2020年07月21日

精神科医が「職場の人間関係は悪くて当然」と断言するワケ

精神科医が「職場の人間関係は悪くて当然」と断言するワケ
2020.7.20 ダイヤモンドオンライン
樺沢 紫苑:精神科医、作家

「全員仲良し」なんてありえない
「職場での人間関係」に関するある調査では、84%もの人が問題を抱えているというデータがあります。
さらに、転職者に対する別の調査では、「人間関係が転職のきっかけになった人」が、53%にも及んでいます。
「うちの会社は人間関係がよくない」という話をよく聞きます。
逆に、「うちの会社は人間関係が最高だ」「こんなに働きやすい職場はない」という話は、滅多に聞きません。
なぜでしょう。
それは、「すべての職場は人間関係がよくない」からです。

私は、今まで10ヵ所以上の病院で勤務してきましたが、「人間関係がとてもよかった」という病院は、1ヵ所もありませんでした。
どんな組織でも、数十人から数百人のバラバラな性格の人が集まっているので、全員が仲良しというのは、ほぼありえない話です。
たとえば、小学校、中学校、高校のクラスを思い出してみましょう。
40人ほどのクラス全員が仲良しで、いじめや仲間はずれなどまったく存在しない、人の悪口を言う人も誰もいない。
そんなクラスが存在したでしょうか。
あなたは自分の職場を「人間関係が険悪」と思うでしょうが、多くの職場を見てきた私から言わせると、それはごく「普通」のことです。

「職場の人間関係はよくない」のがスタンダードなのです。
ですから、「職場の人間関係が悪い」という理由で転職すると、次の職場も「人間関係が悪い」、また次の職場も「人間関係が悪い」と、何度転職しても、理想の職場は見つからないはずです。
考え方を変えるべきなのです。

職場の人間関係は深めるな
「対人関係の三重円」という考え方があります。
円の一番内側が、「重要な他者」である家族や恋人、親友。
円の2番目が、友人や親戚。
円の一番外側が「職業上の人間関係」です。
つまり、「職場の人間関係」は、心理学的に見ると重要ではないのです

それなのに多くの人は、「職場の人と仲良くなる」ことを重視し、「友人」と同レベルに親密度を深めようと膨大な時間と精神エネルギーを費やします。
結果として、精神的に疲弊し、「今の職場を辞めたい!」と思うのです。
「まったく話をしない」「目も合わせない」「相手を引きずり下ろすための嫌がらせが日常茶飯事」など、仕事に支障をきたすと困りますが、職場の人間関係は最低限のコミュニケーションがあれば十分なのです。

社会人になってすぐの人は、それまでの人間関係を引きずります。
たとえば、「高校、大学のクラスメイト」や「部活の仲間」のイメージで、「職場の人間関係」をとらえます。
ですから、職場の仲間とも、今までの「友人」と同じような「深い関係」を築こうとする。
結果としてそれは実現されないので、悩み、疲れるのです。

職場の人間関係は、もっと「ドライ」でいいのです。
職場の人と「仲良くなろう」という意識を捨てましょう。
「仲良くなる」や「好かれる・嫌われる」ではなく、報告・連絡・相談など仕事に必要なコミュニケーションをすることのほうが、100倍、1000倍重要です。

チームは「8人」が限界
Amazon創業者のジェフ・ベゾス氏の「2枚のピザ理論」という考えがあります。
チームの仕事を効率的に行うのに適切な人数は、ピザ2枚でまかなえる人数。
つまり、5〜8人程度の人数。
10人を超えると、相互の意思疎通が希薄になり、仲間割れがおきる、派閥に分かれるなど、チームワークが破綻する可能性が高いのです。
「ピザ2枚で空腹を満たすことができない人数で会議をしてはならない。」  ―― ジェフ・ベゾス(Amazon創業者)

「すべての職場は人間関係がよくない」と書きましたが、例外もあります。
8人以下の職場であれば、「全員と仲良し」ということは、十分にありえます。
私の経験でも、外来部門だけだと、医師、看護師、事務員で5、6人ほどのチームとなりますから、全員と意思疎通ができてとても仕事がしやすいというところもありました。
中小企業や、小さな部署、自分が所属する5〜8人以下のチームなど「小グループ」であれば、コミュニケーションがとりやすく、関係性が密になりやすいのです。
ですから、それ以上の人数がいる組織では、「全員と仲良くしよう」という発想に無理があります。

あなたのことを嫌う人もいるのは当然。
あなたが、好きになれない人がいるのも、実に当然の話です。
逆に言うと、「会社全体の人間関係」が悪かったとしても、あなたの所属する5〜8人程度のチーム内で、コミュニケーションがとれていて、まずまずの人間関係ができていれば、仕事上、大きな支障にはなりません。
そして、それは個人の努力でも、ある程度は実現可能なはずです。
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☁ | Comment(2) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする