2020年05月28日

自粛警察、緊急事態解除でも暴走は止まらない? パチンコ店で県外ナンバーに生卵が…

自粛警察、緊急事態解除でも暴走は止まらない?
パチンコ店で県外ナンバーに生卵が…
2020年05月27日 SPA!

新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるべく、政府が行った自粛要請に応じない店や人々を勝手に取り締まる「自粛警察」の暴走が止まらない……。
時に、犯罪すれすれとも言える異質な行動を取る彼らが振りかざす正義とは何なのか?
今回、被害者の声から探ってみた。

◆再開の動物園に「殺すぞ」、駄菓子屋に「オミセシメロ」
「再開したらどうなるかわかっているのか」「殺すぞ」
 全国39県で緊急事態宣言が解除された1週間前の5月6日、営業再開を告知していた茨城県石岡市の自然動物公園「東筑波ユートピア」には、こんな匿名の脅迫電話がかかってきたという……。

 長らく続いていた「自粛生活」もようやく終わりが見えてきたが、独りよがりの歪な正義感から、要請に従わない店や人をやり玉に挙げる「自粛警察」の暴走は、しばらくは収まりそうにない気配だ。

下記の表にも列挙したが、あるときは、無観客で配信ライブを行っていたライブバーに「自粛してください。次発見すれば警察を呼びます」と因縁をつけ、あるときは高齢女性が細々と営む町の駄菓子屋に「コドモアツメルナ オミセシメロ マスクノムダ」と書かれた怪文書を貼りつけるなど、いきすぎた振る舞いをする「自粛警察」は後を絶たない。

 実際、外出や休業要請に応じていないと警察に通報するケースも激増しているというが、彼らはなぜ、そうまでして自らの正義を押しつけようとするのか? 

今回、都内の人気沿線で居酒屋を経営する40代の男性に話を聞いた。
男性は都の感染拡大防止協力金の実施概要が発表された4月15日以前に、「ウイルスが住みついている可能性大なので、近づかないようにしましょう」と書かれた紙を店の壁に貼られたという。
「15日以降は夜8時までの営業にして、酒類の提供も夜7時までにしたのですが、貼り紙は都から正式な要請が出る前にフライング的に貼られました。

ただ、その後ある男が、貼り紙と同じような文章をSNSに上げているのを常連のお客さんが見つけてくれたんです。
おそらくその彼が犯人だと思うのですが、ウチの店と特定できるような形で批判して、フォロワーの人たちとクラスター感染のリスクについて熱心に語り合っていました……」

 男は店に何回か来たことのある客だったという。
ただ、連れの女性があまりにも酒癖が悪かったので出禁にしたため、「もしかしたら、逆恨みされたんじゃないか……。
ウチの店は『コロナが出たから危険だ』というデマを流していたとも聞きました」と話す。
結局、警察に被害届を出しに行ったが、後日、『犯人には辿り着けなかった』と報告を受け今に至っています」

 店に対する嫌がらせはこれだけではない。
電話で「なんで開けているんだ。気持ち悪いから閉めなさい」と注意してくる人をはじめ、営業中に外から勝手に写真や動画を撮っていく人もいたのだとか。
 都の要請に従って営業しているにもかかわらず、一度、標的と定めたら猛然と牙を剥く「自粛警察」。
緊急事態宣言が解除されたからといって、彼らはそう簡単に正義の拳を下ろすのだろうか……。

◆自分や身内を守るためなら他県ナンバーは排斥の正義
 クレームの電話は常套手段のようだが、栃木県にある某パチンコ店の電話被害は度を越している。
店長に話を聞いた。
「ある日、電話が鳴りやまない日がありまして。終日70〜80件のクレーム電話。
『なんで県の休業要請に従わないんですか?』とか言うから『いや、要請書や要請の電話は来てないですし、パチンコ店はセーフティネット保証5号の対象外という業種差別を受けていますからね。
逆に保証ありきで安心して休めるように役所とかけあってもらえませんか?』なんて受け答えをしていたら、2日目の途中から無言電話になりました」

 セーフティネット保証5号とは業況の悪化している業種に属することで経営の安定に支障を生じている中小企業者への保証制度のひとつ。
通常の保証限度額とは別枠で80%の保証がなされる。
パチンコ店は5月1日の指定業種拡充によって対象になった。

「結局、3日目まで無言電話が続きましたが、次の日からパタリと来なくなりました。
声を聞いていた感じでは7〜8人がそれぞれ10回くらい電話していたんでしょう。
先に自粛していた競合店の嫌がらせか、いわゆるプロ市民だと思っていますけどね。
何せ、この店は見通しのいいバイパス沿いにあるので近隣住民はいませんから」

 このパチンコ店では他にも駐車場で横浜ナンバーの車の下に無数の釘がばらまかれていたり、茨城ナンバーの車のフロントガラスに生卵が投げつけられたりという他県ナンバー狩りがあったという。

◆なぜ「自粛警察」は向こう見ずな行動を?
 なぜ、「自粛警察」はこういった向こう見ずな行動に出てしまうのだろうか……。
社会心理学者の碓井真史氏に聞いた。

「基本は不安だと思うんですよね。
自分が病気にかかる不安であり、自分の周りや住んでいる街、地域に感染が増える不安。
身内だけはなんとか守ろうと外からやってくる他県ナンバーに石をぶつける。
商店街でみんなが店を閉めているのに開けているヤツはもはやよそ者だから村八分にしてしまう」

 みんなと同調しないヤツがいると不安だから排斥するという論理。
「あとは処罰感情です。
例えば山梨県で感染した女性が動き回るのはサリンを撒いたオウム真理教と同じだという発想から、ものすごく悪いヤツなのに警察は動かないし、名前も明かさない。それなら俺が警察になるしかないな、と」

 まさに自粛改め“自称警察”。
正義と信じているから厄介である。

◆《自粛警察事件簿》
●4/19:フリーアナが『あつ森』上で弟の島へ遊びに行っただけなのにツイッターで指摘される。
●4/26:東京・高円寺のライブハウスに無観客ライブ配信の自粛を求める貼り紙を貼られる。
●4/29:東京都葛飾区で営業自粛に応じないパチンコ店の前で開店待ちをしている客に「帰れ!」と罵声を浴びせた上、詰め寄って写真を撮り、ネット上に晒す。
●4月下旬:千葉県八千代市で自粛要請中に休業している駄菓子屋に「オミセシメロ」と貼り紙。

●5/2:兵庫県神戸市で休業指示を無視して開店しているパチンコ店にYouTuberが突撃。
●5/3:東京・井の頭公園で活動する太極拳グループを自粛警察が通報。本物の警察が大量出動したが要請しかできず。それに不服の自粛警察が騒いで連行されてしまう。
●5/3頃:山梨県で感染確認女性がSNS上に個人情報を晒される。
●5/4:神奈川県横浜市の公園砂場にカッターナイフの替え刃発見。
●5/6:茨城県で営業再開の動物園に「殺すぞ」と脅迫電話。
●5月上旬:「(クラスター発生の兵庫県の病院に勤める)妻が看護師を続ける限り、あなたは出勤できない。会社を辞めるか、奥さんが看護師を辞めるか」と会社側に言われる。
●5/12:石川県小松市で休業要請に応じず営業していたパチンコ店でガラス破損。
●5/13:大阪・心斎橋の美容院に「さっさと店閉めて大人しく寝ててください。 次、発見すれば通報します」のと貼り紙。 ●5/15頃:北海道の建設現場事務所に「工事ヤメロ」「火ツケル」など、大量の貼り紙。

◆「自粛警察」は主に犯罪です!
 自粛警察たちが正義だと思っている行為も、ほとんどは犯罪だと知っているのだろうか。
弁護士の河瀬季氏に解説していただいた。

「まずメディアでもよく取り上げられている貼り紙ですが『店閉めろ』などと書かれている場合は業務を妨害するので威力業務妨害罪になります。
一方、『ウイルスが住みついている可能性が大』という嘘なら名誉毀損罪になります」
 威力業務妨害罪は3年以下の懲役または50万円以下の罰金。
  名誉毀損罪は3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金。

 感染が発覚した女性の個人情報が流された件もガセ情報に関しては名誉毀損罪になるが、本当の情報に関しては刑法ではなく民法上の「プライバシー侵害」になり、損害賠償請求ができるとのこと。
「パチンコ店にかかってきたというクレームの電話は、同一人物が何十回もかけてきた場合は威力業務妨害で普通に捕まります。
ちなみに店長に『殺すぞ』と言ったら脅迫罪になりますね」
 脅迫罪は2年以下の懲役または30万円以下の罰金に処される。
「他県ナンバー狩りで窓ガラスを割ったりしたら器物破損です」  
器物破損は3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料。

「このように自粛警察の行動の多くは犯罪なんですよ」

 緊急事態宣言が解除された後もしばらくは自粛ムードが続くため、自粛警察として活動してしまう人もいるだろうが、それは犯罪だと肝に銘じていただきたい!

【社会心理学者 碓井真史氏】
新潟青陵大学大学院教授。
著書に『誰でもいいから殺したかった!追い詰められた青少年の心理』(ベストセラーズ)など

【弁護士 河瀬 季氏】
モノリス法律事務所代表弁護士。
東京大学法科大学院卒業。IT企業の顧問弁護多数。
NHK土曜ドラマ『デジタル・タトゥー』原案担当

<取材・文/週刊SPA!編集部>
※週刊SPA!5月26日発売号より
posted by 小だぬき at 00:00| 神奈川 ☁| Comment(2) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする