2020年07月08日

小池圧勝で解散風 国民は「腐敗堕落の安定」を望むのか

小池圧勝で解散風 国民は「腐敗堕落の安定」を望むのか
2020/07/07 日刊ゲンダイ

 5日に投開票された東京都知事選は、前回(2016年)の約291万票を上回る約366万票を得た現職の小池百合子知事(67)が圧勝した。
 過去最多の22人が立候補した都知事選で、小池が、元日弁連会長の宇都宮健児(73)や、れいわ新選組代表の山本太郎(45)、元熊本県副知事の小野泰輔(46)ら他の候補を寄せ付けなかった最大の理由は、新型コロナウイルス禍の中で行われた選挙戦という“特異な状況”だったからだ。

 新型コロナの感染が拡大していない通常の選挙であれば、小池が前回の公約に掲げた「7つのゼロ」で、「ペット殺処分ゼロ」しか実現していないことや、財政負担が膨らむ東京五輪・パラリンピックをめぐる対応、カジノ誘致や豊洲市場の問題など、選挙の争点は多岐に及んでいたはずで、すべては「新型コロナ」の一点にかき消されてしまったと言っていい。
 選挙戦で、小池は新型コロナ対策の公務を優先させるとして街頭演説には出ず、もっぱらネットの動画配信による運動を展開。
候補者同士が互いの政策について質問したり、討論したりする機会も「3密」を理由に限定された。
これでは原則、全候補の主張、政策を公平に扱うメディアは知事選を取り上げようがなかっただろう。

 都知事選の終盤は、都内で新型コロナの新規感染者が連日100人を突破。
すると、小池はここぞとばかりに現職の強みを最大限に生かし、緊急会見を開いてメディアへの露出を増やしていたから、タダでさえ現職有利といわれる選挙で、知名度に乏しい他の新人候補は太刀打ちできなかったに違いない。

■野党は本気で与党と対峙する気がない
 要するに今回の小池圧勝は、新型コロナという「終わりの見えない災害」の最中に行われた異例の選挙であり、「危機には安定」という有権者のいわば思考停止状態を巧みに利用した結果ともいえるのだが、それにしても改めて無能ぶりを見せつけたのが野党勢力だ。
 立憲の長妻選対委員長は5日夜、「野党がまとまれなかった。総選挙で一騎打ちの構造に持っていくために努力しなければいけない」と反省の弁を口にしていたが、立憲、共産、社民の3党が支援した宇都宮(約84万票)と、3番手の山本(約65万票)、維新が支援した小野(約61万票)の得票を合わせても、自公が支援した小池の6割にも満たないのだ。
仮に東京では完全アウェーの維新と自公が組んでいたら、与野党の差は歴然だった。

 野党に支持が集まらなかった理由は決まっている。
もはや、お家芸ともいえるドタバタが有権者に透けて見えていたからだ。
 リーダーシップを発揮する立憲は前川喜平元文科次官(65)に出馬を打診して固辞され、さらに山本の擁立を検討したものの、次期衆院選で「消費税率5%」を共通政策にするよう迫られて断念。
結局、共産、社民と歩調を合わせることになったわけだが、実際は新型コロナ対応で日増しに存在感を増す小池におじけづき、独自候補を擁立できなかったからに過ぎない。

 一方、早々に自主投票を決めた国民も、宇都宮、山本、小野の3人に支援が分裂。野党の足並みがこれだけバラバラでは、選挙巧者の小池に勝てるはずがない。
元参院議員の平野貞夫氏がこう言う。
「都知事選は野党一本化がうまくいっていれば結果は分からなかったし、少なくとも野党結集のステップの選挙にするぐらいの姿勢で臨むのが当然だったのに、立憲などにそんな気概は感じられませんでした。
要するに野党は本気で与党と対峙し、政権交代を目指す気がない。
それをだらしないと言っても始まらないが、いい加減、野党立て直しを真剣に考えないと健全な民主主義が存在しなくなってしまいます」

コロナ拡大の最中に国会を閉じながら解散は言語道断
「現場の司令官である知事の足を引っ張っていいのか」
 選挙終盤、国民の玉木代表は厭戦論を口にしていたと報じられ、党内では「不戦敗」を容認する声すら出始めていたという。
こうなると、小池が強過ぎたというよりも、戦う前から戦意喪失していた野党が弱過ぎたのであり、全く絶望的な気分になってくる。
 野党がここまでの体たらくだと、メディア各社の世論調査で「次の首相候補」で有力な野党議員の名前が出てこないのも当然だろう。
共同通信の調査でも、安倍首相(14・2%)、石破元自民党幹事長(23・6%)に対し、立憲の枝野代表はわずか3・5%だ。
 一体、野党はいつまで「あれはダメ、これはダメ」「あの人は嫌い」などと小学生みたいな幼稚なことを言っているのか。大局的な視点に立った国家観が全く感じられない。

そもそも誰のため、何のために政治があるのかといえば、国民のためであり、今の野党であれば腐敗堕落の自公政権を倒し、まっとうな政治を取り戻すために存在しているのではないのか。
 おごり高ぶる与党に鉄槌を下すための選挙で、逆に野党のダメぶりを見せつけてどうするのか。
案の定、野党のドタバタを見て、安倍自民は「解散するなら今だ」と早期解散を容認する考えが広がりつつあるというから何をかいわんやだ。

■解散話を批判せずに報じているメディア
 麻生財務相は6月末、公明の斉藤鉄夫幹事長に「秋の解散が望ましい」との見解を示した、と報じられた。
斉藤は選挙準備が進んでいないとして年内解散に慎重な考えを示していたが、公明は2日に衆院選選挙区の2次公認候補を発表。
支持母体である創価学会は近く、各地域の幹部を集めた会議を開く予定だ。

 都知事選の結果を受けて安倍自民や公明が俄然、解散・総選挙に向けて勢いづいているのは、野党の足並みが乱れていることに加え、維新が支援した小野が健闘したことも背景にあるという。
仮に次期衆院選で自公が過半数割れに陥る可能性が出てきても、「維新を取り込めば安定多数を得られる」(自民党中堅議員)との見方があるからで、野党共闘がこじれて分裂するほど安倍自民にとっては好都合なわけだ。
そして何といっても、新型コロナ禍の中で行われる選挙は、有権者が安定志向になりやすいとみているのだ。

 だが、民主主義の根幹である公文書を平気で改ざん、隠蔽、破棄し、犯罪行為をもみ消すためには検察組織の人事にまで手を突っ込む犯罪者の巣窟のような政党、政権が「今はコロナだから勝つ」という理由で解散に踏み切るのであれば、民主主義はいよいよオシマイ。

今のぬるま湯野党と批判精神を忘れたメディアの体たらくで、狡猾政権はやりたい放題だ。
政治アナリストの伊藤惇夫氏がこう言う。
「新型コロナの『第2波』が来るかもしれないのに早々に国会を閉じ、選挙で勝てるからといって、解散・総選挙の声が出るのは不謹慎極まりないし、言語道断でしょう。
新型コロナは今も国内外で感染拡大しているのです。
解散・総選挙というバカげた発言を、何ら批判もせずに報じているメディアもまた、どうかしているとしか思えません」

 国民は「腐敗堕落の安定」を求めているのではない。
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☁ | Comment(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする