2020年06月27日

自分は洗脳されていないと思う人の大きな誤解

自分は洗脳されていないと思う人の大きな誤解
世の中はすべて洗脳、悪い方向に行かない為に
2020/06/26 東洋経済オンライン
えらいてんちょう矢内 東紀: 作家、経営コンサルタント

「人々が勝ち取ってきた民主主義の未来は危機的な状況にある」と警鐘を鳴らすのは、えらいてんちょうこと矢内東紀氏。
怪しいオンラインサロンやインフルエンサー、カルト宗教、政党などに批判を加えてきた。

もともと私はYouTubeのメインチャンネルで宗教のことを扱っていました。
そこではさまざまな宗教家との対談や、場合によってはその宗教に潜入して中の様子を探るなど、地上波では絶対にできないようなことをしていました。 
  加えて、「みんながいいと思っているもの」や「面白いと持ち上げているもの」に批判を加えているシーンが目立つので、かなりの数の人から「人にだまされない人になるにはどうしたらいいですか」と聞かれます。
しかし、そんな方法はありません。

私のことを本気でだまそうと思って綿密に計画してきた人間には私もだまされると思います。
一番大切なのは「別にだまされてもいいや」という気持ちです。
そもそも大体の人間は、だまされやすいのです。
もちろん人をだます行為にも、いろいろと種類やグラデーション(程度)があるわけですけど、例えば本気で私をだまそうとして「えらてんから金を取ってやろう」と思ったら、いくらでも取れる。

しかるべき近づき方をして、私に響くような理由を用意したうえで「どうしてもお金を用意してほしい」と言われたら私は断れません。
そのような私の性格などを徹底的に調べて狙われたら、おそらくだまされてしまうでしょう。
だからもう、だまされるのは仕方がないことです。
そんなものはだますほうが悪いと思うしかありません。

だまされないようにしようという心構えはあってもいいですが、それよりも「この人にはだまされてもいいや」と思える人と付き合っていきましょう。
だって人間は簡単にだまされるんですから。
だまされてもいいと思える人がいることは、とても幸せなことです。

自分の能力に批判的であれ
そのなかで、いわゆるだまされやすい人、だまされて損をする人の特徴は、「流されやすい性格で、楽をして稼ごうとしている」人です。
こういう人に限って、自分に何の能力もないのに誰かが自分のお金を増やしてくれると思っている。
加えて自分の能力を過信しています。
このようなスケベ心を持った人間というのはだましやすいし、だまされやすい。

また、「自分はだまされにくい」と思い込んでいる人も厳しい。
人間はそんなに賢くありません。
自分に批判的になることが大事ですし、自分の力を見誤ると、あまりいいことはありません。

オレオレ詐欺にしても振り込め詐欺にしても、もちろんだますほうが悪い。
でも「宝くじが当たる方法を教えますので振り込んでください」といった言葉でだまされているとすれば、それはあまり同情できないというか、ハッキリ言ってバカです。
「自分はだまされやすいんだ、だまされてもいいや」という前提で生きていきましょう。

すべては洗脳である
これも前提の話になるのですが、世の中にあることのすべては洗脳です。
「洗脳するな!」とか「洗脳はよくない」ということがしきりに言われていますが、私は洗脳について必ずしも「悪」だとは思っていません。
どういうことか。
洗脳というと、単一の思想で人々の思考を染めることがイメージされますが、これにはグラデーションの問題があります。

つまり、「ものを盗んではいけない」と教えることが洗脳かどうかと言われれば洗脳なわけですし、「人を叩いちゃいけないよ」というのも洗脳です。
私の娘は息子を叩きますから。
子どもは子どもを叩きます。
でも、「人を叩いちゃだめだよ」と繰り返し言い聞かせると、人を叩かなくなってきます。
これは洗脳そのものだと思いませんか?

また、学校教育も洗脳中の洗脳です。
「みんなで仲良くしましょう」とか「明るく元気でいましょう」とか、すべてが洗脳です。
組織にしても「この時間に来なければならない」とか、「遅刻したら怒られる」とか、全部洗脳なのです。
そう、「世の中は洗脳だらけ」なのです。

その前提で、そのなかにもいい洗脳と悪い洗脳があります。
悪い洗脳とは、社会規範に大きく反する洗脳で、これは問題視されてしかるべきです。
ですから、社会でちゃんと生きていこうという気があるなら、社会的に問題のない洗脳をすべきだということです。
情報の記録や伝達、保管などに使われる装置のことを「メディア」と言います。
メディアと言われて思い浮かぶ代表と言えば、新聞や雑誌、テレビ、そしてSNSをはじめとしたインターネットメディアなどが挙げられます。
このメディアに情報が乗せられて広く伝えられるわけです。

先にも言いましたが、「学校教育」も洗脳の1つであり、近代国家が発明した1種のシステムで、子どもにものを教えるというメディアなわけです。
あらゆるものがメディアになるわけですが、一般的に人間の倫理や宗教は、メディアの進化とともに変化してきたと言えます。
聖書は紙(paper)の語源ともなっているパピルス(papyrus)で広まり、活版印刷の登場によってさらに普及しました。 近代では、ナチスドイツはラジオの登場とともに支持者を獲得し、最近はトランプ大統領がSNS、主にTwitterを使ってその思想を広く喧伝しています。
このように新興勢力とメディアの変遷には切っても切れない関係があります。

SNS黎明期の危険
最近ではYouTubeのような動画投稿メディアが普及してきました。
TikTokもそうです。
それこそNHKから国民を守る党はYouTubeから誕生した政党ですし、私が立ち上げたしょぼい政党も私自身がユーチューバーですから、このメディアを使って自分たちの考えを広めていこうとしています。
だからこそ、メディアのいい側面を当然知ったうえで、その善しあしは裏表の関係であって、無条件にいい面だけを信じることは非常に危険であることを伝えていきたいと思っています。

そして、メディアの黎明期は、新興勢力が支持を拡大していくのにうってつけの時期です。
現在、SNS全般がまさにその時期にあります。
日本では1995年にWindows95が発売されてから、国内におけるインターネット市場が急速に発展しました。
誰もが無料で情報にアクセスでき、情報を発信できるようになった。
さらにはここ20年あまりで、2ちゃんねるやミクシィが登場し、あらゆるものが誕生しては淘汰されつつ、FacebookやTwitter、そしてYouTubeなどのSNSが登場し、双方向の情報発信が可能になりました。

現在進行形でこれらの技術は進化しています。
これらSNSの発展はまだ20年程度と日が浅いため、それらが社会に及ぼした影響を検証しきれてはいない段階です。
この状態は、私たちにとって免疫のない状態なのです。
例えばいま、ラジオやテレビでヒトラーがしたようなことが流れてきても、「普通じゃないな」と歴史的に知っているので、そこまで危険ではなさそうです。
しかし、これがYouTubeなどで流されると、私たちにはまだ免疫がありません。

過去の事例が少ないぶん、つねに警戒というか、それこそ批判的な視点を併せ持っておかなければなりません。
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☀ | Comment(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする