型コロナウイルス感染の歯止めなき拡大で日本列島はもはやパニック寸前の状況に陥っている。
影響は、連日伝えられる感染者数拡大だけではない。
昨秋の消費税増税でGDP大幅減の日本経済に強烈なダメージを与えている。

観光・宿泊関連、運輸、百貨店、製造業、そして株価。
旅館やコロッケ業者、クルーズ船会社が経営破綻するなど、コロナ倒産危機が現実のものとなってきた。
見過ごせないのが食の輸入現場だ。

日本にとって中国は、アメリカに次ぐ世界第2位の農林水産物輸入相手国である。
その依存の実態を明らかにしよう。

中国はアメリカに次ぐ第2の食材供給基地
2019年の農林水産物の輸出はトータルで約9121億円。
輸入合計は9兆5166億円。
圧倒的な輸入大国である。

国別の輸入金額は、
@アメリカ:1兆6470億円
A中国:1兆1911億円
Bカナダ:5694億円の順。

中国のシェアは全体の12.5%となっている(農林水産省「農林水産物輸出入情報」)。
日本の食卓にとって、中国はアメリカに次ぐ、なくてはならない食料供給地なのである。
その中国国内での新型コロナウイルスの爆発的感染と移動制限などで食材の収穫、流通が滞り、中国からの輸入が大きく落ち込んだ。

家庭の食卓でもなじみの深いニンニクと外食産業で欠かせないタマネギの最近の輸入状況を農水省の植物検疫統計で前年の同時期と比べてみよう。

■ニンニク 2019年2月第2週:31万3709s・第3週:11万7863s 2020年2月第2週: 1万0632s・第3週:17万9372s
■タマネギ​(加工) 2019年2月第2週:516万4450s・第3週:317万0860s 2020年2月第2週: 57万9300s・第3週:291万9180s

2月第2週(2〜8日)の落ち込みが強烈だ。
ニンニクは、前年同期比でなんと96%減となってしまった。
タマネギも前年同期比で89%減である。

第2週は、ネギ、ニンジン、ゴボウ、キャベツなども軒並み8、9割減となった。
価格も上昇し、仕入れ値は一時的に通常の7割高になったという。

輸入量は第3週に入って持ち直しているものの、先行きは中国国内の状況次第で不透明だ。
日本は中国からどんな食材を輸入しているのか。

輸入品は肉類、畜産品、野菜、果実、水産物、各種加工品まであらゆる分野に及ぶ。
輸入金額合計に占める中国のシェアは12.5%だが、輸入農林水産物約400品目中、中国がシェアトップは110以上もあり、輸入品目のシェアは25%を超える。
対中依存度の高さを示す数字である。

農水省の農林水産物輸出入情報で年間の輸入金額が大きい品目を調べてみた。

農産物:合計7171億8110万円
水産物:合計3147億9726万円
林産物:合計1591億0282万円
農産物が全体の60%を占めている。

農産物の内訳はどうなっているのか。
もっとも多いのが「野菜・その調製品」で2498億円。
さらに、その細目を見ていくと次のような品目が上位となっている。

●その他の野菜調製品:1084億6035万円
●冷凍野菜:934億2815万円
●野菜缶・びん詰類等:615億7146万円
野菜調製品というとわかりにくい。

農水省の国際経済課に確認したところ「冷凍、加熱、味付け処理したもの」だという。
冷凍野菜などの調製品や野菜缶など加工された形で輸入された農産物の比率が高いことがわかる。

個別の野菜などで輸入額の多いもの
個別の野菜などで輸入額が多いのはどんなものがあるか。

●タケノコ調製品:140億9947万円
●たまねぎ:128億9091万円
●乾燥した豆:110億4001万円
●茶・マテ:78億3481万円
●ネギ:70億9382万円
●冷凍ブロッコリー:49億7820万円
●冷凍枝豆:39億1292万円

スーパーで見かけるタケノコの水煮や冷凍枝豆が上位に入っているのだが、中国産のタマネギはまず見かけない。
それもそのはず、大半が外食業界や惣菜業界での需要なのだ。
「中国からのタマネギは皮がむかれた形で入ってきます。
調理現場で皮むきの手間が省けるわけです。
飲食業界は人件費がアップし、人手が足りない状況が続いていますから、少しでも手間が省ける食材の需要が高い。
皮がむかれた里イモも人気ですね」(外食業界関係者)

食品企業や飲食店の中には「中国産食材は使用しない」と宣言しているところもあるが、人手不足に加え価格競争が厳しい外食業界にとって中国産野菜は必需品となっているようだ。

水産物も中国依存が高い。
中国からの輸入総額3148億円は水産物輸入総額1兆7397億円の18%。
輸入品の代表的存在はウナギとイカだろう。
・中国産ウナギは、生きている活ウナギが182億2520万円で、2位台湾(63億6300万円)の3倍。
加工品の調製ウナギは342億4503万円で、2位台湾(4億2195万円)のなんと81倍。断トツである。
・イカも高シェアだ。
イカ(活・生・蔵・凍モンゴウ含む)は289億9597万円で2位ベトナム(63億5413万円)の4.6倍。
イカ(調製)は268億6219万円で2位ペルー(21億4647万円)の12.5倍となっている。
・マグロ類も輸入額が大きい。
生・冷蔵・冷凍含めた輸入額は241億9889万円で、1位台湾(360億3743万円)に次いで2位。

このほか、中国産がシェアトップとなっている品目は、フグ、ハマグリ、ホタテ貝、貝柱、タラの卵などがある。
近年、サンマやイカの日本近海での不漁が深刻化している。
スルメイカ漁が記録的な不漁となっている函館では、函館港の11月のイカ輸入額が16億1400万円となり、1979年以降で最高となった。

これまでの中国産に加えロシア産が増えているという。
水産加工業者にとって輸入イカの存在は生命線だ。
中国産水産物の需要はスーパーで売られているウナギやアサリ、ワカメなど一般家庭向けだけではない。
回転ずしや居酒屋、中華料理店など外食業界にとってもなくてはならない存在だ。

イカ、ネギトロ、ウナギ、アナゴ、そしてガリや海苔。中国産の食材や加工品を扱っているチェーン店は少なくない。

意外な食材、物品も中国産だった
主だった食材関連の中国からの輸入品目の実情を見てきたが、意外な農林水産物も中国から入ってきている。
シェアトップの品目の中から、拾ってみると……。

羊毛98億2221万円、
カシミヤ山羊の毛11億6293万円、
生糸14億3551万円、
ワッフル・パイ・ケーキ65億3667万円、
梅(調製品)39億9980円、
リンゴジュース67億2137万円、
フレンチマッシュルーム(缶詰)11億1288万円、
こんにゃく20億2661万円、
朝鮮人参56億5263万円、
飼料用ビタミン調製品9億9660万円、
すだれ19億7181万円、
木炭30億3829万円など。

日常生活のあらゆる場面に中国産の食材や製品が組み込まれているのである。
今回のコロナショックで野菜など一部食材で輸入の大幅減と価格上昇がみられたが、事態が長期化して中国産物品の輸入が大きく減るようなことになったら、外食業界はもちろん、スーパーをはじめとする小売店舗の食品売り場、惣菜製造業者らは大きな影響を受けることになる。

それは消費者の食卓、食事の現場にも及んでくる。
すでに食品企業、外食業界などでは中国に代わる調達ルートを探しているというが、輸入依存率、そして中国依存率があまりにも高い現実が変わらなければ、食の危機はいつ起きても不思議ではない。

この先、国際的な資源戦争が懸念される中、日本は食料自給率の引き上げをはじめ、根本的な資源確保対策の構築が必要だ。
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☁ | Comment(0) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする