自助・共助・公助=中央大教授・宮本太郎
毎日新聞2020年9月26日 東京朝刊
菅義偉内閣が発足し、目指すべき理念として自助・共助・公助があげられ、縦割り行政の打破が掲げられた。
初めは賛成だと思ったのだが、こうした言葉で心に浮かべている社会のかたちは違うらしいということが分かってきた。
自助・共助・公助という時、一方で「できる限りは自助で、力尽きたら共助で、共助もだめなら公助で」という「自助社会型」の議論がある。
この場合、公助というのは生活保護のような最後の手段だ。
新首相の言うのはこちららしい。
他方で、「自助が可能なように共助が支え、共助の支え合いが成り立つように公助が地域を支援する」という「連携型」の考え方がある。
この場合の公助は、地域活動への補助金など多様な施策を含む。今、地域の活力を引き出しているのはこちらだと思う。
三重県名張市は、14の小学校区ごとに住民の共助をすすめる地域づくり組織が活動し、「まちの保健室」が置かれている。
保健室の看板を掲げているが、経済的困窮も含めて住民の幅広い悩みごとに対処し、自立を支援する。
各区の共助組織には、「ゆめづくり地域交付金」という公的支援がなされる。
共助が自助を可能にし、公助が共助を支援するかたちだ。
市役所は、住民の自立を支援するためにも縦割り行政の打破を目指し、各部局をつなぐ「エリアディレクター」を配置する。
共助をいかなる公助で支えるかは地域によって多様だ。
島根県雲南市の地域自主組織には公的財源で職員が配置されている。
富山市は、ほぼ小学校区ごとに市の出張所を設置している。
ちなみにいずれも保守系の市長が率いる自治体だ。
政権政党は地方の保守の知恵をもっとくみ上げていくべきではないか。