専門家が指摘「スーパー南海地震」
茨城から沖縄、フィリピンを襲う想定被害規模とは?
7/13(月) AERAdot.(編集部・野村昌二)
懸念されている巨大地震、南海トラフ地震。
「いつ起きてもおかしくない」と指摘する専門家の声もある。
だが、地震は単体ではなく連動して大地震を引き起こす可能性もあるという。
AERA 2020年7月13日号では「地震」と「水害」を徹底調査。
災害列島に生きる私たちは、真剣に考えたい。
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西日本の太平洋側で切迫度が高いのが、南海トラフ地震だ。
30年以内にM8〜9クラスが「70〜80%」の確率で発生するとされる。
南海トラフに沿った静岡県は11年からの9年半で1100回、和歌山県は651回、高知県303回で、決して多いとは言えない。またこれらの県が今年になって増えているという兆候も見えない。
だが、少ないからといって安心はできない。
立命館大学環太平洋文明研究センターの高橋学特任教授(災害リスクマネジメント)は、「令和の南海トラフ地震がいつ起きてもおかしくない状況にある」と指摘する。
「西日本でもフィリピン海プレートの影響でユーラシアプレートにひずみがたまり、地震だけでなく鹿児島県の口永良部島や桜島などの火山活動も活発化しています」
さらに6月に入ると奄美地方から沖縄、台湾、フィリピンにかけても地震は頻発していると指摘する。
これらは、フィリピン海プレートとユーラシアプレートの境界付近で起きている地震だ。
沖縄は今年になって59回の揺れがあり、沖縄本島では1月、震度4の地震が起きた。
高橋特任教授は警告する。
「地震は単体で捉えるべきではないと考えています。
首都直下と南海トラフ、沖縄──。
いずれもフィリピン海プレートが影響しています。
茨城から沖縄を経て台湾、フィリピン付近まで、連動して大地震が起きる可能性があります」
■スーパー南海地震の規模
この連動する大地震を高橋特任教授は「スーパー南海地震」と名づけた。
この地震が起きれば全長2千キロ以上をはるかに超える範囲が被害を受けることになる。
高橋特任教授は言う。
「東日本大震災のデータをもとに計算したところ、47万人以上の津波による死者が出ます」
一方、北に目を向けると、北海道も揺れている。
11年からの9年半で2371回揺れて8位。
今年を見ると、震度4が3回起きていて、いずれも十勝沖を震源としている。
これらは、北海道の太平洋側での巨大地震の前触れなのか。
北海道大学大学院地震火山研究観測センターの高橋浩晃教授(地震学)はこう説明する。
「元々北海道の太平洋沖は、地震活動が高い場所。
決していま地震活動が活発化しているというわけではありません」
だが一方で、北海道東沖の千島海溝で「超巨大地震」が起きる危険性は指摘されている。
17年12月、政府の地震調査委員会は千島海溝で超巨大地震が30年以内に起こる確率は最大40%とし「切迫している可能性が高い」との見解を示したのだ。
「18年9月の北海道胆振地方中東部を震源とした胆振東部地震はマグニチュード6.7でした。
それと比較し千島海溝で切迫している地震は1千倍のエネルギーを持ち、マグニチュード9近く。
東日本大震災と同じ規模になります」(高橋教授)
巨大地震が発生すると、東日本大震災の時と同じように20メートルを超える津波が北海道の太平洋側の地域を襲うとされる。
高橋教授は言う。
「地震はいつ起きるかわかりません。
住民は防災意識を持ち、避難訓練や非常用持ち出しの備えをしておくことが大切。
行政は長期的ビジョンに立ち、ハザードマップの見直しや防潮堤・避難路の建設など防災対策を講じ、子や孫の代まで伝えられるシステムを築いていってほしい」
※AERA 2020年7月13日号より抜粋