2020年03月14日

コロナ禍で見えた日本のセーフティネットの実態、結局は生活保護しかない

コロナ禍で見えた日本のセーフティネットの実態、
結局は生活保護しかない
2020.3.13 ダイヤモンドオンライン
みわよしこ:フリーランス・ライター

リーマンショックの教訓は Covid-19にどこまで通用するか
 Covid-19(新型コロナウイルス)の影響による経済的打撃は、過去に類例のないものとなりそうだ。
何よりも、「広範囲・長期間にわたって、先行き不透明」というストレスは、計り知れない

 とりあえず、2009年のリーマンショックと世界同時不況の教訓は、よくも悪くも世界の制度に反映されている。
日本においては、働ける人や働いている人に対する施策の必要性に注目が集まり、数多くの制度改革や制度創設が重ねられた。
 生活保護には、当初から就労継続支援が含まれている。
しかし、それは現在、おおむね忘れられてしまっているようだ。
大蔵省(当時)や財務省の締め付けが厳しくなるたびに、働ける人や働いている人を生活保護の対象から除外する傾向が強まり続け、現在に至っている。

 セーフティネットの構造を考えると、このことには一定の合理性がある。
通常、セーフティネットは「雇用」「公的保険」「公的扶助」の3層モデルで考えられている

雇用のネットで支えられなくなった人は、失業給付や年金といった公的保険で支えられるはずだ。
公的保険でも支えられなかった人は、公的扶助で支えられる。
雇用で支えられるはずの人を、生活保護や児童扶養手当のような公的扶助で支える必要はないかもしれない。
 しかし1990年代のバブル崩壊以後、日本の雇用の劣化は進行するばかりだ。
このことは、雇用・公的保険・公的扶助の各層に対するニーズを重ね、混ぜ合わせた。
もしかすると、どの層にも救われず、「制度の谷間」に落ちてしまう人々が増えてしまっているのかもしれない。

 既存の、あるいは新設された官民の支援策をフル活用して、今回のCovid-19のインパクトに立ち向かうことは可能だろうか。
 まず、セーフティネット3層モデルの最上層の「雇用」から、“使えそう”なものを整理してみよう。

「雇用」を守る政策は 何があれば機能するのか
 2月までに政府が公表した施策は、経営を通じて雇用を守ることに集中していた。
 経済産業省が公表した数々の施策は、「新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ」というパンフに分かりやすくまとめられている。
また厚労省も、雇用調整助成金やテレワーク推進を含む時間外労働等改善助成金に特例を設け、小学校の休校に伴う保護者支援を創設、個人事業者も対象としている。
日本政策金融公庫も、災害時に準じる形で、融資や返済の相談に応じている。

 現在、何らかの形で雇用され報酬を受け取って生活を営んできている人々にとって、最も望ましいのは、現在の雇用と労働環境がそのまま続くこと、できれば改善することであろう。
「トリクルダウンは起こらない」という認識が常識化した現在ではあるが、経営を支えなければ雇用が守られないことも事実である。
 ただし、結果として雇用が守られるためには、「助成金のうち、人件費に使用する比率は最低70%以上(例)のこと」といった条件が必要であろう。
ただし、人件費への確実な使用を求めるのであれば、企業を通さず、本人に直接配布する方が確実かつ効果的かもしれない。

 また融資に関しては、当然ながら、「将来、返済が待っている」という点に関する注意が必要だ。

民間の支援は 小規模事業者を守れるか
 Covid-19の影響に最初に直撃されたのは、飲食・イベント・音楽・芸能・芸術などの分野だ。
「不要不急業種」だからかもしれない。
 アーティストの助成金申請を支援してきた株式会社ペイノアは、今回のCovid-19の影響を受け、2月15日以後にキャンセルされたコンサート等による損害を全額助成する方針を打ち出している。
ただし、将来、予定どおりに開催された場合の収益は、ペイノアのものとなる。

 類似の支援策は、他業種にも見られる。
たとえばフードテックのGigi株式会社は、サービス「さきめし」を開始し、各消費者が応援したい飲食店に対して飲食料を先払いすることを支援している。
営業時間の短縮や休業を迫られ、減収を避けられない状況下で、店舗の賃貸料などの固定費を支払わなくてはならない飲食店にとっては、救いとなるかもしれない。

 しかし筆者は、「根本的な救済になるのだろうか」という疑問も抱く。
ロックバンドのコンサート1回分、あるいは飲食店の1カ月分にあたる収益が現在得られれば、目先の危機を乗り切ることは可能になるかもしれない。
しかし将来、まだ打撃から回復しきっていない状況で、目の前の収入にならないコンサートを1回開催したり、今日の収入にならない1カ月分の来客に飲食物を提供したりすることになる。
とはいえ、打撃の緩和に役立つ可能性は高い。
異なるタイプの支援策との組み合わせがポイントとなりそうだ。

学術研究の特性をフル活用した 「オンライン学会」の試みも
 多様な研究者支援を展開するするアカデミスト株式会社も、ユニークな企画を用意している。
同社は「お蔵入りになってしまった学会発表、オンラインで聞かせて下さい!」というキャッチフレーズで、オンライン配信の「アカデミスト学会」を開催する。
3月は各学会の大会シーズンなのだが、数え切れないほどの大会が中止となったため、急遽企画された。
配信予定は3月14日、オーディエンスから最多の称賛を獲得した研究者には10万円が贈呈されるという。

 研究者たちは、大会中止によって、直接的に経済的損失を被っているわけではなく、むしろ旅費が浮くことになる。
しかし研究費の多くは単年度予算、しかも、よりによって年度末である。
浮いた旅費に関し、多様な負荷が発生するはずだ。
もちろん、「せっかく準備した発表資料と、そのために使った自分や同僚や指導者たちの労力がムダになる」
「大会に行って研究成果を発表し、同じ分野の参加者から質問やコメントをぶつけてもらい、夜は居酒屋で人脈を広げてホンネの議論をする貴重な機会が、失われてしまう」という損失もある。

「既に完成していた発表資料を使って、オンライン配信で幅広い関心層に聞いてもらう」という機会は、どのような意味でも新たなダメージをもたらさず、メリットのみなのだ。
このことは、アカデミスト社の創業者が過去に研究者を志していたことと、大いに関係があるだろう。

 その人・そのグループ・そのお店の業務のスタイルや業種によって、適切かつ有効な支援は、それぞれに異なるのが当然だ。
さらに数多くの支援策が出現し、誰もが「確実に自分の役に立つ組み合わせ」を見いだせるようになることを期待したい。

「最後のセーフティネット」の手前で 社協の貸付を利用することの是非
 とはいえ、事業や職業に関する支援は、間に合わなかったり不足したりしがちだ。
既に、自分と家族の目先のサバイバルが課題になっている多数の人々がいるはずだ。
失業してしまった人々のうち「社保完」の職場にいた人々は、失業給付の対象となる。
しかし、それ以外の場合は、いきなり無収入状態となりかねない。

 国民健康保険料や年金保険料は、新規に支払う前に減免を申請しておくのが賢明だ。
窓口は、自治体の役所となる。
条件は厳しく、自治体によっては条件を公表していない。
その上、計算にあたっては前年の所得が対象となる。
すぐに適用を受けるのは困難かもしれない。
しかしながら、無保険状態の住民が増えると自治体も困るはずだ。
何らかの救済措置の出現を期待したい。

 既に「手持ち資金がない」「もう無保険状態」という場合には、無料低額診療事業を利用することができる。
対象医療機関は、各都道府県のホームページなどで確認できる(例:東京都)。

 並行して、あるいは先立って、目先の現金を確保する必要があるだろう。
生活に困窮する個人を対象として政府が最初に打ち出した方針は、社会福祉協議会の「生活福祉資金貸付制度」の利用を勧めることであった。
しかし、この貸付は低利子ではあるが、審査が非常に厳しい。
安定した収入または確実な保証人が条件となる。
緊急に貸付が必要な状況なら、利用できない可能性が高い。
貸付が受けられたとしても、返済期間中に生活保護が必要になった場合、保護費のやりくりで返済することになる。

長年にわたって東京都内の生活保護の現場で働いてきた田川英信さん(社会福祉士)は、「福祉事務所は、たとえば月あたり3000円ずつでも返済していただくようにお伝えします。
場合によっては、返済していることを確認したり、社協に同行したりすることもあります」と言う。

なんとか就労して生活保護から脱却すると、まだまだ苦しい暮らしの中から返済を続けることになる。
生活保護が視野に入る状況で貸付を利用すると、生活再建がより困難になってしまうのだ。

結局は「生活保護しかない」 日本のセーフティネットの実態
「仕事と収入が復旧するまでの短期間をしのげれば充分」という場合には、生活困窮者自立支援制度に基づく住宅確保給付金(その地域の生活保護の家賃援助の上限まで)、およびハローワークの求職者支援制度による職業訓練と給付(月10万円)の組み合わせが使える。
しかし、住宅確保給付金は、最長で9カ月までしか受け取れない。
ひとり親世帯なら児童扶養手当もあるのだが、それだけで暮らせる金額ではない。
いずれにしても、雇用状況の悪化が継続すると、「結局は生活保護」ということになるだろう。

生活保護に対するニーズは確実に高まっているはずだ。
しかし政府はいまだ、「まず、向こう1年間の保護費として、20兆円を用意しますから、大いに使ってください」とは言ってくれていない。
さらに2018年、生活保護基準が見直され、生活保護の利用資格を自己判断することは困難になっている。
 日本の複雑で不完全なセーフティネットを利用して生き延びるには、練達の専門家による支援がどうしても必要だ。3月13日(金)・14日(土)には「ユニオンみえ」による多言語対応の無料電話ホットライン、15日(日)には、ホームレス総合相談ネットワーク及び困窮者支援にかかわる弁護士・司法書士の無料電話ホットラインが、それぞれ予定されている。

いずれも、対象としている地域は日本全国だ。
必要としていそうな方に、ぜひお勧めいただきたい。
posted by 小だぬき at 00:00| 神奈川 ☁| Comment(4) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする