2020年06月01日

自粛警察にネットリンチ…正義ヅラした“屁理屈”をプロが斬る

自粛警察にネットリンチ…正義ヅラした“屁理屈”をプロが斬る
2020年05月31日 SPA!

リアリティショー『テラスハウス』の出演者・木村花さんがSNSでの誹謗中傷を受けて亡くなったとされる一件で、今、「言葉の暴力」が問題視されている。
コロナショックにおいても感染者や医療関係者への誹謗中傷、あるいは飲食店やライブハウスに警告の張り紙をする「自粛警察」などが問題となった。

 現代社会に蔓延するのはウイルスだけではない。
この「言葉の暴力」から身を守るためには、どうすればいいのか?
『屁理屈に負けない! 悪意ある言葉から身を守る方法』を上梓した慶應丸の内シティキャンパスのシニアコンサルタント・桑畑幸博氏は、「他人を攻撃する悪意の言葉には、屁理屈や詭弁といった卑劣なテクニックが使われている」と語る。
 ロジカルシンキングのプロでありSNSウォッチャーでもある桑畑氏が、その卑劣な手法の見抜き方をレクチャーする。(以下、桑畑氏解説)

◆「ネットリンチ」と「自粛警察」の共通点
 SNSでの誹謗中傷、ヘイトスピーチ、デマの拡散に限らず、職場でのパワハラ、セクハラ、家庭でのモラハラなど、現代社会には「言葉の暴力」が溢れ返っています。
 他人を攻撃することで、自分の思うように抑圧し、コントロールしようとする――その悪意の言葉の多くには、乱暴な主張を押し通すために「屁理屈」や「詭弁」というテクニックが使われています。

 屁理屈の「屁」には、「屁とも思わない」という表現のように「値打ちのないもの、つまらないもの」という意味があります。
つまり、誹謗中傷やヘイトスピーチ、ハラスメントなどは、本来は何の値打ちもない、つまらない主張であるわけです。
 しかし、それを見抜くことができなければ、丸め込まれたり、デマに踊らされたり、時には傷つき自分を否定してしまう。これは紛れもない悲劇です。
 では、屁理屈の何が卑劣であるか? 具体例を見ていきます。

◆「みんなが…」という言い方で押し通そうとする卑怯
 先日、リアリティショーに出演していた木村花さんが命を絶つという痛ましい出来事がありました。
SNSで彼女を攻撃していた人々が口にしていたのが、「あなたがいなくなればみんながハッピーになる」、「番組のために消えてほしい」といった言葉です。

 この「みんな」、「番組のため」という言葉に、私たちは気をつけなくてはなりません。
あたかも「みんな」や「番組」といった大きな主語の代弁者であるかのように語っていますが、その多くは、実は単なる個人的な偏見や感情に過ぎないからです。
 単なる偏見や感情に基づく乱暴なロジックを「みんな」という数の力で押し通そうとする。
こうした屁理屈を、論理学では「多数論証」と呼びます。
「みんなそう言っている」と言われると反論しにくい空気が生まれますが、みんなそう言っているから正しいとは限らない、数の力が正しいとは限らないのは、ナチスドイツなどの歴史を振り返れば明らかです。

 大切なのは、主張の中身であるはずです。
しかし、暴論や感情論を他人に押し付けたい時に、「みんな」という大きな主語を使って、その主張があたかも正しいかのように粉飾する。
これは、とても卑怯なやり方です。
 同様に、自粛警察の人々は「みんな頑張っているのに、自粛しないとは何事だ!」と主張し、きちんとルールに則って営業している店に張り紙をしたりします。
これも単に個人的な新型コロナウイルスへの不安や“気に食わない”という感情を、「みんな」という言葉であたかも正義であるかのように粉飾し、他者を攻撃しているわけです。

 コロナショックのような恐慌時は、特にこの多数論証が蔓延するので気をつけなくてはなりません。
「みんな」という言葉で他人を攻撃する主張に出会った時、それが本当に一般論なのか単なる個人的な偏見なのか、まずは見極める必要があります。
「みんな」とは誰を指すのかを明らかにし、その上で、本人の主張の中身に着目する。
 もし、「みんな」が実は個人の偏見やある特定の集団である場合は、「値打ちのない、つまらない主張=屁理屈」として黙殺すべきですし、仮にみんなが一般論であっても、自分なりの意見やロジックがない空疎な主張であれば、それもわざわざ取り合う価値はありません。

◆「○○のため」を大義名分にする、「同情論証」という屁理屈
 一方、「番組のため」というような大義名分を前置きした上で、誹謗中傷など乱暴な主張を押し付けるテクニックを「同情論証」と呼びます。
自粛警察の場合は、「日本のため」、「社会のため」という大義名分に置き換わりますが、同じ構造です。

 同情論証においては、「子供たちのため」「差別をなくすため」といった言葉がよく使用されます。
誰もが感情的に否定できず、同情、共感するであろう大義名分を掲げることで反論できない空気を作り、その後に暴論や偏見に過ぎない主張を展開する。
 アメリカの国民的アニメ『ザ・シンプソンズ』に登場するヘレン・ラブジョイというキャラクターがこの屁理屈を多用するため、転じて「ラブジョイの法則」とも呼ばれています。

 勘違いして頂きたくないのが、私は「子供たちのため」「差別をなくすため」という理念自体を否定しているのではありません。
むしろ、非常に尊いものだと思っています。
しかし、だからこそ同情論証は危険なのです。
理念が尊いからこそ、暴論であってもまかり通ってしまう危険性があるのです。

 さらに同情論証の厄介な点があります。
それは、正義感や思い込みから、この屁理屈を無意識に使ってしまう人が少なくないことです。
例えば、自粛警察の人々は、自分たちの行動が本当に社会のためと思い込んでいます。
 しかし、そこには重大な情報や認識の欠落があるのも事実です。

 コロナショックにおける影響には個人差があり、自粛していても生活が成り立つ人と経済的な死に直結する人では、そもそもの立場や前提条件が異なります。
本当は感染リスクも経済リスクも同等に語るべきなのに、感染リスクばかりを煽る情報に触れているうちに、「何かなんでも自粛するのが正義」と思い込むようになってしまう。
 偏った情報に触れるうちに、偏った正義感から同情論証で一方的な主張を押し付けるようになる。
これは、私たち誰もが気をつけるべきリスクです。

◆アフターコロナでは「悪意ある言葉」とも距離を取る
 このように厄介な同情論証。
そこから身を守るには、まず「○○のために」という言葉を省いて、相手の主張が何であるかを確認することです。

 例えば「子供たちのために」という理念については誰も否定しませんから、その部分は早々に同意すればいい。
同様に、過激な自粛警察の「社会のために徹底した自粛を」という主張に対しては、「社会のために」という部分には「私もそう思います」と共感してしまう。
その上で、「社会のためを考えれば、感染リスクだけでなく、経済リスクも考慮すべきです」と新たな論点を提示すればいいのです。
※これはあくまで議論の場での対応であり、SNSなどで同情論証を駆使した主張に出会った場合、「つまらない屁理屈」としてまともに取り合う必要はありません。

 このように一方的で乱暴な主張を、姑息なテクニックによって無理矢理押し付けようとする「言葉の暴力」。
 今回は「多数論証」と「同情論証」の2つを紹介しましたが、ほかにも「わら人形論法」「連座の誤謬」「前件否定の虚偽」など数多くのテクニックがあります。
こうした屁理屈はSNSだけでなく、国会答弁やワイドショーのコメントなどにも散見され、中には議論のプロでさえ気づかずに丸め込まれてしまうほど巧妙なものもあります。

 ですから、言葉の暴力から身を守るためには、まずそうしたテクニックを知り、見抜く力を養うこと。
そして、ソーシャルディスタンス同様に“屁のような理屈=何の値打ちもないつまらない主張”とは冷静に距離を取っていくことが大切になっていくでしょう。
       <取材・構成/日刊SPA!編集部>
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2020年06月02日

著名人も強く関心!「種苗法」改正の大問題

著名人も強く関心!「種苗法」改正の大問題
野菜や果物のタネに「著作権」は必要なのか
2020/06/01 東洋経済オンライン
古庄 英一 : 東洋経済 記者

著名人がこの問題に言及し、賛否が沸き上がった――。
生鮮な野菜や果物にも著作権はあるのか。
新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛で、ネット通販サイトを通じた高価なイチゴやメロンなど特産品への注文が急増。
マンションのベランダでミニトマトを育てる自家栽培のブームも起きた。

そんな矢先、生産農家の経営を左右しかねない、重要な法案が大きな議論となっている。
これは3月3日に閣議決定され、今国会で成立を目指す動きがあった、「種苗法」の改正案だ(結果的に見送り)。

登録品種のタネや親苗を農家が無断で二次利用しづらくする、種苗法の制限強化が主な狙いである。
対象は穀物や野菜類、草木など、すべての新品種。
政治家のみならず著名人たちがSNS等で言及したことでも有名になった。

では農業分野で種苗の知的財産権の保護を強める狙いは何なのか。
年間2.3兆円と、コメを3割上回る農業算出額がある野菜類を中心に、種苗メーカーの動向と絡め、その一端を垣間見た。

食料自給率を高めるには豊富なタネが条件
種苗法という法律は一般になじみが薄い。
改正されても家庭菜園での利用に影響が出ることはない。
しかし、新型コロナウイルスが世界的に蔓延し、海外との人やモノの移動が制限されて気づくことがある。
それは年々低下し今や4割を切った、食料自給率を高める必要があることだ。

前提として作物栽培の原点とも言えるタネが日本で豊富にあることが大事となる。
一説には農機やハウス、農薬といった農業資材トータルの年間コストで、種苗は全体の3%から8%程度という。
穀物の種苗は、国や地方公共団体が管理していることもあり、相対的に安価と言えるかもしれない。

日本の種苗開発の現状と問題点を研究課題とする富山大学経済学部の神山智美准教授はこう語る。
種苗の品種開発や改良は、農薬の独自品開発と同じように試験を含め、約10年。
市場に出した後は、幅広い農家が撒いてくれないと開発コストを回収できないし、採算事業として成り立たない厳しい世界だ」。

これまで日本では、品種改良された種苗の国際的な権利保護や活用は、音楽作品や工業製品と比べて大きく立ち遅れてきた。営利目的にもかかわらず、親苗を他者に譲る、あるいは盗むケースが後を絶たず、国や地方自治体、農協の対策は後手に回っていたからだ。

一例を挙げよう。 佐賀県にあるイチゴの栽培農家では、「いちごさん」という特産品の親苗が2019年11月以降、4件の盗難に遭っている。
畑に立ち入られて、たわわに実ったイチゴが盗まれたのではない。
育苗用ハウスに保管された親苗を盗むという犯罪行為だ。
2018年8月に品種登録されたいちごさんは、育成者権を佐賀県が所有、農協を通じて認められた農家以外は栽培できない。
佐賀県園芸課は栽培農家に対し、屋外にある親苗の保管場所には施錠を施すなど管理強化を呼びかけ、種苗法に関する研修を実施してきた。

だが4月27日には同県杵島郡白石町の農家が最多の40数株の盗難被害に遭った。
元来、農業従事者には、次の作付け用に採種したタネを譲り合う慣習がある。
農林水産省食料産業局知的財産課の担当者によると、「勝手に登録品種を譲っていたケースがあるなど、農業従事者の知的財産権保護への意識は緩い」という。

特産イチゴと言えば、2018年の韓国平昌五輪でカーリング女子チームが試合中にほおばったイチゴが、日本から持ち出された品種ではないかと、当時の農林水産大臣が疑いを指摘。
それ以来、種苗の海外流出や指定地域外での無断栽培をどう阻止するかという課題の解決に向けて、海外での品種登録促進、許諾と罰則の規定など、登録制度見直しが検討されてきた。

種苗法改正は新品種の自家増殖を許諾制とする。
それでも、犯罪行為は防げないが、抑止効果は高まる。
品種改良されたタネというハイテク製品の投資回収を早め、新たに官民協同の新品種開発・供給事業に役立てたい。
農業の国際競争力向上と種苗ビジネス育成を結び付けた、農水省の産業政策がひも付いていると言えよう。

国内に流通する野菜種の9割が外国産?
実際に日本で流通する野菜の種子は、その9割が外国から輸入されている。
新型コロナウイルスの感染拡大で、一時期品切れとなったマスクのような、医療用具とも似ている。

よって、種苗法改正に反対する立場の者からは、「外国産に頼るようだと、日本の農業は行き詰まる」といった懸念の声が挙がっている。
農水省が2018年6月にまとめた資料『種苗をめぐる情勢』には「野菜の種子は、我が国の種苗会社が開発した優良な親品種の雄株と雌株を交配することでより優良な品種が生産されるが、この交配の多く(約9割)が海外で行われている」と記されている。
実際のところどうなのか。
花と野菜種子で世界6位の規模を誇るのがサカタのタネ。
世界で年間200億円の市場規模があるブロッコリーで約65%のシェアがあることでも知られる。
「たくさんのタネをいつも同じ品質で供給するには外国で作らざるをえない現状がある」と清水俊英・コーポレートコミュニケーション部長は打ち明ける。

その理由として、
@日本の季節ごとに変化する過酷な気象条件が大規模なタネ作りに適さない、
A多くの野菜の原産地が国外なのでふるさとに近い土壌で良質なタネが安定して手に入る、
B日本の土地代や労賃が高すぎて企業として適正な価格での供給責任を果たせない、の3つを挙げた。

サカタのタネの場合、安定供給と効率化を実現するグローバルサプライチェーンの整備を、生産部門の成長戦略に掲げている。
新型コロナによる経済活動の停滞で輸入がストップする事態は起きないとし、清水部長は「国内で在庫をある程度持っており心配はない」と述べる。
「たとえば、欧米の各拠点から入ってこないとインドから出荷する、といったリスク分散はしている。
日本に集中させるなら、台風被害で採れなかった場合が恐ろしい」とも漏らす。

国内外とも採種する農家との生産委託契約を結び、自社工場を持たないファブレス経営だ。
「関税率が3%程度と低い種子はボーダレスで流通しており、種苗法の改正によって大きな変化は出てこない」との見方を示す。

サカタのタネ(本社:神奈川県横浜市)が東の横綱なら、西の横綱はタキイ種苗(本社:京都府京都市)だ。
世界各地に拠点があり、野菜種子でサカタのタネと遜色ない、事業規模を誇る。

そのタキイ種苗が2018年4月に更新した世界の種子市場の推計データでは、約3兆2400億円の世界規模の内訳は、穀物種子が2兆7000億円、野菜種子が約5000億円、草花種子が約400億円。野菜種子のうち日本の市場規模は約17%となっている。
日本の農作物は農協系統という独特の流通チャネルを持つため、国内に拠点を置く外資系農薬・種苗メーカーが目立つ存在となっていない。
ただ、仏種苗大手リマグラングループのように、千葉市に本社があるみかど協和を傘下に置き開発体制を敷いているところもある。

では今後、資本力のある海外の農業化学分野の4大メジャー(独バイエル、米コルテバ、スイス中・シンジェンタ、独BASF)らが、日本国内で開発企業や改良品種の育成者権を買収する可能性はないのか。
ある業界関係者は「独自の研究開発で外資が持たないノウハウと蓄積がある日本市場は外資にとって魅力的。
末端ではない最上流なので入り込みやすいかもしれない」と見通す。

タキイ種苗は非上場企業だが、サカタのタネやカネコ種苗(本社:群馬県前橋市)は、東証1部上場の企業。
そのため株式市場で買い占めによる買収リスクにさらされている。

海外流出しても儲かる工夫が必要だ
つまるところ種苗法改正は、国際競争力を維持向上するという将来展望の観点で、その必要性が問われている。
大規模資本による市場独占や高コストで一般農家が苦しむ懸念があるからだ。

2017年8月に施行された農業競争力強化支援法は、地方自治体など公的試験場の研究成果を民間に提供し、官民協同で新品種の開発・供給と知財戦略を進める流れを促した。
「政府は輸出方式を想定し、ルールを厳格化している。
海外に分け与えて利用許諾ビジネスをしたり、現地で品種登録をして現地で売ったりする方法もある。
いずれにせよ種苗が海外流出してもある程度は儲かる工夫が必要だ」(神山准教授)。

 ちなみに野菜農家では、キュウリやトマト、ナスのような果菜類を、温室やビニールハウスで栽培するのが主流。
病気や害虫対策として有効な接ぎ木苗の利用が増えている。
2つの苗の長所を生かす接ぎ木苗の生産は、種子を発芽させそのまま育てた実生苗と比べ、「高いレベルの技術と多額の設備費用がかかる」(接ぎ木苗最大手のベルグアース)。
「異業種による新規参入は困難」(同)だが、技術流出リスクは常にある。

栽培方法なので種苗法の対象とならないものの、「特許や営業秘密で権利保護を図ることが必要」と農水省食料産業局知的財産課の担当者は語る。
業界関係者によると、野菜や果物に比べて、個人で育種事業を営む農家(ブリーダー)が多いのは民間の花農家だ。
しかし、新型コロナの影響でイベント需要が激減。
大手ネット通販で人気の花農園らを除けば、草の根ベースでの育種開発が止まってしまう危機に瀕する。

結局、改正種苗法は、6月17日が会期末となる今国会での成立を断念。
秋の臨時国会で改めて賛否を問う論戦が行われる見通しだ。
本来なら2021年4月施行(一部は2020年12月)を目指していた。

前述の知的財産課の担当者は改正の意義について、「従来は立証が難しかった育成者権の侵害を立証しやすくなる」と強調するが、政府の専門機関が実効力を持つのか、結果が伴わないとわからない。
今はコロナ禍で経営難の採種農家を支援することが喫緊の課題。
知的財産保護への意識徹底と併せ、盗難防止に対する設備拡充への資金援助を、政府の専門機関と地方自治体は率先して行うことが肝要だろう。
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大原則 政治家も宗教家も「政教分離」意味を知らないのか

大原則 政治家も宗教家も「政教分離」意味を知らないのか
2020/05/31 日刊ゲンダイ
小林節 慶応大名誉教授

 自民党の総務会で、新型コロナウイルスに起因する経済の後退に対する中小企業支援策の一環として宗教法人にも家賃の補助を行うか否か? について議論が行われて、まとまらなかった……との報道に接して、驚かされた。 

 憲法20条と89条が明記する政教分離の原則は、要するに、公権力と宗教はお互いに支援も干渉もしない……という原則である。  
それは、中世のフランスで政治権力そのものになってしまったカトリックが堕落して人々を不幸にした体験と、その後のイギリス国教会が清教徒を不当に弾圧した体験を経て、アメリカ憲政史の中で確立され、日本国憲法にも導入された憲法原則である。

 つまり、政治家はその施政の良し悪しで国民の信を問うべきで、宗教家はその言葉と行いの良し悪しで民衆の心を開くべきで、政治と宗教はそれぞれに自分の活動に他方の力を借りてはならない……という原則である。

 だから、宗教団体は公権力を占有または代行してはならず、同時に、公権力は宗教団体に物心いずれの面でも支援を与えてはならない。
もとより「自由」とは何ものにも頼らないことであったはずだ。

 だから、まともな宗教者なら、今回のコロナ禍で経済的に苦しくなったなら、それは「己の不徳の致すところ」と反省するか、「天が与えてくれた試練」として甘受すべきであろう。
にもかかわらず、もしも「家賃に公的補助がほしい」と考えたとしたら、その者はそれこそ「商売宗教屋」で宗教家ではない。
それは恥ずべきことである。

 公権力が宗教に資金援助をしてはならないのは、それを通して政治が宗教を支配した史実が枚挙にいとまがなく、それにより政治家と宗教家が共に堕落してしまったからである。

この理由から宗教は非課税なのである。
つまり、課税権の裁量により公権力が宗教の自由を害することが忌避されたのである。
だから、「非課税の宗教法人が税金から補助を受けるのはおかしい」といった議論も、そもそも前提から的外れも甚だしい。

 改憲を党是とする自民党と宗教団体が設立した公明党が憲法の大原則のひとつである政教分離の意味を知らないようで、心配だ。
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2020年06月03日

裸の王様・安倍晋三の"電撃辞任"で「公明・山口那津男総理」が急浮上だ

裸の王様・安倍晋三の"電撃辞任"で「公明・山口那津男総理」が急浮上だ
2020年06月02日 PRESIDENT Online
政経ジャーナリスト 麹町 文子

■毎度国民、記者の失笑を誘う総理会見
新型コロナウイルス対応に国民の厳しい視線が向けられる安倍晋三政権は、内閣支持率が急降下し、もはや政権末期の様相を見せている。
政界の関心はすでに「ポスト安倍」に移り、公然と政権批判する声も自民党内から出るようになった。

こうした中、存在感を高めているのが公明党だ。
政権への従順ぶりから「下駄の雪」と揶揄された同党だが、今や「政権のブレーキ役」だけではなく、コロナ危機で国民目線に立った「アクセル役」も担っている。

安倍総理が民の信頼を失う中、自民党を救う「救世主」として公明党の山口那津男代表を暫定総理に推す声も聞こえてくる。 「わずか1カ月半で今回の流行をほぼ収束させることができた。まさに、日本モデルの力を示したと思う」。
安倍総理の常識離れした「手前味噌」はかねて知られているが、緊急事態宣言の全面解除を表明した5月25日の記者会見で語った言葉の数々には、国会担当の記者たちからも冷笑が漏れた。
だが、そんなことはどこ吹く風よと「我が国では、人口あたりの感染者数や死亡者数をG7の中でも圧倒的に少なく抑え込むことができている。
私たちの取り組みは確実に成果をあげており、世界の期待と注目を集めている」と悦に入る姿は、まさに「裸の王様」状態そのものだ。

■一国の宰相に苦言を呈すのは自粛したいが、現実は厳しい
一国の宰相に苦言を呈すのは極力自粛したいところだが、現実は厳しい。
朝日新聞が5月23、24日に実施した世論調査で内閣支持率は29%に低下し、不支持率は52%に上った。
この傾向は、毎日新聞と社会調査研究センターによる23日の調査でもあらわれている。
前回調査(5月6日実施)から13ポイントも急落した内閣支持率は27%で、不支持率は19ポイント増の64%に達している。

安倍総理は「一喜一憂しない」との姿勢を見せるが、自民党内は動揺が隠せない。
その理由は、朝日新聞の調査で自民党の政党支持率が前回調査(5月16、17日)から4ポイント低下。
毎日新聞などの調査でも前回から5ポイント減の25%に落ち込んだことがある。

かつて「参院のドン」と呼ばれた自民党の青木幹雄元参院議員会長は、内閣支持率と政党支持率の合計が50を下回ると政権が倒れるとの「青木の法則」を残している。
それに基づけば朝日で「55」、毎日新聞などで「52」となり、すでに危険水域に入っているのは間違いない。

■「安倍おろし」をするだけの余裕が自民党にないのが実情
現在の衆議院議員の任期は来年10月までで、安倍総理は自身の自民党総裁任期満了が約1年4カ月後に迫る中、レームダック化を避けるための解散総選挙を模索する。
だが、ここまで政権や自民党の支持率が低下した今、「竹槍で戦はできない」(自民党中堅議員)と安倍総理・総裁の下での総選挙に難色を示す声は徐々に高まりつつある。

コロナ危機到来で、さすがに目立った動きは見られないものの、石破茂元幹事長が「けじめがついたら職を辞すのも1つのあり方だ」と辞任を求めたのは、そうした議員心理を反映したものだろう。
とはいえ、現下の状況では「安倍おろし」を画策し、自民党総裁選を実施するだけの余裕がないのが実情でもある。
そこで与党内の一部から囁かれ始めたのが、公明党の山口代表を「暫定総理」に据えるウルトラCだ。
コロナ収束が見えた段階で安倍総理に辞任を促し、自民党の支持率が回復するまでの間は「暫定内閣」として山口氏に総理の座を委ねるというプランである。

■公明党の存在感は高まりを見せる
実際、コロナ危機下に公明党の存在感は高まりを見せている。
「ポスト安倍」候補の1人とされる自民党の岸田文雄政調会長がまとめた「減収世帯への30万円給付」案は、山口代表が連立離脱もちらつかせて安倍総理に修正を迫り、土壇場で「1人あたり10万円給付」に変更。

朝日新聞社員や産経新聞記者との賭けマージャンで辞職した黒川弘務前東京高検検事長の処遇についても、公明党の石田祝稔政調会長が「事実であれば職務を続けられる話ではない」といち早く辞任を要求し、その通りの流れになった。

困窮する国民の感覚や厳しい世論に敏感な公明党は連立政権に欠かせないと見る自民党議員は多い。
ある全国紙政治部デスクが解説する。
「自民党の多くは選挙で今や公明党の支援なくして勝てない。
自分たちの任期満了が近づく中で、もし公明党に連立を離脱されたらバッジを失うと青ざめた人たちは少なくない。
しばらくは公明ペースで政治は進むだろう」。

連立政権とはいえ、国土交通大臣など一部のポストしか譲ってこなかった自民党だが、政権与党の座を獲得するためならば何でもするのが同党のすごさでもある。
自民党は1994年6月からイデオロギーで対立関係にあった社会党とも連立政権を組んだが、それは前年の衆院選で過半数割れを招き、その座を確保するための策だったことは記憶に新しい。

■黒川氏を巡り燃え上がった火は消えそうにない
悲壮感が漂う自民党内の雰囲気は安倍総理も把握してはいるものの、悩ましいのはコロナ危機下では得意の外交力を生かすことはできない上、「すべての矢が総理官邸に向かってくる」(政府関係者)ということだ。
中でも、1月に閣議決定までして定年延長を認めた黒川氏をめぐる政府対応への批判は強く、検察庁法改正案の今国会成立見送り後も「なぜ懲戒処分にならないのか」「立件されないのはおかしい」といった厳しい声は続く。

内閣支持率について、フジテレビ上席解説委員の平井文夫氏は5月25日のフジテレビ系「バイキング」で、「数字はかなりヒステリックに出ているが、いずれ戻ってくる」と解説している。
だが、訓告処分となった黒川氏の処分をめぐり総理官邸が「懲戒」にはしないと、法務省の判断を覆していた疑惑を共同通信が報道。菅義偉官房長官は記者会見で「法務省から任命権者である内閣に報告があり、法務省の決定に異論がないと回答した」と否定したものの、燃え上がった火はなかなか消えそうにない。

■トランプに比べて余裕のない安倍晋三
「本日、ここから国民とともに力強い一歩を踏み出す。
目指すは新たな日常をつくり上げることだ。
ここから先は発想を変えていきましょう」。
安倍総理は5月25日の記者会見で、自らが置かれている状況を一変させたいと願うかのように力を込めた。

新型コロナウイルス対応で人気急上昇中の大阪府の吉村洋文知事が、休業要請する際の独自基準「大阪モデル」を突然変更したことを受けて、ノーベル賞受賞者の山中伸弥氏が「科学でこれをすると信頼性が揺らぎます。大阪府の対策が、科学から政治に移ったことを意味します」と批判したタイミングとの重なりをいぶかる声もある。

新型コロナウイルス感染者が164万人を超え、死者が10万人近い米国のトランプ大統領が就任以来最高水準の支持率を得て、ゴルフを楽しむ姿を見せるのとは対照的に、今の安倍総理に余裕はない。

■信頼を失った政権がこの国難を克服していくのは容易ではない
安倍総理は野党時代の12年11月14日の党首討論で、「近いうちに国民の信を問う」と約束していた当時の野田佳彦総理にこう迫ったことがある。
「あの約束の日は夏の暑い日だった。夏が去り、そして秋が来て、秋も去った。もうクリスマスセールが始まろうとしている。約束の期限は大幅に過ぎている」。

新型コロナウイルスへの対応が後手に回る安倍総理に対しては、東日本大震災への対応を自民党が酷評してきた民主党政権の菅直人総理と「同じレベルだ」との声も飛ぶ。

失礼ながら、安倍総理に1つ言わせていただきたい。
コロナ危機が到来したのは寒い冬の日だった。
冬が去り、そして春が来て、春も去った。
もうサマーセールが始まろうとしている。
信頼を失った政権がこの国難を克服していくのは容易ではないように映る。

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麹町 文子(こうじまち・あやこ)
政経ジャーナリスト 1987年岩手県生まれ。
早稲田大学卒業後、週刊誌記者を経てフリーランスとして独立。
プレジデントオンライン(プレジデント社)、現代ビジネス(講談社)などに寄稿。婚活中。
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2020年06月04日

食品値上げに路線バス危機…コロナの副作用が暮らしを直撃

食品値上げに路線バス危機…コロナの副作用が暮らしを直撃
2020/06/03 日刊ゲンダイ

 コロナ禍が暮らしに副作用をもたらしている。
懐が痛いのが身近な食材の価格高騰だ。
東京都中央卸売市場によると、5月22〜28日の野菜価格(大田市場)は、ハクサイやダイコンなど大幅に高くなっている。
当然、スーパーなどの小売価格にも反映される。

「供給面は例年と変わらないのですが、外出を控え、家で料理する消費者の需要が旺盛で野菜価格を押し上げています」(大田市場の農産品担当者)
 豚肉価格も高い。
東京食肉市場の卸値(並)は、3月が1キロ398円(加重平均)だったが、4月は548円に急騰した。
「外食用が中心の牛肉価格は下落傾向なのですが、豚肉は、値段が安く、さまざまな料理に使えるため家食向けで人気を集め、価格も上昇しています」(業界関係者)

 さらに、営業を再開する飲食店の「3密回避」が値上げにつながる可能性がある。
「席をひとつ空けたり、入場制限をしていますが、回転率は大幅に悪化します。
再開後の回転率で経営が成り立たない場合、廃業するか、価格に転嫁するしかありません」(経済ジャーナリスト・井上学氏)

■路線バスに倒産ラッシュの恐れ
 公共の足である路線バスも火の車だ。
先月、丸建自動車(埼玉県上尾市)が、路線バス初のコロナ倒産に追い込まれた。
赤字続きに外出自粛の乗客激減が直撃した。

 今後も路線バスは倒産ラッシュの恐れがある。
国交省によると、路線バスの年間輸送人員は1970年の100億人から現在は40億人と激減。
「自家用車の普及が大きい」(国交省・自動車局旅客課)という。

2018年度はなんと事業者の7割が赤字。
さらに、コロナの影響で、4月の輸送人員は前年同月比54・7%減、5月は同58・2%減と追い打ちを食らっている。  

日本モビリティ・マネジメント会議(代表理事・藤井聡京大教授)の調査によると、鉄道、バス、タクシーなど全国の交通事業者の約半数が8月中旬ごろまでに事業継続が困難になると回答している。
「人口密度の高い日本で路線バスは儲かる事業でしたが、今は黒字を出すのが難しい。
一方、車の運転をやめた高齢者が増えるなど公共の足として重要性は高まっている。

国や自治体は路線バスの維持に全力を尽くすべき。
路線バスの倒産が相次げば、陸の孤島がいくつもできてしまいます」(井上学氏)
 このままでは、テレビ東京の人気番組「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」で、先に進めないシーンが頻発してしまう。
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2020年06月05日

自粛警察、テラハ事件を生んだ「ゆがんだ正義感」という快楽

自粛警察、テラハ事件を生んだ「ゆがんだ正義感」という快楽
2020年06月04日 PRESIDENT Online
医師 梅谷 薫

■新型コロナで広がった「自粛警察」の正体
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が猛威を振るったこの春、あちこちで「自粛警察」と呼ばれる一連の動きが活発になった。
たとえば、4月26日、東京・杉並区のライブバーでは、無観客でのライブをインターネットで配信したところ、店の出入り口に「自粛してください。次発見すれば、警察を呼びます」などと書かれた貼り紙が3枚貼り付けられた。
テレビで駐車場が満杯になったゴルフ場の様子が流されると、「営業するな」という苦情電話が殺到し、5月1日には日本ゴルフ協会などが報道の自粛を求める声明文を公表する事態になった。
このような状況はなぜ起きるのか? 現場の心療内科医の視点から、検討を加えてみたい。

■「社会正義」と「ゆがんだ正義感」
私は、2016年に『ゆがんだ正義感で他人を支配しようとする人』(講談社+α新書)を著し、過度な「正義感」の暴走に警鐘を鳴らした。
今回の一連の事件も、このような「ゆがんだ正義感」のもたらす弊害の一つだと考えられる。

自分自身が「正しい」と感じる感情は、「自分を守るシステム」の中核として、2〜3歳のころまでに形成されると考えられている。
同時に、しつけや教育を通して、私たちは自分が本当に正しいかどうかを振り返り、他者との会話を通してそれを検証すること、つまり「社会正義」を守ることを学んでゆく。
社会のルールを守ることで、個人と共同体の利益を守ろうとするのである。

ところが、自分自身の正義感は往々にして、「自分の都合のよい方向」へとゆがんでしまいがちである。
私たちはそれを正当化し、ゆがんだ正義感にしたがって行動する傾向があるのだ。

■スタンフォード監獄実験の恐怖
1971年、スタンフォード大学である実験が行われた。
大学生21人を、無作為に「看守役」と「囚人役」に振り分け、監獄での生活を体験させてみた。
すると数日のうちに、看守役の大学生たちは、囚人役の学生に次々に暴言を浴びせ、バケツに排便させ、手でそれを拭かせるなどの虐待が頻発するようになったのである。
囚人役の学生が次々に精神異常をきたすようになったため、2週間の予定だった実験は6日間で中止された。
最初は「同じ人間同士なのに、命令するのは居心地が悪い」と語っていた学生たちも、数日で「囚人を苦しめるのは楽しい」と発言するように変貌していったのである。

人は自分が「正しい」立場に置かれると、どんどん暴力的な行動をエスカレートさせる生き物であることが、この実験でリアルに実証されたのだ。

■正義感をゆがめる脳のメカニズム
ではなぜ、「正義感」はゆがんでしまいやすいのだろうか?
私たちにとっての「正しさ」は、遺伝子によって決められると考えられている。
遺伝子にとっての「正義」とは、自分という個体が生き延びること、「遺伝子の複製」つまり自分の子どもたちが生き延びることである。
だから「遺伝子を共有する者」、自分と家族、親族の利益になることは正しく感じられ、それに反する者は「正しくない敵対者」として認識される傾向にあるのだ。

法律などによって定められている「社会正義」では、社会を構成する人たちはみな、法の下に平等であると考えるが、遺伝子の正義を実行する「感情のシステム」は、「利己的」な行動を取ろうとする。
この矛盾を解決するため、少しでも「正しい」という理由が見つかれば、「正義感」という感情が暴走して、「自粛警察」などの行動を起こしやすくなるのである。

■快感物質ドーパミンが脳の暴走を助長
正義感に駆られて行動しているときの脳内では、神経伝達物質のドーパミンが多量に分泌されている。
ドーパミンは「脳内麻薬」とも呼ばれる快感物質の一種で、ゲームや恋愛、スポーツや闘争の中で分泌される。

統合失調症ではドーパミンの過剰分泌が幻覚、妄想を引き起こすとされている。
実際、恋愛やゲームに「はまって」いるときは、精神が高揚し、気分爽快になり、現実感が失われてくる。
自分が「正義を実行している」と感じられるときは、ドーパミンのために現実認識が甘くなり、快感に駆られて、いっそうその行動が過激になってくる。
ネットで「正義感」が暴走しやすいのも、このためである。

■ネットでの「共感」が感情を暴走させる?
さらに現代では、ネットが「感情の暴走」を助長してしまうことがある。
これまではテレビなどのマスメディアで取り上げられなかったような小さな事件が、SNSでの「いいね!」やリツイートで、全国に一瞬で広まるようになった。

「こんなの許せない!」という「正義感」もまた、それが客観的に正しいかどうか、十分検証されないままに強い「感情の津波」となって、対象となった人たちに襲いかかることがある。
最近話題になった、テレビ番組「テラスハウス」出演者の自殺などもまた、このような「正義感の暴走」と無関係ではない。

私たちには、生物として生き延びるために、「共感」によって感情を通わせ、集団で協力して敵に対抗するという感情のシステムが備わっている。
日本人は「共感」しあい、「忖度(そんたく)」しあって、暮らすことに慣れている。
新型コロナの感染拡大があまり広がらなかったのは、そのシステムがうまく働いて、お互いに「自粛」しあい、ある意味では「監視」しあって暮らすことができたためでもある。

しかし、共感のシステムによる「同調圧力」は、正しくない者を監視し、摘発し、正義の名のもとに糾弾するという行為も引き起こしやすい。
そして、その感情と行動はネットを通してあっという間に全国に広がってしまう。
「自粛警察」やネットでの誹謗中傷は、このようにして起きてきたと考えられるのである。

■「コロナ後」の「正義」はどこに向かうのか?
「テラスハウス」の事件で特徴的だったのは、出演者を自殺に追い込んだ「誹謗中傷」に対する強い批判である。
自分の攻撃が自殺の原因だったのかもしれないと思った人たちは、次々にネットの書き込みを削除するという行為に走った。「正義感」に駆られて行動したら、今度は突然「悪」認定されてしまい、大変な思いをしたというのが、当人たちの感想ではないだろうか?

ネットにおける「感情の暴走」には十分な注意が必要である。
ネットはまだ「未成熟な社会」なのであり、さらに自殺などの犠牲者を生まないためには、何らかの法整備をしなければならないという議論が巻き起こったのは、きわめて当然のことと考えられる。

ネットは私たちの前に新しく開かれた「自由な社会」であり、コロナ禍がいみじくも証明したように、働き方や暮らし方を変える大きなポテンシャルをもっている。
同時に「正義感」などの感情が大きな津波となって暴走する危険性ももっているため、注意深い配慮のもとでの法制化など、ルールの制定も喫緊の課題となっているのは間違いない。

私たちの中には、「うしろめたさ」や「やましさ」など、「自分は本当に正しいのか」を検証する感情のシステムが備わっている。
「自分は正しい!」とアクセルを踏み込んでいるときこそ、「もしかしたら間違っていないか?」という感情のブレーキも十分に意識することが大切ではないだろうか。

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梅谷 薫(うめたに・かおる) 医師
1954年生まれ。東京大学医学部卒業。
内科・心療内科の専門医として、うつ病や適応障害などメンタル不調の診療に従事している。
日本心身医学会会員、日本精神神経学会会員。
さらに産業医として、一部上場企業からIT企業まで、さまざまな職場でストレスチェックやうつ病の復職指導などにあたっている。
著書は『ゆがんだ正義感で他人を支配しようとする人』(講談社+α新書)、『「毒になる言葉」「薬になる言葉」』(講談社+α文庫)など多数。
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2020年06月06日

ウィズコロナ「新幹線&航空優待券が爆安記録更新中」

ウィズコロナ「新幹線&航空優待券が爆安記録更新中」
2020年6月5日 プレジデントオンライン
ライター・編集者 島影 真奈美

■テレワークで見直したい通勤定期の買い方
交通費はどう削減するのか。
外出自粛の影響で、自然に減っている可能性が高い項目ではあるのだが……。
前出の家計の節約に詳しいファイナンシャルプランナーの山崎俊輔氏はこう解説する。

「通勤定期の買い方についてはこれから慎重になったほうがいいですね。
テレワークに舵を切らざるをえなくなったことで、出勤する日数は減少するケースが増えてきます。
6カ月定期を購入していた場合、出勤が減少するなら解約を考えたほうがいいかもしれません。
1カ月定期も少なくとも15日くらいは出社しないと元が取れないため(鉄道会社によって異なる)、定期より回数券のほうが効率がよくなる可能性もある。
少なくとも損にはならないよう注意を払いたいところです」

新型コロナウイルスの影響は生活に思わぬ変化をもたらしつつある。
例えば、自動車代。
少し前までは「自家用車を手放し、必要なときだけカーシェアリングやタクシーを使う」という節約方法が定番だった。
駐車場代やガソリン代、車検費用などの維持費を考えれば、依然としてそのほうが割安なのは確かだが、「感染リスクを考えると、カーシェアリングやタクシーの利用がためらわれる」という別の要素が浮上した。

「カーシェアリングやタクシーに切り替えるかどうかは確かに節約につながるものの、今は焦って決めなくてもいいように思います。
新型コロナウイルスの動向を見ながら、収束のメドがついたタイミングで改めて考えてもいい」

■航空会社の株主優待券も、見たことのないような価格
こうした流動的な状況下で、交通費節約に一役買ってくれそうなのが、NTTドコモが運営する『バイクシェア』をはじめとする「自転車のシェア(共有)サービス」だという。
会員登録すると、サイクルポートにある自転車を誰でも借りられるという仕組みである。

「私は、月額2200円払えば最初の30分以内が無料になる月額会員になっています。
自宅の近所にあるサイクルポートで自転車を借り、最寄り駅まで移動したり、商店街まで行ってパッと短時間で買い物をするといった使い方ができる。
タクシーを使う回数が大きく減っただけでも元が取れますし、運動不足解消にもなるので一石二鳥ですね」

一方、マネー事情に詳しいライターの山野祐介氏が注目するのは「金券ショップ」だという。
「新型コロナで遠出を自粛する動きが広がり、期限の限られたJRや私鉄の新幹線などの特急回数券や株主優待券が大きく値崩れしています。
例えば、新宿─小田原間で利用できる小田急電鉄の株主優待券が100円といった具合に驚くような値段で売られていたりします」

また、乗降客数が大幅に減少している空の便にも値下げの波はやってきているという。
「金券ショップの流通の多い商品である航空会社の株主優待券(国内航空券が半額で購入できる)もこれまで見たことのないような価格で出ています。
ANAの株主優待券が相場の半額以下の2000円台での販売例もありました。
JALの株主優待券も価格は下がっています。
利用する予定がある人は今が買いといえると思います」

新型コロナによる影響がいつ収束するのか予想が難しいが、自身の予定と照らし合わせ、期間を確認したうえで賢い買い物をしたいものだ。
航空優待券を家族4人、往復2回利用で約36万円カット(羽田ー沖縄の場合)

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島影 真奈美(しまかげ・まなみ)
ライター・編集者 1973年宮城県仙台市生まれ。
国内で唯一「老年学研究科」がある桜美林大学大学院に社会人入学した矢先に、夫の両親の認知症が立て続けに発覚。
「介護のキーパーソン」として別居介護に参戦し、仕事・研究・介護のトリプル生活を送る。
その体験をもとに、新聞や雑誌、ウェブメディアなどで広く執筆を行う。
近著に『子育てとばして介護かよ』(KADOKAWA)。noteTwitterアカウント
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2020年06月07日

麻生「民度発言」海外も報道 指摘された日本の高い死亡率

麻生「民度発言」海外も報道 指摘された日本の高い死亡率
2020/06/06 日刊ゲンダイ

 また日本の評価が下がってしまった。
予想通り、麻生副総理の「民度発言」を海外メディアが伝えている。
 麻生副総理は4日、参院財務委員会で、日本の新型コロナ対策の成果について非科学的な持論を大展開。
日本の死亡率が少ない理由を尋ねる電話が海外からあったと明かしたうえで、「そういう人たちの質問には、『お宅とうちの国とは国民の民度のレベルが違うんだ』と言ってやると、みんな絶句して黙る」と自慢してみせた。

 死亡率が高い欧米を「民度が低い」とバカにしたのも同然だから、さすがに海外メディアが報道している。
 米紙ワシントン・ポストは、「日本の大臣の民度発言が炎上」とタイトルをつけ、麻生副総理の過去の「ヒトラー発言」も紹介。
 ブルームバーグも、「日本の大臣が“民度の高さがウイルス克服に役立った”と発言」のタイトルで伝え、「しかし、台湾や韓国など死亡率が低いアジアのなかでは、日本は突出していない」と、日本の新型コロナ対策が成功したわけではない、と論評している。

 海外では、死亡者数が少ない日本の対策を評価する声もあったが、「民度」を口にしたために、世界中に日本の実態を報じられた形だ。
 実際、慶大の菅谷憲夫客員教授によると、アジアのなかでは、日本の致死率はかなり高率だという。
5月16日現在、人口10万人当たりの死亡者は0・56と、フィリピンの0・77についで2番目に多い。
台湾は0・03、タイは0・08、韓国0・51、中国0・32、インド0・20、バングラデシュも0・21だ。

「麻生理論」だと、日本の「民度」は、こうした国より低いということになる。
ちなみに、アメリカは26・61、イギリスは50・46となっている。

 日本の死亡者数が欧米に比べて少ないのは「民度」ではなく、アジア特有の要因が原因となっている可能性がある。
欧米で流行しているウイルスは、アジアよりも強毒だとの指摘もある。
 なのに、エビデンスも示さず「日本は民度が高いから」と、他国をおとしめたと取られかねない発言を国会でしているのだから、この男は、本当に懲りない。

法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)がこう言う。
「日本の死亡者が少ない理由について、国民皆保険やBCGをあげる声がありますが、それは“民度”ではなく“制度”の問題です。
さらに、ハグをしないから、家の中では靴を脱ぐから、マスクが定着しているから、という意見もありますが、これらも“民度”ではなく“生活様式”の違いです。
なのに、麻生さんは民度を持ち出している。
まさにナチスの発想ですよ。
民度発言は、ここ数年、流行している“日本はスゴイ”現象の延長です。
自信を失った裏返しで、なんでも“日本はスゴイ”と思いたがってしまう」

 世界中があきれているのではないか。
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2020年06月08日

「信頼できる医療情報サイト」見極めるコツ5選

「信頼できる医療情報サイト」見極めるコツ5選
「ワクチン否定」「わかりやすい」は要注意
2020/06/07 東洋経済オンライン
森戸 やすみ : 小児科専門医

スマホやパソコンがあればすぐに情報収集できるインターネットはとても便利で、今や私たちの生活に欠かせません。
でも、そこにある情報は玉石混交です。

「子育て中のママやパパ向けの情報サイト」などといいながら、びっくりするほど裏づけのない情報ばかりが掲載されているサイトもあります。
「正しい情報を取捨選択するのが保護者の務め」と言ってしまうには、その見極めはむずかしすぎるでしょう。
どれも正しく見えて「何を信じていいのかわからない」と悩ましい状態になりますし、緊急を要するときはパニックになってもおかしくありません。

私にも「インターネット上から間違った情報をなくしたい」という強い思いはあるのですが、何しろ量が膨大なので、一つひとつ「これは間違っている」「この部分は正しい」と検証するのは不可能です。
たとえチェックできたとしても、次から次へと新しいものが出てきて追いつけません。

「ダメなサイト」を見極める5つのポイント
そこで、保護者のみなさんが自分で判断して、正しい情報にたどり着くためのポイントを考えました。
大きくわけて5つあります。
具体例とともに見ていきましょう。

@伝聞系の記述は疑おう
現代は、誰もがSNSなどで情報発信できる時代です。
誰が書いたかわからず、第三者のチェックがなさそうな情報でも、人目を引いて斬新な内容だとつい読んでしまいますよね。そして、面白い情報ほど拡散されやすい傾向にあります。

でも、“人目を引く”記事にこそ注意が必要です。
たとえば、こんなことを書いているサイトを見かけます。
「お母さんが妊娠中に骨盤ベルトをしていると子宮の形がよくなって、早産が防止でき、生まれた子が育てやすくなるそうです」
ポイントは、「〜だそうです」「〜といわれています」という伝聞系の表現です。
何か根拠があって、誰かが言っているような印象を受けますが、そうでないことが多いのです。
この例だと、子宮は骨盤の骨に囲まれた深いところにあるので、ベルトを巻いたくらいで形は変わりません。
お腹が大きくなっても骨盤ベルトは腰に巻くものなので、子宮を圧迫するように締めつけてはいけません。
また、骨盤ベルトを巻くことは早産の予防にもなりません。
お腹の中にいた姿勢と育てやすさの関連性も証明されていないのです。

「○○をしないと子どもが大変なことになってしまう」という印象づけもよくないと感じます。
その表現は「極論」ではないか?

Aキャッチーな言い回しに注意!
たとえば、「足は第二の心臓」「皮膚は第二の排泄器官」というような言い回しは、非常にキャッチーですし、意外性があって面白いですよね。
けれども、これはとても誤解を生みやすい表現です。
各臓器は、それぞれに本来の役割を果たしながらも、はっきりとした境界がない状態で連携し合っていますから、足と心臓がまったく無関係だとはいいません。
しかし、それでも足は「第二の心臓」ではなく、足は足です。
そういったところから、「長生きをするには、足の裏やふくらはぎを揉むだけでいい」という言説も出てきますが、こうなると極論でしかありません。

試しに私が正しい情報に言い換えてみましょう。
「足には体で最も大きな筋肉である大臀筋(だいでんきん)があり、それを動かすことで循環機能が向上します」、でもこれだとキャッチーではないので、あまり人目を引きませんよね。
正しい情報とは、そういうものなのです。

B偏った情報ばかり何度も見るのをやめる
「私は幅広いサイトを見ていろいろな情報に触れているから大丈夫です」と言う人がいます。
いろいろな情報に目を向けるのは悪いことではありませんし、そうされている保護者のみなさんは勉強熱心で素晴らしいと思います。
しかし、残念ながら、見ているものが本当は「幅広い情報」でない可能性もあります。

不確かな情報、誤った知識は、出どころがひとつということがよくあるからで、媒体によって少しずつアレンジして掲載するため、違う記事に見えるだけです。
そうなると、自分では幅広い情報に当たっているつもりでも、じつは同じ情報を集めてしまっていて、気づかないうちに視野がとても狭くなっていることがあります。

仮に「ワクチンは効かないし、危険である」「ステロイドは副作用が強いので危険」といった、現代の医学で標準的ではない考えをくり返しインプットしたとします。
受験勉強などもそうですが、反復すればするほど自分の一部のようになっていきますよね。
それをほかの人から「間違っているんじゃない?」と指摘されると、たいていは反発を覚えます。
まるで自分自身を否定されたように感じる人もいます。
結果、「批判してくる人は何も知らない」「私のほうが正しい情報を知っている」「私は本当のことに気づいている」と一種の優越感やかたくなさが出てくるものです。
子どもにワクチンを打ちたくない、アトピー性皮膚炎があってもステロイド軟膏はもちろん保湿剤さえ塗りたくないという保護者のみなさんも、子どものことを大切に思っているからこそ熱心に情報を集め、信念を強めていきます。

医者にも「異端者」がいる
そういった保護者の方に外来でお話を聞くと、「私は何冊も本を読みました。お医者さんが書いた本です」というようなことを言われます。
しかし、とても残念なことですが、医師の中にもいろいろな人がいて、多くの専門家が正しいとする考え方に反対し、「異端」の立場を取りたがる人もいます。
「ワクチンは危険だし、いらない」という本は、そうした医師によって書かれています。
ほかの治療についても同じことがいえます。
「○○は危険だ」という本やサイトは気になるものですよね。
子どもを危険にさらしたくないと思うがゆえに信じてしまう。
でも、そうした情報に出合ったら、もうひと踏ん張りして、「○○は安全だ、治療に必要だ」という本や記事も一緒に読んでください。

Cわかりやすさだけを追求したサイトに注意
子どもの世話をしている保護者は毎日大忙しですから、目に入りやすく、わかりやすい言葉で書かれ、しかも自信を持って断言している文章に頼りたくなるときもあるかもしれません。
イラストや図が多かったり漫画形式だったりして、パッと見てすぐに大まかにでも理解できるものは、すごく親切に見えますよね。
制作している側にとっては、内容よりも見やすさを優先したほうが、アクセス数が伸びるという事情もあるのでしょう。

ただし、単純化されすぎた情報は正確でないことが多いものです。
保護者がそれに惑わされて困ったことになっても、誰も責任はとってくれません。
わかりやすいからといって、正しいと思わないようにしましょう

D育児法や治療法の正解が「ある」と思い込むのをやめる
私は小児科医と保護者の両方を長くやっていますが、「子育てに正解はない」とたびたび感じています。

「必ず」という言葉には要注意
病気や体の不調には、いまだに原因も治療法もわからないものが少なくありません。
病気になる原因は単純ではなく、誰かが悪いからでもないのです。
ましてや育児法に正解はありません。
それなりの方法も提案されてはいますが、すべての子どもに効果がある万能な方法というのはないと思ってください。
だからこそ、いつの時代も「子どもが寝ない」「子どもが食べない」などという悩みを持つ保護者がいるのです。

悩んでいるときに「私の提唱する方法なら、必ず寝ます! 食べます! 病気が治ります!」などと言う人がいると、信じたくなる気持ちはわかります。
けれども、「必ず」という言葉には注意しましょう。
どんなにベテランの小児科医や保護者でも、必ずとは言えないはず。
また、その子の状態や、置かれている状況を見ないままでアドバイスはできないものです。

安易に断言するのはむしろ不誠実で、信じるに値しない証拠だと思います。
一生懸命にやっている保護者の方ほど「私が間違っているのでは」と自分を責めがちですが、必ずしも正解があるわけではないので悩みすぎず、ときには子どもの成長や自然な成り行きに任せながら、トライ&エラーでやっていきましょう。

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小だぬきの住居ビルのエレベーターが、工事で今日から10日間完全に止まります
9階に住んでいる身では 階段はキツイ。
そこで 湯治にと 熱海に11泊(すご〜ぃ)。
給付金を利用して 温泉・散歩・睡眠を楽しみます。
果たして 湯治後の糖尿外来の検査結果はどうでるか・・
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2020年06月09日

「やっているふり」の安倍政権 横田滋さんは失意の憤死

「やっているふり」の安倍政権 
  横田滋さんは失意の憤死
2020/06/08 日刊ゲンダイ

「断腸の思い」なんて、どの口が言うのか。
やる気がないのか無能なだけか。
いずれにしろ、もう結果責任を取るべき段階だ。

北朝鮮に拉致された横田めぐみさんの父で、拉致被害者家族会(家族会)の初代代表だった横田滋さんが5日、87歳で亡くなった。
愛娘との再会を果たせぬままで、どんなに無念だったか。
悲報に接した多くの国民がやり切れない思いを抱えている。

 安倍首相も同日夜、私邸前で取材に応じ、こう語った。
 神妙な顔つきで「断腸の思い」と言うわりには、よくもまぁペラペラしゃべれるものだ。
だいたい、意味が分かって使っているのか。

「断腸」の言葉は、中国の故事に由来する。晋の武将が船で戦場に向かう際、従者が峡谷で子猿を捕まえて船に乗せた。
それを見ていた母猿は悲痛な声を上げながら船を追い、百里ほど行ったところでようやく船に飛び乗るのだが、心労のためか、泣きわめいて苦しみ、すぐに死んでしまった。
その後、母猿の腹を割いてみると、腸が無残に断ち切れていたというのだ。
 子を思う気持ち、耐え難い苦しみ。
横田滋さん夫妻の心境も同じだろう。
「断腸の思い」は拉致被害者の家族が声を振り絞って発する言葉だ。
毎度、「思いを新たに」するばかりで、拉致解決に向けて何もしてこなかった安倍が、軽々に口にすべきではない。

■お涙頂戴で終わらせてはいけない
 拉致被害者家族会の事務局長だった蓮池透氏が憤りを隠さずに言う。
「今年2月に拉致被害者の有本恵子さんの母・嘉代子さんが亡くなった時も、安倍首相は『元気なうちに恵子さんを取り返すことができなかったことは痛恨の極み』と言っていた。
断腸の思い、痛恨の極みなどの過剰な表現や、『その手で抱きしめるまで』と情緒に訴えるだけで、実際は何もしていないじゃないですか。
いつも口先だけなのです。

選挙になると拉致を持ち出して、人気取りに利用する。
北朝鮮ヘイトをあおって選挙に利用したこともありました。
しかし、解決に向けては何もしないどころか、『対話のための対話はしない』と制裁強化で北との関係を悪化させ、解決の糸口さえ失ってしまった。

本気で拉致被害者の帰国に取り組む気があれば、北の脅威をあおるような政治利用はしないでしょう。
横田滋さんの無念の訃報に安倍首相の口先の弔意を重ねて、“お涙頂戴”の美談仕立てにする大マスコミも罪深いと思う。
拉致を政治利用するだけで何の進展も得られない首相の責任を今こそ追及すべきです」

 拉致問題解決は、第2次安倍政権の「最重要課題」だったはずだ。
当初は、自分の任期中に解決すると豪語していた。
それが本来の任期を過ぎ、党則破りで総裁任期を延長しても、いまだ手付かずなのだから何をかいわんやである。

拉致問題が解決しない方が都合がいいから放置してきた
 安倍のやる気のなさは、「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」(救う会)や家族会、拉致議連が毎年開催する「国民大集会」への姿勢を見ても明らかだ。
2018年も19年も、出席して挨拶するシーンをメディアに撮らせると、公務や政務を理由に中座。
ところが実際はそのまま私邸に帰宅していた。
結局、“やってる感”の演出だけなのだ。

「拉致議連の会合にも来たことはありませんよ。
たまたま小泉訪朝に同行して拉致問題に取り組むイメージがついたから、それを利用しているだけで、実際は関心が低いのだと思う。
本気で解決する気があれば、アントニオ猪木氏とか山崎拓元副総裁とか、北とのパイプがある人間を使えばいいのに、やらない。
“拉致の安倍”なんてまったくの虚構で、まるで自分の政権で解決できるかのような期待を持たせてきた責任は重大です」(自民党ベテラン議員)

 安倍には、政府が認定する拉致被害者の生存情報を握りつぶした疑いもある。
14年、北朝鮮が拉致被害者の田中実さんら2人の生存情報を非公式に日本政府に伝えたが、非公表にすることを決めたとされる。
この件について国会で質問された安倍は、「今後の対応に支障を来す恐れがあり、コメントを差し控える」とスットボケていた。
「田中実さんは日本に身寄りがほとんどなく、家族会にも関係者がいないから、“やってる感”の演出に利用できないと考えて無視したのでしょう。

横田滋さんは生前、『認定拉致被害者の優先帰国にこだわらず、帰国できる人から帰国させるべきだ』と話していました。
しかし、安倍政権と救う会は『拉致被害者全員の即時一括帰国』をスローガンにしている。
あまりに非現実的で、絶対に不可能な要求を北朝鮮に突きつけて拉致問題を解決させないようにしているとしか思えません。解決しない方が、安倍首相にとって都合がいいからです。

横田滋さんは公の場では決して批判しなかったけれど、政府のやり方に対して言いたいことは山ほどあったと思います。
ここ数年は飲酒の量が増えていました。
相当なストレスがあったのでしょう。
拉致をさんざん政治利用するだけで解決に動かなかった安倍首相には、『冥福を祈る』なんて言って欲しくない。
嘘つきで薄っぺらで冷酷な首相に横田滋さんは見殺しにされたようなものです」(蓮池透氏=前出)

■クマの足の裏のように厚いツラの皮
 北の脅威をあおり、制裁強化を諸外国に説いて回って、「国難選挙」まで断行したのに、米朝首脳会談の開催が決まったら、手のひら返しで無条件の日朝会談を言い出す無定見。
 米国のポチぶりをいかんなく発揮し、トランプ大統領に拉致問題の解決をお任せするありさまだった。 
 そういう対米追従の足元を見透かされ、北から「クマの足の裏のようにツラの皮が厚い」とコキおろされて、相手にもされなくなってしまったのが現実だ。

 北の核問題を解決するための6カ国協議の枠組みで、金正恩と会えていないのは日本の安倍だけなのである。
「拉致問題の当事国なのに、独自のルートも戦略もないまま、イメージだけで拉致問題を振りかざし、いつの間にか蚊帳の外になってしまった。

安倍政権がやってきたのは拉致問題を利用して北の脅威をあおり、偏狭なナショナリズムに国民を追い込んで、軍拡と改憲につなげることでした。
そのシンボルに横田夫妻が使われた。
慰安婦や徴用工の問題を糊塗するためにも、被害者の立場を強調できる拉致問題が存在することは都合がいいのです。
だから、あえて解決しようとしなかったようにも見える。

安倍首相にとっての拉致は、人権問題でも被害者救済でもなく、ひたすら政権浮揚に使ってきただけなのに、今さら拉致被害者家族に寄り添うポーズを見せるのは、しらじらしいにもほどがあります。
涙の演技にだまされてはいけない。
政権延命に拉致を利用しているだけなのです。
安倍首相が政権にとどまる限り、拉致問題の解決はあり得ません」(政治評論家・本澤二郎氏)

 安倍が辞めることが、拉致問題解決への第一歩ということだ。
解決を願う気持ちが少しでもあるのなら、志や能力のある政治家にバトンタッチする。
横田滋さんに報いるために安倍ができることは、それしかない。
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2020年06月10日

コロナ禍でも満額受給 国会議員のボーナスに血税23億円!

コロナ禍でも満額受給 国会議員のボーナスに血税23億円!
2020/06/09 日刊ゲンダイ

コロナ禍で多くの国民の収入がガタ減りしているのに、国会議員が巨額のボーナスをシレッと受け取ることが分かり、大炎上している。
それでも安倍政権は早々に国会を閉じ、ボーナス削減の議論すらせず、逃げ切るつもりだ。
“上級国民”の国会議員には、「働かざる者食うべからず」ということわざは耳に届かないらしい。
  ◇  ◇  ◇  
国会議員のボーナス受給については、6日のTBS系「新・情報7days ニュースキャスター」で、ビートたけしが「ボーナス返せよ、この野郎!」と激怒したことで火がついた。
プロレスラーの大仁田厚は〈いまコロナの影響で苦しんでいる人たちがたくさんいる〉〈こんな時だからこそ国民と寄り添う姿勢を見せてもらいたいのだ!〉とツイート。
タレントの鈴木紗理奈も「なんで国民にガマンさせんの! すごいメチャメチャ腹立ちます」と民放番組で発言している。  

衆参両院の事務局によると、国会議員は毎年6月30日と12月10日にボーナスを受け取ることが、「国会議員の歳費及び期末手当の臨時特例に関する法律」によって規定されている。
今月30日には、議員1人当たり318万9710円が満額支給される。
衆参合計で議員は713人。
単純計算で約23億円の血税がボーナスとして議員らの懐に入ることになる。
批判が噴出するのも当然だ。

 大多数の国民が不信感を募らせているのは、巨額のボーナスを受け取るクセに安倍政権がさっさと国会を閉じようとしていることだ。
コロナ禍で多くの国民は苦しんでいる。
一律10万円の支給も、中小、個人事業主への持続化給付金も、手続きが煩雑で支給が滞っている。
生活保護受給者も増加傾向である。

政治家は、国会を閉じて「ステイホーム」を決め込む前に、国民を救うための審議を常に国会でするのが筋なのではないか。

高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)はこう言う。 
「国民と痛みを共有するというなら、国会議員はボーナスの受け取りを辞退すべきでしょう。
満額受給は理解できません。
そればかりか、今月17日には早々と通常国会を閉じるというのだから、これは怠慢です。
政府は今後もコロナ対策を打っていくと明言しています。
それならば、常時国会を開き、コロナ対策予算の妥当性を審議しなければなりません。
ただでさえ、持続化給付金の事業費を“幽霊法人”が中抜きしていると指摘されています。

今、議会で予算のチェックをしなくてどうするのでしょう。
国会閉会で『逃げ切り』は許されません」

 国会は表向き、歳費の2割カットを決定している。
しかし、実際は報酬の1割にも満たない。
文書通信交通滞在費など“諸手当”を含めると、国会議員の年収は約4000万円にも上るからだ。
「歳費2割」は実質、全体の8%にしかならない。
国会を閉じて仕事もせず、「ボーナス満額」でウハウハとは、国民をなめるにもほどがある。
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2020年06月11日

江川紹子の提言「裁判所は安易に傍聴席を削るな」…“裁判の公開”の原則の遵守を

江川紹子の提言
「裁判所は安易に傍聴席を削るな」…
“裁判の公開”の原則の遵守を
2020.06.09 ビジネスジャーナル

 新型コロナウイルス蔓延に伴う緊急事態宣言が解除され、止まっていたさまざまな企業や機関が動き出した。
緊急事態宣言の下で停止状態に近かった裁判所も、裁判員裁判を再開するなどその機能を取り戻しつつある。
ただ、傍聴席を大幅に削減するなど対策の過剰さも見られ、「裁判の公開」に及ぼす影響が懸念される。

裁判所の過剰なコロナ対策
たとえば、6月4日午前に行われたリニア談合事件の裁判
JR東海が2027年に開業を目指す中央新幹線の品川、名古屋両駅工事の入札で、ゼネコン4社間で受注調整が行われたとして、大成建設と鹿島建設、それに両社の元幹部2人が独占禁止法違反の罪に問われている事件だ。
 証人尋問や証拠の採用などの実質審理は3月までに終え、検察側の論告・求刑公判は4月9日に行われるはずだったが、延期された。
6月4日には、この論告・求刑が行われた。

 この事件の審理で使われる104号法廷は、東京地裁の刑事法廷のなかで最も広く、傍聴席は98席ある。
この日は、傍聴券の発行があり、それを求めて64人が並んだ。
16席が報道用の記者席に使われるとしても、本来なら無抽選で全員が傍聴できるはず。
ところが、裁判所が一般傍聴席として用意したのはわずか18席のみだった。
 記者席は通常通り1人1席だが、それ以外は座席の3分の2に「使用禁止」の紙が貼られ、座れないようになっていた。
 一般傍聴席のほかに、事件関係者のための特別傍聴席が9席確保されており、そのうち少なくとも4席には、被告人の弁護人が座った。
裁判所が弁護人席に座る弁護士の数を7人に限定し、バーのなかに入れなかった弁護人のために、一般傍聴席を減らし、特別傍聴席を用意したのだ。

 今なお感染症のリスクがあるなかでの再起動に、慎重になるのはわかる。
しかし、傍聴人は開廷中、前を向いて静かに座っているだけで、一切言葉を発しない(発言すれば、退廷を命じられる)。
裁判所側が椅子の肘掛け部分を消毒し、傍聴人にはマスクの着用や入廷時の手指の消毒、咳やくしゃみを連発している場合の傍聴自粛を求めれば、傍聴席で感染するリスクは、極めて低いのではないか。
 それを考えれば、裁判所のこの対応は過剰ではないか。

危険な「まず傍聴席を削る」という発想
 今回のコロナ対策を理由にした対応以外でも、最近の裁判所は「裁判の公開」に対する配慮に欠けた措置がしばしば見られる。
 今年1〜3月に横浜地裁で行われた、障害者施設・津久井やまゆり園での殺傷事件の裁判では、法廷の傍聴席84席のうち約4割に当たる34席を、本来の目的とは異なる、臨時の被害者参加人席とした。
そのため、記者席を除いた一般傍聴席は27席しかなくなった。
 被害者席はパーテーションで囲って見えなくする遮蔽措置を施していた。
一般傍聴席から“分断の壁”を設けたことで、確認するのは難しいが、毎回傍聴に訪れている被害関係者はそれほど多くなかったようだ。
私が傍聴に訪れた時にはわずか6人だったと、傍聴した被害関係者から伝え聞いた。

 本件は、社会的にも関心が高く、連日傍聴券を求めて多くの人が並んだ。
傍聴できなかった人がたくさんいる一方で、被害者席に転用された傍聴席はガラガラ、けれどもその様子は確認できない、という異常事態が放置されていたのだ。

 裁判の公開は、憲法で定められた非常に重要な原則だ。
裁判所も、当然それは理解している。
 今年2月には、被告人の護送を担当した警察官が誤って傍聴席側のドアを法廷内から施錠してしまったまま一審判決が言い渡された事件で、東京高裁は「自由に審理を傍聴できなかった」と指摘し、憲法に反すると判断して、一審の前橋地裁太田支部の有罪判決を破棄し、審理を地裁に差し戻す判決を言い渡した。

 最高裁は、裁判公開の意義を、「裁判が公正に行われることを制度として保障し、ひいては裁判に対する国民の信頼を確保しようとすることにある」(レペタ訴訟最高裁大法廷判決/1989(平成元)年3月8日)と認定している。

 しかし、その理念が本当に形になっているだろうか。
 国民の信頼を確保する、という趣旨を踏まえれば、単に法廷のドアの鍵を開けておき、1人でも傍聴できればよいというものではなく、国民の傍聴機会はできるだけ守る、という発想にならなければおかしい。
 裁判員裁判が行われて、国民が司法に参加するようになった今、国民の傍聴機会を守り、裁判の公開を充実させることは、ますます重要になっているといえるだろう。

コロナ対策といい、関係者が多い事件での被害者対応といい、「何かあったら、まず傍聴席を削る」という裁判所の発想は、この時代の要請に逆行している。
 裁判所では、性犯罪の被害者など、被告人がいる法廷にどうしても出廷できない人に証言させる場合、別室に証人を呼び、法廷内のモニターに映像と音声を送るビデオリンク方式で尋問を行うことがある。
 やむを得ず傍聴席を削る場合には、同じ仕組みを使い、別の法廷や会議室などに傍聴希望者を入れて、傍聴の機会を設けることも、技術的には可能だ。
 あるいは、被害者参加人が多くてバーのなかに入りきれず、そのうえ遮蔽措置を求めている、というやまゆり園事件のようなケースでは、被害関係者が別室でビデオリンク方式によって安心して傍聴してもらえるようにしてもいいのではないか。  
いずれにしても、まずはそうした工夫をしてみるのが先で、安易に傍聴席を削減するべきではない。

横行する証人の匿名化や遮蔽措置
 また、裁判の公開という点では、証人の匿名化や遮蔽措置が、これまた安易に行われているように見えることも、気がかりだ。
 たとえば、今年2〜3月に千葉地裁で行われた、野田市の小4女児虐待死事件の父親が裁かれた裁判では、通常の形での証人尋問が行われたのは専門家証人だけ。
先に執行猶予付きの有罪判決が確定している被害者の母親(被告人の妻)がビデオリンク方式で証言したほか、被害者が通っていた小学校の担任教師、児童相談所職員、被告人の母親などは、すべて匿名で、遮蔽措置が施されての証言となった。

 法廷内では、報道機関であっても、証人の姿を撮影することはできない。
この裁判では、手荷物は預けさせられ、傍聴人が法廷に持ち込めるのはノートや貴重品などに限定されており、そのうえ金属チェックや警備係によるボディチェックも入退廷のたびに行われており、隠し撮りの危険も皆無に等しい状況だった。
また、裁判所は証言内容のみならず、証人の証言態度を含めて信用性などを判断し、判決に反映させることを考えれば、傍聴人にとっても、証言を「聞く」だけでなく、その態度等を「見る」ことは意味がある。
それを制約することは、「裁判の公開」の部分的な制約とさえいえるのではないか。
そのような措置には、裁判所は本来、慎重でなければならない。

 被告人にしろ、証人にしろ、公開の法廷で、傍聴人の目にさらされることを自ら望む人はほとんどいないだろう。
できれば非公開の法廷で、さもなければ遮蔽措置を望むのは当然の心情だ。

 しかし、そうした心情に寄り添うより、司法にとっては、「裁判の公開」を厳守することを優先すべきだろう。
そうすれば、ビデオリンクや遮蔽や匿名化などの措置は、
1)被告人と証人が、暴力団の親分子分やDVなどの加害者被害者のような関係で、通常の形では適切な証人尋問が行えず、必要な証言が得られないおそれがある
2)通常の形で行うと、証人の人権が著しく侵害されるおそれがある  といった、特殊なケースに限られる。
こうした措置を導入したのも、このような例外的な対応としてのはずだった。

 にもかかわらず、いつの間にかその規律が緩み、安易な遮蔽措置、匿名化が行われるようになった。
2014年に行われた、オウム真理教の逃亡犯の裁判では、被告人が入信する以前に友人関係にあったというキリスト教教会関係者の証人尋問が、匿名かつ遮蔽で行われた。
その内容は、入信前の被告人の人柄や、脱会しているのであれば出所後は応援したいという程度のもの。
被告人との特殊な力関係にあるわけでも、証人の人権が脅かされるわけでもない、ごく一般的な情状証言だった。
 こういうものまで、「証人が望んでいるから」というだけの理由で匿名化し、遮蔽措置まで施すのでは、「裁判の公開」は後退してしまう。
 裁判所は「裁判の公開」原則を、大事にしてもらいたい。

ニュースサイトで読む: https://biz-journal.jp/2020/06/post_161895.html Copyright c Business Journal All Rights Reserved.
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2020年06月12日

コロナ禍で蔓延するフェイクニュースから我が身を守る3法則

コロナ禍で蔓延するフェイクニュースから我が身を守る3法則
2020年06月11日 PRESIDENT Online
フリージャーナリスト 烏賀陽 弘道

フェイクニュースに騙されず、正しい情報を得るにはなにを心がけるべきなのか。
ジャーナリストの烏賀陽弘道氏は「コロナ関連の報道では大手メディアにもフェイクニュースが氾濫した。
あらゆる活字媒体で働いた経験から、フェイクを捨て、ファクトを得る3つの方法を紹介する」という――。

■「情報のカオスの海」でファクトを見定める
筆者は新聞記者→週刊誌記者→編集者→フリー記者と、活字媒体のあらゆる職種を経験してきました。
そうした職業生活の中で自然に身につけた「事実の見つけ方」があります。
いま現在、旧型メディアは衰退し、現在の私たちは深くて広い「情報のカオスの海」に投げ出された状況です。

そこは虚偽の情報(フェイク)と事実(ファクト)が混在している海でした。
新型コロナ関連の報道でも、数多くのあやふやな情報、フェイクといって構わない情報が氾濫したのはご存じの通りです。
膨大な情報からいかにしてフェイクを捨て、ファクトを得るのか。
経験則も踏まえながら執筆したのが『フェイクニュースの見分け方』(新潮新書)という本です。
今回はその中からいくつか、私なりの法則を述べてみましょう。

まず、強調したいのは、「証拠となる事実の提示がない『オピニオン』(意見)は全部捨ててかまわない」という法則です。ファクトの裏付けがないオピニオンが社会にとって重要なことはほとんどありません。
あっても、それは例外的なことだと考えてよいでしょう。
たとえば、2015年、東日本大震災後、停止していた原発を再稼働するにあたり、ある文芸評論家の方が、懸念を示すコラムを新聞に書いていたことがありました。
その理由がいくつも並べて書かれています。

■証拠となる事実の提示がないオピニオンは全部捨てる
ところが、精査してみると、どこにも裏付けになる「事実」の提示がありません。
評論家は電力会社幹部の心や経産省の思惑等々があるのだろう、といった理由を述べ、こんな理由で再稼働をすべきではないと主張するのですが、その根拠となる事実(エビデンス、証拠、論理)がなかったのです。
つまり文面から判断する限り、挙げられた理由はすべて「筆者の想像」にすぎないと考えざるをえません。
「全部捨ててよい」と述べた「オピニオン」とは、こうした「論拠となる事実を欠いた記述」を指します。

「個人の主観」「想像」「空想」「推量」「感想」などと言い換えてもいいでしょう。
その内容には「単なる妄想、空想あるいは当てずっぽう」から「ほぼ事実」までレンジがあります。
もちろん他人のオピニオンに耳を傾ける必要はあります。
とりわけ好きな作家やアーティストの意見を聞くのは楽しいことでしょう。

しかし、事実を確認しよう、「真実」「ファクト」に迫ろうという作業においては、論拠となる事実を提示していないオピニオンは捨てるべきです。
反対に、裏付け、論拠、根拠となる事実を伴ったオピニオンを英語で「ファクト・ベースド・オピニオン(Fact Based Opinion)」といいます。
こちらは捨てる必要はありません。
根拠の提示がないオピニオンが社会で価値を持つのは、むしろ例外と考えた方がよいでしょう。

■オピニオンが価値を持つのは例外に過ぎない
かつては、マスメディアそのものを企業が独占していました。
そのため、特定の人だけが言論を公的に表明できる特権を享受していました。
そのメディアの社員記者か、評論家、学識者など発言者としてつながるという「特権」がなければ、マスメディアで社会に言論を表明することができませんでした。
だから、その「特権者が何をオピニオンとして言うのか」も注目を集める社会的価値がありました。
そういう時代にはある程度、文芸評論家の○○さんのオピニオンといったものにも価値があったのでしょう。
しかし、すでにそうした「マスメディアで言論を表明できること」の特権性はなくなります。

誰もが言論を発信し始めてみると、旧型メディアに連なっていた発言者より、はるかに優れた見識や知識、感性、着想や思考力を持つ人材が市井に多数いることがわかってきたのです。
ただ、例外的にオピニオンが価値を持つケースがあります。
それはオピニオンそのものが「事実」として重要性を持つケースです。

たとえ言っていることが無茶苦茶であっても、トランプ大統領のオピニオンは、それ自体が大きな影響力を持ちます。
発言者そのもの、またはその言動や行動が重要性を持っているからです。
しかし、こういう「社会全体に重要性を持つ発話者」はほとんどいません。
アメリカ大統領だとか、あくまでも例外的だということは強調しておきたいところです。

■「識者」「コメンテーター」に依存するメディア事情
本来、何かの主張をしたい場合は、ファクトで勝負すべきなのですが、上に挙げたようなコラムで、メディア側が何となく自身の主張に近いオピニオンを掲載することは珍しくありません。
こうした「記者が根拠となる事実を取材してとらえる」ことができなかったとき、「記者が事実を書く代わりに、その媒体が言いたいことを発言する話者」を私は「代理話者」と呼んでいます。
新聞や雑誌に登場する「識者」、テレビでの「コメンテーター」という立場は、この「代理話者」にあたります。

新聞社勤務時代、私は「識者のコメントを取材して載せるくらいなら、その内容を証明するような事実を取材して書け」と教えられました。
識者コメントはそれができず、論拠が弱い時の「ごまかし」だと教わりました。

代理話者の発言が掲載されていることは「裏付けとなる事実の取材ができなかった・足りなかった」という記者にとっては「敗北」だったのです。

■自分たちの主張に沿ったコメントを取りに行くメディア
こうした文化が廃れ始めたのは、新聞や出版の企業としての業績が下り坂になった90年代半ば以後でした。
経費削減などの影響で取材にあてる時間が短縮され、記者が取材した記事だけでページを埋めることが難しくなりました。
その代わりに代理話者のコメントが増えたのです。
最後には筆者を固定した「コラム」「エッセイ」など「連載もの」で紙面を埋めるようになってきました。
そのほうがコストが少なくて済むからです。

朝日新聞なら朝日新聞で、自分たちの主張に沿った内容を発言してくれそうな代理話者はある程度事前にわかっている。
気の利いた記者なら、それをリストアップし、連絡先(電話番号、メルアド、SNSのアカウントなど)を用意しています。
これは新聞社でなくとも、週刊誌を発売する出版社やテレビ局でも同じです。
そうするうちに「インターネット系ならあの人」「言論の自由がらみならあの人」というふうに「常連」ができてきます。
その媒体の方針に沿った内容を言う代理話者の顔ぶれで「あの人は××系」「◯◯系」と「色分け」ができるようになるのです。

「識者」「コメンテーター」がメディアに出てきたときは、実は「メディアの言いたいことを代わって発言する代理話者」ではないか、と疑ってみてください。
そういう視点は絶対に必要です。

■主語が明示されていない文章は疑う
また、近年、新聞でよく見られる表現で気を付けたほうがよいのが「主語が明示されていない文章」です。
1980年代、私が大学を卒業して新聞記者として働き始めたとき、上司(デスク)に厳命されたのが、「記事では、主語が何かわからない文章を絶対に書くな」でした。
その悪例のひとつが「〜れる」「〜られる」で終わる「受身形」です。
うっかりそういう文章を記事に書いて出すと、ズタズタに直されて、ボロクソに叱られたものです。

なぜ主語の明示が必要なのでしょう。
報道では、記事に必ず盛り込まなくてはいけない要素は「5W1H」です。

Who:誰が 
When:いつ 
Where:どこで 
What:何を 
Why:なぜ 
How:どのように

――この6要素がなぜ重要かというと、それによって「事実A」を「他の事実B」と分離・特定することができるからです。
この中でも「誰が」行為Aをしているのか、という主語の特定がもっとも重要であることは言うまでもありません。
ところが、こうした原則はいまやどこかにいってしまったかのようです。

「党内では○○○といった臆測も流れた」
「この決定そのものが「誤算」続きだったとの指摘もある」
「このままだと選挙は厳しいと予想していたからだとされる」
「党内ではもはや死に体だとの見方が強まってきた」
こうした言い回しをご覧になることは珍しくないのではないでしょうか。
憶測を流した、指摘をした、予想をした、見方を強めた等の主語がきわめてあいまいです。
こうした文章は、私の新米時代のデスクなら「誰がそう言っているんだ?」と言って書き直していたはずです。

■主語が不明確な文章は、発信者の思惑が含まれている可能性も
私がふだん読んでいる英語のニュース媒体なら、匿名にしてソースを伏せるにしても、何らかの主語が明記されています。
こうした主語が不明確な文章はなぜ有害なのでしょうか。
それは「どれくらい事実と考えてよいのか」が読者にわからないからです。
誰が「憶測」しているのか。「見方をしている」のか。複数なのか、単数なのか。国会議員なのか。職員、党員なのか。
あるいはどこかの新聞・テレビの政治担当記者がそう言っているのか。
あるいは筆者自身がそう思っているだけなのか。
極端な場合、取材しないで作文したのかもしれない。
こうした情報にもまた発信者の思惑や意図が含まれている、すなわちフェイクである可能性が十分あります。

ここに挙げたのは、私なりの職業経験から導いた法則のようなものです。
これは単なるオピニオンではないか」 「この人は代理話者ではないか」 「このエピソードの主語は誰なのだ」 といった視点を持つことによって、フェイクニュースに騙されるリスクは下げられるだろうと思います。

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烏賀陽 弘道(うがや・ひろみち)
フリージャーナリスト 1963年生まれ。
京都大学経済学部卒業後、朝日新聞社に入社。
名古屋本社社会部、「AERA」編集部勤務などを経て2003年退社。以降、フリージャーナリストとして活動。
著書に『「朝日」ともあろうものが。』『報道の脳死』『報道災害【原発編】』(共著)など。
■写真ウエブサイト:https://www.ugaya.org
■ネット連載記事「フクシマからの報告」
■Twitter:@hirougaya
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<小だぬき>
熱海も6泊目を迎えました。
いくら「エレベータ、10日工事停止」のためとはいえ 11泊というのは 飽きるかな・・・と初め思いましたが、あっという間に湯治生活は過ぎていきます。
朝 温泉にはいり 散歩して PCに向かい、夕方 寝る前の温泉。
冷房の効いた部屋で 疲れたらウトウト。
睡眠もたっぷりです。

熱海の駅前は 改築され綺麗なビルに。
バスターミナルやホテル送迎バス乗り場の整備など 昔の雑然とした駅前の記憶からすると「浦島太郎」状態。
多くのホテルが まだ自主閉館していて にぎやかさには遠いです。
予約が入らない、観光客、団体客の足が遠のいているとのことです。
また いくつか倒産したホテルの残骸が残っているのと 自主閉館継続ホテルとで 親水公園などの散歩も一人というのが多いです。
コロナウィルスの自粛要請の影響が 観光地を直撃しているようです。
エレベータ工事が 予定通り17日で終わってくれることを祈って、湯治中間点も のんびりまったりしています。
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2020年06月13日

コロナで総理は嘘をつき政権は税金ドロボー 今こそさよならを

コロナで総理は嘘をつき政権は税金ドロボー 今こそさよならを
2020.06.12  週刊ポスト

 新型コロナの感染拡大が始まって緊急事態宣言が出され、全面解除されるまで、安倍晋三首相は8回の記者会見を開き、直接、国民に語りかけた。
 だが、その言葉は常に空虚で国民には響かない。

自粛であらゆる業種は経営危機に瀕し、長い耐乏生活を強いられた。
「その苦しみは痛いほど分かっています」「断腸の思い」「歯を食いしばって耐え抜く」
 役人の作文を棒読みする口調からは、国民の痛みへの共感は見られない。

「空前絶後の規模、世界最大の対策」によって「世界で最も手厚い助成金」を配るとも聞かされた。
言葉は踊るが、お金はまだ国民には届かない。
 コロナ対策の遅れを問われたとき、あるいは自粛下の黒川弘務・元検事長の賭け麻雀辞任で国民の怒りを買ったとき、この総理はびっくりするほど簡単に「責任」を口にした。

「総理大臣として当然、責任はある」
 でも、反省の素振りはない。
その言葉は政府の判断や官僚の行為の最終責任は行政の長である首相にあるという「制度上の責任」を説明しているだけで、自身の責任を感じているわけではないからだ。
だから、身内の昭恵夫人の花見や旅行が発覚すると、「公園の花見ではなかった」「3密ではない」と言を左右にして責任を逃れようとした。
 そして緊急事態宣言を解除するとき、安倍首相は国民に「耐えてくれてありがとう」と言うのではなく、真っ先に「まさに日本モデルの力を示した」と自らを勝ち誇った。

 口から出る中身のない虚ろな言葉を「嘘」という。
そして嘘つきは泥棒の始まりである。
総理が嘘をつき、政権は“税金ドロボー”に走った。

 国民が外出を控えていた間、経産省はコロナ対策事業を実績のない団体に発注し、そこから下請け、孫請けに丸投げさせて“中抜き”させていた。
他の官庁でも、役人たちは巨額の予算をコロナに関係ない事業への“流用”にいそしんでいる。
 そのうえ国民への10万円支給が遅れに遅れているのに、自民党国会議員は税金から200万円もの“特別給付金”を前倒しして受け取っていたのである。

 そして今まさに「泥棒」の行為を「嘘」で正当化しようとしている。
嘘つきも泥棒もこの国には要らない──「さよなら」を言うのは今だ。

※週刊ポスト2020年6月26日号
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2020年06月14日

生活必需品が高騰…庶民を襲うコロナ禍での値上げラッシュ

生活必需品が高騰…庶民を襲うコロナ禍での値上げラッシュ
2020/06/13 日刊ゲンダイ

 厚労省の毎月勤労統計によると、4月の実質賃金は、新型コロナウイルスの影響で残業代が大きく減り、2カ月連続のマイナスとなった。
夏のボーナスも期待できず、収入は減る一方だが、この先、さまざまな理由の値上げが相次ぐ。
家計はボロボロだ。

 ステイホームの巣ごもり需要により、品薄になっていた家庭用小麦粉は、日清フーズが9月1日出荷分からの値上げを打ち出した。
値上げ予備軍も控えている。
ヨーグルト、乳酸菌飲料、野菜飲料はコロナ禍で健康志向が高まり、需要が伸びている。
また、家庭用バターが品薄になっている。
これらは値上げの可能性がある。

 さらに、コロナの影響以外にも幾多の値上げが待っている。
削り節大手のマルトモは混合削り節を8月3日出荷分から値上げする。
サバやイワシなどの漁獲量が減少したからだ。
値上げせざるを得ない原料事情があるのだ。

 コロナの影響で急落していた原油価格はじわじわ上昇傾向。
8日時点のレギュラーガソリンの全国平均小売価格は4週連続値上がりし、来週も値上げが確実視されている。

国民健康保険料もアップする。
5月10日時点で213市区町村が値上げを決定している。
 今月末には消費税のポイント還元が終了し、消費税は満額搾り取られる。
1世帯当たり1000円近くの負担増である。

7月からはコンビニなどのレジ袋の有料化が義務づけられる。
近年の地震や大雨などの災害を受けて、火災保険料は昨年10月に値上げしたばかりだが、来年早々の再値上げが濃厚だ。  

コロナ禍によって、高級メロンや高級牛肉の価格は下落しているが、逆に身近なモノが値上がりしている状況だ。
経済評論家の斎藤満氏が言う。
「不況時は物価が下がるのが原則です。
コロナ不況でも、不要不急の旅行や高級品などの価格は大きく下がっていますが、食材など生活必需品は下がっていません。むしろ高騰しているものもある。

また、災害や原油高など個別にコストアップの事情があれば、どんなに景気が悪くても、値上げせざるを得ない。
コロナ不況の最大の問題は、巣ごもりによって必需品の物価が下がらないことです。
庶民にとって最悪です」
 お先、真っ暗だ。
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2020年06月15日

自粛警察「執拗すぎる相互監視」を生む根本要因

自粛警察「執拗すぎる相互監視」を生む根本要因
戦中の隣組、戦前の自警団との意外な共通点
2020/06/14  東洋経済オンライン

新型コロナウイルス感染症拡大に伴って、日本で「自粛警察」が広がった。
市民の相互監視とも言えるこの状況に警鐘を鳴らす声も多いが、戦前との比較で危惧を表明する専門家がいる。
近代日本の軍事史に詳しい埼玉大学の一ノ瀬俊也教授がその人だ。

「かつて太平洋戦争を遂行させるために作られた『隣組』と共通するところがある」。
戦後75年を迎えようとしてもなお、人々の意識が変わっていないという。
その核心は何か。
一ノ瀬教授に聞いた。

「人の役に立ちたい」欲求
そもそも「隣組」は自然発生的に発足し、機能していた地域住民組織だった。
ところが、太平洋戦争が開戦する1年前の1940年、政府の訓令によって正式に組織化される。
10戸前後で組織するよう指導され、全戸の加入が義務付けられた。
「回報」の回覧による情報の一元化、配給の手続きのための重要な基礎組織として位置付けられた。

隣組の役割について、一ノ瀬教授はこう解説する。
「大きく2つの役割が期待されていました。
1つは地方自治の末端組織として、配給などを住民自らに担わせること。
もう1つは、政府の方針を国民1人ひとりに行き渡らせること。
つまり、国民の自治精神を利用して、戦争遂行を図るために作られたわけです。
戦争になれば、国家の国民生活を隅々まで統制しないといけない。
食料などの配給制度は最たるものです。
しかし、政府や地方自治体だけで統制をやるのは非常にきつい。
そこで隣組を使い、国民の協力を得て統制をやろうとしたわけです。
上意下達と下意上達を組み合わせ、ある程度、国民の意見も取り入れて、ガス抜きするような形で戦争の遂行を図っていったところがあります」

戦中の隣組と現在の「自粛警察」。
どこに共通点があるのだろうか。
「隣組では、戦争を批判するような発言を住民が聞きつけて、憲兵や特高警察に密告する行為はよく見られました。
今と共通しているのは、通報する人たちが『お国のため、全体のために』と考え、よかれと思ってやっている点です。
いわゆる自粛警察をやっている人たちはそれが行きすぎて、個人の自由や人権を損なう事態を引き起こしている。
そのへんがかつての隣組と共通している。
『お国のため』という大義名分を得て、人権弾圧などがエスカレートしていくわけですね」

今年8月、日本は戦後75年の節目を迎える。
社会の中核を担う世代は着実に交代していっているのに、住民が相互監視するような社会は繰り返されているように映る。
その原因は「人間の本質にある」と言う。

「人間の中に『人の役に立ちたい』『みんなに貢献したい』という欲求はいつの時代にも存在します。
それがちょっとしたきっかけで、変な方向に暴走する。
人間の本質や性格は何年経っても変わりません。
コミュニティーの役に立ちたいという思い、それ自体は今も昔も悪いことではないんですが……」

新型コロナウイルスに関する国や都道府県の対応は、主に「改正新型インフルエンザ等対策特別措置法」に依拠している。
都道府県知事は同法24条9項に基づき、休業の協力を要請してきたが、協力に応じなかった事業者に対しては、施設使用の制限などの措置を要請できるとの規定がある。
続く第4項は「特定都道府県知事は、第2項の規定による要請(中略)をしたときは、遅滞なく、その旨を公表しなければならない」としている。
この規定に基づき、東京都や大阪府などは休業要請に応じなかった施設の名称を公表した。
施設名が公表されたパチンコ店の前には人々が集まっては「営業やめろ」「帰れ」などと叫び、店側やほかの客らと怒鳴り合う事態も発生した。
こうした様子はテレビやYouTubeでも盛んに流されたので、目にした人も多いだろう。

施設名公表は「私刑」招きかねない
「要請」に従わない店名を行政が「公表」するという条項には、「自主」と「強制」が同居しているように映る。
日本社会に根付く「同調圧力の強さ」を背景に、相互監視を推し進めた素地があるようにも見える。
「自粛は要請だったはずなのに、それに応じない店名を公表する行為には、間違いなく、同調圧力に期待しての部分があったと思います。
『要請に従わない店は周辺から白い目で見られる』という雰囲気ができるのを行政はわかっていてやっている。
それは、私刑(リンチ)の誘発に繋がりかねないんじゃないか。
店名の公表はやはり望ましくなかったと思います。

日本は近代法治国家ですから、私刑はあってはならない。
私刑を誘発しかねない方法を選ぶ行政、私刑で誰かを処罰するような社会は望ましくないと思います」

住民による扶助組織の起源をさかのぼれば、江戸時代の「五人組」「十人組」に行き着く。
その慣習が「隣組」へと引き継がれ、戦後は「町内会」「自治会」という形で残った。
「現在の自治会が担っている防犯活動にもいい面と悪い面、両方あります。
自治会が防犯活動することによって地域の治安が保たれる。
ただ、地域の安全を守る活動を自治会に頼りすぎると、地域から浮いている人が排除されるという懸念も出てくる。
コロナ対応時に浮き彫りになったように、どこまで曖昧さを認め、どこからルールで線を引くのか。
難しい問題だとは思います」

地域の安全を住民の手で守ろうとする動きがエスカレートしたらどうなるか。
一ノ瀬教授の念頭にあるのは、関東大震災(1923年)時の混乱と虐殺だ。
大地震の混乱に乗じて朝鮮人が日本人を殺そうとしているとのデマが拡散。
民間の自警団や憲兵によって、朝鮮人や朝鮮人と誤認された日本人が多数殺害された。
ただし、一連の出来事は住民の活動のみで動いていたわけではない。
大震災に際して政府が発した1本の通達。
その影響も大きかったという。
宛先は各地の警察。
治安維持に努めるよう指示する中で「混乱に乗じた朝鮮人が凶悪犯罪、暴動などを画策しているので注意すること」という内容が記載されていたのだ。

「関東大震災のときの自警団は、最初のころ、行政が治安維持に利用しようとしていたわけです。
ところが、自警団に加わった住民の行為をだんだん行政は止めることができなくなった。
そして虐殺に至るわけです。
戦時中の隣組にしても、戦時体制にからめ取られていく中、“非国民になりたくない”という力学が発生し、威力を持つようになった。
配給などで『食料をあげない、もらえない』みたいな事態になれば、個人の生活が損なわれるからです。
だから、誰も後ろ指を刺されたくない」

「過去に学ぶことは本当に重要」
こうした「社会の暴走」はもちろん、日本だけのものではない。
「第2次大戦中のドイツにおけるユダヤ人に対する密告は日本の比ではありませんでした。
アメリカでも黒人へのリンチが歴史上何度もあったし、今も起こっています。
いつの時代も、どの国でも、ちょっと方向を誤ったり、変なふうに火がついてしまったりするだけで、たやすく社会は暴走します」

「コロナ関係で自粛警察なる動きをする人々についても、その心情は『よかれと思って』でしょう。
国が呼び掛けている方針に『みんなで従いましょうよ』というのが出発点にある。
でも、かつての隣組が『配給食料をやるか、やらないか』という些細なことで人権弾圧みたいなのものを発生させたように、あるいは関東大震災後の自警団が虐殺に手を染めていったように、簡単にエスカレートしていく危険性がある。歴史を研究している立場からすると、過去に学ぶことは本当に重要なんです」

結局、今は何をすればいいのか。
「政府や地方自治体の自粛要請をめぐる対応がどう行われ、その結果、どういう効果や弊害が生じたのか。
きちんと記録に残すことが第一歩です。
その記録を基に、議論することが必要です。
政府の専門家会議などが議事録を作っていないことは、その意味でも非常に問題があると思います」

“自粛警察”に関すると見られる動き

警察などへの通報
・大阪府のコールセンターに「休業要請対象の店が営業している」という趣旨の通報が、4月下旬までに500件以上あった
・「自粛中なのに外でカップルがいちゃついている」などというコロナ関連の通報が愛知県県に多数届く。5月中旬までに400件超
・警視庁によると、新型コロナウイルス関連の110番が急増。
東京都などに緊急事態宣言が発令された4月7日〜5月6日の1カ月間で計1621件に。
休業要請対象のパチンコ店やスナックなどが「営業している」といった内容のほか、「公園で子どもがマスクをせずに遊んでいる」「橋の下でバーベキューをしている」といった内容 店舗などに対する“監視の目”
・千葉県の休業していた駄菓子屋に「コドモアツメルナ オミセシメロ マスクノムダ」という貼り紙
・東京都のライブバーに「安全のために、緊急事態宣言が終わるまでにライブハウスを自粛してください。
次発見すれば、警察を呼びます。
近所の人」という貼り紙
・大阪府の要請に従って時間短縮で営業していたラーメン店に匿名の手紙。
「あなたの店の客が大声で会話している。
『繁盛』イコール『公害』であることを忘れるな」
・営業中の店舗に嫌がらせが続出。
長野県では「コロナ」の名を付した飲食店に3月から無言電話やネットでの中傷的な書き込みが相次ぐ。
横浜市の飲食店では扉に「バカ、死ね、潰れろ!」の落書き
・東京都の商店街の組合に「商店街すべてをなんで閉めさせないんだ、すぐに閉めさせろ。何考えてんだ、馬鹿野郎」「利益を上げていて最低」「恥」など多数の電話
・名古屋市の商店街で休業要請対象外の店などが営業していることに「コロナを発信するつもりか」「二度と買い物には行かない」などのメールや電話が多数届く
・千葉県で県の休業指示に応じないパチンコ店の前で、男性がマイクを手に「営業やめろ」「帰れ」などと叫ぶ
・緊急事態宣言解除の翌日から営業を再開した岐阜県の温泉施設に対し「緊急事態宣言中だ 休業要請対象だろ 営業再開 辞めろ」などのメールが届く “他県ナンバー狩り”も続く
・県外ナンバーの車に乗る県内在住者向けに、山形県は「山形県内在住者です」と太書きした“確認書”の交付を開始。
県外ナンバーの車への嫌がらせが相次いだためという。
“他県ナンバー狩り”に対し、和歌山県なども同様の「県内在住確認書」を交付
・徳島県で県外ナンバーの車に乗る人があおり運転されたり、暴言を吐かれたり、車に傷をつけられたりする事例が相次ぐ。同県三好市は5月、「徳島県内在住者です」という車用の表示デザインを制作
(※上記の動きは朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、中日新聞、共同通信、時事通信、NHK、名古屋テレビ、徳島新聞などの報道(WEB版を含む)をもとに、フロントラインプレスが作成)
取材:当銘寿夫=フロントラインプレス(Frontline Press)
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2020年06月16日

防衛大が軟禁状態で異常事態 脱走、不審火、自殺未遂、賭博

防衛大が軟禁状態で異常事態 
脱走、不審火、自殺未遂、賭博
6/15(月) NEWSポストセブン

 新型コロナウイルス対応では、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」など現場の最前線で活動し、感染者を出さずに任務を遂行した自衛隊。
大規模災害などのたびに、その活動が称賛されてきた自衛隊だが、今回の危機では将来の幹部自衛官を養成する「防衛大学校」の内部で、“戦線崩壊”ともいえる状況が起きていた──。

2000人が“軟禁状態”
 神奈川県横須賀市の三浦半島東南端、高台から東京湾を見下ろす地に、「防衛大学校(以下、防衛大)」はある。
 自衛隊の将来の幹部自衛官を養成することを目的に設置された大学校で、4学年で約2000人が敷地内の寮(学生舎)で集団生活を送っている。
「鋭気に満ちた諸官の姿に接し、自衛隊の最高指揮官として、誠に心強く思います」──。
 3月22日に行なわれた卒業式で、安倍首相はそう訓辞を述べた。
だが、その卒業式から春休みを挟んでわずか1週間後から、防衛大の“異常事態”が始まっていた。

「私たち学生は、3月29日に営内(学内)に戻り、4月1日に1学年(1年生)を迎え入れました。
学生舎では上級生から下級生まで8人単位の居室で生活します。
 しかし、学生たちは集められたものの、新入生の身体検査といった手続きを除けば、訓練も授業も全く行なわれず、その上に敷地からの外出が許されない“軟禁状態”となってしまいました。
ストレスが溜まる状況のなか、脱柵(脱走)や自殺未遂が相次ぎ、挙げ句は賭博行為が発覚したり、放火が疑われるボヤ騒ぎまで起きているのです」
 そう話すのは、最近になって自主退学を決めた元防衛大生だ。
同様の判断をする学生は多く、「すでに4月以降、30人以上もの自主退学者が出ていて、どんどん増えている」(防衛大関係者)というのである。

将来の自衛隊を担う人材を育てていく組織にとって“戦線崩壊”ともいえる状況だ。
 およそ2か月の間に、防衛大で何が起きていたのか。
元学生が続ける。
「新型コロナの影響で4月5日に予定されていた入校式典は延期(5月になって中止を発表)になり、その直後の同7日に緊急事態宣言が発令されました。
結果、教務(授業)や校友会(クラブ)活動の時間がすべて自習時間ということになった。
私たちの居室は、『寝室+自習室』がセットになっていて、自由に移動できるのは学生舎の中だけ。
起床後は清掃と食事、自習時間の繰り返しで、夕方に入浴して夕食というサイクルをひたすら続ける日々となった」

 この生活が、とくに防衛大に入ったばかりの新入生には相当なストレスとなっていたという。
「上級生の指示には絶対従うという組織ですから。
上下関係の厳しさはコロナに関係なく平常時も同じですが、授業や訓練があれば、そこでは同じ学年だけになる。
それでストレスが緩和されるのですが、コロナで授業がない上に、普段は認められている週末の外出もない。
毎日24時間、同じ居室の上級生たちと一緒になるわけです」(同前)

40人以上がPCR検査
 4月上旬には学生たちにいったん帰省できるという情報が伝えられたこともあったというが、結局、実現しなかった。
そうしたなかで、脱柵が起きたという。
「4月のはじめ頃は規制もそこまで厳しくなくて、ランニング等での外出が認められていました。
ただ、ランニングの名目で外に出た学生がそのまま戻ってこないという事態が起きたのです。
 それ以降は、ランニングの際も複数人で距離を取りながら走るように指示が出ました。
脱柵者が出ると、その所属部隊の全員が駆り出されて校内捜索です。
結局、この時の脱柵者は両親のいる実家で見つかって戻ってきましたが、管理体制は厳しくなっていきました」(前出の元学生)

 全国の多くの大学では、早い段階から学生が在宅で講義を受けられるようにオンライン授業の環境整備が進んでいった。
文部科学省の調査によれば、5月12日時点で全国1070大学等のうち、検討中のところを含めれば全体の96.7%が遠隔授業による対応にあたっていた。
 ところが、防衛大ではシステム上の問題を理由に、オンライン授業が行なわれることは一切なく、学生たちも家に帰ることができないままとなったのだ。
 緊急事態宣言の解除後も、問題は解決していない。
座席の間隔を空けられる大教室の数が限られるなどの事情から、オンライン授業を行なっていないにもかかわらず、「対面授業の再開にはまだ1か月以上かかるのではないか」(前出・防衛大関係者)といわれているのだ。

 集団生活のなかで感染者が出ればクラスター化する懸念がある。
学生たちにも事細かな注意事項が与えられたという。
ただ、講じられた対策が十分だったかには疑問の声もある。
 食堂での食事や浴場の利用時間をグループごとに分けられたというが、入れ替えなどで並ぶ時に長い列ができており、感染リスクのある「3密」が避けられていたとは言い難い。
前出の防衛大関係者がいう。
「体調を崩す者も出てきて、学生たちの間では“感染者が出たのに隠蔽されているのではないか”というようなことも囁かれる状況が生まれた。
4月中旬に学校長が放送で『現段階で感染者はいない』とわざわざ呼びかけたといいます。
実際、体調不良を訴えた学生40人以上がPCR検査を受ける事態を招いた」

LINEで「今から飛び降りる」
 防衛大関係者が続ける。
「ストレスを苦にしてか、学内では自殺未遂行為も相次ぎました。
首吊り、リストカット、飛び降り2件という少なくとも4件が確認されているのです」

 前出の元学生は、そのうちの1件について、「飛び降りた学生には前兆のようなものが全くなく、突然の行動だったと聞いています」と証言する。
「その学生は、同期生たちと一緒にPX(売店)に行ったのですが、学生舎に戻ってきたら姿が見えなくなっていたというのです。
“あれ、どうした?”と同期生たちが騒ぎ始めたところで、本人から『今から飛び降る』というLINEがきて、食堂脇の建物の2階から飛び降りたのだと聞きました」

 学生に対しては、各中隊の指導官が約2週間に1度、説明会を行ない、そこで自殺未遂があったことなどが告げられたというが、不安はどんどん募っていった。
現役学生の一人がこう明かす。
「基本的に『家族を含め、部外へ機密を口外してはならない』とアナウンスされていて、誰にも内情は伝えられない。
学生たちのSNSの利用状況などをチェックする学内組織のネットワーク委員会も、いつもより厳しく学生たちのSNSを監視している状況です」
自衛隊という組織の特性上、情報管理は当然かもしれないが、それが内部で起きている問題を覆い隠すかたちとなっていたのではないか。
防衛大の情報公開の姿勢にも疑問が拭えない。

 5月7日から課題提出形式での授業訓練が徐々に再開されると、同22日には公式HPに〈先般より徐々に校務運営を平常に戻しつつあり、学生たちの表情も大変明るくなっております〉との文言が掲載された。
 しかし、自殺未遂が相次いでいることなどをNEWSポストセブンが5月25日に報じると、一転して同27日には公式HPに〈ご家族の皆様へ〉と題した國分良成・防衛大学校長のメッセージが掲載される。
そこでは、専門家によるカウンセリングなど学生のストレス軽減に努めてきたという説明とともに、 〈一部報道にもありましたとおり、先の見えない不安等により、思い悩む学生が複数名いたことは事実であり、防衛大学校としては、本年の特殊な環境との関係性について慎重に分析してまいります〉  と記している。
慌てて沈静化を図ろうとしたことが窺えるが、5月下旬になっても学内で問題は相次いでいた。

家族宛ての手紙に検閲が
 東京などの緊急事態宣言が解除された5月25日には、「リストカットをして自宅に一度帰った後、学内に戻っていた学生が脱柵する騒ぎが起きた」(別の防衛大関係者)というのである。
さらには同日夜、脱柵した学生が所属する中隊の学生舎で「出火騒動」が起きる。
「火元は乾燥室だったのですが、そのこともよくわからず『直ちに避難するように』という命令があったので、煙のなかでどこへ避難したらいいのかわからず、右往左往する者もいて現場は混乱の極みだった。
原因は明らかになっておらず、学内の誰かが火をつけたのではないかと疑う声も出ている」(同前)

 学生たちの間で疑心暗鬼が積み重なるなか、防衛大側の対応は納得のいくものではないという。
「5月末には突然、全1学年に対して、部屋長(各居室の上級生指導役)から『宛名はなしでいいから家族に向けた手紙を書け』と命令が下りたというのです。
書き終えたところで一度、手紙は回収され、指導教官に渡すという説明がなされた。
 その後、各自に戻された手紙に宛名を書くよう指示があり、封をしないまま提出させられた。
この手紙が、実際に家族のもとに発送されたのです。
事態の沈静化と統制を取るためなのかもしれないが、これは“検閲”ではないのか」(同前)

 さらに、ここにきて学内で問題化しているのが、学生間での「賭博行為」だという。
前出の現役学生が明かす。
「完全なる軟禁状態で授業もなかったので、ある大隊では『PX富豪』と呼ばれる賭けトランプが横行していたことが発覚したのです」
 PXとは学内にある売店を指し、トランプの「大富豪」で負けた学生が売店でお菓子や煙草などを買ってくる仕組みから、「PX富豪」の呼び名がついたという。
「その遊びがどんどん大きな金額を賭けるものに。
新入生が約50万円の負けを抱えてしまい、怖くなって指導教官に告白して発覚したといいます。
トランプ以外に賭け麻雀もあり、すでに警務隊(自衛隊の部内の秩序維持にあたる部隊)が捜査に動いている」(同前)
“士官学校”たる防衛大にあるまじき乱れた内情というほかない。

 防衛大に見解を問うと、自殺未遂は「プライバシーに関すること」を理由に、校内不審火と賭博は「警務隊が捜査中で、捜査に支障を来す恐れがあること」を理由に、「詳細は答えられない」とした。
 封をしない状態で学生の手紙を集めた問題については、「学校側から保護者の皆様への手紙などとともに、学校側から出したということ」と説明し、封をしない状態で手紙を集めたのかと問いを重ねると、「こちらでまとめて送付はしました」と繰り返すのみだった。

 新型コロナ危機で、多くの自衛隊員が最前線で見えない脅威と対峙し、その姿が褒め称えられてきた。
だが、その将来を担う防大生たちが置かれた環境を見ると、果たして組織が盤石といえるのか、不安は拭えない。

  ※週刊ポスト2020年6月26日号
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2020年06月17日

小池氏はニンマリ…山本太郎氏「都知事選」強気出馬の思惑

小池氏はニンマリ…山本太郎氏「都知事選」強気出馬の思惑
2020/06/16 日刊ゲンダイ

 相変わらずの“太郎節”だった。
れいわ新選組の山本太郎代表(45)が15日、東京都知事選(18日告示、7月5日投開票)への出馬を表明した。
しかし、立憲民主、共産、社民の3野党が支援する元日弁連会長の宇都宮健児氏(73)と票を食い合う可能性が高く、さすがに“太郎ファン”からも非難ゴウゴウだ。

「1400万人いる東京都民の生活を底上げできる、餓死寸前の人に対してすぐ手だてが打てるんだったら、そりゃ目の前の東京都知事選に出るでしょ! って話なんです」
 午後2時から始まった出馬会見には、約60人の報道関係者が殺到。
ひしめく記者を前に、山本氏は徐々にボルテージ全開に。

都内でコロナ禍による困窮者を目の当たりにしてきたエピソードを語り、「東京の中でそんなこと起こっているのに、小池さん何したんだよ! ってことですよ」
「国に、『もっと金引っ張ってこい』って言ったのかよって」――と気炎を上げた。

 ストレートな言葉で政策を訴える“太郎節”は健在だったが、出馬表明には、“太郎ファン”からも〈正直ガッカリ〉〈国政で頑張って欲しかった〉〈票が割れて小池知事に負けます〉などと、批判が止まらない。
山本氏と宇都宮氏がリベラル票を奪い合う懸念があるからだ。

50万票しか取れなければ…
 そもそも、野党統一候補が実現しなかったのは、山本氏が「無所属」ではなく「れいわ」からの出馬にこだわったからだ。「れいわ公認」では、他の野党が乗れるはずがなかった。
もし、山本氏が「れいわ」にこだわらなければ、野党統一候補になっていたはずである。

「山本代表の強行出馬の裏には、次期衆院選や都議選に向けて『れいわ』の知名度を上げたい思惑が透けます。
昨年の参院選の時、結党から3カ月で4億円も集めた“れいわ旋風”は正直、今は昔ですからね。
山本代表本人も影響力の低下をヒシヒシと感じているはずです。

れいわ内部では、『宇都宮推し』と『山本代表出馬』とが対立したといいます。
いずれにしても、野党候補が分裂し、小池知事はニンマリではないか」(野党関係者)

 山本氏は会見で、知事選の狙いとして「小池さんの票を削っていくこと」と自身の知名度には自信満々だったが、知事選出馬は山本氏にとって、大きな賭けになるのは間違いない。
政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏がこう言う。
「山本代表が50万票しか取れなければ、その存在感を示すどころか『大したことない』と思われかねません。
一方、100万票以上でも取れば、次期衆院選などでの存在感も高まるでしょう。
ただ、山本代表の出馬が野党結集に深いキズが付くとは思えません。
国民民主党は自主投票ですし、立憲を支持する連合東京は小池知事を支援するので、そもそも、与野党対決の構図は崩れているからです。
山本代表が『野党結集を邪魔した』との批判は最小限にとどまると考えられます」

 山本氏の“皮算用”は吉と出るか、凶と出るか。
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2020年06月18日

防衛大の不祥事記事、脳裏をよぎった「あの事件」

防衛大の不祥事記事、脳裏をよぎった「あの事件」
6/17(水) JBpress
勢古 浩爾:評論家、エッセイスト

 10日ほど前、朝刊を見ていたら、週刊誌の広告に目が留まった。
「渡部建」関連ではない。
「〈衝撃の内部告発〉緊急事態宣言下で起きていた防衛大の“戦線崩壊”『連続脱走』『校内不審火』『自殺未遂』そして『賭け麻雀』」という見出しである(『週刊ポスト』2020.6.26)。
これを見た瞬間、もしかしたらあの事件の続報か、あるいは防衛大のさらなる不祥事か?  と思ったのである。

 「あの事件」というのは、2019年4月22日に日本テレビで放映された「NNNドキュメント'19 防衛大学校の闇 連鎖した暴力…なぜ」という番組で報じられた学生いじめ事件のことである。
この番組はじつにショッキングだった。
 わたしは父親が海軍の軍人だった影響で、どちらかといえば軍隊や軍人には親和的である。
兄はそれ以上で、『海軍兵学校物語 あゝ江田島』(1959年公開)という映画を観て兵学校に憧れ、当時の兵学校である防衛大学校を目指したのである。
しかし強度の近視が原因だったのかどうかは定かではないが受験に失敗し、それでも次は江田島にある幹部候補生学校を目指したのである。
ただし、実際に受験したかどうかをわたしは知らない。
10年前に他界したため、もはや確かめられない。

 いうまでもなく防衛大学校といえば将来の防衛省・自衛隊を背負って立つエリート養成機関である。
毎年朝霞訓練場で行われる内閣総理大臣臨席の自衛隊観閲式では全軍(といってはだめか、全隊)のなかで一番先に行進する栄誉を担っている。
その他、ライフルをもって集団演技をする儀仗隊のファンシードリルは凛々しく、見ていて楽しい(米軍のドリルなどに比べると練度は見劣りするが)。
わたしは観閲式やドリルを何度もYouTubeで見たものである。

■ 地獄のような日々が待っていた
 2013年4月、Nさんは憧れの防衛大学校に入校した。
防衛大は全寮制で、1部屋に上級生と下級生8人が居住する。
 ところが入学直後、1年生は4年生のAに全裸になって写真を撮るようにいわれたり、知らない人間100人と写真を撮ってこいと命じられたりした。
これが悪夢の始まりだった。
「粗相ポイント」というのがあり、ささいなミスをすればポイントが加算される。
これを上級生がちまちまやっているのだ。
点数によって、カップ麺をそのまま食べさせられたり、ラー油を一気飲みさせられたりするるなどの愚劣でケチな罰ゲームを課されるのである。
 「粗相ポイント」が20ポイントになると、Aから、風俗店にいって性行為を撮影してこいと命じられた。
ほかの1年生はみな命令にしたがったが、Nさんは拒否した。
するとAは、Nさんの陰毛にアルコールを吹き付け、火をつけたのである。
 いじめをしたのはAだけではない。
3年生Bは、Nさんになにかといいがかりをつけては殴ったり、陰部を掃除機で吸引したりした。
4年生Cは殴る蹴るの暴行をし、Nさんの私物を散乱させた。
同期のEとFはNさんを難詰し、よってたかって殴った。

 Nさんは子どもの頃からスポーツマンだった。
中学の時、郷里の福岡が土砂崩れに見舞われた。
Nさんは避難したが、被災者のために必死に働く自衛隊員に憧れ、防衛大を目指した。
それが入ってみれば、地獄のような日々が待っていようとは夢にも思わなかったにちがいない。

 3年生Dは怒号で威嚇した。
Nさんは飛び降り自殺も考えた。
下痢、発熱、胃液を吐くなどの症状に襲われた。
入学1年後の2014年5月、休学して福岡の実家に帰った。
「重度ストレス反応、抑うつ」「いつ死んでもおかしくない状況」と診断された。
しかし療養中も同期のGとHは30人のLINE仲間にNさんの遺影のような写真を送ったり、Nさんに藁人形や嘔吐のスタンプを800近く送ったりしていやがらせをした。

■ 中から変わらないと暴力はなくならない
 同じ2014年、NさんはAからHまで8人を横浜検察庁に刑事告訴した。
ABCは暴行罪でそれぞれ10万円から20万円の罰金刑になったが、DEFGHの5人は不起訴だった。
Nさんは納得できずに、刑事訴訟だけでは防衛大は変わらないと思い、2016年、8人と国を相手どって福岡地裁で民事訴訟を起こした。
 すでに被告8人のうち7人は卒業し、幹部自衛官になっていた。
かれらへの尋問では、全員が、Nさんに対する「指導」のためだったと抗弁した。
2019年2月、声を荒げただけのD以外の7人にたいして、総額95万円の賠償が命じられた。
かれらにとっては痛くも痒くもない判決だった。
国の責任はないとされた。

 Nさんは判決後、「7人が幹部自衛官として働いている。二度とこういうことをしないでほしい。やはり防衛大の中が変わらないと、自衛隊組織全体として暴力がなくなることはないのかな」と語った。

加害者の人間たちは、よくもそんな卑劣な自分自身に我慢ができるものだ。
当時の岩屋毅防衛大臣は「今後、二度と同種の事案が発生しないように引き続き再発防止に努める」と述べただけである。  この事件のあと、大学側は1874人の防大生全員にアンケートを実施した。
「陰毛を燃やす」については(こういう質問をすること自体が情けない)、「やったことがある」が33人、「やられたことがある」が144人、「そういう行為を見たことがある」が518人、「聞いたことがある」が670人である。
「殴る」を見たのが744人、「蹴る」を見たのが718人もいる。

■ もっとも男らしい集団かと思っていたが
 わたしは高校時代サッカー部に入っていたことがある。
そのときの主将が大学のサッカー部に進んだが、1年生全員が自慰をさせられた、といっていた。
日本の男社会は昔からこんなことばかりやってきたのだ。
なにが楽しいのか。

 わたしは番組を見ながら、こんなことをやるのは一部の学生だろうとは思いつつも、一方でこれはほとんど日常の風景ではないか、と考えずにはいられなかった。
女子学生(120人ほど)や留学生(90人ほど)もいるのに、とんだブラック大学である。
 2007年から2017年に行われた懲戒処分662人のうち164人が私的制裁による処分である。
しかしこれも氷山の一角であろう。
大学側は問題があることは把握しているのだ。
なのに何十年も放置している。

ある防大生OBは「毎日理不尽だらけ、1年生のあいだは。その理不尽が目的だったりもする」といい、もうひとりは「4年生は神、3年生は人間、1年生はゴミ、虫けら、奴隷」といった。
 わたしはこの番組を見ているあいだ、むかむかしてしかたがなかった。
防衛大学校はこの日本でもっとも男らしい集団かと思っていたが、とんだ陰湿・最低・愚劣な集団だったのである。
サーベルで捧げ銃をしながらする行進、ファンシードリルのきびきびした動き、卒業式で一斉に帽子を放り上げる、などはただの見せかけだけで、その正体は陰険で卑怯で最悪の人間たちだったのである。

 もちろん、立派な学生はいるはずである。
昔だって、立派な軍人はいたのである。
だがそんなことは、全体においてはなんの意味もない。
教官たちはイジメを見ても黙認し、我慢を強いた。
防衛大学は学長以下、全教員、全学生とも、無責任で無法がまかりとおる大学、ろくでもない集団と思われることを甘受しなければならない。

 この番組に比べると、冒頭で触れた6月26日号の『ポスト』の記事は、大げさな書き方をしているがいかにも薄い。
情報をもたらしたのは「最近になって自主退学を決めた元防衛大生」である(記事は無署名)。
かれによると、4月1日に新学年を迎え入れたが、5日に予定されていた入校式典は延期、同7日に国の緊急事態宣言が発令された。
 そこで「新入生の身体検査といった手続きを除けば、訓練も授業もまったく行われず、その上に敷地からの外出が許されない“軟禁状態”になってしまいました」。
ストレスが溜まる状況のなか「脱柵(脱走)や自殺未遂が相次ぎ、挙げ句は賭博行為が発覚したり、放火が疑われるボヤ騒ぎまで起きているのです」。
またある「防衛大関係者」の話では、自主退学者が「4月以降、30人以上」も出ているという。
 こういう話を聞いて、ポスト記者は「将来の自衛隊を担う人材を育てていく組織にとって“戦線崩壊”ともいえる状況だ」と書いている。
コロナ騒ぎで盛んにいわれた「医療崩壊」にかこつけているのだろうが、「戦線崩壊」とは意味がわからない。

 また前出の「防衛大関係者」によると、「ストレスを苦にしてか、学内では自殺未遂行為も相次ぎました。首吊り、リストカット、飛び降り2件という少なくとも4件が確認されている」という。
未遂とはいえなんだか嫌な感じである。
それと自主退学者が「4月以降、30人以上」いるというのも問題であろう。
そこにいじめ問題は介在していなかったのか。

通常、退学というと非行を犯した学生がやめさせられることだが、防衛大では被害者が退学をするのである。
 このほかには乾燥室で不審火があったり、賭博行為が問題になったりしているという。
トランプ賭博や麻雀賭博で50万円負けた新入生がいたことが発覚し、警務隊が捜査に動いているともいう。
学生たちはたしかに金を持っている。
衣食住すべて無料の上に、学生手当毎月11万7000円と、年2回の期末手当合計39万7800円が支給されるのである。

■ 「全寮制だけがイヤ、やめたいわけではない」
 「防衛大学 不祥事」で検索をしてみると、三宅勝久という人の「『絶望の防衛大』を元学生が提訴 上級生から罵倒され続けること数年間、精神がボロボロになり声失う」(「My News Japan」2020.1.1)というネット記事が見つかった。
元防大生が上級生からいじめを受け、上級生と国に対して裁判を起こしたという話で、一瞬、Nさんのことではないかと驚いたが、Nさんではなかった。
 Aさん(25)という別人だった。
かれが入学したのはNさんとおなじ2013年3月で、やはり入学早々に上級生のいじめがはじまったという、Nさんとまったくおなじ状況が、別の8人部屋で起きていたのである。
いじめの具体的な内容は「訴状には書かれていない」が、毎日のように上級生のYに呼び出され、「暴言を浴びせる、無視する、反省文を書かせては破り捨てる」などのいじめを繰り返し受け、さらにそこに同期生2人が加担した。
2013年11月ごろ、Aさんは自衛隊病院を受診して「適応障害」と診断された。
 AさんはY(現陸自幹部)と国を相手に国家賠償請求訴訟を起こし、2019年12月、横浜地裁で第1回口頭弁論が開始された。
Aさんは「現在声を発することができず、病院で治療を受けている。
防衛大学でいじめに遭い、大きな精神的ダメージを受けた後遺症だ」という。

Aさんは在学中診療を受けたときの記録に「防衛大は希望校。全寮制だけがイヤ。それ以外は魅力的。入ってみて全寮制はきつい。慣れてきたが一人でいる時間がない。やめたいわけではない」という言葉を残している。
 國分良成学校長は防衛大学校のHPに、「すばらしい教育・研究・訓練施設の中で、優秀な教育スタッフ、真摯で熱情あふれる訓練教官、学校と学生への思いにあふれる職員に囲まれ、防衛大学校の学生諸君は必ずや生涯忘れられない青春時代を過ごすことになるでしょう」と言葉を寄せている。

皮肉である。たしかにある人たちには「生涯忘れられない青春時代」を残したのであるから。
 戦前の海軍兵学校の鉄拳制裁が日常茶飯事だったことは有名である。
しかし当時でもやはり問題だったらしく、32代永野修身校長のときの生徒隊監事だった伊藤整一(大将)はこれを禁止した。また40代の校長だった井上成美(大将)も鉄拳制裁を禁止したが、結局定着しなかった。

 防衛大学の弟分(高校生版)のような陸上自衛隊高等工科学校は「競争率16倍の難関」校だが、実態は「ラーメンたかる、靴磨きさせる、性的虐待、金品盗まれても『お前が悪い』…自衛官が生徒を奴隷扱いする陸自高等工科学校」といわれる(前出「My News Japan」)。
 このように、国のために働く人材を養成する大学や学校はほかにもあるが大丈夫か。
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2020年06月19日

「生活保護」コロナ禍の今こそ知ってほしい基本

「生活保護」コロナ禍の今こそ知ってほしい基本
生活に困ったら遠慮せずに活用を検討しよう
2020/06/18 東洋経済オンライン
戸舘 圭之 : 弁護士

新型コロナウイルスの感染拡大が経済に打撃を与えた影響で、多くの労働者が休業による減収や雇い止め、解雇などによって生活が立ち行かなくなっている。
労働者に限らず自営業者、フリーランスで働いている個人事業主などでも収入が途絶えているケースが少なくなく、日々の生活への影響は深刻だ。

労働者の解雇、雇い止め問題については、「コロナ解雇・雇い止めが簡単にはできない根拠」(2020年5月29日配信)で解説した通り、労働組合などによる相談活動などの取り組みがさかんに行われているところだが、収入が減少し生活できなくなった場合にはセーフティーネットが必要だ。
改めて注目を集めているのが、生活保護制度である。

そもそも生活保護制度とは 憲法25条1項は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」といわゆる「生存権」を権利として保障している。

これを受けた生活保護法1条は、「この法律は、日本国憲法第25条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする」と規定し、生存権保障(最低生活保障)が「国」の責任でなされなければならないことが明言されている(国家責任の原則)。

そして、生活保護法2条は、戦前の旧生活保護法に存在していた絶対的欠格条項(旧生活保護法2条は絶対的欠格条項として「能力があるにもかかわらず、勤労の意思のない者、勤労を怠る者、その他生計の維持に努めない者、素行不良な者」に対する生活保護の適用を明文で拒絶していた。)を廃止し、この法律の定める要件を満たす限り、生活保護法による保護を無差別平等に受けることができると定めている(無差別平等原理)。

この無差別平等の原理のキモは、過去を一切問うことなく、ただ、現在、生活に困窮しているという一事のみをもって生活保護が適用されなければならないということを生活保護の基本原理としてうたったものであり、憲法25条1項の理念を体現した規定である。
このように憲法25条1項に基づき生活保護法は、生活に困った人へ無差別平等に健康で文化的な最低限度の生活を保障しなければならないと国家に命じている。
このように生活保護制度は、生活に困窮した人にとってのよりどころとなるべき重要なセーフティーネットである。

ところが、実際に、生活保護を受けようと思って役所の窓口(福祉事務所)に行くと「まだ若いから働けるはずだ」「実家に援助してもらいなさい」「住所がないと受けられません」などと言われて追い返されることがしばしば生じている。
生活保護が受けられずに餓死に追い込まれた痛ましい事件なども過去には起きている。
生活保護を申請させてもらえずに窓口で追い返されることは「水際作戦」などと言われ、これまで弁護士や支援団体などから数多くの批判を浴びており、裁判などでも争われ行政側が敗訴する例もいくつか出されている。

「水際作戦」は明らかに違法な対応であるが、現実の生活保護行政では、しばしば違法に追い返される事例が後を絶たない。 加えて、「生活保護バッシング」などと言われる生活保護受給者を叩くネット上などでの言説から、生活保護に対するネガティブなイメージを持ってしまっている人も少なくない。

生活に困窮していても、生活保護を申請することを躊躇する人も少なからずいると思われる。

生活保護にまつわるよくある誤解
生活保護に関しては「病気で働けない状態にならないと受けられない」「住所がないと受けられない」「持ち家があると受けられない」「自動車を持っていると受けられない」「扶養できる親族がいれば受けられない」などといった言説が巷にあふれており、現に、行政の担当者もそのようにいう場合もある。
しかし、生活保護法上、これらは基本的に生活保護を受けられない理由にはならない。

生活保護は、現在、生活に困窮している者であればだれでも無差別平等に受けられるのであり、それは憲法25条1項が保障する権利である。
生活保護法上、住所があることは要件とされておらず、むしろ今現在いる場所にある福祉事務所で生活保護を申請し受給することが可能であると定められている(生活保護法19条1項2号「現在地保護」と言われている)。
したがって、住む場所がなく路上やネットカフェなどで寝泊まりをしているホームレス状態にある人についても、今いる場所(現在地)の福祉事務所で生活保護を申請することが可能である。

ちなみに、住居がない人が生活保護を利用する場合、アパート等への入居費用も生活保護費として支給される。
これは生活保護法30条1項本文が「生活扶助は、被保護者の居宅にておいて行うものとする。」と居宅保護の原則を定めているからである。

生活保護法4条1項は「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる」と定めており、ここから「若くて働ける人」については生活保護を受けることができないのではないかと言われることもある。
しかし、若くて健康な人であってもすぐに就職して賃金を得ることができるわけではなく、仮に就職がうまくいったとしてもタイムラグはありその間の生活困窮状態はそのままになってしまうことから生活保護を受ける必要はなくならない。
生活保護法4条1項は、確かに資産や能力を「活用すること」を「要件」とはしているが、あくまでも「利用し得る」資産、能力でなければならないことから、現実に利用可能性がなく、直ちに利用して現金化できない資産、能力については、それがあるからといって生活保護を否定する理由にはならない。

また、親族による扶養も生活保護を受ける要件とはされていない(生活保護法4条2項は扶養義務者による扶養が「優先」すると定めてはいるが要件ではないので扶養できる親族がいたとしても生活保護の利用は妨げられない)。

厚生労働省の事務連絡
2020年4月7日、厚生労働省の生活保護行政を担当している社会・援護局保護課は、「新型コロナウイルス感染防止等のための生活保護業務等における対応について」と題する「事務連絡」を出した(厚労省のホームページで全文掲載中)。
この事務連絡によると、生活保護の申請などにあたり、面談等を行う場合の新型コロナウイルス対策について記載されているが、特筆すべきは、
@申請にあたって調査すべき事項は最低限で足りることを明確に示し、
さらには、A「働けるかどうか」「働ける場所があるか」(稼働能力活用)の判断は後回しでかまわないということを厚労省が明確に示した点である。
これは、ようするに「現在、生活に困っている人が申請をしたら、つべこべ言わずにとにかく生活保護を開始しなさい!」というメッセージを厚生労働省として発していると理解することが可能である。
これらの対応は、憲法25条1項、生活保護法の基本的考え方からすれば当然のことではあるが、この当然の対応を厚労省が今回の新型コロナウイルス問題ではっきりと明言した意味は大きい。

生活保護は、憲法に基づく「権利」として国家の責任で実施されなければならない生活保障の制度であり、その理念通りに運用されれば、極めて実効性の高い機動的なセーフティーネットとして機能する。
生活保護は、当然のことながら税金が原資とされるが、支給される生活保護費は、性質上、そのほとんどが消費として支出されることから、その経済効果も無視できない。

生活困窮者の中で生活保護を受けているのは2割
しかしながら、実際には、本来生活保護を受けることが可能な生活困窮者の中で実際に生活保護を申請し受給している者の割合(捕捉率)は2割程度と言われており、まだまだ生活保護制度が浸透していないのが実情である。
新型コロナウイルスによる経済への影響は深刻であり、さまざまな対策が検討されているところではあるが、既存の制度である生活保護の活用はもっと検討されてもよいと思われる。

以下に今回の「事務連絡」で重要と思われるところを抜粋しておく。 【参考引用】

「(1)申請相談について。生活保護の申請相談にあたっては、保護の申請意思を確認した上で、申請の意思がある方に対しては、生活保護の要否判定に直接必要な情報のみ聴取することとし、その他の保護の決定実施及び援助方針の策定に必要な情報については、後日電話等により聴取する等、面接時間が長時間にならないよう工夫されたい。
また、対人距離を確保した上でマスクを着用する等、感染のリスクを最小限とするようにされたい。

なお、 「新型コロナウイルス感染防止等に関連した生活保護業務及び生活困窮者自立支援制度における留意点について」(令和2年3月10日厚生労働省社会・援護局保護課 地域福祉課生活困窮者自立支援室連名事務連絡。以下「事務連絡」という)の「3適切な保護の実施」にあるとおり、
面接時の適切な対応(保護の申請権が侵害されないことはもとより、侵害していると疑われるような行為も厳に慎むべきこと等)、

速やかな保護 決定等については、引き続き特に留意されたい 」
「(1)稼働能力の活用について。局長通知第4において、稼働能力を活用しているか否かについては、実際に稼働能力を活用する場を得ることができるか否かについても評価することとしているが、緊急事態措置の状況の中で新たに就労の場を探すこと自体が困難であるなどのやむを得ない場合は、緊急事態措置期間中、こうした判断を留保することができることとする 」
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2020年06月20日

安倍首相「自画自賛ウソ会見」と何も突っ込まないお粗末記者

安倍首相「自画自賛ウソ会見」と何も突っ込まないお粗末記者
2020/06/19 日刊ゲンダイ

「この通常国会を振り返るとき、正にコロナ対応の150日間であったと思います」
 閉幕した通常国会を振り返り、18日夜の会見で、こう声を張り上げていた安倍首相。
世界中が新型コロナに翻弄されたこの約半年間、日本政府は感染拡大の防止と経済の立て直しに向けて迅速に対応したかのような物言いだったが、果たしてそうだったのか。

「1月末には中国湖北省からの外国人の入国を拒否する措置を決定しました。
その後も、世界的な感染の広がりに応じ、入国拒否の対象を順次、111カ国・地域まで拡大し、水際対策を強化してきました。
2月にはダイヤモンド・プリンセス号への対応、3月にかけて大規模イベントの自粛、学校の一斉休校、こうした取組を進める中で、我が国は中国からの第一波の流行を抑え込むことができました」

 例えば、安倍首相はこう言っていたが、中国・武漢市で「謎の感染症」として新型コロナの存在が日本国内で大々的に報じられ始めたのが昨年12月末から1月中旬。
感染封じ込めに成功したとされる台湾はこの時点で中国人観光客らの入国規制を始めていたにもかかわらず、日本政府は何もしなかった。
それどころか、安倍首相は、中国で新型コロナが感染拡大し始めた最中の1月下旬、北京の日本大使館のホームページ(HP)に「多くの中国の皆さまが訪日されることを楽しみにしています」という祝辞を出し、中国人観光客の春節旅行を呼び掛けていたのだ。

 祝辞の掲載後、危機管理の意識を問題視された外務省は「不適切だった」として、すぐに削除。
つまり、「入国拒否の措置」どころか、真逆の対応を取っていたわけだ。
「ダイヤモンド・プリンセス号への対応」にしても、災害派遣医療チームとして船内に入った神戸大学感染症内科教授で、医師の岩田健太郎氏がユーチューブ動画で告発していた通り、「どこが危なくてどこが危なくないのか全く区別がつかない」「常駐しているプロの感染対策の専門家が一人もいない」「むちゃくちゃな状態」だったのが実態だ。

喉元過ぎれば熱さを忘れる、ではないが、国民がこの時の政府対応の不手際を忘れていると思っていたら大間違い。
これでよくも「中国からの第一波の流行を抑え込むことができました」と言えたものだ。

■安倍首相への厳しい質問はゼロ
「事業規模230兆円、GDP(国内総生産)の4割に上る、世界最大の対策によって雇用と暮らし、そして、日本経済を守り抜いていく」
 この発言にも首をかしげざるを得ない。

 1次補正の歳出増加額は25.6兆円。
大マスコミはこの分を「真水」と伝えるが、融資メインの「資金繰り対策」(約3.8兆円)や「予備費」(1.5兆円)、不要不急な「Go Toキャンペーン事業」(約1.7兆円)を排除すれば、「本当の真水」と呼べるのは約18.6兆円しかないのだ。

2次補正の事業規模117.1兆円のうち、一般会計の歳出増加額は約32兆円。
「資金繰り対応の強化」に11.6兆円を充てるが、中身は日本政策金融公庫や民間金融機関が既に実施している「無利子・無担保融資」の拡充に過ぎない。
やはり、「本当の真水」と呼べるのは10兆円ソコソコだ。
結局、「事業規模230兆円」なんて数字ありきの見せかけに過ぎないのだ。

 肝心要のコロナ対策だって、お世辞にもうまく行っているとは言い難い。
 中小企業や個人事業主を支援する「持続化給付金」は、給付申請から2週間程度とされる審査スケジュールが守られず、いまだに給付金が振り込まれない事業者が続出している。
そうしたら、事務手続き業務を請け負う一般社団法人「サービスデザイン推進協議会」(東京)の「20億円中抜き疑惑」が発覚だ。
 クーポン券や割引券で旅行や飲食を促す目的の「Go Toキャンペーン」も、事務手続きの経費が3000億円超という巨額費用が問題視されている始末で、こうやってモタモタしているうちにコロナ関連の倒産件数はあっという間に200件を突破。失業予備軍とみられる一時休業者は600万人という危機的状況だ。
 これでどうやって「日本経済を守り抜いていく」のか。全く現実を理解していないとしか思えない。

 安倍首相は「5月末から濃厚接触者についても、症状がなくとも、全員をPCR検査の対象としました」とも言っていたが、専門家や現場の医師らがPCR検査の対象拡大を求めていたのは1月〜2月だ。
なぜ、もっと早く対応しなかったのか。
なぜ専門会議の議事録はないのか。
「やっている(た)フリ」ではなく、まずは国民に対するきちんとした説明が先だろう。

 それにしても情けないのは大新聞・テレビの記者だ。
会見では、安倍首相が自画自賛していた「ウソ」について、いくらでも突っ込むことができたのに何ら質問がなかったからだ。
 この日、前法相の河井克行衆院議員(57)と妻の案里参院議員(46)が、東京地検特捜部に公選法違反(買収)の容疑で逮捕されたにもかかわらず、関連質問したのはフジテレビの記者のみ。
それも「自民党から振り込まれた1億5000万円の一部が買収資金に使われたことはないということでいいのか」なんて言っていたから驚く。
 なぜ、記者が政権側の疑惑を否定するような形で「いいのか」と念を押す必要があるのか。

地検特捜部がわざわざ、記者に質問のネタを与えようと、2人を首相会見前に逮捕した“意味”をまるで理解していない。
安倍首相にいつも不倫芸能人を問い詰めているように、安倍首相に対しても厳しく問い質せばいいではないか。
安倍首相が平然と国会や会見で「ウソ」をつくのは大新聞・テレビの記者の姿勢にも問題があるのだ。
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2020年06月21日

「マスク警察」の恐怖。通勤中に高齢者からいきなり怒鳴られて…

「マスク警察」の恐怖。
通勤中に高齢者からいきなり怒鳴られて…
2020年06月20日 SPA!

「自粛の次はマスク、怒鳴っていたのは高齢者。
ネット上だけでなく、現実世界でも年寄りが嫌いになりそうです」
 腹の虫が収まらない様子で「自粛警察」ならぬ「マスク警察」の被害についてうったえるのは、千葉県市原市在住の会社員・相根大地さん(仮名・30代)。
 外出自粛期間中に世間を賑わせた「自粛警察」だが、現在は「マスク警察」というハッシュタグがSNSに出現している。
はたして、その実態とは……?

◆「マスク警察」の恐怖、公園で子どもを遊ばせていると…
 6月上旬、近所の公園で遊んでいた娘(8歳)とその友達(9歳)が、泣きながら自宅に帰ってきたのだという。
「喧嘩でもしたのかと思いましたが、2人は泣きながら『怖い人がいた』というんです。
まさか痴漢や誘拐未遂か? と思い、妻に110番するよう伝え、走って公園に向かったんです」(相根さん、以下同)
 公園につくと、屋根付きベンチのあたりからなにやら怒鳴り声が聞こえ、2〜3人のママたちが平身低頭で必死に謝っているのが見えた。
「遊んでいる子どもが『マスクをしていない』と、近くに住んでいるらしい老人男性が乗り込んできていたのです。
子どもたちは母親の後ろに隠れて泣きじゃくり、もう本当に気の毒で。私が仲裁に入ると『触るな』と怒鳴られ、詰め寄られ……。

頭にきたもんで言い返すと『人殺し、警察を呼ぶ』とまた怒鳴られて」
 時を同じく、それより先に妻が通報していたおかげで、近隣の交番から警察官が到着。
老人は「年寄りを殺そうとしている」とか「若い奴が日本を滅ぼそうとしている」とか意味不明なことをまくし立て、警官も困り果てていたという。

 さらに、現場にいたママからは次のような証言も。
「老人は普段から犬の散歩が禁止されている公園に大型犬を連れてきては、リードを外して犬を遊ばせているそうでした。
子どもが怖がるので……と親が注意しても、自分の方が昔から住んでいる、後から来たくせに、と難癖をつけてくるそうで。緊急事態宣言中も、公園で遊んでいる子どもを怒鳴り散らしていたそうです」

 見事に「自粛警察」から「マスク警察」に移行した、典型的な「迷惑隣人」であるが、近くにこのような人物が住んでいれば、日常生活もままならず、なにより怖がる子どもたちがかわいそうだと話す相根さん。

 ちなみに、厚労省は「夏期の気温や湿度が高い中でマスクを着用すると、熱中症のリスクが高くなる恐れがある」として、「屋外で人と十分な距離(少なくとも2m以上)が確保できる場合には、熱中症のリスクを考慮し、マスクをはずすようにしましょう」と呼びかけている(環境省 厚生労働省 令和2年5月「令和2年度の熱中症予防行動の留意点について 〜新型コロナウイルスを想定した『新しい生活様式』における熱中症予防〜より)
そんな事情を知ってか知らずか、いきなり怒鳴り込んでくるのはいかがなものか……。

◆手作りマスクに対して激怒「敬老者に移したらどうするの!」
 また「マスク警察」は近所だけに潜んでいるのではない。
通勤や通学時にも現れると証言するのは、神奈川県内の薬剤師・鈴木ゆかりさん(仮名・30代)。
「都内の職場に向かうべく、電車の4人がけボックスシートに座ろうとしたところ、斜め前に座っていた初老の女性から『座らないで!』と言われて……。
呆然としている私のマスクを指差し『そんなマスクで敬老者に移したらどうするの』というんです」(鈴木さん、以下同)  実は鈴木さん、手持ちの使い捨て「不織布マスク」は勤務時に使用するため、通勤時やプライベートの外出時には、母親が作ってくれた布製の手作りマスクを着用していた。

初老女性から見れば、そのマスクが不完全なものに見えた、ということだろうが……。
「母のマスクだって、ガーゼを四重五重にしてあり、不職布マスクとは機能的にも変わらない。
単なる言いがかりでしたが、気分が悪くなりすぐにその場を立ち去りました。
その女性、席を独占した後は、度々マスクを外して痰をティッシュにとっては咳払いをしたりして……なんだか納得できません」

 近隣住人、電車で隣り合った人が不幸にも「マスク警察」だったとしても、運が悪かった、もう二度と関わらないようにしよう、と思えるかもしれない。
しかし、身近な人が「マスク警察」だった場合はより悲惨である。

◆上司のコロナ意識が高過ぎて…
「会社の上司は3月頃から、新型コロナウイルスに過剰な反応を示しており、6月から出勤が再開されて以降も、身の回りの衛生にこだわり、部下にも徹底させようと躍起になっています」
 都内の運送系コンサル会社勤務・加賀美政人さん(仮名・40代)の上司・X氏(50代)は、普段から心配性&潔癖性なところがあった。
だが今回のコロナ禍によって、より一層その気が強まった。
 出勤時には検温や健康状態のチェックはもちろん、全身をエアダスターで吹く、手指に石鹸をつけて5分間揉み込み、その上でジェル消毒液をさらに揉み込む。
パソコンやマウス、画面までアルコール剤で拭き上げるよう、部下たちに課したのである。

「消毒シートがなくなり、アルコールの原液を薄めて使っていたものですから、キーボードなどのプラスチック部品が劣化してきたりして……。
それでも『ウイルスにかからないことが最優先』と言われて。  それはそうなのかもしれませんが、何よりも辛いのが肌荒れ。
肌の弱い社員にもアルコール剤での消毒を強要し、かわいそうなくらい肌荒れしてしまった社員もいます」(加賀美さん、以下同)

 当然、上司は「マスク警察」の名前そのまま、マスクの着用についても、厳しすぎる決まりを部下に押し付けている。
「社内ではどんな理由があっても、マスクは外すなと言われました。
また、マスクの布部分を一度でも素手で触ろうものなら、そして、その瞬間を見られようものなら、新しいものと取り替えるよう命令されます。
また、鼻の部分が浮いていると、そこからウイルスが漏れだすかもしれないということで、セロテープで止めろとまで……。息苦しく頭がぼーっとして、仕事どころではありません」

 新しい生活様式において、マスク着用は重要なマナーにもなったが、“コロナ意識”が高すぎるのも考えものだ。

    <取材・文/森原ドンタコス>
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2020年06月22日

専門家たちが警鐘!「不気味な揺れ」頻出と首都圏巨大地震の関係

専門家たちが警鐘!
「不気味な揺れ」頻出と首都圏巨大地震の関係
6/21(日) FRIDAYデジタル

「最近やけに地震が多いなぁ」 外出自粛期間中、自宅でそう感じた人は多いだろう。
それは気のせいではない。
下のマップを見てほしい。
今年4月〜5月に発生した震度3以上の地震の回数は、昨年と比べると2倍以上なのだ。
日本列島各地の地盤で異変が起きていることは間違いない。

特に茨城県と千葉県ではM5クラスの中規模の地震が頻発している。
地震学者で東京大学名誉教授の笠原順三氏が語る。
「この地震は、東日本大震災の余震活動です。
これは太平洋プレートの沈み込みに関係しているものが多く、首都圏での大地震につながる危険性があります。
1923年の関東大震災の際は、その1年ほど前に茨城県の龍ヶ崎でM7クラスの地震が起きている。
今の状況はそのときの地震活動にやや似ていると思います」

長野県中部と岐阜県飛騨地方も要注意エリアだ。
4月以降、震度1以上の地震がすでに170回以上も観測されている。
東海大学海洋研究所地震予知・火山津波研究部門長の長尾年恭教授が解説する。
「もともと長野と岐阜の県境は地震が起きやすい場所です。
太平洋プレートとフィリピン海プレートに日本列島が押されると、このエリアで歪(ひず)みが解放される。
ただし今回の群発地震はかなり大きい。
身体に感じない地震を含めると4月23日から6月頭までで約1万8000回も起きている。
長期化する傾向もあり、震源が浅いために揺れも大きいので、土砂崩れなどに警戒が必要でしょう」

また、下のマップには示されていないが、東京湾を震源とした小規模な地震が多発している。
5月20日から21日にかけて、M2.6〜3.5の地震が計6回も発生した。
このエリアでは珍しい現象だ。
「それらは深さ20qほどまでの浅いところで起きています。首都直下地震に関係していると言えるかもしれません。
現段階で、政府が想定している震源ではありませんが、首都圏を襲う地震が起こるメカニズムを持っている場所です」(長尾教授)

その後、東京湾の地震は収まっているが、立命館大学特任教授の高橋学氏(災害史・災害リスクマネジメント)は「それが不気味なんです」と語り、こう続ける。
「それまで地震が起きていなかった場所で集中して発生した後、パタリと静かになる。
それから約2ヵ月後に同じ場所でM3程度の地震が来る。
その半日〜3日後に巨大地震が来るというパターンはいくつも例があります。
’95年の阪神・淡路大震災や’04年の新潟県中越地震、’16年の熊本地震、鳥取県中部地震などです。

東京湾をはじめ、房総半島沖から相模湾にかけて伸びる相模トラフ沿いの地震に要注意です。
千葉県や茨城県南部の地震もこれに関係していると思われます。
さらに相模トラフが剥(は)がれて南海トラフに連動することもありえる。
私は数年以内に相模トラフと南海トラフで超巨大地震が発生すると考えています」

いつ巨大地震が起きてもおかしくない地域は他にもまだまだある。
「5月〜6月に鹿児島の薩摩半島沖で震度4クラスの地震が起きています。
これは熊本地震と同じ断層系が要因。
今も歪みが溜まっているんです。
紀伊水道(紀伊半島と四国の間にある海域)では、’17年から’18年にかけて身体に感じないM7近くの『ゆっくり地震』が発生していました。
今年5月17日にもM4.6が観測されています。
普段と違う地震が起こっている。
これらは南海トラフ地震の予兆の可能性があります」(長尾教授)

前出の笠原氏はこう警告する。
「南海トラフの活動が活発になってきたと懸念しています。
ただし南海トラフ地震より先に首都圏直下地震が発生する危険性のほうが高いのではないか。
さらに言えば時間的には両方が接近して起きてもおかしくありません。
首都圏の地盤が動くことで、南海トラフが動くということも十分ありえます」

地震大国ニッポン。Xデーはもう目前に迫っている――。

『FRIDAY』2020年6月26日号より
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2020年06月23日

「闘う政治家」野中広務の足跡 “叩き上げ政治”の無念

「闘う政治家」野中広務の足跡 “叩き上げ政治”の無念
6/21(日) JIJI.com  
菊池正史 日本テレビ政治部デスク

影の総理
京都府の副知事まで務めてから国会議員となり、「影の総理」とまで呼ばれた政治家がいた。
ご存じであろう、2018年に92歳で亡くなった野中広務だ。
自民党を離党した小沢一郎らと激しい権力闘争を展開し、「政界の狙撃手」「闘将」の異名を取った。

自治相、内閣官房長官、自民党幹事長など要職を歴任。
戦後の自民党政治において圧倒的な権勢を誇った田中角栄元首相の系譜を継いだ最後の実力者だった。
地方から叩き上げた、その政治人生を検証し、私は2018年の年末に「『影の総理』と呼ばれた男 野中広務 権力闘争の論理」を上梓した。【日本テレビ政治部デスク 菊池正史】

 日本テレビ政治部の記者として私が担当したのは1994年から1年余り。
しかし、その魅力に引き付けられ、2003年に野中が政界を引退した後も、たびたび、事務所を訪ねては取材を続けた。
 野中は、1925(大正14)年生まれ。
敗戦の直前に19歳で陸軍に召集され、高知で本土防衛に当たった。
社会が軍国主義一色に染まっていくことの恐怖、そして戦争の悲惨さを実感として知る最後の世代だった。

 私が、この書で伝えたかったことは、戦争を知る世代を失うことの危うさだ。
 野中も、戦前は軍国青年だった。
召集令状が来ることを一日千秋の思いで待ち続けたという。
多くの人々が緒戦の勝ち戦に熱狂し、反対意見を「非国民」と叫んでかき消した。
軍部が権力を握り続け、軍国主義教育が徹底され、市井の人々までがその片棒を担いだ。
揚げ句の果てに敗戦。300万人が犠牲となり、人心は荒廃した。

 野中は世の中が「一色に染まる」ことの怖さを知った。
自らも軍国主義に染まったことに苦しんだ。
そして戦争責任者を憎んだ。
戦時中首相を務めた東条英機の暗殺も試みた。
実際に、そのために上京したとみられる仲間を1人失った。
後にその死を知った野中は、こう語っている。
 「これは今、心残りですよ。知っておればね、私も宮城前で腹切ったんじゃないですかね」

 復員後、野中は民主主義を学び、広げようと青年団活動に没頭した。
そして弱冠26歳で、生まれ故郷である京都は園部町(現南丹市)の町議に当選し、長きにわたる政治家人生を「一色には染めさせない」
「守るべきは平和であり、反戦であり、国民を中産階級にすること」  これが野中の保守政治の信念だった。

野中には腰から脚にかけて大きな傷がある。軍隊時代のものだ。
 「戦争の傷は俺の体に染み込んでいる。理屈じゃない。絶対に戦争はさせない」  野中は親しい記者にこう語っていた。  だからこそ、戦前のように一色に染まってしまう可能性をはらむ民族性と、一色に染めようとする権力を警戒し、徹底的に闘うことを心に誓った。

 野中にとっての保守政治とは、軍国主義に染まった日本を否定することだった。
軍備増強よりも経済を優先し、戦争の傷跡を修復しながら協調外交に徹するという、新たな政治理念を守りぬくことだった。戦前の日本に対する「新たな保守」の始まりだった。

この「新たな保守」は、弱者を救済し、富を等しく分配し、平等な「中産階級」を構築しようとするリベラリズムと共存したという点で、「リベラル保守」とも言えよう。
それは戦前、「お国のため」と言って切り捨てられた、個々人の人権、人々のささやかな幸せを、国の内外で何よりも大切にする政治だった。

 しかし、戦後になっても、「一色に染める」残滓は存在した。
村々の古き因習、そして企業戦士を支配する組織の論理にも根強くはびこったままだった。
そして野中は、その残滓を、まず、当時の共産党に見いだした。
 戦後の食糧難、社会的不安、それに反発する国民運動を背景に、反権力としての影響力を強めていた共産党だが、野中は、その組織運営は画一的で独善的、排他的だと批判した。

「反権力に潜む権力」の本質を警戒した。
実際に共産党が支配したソ連や中国は、高級官僚にリーダーシップと富が集中する不平等な社会だった。
共産主義を世界に敷衍しようとする行動が、諸外国との新たな紛争を生んでいた。
 当時の京都は、共産党を支持基盤とした蜷川虎三府政の全盛期だった。
1950年から7期28年にわたって府知事として君臨した蜷川に、役所の幹部らが忖度し、多くの市町村長らが忠誠を求められたという。

実際に、蜷川が5選を目指す府知事選の時、東京に出張して「洞ケ峠を決め込む(有利な方に付く)」と報じられた野中に対しても、府の総務部長が「すぐに戻って身の証しを立ててほしい」と命じたという。
 「公選で選ばれた町長に、役人が何を言うか!」   野中は激怒した。
それまで、疑問を抱きつつも蜷川と友好な関係を維持し、従ってきた野中だが、これを機に蜷川府政と決別し、共産党との闘いを繰り広げることとなった。

この頃を、次のように振り返っている。
 「京都府という革新府政、京都府という地方自治はあるけれど、京都府に隷属するかどうかによって市町村の自治が決められている。
京都の市町村には地方自治など存在しないという感じがした。
こういう京都府政を続けさせることはいけない」

 1978年、野中が立役者となって自民党の林田悠紀夫知事を誕生させ、長期にわたった蜷川府政を幕引きに追い込んだ。
その後、林田府政で副知事を1期務め、1983年、57歳という年齢で国政へ進出した。

「子どものような大人の時代」
 国政進出後も、野中は「強力な権力」と闘い続けた。
1990年代は、剛腕と呼ばれ小選挙区導入の改革を断行した小沢一郎と、そして2000年代に入ってからは、劇場型政治で「抵抗勢力」を殲滅し、自衛隊の海外派遣などを実現した小泉純一郎と激しく対立した。
 小沢も小泉も、戦後保守が大切にした調整文化を否定した。
時間がかかる妥協や根回しを嫌い、敵と味方を峻別して二極対立を演出し、多数決を振りかざして、たとえ1票の勝利であっても勝ちは勝ちだと強力なリーダーシップをわがものにした。
小沢は途中で失敗したが、刺激的な劇場の演出に成功した小泉は、高い支持率を維持しながら「1強」状態をつくり上げた。

 「政治家が立派な理念を掲げても、それで国民が本当に幸せになるかどうか分からない」
 こう野中は常々語っていた。
これこそが、戦争によって300万国民の命を犠牲にして学んだ教訓だった。

 実際に、小沢が導入した小選挙区制は、目的だった政権交代可能な二大政党制とは程遠い状況を招いている。
執行部に何も考えず従う政治家のチルドレン化を急激に進めていることも確かだ。
また小泉の市場至上主義は、格差拡大につながったと批判され、郵政民営化はいまだ評価が分かれるところだ。
ことほどさように強いリーダーの判断は、危うく、曖昧な部分があるということだ。

 こと戦争につながる問題は、失敗が許されない。
だからこそ、リーダーの決断だけに委ねていいはずがないのだ。

<  今、振り返れば、この2人との野中の闘いは、単なる権力闘争の枠を超え、まさに、国が「一色に染まる」ことへの警鐘であり、絶対にそうはさせないという政治家としての覚悟だったと、私は考えている。
 今は「安倍1強」と呼ばれる時代となった。
役人は忖度し、財務省では森友問題について安倍の関与につながる公文書の改ざんまで行われた。
政府の方針に沈黙する議員も増え、活発な党内議論すら聞こえてこない。

 つらくても議論をして、反対意見もある程度吸収しながら落としどころを調整するという「大人の政治」は、すっかり衰退してしまった。
敵に悪態をつき、やじり倒し、妥協することのない「子ども」のような振る舞いが、「強さ」として評価される時代になった。
そして、強い米国には言われるままに追随し、韓国には強気に出て留飲を下げるような、「子どものような大人」が増えてきた。

「“叩き上げ”の弱点」
 なぜ、こうも簡単に、野中が守り続けた「リベラル保守」の理念は影響力を失ったのか。
深みのある「大人の政治」は崩壊しつつあるのか。
 悲惨な戦争の記憶が薄れたことだけが原因なのだろうか。
いや、それだけではあるまい。
やはり、「リベラル保守」を継承するリーダーが育っていないということも大きな理由だろう。
そして、これは野中が唯一、置き去りにしてしまった仕事だ。

 残念ながら崇高な理念も、それだけでは呪文と変わらない。
権力と結び付いてこそ人々を動かし、時代の精神となり得る。
野中は、弱者のために強くなければならないことを知っていた。
弱者と共に歩むだけでは、弱者を救えないことを知るリアリストだった。
だからこそ、強力な権力を求めて権謀術数を繰り広げ、政敵を執拗に攻撃したのだ。

 しかし、野中は、その政治を引き継ぐ、次のリーダー、実力者を育てることがなかった。
野中の意思を引き継いで、「子どものような大人」たちを叱り飛ばす後継者を育てなかったのだ。
 なぜなのか。野中を長年支えたあるスタッフが私にこう話したことがある。

「野中は苦労してきたからこそ、思いやりがあり、親身になってわれわれの相談にも乗ってくれた。
しかし、人を心から信頼することはなかった。
これは叩き上げの性だと思う。
苦労して得た価値観は、だれも実感できないし、共有できないと思ってしまうから、すべて自分がやらなくては気がすまなくなってしまう」

 確かに「叩き上げ」のリーダーは、全てを自分で仕切ろうとする。
かつて、土建会社の社長から首相にまで上り詰め、野中たちを率いた田中角栄も、毎日の陳情から国政の細部まで、全て自分で取り仕切った。
秘書たちが「他の人に仕事を振ってくれ」と言うと、「政治家は代理の利かない商売だ。お前たちに任せていたら日が暮れる。人生は、それほど長くはない」と言って怒ったという。

 野中は、身内の一人が、後継者になりたいと申し出た際、「やめておけ。おれがいなくなったら苦労する」と言って止めたという。
田中が言ったように、「代理の利かない商売」であることを自覚していたのだろう。
 そして何よりも、特定の権力者とそのファミリーが権力に執着することを嫌った。
権力には世の中を「一色に染めよう」とする衝動が潜む。
野中は自らを戒め、その衝動を自制した。

 森喜朗内閣で自民党幹事長となり、「影の総理」とも呼ばれていた絶頂の時代、あるインタビューに答えて、野中は、こう述べている。
 「私の人生は戦争で死ねんかった付録の人生です。責任の取り方だけは明確にしたいという気持ちがあるんです」

 内閣官房長官は1年2カ月、自民党幹事長は8カ月で自ら辞めた。
最後は、小泉との権力闘争に敗北し、政界から引退した。
 この権力に対する淡白さが、継続性という点であだになったと思われる。

戦争の記憶が失われつつある時代となり、それでも爪を立てて野中たちの思いを国民に引き継ごうとする「権力者」がいなくなった。
戦後政治を支えた「リベラル保守」の精神が、今、迷走している。(文中敬称略)【時事通信社「地方行政」2019年10月7日号より】  

菊池正史(きくち・まさし)
日本テレビ政治部デスク。1968年生まれ。
慶應義塾大大学院修了後、93年日本テレビ入社、 政治部に配属。
旧社会党、自民党などを担当し、2005年から総理官邸クラブキャップ。
11年から報道番組プロデューサー等を経て現在は政治部デスク。
「著書に「官房長官を見れば政権の実力がわかる」(PHP研究所)、「安倍晋三『保守』の 正体」(文藝春秋)などがある。
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2020年06月24日

沖縄戦から75年 歴史踏まえ将来描く責任

沖縄戦から75年 歴史踏まえ将来描く責任
2020年6月23日 毎日新聞「社説」

 沖縄はきょう、戦後75年の「慰霊の日」を迎えた。
太平洋戦争末期、住民を巻き込んだ地上戦が行われ、約20万人が亡くなった。
このうち住民の犠牲は約9万4000人にも上った。

 沖縄戦の最後の激戦地、糸満市摩文仁(まぶに)では、県主催の追悼式が行われる。
ところが今年、思わぬ騒動が起きた。
新型コロナウイルス感染対策として国立沖縄戦没者墓苑での開催を県が検討したところ、抗議の声があがった。
 追悼式は例年「平和の礎(いしじ)」そばの平和祈念公園広場で行われてきた。
「礎」は、国籍や軍民の区別なく戦没者の氏名を刻んだ石碑で、祈り、平和への発信をする場所として定着してきた。

 一方、国立墓苑には戦没者の遺骨18万余柱が納められている。
ホームページには「国難に殉じた戦没者」をまつるとの表現があった。
今回のことで削除されたが、県民の間には犠牲が美化されるのではないかという警戒感もある。

 例年と同じ場所で追悼式を行うよう求めた団体の一人は、記者会見でこう語った。
 「家族を拝んでいる気持ちが、戦争を正当化する国に盗まれていくようだ。
コロナだから仕方ないと思っていると、追悼式の意味が変わってしまう」

 玉城デニー知事は結局、会場を元に戻さざるを得なかった。
 これは単に会場の問題ではない。
戦争体験の継承が難しくなっていく中で、沖縄戦の意味が国に都合よく書き換えられかねないという危機感の表れだ。
戦後の歴史も踏まえ、沖縄の人々が今も国との関係に割り切れない感情を抱いていることが背景にある。

 沖縄は、戦争で本土防衛の時間を稼ぐ「捨て石」にされた。
戦後も27年間、米軍の施政権下で、理不尽な用地収用や事件事故に苦しんだ。
本土の米軍基地が減る一方、沖縄の負担は増し、日米安保条約と地位協定のもと、安保体制を支える最前線となった。
 沖縄の将来は、歴史を見つめることなしには描けない。
その過重な負担によって、日米安保体制の恩恵を受けている国や本土の人々も、無関心でいるべきではない。

 慰霊の日に犠牲をしのび、沖縄の現状と行く末をともに考える責任を再確認する必要がある。
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2020年06月25日

議員辞めない河井夫妻 640万円ボーナス“丸儲け”に非難殺到

議員辞めない河井夫妻 640万円ボーナス“丸儲け”に非難殺到
2020/06/24 日刊ゲンダイ

 来週30日に支給される国会議員へのボーナス。
その額ナント、1人あたり約320万円。
買収容疑で逮捕された前法相の河井克行と妻で参院議員の案里両容疑者にも支払われるため、国民から非難ゴウゴウだ。

 ネット上では、河井夫妻に対し、〈歳費全額返金してください〉〈潔く議員辞職しなさい〉――とのコメントが続出。
歳費受領権が憲法で保障されているとはいえ、原資は税金である。
国会議員としての仕事もせず、説明責任も果たさない2人が歳費を受け取り続けることに、納得できない国民はかなりいるようだ。

実際、このまま議員を辞めなければ、河井夫妻は多額のカネを受け取ることになる。
 河井事件が発覚したのは、昨年10月末。逮捕されるまで実質的に政治活動はやれていないが、この8カ月間で2人が受け取った歳費は、克行容疑者が約1307万円、案里容疑者が約1177万円にも上る。
さらに、来週30日支給のボーナスだけでも、2人合わせて約640万円。
議員への毎月の文書通信費100万円も合わせれば、6月の夫妻の月給はザッと1100万円に上る。

 元秘書が有罪判決を受けた案里容疑者は、連座制による失職が秒読み段階だ。
衆院議員の克行容疑者は遅くとも、来年10月に任期を迎えるが、辞職か失職するかしない限り、歳費は延々と支払われ続ける。
政治評論家の本澤二郎氏がこう言う。
「本来なら、安倍官邸は河井夫妻に辞職してもらいたいはずです。
任命責任を追及されるとはいえ、2人がバッジを外せば、この話題は消えていきますからね。
しかし、引導を渡せるのかどうか。
強引に辞めさせたら反撃される恐れがある。
自民党本部が選挙資金として河井サイドに渡した1億5000万円の行方など、ベラベラ話されては困ると考えているのではないか。
ただただ、国民の政治不信を招いています」

 2人が辞めるまで、国民の怒りは消えそうにない。

県議会元議長が200万円受領認める
 克行容疑者が作成していた「買収リスト」に名前があった94人のうち、最高額は広島県議会元議長の奥原信也県議の計200万円だったことが分かった。
24日の読売新聞が報じた。
 奥原氏は同紙の取材に、河井夫妻から3回に分けて計200万円の受領を認めた。

現金提供の趣旨について2人からは説明がなく、200万円のうち50万円は使い、150万円は政治資金規正法に基づく寄付として処理したという。
リストにはほかに高額提供者として、三原市の天満祥典市長に2回に分けて150万円を提供した旨の記載があったと一部で報道されたが、天満市長は23日の市議会で「現金授受はない」と否定した。
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2020年06月26日

「がんが治る」保証ないニセ情報が危険すぎる訳

「がんが治る」保証ないニセ情報が危険すぎる訳
間違った治療を選択しても責任は患者にある
2020/06/25 東洋経済オンライン
岩澤 倫彦 : ジャーナリスト
新型コロナウイルスに関してさまざまなニセ情報が飛び交い、人々を翻弄している。
とくにSNSなどで拡散されたのが、「食事で新型コロナを予防できる」という情報である。
「納豆」「オリーブ葉エキス」「マヌカハニー(蜂蜜の一種)」「海藻」「ミドリムシ」「各種ビタミン」などの名が挙がるたびに、関連商品の品切れが続出した。
国立健康・栄養研究所では、30種類におよぶ食品について調査を行い、「新型コロナウイルスに対する効果を示した食品・素材の情報は見当たりません」という見解を公表している。

実は、がん治療においても、同様のニセ情報が飛び交っていることをご存知だろうか。

水素で、がんも新型コロナも治る?
「誰もが知っているグローバル企業の元社長に、あなたの身体が心配だから使ってみないか、と勧められました。
やんわりお断りしましたけれど、自分に効果があったのでぜひ使ってほしいと。
がんが再発しないか心配している、とあつくおっしゃるので、断りきれなかったのです」
数年前、がんの手術をした会社経営者の自宅に配達されたのは、「水素ガス吸入器」だった。
大きめの電気ポットのような形状で、爆発しない濃度にコントロールされた水素を吸入できるという。
そして元社長の部下からは、次のようなメールが届いた。
「無料レンタル期間は1カ月間です。効果を感じたら購入して下さい。価格は70万円です」
この製品を販売している会社のホームページには、「水素ガスががん患者さんのQOL(生活の質)の改善やがんの退縮効果を示すのは事実です」と記載されている。

医療機器ではない製品が「効能効果」をうたうことは、医薬品医療機器等法で禁じられている行為だ。
この会社は、「中国では新型コロナの治療に水素が使用されている」という紹介もしている。
「試しに使用してみましたが、効果は何も感じられませんでした。
相手の機嫌を損ねないように平謝りして、製品は返却しています」(会社経営者)。

市販されている「水素吸入器」は、数万円から約160万円の製品まで、多くの企業が参入しているが、あくまで家庭用であり、臨床試験で有効性が確認された「医療機器」ではない。
「水素吸入療法」に関しては、慶応義塾大学病院の救急科が、厚生労働省から先進医療Bの指定を受けて、心停止後症候群の患者を対象にした臨床試験を実施している。
これは、心停止から回復した患者の後遺症に水素吸入療法の有効性を確認する臨床試験。
「がん」や「新型コロナ」の治療や予防効果とはまったく関係ない。

「今あるガンが消えていく食事」「ウイルスにもガンにも野菜スープの力」「死なない食事」「ガンは食事で治す」……。
書店に並ぶ本のタイトルを見ていると、まるで食事を工夫するだけで、がんが治ってしまうと錯覚するかもしれない。
実際、アマゾンの「がん関連」の売れ筋ランキング上位100冊のうち、実に37冊が食事関連の本が占める(6月21日時点)。

私は拙著『やってはいけない がん治療 医者は絶対書けないがん医療の真実』を上梓するなど、医師には絶対書けないがん医療のタブーや、詐欺的ながん医療を目利きするヒントなどを追っている。
がん患者やその家族が、食事療法を信じる最大の理由は、「医師」や「歯科医」が提唱していることだ。
加えて、国内外の名門大学で「教授だった」という経歴は、食事療法の信憑性を高める効果を持つ。

「肩書き=信用」という価値観が、私たちに刷り込まれているからだろう。
ただし、巷に氾濫する食事療法の本について、詳しく内容を分析してみると、臨床試験などの科学的手法で、有効性を証明したものは1つも見当たらなかった。
「食事でがんが消えた」のカラクリ 本で紹介されているのは、各医師による独自の食事療法で「がんが消えた」とされる「物語」ばかり。
しかも、食事療法だけで「がんが消えた」のではなく、がんの治療法として確立されている「標準治療」を併用しているケースが大半を占める。

食事療法の本から、象徴的な1例を挙げてみよう。
「乳ガンから、肺や脳など全身に広がった転移ガンが完全消えた」とされる56歳女性のケース。
しぼりたてニンジンジュースを1日3回、400〜500ミリリットル、3食を十穀米入り玄米、おかずは野菜やキノコ類、豆腐など。
こうした食事を続けるように指導した結果、全身に点々とあったがん細胞が、すべてキレイになくなった」
本の著者である医師は、食事療法の成果として、このケースを誇らしげに紹介しているが、患者は同時に、脳腫瘍をガンマナイフ(放射線治療の一種)、頭蓋骨転移は開頭手術、そしてホルモン療法を行っていた。
「最適な医学的治療を行いながら徹底した食事療法を行うと、このように改善しうる」と医師は述べているが、治療効果の主体はどう考えても、ガンマナイフなどの標準治療とみるのが自然である。

「にんじんジュースでがんが消える」という書籍は多数出版されているし、「食事療法の権威」としている人たちの多くが、にんじんジュースを強く勧めている。
しかし、国内外の臨床試験で、「にんじんジュースでがんが消える」ことを証明したものは1つも見当たらない。
そればかりか、アメリカ・国立がん研究所は、にんじんの主成分「β-カロチン」のサプリメントを摂取した人は、肺がんリスクが上昇した、と公表した。
実際、にんじんジュース等による食事療法を実践した患者や家族に聞くと、栄養のかたよりや食欲が減退するなど、かえって悪影響が出てしまったという。

日本の国立がん研究センターは、「食道がん・胃がん・肺がんについては、野菜と果物をとることで、がんのリスクが低くなることが期待される」とする見解を出したが、明確な結論は出ていないと付記している。

高額サプリメント「フコイダン」の罠
新型コロナの予防に効くとされた、フコイダン。
もちろん、有効性は何も証明されていない「ニセ情報」だった。
このフコイダンは「がんに効く」として、一部のがん患者たちに信じられており、極めて高額なサプリメントが今も販売されている。
フコイダンの原材料は、「もずく」や「がごめ昆布」などの海藻。ぬめり成分に「抗がん作用がある」とされているが、がん患者を対象にした臨床試験で、有効性を証明したものは見当たらない。
2019年8月、「フコイダンエキス」という健康食品を、3年間で28億7000万円を売り上げた会社社長ら4人が逮捕された。医薬品として承認を受けていないのに「がん細胞が自滅する」と宣伝・販売した、医薬品医療機器等法の違反(未承認医薬品の広告、販売)容疑である。
約3000円で仕入れた商品を、5万円超の価格で販売したというから、典型的な「がんビジネス」だったことがうかがわれる。

がん患者が「フコイダン」に多額のお金を使うのは、効果を信用しているからだ。
大きな影響を与えているのが、ある国立大学研究室の存在である。
所属する研究員によるウェブサイトは、効果を次のようにうたう。
「低分子化フコイダンは、がん細胞に直接作用し、がん細胞を自然死(アポトーシス)に導きます。
また、がん細胞に栄養を運ぼうとする血管が新たにできることを抑制し、患者さん自身の免疫力を高めます」

この国立大学研究室は実験によって、「フコイダン」の抗がん剤作用を確認したと公表している。
ただし、同研究室が行った実験は、「in vitoro(イン・ビトロ)」=「試験管の実験」の段階だった。
試験管の中で確認されたことが、患者の体内で同じく作用するとは限らない。
だから、多数の患者を対象にした臨床試験によって、有効性を確認することが必須になっている。

「間接的に聞いているし、自分も確信している」
ちなみに同研究室は、医学系ではなく、農学系に属している。
担当の研究者は、電話インタビューに対して次のように答えた。
 「自分は医者ではないので、臨床研究論文は書いていない。
フコイダンの効果については間接的に聞いているし、自分も確信している。
フコイダンの研究は食品の範囲内であり、医薬品にする計画はない」

  新型コロナウイルスの感染がピークアウトした現在、国内の死亡者数は1000人に満たない。
これに対して、がんで命を落とす人は、年間約37万人。
中には、根拠のない医学情報や高額なサプリメントを信じた結果、適切な治療を受けられずに亡くなった患者も存在しているはずだ。
たとえ、間違った治療を選択しても、大半の医師は強く引き留めない。
患者の自己選択権を尊重するのが、現代医療の基本だからだ。
ニセ情報を見抜き、正しい治療を選択する責任は患者側にあることを、ぜひ自覚してほしい。
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2020年06月27日

自分は洗脳されていないと思う人の大きな誤解

自分は洗脳されていないと思う人の大きな誤解
世の中はすべて洗脳、悪い方向に行かない為に
2020/06/26 東洋経済オンライン
えらいてんちょう矢内 東紀: 作家、経営コンサルタント

「人々が勝ち取ってきた民主主義の未来は危機的な状況にある」と警鐘を鳴らすのは、えらいてんちょうこと矢内東紀氏。
怪しいオンラインサロンやインフルエンサー、カルト宗教、政党などに批判を加えてきた。

もともと私はYouTubeのメインチャンネルで宗教のことを扱っていました。
そこではさまざまな宗教家との対談や、場合によってはその宗教に潜入して中の様子を探るなど、地上波では絶対にできないようなことをしていました。 
  加えて、「みんながいいと思っているもの」や「面白いと持ち上げているもの」に批判を加えているシーンが目立つので、かなりの数の人から「人にだまされない人になるにはどうしたらいいですか」と聞かれます。
しかし、そんな方法はありません。

私のことを本気でだまそうと思って綿密に計画してきた人間には私もだまされると思います。
一番大切なのは「別にだまされてもいいや」という気持ちです。
そもそも大体の人間は、だまされやすいのです。
もちろん人をだます行為にも、いろいろと種類やグラデーション(程度)があるわけですけど、例えば本気で私をだまそうとして「えらてんから金を取ってやろう」と思ったら、いくらでも取れる。

しかるべき近づき方をして、私に響くような理由を用意したうえで「どうしてもお金を用意してほしい」と言われたら私は断れません。
そのような私の性格などを徹底的に調べて狙われたら、おそらくだまされてしまうでしょう。
だからもう、だまされるのは仕方がないことです。
そんなものはだますほうが悪いと思うしかありません。

だまされないようにしようという心構えはあってもいいですが、それよりも「この人にはだまされてもいいや」と思える人と付き合っていきましょう。
だって人間は簡単にだまされるんですから。
だまされてもいいと思える人がいることは、とても幸せなことです。

自分の能力に批判的であれ
そのなかで、いわゆるだまされやすい人、だまされて損をする人の特徴は、「流されやすい性格で、楽をして稼ごうとしている」人です。
こういう人に限って、自分に何の能力もないのに誰かが自分のお金を増やしてくれると思っている。
加えて自分の能力を過信しています。
このようなスケベ心を持った人間というのはだましやすいし、だまされやすい。

また、「自分はだまされにくい」と思い込んでいる人も厳しい。
人間はそんなに賢くありません。
自分に批判的になることが大事ですし、自分の力を見誤ると、あまりいいことはありません。

オレオレ詐欺にしても振り込め詐欺にしても、もちろんだますほうが悪い。
でも「宝くじが当たる方法を教えますので振り込んでください」といった言葉でだまされているとすれば、それはあまり同情できないというか、ハッキリ言ってバカです。
「自分はだまされやすいんだ、だまされてもいいや」という前提で生きていきましょう。

すべては洗脳である
これも前提の話になるのですが、世の中にあることのすべては洗脳です。
「洗脳するな!」とか「洗脳はよくない」ということがしきりに言われていますが、私は洗脳について必ずしも「悪」だとは思っていません。
どういうことか。
洗脳というと、単一の思想で人々の思考を染めることがイメージされますが、これにはグラデーションの問題があります。

つまり、「ものを盗んではいけない」と教えることが洗脳かどうかと言われれば洗脳なわけですし、「人を叩いちゃいけないよ」というのも洗脳です。
私の娘は息子を叩きますから。
子どもは子どもを叩きます。
でも、「人を叩いちゃだめだよ」と繰り返し言い聞かせると、人を叩かなくなってきます。
これは洗脳そのものだと思いませんか?

また、学校教育も洗脳中の洗脳です。
「みんなで仲良くしましょう」とか「明るく元気でいましょう」とか、すべてが洗脳です。
組織にしても「この時間に来なければならない」とか、「遅刻したら怒られる」とか、全部洗脳なのです。
そう、「世の中は洗脳だらけ」なのです。

その前提で、そのなかにもいい洗脳と悪い洗脳があります。
悪い洗脳とは、社会規範に大きく反する洗脳で、これは問題視されてしかるべきです。
ですから、社会でちゃんと生きていこうという気があるなら、社会的に問題のない洗脳をすべきだということです。
情報の記録や伝達、保管などに使われる装置のことを「メディア」と言います。
メディアと言われて思い浮かぶ代表と言えば、新聞や雑誌、テレビ、そしてSNSをはじめとしたインターネットメディアなどが挙げられます。
このメディアに情報が乗せられて広く伝えられるわけです。

先にも言いましたが、「学校教育」も洗脳の1つであり、近代国家が発明した1種のシステムで、子どもにものを教えるというメディアなわけです。
あらゆるものがメディアになるわけですが、一般的に人間の倫理や宗教は、メディアの進化とともに変化してきたと言えます。
聖書は紙(paper)の語源ともなっているパピルス(papyrus)で広まり、活版印刷の登場によってさらに普及しました。 近代では、ナチスドイツはラジオの登場とともに支持者を獲得し、最近はトランプ大統領がSNS、主にTwitterを使ってその思想を広く喧伝しています。
このように新興勢力とメディアの変遷には切っても切れない関係があります。

SNS黎明期の危険
最近ではYouTubeのような動画投稿メディアが普及してきました。
TikTokもそうです。
それこそNHKから国民を守る党はYouTubeから誕生した政党ですし、私が立ち上げたしょぼい政党も私自身がユーチューバーですから、このメディアを使って自分たちの考えを広めていこうとしています。
だからこそ、メディアのいい側面を当然知ったうえで、その善しあしは裏表の関係であって、無条件にいい面だけを信じることは非常に危険であることを伝えていきたいと思っています。

そして、メディアの黎明期は、新興勢力が支持を拡大していくのにうってつけの時期です。
現在、SNS全般がまさにその時期にあります。
日本では1995年にWindows95が発売されてから、国内におけるインターネット市場が急速に発展しました。
誰もが無料で情報にアクセスでき、情報を発信できるようになった。
さらにはここ20年あまりで、2ちゃんねるやミクシィが登場し、あらゆるものが誕生しては淘汰されつつ、FacebookやTwitter、そしてYouTubeなどのSNSが登場し、双方向の情報発信が可能になりました。

現在進行形でこれらの技術は進化しています。
これらSNSの発展はまだ20年程度と日が浅いため、それらが社会に及ぼした影響を検証しきれてはいない段階です。
この状態は、私たちにとって免疫のない状態なのです。
例えばいま、ラジオやテレビでヒトラーがしたようなことが流れてきても、「普通じゃないな」と歴史的に知っているので、そこまで危険ではなさそうです。
しかし、これがYouTubeなどで流されると、私たちにはまだ免疫がありません。

過去の事例が少ないぶん、つねに警戒というか、それこそ批判的な視点を併せ持っておかなければなりません。
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2020年06月28日

突飛なうそにだまされる人と見抜く人の決定的な差

突飛なうそにだまされる人と見抜く人の決定的な差
弁護士が指南「真実は多数決では決まらない」
2020/06/27 東洋経済オンライン
村田 らむ : ライター、漫画家、カメラマン、イラストレーター

世の中にはウソがあふれている。
「オレオレ詐欺(振り込め詐欺)」が世に出始めたのは20年ほど前だが、現在も形を変えて世の中にはびこっている。
「架空請求詐欺」
「金融商品等取引名目詐欺」
「異性との交際あっせん名目詐欺」
「ギャンブル必勝法情報提供名目詐欺」 などなど、さまざまな詐欺が横行しているのが現実だ。

中には、 「こんなあからさま手でだまされる人って、本当にいるの?」 と思うものもあるが、現に引っかかる人は後を絶たない。
新型コロナ禍以降は、世の中のウソに拍車がかかっている感もある。

「タンポポ茶を飲めば新型コロナの予防になる」 と言った医療詐欺の案件もあるし 「トイレットペーパーの供給が途絶える」 「蚊に刺されてコロナに感染する」 「身体に消毒薬を直接注射すればウイルスを殺すことができる」 など吹聴している本人たちもウソを言っている自覚がないデマも蔓延している。
また近頃では「現金10万円一律給付」に便乗した詐欺もはびこっている。

世の中にあふれる「ウソ」の見抜き方
私たちは生きていく中で、このようなウソを見抜いていかなければいけない。
だが「ウソの見破り方」を教えてもらえる機会はあまり多くない。
今回は『弁護士が教えるウソを見抜く方法』(宝島社)の著作もある、弁護士の深澤諭史さんに、ウソの見抜き方を教わった。

ウソを見破らなければならない職業はいくつかあるが、弁護士もその1つだ。
「実は、大学の法学部ではウソの見抜き方(事実認定)はほとんど教えてもらえません。
法学部の先生は法廷に立ったことがない人が大多数です。
事実認定について学ぶのは司法試験に受かった後に経験から学んでいきます」
つまり“ウソの見抜き方”を知るのは法律関係者の中でも一部(法曹三者)になる。

そもそも事実認定は一般市民のためにあるので、なるべくわかりやすく多くの人に伝えたいと深澤さんは思っている。
深澤さんも若い頃にはウソに泣かされることもあったが、喋り方や雰囲気だけでウソを言っているかどうかわかるようになってきたという。
弁護士ドラマなどでは、 「いちばん大事なのは依頼人を信じること」 と言うことが多いが、依頼人もウソをつくことはあるという。
「弁護士として開業した当時は『着手金0円』とうたっていました。
そのため、ウソの相談を持ちかける人もたくさんいました。
例えば嫌がらせのために、貸してもいないお金の返済を求める、などですね。
それらの経験で、ずいぶん成長することができました。

 もちろん基本的に依頼人のことは信じています。
ただ信じることと確認することは両立します。
信じるために補強証拠を集めるというのも矛盾しません。
依頼者をただ無批判に信じて右から左へ流すだけだったら、そもそも依頼者は弁護士を依頼する必要がありません。
裁判では、依頼者のことを裁判所に信じてもらわなければなりません。
ちょっとでも疑問に思うことは、依頼者に伝えるようにしています」

弁護士から見たウソをついている人の言動の特徴6選
ちなみに深澤さんが弁護士の立場から見て、ウソをついている人の言動の特徴を箇条書きに並べると、
@質問と答えが一致しない。
A質問に端的に答えず、前提や動機など聞かれもしない理由付けを延々と話す。
Bほかならぬ「自分の行動と記憶」を質問されているのに、なぜか「普通の人」(一般例)の話をする。
C自分の記憶だけで答えればいいのに、なぜか証拠の有無や内容を熱く語る。
D自分の行動の内容や理由を聞かれているのに、相手方の性格とか評判を語りたがる。
E証明ができるかどうかではなく、自分が信じてもらえるかどうかに強い関心を抱く。
以上の6つが上げられるという。

「もちろん、この基準に当たればウソ、当たらなければ本当、ということではありません。
あくまでも目安ですが、参考にはなると思います」
深澤さんの専門分野の1つがインターネット上のトラブルだ。
インターネット上のトラブルはどんどん増えているし、扱っている弁護士は多い。
先日テレビ番組『テラスハウス』に出演していた女性が自殺し、大きな社会問題になった。
自殺にはSNS上での誹謗中傷が原因の1つではないか?と言われている。
そんなネット上の、誹謗中傷や、プライバシー侵害も深澤さんは取り扱っている。

「まず誹謗中傷を書かれた側に立ち、書いた人間を探したり、投稿を消したりする仕事をしています。
逆に、誹謗中傷を書いた人を弁護する場合もたくさんあります」
誹謗中傷を書いた側は心に、 「いつ訴えられるかわからない」 という不安を抱えることになる。

インターネットの法律情報はウソ、デマが多い
不安を解消するために、インターネットで情報を検索する人が多い。
インターネット上にはたくさんの法律情報が載っているため、情報を得るのはたやすい。
「ただ、インターネットの法律情報は非常にウソ、デマが多いです。
そのウソを信じ込んで依頼に来る人も多く、誤解を解くのに一苦労な場合もあります」

インターネットに誹謗中傷を書いた人は、インターネット上に書き込みをすることに抵抗がない人が多い。
ネット上のあらゆる場所に書き込み情報交換をする。
そうしてたくさんの情報を集める。
「そうして彼らは“自分に都合のいい情報”だけを集めてしまうんですね。
自分にとって都合の悪い情報は、『デマだ』と切り捨ててしまう。

都合の良いウソはネット上で交換されていき、エスカレートしていきます。
弁護士がQ&A形式で質問に答えるサイトもたくさんありますが、それもあてになりません。
たとえ弁護士がウソをついていなくても、Qがそもそも間違っている場合はたくさんあります。
ウソを信じ込んで弁護士をつけずに裁判をしたら、確実に大負けします」

相談する前に思い込みで行動してしまったせいで、さらに事態が悪くなることも多いという。
ネットやテレビで“振り込め詐欺の手口”などを特集していることがあるが、それらを見てわかった気になるのも危ないという。
「詐欺師はテレビで報道されてしまったような古い手口は使いません。
つねに、新品の、新発明のウソをついてきます。
だから、手口を見抜くのではなく、状況からウソを見抜けるようにならなければなりません。

ウソにだまされる人の最大の特徴は心に“不安”を覚えているということです。
そして“不安”にとても相性がいいのが“安心できる都合のいいウソ”なんです。
いわば部屋に閉じ込めて置いて喉がカラカラに乾いたときに、毒入りのお茶を差し出すような手口です。
被害者は思わずウソを信じてしまいます」

不安を覚えると、人は安心を求め、その結果“都合のいいウソ”を信じやすくなる。
例えば典型的な振り込め詐欺で、 「あなたの息子さんが捕まりました。200万円振り込めば釈放されます」 と言ったものがある。
この場合“息子さんが捕まった”という情報で相手を不安に陥れる。
そして“200万円振り込めば釈放される”という都合のいいウソに引っ掛ける、という仕組みだ。

投資詐欺では、 「このままでは老後のお金がどうなるかわからないよ?」 という不安を与え、その後に 「ここに投資すれば絶対に儲かる」 という都合のいいウソを与える。
新型コロナ禍に関する詐欺でも、 「新型コロナによって人がバタバタ倒れている。大勢の人が死んでいる」 という情報を与え不安にさせる。
そして、 「このお茶を飲めばウイルスを抑えることができるから大丈夫」 というような都合のいいウソを与える。
「給付金10万円もらい損ねるかもしれない?」 と不安がっている人には、 「僅かな手数料で、面倒くさい手続きは代わりにやってあげますよ」 とウソをつく。
このようなわかりやすいウソでも、不安にかられている人は、思わず信じてしまう場合がある。
溺れる者は藁をもつかむの心境だ。

実はみんな不安が大好き
「“不安”と言えば避けたいこと、考えたくないこと、と思う人が多いと思います。
でも実はみんな“不安”が大好きなんです。
多くの人が、怖い思い、不安な思いをするためにわざわざホラー映画を見に行きますよね。
1970年代の日本はすでに科学大国でしたが、“1999年に地球が滅ぶ”と書かれた『ノストラダムスの大予言』は飛ぶように売れました。
世界が滅ぶなんて誰も見たくない未来を、みんなわざわざお金を払って信じたわけです」
“不安”には多くの人の感心が引き寄せられるという。

現在はインターネットが普及し、より心が不安になる情報を入手しやすくなった。
そして、不安に触れていると心が弱る。
結果的にウソに対しての抵抗力が下がる。

「この記事を読んでいる多くの方たちは、 『自分は大丈夫だ』 と思っているのではないでしょうか?
 それは間違いではありません。
通常、そう簡単にウソにはだまされません。
ただ普段の自分はだまされないかもしれませんが、不安で心が弱っている自分は案外簡単にだまされます。
また、不安以外では“欲望が刺激されているとき”もだまされやすいです。
『自分は大丈夫だ』と思っている人もタイミングが悪ければ、簡単にだまされます」

例えば悪質な宗教団体は、親族が亡くなって心が弱くなっている人をターゲットにする場合が多い。
人生上手くいって幸せな人に、 「あなたの背後には悪霊がついているので、お布施を100万円しなさい」 と言っても、買う人はいない。
心が弱っているからこそ、“溺れる者は藁をもつかむ”で、わかりやすいウソでも信じてしまうのだ。

「心が不安に満たされているときには、一旦立ち止まって、 『今の自分はだまされやすい心理状態にある』 と認識するようにしていただきたいです。
それだけでだまされる可能性はずいぶん下がると思います。
もし不安から逃れるために何か行動を起こそうとしているなら、少し手を止めてみたり、もう一度考え直してみるのもいいと思います」

だまされやすいウソの典型は「面白い」ということ
皆がだまされやすいウソというのはどのようなものなのだろうか?
「だまされやすいウソのいちばんの要素は、そのウソが『面白い』ということです。
面白いウソは、つまらない真実よりも、世間に広がりやすいです。
インターネット時代になり、その傾向はより強くなっています。

多くの人が知っているからと言って、それが真実とは限りません。
真実は多数決では決まりません。
そして、話がわかりやすければわかりやすいほど、単純であれば単純であるほど、都合がよければよいほど、ウソである可能性が高くなります。

耳あたりのよい、面白い話には、つねに眉に唾をつける必要があります」
昨今、暗いニュースや、不穏なニュースがたくさん流れている。
目を通しているうちに、心が不安で満ちてしまう人もいるだろう。
そんなときは「自分はだまされやすい状態にある」と認識して、飛びつくのは避けたほうがいいだろう。

安易に信じてしまうことで、人生を台無しにしてしまうウソもあるのだ。
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2020年06月29日

「答弁拒否」で民主主義を破壊する安倍政権。7年半で計6532回。

「答弁拒否」で民主主義を破壊する安倍政権。
  7年半で計6532回。
6/28(日) HARBOR BUSINESS Online
日下部智海.フリージャーナリスト

安倍政権の「答弁拒否」を徹底検証
 国権の最高機関であり、国民から選ばれた政治家が、国の進む道を決めるために議論をする場、”国会”。
 首相や閣僚には、国会に出席し、答弁する義務があるとされている。
しかし近年の国会では、首相や大臣、副大臣、大臣政務官、政府参考人(官僚)といった政府の代表者が、委員の質問に対し「お答えを差し控える」や「答弁を控えさせていただきます」と答弁拒否する光景を目にするのが増えた。

 そこで本連載では、安倍政権の約7年間を「控え」という単語をキーワードに、誰が、どのような質問から逃げてきたのかを検証し、政府が国民に対し何を隠そうとしてきたのかを探っていく。
本記事はその第一弾。

首相や閣僚は答弁義務を負っている
 本題に入る前に、首相や閣僚の出席義務について説明しておこう。
 国会には、議院の最終的な意思決定をする”本会議”と、本会議での最終決定を行う前に、予算・条約・法律案などの議案を専門的に審査する機関である”委員会”がある。
 委員会には大きく分けて常任委員会と特別委員会があり、名称は少し異なるが衆参ともに17の常任委員会が設けられ、必要と認められた時に特別委員会が設置される。
 そして、首相や閣僚は、議会への出席を求められた場合に出席義務が存在すると日本国憲法第63条に規定されている。  

1975年6月5日の参議院法務委員会で、吉國一郎内閣法制局長官は、「憲法63条におきましては、内閣総理大臣その他の国務大臣の議院出席の権利と義務を規定いたしております。
このことは、内閣総理大臣その他の国務大臣が議院に出席をいたしました場合には、発言をすることができ、また政治上あるいは行政上の問題について答弁し説明すべきことを当然の前提といたしておるのでございます。
つまり、答弁し説明をする義務があるというふうに考えております」と答弁している。

 また、2008年福田康夫内閣の『衆議院議員平野博文君提出閣僚等の答弁・説明義務及び「あたご」事故の調査等に関する質問に対する答弁書』には、「憲法第六十三条において、内閣総理大臣その他の国務大臣は、議院で答弁又は説明のため出席を求められたときは出席しなければならないとされており、これは、国会において誠実に答弁する責任を負っていることを前提としていると認識している」とある。
首相や閣僚には、出席義務のみならず答弁義務も存在していると繰り返し述べられてきたのだ。

 このように、委員(委員会に所属している国会議員)からの質問に対し首相や閣僚が誠実に答弁することで、民主主義の根幹である国会での議論が成り立っている。

2012年以降、答弁拒否が年々増加 計6532件
 安倍政権下での答弁拒否の総数を調べるために、国会会議録検索システムで期日を第2次安倍内閣が誕生した2012年12月26日から執筆現在の2020年6月17日(近日中の議事録はまだ反映されていない可能性がある)に指定し、検索の抜け穴を生じさせないために検索キーワードを『控え』に設定し検索した。
すると、13,901件も該当した。

 13,901件の中には、2016年5月8日の決算委員会で元気がトレンドマークのアントニオ猪木議員が、委員長から名指しで「大声は控えてください」と怒られ、「国会にいると元気がなくなってしまうな」といじけてしまうやり取りなど、答弁拒否と関係のない「控え」も含まれていた。
 そこで13,901件を1件ずつチェックすると、質問への回答や説明から逃れるために「答弁を控える」、「お答えは差し控えさせていただく」、「回答は控えさせていただきたい」、「差し控えたい」、「控えます」など多種多様な言い回しで、政府側の答弁者が追求から逃れていた。

 第2次安倍内閣が誕生してからの国会の会期1,694日間において、上記のような説明を拒むために使われる言い回しを首相・大臣・副大臣・大臣政務官、政府参考人(官僚)が使った合計は、6,532件だった。
 年別にみると、2012年は0件(会期3日)、2013年は448件(会期211日)、2014年は829件(会期207日)、2015年は670件(会期245日)、2016年は712件(会期236日)、2017年は1046件(会期190日)、2018年は1312件(会期230日)、2019年は957件(会期222日)、2020年は558件(会期150日)と、年を重ねるごとに答弁拒否の回数が増加し、2018年には5年前の約3倍にまで増えた。

 2017年と2018年に答弁拒否数が増加したのは、森友・加計学園問題、南スーダン・イラクPKO日報隠蔽問題という政権が吹っ飛んでもおかしくない不祥事が続き、答弁を控え時間を稼ぐことしか乗り切る方法が存在しなかったからだ。
 2012年の民主党野田政権における答弁拒否389件(会期248日)と比較しても、安倍政権が真摯に国会での論戦に向き合っていないことがわかる
人によってはこの状況を長期政権のおごり緩みと評するかもしれないが、これは明らかに日本政治の劣化であり議会制民主主義の危機だと筆者は感じる。

拒否の回数、安倍首相が614件でトップ
 人物別でみると安倍首相が614件(任期2,734日)で最も多く、岸田文雄元外務・防衛大臣の276件(任期1,682日)、河野太郎防衛・元外務大臣の239件(任期1,356日)、稲田朋美元防衛大臣の147件(任期612日)、麻生太郎財務大臣の145件(任期2,734日)と続く。
 安倍首相の任期が長いため答弁拒否回数が増えるのも仕方ないと感じるかもしれないが、任期が全く同じ麻生財務大臣と比較すれば、安倍首相が繰り返し答弁から逃げてきたのがわかる。

 答弁拒否回数で安倍首相がトップである理由は、政府の最高責任者であり全ての事柄で説明が求められる点や、安倍首相が当事者である森友・加計問題や桜を見る会といった疑惑の追求を受けたからだ。
また防衛・外務大臣のランクインについては、国家機密や安全保障、他国との関係という理由で答弁拒否する機会が多いからだ。

連続拒否回数の記録保持者は森まさこ法相
 連続答弁拒否の記録保持は、2020年3月6日の参議院予算委員会における森まさこ法務大臣の36回。
社民党の福島瑞穂議員から東京高等検察庁黒川検事長の定年延長について質問され、「個別の〜」を理由に36回連続で答弁を控えた。
 「個別」を理由とした答弁拒否は全体の19.9%を占めており、主に企業の不正や社会でおきている問題について質問された時、「個別の企業、個別の事案のためお答えを控える」と使用されるのが安倍政権下でも一般的だった。

 これまでの前例から考えると、誰の前で黒川氏が定年延長の同意書に同意したのかという政府内での人事について、森法務大臣が「個別」を持ち出し、答弁を控えたのは異例のことだ。
安倍政権内での「個別」の範囲が、本来明らかにすべき政府の意思決定プロセスにまで広がっており不透明さが増していると言える。

森友学園問題での答弁拒否がトップの450件
 次にどの話題に対し答弁を拒否してきたかを調査したところ、森友学園問題が450件と最も多く、原発(再稼働、再処理など)281件、TPP256件、沖縄基地移設問題246件、北朝鮮問題(核開発、弾道ミサイルなど)210件、集団的自衛権192件、加計学園問題192件、北方領土165件、桜を見る会114件、拉致問題98件がトップ10にランクインした。

 通年で国会の議題に上がっていた原発や沖縄基地移設問題、北朝鮮問題に比べ、2017年に初めて国会で話題に上がった森友学園問題が2位以下にダブルスコアーをつけトップだった。
森友学園問題には安倍政権がどうしても隠しておきたい不都合な事実が存在していることが答弁拒否の数字から伺える。

 森友学園問題が国会で初めて話題に上がった2日後の2017年2月17日の衆議院予算委員会において、安倍首相が「私や妻がこの認可あるいは国有地払い下げに、もちろん事務所も含めて、一切かかわっていないということは明確にさせていただきたいと思います。もしかかわっていたのであれば、これはもう私は総理大臣をやめるということでありますから、それははっきりと申し上げたい、このように思います」と見切り発車的に発言した。

 その後、首相や首相夫人と森友学園との疑惑が浮かび上がり野党から厳しい追求を受けた時、首相を守るために様々な政府関係者が答弁を控えることに終始し、回数が積み上がっていった。
さらにほとぼりが冷めかけた時に、財務省理財局による決裁文書の改竄や自殺した近畿財務局職員の遺書公開などの新事実が明らかになり、国会での追求が加熱した。
 今年に入ってから安倍首相や麻生財務大臣は森友学園問題の再調査を拒否したが、この問題に対し450件の答弁拒否を国会論争において行なっており、国民への十分な説明責任を果たしたとは言えない。

 森友学園問題の他にも説明責任を果たしていない疑惑や、議論が深まる前に強引に通した法律が数多くあり政府への厳しい追求を野党が行なっていた。
しかし、質問には答えず、提出を求めた文書は黒塗り(桜を見る会の資料やTTP交渉資料)、極めつけは公文書の改竄・隠蔽(財務省理財局による決裁文書の改竄、南スーダン・イラクPKO日報隠蔽)と与えられる情報がわずか、かつその中に嘘が混じっており、政府の信頼性が地に落ち国会での政策論議が深まっていないのが現状だ。
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2020年06月30日

生活保護費減額に「最低」と言われる判決を下した名古屋地裁の論理

生活保護費減額に「最低」と言われる判決を下した名古屋地裁の論理
6/29(月) ダイヤモンドオンライン
フリーランス・ライター みわよしこ

● “自民党ヨイショ判決”では?
名古屋地裁に響く「不当だ」の叫び
 2013年に行われた生活保護費減額の取り消しを求める訴訟が、生活保護で暮らす1000人以上の原告と約300人の弁護団によって、全国29地裁で行われてきている。
 6月25日、最初の地裁判決が名古屋地裁で言い渡された。
緊張感が漂う法廷に入ってきた角谷昌毅裁判長は、「原告らの請求をいずれも棄却する。訴訟費用は原告らの負担とする」という判決を述べると、足早に法廷から去った。
傍聴席からは「不当判決だ」という叫び声が上がった。原告の完全な敗訴である。

 2013年の生活保護費減額については、正当化することのできる合理的な理由はない。
理由らしい理由がないのに引き下げが実施され、生活保護のもとでの暮らしは締め付けられている。
いわば、国が堂々と「生活費を充分に渡さない」という経済的DVを行っているようなものであり、“情状酌量”の余地はない。

法廷での厚労省側の主張には、時に「もっともらしさ」を取り繕うことさえ放棄しかけているような節もあった。
 しかし、この経済的DVは、家庭内での出来事ではない。
国家によって、200万人以上を対象として行われている。
減額された保護費の総額は、数千億円に達する。
原告が勝訴するということは、国が2013年から2018年までの5年間の減額分の保護費を原告に支払うということである。
実行するためには、自民党が与党となっている国会で予算措置を行い、可決する必要がある。
必要であっても、実現は困難であろう。

 以上の理由から、この種の訴訟の判決の定番の1つは、「生活保護法第8条によれば、厚労大臣が決定することになっている。それが違法であるわけがない」という「裁量論」である。
さらに「それにしても、これはひどい」または「そこまでひどくはないでしょう」という「程度論」がセットになる場合もある。

 今回の名古屋地裁判決も、「生活保護法第8条に基づいて厚労大臣が決めました。そこまでひどくはないでしょう」という「裁量論」「程度論」の組み合わせであった。
そこには、特に新規性はない。
 しかし、今回の名古屋地裁判決には、「生活保護費は自民党が決める」「生活保護費に国民感情や財政事情が反映されるのは当然」という、驚くべき内容がセットになっていたのである。

原告たちとともに訴訟に臨んできた弁護士たちからは、「最悪」「最低」という怒りの声が漏れた。
 筆者自身は「あまりにもあんまり」「これはひどい」といった感慨しか湧かず、数時間にわたって呆然としていた。
単純な「不当判決」ではない。その、はるか斜め上だ。

● 生活保護費を決めるのは自民党? 平均6.5%が引き下げられた経緯
 2013年1月、厚労省は生活保護費の生活費分を平均6.5%引き下げる方針を発表した。
2012年末の衆議院選挙で圧勝して与党となった自民党は、生活保護費の生活費分を10%引き下げることをアピールしていた。
厚労省はそれに呼応し、しかし若干の緩和を行った形である。
 とはいえ、厚労省の資料のどこにも、「自民党が10%引き下げと言ったから引き下げました」という記述はない。
もしかすると、「そんな事実、恥ずかしくて書けない」ということなのかもしれない。
しかしそれ以上に、法をはじめとする数々の規範によって「決めるのは厚労省であって政権与党ではない」と定められている以上、厚労省は「決めたのは自民党です」とは言えないのだ。

 生活保護法第8条には、生活保護基準は「厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし」「(健康で文化的な)最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであつて、且つ、これをこえない」ものであると定められている。
 この文言だけを読むと、「時の厚労大臣が、内容も基準も方法も勝手に決めてよい」という解釈もできる。
しかし、この部分の意味は、「確実なデータを根拠として、貧困や生活や健康の専門家たちに科学的方法で検討してもらって、さらに厚労省の官僚たちが検討して、厚労大臣の責任において『これが今年の生活保護基準です』と示す」ということだ。
 そのとき、世論や財務省(大蔵省)の意向は参照されない。
厚労省(厚生省)は、国民の健康を守るという使命を遂行する組織であり、政権からも他省庁からも独立して判断を行うのが原則だ。
以上は、1950年に生活保護法が成立して以来、厚労省(厚生省)の文書や多数の判決などによって確認されてきている。

今回の名古屋地裁判決も、判決文によれば、これらの法や文書や判決類を判断枠組みとしている。
 ところが判決理由には、以下のように示されているのだ。
 「生活保護費の削減などを内容とする自民党の政策は、国民感情や国の財政事情を踏まえたものであって、厚生労働大臣が、生活扶助基準を改定するに当たり、これらの事情を考慮することができることは(略)明らかである」
 日常的な用語で言い換えると、以下のようになる。
 「生活保護費は自民党が決める。自民党が国民感情や財政事情を反映したければ、そういう路線に沿って生活保護費が決まる。それでいいのだ」

● 司法が自ら司法の役割を放棄 逆の意味で“画期的”な判決
 背後で自民党が何を考えていようが、行政の厚労省が誤った判断をしているのなら、「それは誤っている」と示すのが司法の役割である。
しかし今回の判決内容は、厚労省の誤りを指摘しないだけではなく、さらに「厚労大臣が自民党だし、自民党が生活保護叩きの国民感情を盛り上げていたし、財政的には社会保障削減方針で一貫しているわけだから、厚労省がそうするのは当然」と言わんばかりなのだ。

 司法が自ら、司法の役割を放棄しているのか。
三権分立ではなく三権同一を、司法が積極的に目指そうとしているのか。
この名古屋地裁判決の“画期的”な意義は、「司法自身による司法の無効化」に見出すことが可能かもしれない。
 生活保護費を政権与党が決めてもいいことにするためには、国会の審議と法改正が必要だ。
それは司法の役割ではない。
しかし本判決は、立法と司法の境界線を軽々と踏み越えてしまっている。
俗に言う「謝って済むなら警察は要らない」を、はるかに超越した判決だ。

● 厚労省も認めない 政権与党と国民感情の優越
 厚労省にとっては、本判決は勝利である。
しかし、内容にも納得しているのだろうか。
 判決の翌日である6月26日、本訴訟に関わった弁護士ら、支援団体関係者、もちろん生活保護で暮らす当事者らが、厚労省に申し入れと交渉を行った。
問題は、判決だけではない。
コロナ禍下で生活保護を必要とする人々が急増しているため、「必要で、経済的に困っていればすぐ使える」という本来の原則どおりに、生活保護を利用できるようにする必要があるからだ。

 このとき、元厚生官僚でもある弁護士の尾藤廣喜氏が「憲法や生活保護法に示されていない、自民党や財務省の意向、国民感情などによって、生活保護費を決定するのですか」と尋ねたところ、厚労省保護課職員からは「法に従って、公平に適正に行います」という当然の回答があったということだ。

 名古屋地裁判決に盛り込まれた「生活保護費は自民党が決める」という内容は、厚労省も認めていないのである。
国会での立法や審議を経ずに、自らの役割や存在を司法に変えられてしまうのでは、たまったものではないだろう。
 今回の裁判官は、なぜ、このような「斜め上」の判決を下したのであろうか。
 名古屋地裁判決の背景として考えられることは、数多い。
たとえばコロナ禍で、生活保護をはじめとする社会保障を必要とする人が増えている。
総額をコントロールするために最も効果的なのは、生活保護費を減らすことだ。
 生活保護費は、他の社会保障制度や最低賃金など、約60にもおよぶ制度の参照基準となっている。
生活保護費を減らせば、社会保障費総額は自動的に減らせることとなる。

しかし本判決文は、3月末よりも前の時点で完成していたと見られる。
コロナ禍を考慮して大胆な変更が加えられた可能性は、あまり考えられない。
 次に考えられるのは、全国の28地裁で今後も続く訴訟、そして全国の8高裁で闘われる控訴審、さらに最高裁判決へと至る道筋の中における国側の戦略である。
合計で約40のポイントが存在する訴訟を将棋に例えると、最初の地裁判決は、「歩」の最初の1個の進め方のようなものである。
相手の立場からは、「ここで、理由はなんでもいいからボロボロに負かしておこう」という戦略は「アリ」なのかもしれない。
しかし、行政訴訟に取り組んでいるO弁護士に聞くと、「戦略的に酷い判決を」ということは考えにくいという。
 「あくまでも、判決は各裁判体(今回の名古屋地裁では裁判官3名)が作ります。
裁判所間で情報共有をしていることはありません。事件によっては、司法研修所での勉強会を通じて情報の共有が行われることもあると聞いています。原発については、裁判官の会合が開かれて方針が共有されたような話もあります。
今回の生活保護の訴訟で、そのような情報共有が行われていたかどうかは、わかりません。
もしかすると、情報開示請求などで出てくるかもしれませんが」(O弁護士)

 O弁護士が「聞いています」「話もあります」「かもしれません」としか言えないのは、そのような勉強会や会合の存在は公表されていないからだ。
稀に、裁判資料で存在が判明する事例もあるが、総数や全体像は全く不明だ。

● 裁判所の人事が忖度ならば 公正な裁判を期待できるのか
 そして、今回の名古屋地裁の裁判体は裁判官3名から成っていたが、うち1名は判決前に、最高裁の調査官として異動し、裁判官のエリートコースを歩んでいる。
 「最高裁は露骨な介入はしませんが、人事でコントロールしているのだと思います。
名古屋地裁の裁判官は、そういう意味で“踏み外さない”判決を書いたのだと思います」(O弁護士)
 つまり、“忖度”なのである。

 裁判官は、選挙で選ばれるわけではない。
最高裁裁判官の国民審査は、衆議院選挙と同時に行われるが、不信任となった裁判官はいない。
“忖度マシン”と言うべき裁判所の人事システムに対して、現在のところ、市民にできることはない。

そして、もしも紛争や事件に巻き込まれ、原告や被告となる時、私たちを裁くのはこのような司法なのだ。
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☀ | Comment(4) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする