2020年10月29日

「人望がある」は幻想!“いい人”をやめるべき理由

「人望がある」は幻想!“いい人”をやめるべき理由
2020.10.28 ダイヤモンドオンライン
弘兼憲史:漫画家

「人生100年時代」という言葉が根付き、生涯現役が謳われている昨今。『島耕作』シリーズや『黄昏流星群』など数々のヒット作を生み出した漫画家・弘兼憲史氏も、70代の現在が人生で一番楽しいと感じているといいます。
とはいえ、実際は体力的にも精神的にも制約が出てくる人生後半戦を、どうすれば楽しく過ごせるようになるのでしょうか。弘兼氏の最新エッセイ『弘兼流 やめる!生き方』(青春出版社)から、人生後半戦を楽しく過ごすための生き方を紹介します。

「いい人」と「魅力がある人」の違いとは  
前回は、自分の親や妻に対して「いい人」でい続ける必要はないというお話をしました。
では、会社の人間関係ではどうでしょうか。
「課長 島耕作」に登場した中沢部長は、「理想の上司像」なんていうランキングでトップになったこともありました。
部下が失敗した時には責任をとる、自分の部下は守る、何があっても動じない器の大きさを持っている、常に前向きな姿勢、それでいてクールな判断を下す経営能力まで兼ね備えているのですから、完璧な上司と言えるかもしれませんね。
だからこそ、社長まで上り詰めるわけです。

 しかし、僕は彼を完璧な上司であり有能なビジネスマンとして描いていても、完璧な人間としては描いていません。
あえて読者が想像する糊代を残し、家庭のことは描かなかったのですが、ホステスとの間に生まれた息子が登場し、最期も愛人宅が舞台です。
漫画の世界ですから、幸せな家庭と仕事を両立させるような完璧人間を描くことだってできるのですが、それでは人間的な魅力に欠けるんですね。

「いい人」と「魅力がある人」は必ずしも一致しないのは、みなさんも感じていることだと思います。
漫画を描いていても、「悪い人」や「不良」のほうが、魅力的に描きやすい。
一時期流行った「ちょい悪オヤジ」なんていうのも、誰しもが不良に魅かれる部分をくすぐる存在でしょう。

「いい人」とは他人から見た基準だった
 いつだったか、「人望というものは錯覚に過ぎない」という文章を書いたことがあります。
「いい人」が誰からも好かれるというのは思い込みだから、「いい人」を演じるのはつまらないことだと言いたかったのです。
 いつでも相談に乗ってくれる、誘ったら断らない、頼み事を聞いてくれるといった「いい人」は、便利だから人が集まります。
 でも、誘いを断ったり頼み事を断ったりして、便利な存在でいることをやめると、「いい人」ではなくなってしまうわけです。
 そうなってみて、自分の周りに人が集まっていたのは、人望があったからではなくて都合のよい存在だったからだと気づく。
「いい人」というのは、まわりの人間の願望を満たす存在なのですよね。

 性格がいい人、人の気持ちがわかる人、誠実な人、優しい人。ひと言で「いい人」と言っても、それこそいろいろなタイプがあるわけですけど、「いい人」が必ず好かれるとは限りません。
「あの人は、いい人なんだけどねぇ……」という言い方をする時は、相手にとっての願望が満たされていないわけです。
「こうあってほしい」「こういう人でいてほしい」という願望がなければ、その人が「いい人」であろうとなかろうと、どうでもいいはずなのですから。
 つまり、「いい人」かどうかというのは、自分ではなく、他人からの基準ということになります。

人生後半戦は、自分にとっての「いい人」を目指す
 みなさんの職場にも、部下から「人望が厚い、いい上司」として慕われている人がいるのではないでしょうか。
でも、そういうタイプの人は「いい人」を演じているだけなのかもしれません。
もちろん、サラリーマンであれば、多かれ少なかれ本来の自分とは違う人間を演じるところがあるかと思います。

部下の気持ちをつかむために演出があってもいい。
人から嫌われないということは、仕事をうまく運ぶためにも、敵を増やさず安全に生きるためにも大事なことです。

 でも、60歳からの人生では「いい人」を演じるのはやめたほうがいい。
エネルギッシュに突き進んでいる時期は免疫力も高く苦水を飲んでも排出できるのですが、新陳代謝が落ちてくるとダメージが大きくなって、なかなか回復できません。
 だいぶ前から、メンタルケアを扱う本では、人から好かれようとするのをやめてラクになろうとか、完璧主義をやめてストレスを減らそうといった「いい人をやめよう」という流れが出てきています。

「いい人」を演じることがストレスの原因になるからよくないと言っているわけです。
「いい人」を演じ続けると、自己否定につながって自分のことが嫌いになってしまうこともあります。
これはうつ病の原因にもなります。
 どんなに他人から好かれていたとしても、自分のことが嫌いだったら幸せな人生は送れません。
だからこそ、人生後半戦では、誰かの願望を満たすための「いい人」であろうとするのはやめて、自分の幸せのために生きたいですね。
 これまでさんざん誰かにとっての「いい人」を演じ続けてきたのなら、これからは自分にとっての「いい人」を目指しましょう。
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☁ | Comment(0) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする