2020年11月01日

「健康か経済か」、みんな自分のことは自分で決めましょう。

「健康か経済か」、みんな自分のことは自分で決めましょう。
──内田樹の凱風時事問答舘
10/31(土)  すずき

思想家にして武道家、道場兼寺子屋の凱風館館長にして神戸女学院大学名誉教授、そして質問回答の哲人ウチダ先生に、今月はZoomでお話をうかがいました。

Q: Go To トラベルキャンペーン、日本経済のためにも出かけたほうがいいでしょうか?

A: 健康か経済か 感染は拡げたくないけど、海外からの観光客の激減で壊滅的な被害を受けている観光業は支援してあげたい。
「あちらを立てれば、こちらが立たず」です。
なんとかしてあげたいけれど、感染は拡げたくない。
だから、悩む。それしかないと思います。

だって、「こうすれば万事まるく収まる」という正解がないんですから。
誰が考えたって、人の行き来が増えるほど感染拡大のリスクは高まる。
感染抑制のためには、理屈では全員が自宅から一歩も出ないのが一番効果的です。
そうすれば感染はいずれ終息する。
でも、そんな生活をいつまでも続けられるはずがありません。
経済が回らないとかいう以前に、人間が壊れる。

ダニエル・デフォーの『ペスト』には、17世紀のロンドンのペスト禍の時に、大量の食糧を買い込んで、屋敷を釘付けにして閉じこもり、ペストが終息してから外に出てきて「え、あんた生きてたの?」と周囲をびっくりさせた人の話が出てきます。でも、その人は精神のある部分が壊れてしまっていたんじゃないかと思います。
囚人を半年独房に閉じ込めておくと脳にはっきりと器質的な損傷が生じるそうですから。

「健康か経済か」という二者択一的な選択を迫る人がいますけれど、実際には、健康を優先するあまり、外に出て、人と触れ合うことを止めてしまうと、人間の心と身体は回復不能な仕方で傷みます。
だから、僕は「外に出るか/自閉するか」の判断は、最終的にはひとりひとりが自分の心身の状態を基準にして決めたらいいんじゃないかと思います。
僕はこの夏海水浴にも行きましたし、温泉旅行も武道の合宿もやりました。
お客さんが来なくて困っている定宿に行って応援したいからです。

僕の場合は多少の健康リスクを引き受けても、そうした方が僕の心身の健康にはプラスになると判断しました。
誰かに決めてもらうことではありません。
みんな自分のことは自分で決めましょう。

Q: 最近、巷で多くなっているZoom会議で気をつけることがあったら教えてください。

A: 「気配」が伝わらない
Zoom会議は僕もいろいろやっていますが困るのは、次に誰が発言するかうまく予測できないことですね。
生の会議だと、気配でなんとなくわかる。
ちょっとした表情や息づかいで、「あ、この人、次に何か言いたそうだ」とわかる。

でも、Zoomだと解像度があまりよくないバストショット画像だけですからその「気配」が伝わらない。
だから、よく発言がぶつかります。
話がまだ終わってないのに腰を折ったり。
逆に、それを気づかって、言いたいことを一息がまんしたせいで、誰も何も言わない無意味な沈黙がしばらく続く……。
だから、いま程度のカメラとマイクの精度だと、会議を長く続けるとひどく疲れますね。
対面の会議だったら、腕を組むとか、足を前に投げ出すとか、身を乗り出すとか、メモをとるとかノン・バーバルなシグナルで「言いたいこと」がだいたい察知できるので、相手の顔を必死に注視する必要なんかない。
Zoomに関しては時間を対面の半分に短縮することを基本ルールにしませんか?

Q: 21世紀に入って、世界中で貧富の差が広がっています。
こうなると、マルクス主義は復活するでしょうか?
いまからでも読んだほうがよいでしょうか?

A: マルクスは何度でも甦る
マルクスが復活する気配はありますね。
白井聡さんの近著『武器としての「資本論」』が売れてます。
マルクスの資本論の解説書ですよ。
いくら白井さんのロジックの切れ味がよいとはいえ、資本論を正面から解説した本が7万部売れるというのはたいしたものです。

斎藤幸平さんもまだ30代ですけれど、最年少でドイッチャー賞をとったマルクス研究者です。
白井さんと同じく、怖いもの知らずで、スケールが大きい。
彼らのような若い世代のマルクスの読み方は、僕たちの世代までの教養主義的な読書ともセクト主義的な読書とも違います。読み方がもっと深いし、実践的です。
思想的利器としてのマルクスを縦横に活用している。
それにしても「マルクスは何度でも甦る」と思いますね。
いつの時代の、どういう歴史的状況でも、「マルクスだったらどう言うだろう」と仮定すると思いがけない展望が広がってくる。
そんな思想家は他にはなかなかいません。

でも、7月の都知事選では、社会主義的な公約を掲げた宇都宮健児や山本太郎を抑えて、小池百合子が約60%の得票率で圧勝しました。
有権者は何を基準に都知事を選んでいるのか、どのような政策を選好しているのか。
選挙後のアンケートだと、有権者たちは「小池百合子は弱者に対するいたわりがない」とか「本当のことを言わない」とか答えていました。
それがわかった上で投票している。
どうしてそんなことになるのか?
たぶん今の日本では「勝った人間が正しい。多数派を制したものが正しい」というイデオロギーが蔓延しているからだと思います。

長い物には巻かれろ
選挙で過半数をとったということと掲げた公約や政治的主張の真偽理非の間には相関がありません。
圧倒的多数派の意見が結果的に国を滅ぼした例は歴史上無数にあります。
多数派というのは単に一時的、相対的な多数者のことで、ある時点で頭数が多いということはその主張が一般的に正しいものであることを意味しません。当たり前です。

でも、今の日本ではそうなっていない。
多数を制するものは「正しいこと」を述べているから多数を制しており、少数派は「間違ったこと」を言っているから少数にとどまっているのだという推論をする人が多い。
だから、現職知事はいま現職にあるわけだから「正しい」のだろうと推論する。

人間的には問題が多いし、公約もほとんど実現させられなかったが、彼女が現に権力者である以上、これに逆らうべきではない。こういう考え方を「事大主義」と言います。

「長い物には巻かれろ」とか「寄らば大樹の陰」とか、昔からあるしけた処世術に過ぎないのですけれども、現代人はいつのまにかそれが「しけた処世術」ではなく「クールな生き方」だと信じ込むようになった。

だから、「勝って欲しい人」ではなくて「勝ちそうな人」に投票する。
東京がどういう都市になって欲しいのか、どういう行政を実施して欲しいのか、その明確な希望が有権者の側にないんだから仕方がありません。
そもそも現代人はこれからの社会のあり方について「希望を語る」ということをしたがりません。

「レジスタンス」を知らない人たち
たぶん、「希望を語ること」が格好悪いと思っているんでしょう。
だって、「希望を語る」人は要するに現在不遇だということですから、論理的に言えば弱者・敗者だということになる。
「弱者・敗者は間違った生き方をしているからそうなったのだ」というのが事大主義的推論ですから、「希望を語る」ということはイコール「間違っている」ことになる。

一方、強者・勝者は現状に満足しているので、未来について特段のビジョンはない。
こういう世界になって欲しいという希望がない。
「希望がない」ということ自体が強者であることの証明だと見なされている。
だから、「多数派にいたい、強者・勝者の側に身を置きたい」と思っている人たちは競って「希望を持たない」ように努める。

「現状でいいじゃないか。何が不満なんだ。じたばたしても、何も変わりゃしねえよ」と冷笑することで自分が「支配する側」にいるような錯覚が得られる。
希望を語らない理由の一つは「今あるシステム」とは違うシステムが存在していたということを知識として知らないからだと思います。

学校教育の「成果」なんでしょうけれど、世界史の知識がごっそり抜けている。
最近いちばん驚いたのはカミュ論を書いて送稿したら、後で編集者から「レジスタンス」に注を入れて欲しいと言われたことです。
編集者がちょっと気になって周りの若い編集者に僕の原稿を見せたら、「パリ解放」も「ヴィシー政府」も「ペタン元帥」も意味がわからないと言われたそうです。
「レジスタンス」を知らない人たちの耳に革命や抵抗が空語にしか聞こえないのは当然ですね。

歴史を知らない人たちには、いま目の前にある現実が「あるべき唯一の現実」に見えてしまう。
だから、希望を訊かれると「もっと金が欲しい」「もっと暇な時間が欲しい」というレベルにとどまって「こういう社会を実現したい」という希望を語る言葉が出てこない。
白井さんの本も斎藤さんの本も、若い人たちが「今目の前にある現実以外の現実」を想像するための手がかりになるはずです。
そういうものを読みたいという若い人が出て来たのならいいんですけど。
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うちだ・たつる
1950年生まれ。神戸女学院大学名誉教授。
思想家、哲学者にして武道家(合気道7段)、そして随筆家。
「知的怪物」と本誌スズキ編集長。
合気道の道場と寺子屋を兼ねた「凱風館」を神戸で主宰する。
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11月のスタート

11月のスタート
今月もよろしくお願いいたします

先月は ドコモスマートフォン教室17講座受講を 通院の合間に受けました。
久しぶりに「知る・できる」楽しさを 味わいました。
ガラケーからスマホに機種変、購入して12ヶ月目になりますが 自己流の這い回る操作から 基本から学び、パソコンに近い操作もできつつあります。
今の目標は スマホから ブログ更新を安定してできるようになることです。

スマホに夢中になっていることで 「スマホ教室空白日」のロス感覚からか 「鬱症状」がぶり返し、日中からのウトウト感や夜の不眠、高血圧などで悩む日々も増えてしまい、安定的にブログ訪問が困難な日々も増えてしまいました。

今月17 日には auのポケットWi-Fiからドコモ光回線に移行できる見通しになりましたので 動画視聴も容量を気にせずできるようになることと
ドコモ教室の未習部分も 完了できる見通しなので 閉じこもり・ウトウト生活から脱することができると思います。

鬱障害手帳2級、要支援2の心身で 無理はできないことは承知しつつも 夢中になれるものの存在は 症状を自覚しながらも「生きるハリ」を与えてくれます。

こんな小だぬきですが 11月も「出来る範囲」で精一杯頑張りたいと思います。

参考
スマホは ギャラクシーA-20。通信は ポケットauWi-FI、購入は 災害対応の手回し・各電源対応のポケットテレビ・ラジオ。
断捨離は ブックオフ売却で段ポール6箱。
posted by 小だぬき at 04:52 | 神奈川 | Comment(4) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年11月02日

秋口の「冷え」解消につながる3つの入浴法

秋口の「冷え」解消につながる3つの入浴法
11/1(日) ウェザーニュース

秋が深まるにつれて朝晩と昼間の寒暖差も激しくなり、徐々に冷えを感じる人も増えているのではないでしょうか。
寒暖差によって自律神経が乱れると、一層冷えを感じやすくなるといいます。

この時期辛い冷えに効果的なお風呂の入り方を“お風呂博士”に教えていただきます。

毎日の入浴で体をメンテナンス!
入浴は単に汚れを落とす行為ではなく、体のメンテナンスという意味でも役立つものです。
株式会社バスクリンの「チームお風呂博士」のひとりで、つくば研究所の石澤太市さんがこの季節に特におすすめしたいのは、「冷え」対策だと言います。

「秋が深まって“冷え”が体にこたえるようになりますね。
冷えは、血流が悪くなることで生じます。
血流が悪くなる原因は、ストレスや不規則な生活、筋肉量の不足など、さまざまです。

お風呂に入ると温熱作用、水圧作用、浮力作用により、体がリラックスし、体温が上昇します。
全身の血流が良くなるため、さまざまな原因の冷えに対して効果が期待できるのです」(石澤さん)

「冷え」に効く3つの入浴法
血行促進効果を上げるための、入浴のポイントを教わりました。

(1)たっぷりのお湯で浮力と温熱を感じる
お風呂に浸かるときは、温かさとともにゆったりと浮力も楽しむのがよいといいます。
「お湯の温熱には血行を促進する効果があります。
そして、浮力には、関節や筋肉の負担を和らげ、脳の緊張を緩和させるなど、リラックス効果があることがわかっています。できるだけたっぷりのお湯でゆったり気分を味わいましょう」(石澤さん)

(2)ぬるめのお湯にしっかり浸かる
40℃程度のお湯で10〜15分、しっかり浸かりましょう。
「朝晩がひんやりとしてくる秋は、少しぬるめのお湯がおすすめです。
熱めのお湯に比べて体温の上昇は緩やかですが、緩やかに上がる分だけ体の芯まで温まり、体温が冷めにくくなります。
10〜15分は意外と長い時間なので、時計などできちんと計るといいでしょう。
また、入浴は気づかぬうちの汗をかいて水分を奪われるので、水分補給はしっかりと行いましょう。
また、体調に合わせて、無理をしないよう気をつけてください」(石澤さん)

(3)半身浴でもOK
湯船に長い時間浸かっているのが苦手な人は、半身浴でもよいそうです。
「まず、体を温めるために5分ほど全身浴をします。
次に、体を起こしたりお湯を減らすなどして、水面がみぞおちの辺りにくるぐらいにして、15分程度半身浴をします。
この状態で顔を残してお風呂の蓋をすれば、サウナ状態になってより効果的です」(石澤さん)

「寝る前の手足の冷えが楽になったか、寝つきがよくなったか、靴下なしで眠れそうか、など自分の体への効果を実感してください。
ただ、入浴はやればやるほど効果が高くなるというものではありません。
決して無理をせず、体調や気分に変化があったらすぐに中断してください。
また、浮力の心地よさを感じるという意味では、新型コロナ感染症対策に気をつけた上で、温泉やスパなどの広い浴槽で楽しむのもいいかもしれません」(石澤さん)

入浴剤を上手に活用することも、体を温める点で効果的だそうです。
「さら湯より効果的に体を温め、浴後もぽかぽか感が続きます。
さらに炭酸ガス系入浴剤は血管拡張作用もあり、オススメです」(石澤さん)

寒さはしだいに厳しくなってきますが、お風呂で体をいたわり、寒くなるこれからの季節も「冷え」知らずでお過ごしください。
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2020年11月03日

不安で集中力が続かないときの対処法4つ

不安で集中力が続かないときの対処法4つ
2020年11月2日 ライフハッカー[日本版]

「さあ、仕事を片付けよう」と思って机に向かうと、パンデミック、経済、失業、政治、時事問題、ホリデーショッピングなど、心の中に潜んでいるあらゆる心配事が雑音になって頭の中で響き始めます。
今は、集中力を発揮できなくて悩んでいる人がたくさんいます。
Total Brainの最近のMental Health Indexによると、今年の8月は、労働者の集中力とタスクを完了させる能力が、パンデミック前のレベルと比較して31%も低下していたことがわかりました。

一般的に、人間は先が見えない状態で長期間暮らすことに適していないのです。
しかし、大事な締切があったり、チームに頼りにされているときに、「今はパンデミックの最中なので、集中できません」は、言い訳になりません。

ですから、最近集中力が続かなくて困っている人は、以下にご紹介する4つのアプローチで集中力を取り戻してください。

1. 「自分でコントロールできている」という意識を持つ
不安に苛まれていると、身体の生理的反応が集中力を妨げることがあります。
人間の身体は、一般的に、コルチゾールというストレスホルモンを分泌してストレスに反応します。
Total BrainのCEOであるLouis Gagnon氏は、次のように述べています。
慢性的にストレスがあると、高レベルのコルチゾールが長期間にわたって分泌され、脳、心臓、消化器系の主要な機能を損ないます。

ストレスは人間の心を委縮させ、さまざまな事を視野に入れたり、創造したり、他人と協力するために必要な認知能力の柔軟性を低下させます。
ですから、何がそこまで強いストレスの原因になっているのか把握して対処する必要があります。

「まず、自分でコントロールできることから着手しましょう」と、ライフコーチで以前は心理学の研究者をしていたBrooke Smith氏は言います。
世の中で起こっていることに苛立ちを覚えている場合は、入って来る情報量を制限して、「ネガティブなソーシャルメディアの投稿や情報ばかり読み漁ること」はやめてください。
不安を感じたり、心が傷ついたり、怒りを感じているなら、状況の受け止め方を変えて、そこから教訓やチャンスを見つけるようにしましょう。

自分の力でコントロールできない外的要因は、少なくとも一時的に無視して、体調を整え、脳に余裕をもたせることをSmith氏は提唱しています。

2. 仕事量を管理する
次に、本当に片付ける必要があるタスクを把握しましょう。
「人間は、NOと言う能力の欠如や引き受けた仕事に対する熱意の犠牲になることがあります」と精神科医でHallowell Centerの創設者であり、『Driven to Distraction: Recognizing and Coping With Attention Deficit Disorder』の著者でもあるEdward Ned Hallowell氏は語っています。

彼は、仕事に関して、減らす(curtail)、他人に任せる(delegate)、削除する(eliminate)の頭文字を取ったCDEを実践すべきだとアドバイスしています。
ToDoリストに目を通して、やる必要がないものは容赦なく削除し、他人に任せられるものは任せましょう。
残ったタスクのうち、自分にできて実際にやるつもりがあることの範囲を定義しましょう。

「多くの有毒なストレスは、仕事が多すぎて参ったと感じることと関係しています」とHallowell氏は言います。
環境を整え、タスクを整理すると、「自分でコントロールできている」という感覚が得られ、集中して物事に没頭できるようになります、と心理学者で『Find Your Focus Zone』の著者でもあるLucy Jo Palladino氏は言います。

タスクを絞り込んで着手し始める際は、5分か10分で片付き、簡単に「達成感」を得られるタスクを選択しましょう。
タスクをやり遂げるたびに、ドーパミンが少し分泌されます。
「何かをやり遂げるたびに、ちょっとブーストがかかるので、もっとやりたくなるのです」とPalladino氏は言います。

3. 心身をケアする
身体の基本的なケアとメンテナンスを行うと、より高い集中力を維持しやすくなるとHallowell氏は言います。
身体が必要なものを使い果たしても補給せずに、必要なときに身体に集中力を期待することはできません。
ですから、しっかり水分補給して、規則正しい食事を心がけ、適度な時間に就寝するようにしてください。
そういうケアを、環境にも周囲の人間関係にも広げましょう。

Hallowell氏は、「ライチの木を剪定し、ユリを育てる」ことをすすめています。
この場合のライチは、実りを増やすために時間とエネルギーを費やす人々やプロジェクトに該当します。
ユリは喜びをもたらし、自分を支えてくれる人間関係や試みを意味します。
どんなに大変でも、時間をかける価値がある人やプロジェクトに時間を使いましょう。
そうすれば、「悪性」のストレスが減り、「良性」のストレスが増えます。
ユリを育てると、ストレスや不安を抱えてサポートが必要なときに頼れる人間関係も得られます。

「一人で悩まないでください。ストレスが多いときほど、本腰を入れて頑張ってしまいがちですが、そんなことをするのは、本当にばかげています。」とHallowell氏は言います。
誰かに助けを求めると、すぐに気分が良くなり、孤独ではないことをあらためて実感できる上に、頼る相手によっては、問題の解決策がすぐに見つかるかもしれません。
ですから、相談したり助けを求めてください。

4. 自分自身を知る
自分のエネルギーと集中力が1日のうちで最も高くなる時間帯を把握して、その時間帯を大事に過ごしましょう。
Hallowell氏は次のように語っています。
多くの人は、朝がその時間帯に当たります。
私はこれを「朝の絶好調」と呼んでいます。
最高の状態で本気で1時間働ける「朝の絶好調」になるまで、メールは読まないことです。
絶好調になる時間帯が夜の場合も、その時間帯を大事にしましょう。

クロノタイプと生産性の関係。
1日の中で最も集中できる時間帯はいつ?
瞑想が集中力を取り戻すきっかけになる人もいれば、屋外に出て元気にランニングすると効果が出る人もいます。
1杯の熱いコーヒーを好む人もいます(カフェインは、その効果が切れるまで短期的に集中力を取り戻す手立てになれるとHallowell氏は言います。)

ライフコーチのSmith氏は、要するに、自分自身のことを知ること、そして自分に役立つ行動やヒントを誰よりも把握することが肝心だと言います。

集中力が続かなくて困るときは、全身をざっと確認して、ストレスを感じている場所を特定しましょう。
ほんの数分でいいので、時間を取って呼吸を整え、平常心を取り戻しましょう。
そうすれば、今、この瞬間に自分が最も必要としているものがわかってきます。
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☔ | Comment(2) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年11月04日

眠れない夜にやってみて! たった2分で眠りにつく米軍式テクニック

眠れない夜にやってみて! たった2分で眠りにつく米軍式テクニック
11/2(月) Get Navi web(佐藤まきこ)

最近、Twitterでトレンド入りしたのが、「#あなたは日本人のなかでどれだけ睡眠不足か」のハッシュタグ。
名前を入力するだけで、日本人のなかで自分の睡眠不足の順位がいくらか表示する診断メーカーがあり、これを試して投稿する人が急増したようです。

しかし実際のところ、私たちのなかには「すぐに眠りたいのに、全然眠れない」という悩みを抱えている方も少なくないでしょう
そこで本稿では「2分で眠れる」米軍のテクニックをご紹介します。
このテクニックの出典はスプリントコーチとして有名なロイド・ウィンターの著書「Relax and Win: Championship Performance」。
もともとこの技は陸軍向けに開発されたそうで、軍人は戦闘のような緊迫した状態でもしっかり睡眠をとることが求められるため、このような方法が編み出されたようです。
米軍がこの睡眠方法を6週間にわたって訓練したところ、96%の確率で成功したとも言われていますが、

その睡眠方法は4つのステップからなります。

1 目のまわりや舌、顎など、顔の筋肉を緩める。
2 左右の肩をできるだけ下げ、上腕から下腕の順に力を抜く。
3 ゆっくりを吐いて、上半身から下半身の順にリラックスさせる。
4 次の3つのいずれかをイメージしながら、10秒かけて頭の中を空っぽにする。
・静かな湖のほとりでカヌーに横たわっているイメージ
・黒のベルベッドのハンモックで寝ているイメージ
・「何も考えない、何も考えない……」と自分に言い聞かせ続ける

では、このテクニックの効果はどのくらいあるのでしょう?
筆者が試してみましたので、まずは個人的な経験を報告します。
私は寝つきが良いほうではなく、眠れずに目が冴えてしまう夜が数多くあり、そんな夜に試してみました。
その結果、ひとつひとつの手順を確認する行程が入ってしまったためか、心身ともにリラックスするには至らず、そのまま眠りに落ちることはありませんでした。
しかし、同じようにこのテクニックに毎日連続で挑戦したあるアメリカのメディアの記者は、4日目の挑戦で「効果を実感した」と述べています。
3日目まではまったく効果がなかったのに、4日目には普段よりも早く眠りにつけたのだそう。
2分で眠ることはなくても、普段より30分近く早く眠れることもあったのだとか。

日本人は特に試してみる価値があるかも
経済協力開発機構(OECD)が世界33か国を対象に行った調査によると、日本人の平均睡眠時間は442分(7時間22分)。中国の542分(9時間2分)、アメリカの528分(8時間48分)、フランスとイタリアの513分(8時間33分)など、他国に比べてかなり短く、33か国中最下位でした。
この調査は対象年齢や調査時期が各国で異なる場合もあるため、単純に比較はできませんが、それでも日本人の睡眠時間が短いことは確かな模様。
しかも今年は新型コロナウイルスの影響で、仕事や生活スタイルが変わり、収入や家族のことなど悩みを抱える方も少なくないはず。
不安を胸に眠れない夜を過ごすことも増えているかもしれません。

睡眠不足の順位を調べる診断メーカーがトレンドになったのも、いつも睡眠不足を感じている人が多いことの表れかもしれません。
1回の挑戦だけで簡単に効果が得られるわけではにけれど、毎日続けていくことで、不安感を落ち着かせ、普段よりも早く眠れるようになるのかもしれません。
ベッドに入ってから眠るまで1時間近くかかっていたところを30分に短縮できたら、それだけ睡眠時間を長くできます。
興味のある方は、この秋に試してみてはいかがでしょうか?
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2020年11月05日

寿命は長いが、健康寿命は意外に短い。病気への備えは本当に大丈夫?

寿命は長いが、健康寿命は意外に短い。病気への備えは本当に大丈夫?
11/4(水) ダイヤモンドオンライン(板倉 京)

 何歳までこの会社で働くのか? 退職金はどうもらうのか? 定年後も会社員として働くか、独立して働くか?
 年金を何歳から受け取るか? 住まいはどうするのか? 定年が見えてくるに従い、自分で決断しないといけないことが増えてきます。

会社も役所も通り一遍のことは教えてくれても、“あなた自身”がどう決断すれば一番トクになるのかまでは、教えてくれません。
税や社会保険制度の仕組みは、知らない人が損をするようにできています。
定年前後に気を付けるべき「落とし穴」や、知っているとトクする裏ワザを紹介したシニアマネーコンサルタント・税理士の板倉京先生の話題の著書「知らないと大損する!定年前後のお金の正解」から、一部を抜粋して紹介します。

本書の裏ワザを実行するのとしないのとでは、総額1000万円以上も「手取り」が変わってくることも! ● 

一生涯にかかる医療費のうち6割は65歳以上でかかる
 2020年に発表された日本人の平均寿命は、男性81・41歳、女性は87・45歳。医療の進化などにより、平均寿命は延びています。
ちなみに、1960年の平均寿命は、男性が65・32歳、女性が70・19歳。
約60年前と比べて男女ともに「老後」が15年以上延びているということです。

 一方で「健康寿命」(日常生活が健康上制限されることなく送れる期間)は、意外に短く、男性が72・14歳、女性は74・79歳といわれています(2016年厚生労働省調べ)。
 つまり、あなたが今60歳であれば、今と同じように元気で動ける平均的な期間は、男性は12年、女性は15年弱しかないのです。
そして、健康寿命から寿命までの間、男性で約10年間、女性で約13年間は、医療や介護のお世話になる平均的な期間といえます。
 もちろんずっと元気でいられるに越したことはありませんが、この「現実」をちゃんと頭に入れ、その間の医療や介護費の負担にもしっかり備えておかなければならないということです。
 厚生労働省の推計では、1人の人に一生涯でかかる医療費は、2700万円。そのうちの6割が65歳以降にかかるといわれています。

とはいえ、今の健康保険制度では、医療費の自己負担は1〜3割。
また、一定額を超えると「高額療養費制度」が、超えた分を負担してくれます。
介護費用に関しても、医療費と同様、費用の一部を負担すればいい制度になっています。
 しかし、これで安心していいかと問われれば、私はそうは思いません。

● 健康保険はすごいスピードで改悪中
 今後、高齢化社会が進めば、今の健康・介護保険制度も変わってくるでしょう。
 実際、かつては、70歳以上の高齢者の医療費は無料でした。
それが、月400円等の負担となり、次は「1割」負担。
そして、今は年齢や所得によっては「2割」「3割」とすごい勢いで負担が増え、国の医療保険制度はどんどん改悪されているのです。  

「知らないと大損する!定年前後のお金の正解」では、将来の予測が難しい現在、今使える制度を徹底的に活用して医療費を抑える方法と、万が一に備えて個人的に準備しておいたほうがいいことについても説明しています。
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2020年11月06日

公明党、凋落の始まりか…

公明党、凋落の始まりか…
大阪都構想投票で党支持者たちが“造反”、党へ“ノー”叩きつけ
2020.11.05 ビジネスジャーナル
文=粟野仁雄/ジャーナリスト

 大阪市を廃止して24区を4つの特別区に再編成するという「大阪都構想」は、11月1日に住民投票が行われ、反対多数で否決された。
大阪維新の会は「一丁目一番地」とする看板政策が崩れ、同会の松井一郎代表は代表の座を降りることを明らかにした。
松井氏、吉村洋文代表代行はそれぞれ、大阪市長と府知事の職は2023年春の任期満了まで務める。

 賛否は1万7000票差で前回に続く僅差だったが、2015年の住民投票で否決された構想を2度目の投票にこぎつけさせたのは公明党だった。
自民党は反対しており、今回、大雑把には賛成の「維新・公明」vs.反対の「自民・共産・立憲民主」の格好だったが、後者の勝利となった。

 ところが今回、創価学会員ら公明党支持者の半数以上が反対に投じたことがメディアの出口調査でわかっている。
朝日新聞では54%、産経新聞では56%が反対票。否決の最大要因は、公明党支持者や創価学会員の「離反」だったのだ。 「なっちゃんです。維新さんは公明が提示した4つの条件を飲んでくれました。素晴らしい都構想案にしました。勝たせてください。勝たせてください」

 10月18日、JR大阪駅前や天王寺駅前で街宣車から賛成投票を呼び掛けたのは、公明党の山口那津男党首だ。隣には吉村氏、松井氏が並んでいる。
車は大阪駅前など3カ所を巡った。
接戦が報じられるなか、松井氏に「来てほしい」と頼まれてのことではあった。
自公政権下、仮にも野党の応援に党首が来るなど異例のことである。

 だが、党首来阪の効果は薄かったどころか「マイナスだった」との声もある。
大阪のある公明党幹部は、山口氏が松井氏と並ぶ写真を見て「否決されたらどうするんだ」と激怒したという。
関西には維新と全面戦争している自民党幹事長の二階俊博氏がいるにもかかわらず、都構想で公明党が維新にすり寄っていたからだ。
「公明党がおかしなことをしなかったら、こんな投票なかったんですよ」。
反対運動の先頭を走っていた自民党大阪市議団の北野妙子市幹事長が街宣中、淀川区のスーパーで年配の男性に説明していた。
維新の会は大阪で府議会は過半数だが、市議会は過半数に達していない。
公明が賛成に回らなければ都構想の投票実施は成立しなかった。

支持者を馬鹿にしたツケ
 遡れば2014年に当時人気絶頂の橋下徹大阪市長から「都構想に賛成しなければ自分も含めて(公明党の現職衆院議員がいる)選挙区に立候補する」と言われて、真っ青になった公明党は、「構想には反対だが投票自体には賛成」とした。

公明党は全国の小選挙区で8人当選していたが、うち4人が大阪。
まさに最重点区なのだ。
 2015年の投票は反対多数で否決され、橋下氏は政界を退いたが、その後、知事選、市長選で圧勝する維新は再提案してくる。
 2018年12月、都構想を協議する法定協議会で公明党大阪本部の佐藤茂樹会長は、松井氏と激しくやりあっていた。
その際、松井氏が「約束違反や」と怒った上、ある「密約」を報道陣に暴露したのだ。
維新は公明党に対して水面下で「都構想に賛成すれば選挙区に候補を立てない」と提案し、公明側はそれを飲んでいた。
 だが、学会員らは「維新の会憎し」で必死に戦ってきた。

彼らには「えっ、上層部はそんなことをしていたのか」と映ったはずだ。
昨年の統一地方選までは公明党は維新と戦ったが、自民の重鎮が次々と維新に落とされた姿を見て、さらに怖気づき全面賛成に回ってしまったのだ。
 前回の住民投票では、公明支持者や学会員は必死に反対の運動をしていた。
それが、特別区の数を5から4にする程度の変更をして党中央が「前回は反対でしたが今回は公明党が協力した素晴らしい都構想の協定書ですから賛成しましょう」と豹変させたのだ。

 しかし自主投票で学会員らは賛成に動かなかった。
選挙の時、地区集会などにはいつも学会関係者が動員をかけてにぎわせて見せるが、今回はさっぱりだった。
ある学会の男性はいう。
「党の幹部たちは、国会議員の議席を守るためには私たちの矜持はどうでもいいのか。もう党利党略でしかない。
維新に脅されては媚び続ける、みっともない姿に情けなくなりました。
維新が怖かったと正直に言えばまだいいのに」

 公明党発祥の地は大阪だという。
それならなおのこと、党幹部たちは浪速の支持者のどこを見てきたのか。
平和主義をかなぐり捨てたPKO法案賛成に始まり、政権与党にしがみつくため「日和見」を続けてきた公明党。
それは勝手だが、党首が現地入りして「なっちゃんです。勝たせてください」と言えば、自分たちを支持してくれる創価学会員たちが唯々諾々と従ってくれると思ったのか。
それなら、どの党よりも支持者を馬鹿にした話である。

 今回の住民投票で学会員たちが投じた反対票は、「よらば大樹」で動いてきた党幹部に対して「NO」を突き付けた、関西人らしい反骨精神の発露だった
国会議員の議席を守るための維新にすり寄り続けた挙句の敗北は、公明党の今後の党運営にとって「維新の会」以上に深刻な打撃となった。

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2020年11月07日

内閣支持率はウソの数字!? 統計学が教える「騙されないデータの読み方」

内閣支持率はウソの数字!? 統計学が教える「騙されないデータの読み方」
11/6(金) PHPオンライン衆知(高橋信)

ビッグデータ、データサイエンス、データドリブン経営など、最近のビジネス界隈では、なにかにつけて「データ」という言葉がついてまわる。
そのときしばしば一緒に姿を現すのが、「統計学」だ。

数学に苦手意識のある文系人間からすると難しく感じる統計学だが、理解できればビジネスで相当な武器になり疎ければダマされてしまう恐れもあると指摘するのが、『データ分析の先生!文系の私に超わかりやすく統計学を教えてください!』(かんき出版)の著者である高橋信氏だ。

それはなぜか、また、ダマされないためにはどうするべきかを聞いた。

「内閣支持率」は嘘の数字!?
菅内閣の発足から1か月ほどが経過しました。
パンケーキや携帯電話料金の値下げ、日本学術会議の任命についてなどいろいろありますが、ともかく、今後の内閣支持率の推移が気になるところです。
さて、ご存じでしたか。

実は主要メディアが報道している内閣支持率の値って、嘘なのです。
たとえばNHKの調査による2020年10月分の内閣支持率は、55%でした。
私は、この値が嘘だと断言できます。
なぜならNHKは、内閣を支持するかどうか、有権者である私(47歳です)に聞いていないからです。
おそらくNHKは、10月どころか人生で1度も、みなさんのうちの大多数にも聞いていないはずです。
というわけで、NHK による55%という値は、嘘です。
ただし、嘘ではあるものの、決してデタラメではありません。

統計学では、調査対象者全員からなる集団を「母集団」と言います。
内閣支持率の例で言うと、有権者全員です。
もしNHKが真の内閣支持率を本気で知りたいなら、有権者全員に聞かなければいけません。
ですが、夥しい人数からなる有権者全員に「いまの内閣を支持しますか?」と質問して回答を得るのは、言うまでもなく、不可能です。
ではNHKはどうしているかと言うと、母集団から何人かを選び出してきて、その人たちにおける内閣支持率を調べているのです。
この、選び出された人々からなる集団を、統計学では「標本」と言います。
ちなみに統計学では、選び出すことを「選出」ではなく「抽出」と言います。

そもそも統計学とは?
ところで、そもそも統計学はどういう学問なのか。
統計学とは、標本のデータから母集団の状況を推論する学問です。
つまり統計学では、母集団から偏りなく抽出された標本における内閣支持率が▲%であったなら、「母集団の内閣支持率も▲%くらいであろう」と推論するのです。

気をつけるべきは、「母集団の内閣支持率も▲%くらいであろう」という推論が成立するためには、母集団から標本が偏りなく抽出されていなければならないことです。
それはつまり、標本が「W新聞の読者だけ」とか「80歳以上の人だけ」とか「年収250万円未満の人だけ」とかからなるのは不適切であることを意味します。

“調査もどき”に注意!
Twitterの投票機能を使うなどして「パートナーが浮気したら許せる?」とか「好きな女子アナは?」とか「当社が開発中のゲームの、このキャラの名前はどれがいい?」といった質問に対する回答を受け付ける、言わば“ネット投票”をしばしば目にします。
そのようなネット投票の集計結果には気をつけてください。
娯楽として楽しむのであればまだ許せなくもないのですが、間違っても「そうか、これが世間の声か!」といったぐあいに、集計結果を額面どおりに受け取ってはいけません。

いえ、やっぱり、そんないい加減な“調査もどき”を実施したりその集計結果を公表したりすること自体が良識を欠く行為である、そう強く言っておきましょう。
私がそのように否定的に論じるのには理由があります。なぜならネット投票の回答者は、インターネットで投票を受け付けているのをたまたま知った人にすぎないのであり、母集団から無作為に抽出されたわけではないからです。

そもそも母集団の定義が不明です。
言いかえると、ネット投票の企画者は、母集団の定義をすることなく、いったい誰の声を集めようというのでしょうか。
もしかすると、こう思った人がいるかもしれません。
「でも回答者数が数万人規模とかだったら、そのネット投票の集計結果はそれなりに信用に値するのでは?」と。残念ながら、その判断は誤りです。
たとえばです。
「パートナーが浮気したら許せる?」というネット投票で1万人の回答が得られたとします。
母集団からの抽出でなくネット投票ゆえ回答者の属性を企画者も知りようがないわけですが、実はその1万人の全員が「1度も結婚したことのない、九州地方に住む40代男性」であったならと想像してください。
その集計結果が「世間の声」であるとは決して言えませんね。

そう、「世間の声」の「世間」とは具体的に誰を指すのかまず定義し、それに該当する人々を無作為に抽出して調べないことには、回答者数がどんなに多かったところで、集計結果は信用できないどころでなく無価値なのです。

学術論文も例外ではない
学術論文にも気をつけてください。
研究者自身は真摯に取り組んでいるつもりでも第三者から見て非常に不可思議というものがあります。
突然ですが、みなさんに質問します。
昨日の朝と昼と晩に、何をどれくらい食べましたか?
スラスラ答えられる人もいるでしょうが、うまく思い出せず、えーっとなんだったっけと悩む人も少なくないはずです。
いまの話を踏まえて想像してください

高齢者の健康についての研究者が、対面なり電話なりで、被験者と次のやりとりをしたとします。
――昨日の晩は何を食べましたか? 「白いごはんをたくさん食べたよ」
――どれくらい食べましたか? 「小さいお茶碗で2杯……あれ、3杯だったかなぁ」
このやりとりから得られたデータについて、どう思いますか。
最後の発言に出てきた「小さいお茶碗」の具体的な大きさがわかりませんし、そもそも被験者の記憶が怪しげで、信用できそうにないですね。

ところが、残念ながら、信用できそうにないこういったデータを集計してグラフを描いたりしている学術論文もないとは言えない現実があるのです。
大手製薬会社が新薬開発時にとるようなデータは、不適切だと会社が潰れかねないですから、ちゃんとしているはずです。

私が言いたいのは、学術論文というか研究の結果が主要メディアで紹介されていたとしても、ひとまずは疑ってかかったほうがいいということです。

“分母”に注目してみる
ネット投票の集計結果を額面どおりに受け取ったり学術論文を鵜呑みにしたりするのは、真実ではない数値を真実であると誤認してしまうわけですから、危険です。
では誤認しないようにするにはどうしたらいいのか。
それは、自分でデータを適切に集計したり分析したり、あるいは他者が集計したり分析したりしたものを適切に読み解けるようになる、言わば“データリテラシー”を身につければいいのです。

データリテラシーを身につけると、ネット投票のようなものへの違和感を自然と覚えるようになります。
のみならず、テレビなどでニュースを見る際の奥行きが広がります。
たとえば感染症について、 (検査を受けた人のうちで陽性だった人の数)/ (検査を受けた人の数)でなく、その分子である「検査を受けた人のうちで陽性だった人の数」だけを報道するのはおかしいことに気づくはずです。
言うまでもなく、7/10と、7/10000とでは大違いですよね。

データリテラシーを身につけるためには、統計学の勉強が有益です。
今回を契機に、ぜひ、統計学に目を向けてみてください。
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2020年11月08日

新しい生活様式って何なのだろう

新しい生活様式って何なのだろう
11/7(土)  Impress Watch(PC Watch,山田 祥平)

 コロナ禍は決して落ち着いたとはいえない状況が続いているが、街の様子はずいぶん以前の状態に戻りつつあるように見える。
もう二度と以前の状態には戻らないとされていたはずなのに、これはいったいどういうことなのか。

■戻るべき部分が戻り、変化する部分は変化
 LINEリサーチでは新型コロナウイルス感染拡大に伴う職場での対応やテレワークの状況について定期的な調査を実施しているが、8月31日に実施した調査の結果が発表された。
前回の調査は4月だった。
 調査結果を見ると、テレワークの許可/推奨の職場割合が低下しているという。
今回の調査では、全国では前回調査の35%から11%減少し24%に過ぎない。
一都三県ではもう少し割合が高いものの、前回調査の53%から39%に減少している。

 ちなみに、4月から8月の間でテレワーク対応の減少が顕著だったのは、「教育・学校法人」、「金融・保険業」であり、「IT・通信・インターネット関連」の業種では引き続き高い水準を維持、約7割の職場で対応が継続しているとのことだ。
基本的にはテレワーク推奨の職場でも、半数以上の日数、職場に出るというバランスが、8月時点の主流であると同調査は分析している。

 同調査は、通常の勤務体制が戻りつつあることを指摘し、この新しい生活様式のなかで、戻るべき部分は戻り、変化する部分は変化していくことも今後予想されると結論づけている。

■働き方は変わったか
 新しい生活様式については厚生労働省がその実践例を示している。
基本的感染対策として、身体的距離の確保、マスクの着用、手洗いを徹底した上で、働き方の新しいスタイルとして、

・テレワークやローテーション勤務
・時差通勤でゆったりと
・オフィスはひろびろと
・会議はオンライン
・対面での打ち合わせは換気とマスク という実践例があげられている。

 これが徹底される世の中がコロナ後も続くことになるはずなのだが、今現在の実際の暮らしのなかでは、その実感が希薄だ。
一連のGo To事業などで、外出、外食が推進されていたりするのを目の当たりにすると、余計にそう思えてしまう。

大きく変わったと思うのは、街中では、マスク着用者がほとんどになったことくらいだろうか。
さらに、個人的には手洗いは徹底しているつもりだが、世のなか的にはどうなのだろう。

 厚生労働省が挙げる働き方の新しいスタイルへの市民の対応は、
・前からしていた
・できるけれどもしない
・できない の3種類がある。

 このうち「できるけれどもしない」のには、いろいろな理由があるだろう。
できることはわかっているのにコストなどの関係でできそうにないとあきらめていたり、コア事業の主軸をシフトすることへの意志決定に踏み切れない組織もありそうだ。

一か八かが許されるはずがないのだから当たり前ではある。
 それでもやらなければ、これからの時代を生き延びることができないという強迫観念のようなものが希薄で、具体的な実感としてわいてこないというのもあるのだろう。
 だからこそ、一部の「できそうだから、とにかくやってみよう」と踏み出した組織がニューノーマルの時代を謳歌するようになる。

「IT・通信・インターネット関連」の業種が高い水準でテレワーク対応を続けているのは、コロナ以前からの姿勢が、既存の組織と異なっていたからだといえる。

■みんなコロナのせいだ
 無責任な言い方だが、テレワークなどによって以前のオフィス勤務よりも、仕事の効率や生産性が向上することがわかっているならぜひチャレンジするべきだろう。
いや、仮に、以前と同じか、少し下がる程度でもやるべきだ。
それまで必要だった多くのカネがいらなくなる可能性があるからだ。
ゼロにはならないにしても大きく低減できる。

 オフィススペースの家賃、そのオフィスを維持する諸設備、インフラ維持のための水道光熱費、従業員が通勤するための費用、福利厚生施設などのコストが大きく低減される。在宅やテレワークに必要なコストを新たに負担するにしても、経営する側にとっては本当は選ばない方がおかしい道のようにも見える。

 テレワークに欠かせないのがコンピュータだが、そのコンピュータも使う側の人間の資質に依存して稼働する。
絵を描くのが上手い人、楽器を演奏するのが得意な人、優れた小説を書く人、特定分野に精通した人が、コンピュータを手にすれば、その作業の質は大きく高まるだろう。

コンピュータを使えることがえらいわけではなく、コンピュータを使う人の資質がえらいのだ。
そして、その資質が、そこから生まれる成果を左右する。
だから誰もが自信を持っていい。

 今ならコロナを言いわけにできる。
言葉は悪いがどさくさに紛れて何でもできる。
政府のデジタル推進も近いものがある。
失敗を怖れるのは当たり前だが、今ほど変わるためにハードルが低い時期はないのではないか。
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2020年11月09日

脳科学者・中野信子が語る、正義をかざした「バッシング中毒」の虚しさ

脳科学者・中野信子が語る、正義をかざした「バッシング中毒」の虚しさ
2020年11月08日 PRESIDENT Online

“初の自伝”『ペルソナ』(講談社現代新書)が話題の脳科学者・中野信子氏は、「ポジティブ心理学が嫌い」だと語る。
「理想的なあるべき姿」を描きすぎ、そこに禍々しい明るさ、胡散臭さを感じるのだという。
「正しさ」「ルール」に思考停止し、翻弄されて生きる人間の滑稽さを白日の下にさらけ出す、同書の一部を特別公開する。
※本稿は、中野信子『ペルソナ』(講談社現代新書)の一部を再編集したものです。

■人間が「個人的な思い込み」に縛られるワケ
人は、自分がこういう人間だ、と認知の中に像を結んでしまうと、それを変えることがなかなかできない。
状況が変わって、違和感を覚えたり、不本意で居心地悪くなっても、その姿を最後まで貫こうとしたり、無理してでも貫き通したほうが美しいと感じたりする。
母親だから頑張らなくちゃ、だとか、男子たるもの、涙を見せるべきではない、だとか。自らの立場をひとたび明確にし、それにコミットしてしまうと、途中で変更することにストレスを感じてしまうのだ。
これを、人の心理における、一貫性の原理、という。

■「一貫性の原理」という謎の機能
何か自分で決めたことを最後まで貫くことができないと、自分を情けない、醜い存在だとみなすようになってしまう。
もしかしたらある程度の年齢以上の人なら周りにそういう人がいるかもしれないが、特定の思想の持ち主だった人が「転向」すると、必要以上に反動が起きたり過剰に自虐的になったりする。

なぜ人間にそんな性質があるのだろう?
一貫性がないと困る、という一見不必要な制約が、脳に備え付けられているのだとしたら、それはどんな目的のためなのだろう?
この答えは、残念ながら脳科学的にもまだクリアにはなっていない。

■人はみな「キメラ」である
私は、自分の思考がモザイク状、もっといえばキメラ状(異なる遺伝情報が混ざった状態)にできているのを感じることがしばしばある。
一貫性を持たせることは難しく、意外かもしれないが、これは自然にできることではないのだ。 よく観察してみれば、キメラでない人など、本当はどこにもいない。
けれど、ほとんどの人は少なくとも自分で見える範囲内だけは滑らかに化粧して、驚くほど能天気に、自分は一意に定まるもの、と信じ切っている。
心地よく日々を過ごしていくためには、そこを忘れ去り、無視できるという能力も重要なものなのだろう。

■「ブレる気持ち」を持ったことのない人の方が少数派
もっと下世話な書き方をした方が、わかりやすいだろうか。
たとえば、自分が好きになってそれなりの努力をして結婚できた妻がいて、今でも満足していて愛しているのに、シチュエーションが変わっただけで、まったく別の女性にあっさり誘惑されてしまうとか。 そうして、この人は一貫性を保持できていない、と世間に認知されるとどうなるか。
言うまでもなく、バッシングが始まってしまう。

実にありふれていてどこにでもあるつまらない話だから、本当は不倫の話など書くのもうんざりなのだが、周囲を見渡してみれば、こうした「ブレる気持ち」を持ったことのない人の方が、むしろ少数派なのではないだろうか。
私が夫のことをメディアでのろけ気味に語るたびに、結婚して10年もたつのに、珍しいですね、といわれるのだから、きっとそうなのだろうと思っている。

■「あるべき姿」という欺瞞
あるべき姿でない、というだけで、いかがなものか、といつでも言いたがっている正義中毒者たちにとっては、いかにもおあつらえむきのおいしい獲物になってしまう。
格好の娯楽の対象になってしまうわけだ。
誰かが何かをやらかすことを、いつも心待ちにしていて、いったんそういう人が出てくると、2〜3カ月はそのネタを心ゆくまで愉しもうとする。
あなた方はもしや、アマゾンの飢えた肉食魚なのではあるまいか。

私は、ポジティブ心理学というものが嫌いだ。
好き嫌いで学問を評価すべきでないことは承知しているが、人間のあるべき姿を理想的に描き過ぎているように思う。
事実を観察する前に臆断すべきではない。
また、ポジティブであることを必要以上に強要されてしまう感じも苦手だ。

人間が自然なネガティブさを持っていることを許さない、というような、どこか禍々しい明るさに、私はむしろ胡散臭さを感じてしまう。

■思考停止しやすい人々の生きる国
こうした「正しい」パラダイムの中では、常に正しい選択肢を選ばなければならない。
誤った選択肢を一度でも選べば、激しい攻撃にさらされてしまう。
冷静な見方ができる人は、残念ながら少ない。
特に私たち日本人は他国で生まれ育った人に比べて、定時性の中で生きなければならないという環境圧力に対して敏感であり、きちんとしていなければならない、という呪いをかけられながら生きている。

ルールに従うことは、選択の自由を放棄していることと同じだともいえる。
ルールというのは、便利な側面もあるが、むやみに濫用すれば、人々は思考停止させられてしまう。
いかなる返答をするのも自由、ときれいごとでは言われながら、やはりテンプレートに従い、社会の理解の枠組みに合わせて答えなければならない。
思考停止しやすい人々の生きる国は、どんな形をしているか。メディアに出るということが、その観察を可能にしてくれる。カメラの向こう側に、巨大な実験室があるようなものだ。
人々の反応をレンズ越しに見られるのは、端的に言って面白い。

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中野 信子(なかの・のぶこ)
脳科学者、医学博士、認知科学者 1975年、東京都生まれ。
東京大学工学部卒業後、同大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了、脳神経医学博士号取得。
フランス国立研究所ニューロスピンに博士研究員として勤務後、帰国。
東日本国際大学教授として教鞭を執るほか、脳科学や心理学の知見を生かし、マスメディアにおいても社会現象や事件に対する解説やコメント活動を行っている。
著書には『サイコパス』『不倫』(以上、文春新書)、『空気を読む脳』(講談社+α新書)、『ペルソナ』(講談社現代新書)、『引き寄せる脳 遠ざける脳』(プレジデント社)、共著書に『脳から見るミュージアム』(講談社現代新書)、『「超」勉強力』(プレジデント社)などがある。
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2020年11月10日

高血圧は何が問題? 医師が詳しく解説

高血圧は何が問題? 医師が詳しく解説
11/9(月) 両丹日日新聞

 今年度第3回の医師・歯科医師の健康教室が5日、京都府福知山市役所隣のハピネスふくちやまで開かれ、福知山医師会の田儀英昭さんが「高血圧って何が問題なん?」と題して講演した。

 田儀さんは、1998年から2年間、福知山市民病院循環器科に勤務したことがあり、現在は上篠尾二区のたぎ内科医院院長。健康教室では、「血圧って何なん?」「高血圧とは、何が問題なん?」「どうしたらいいん?」の3点について話した。

 高血圧治療について日本の臨床医は、日本高血圧学会が発表しているガイドラインを参考にしており、高血圧は診察室測定で140/90以上、家庭測定で135/85以上を指す。

 高血圧の原因は、不明のものが9割で、食塩の取り過ぎ、運動不足・肥満、飲酒・喫煙、ストレスなどに遺伝因子が合わさり、加齢も加わって発症する。
原因があるものは1割で、腎血管狭窄やホルモン異常などによるもの。
これは手術などによる原因の除去によって治療が期待できる。

 高血圧は、血管や心臓の病気を発症する重要な要因になる。
血管は老化すると硬くなり、さまざまな合併症を引き起こし、どれも身体機能に著しい障害をもたらすことが多く、生命の危険もあり得る。
心臓も狭心症、心筋梗塞などを引き起こす。

 血圧は高くてもなかなか症状が出ないため、普段から血圧を測り、自身の状態に気を留めることが大切。
家庭で測って135/85以上が続くようなら、血圧記録を持って内科医に相談することを勧めた。
 また、血圧を下げるための生活習慣の改善も必要。

食塩を制限、野菜・果物を摂取し、飽和脂肪酸、コレステロール摂取の回避、適正体重の維持、運動、節酒、禁煙などが組み合わさると、降圧は大きくなることが期待できると説明した。

 治療としては薬物療法があるが、勝手に飲むのをやめると狭心症を誘発するものもあるため、飲みたくない場合は医師に相談することが大切だと念を押した。
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2020年11月11日

お薬手帳、お持ちですか? 意外と知らない活用術

お薬手帳、お持ちですか? 意外と知らない活用術
11/10(火) ラジオ関西・ラジトビ

 姫路市を中心に28店舗を展開しているぼうしや薬局が発信する「町の薬局のつぶやき」。
地域一番薬局を目指すぼうしや薬局が、地域の皆さんに向けて様々なテーマで発信していきます。
今回のテーマは「お薬手帳」についてです。

 薬局に行くと必ず「お薬手帳はお持ちですか?」と聞かれますよね。
読者の方のなかには「毎回聞かれてめんどくさいなぁ」と思っている方もいるかもしれません。
実は、お薬手帳は、みなさんの健康を守る大切な手帳なのです。
今回はそんなお薬手帳についてお話いたします。

 お薬手帳には、皆さんの「これまで飲んできた薬の記録」がぎっしり詰まっています。
いつ、どの病院で、どんな薬を、どれだけの量処方されたのかなどの情報が一目でわかるようになっており、薬剤師はお薬をお渡しする際、この情報と今回処方されたお薬を見比べ、「薬の飲み合わせは大丈夫か」「重複がないか」「過去に同じような薬で副作用が出ていないか」など、患者さんが安全に薬を飲めるかどうかをチェックします。

今、ほかで飲んでいる薬がなくても、過去に飲んだことがある薬がわかれば、その薬では副作用が出にくいという情報が得られますので、ぜひ持参していただくことをお勧めします。

 また、災害時や旅行中などの緊急時に急遽、受診しなけらばならない場合、かかりつけの病院にかかることができないことがあります。
その際にも、お薬手帳があれば現在服用中の薬や副作用歴などが一目でわかるので、お薬を覚えていなくても正確にお薬の情報が伝えられるというメリットもあります。
『自分の健康を守る』要素が詰まった、お薬手帳。今後もぜひ活用していきたいものです。
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2020年11月12日

「怒り」や「不安」は消えない、上手な向き合い方とは?

「怒り」や「不安」は消えない、上手な向き合い方とは?
2020.11.11 ダイヤモンドオンライン
大平哲也:福島県立医科大学医学部疫学講座主任教授

長期化するコロナ禍で不安やストレスに晒される日々が続いています。
こういった「負の感情」は、心の病気だけでなく、高血圧や糖尿病といった生活習慣病を引き起こす要因にもなります。
先行き不透明で精神的にも不安定になりがちなウィズコロナ時代、「負の感情」に振り回されて病気にならないように感情とうまく付き合っていくにはどうすればよいのでしょうか。
そこで前回に続き、福島県立医科大学医学部疫学講座主任教授の大平哲也氏の著書『感情を“毒”にしないコツ』(青春出版社)から、今回は「怒り」や「不安」といった負の感情との上手な向き合い方を紹介します。

「怒り」「不安」の感情に振り回されないために
 怒りや不安を感じたとき、それを上手に手放す方法はあるのでしょうか。
怒ったときの対処法はいろいろ紹介されています。
たとえば、キレそうになったとき、10まで数字を数えて……などといわれることがありますが、怒っている人に「ひと呼吸おいて」などといっても、耳に入ってこないでしょう。
それができないから怒ってしまうわけです。

 正直なところ、怒りをなくしたり、怒りそのものに対処したりするのは難しいと私は思っています。
もし怒りの原因がわかっているのであれば、その原因に対して対策を講じるしかないでしょう。
怒る「前」の対処が重要です。

 それ以外に怒りについてできるのは、普段の生活に気をつけることです。
睡眠不足や栄養バランスの乱れなど、不規則な生活からイライラが生じることが多いので、生活習慣から心身の健康を保つ努力はしてほしいと思います。
また、怒りはずっと続くわけではないので、怒ってしまった「あと」にどのような行動をとるかが大切です。
ここは自分で制御できるのではないでしょうか。

 一方、不安も自分でなくせるものではないため、基本的にはそのままにしましょう。
そのまま“ある”ものとしておき、闘ったり、あらがおうとしたりしないことです。
これまで何度も不安を経験してきた人や、パニック症状がある人ならなおさら、経験的に不安がいつかは消えるものだとわかっているはずです。
不安がずっと続くことはないのです。
つまり、嵐が過ぎ去るのを待つのです。
 そのうえで、自分がこれまでやってきて効果があったことをやってみるのもいいでしょう。

不安を経験してきた人は、だんだん何をしたらリラックスできるのか、不安を減らすことができるのか、わかるようになるものです。
 今まで試したもので比較的よかったもの、例えば歌を歌うのもいいですし、好きな音楽を聴いてお茶を飲むのもいいですし、寝てしまうのでもいい。
何かしら自分がおこなうことで不安を減らせるのであれば、それだけで十分です。
不安があるから何もできないという状態よりも、何か自分でできることがある状態のほうが、ずっとラクになれます。

 よく、「何が不安なのか客観的に考える」とか、「自分の不安としっかり向き合って」などといわれることがあります。
もちろん、人によっては、「これが起こると不安になる」と原因がはっきりわかっている方もいます。
そういう人はその不安と向き合って対処してもいいのですが、なかには、なんだかわからないけれど不安がワーッと押し寄せてくるという人もいます。
 そういう原因不明の不安については、実際、抑えようにも抑えられませんし、対処することも難しいのです。
そういう不安については、不安は不安としてあるがままに受け入れるというのが1つの方法だと思います。

感情を変えるのではなく「行動」を変える
 ストレスやネガティブな感情というものは、個人個人の力だけではなくせないものです。
また、ストレスはある意味、人生のスパイスという見方もあります。
ストレスがまったくない人生も退屈かもしれません。
むしろスパイス程度のストレスがある生活によってメリハリがついたり、生きがいを感じたりすることもあるでしょう。

 人は自分自身で感情をコントロールすることは非常に難しいものです。
先にもお話ししたように、怒りや不安は自分で完全に抑えられるものでもありません。
でも、「行動」を変えることはできるのです。

 不安だからといっても、歩くことも、食べることも、笑うことだってできるわけです。
感情に対して、感情そのものをどうにかしようとするよりも、行動を変える。
非日常の体験を取り入れることが、感情を切り替えるコツでもあり、そのほうがずっと早いのです。

 日常生活のルーティンが続くと、それがストレスになることがあります。それをいったんリセットするには、非日常的な体験がおすすめです。

「非日常体験」で負の感情をリセットできる
 非日常体験というと、ハードルが高そうな印象を受けるかもしれませんが、とても簡単です。
具体的には、
・歌を歌う
・運動する
・映画館に行く
・ちょっといいレストランで食事する
・温泉やマッサージに行く  などがあります。

 歌を歌うときは、できれば自分の部屋ではなく、違う環境で歌うほうが効果的です。
新型コロナウイルスの影響で、なかなかカラオケも行きにくくなってしまいましたが、自分の部屋だったとしても、できるだけ歌手になりきって歌うとストレス解消になります。
 また、運動をすることは気分転換になるのはもちろんですが、運動によって血流がよくなり、脳内のドーパミン(快楽物質)が増える効果もあります。
 家でDVDを観るよりも映画館で映画を観るメリットは、そこが非日常空間であることです。
家にいればスマホをチェックしたり、ちょっと家事をしてしまったりしますが、日常と断絶された空間で映画に入り込むことで、日常生活を忘れ、ストレス解消につながりやすくなります。

 いつもより少しいいレストランでおいしいものを食べるのもおすすめです。
ストレスがたまると、人はどうしても甘い物や脂っこい物に手が伸びてしまいがちですが、そうなる前に、おいしいものを食べて気持ちをリラックスさせることで、ストレスによる無駄な食べすぎを防ぐ効果もあります。
もちろんレストランでなくても、それが美容院だったり、温泉やスーパー銭湯やマッサージでもなんでもいいのです。

 忙しくてストレスが多い人は、得てしてすぐに「時間がない」といいます。
運動する時間がない、ごはんを食べに行く時間がない、映画を観る時間がない、というように。
でも、非日常的な時間というものは、意識的につくったほうがいいでしょう。
まず先に、スケジュールに非日常時間のための予定を入れてしまうくらいしないと、難しいかもしれせん。

 ちなみに私自身のストレス解消法は、「ジョギングをしながら落語を聞くこと」です。
落語が終わるまでなんとなく走ってしまうので、途中で止めにくいというメリットがあます。
運動と笑いのダブルの効果があるのでおすすめです。
笑いながら走っているので、怪しまれてしまうことがあるのが難点なのですが……。

 それ以外にやっているのは、「寝ること」です。
睡眠が妨げられると翌日のパフォーマンスが落ちますし、イライラもします。
仕事のためにも、ストレス解消のためにも、睡眠時間はしっかりとるようにしています。

 先行きが見えない時代、私たちはこれからも多くの種類のストレスや不安と向き合っていかなければなりません。
どんな小さなことでもよいので、生活の中に「生きがい」「楽しみ」「目標」といったポジティブなものを増やしてみてください。
それが、きっとストレスや不安とうまくつき合う自分をつくってくれるでしょう。
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2020年11月13日

裸の王様「都合の悪い情報に目を閉じる」人が掘る墓穴

裸の王様「都合の悪い情報に目を閉じる」人が掘る墓穴
2020年11月12日 PRESIDENT Online
和田 秀樹(わだ・ひでき)国際医療福祉大学大学院教授

リーダーは側近にどんな人材を置くべきなのか。
精神科医の和田秀樹氏は「大統領選で負けたトランプには、周囲にイエスマンを集める裸の王様のような傾向があった。
自分に都合の悪いことをあえて言ってくれる人物や、大衆心理に熟知したアドバイザーがいなかったことが敗因ではないか」と指摘する――。

菅義偉総理大臣が、日本学術会議が推薦した6人の候補者の任命拒否をめぐって、国会で激しい批判を受けている。
菅氏の首相としての滑り出しは順調なものだった。
一般国民の可処分所得増につながる携帯電話料金の値下げを打ちだしたり、ハンコの廃止を迅速に進めたりするなど、スピード感や実行力もあいまって、国民的人気は高く、非常に高い内閣支持率を得た。
この学術会議問題が、今後の菅首相の人気や政権運営にどう影響を与えるのかはわからない。
安倍路線の継承というのだから、多少学問の自由を損なったとしても、保守層の支持につながり、全体のダメージも最小限に抑えられると見たのかもしれない。
ただ、国会中継を見ている限り、野党からの質問に同じ内容を棒読みのような形で答えるなど、何とも頼りない印象だ。
そう感じた国民も少なくないのではないか。
ともあれ菅首相人気の趨勢は学術会議問題だけでは占えないが、政治は、一寸先は闇だ。
油断することは許されない。

勢いのある政党が一気に失速することもある。
例えば、2017年に結成され、2018年に解散した「希望の党」だ。
政権政党になるのではと思われるほど人気を集めていたにもかかわらず、党創設者の小池百合子氏が発した「排除します」のひとことで、その気運が一気にしぼんだように、ちょっとしたミスが世論や政治的人気に大きな影響を与えることがある。

■落選トランプは「政治的な死」を迎えたのか
もっとも、それが必ずしも「政治的な死」を意味するわけではない。
その後の小池都知事の人気の急回復と選挙での圧勝からもそれはわかるが、アメリカの大統領選挙は、そうはいかない。
どんな僅差であれ勝った側が大統領になり、負けた側は少なくとも政治的にはただの人となる。

今回の選挙では、中西部では善戦したものの、選挙人の数でも予想外の大差で現職のトランプは負けた(まだ、裁判に持ち込むという話があるが、このくらいの差だと1州や2州、裁判がもつれてもバイデンの当選は確実だろう)
この選挙では、前回選挙でトランプの逆転の原動力となったラストベルトと言われる工業労働者の多い州を、トランプはことごとく落としている。
いくつかの要因はあるだろう。

■都合の悪いことをあえて言ってくれる側近がいない
コロナ対策や経済政策などの観点も重要だが、私の見るところ、トランプが票を減らした最大の理由は、警察官が黒人を射殺した事件への対応に見られる人種差別に寛容ともとられかねない姿勢と、それにまつわる国内の分断をもたらしたことだと考えている。
私は、1991〜94年にアメリカでもっとも保守的な州と言われるカンザスに留学した。
この地域での人種差別は控えめに言ってもひどいものがあった。
娘はナーサリースクール(幼児のための教育施設)で一人だけ手をつないでもらえなかったこともある。
言葉がうまくない私は、発音が悪いために通じない英語を使うと明らかにバカにした態度を取られた。
ただし、建前はあくまで人種差別厳禁だった。

職場でも差別は厳禁だったし、インテリ黒人の心理学者やケースワーカーも多数在職していた。
留学先の精神病院は、精神分析を入院治療に応用するという先進的な治療を行うことで全米ランキングのトップに位置する病院だった。
そのため、全米から富裕層の患者がやってくる。
すると、不思議なことが起こる。

精神分析の治療場面では、患者に心に浮かんだことを包み隠さず話してもらうことが基本原則だ。
差別的なことでも、卑猥なことでも、正直に気持ちを話してもらう。
すると、ルールとしては人種差別厳禁の病院なのに、本音としての人種差別発言をしょっちゅう聞く羽目になる。
そういうこともあってアメリカの人種差別は根深いと感じずにはいられなかった。

前回のトランプ当選の際には、日本のジャーナリストたちは西海岸と東海岸以外のことにやや疎い面があり、ヒラリーの当選を予想していた。
だが、そういう体験から私は、本音では差別的なアメリカ人が世論調査に載らない形でのトランプ支持層はかなり多いのではないかと予感していた。
悪い予感だが見事に的中した。
当選後に「隠れトランプ」と呼ばれた現象だ。
そのため、トランプは本音でのアメリカ人の黒人差別心理を今回も読んで、各地で起こった射殺事件などに緩く対応したのだろう。
だが、それが裏目に出た。

■大事な「情報」が一切上がってこなくなる
私が言いたいのは、菅首相にしても、トランプにしても、自分に都合の悪いことをあえて言ってくれる人物や、大衆心理に熟知したアドバイザーがいないのではないかということだ。
トランプが政府高官を次々と更迭し、自分の熱烈な支持者で側近を固めたことはよく知られている。
菅首相も、官房長官として安倍前首相を支え続けたわけだが、内閣人事局を通じてかなり強権的な対応を取り続けていた。
やはりイエスマンのような人ばかりが周りに集まっていたように思えてならない。
その結果、どうなるか。
大事な「情報」が上がってこなくなるのだ。

■「今言えば今回は許すが、後になって問題が発覚したら承知しない」
かつて大赤字だった建設機械大手のコマツを世界のトップ企業にV字回復させたことで知られる坂根正弘社長(現顧問)は、悪いニュースが真っ先に上がってくる仕組みを作ったと言われる。
さらに、「今言えば今回は許すが、後になって問題が発覚したら承知しない」というスタンスを徹底し、早い段階で問題が発覚するような社内の雰囲気をつくり上げたという。
裸の王様のようになってしまうと、部下がバッドニュースを上げづらい雰囲気になってしまうので、それをどう防ぐかがトップの器量ということなのだろう。

米元大統領のビル・クリントンはホワイトハウス実習生だったモニカ・ルインスキーさんとの不倫騒動の際に、謝罪会見に挑んだ。
弾劾の評決の準備が進められていて、失敗すると大統領の職を失いかねないものだった。
CBSのドキュメンタリーでも紹介されたが、これに対してクリントンは心理学者のアドバイスにしたがって、数十人の市民に協力を仰ぎ、どういうふうに釈明し、どういう表現を用いた時、市民が不快感を抱くのか、もしくは好感を持つのかをモニターし、それを用いて会見の準備をしたという。

「賢いものがバカになるときがある」が本連載のテーマだが、いくら賢い人間でも、そうした「情報」が不足していたら、いい判断はできない。
偏った情報のもとで判断するから無駄な戦争が起こったり、合戦で負けたり、人生を棒にふるような誤った決断をすることは、歴史上いくらでも起こっている。
悪い情報もいい情報もなるべく広く集めて判断したほうが、100%正解とは言えなくても妥当な判断になるのは当然のことと言える。

■自分と違う考えの人間を周囲において意見を聞くのが手っ取り早い
これは以前(「コロナ対応を『感染症の専門家』にしか聞かない日本人の総バカ化」に問題にしたように、当初、政府がコロナ自粛の方向性を定める際、感染症の専門家だけでなく、精神医学、経済などの他の分野の専門家の声を聞こうとしなかったことも同様のことが言える。

人間は、自分に都合のいい情報にばかり目がいきがちである。
タバコを吸う人は、タバコを吸う人のほうがアルツハイマーになりにくいというような情報には目が行くが、その害には目が行きにくくなる。
逆に禁煙家の人は、ニコチンの利点が報じられても、それを無視する傾向にある。

今回のコロナ騒動でも、自粛派と反自粛派の溝が埋まらないのはこうした理由からだろう。
人間が偏った情報を切り取りやすい生き物であることを認識するならば、自分とは違う認知構造をもった人を周囲において、その意見を聞くのが手っ取り早い(もちろん、それを受け入れにくいのが、人間の性なのだが)。
それを行うことができた好例が、前出の坂根氏であり、クリントンなのだろう。
自分と違う意見の人間を排斥したトランプだけでなく、菅首相もすでに、周囲にイエスマンが集まってきているのではないか。
それが私の杞憂であるといいのだが
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2020年11月14日

日本のマスコミはなぜ「推定無罪」の原則を守らないのか?

日本のマスコミはなぜ「推定無罪」の原則を守らないのか?
11/12(木) News week

<警察の立場をそのまま報道し、逮捕時の写真を掲載するのは大きな問題>
20年前から日本に住んでいる私だが、マスコミによる報道で、いまだに慣れないものがある。
誰かが逮捕されたとき、逮捕時の映像が放送されたり、写真が掲載されたりすることだ。
             【西村カリン(ジャーナリスト)】

フランス人からすると違和感がある。
特に最近ショックを受けたのは7月に起きた事件だ。
当時、新聞などにはこう書かれた。
「生後3カ月ぐらいの女児を自宅マンションに約16時間置き去りにしたとして、警視庁は24日、保護責任者遺棄の疑いで東京都台東区、職業不詳の母親(30)を逮捕した。
女児は搬送先の病院で死亡が確認された」。
女性が逮捕されたときの写真も掲載され、結果的に「犯罪者だ」と報じるのと同じだった。
これは推定無罪の原則を全く守らない報道の仕方だと思う。

警察は有罪であるかもしれないと考えて逮捕するが、マスコミが警察の立場をそのまま報道し、逮捕時の写真を掲載するのは大きな問題ではないか。
逮捕の場面を撮影するのは、マスコミが誰かから事前に情報をもらったということ。
情報というよりリークと言っていいと思う。
もちろん警察からのリークだ。

日本だけにリークがあるわけではないが、その内容と、マスコミがリークをどう利用するかは重要なポイントだ。
<フランスでは本人の同意がない限り禁止>
日本では前述のような写真が堂々と何度も掲載される。
動画もそうだ。

逮捕された人は無理やり自分の顔を隠すために帽子をかぶったり、頭を下げたりするが、それでいいのか。
裁判で有罪となるか無罪となるか分からないうちに、手錠を掛けられた写真や映像を公表するのは、例えばフランスでは本人の同意がない限り禁止されている。

推定無罪の原則に違反し、人間の尊厳への攻撃となるからで、報道の自由に関する法律で定められた重要なルールだ。
だからフランスでは逮捕場面の撮影を望むマスコミは少ない。
撮影しても掲載できないからだ。
ただしそうした写真が全く出ないかといえば、そうでもない。
少ないけれど時々、ルール違反は起こる。

最近、政治家のスキャンダルに関わった人が逮捕されたときに、カメラマンが撮った写真が雑誌に掲載されたという理由で警察が捜査の対象となった。
逮捕の予定についての情報を事前にリークした警察官も逮捕されてしまった。

マスコミに推定無罪の原則が守られていない状況では、どんな問題が生じるのか。
まず、マスコミが誰かを犯罪者として紹介したら、裁判で無罪となっても疑いが残ってしまう。
インターネットで公開された写真も完全には削除できない。
裁判官と裁判員の判断もマスコミの影響を受けないとは言い切れない。

<リークする警察には意図がある>
日本人の弁護士に話を聞いたところ、「弁護士の間でも捜査機関のリークは大変問題になっていて、諸外国の制度を調べたいと思っている。
日本はほとんどルールがないし、処罰された例がないので......」と言っていた。
私も記者としてリークをもらうことはある。
ただそれを利用して記事を書く前に、見極めるべき重要なことがある。

まず、このリークが正確なものかどうかを別の人に再確認できるか。
不可能なら、報道するかどうかをさらに慎重に判断する。
判断するためには、なぜそのリークをもらえたのかを考えないといけない。
つまり、リークした人にとっては何かメリットがあるのではないか、自分は記者として利用されていないかということだ。
最後に、リーク報道によって誰かが傷つくリスクを考える。
もし事実でなければ、その人にとっては大変なことになる。

リークする警察官には意図がある。
「逮捕された人は犯罪者だ」と知らしめることだ。
記者は、それが事実と違う可能性もあると報じるべきだろう。
             <本誌2020年11月3日号掲載>
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2020年11月15日

名前を聞くとしぼむクレーマー、「匿名」で強気になる人の心理とは?

名前を聞くとしぼむクレーマー、「匿名」で強気になる人の心理とは?
11/13(金) オトナンサー編集部

「しつこく文句を言う」「暴言を吐いて、相手を威圧する」。
仕事などで、このような「クレーマー」と接する機会のある人もいることでしょう。
 ところで、クレーム対応を行う現場では「履歴などからクレーマーの名前を特定し、電話口で名前を確認すると相手が一気にトーンダウンした」「店頭で『上の者から改めて謝罪しますので…』と伝え、名前と連絡先を聞くと相手が気まずそうに去っていった」など、相手の名前を尋ねることで効果的に対応できるケースもあるようです。

 ネット上では「理不尽なクレームには効きそう」「匿名だから、好き勝手言えると思っているんだろうな」「匿名のときだけ強気なのはネット上も同じ」など、さまざまな声が上がっています。
匿名が通用する環境で強気になりやすい人の心理について、心理カウンセラーの小日向るり子さんに聞きました。
言動に責任を持たせること

Q.
一般的に、クレーマーの、相手に文句を言いたい心理とはどのようなものでしょうか。

小日向さん
「相手に文句を言いたいという心理は、精神医学者のフロイトが唱えた『防衛機制』という心理メカニズムで解釈できます。防衛機制には『逃避』『同一化』『抑制』『退行』『反動形成』『投影』『昇華』などがあります。
例えば、理不尽なクレーマーの代表的なものは防衛機制の中の『逃避』であることが多いです。
現状が苦しいために、自分以外の他のものに心的エネルギーを注いで、紛らわそうとしているのです。
また、他人を引き連れたり、背後の存在をにおわせて圧力をかけたりするなど、いわゆる脅しの手法で文句をつけてくるタイプは、防衛機制の中でも『同一化』が強く働いていると考えられます。
同一化とは、自分一人では不安なので自分以外のものと融合した一体感を持とうとすることです。
防衛機制自体は自我を安定させるために誰もが持っている心理なので“悪”ではありません。
しかし、自分の自我を安定させるために、他者を不快にさせてよいということはありません。
そうした意味で、クレーマーの真理は『過剰な自己防衛』『ゆがんだ自己防衛』であるといえます」

Q.
相手の名前を尋ねる、声に出して相手の名前を言うことで、文句を言っていた相手がトーンダウンしたり、文句を言うのをやめたりすることがあるようですが、これはなぜだと思われますか。

小日向さん
「名前を聞くことは『相手の言動に責任を持たせる』ということです。
従って、名前を尋ねた途端に相手の発言がトーンダウンしたり、文句がおさまったりした場合は『責任を問われ、無責任に発言をしていたことに気付いて怖くなった』という心理状態になったと考えられます。
そのため、懲罰や社会的批判を理解しつつも無責任に発言をしている人ほど、この『恐怖』は大きくなるといえるでしょう」

Q.
匿名が通用するときだけ、相手に対して強気になるのは、どのような心理によるものなのでしょうか。

小日向さん
「そもそも、他人に対して強気になるときとは先述したように、自己防衛心が強かったり、闘争心が高かったりするときであり、心にストレスがかかっている状態です。
そのストレスを発散するために他人を巻き込むのであれば、自分自身も痛みを伴う覚悟が必要になります。
しかし、匿名の人はその覚悟が希薄です。
つまり、匿名のとき“だけ”強気になる人には『ストレスは発散したいけれど、自分が痛みを伴うのは嫌だ』という自己中心的な思考があるといえます」

Q.
名前を呼ぶ行為が特に効果的だと考えられるクレーマーのタイプ・特徴などはありますか。

小日向さん
「大きく分けて、次の2つのタイプに有効だと考えられます。
一つは言動が犯罪行為になり得るなど、悪質性が高いクレーマーです。
このタイプは名前を呼ぶことによって、発言の責任を明確に意識させるため、これ以上の暴走を防ぐために効果が期待できます。
そして、もう一つはいわゆる『かまってちゃん』タイプのクレーマーです。
このタイプは基本的に寂しがり屋で、常に他者からの承認を求めています。
名前を呼ぶという行為は『私はあなたの言葉を認めていますよ』という承認の行為でもあります。
自己の承認欲求が満たされることでクレームの戦意がそがれ、その後の対応によっては対話者に親和感情を抱き、逆に穏やかになることも考えられます」

Q.
匿名が通用する環境で強気になりやすい人はクレーマーのみならず、昨今のネット上にも多くいると思われます。
場合によっては大きなトラブルにも発展しかねない、匿名で強気になる心理と、本人や周囲がうまく付き合っていくコツとは。

小日向さん
「まず、匿名で強気な発言をしている人をあおらないことを心掛けてください。
匿名といってもネット上ではアカウント名やユーザーネームなどを使い、『匿名だけども特定の個人』として大きな影響力を持つ人が存在します。
こうした形で存在する人の発言は気軽に同調してしまいがちです。
書き込んだ人は現実社会を生きている『人間』ですが、それがアカウント名やユーザーネームという“よろい”によって、ぼやけてしまうのです。
しかし、彼らは架空の人物ではありません。
彼らに犯罪となり得る言動があれば、あおった人も罪に問われる可能性はあります。
これは自身がそのような存在である場合もしかりで、匿名の場合、自身の発信に対する同調が多くなると勢いがついてしまう傾向があります。
匿名であってもハンドルネームであっても、発信者は全員、社会に存在しているリアルな『人間』です。
それを忘れないことが、あおりたくなる気持ちを防ぐ上で重要だといえるでしょう」
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2020年11月16日

「SNS暴力根絶したい」 啓発プロジェクト「#この指とめよう」始まる

「SNS暴力根絶したい」 啓発プロジェクト「#この指とめよう」始まる
11/14(土) 毎日新聞

 SNSでの誹謗(ひぼう)中傷がいまだにやまない。
この被害を少しでも減らそうと、人を傷つける発信をする前に、一度立ち止まって考えてもらおうというプロジェクトが始まった。
その名は「#この指とめよう」。
企画したのは広告・事業代理業「GO」(東京都港区)のプランナー兼コピーライターの小竹海広(おだけ・みひろ)さん(30)。
今後、多くの若者が行き交う東京・渋谷駅周辺に啓発広告を出すことを目指している。
すでに広告用の画像例が制作・公表され、お笑いコンビ「ロンドンブーツ1号2号」の田村淳さんら著名人がツイッターでリツイートするなど関心が次第に高まりつつある。

小竹さんに企画を始めた思いを聞いた。
    【和田浩明/統合デジタル取材センター】  

◇コロナ禍で「ネガティブな発信をしたい心理」懸念
 スマートフォンの上にかざされた人さし指の画像。
そこには「送信ボタンを押すなら、だれかの背中を押す言葉にしたい」「一人が数万人に刺された壮絶な事件があった。凶器は『後ろ指』だった」との言葉が添えられている。
「#この指とめよう」プロジェクトの広告画像例だ。
 これらを屋外広告として掲示する費用など250万円を集めるため、クラウドファンディングサイト「キャンプファイア」上で10月28日に募金を開始した(11月末まで。https://camp-fire.jp/projects/view/306609#menu)。

今回の試みは「AD FOR GOOD(アド・フォー・グッド)」と呼ばれ、社会の課題解決を広告で働きかける取り組みの第1弾だ。
 SNSでの中傷は、恋愛リアリティー番組に出演していた女子プロレス選手、木村花さん(22)が5月23日に急死した背景のひとつとして指摘されるなど、被害の拡大が懸念されている。
「SNSでは悲しい事件が立て続けに起きています。
一過性でなく根深い問題だと思っており、広告クリエーターとして、できることはないかという気持ちで始めました」。
小竹さんは動機をそう説明する。

新型コロナウイルス禍が続く中、「暗い心理になって発信する負のスパイラルが生じているのではないか」とも懸念する。  

小竹さんは学生時代からツイッターが好きで積極的に発信しており、フォロワーは1万6000人を超える。
SNSは「誰でも使える楽しい公園のような場所と思ってきた」。
社会人になって広告業界などで働き、SNS上のコミュニケーションが重視される仕事の経験もある。
「今までSNSにはお世話になり仕事もさせてもらってきたので、その場所に恩返ししたいという気持ちです」という。
 渋谷への屋外広告は近日中を目指しているという。

「GO」のビジネスプロデューサー、大長(だいちょう)敬典さん(36)は「今回のプロジェクトは完全な非営利で、会社としてはお金を受け取りません。
渋谷を選んだのは、注目を集める場所だからです」と話した。

◇ロンブーの淳さんらも関心  
小竹さんが広告画像に「#この指とめよう」のハッシュタグをつけ、ツイッターで10月28日に発信したところ、1500件以上リツイートされ、3400件を超える「いいね」がついた。
引用ツイートも240件あり、書き込みには「自分の投稿が相手の人を傷つけるかもしれないという想像力が自然と育まれるような社会にしていきたい」
「自分にとっては一瞬の出来事でも、相手にとっては一生の出来事になることだってある」といったものも。

 複数の著名人やインフルエンサーの反応もある。
ロンブーの淳さんが「このツイートを見た全ての人にグッとラック」などと書き添えて画像を広めると、1100回以上リツイートされ、「いいね」は1万1000回を超えた。
また、ジャーナリストの堀潤さんも小竹さんの書き込みをリツイートしている。
 小竹さんは「SNS上の誹謗中傷について、ユーザーに考えてもらえるようになってきていると思う」と手応えを語った。  

◇深刻化するオンラインでの中傷
 内閣府政府広報室が2018年9月に行った世論調査では、インターネットの利用に関するトラブルへの不安のうち、「SNSやブログなどで誹謗中傷を受けること」との回答が36・6%に達し、上位4項目に入った。
また、インターネットのトラブルに関連した言葉で見聞きしたものとして、「ネットいじめ」を挙げた人は7割を超えた。  

総務省によると、インターネット上での名誉毀損(きそん)やプライバシー侵害など人権侵犯事件の数は近年増加傾向にあり、19年に1985件と、01年に現行の統計を取り始めて以来、2番目に多かった。
 ツイッターやフェイスブックなどでつくる「ソーシャルメディア利用環境整備機構」は今年5月、特別委員会を設置し中傷の投稿の禁止や禁止事項の啓発を進めると発表。
ヤフーやアマゾンなど大手ネット企業で構成する「セーファーインターネット協会」は「誹謗中傷ホットライン」を6月末に設置。
2カ月間で277人から498件の相談が寄せられ、2割の102件が誹謗中傷を受けたと判断された。
また、90件の削除要請があり、うち34件が削除されている。
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2020年11月17日

「デキる人」がやっている、たった5分でフェイクニュースを見破れる凄ワザ

「デキる人」がやっている、たった5分でフェイクニュースを見破れる凄ワザ
11/16(月) 現代ビジネス(-読書猿(読書家)

博覧強記の読書家、読書猿。
古今東西の名著で蓄えた膨大な知識を生かし、これまで『アイデア大全』『問題解決大全』などのヒット作を世に出してきた。
そんな彼の新刊『独学大全』は、これまで自力で学んできた彼の考え方のエッセンスが詰まっている。
独学にとどまらず、日常生活やビジネスなど様々な場面で応用可能なライフハックを、『独学大全』から紹介する。 「ビジネス書を読むと命取りになる理由」を説明した、前回の記事はこちら
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「夫市之無虎明矣。然而三人言而成虎」(市場に虎が出るはずがないことは、明白です。それにもかかわらず、三人して言えば虎が出せます)  
「三人市虎」という中国の故事成語がある。
「市場にトラが現れた!」という荒唐無稽なデマであっても、3人から言われるとつい信じてしまう、といった意味だ。

特にSNSが飛躍的に発達した現代では、どれだけ信憑性に乏しいデマであっても、たちまち数千人がRT(リツイート)、シェアして「真実」かのように見えてしまう。
 実際に2016年の熊本地震の直後の夜には、「動物園からライオンが逃げた」というデマがあたかも事実かのように流布して、大きな混乱を巻き起こした。

 さらにタチが悪いことに、世の中にはこちらを積極的に騙そうとする「悪意ある嘘」をつく人もいる。
典型的なのが詐欺師だ。
たいていの人間は「あんなものに騙されるのは不注意な人だけ」「自分は絶対に引っかからない」といった謎の自信を持っているが、これこそがヒトの「認知の脆弱性」である。
どれだけ知識が豊富で賢い人間であっても、認知の隙を突いたトリックには騙される可能性があるだろう。

 しかも一度誤った情報を鵜呑みにしてしまうと、事態はさらに悪い方向へと進む。
信念」とは事実に関する考えのことだが、人間は一度信念を取り込んでしまうとなかなか捨てられない。
それどころか、その誤った信念に合致した事実ばかりを選択的に信じるようになる。
 どう見ても効果が疑わしい健康食品であっても、「これを食べれば体が絶好調!」という信念が形成されてしまえば、人は食べ続けてしまう。
さらには、同じメーカーのミネラルウォーターやサプリメントまで「健康にいい」と思いこんで買ってしまうだろう。

こうした「認知の汚染」はドミノ倒しのように拡大していく。
 世間にはびこるデマや悪質な嘘、フェイクニュースなどを見抜くにはどうすべきだろうか。
今回はそれらを簡単に見抜くために、「タイム・スケール・マトリクス」と「四分割表」を紹介したい。

時系列に並べてウソを見破る Photo by iStock
 「事実」に関する主張や情報は、単独で目にするともっともらしく感じてしまう。
特に熊本地震のように大災害が発生した混乱状態であれば、入ってくる情報自体が絞られてしまう。
他の情報ソースを確認するのも難しいため、「普段であれば絶対に信じない」はずのフェイクニュースでも信用しがちだ。  

しかし物事というものはバラバラには起こらない。
単独の事象は必ず大きな「事件」の中の一部でもあるため、原因や結果となる出来事も生じているはずだ。
いったん落ち着いて、「ライオンが逃げた」という事実の原因や結果を考えてみてほしい。
 「頑丈なはずの動物園のオリが地震で壊れるのか?」「『逃げ出したライオンが人を襲った』というニュースがないのはおかしいのでは?」といった疑問を浮かんでくれば、同じ情報でも少し怪しく見えてくる。

 事実に関する情報を吟味する際は、このように大きな流れに位置づけて矛盾をあぶり出すのが有効だ。
これから紹介する「タイム・スケール・マトリクス」は、時間とスケールを手掛かりにして前後の事象との整合性をチェックする技法である。

 【タイム・スケール・マトリクス】
 1. 3×3のマス目をつくり、縦軸は「上位・同位・下位」、横軸は「過去・現在・未来」とする
 ここでの上位、下位とは、「スーパーシステム」と「サブシステム」のことを指す。
たとえば電話機を取り上げる場合、上位は個々の電話機を含む電話網、下位は電話機を構成する部品になる。

 2. 事実か否か吟味したい情報を中央のマス目「同位・現在」に書き込む
 今回は、Twitterで回ってきた「動物園からライオンが逃げた」という情報を例にして考える。

 3. 「仮にこの情報が事実ならば…」と仮定して、隣接するマス目を埋める  
「同位・過去」のマスには「その前に起きている」はずの出来事、「同位・未来」には「その後起こりうる」出来事を書き込む。
今回の場合、前者は「地震でオリが壊れた」、後者は「逃げたライオンが人を襲った」となる。

 4. 吟味したい出来事と比較して、より大きなシステムで起こっている出来事を「上位」に書き込む。同様に小さいシステムの出来事についても「下位」に書き込む。わからないマスは空欄にしておく。
 この例では、上位は「(ライオンを含む)動物園の動物すべて」、下位は「ライオンの体の一部」に関する情報となる。
 今回の事例を書き込むと、以下の表のようになる。

 5. 空いているマスに関して、上下左右のマスの内容から推論する
 たとえば「上位・未来」が空欄の場合、ライオン以外に逃げ出したトラやゾウが人間を襲っていてもおかしくはないし、ニュースで報じられたりSNS上で話題になったりするはずだ。

 6. 矛盾をチェックする
 しかし検索してみても、ゾウやトラが逃げて人を襲ったという話は一切出てこないので、最初の「ライオンが逃げた」というニュース自体が怪しいと考えられる。

 人間の思考は、「いま」「ここ」に注力する傾向があるため、過去や未来のこと、あるいはよりマクロやミクロな出来事について、同時並行で考えることは難しい。
 しかしこのように9マスに分割して広い視点から一望すれば、時間とスケールのつながりが見えてくる。

過去は現在、未来に影響を及ぼすだろうし、マクロやミクロな事象は相互に作用しているはずだ。
そういった関係性をチェックしていけば、矛盾の有無で出発点となった情報の正誤を判定できる。

 もともとこの技法は「9画面法」と呼ばれていて、現状の矛盾を見つけ出すことで、技術革新の糸口をつかむためのツールだった。デマ発見に限らず、新製品の企画開発など広い用途で使えるので、覚えておいて損はない。

「共変関係」を見抜くワザ 「揚げ物ダイエット」の真偽を見破るための四分割表
 古来より成功者の体験談は宣伝文句として使われ、人々を惹きつけてきた。
「この薬を飲んで頭が良くなりました!」「アプリを使えば、私のように簡単に恋人と巡り会えますよ!」など、こういった広告の例は枚挙に暇がないだろう。
しかし残念ながら、大々的に取り上げられているのは少数の特異なケース、あるいはまったくの嘘であることが多い。

 このような成功体験が本物か否かを判定するために効果的なのが、これから紹介する「四分割表」だ。
ほとんどの体験談は「Xという行為をすれば、成功者と同じYという効果が得られる」という形式の命題に置き換えられる。
Xの後にYが生じる頻度が高ければ、両者の間に何らかの関係性があると言えるだろう。

ここではもっともよく目にする成功体験の例として、ダイエット法を取り上げながら解説したい。  

【四分割表】

 1. チェックしたい主張を「XならばY」という形の命題に置き換える
 今回は「揚げ物を食べ続けて痩せる」という荒唐無稽な「揚げ物ダイエット」を取り上げよう。< 
 2. 次のような四分割表を作る
 それぞれXの「あり」「なし」、Yの「あり」「なし」で2×2の表になる。
 特に「Xあり、Yあり」以外の欄に当てはまるものがないか探していく。

今回の場合、以下の3つの命題について検証する。

 「揚げ物を食べなければ、痩せる」→野菜だけを食べ続けて実際に痩せた人の例は数多く見つかるだろう
「揚げ物を食べ続けたならば、痩せない」→揚げ物が好きで毎日食べており、痩せているとは言い難い人は多い 「揚げ物を食べなければ、痩せない」→揚げ物は苦手だがお酒が大好きな人は、なかなか痩せられない

  3. 4つの空欄を事例やデータで埋めていく
   特に「Xあり、Yあり」以外の欄に当てはまるものがないか探していく。
  今回の場合、以下の3つの命題について検証する。

「揚げ物を食べなければ、痩せる」→野菜だけを食べ続けて実際に痩せた人の例は数多く見つかるだろう
「揚げ物を食べ続けたならば、痩せない」→揚げ物が好きで毎日食べており、痩せているとは言い難い人は多い
「揚げ物を食べなければ、痩せない」→揚げ物は苦手だがお酒が大好きな人は、なかなか痩せられない

変換すると「揚げ物を食べ続けたならば、痩せる」となる。

  4. 事例の数や頻度から、最初の命題の信頼性を評価する
 最初の命題「XならばY」が正しい、つまりXとYの間に何らかの関係性がある場合、「XならばY」「XじゃなければYじゃない」の事例が他二つに比べて圧倒的に多くなるはず。
 つまり揚げ物ダイエットが本当に効果的であれば、「揚げ物を食べ続けたならば、痩せる」と「揚げ物を食べなければ、痩せない」という例が、他の二つに比べて格段に多く見つかるはずである。
 しかし、知り合いに聞いて回ってもインターネットで検索してみても、「揚げ物を食べ続けて痩せた」人の事例はほとんど出てこないだろう。
また揚げ物をあまり食べずとも、お酒や炭水化物、甘い物が大好きでなかなか痩せられない人は、少なくないのではないか。  
   このように条件と結果を入れ替えながら吟味することで、「Xを変化させると、Yも変化する」のかどうか、つまり両者の間に「共変関係」があるのかが見えてくる。
共変関係がなければ、そもそもXとYは因果関係で結ばれていないので、誤った命題の可能性が高い。

 今回はフェイクニュースやデマを手軽に見抜ける技法を紹介した。
これで情報を吟味する用意は整ったので、「いよいよ後はインプットするだけ…」というところだろう。
そこで次回は、効率よく情報を取り込むため役立つ「文章読解」の技法を紹介したい。
書籍や新聞はもちろん、ネット記事に対しても間違いなく効果を発揮する。
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2020年11月18日

嘘をついている人を見抜く方法

嘘をついている人を見抜く方法
11/17(火) ライフハッカー(春野ユリ)

どんな人にも真実だけを語って欲しいのはやまやまですが、たまに「この人、嘘をついているな」とわかってしまうことがあります。
人間は常に嘘をついています。
公人は公の場で嘘をつき、害がないこともあれば、キャリアに悪影響を及ぼすこともあります。

生きていれば、残念ながら嘘にも嘘つきにも(英文)遭遇してしまいます。
ですから、嘘を見抜けることが大切です。
誰かにだまされているかどうかを見極めるための一般的な手がかりはたくさんあります(英文)。
言葉で見抜けることもあれば、ボディランゲージを見て判断することもできます。

どうしたら嘘を見抜けるでしょうか?
正直に言動しているときの状態を把握する
相手がこちらをだまそうとしているのかどうか判断するには、まず、その人が正直に言動しているときの振る舞い方を把握して、それをベースラインとして定める必要があります。
そのベースラインは、ありふれた日常的な状況下でのふるまいで決まります。

その人がこのベースラインから外れるとどうなるでしょうか。
そわそわして注意が散漫になったり、口調が優しくなり控えめになるなど、よく観察して記憶しましょう。
つまり、普段とは極端に違う雰囲気になっていたら、何かまずいことが起こっているのかもしれません。
ベースラインを定める自信がなくて、他人が呼吸するように嘘をついている気がしたら、それがその人のベースラインかもしれません。

文脈で判断すべき
嘘が一番よくばれるのは、相手がベースラインから明らかに外れた言動をするときですが、『 The Body Language of Liars 』の著者であるLillian Glass博士によると、「文脈こそがすべて」です。
彼女はメールで次のように回答しています。
誰かがあるボディーランゲージを使ったり、ある言葉を使っても、文脈によっては、必ずしも嘘をついているとは限りません。
たとえば、普段は陽気で社交的な友人でも、こちらが不快な質問をすると、口数が減り控えめに見えることがあります。
その場合は、必ずしも相手が嘘をついているわけではありません。
たとえば、自宅のガスを消し忘れて外出してしまったかな、と心配しているのかもしれません。

「この人は、嘘をついているのかな」と疑わしく思ったら、多くの要因がその人の行動に影響を及ぼしている可能性があることに注意しましょう。 ただし、たとえば著名な公人が嘘をついていると繰り返し非難されているなら、文脈がどうであれ、外的な状況は関係ないのかもしれません。
その人物にとって、嘘をつくことが習慣になっているのかもしれません。

顔の表情の変化
嘘は顔に出ます。
人間は嘘をつくとき、唇の動きが不自然になったり、視線をそらす傾向があることが多くの研究(英文)でわかっています。 嘘をついている最中は、唇をすぼめたり舐めたり、過度にまばたきしたり、「突然目をそらしします(視線が上、下、横のどこに向くかは関係ありません)」とGlass博士は書いています。

普段はそうした振る舞い方をしない人なら、「相手は本当のことを言っていないと仮定しても良いかもしれません」とGlass博士は書いています。
カナダのダルハウジー大学にあるStephen Porter氏の法医学心理学研究所が2008年に行った研究(英文)では、顔と嘘の関係が詳しく観察されています。
この研究の筆頭著者の1人であるStephen Porter氏は、当時次のように述べています。

誰かが、たとえば「終身刑」になるといった悲惨な結果になる重大な嘘をついていると、その嘘はいずれにしろばれてしまいます。
ボディーランゲージと違って、自分で自分の顔の表情をチェックしたり完全にコントロールすることはできないからです。
ボディランゲージ 探偵やFBI捜査官が容疑者に尋問する際に、ボディーランゲージに細心の注意を払うのには理由があります。

Glass博士も言うように、「身体は嘘をつかない」からです。
嘘をついている疑いがある人間は、精神的に脅かされると、
ある身体行動が現れます。
「一般的には知られていませんが、人間の脳にストレスがかかると、脳の温度が上昇し、額や鼻の下に汗をかくことがよくあります」と行動分析者であり尋問官でもあるRoger Strecker氏は2017年にNBCニュースに語っています。

NBCにStrecker氏は次のように述べています。
人間が顔に触わるのは、赤ちゃんの「おしゃぶり」みたいなものです。
ストレスを感じている脳を落ち着かせる効果があるからです。
足を軽くたたく、手を落ち着きなく動かす(ベースラインでは手、脚、足がそのような動きをしない場合ですが)といった動作に注意する必要があります。
とは言うものの、知り合いやテレビに出ている人が、リモートで質問されると常に嘘をついているように見えるなら、このボディーランゲージの法則の多くは通用しない可能性があります。

Photo: Janice Storch / Shutterstock Source
: APA,Sciencedaily,NBCニュース
Sam Blum ─ Lifehacker US[原文]
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2020年11月19日

日本を支配する「空気の暴走」は止められるのか

日本を支配する「空気の暴走」は止められるのか
11/18(水) 東洋経済オンライン

戦時中も、コロナ禍も……日本では、大事なことは何となくの「空気」で決まっていることもあります。
この息苦しさを打ち破る手立てはあるのでしょうか。
学習塾代表で著述家の物江 潤氏の新著『空気が支配する国』を一部抜粋、再構成し、得体の知れぬものの正体に迫ります。  

日本は同調圧力が強い国なので、とても息苦しい、生きづらい――こんな主張をよく目にします。
最近出た『同調圧力 日本社会はなぜ息苦しいのか』(鴻上尚史・佐藤直樹著、講談社現代新書)という本のオビには、こう書いてあります。
 「日本は世界でもっとも同調圧力が強い国だった」「新型コロナが炙り出した世間という名の『闇』に迫る」
 たしかに、私もそうした圧力を感じることはあります。
ただ、こういう見方をそのまま受け入れていいのか、というと疑問も感じます。

新著『空気が支配する国』を書くにあたり、いろいろと古今東西の事例を見ていくと、日本は同調圧力が強いというよりは、空気という曖昧な掟が強い力を持つ国だ、と捉えるほうが正確ではないか、という結論に至ったのです。

■日本は世界でもっとも同調圧力が強いのか? 
 まず、「日本は世界でもっとも同調圧力が強い」という点については、日本国内では定説と化してしまっているようですが、これを否定する心理学の研究もあります。
アメリカの心理学者であるソロモン・アッシュは、人々はどの程度、周囲と同調してしまうのかを確かめるべく実験をしました。
 実験では被験者のほかに、あらかじめ同じ回答をするように打ち合わせをした7人のサクラを用意しました。
実験で用意された問題は、図Aに描かれている線と同じ長さの線を、図Bにある3本の線から選ぶというものです。
ここで、7人のサクラが不正解を選んだとき、被験者はどのくらい周囲に同調し不正解を選択してしまうかを確認するわけです。
 アメリカ人に対して行ったアッシュの実験では、まったく周囲と同調せず回答を続けた人間は26パーセントでした。
イメージでは周囲に流されそうにないアメリカ人も、意外と同調圧力に弱いのかもしれません。
人間、誰だって顔色はうかがうのです。

 そして、同じ実験が日本でも実施されました。
横並びが好きな日本人は、もっと不正解に同調してしまいそうな気がします。
ところが、ハーバード大学の博士課程にいたフレイガーが、慶應大学で学生を対象に実施した実験では、周囲と同調しなかった人間が約27パーセントにも上ったのです。
アメリカとほぼ同じだったわけです。
慶應大学だけでなく、大阪大学でも同様の実験が行われましたが、結果は似たようなものでした。
 この結果について、社会心理学者の我妻洋氏は、実験でのサクラは赤の他人であるため、被験者の行動に影響を与えづらいのではないか、と分析しています。

日本人は「意義のある他者」には同調するが、そうでない人にはときに冷淡であったり、敵対的であったりするのだということです。
 たしかにその通りなのですが、しかし「意義のある他者」に同調しやすいというのは他の国の人でもある程度共通するようにも思えます。
「日本人は農耕民族で、ムラ社会を基本としてきたから掟を守る習慣があり、破ると村八分になる。だから同調圧力が強いのだ」こういう反論もありそうです。
 農村をベースにした日本人論はよく目にするのですが、しかし農耕は別に日本だけの特徴ではありません。
水田は多くないでしょうが、共同管理を要する仕事は水田に限りません。
 このように見ていくと、どの社会にでも同調圧力は存在していると考えたほうが自然でしょう。
しかし一方で、多くの日本人は実際に強い同調圧力を感じ、「世界でもっとも強い」とすら主張する人もいる。
これはなぜでしょうか。
日本の何が特徴的だと考えればいいのでしょうか。

■「明確な掟」が少ない
 一言で表せば「明確な掟が少ない」という点です。
それゆえに曖昧な掟である「空気」が強い力を持つ。
ここが特徴です。
明確な掟さえあれば、それに従えばよいので空気を読む必要はありませんが、逆に言えば明確な掟が少ないからこそ、何となく読んだ空気を掟とするのです。

 明確な掟が生じにくい理由はいろいろと挙げられます。
そのなかでも、曖昧なコミュニケーションを好む姿勢、神様を絶対視しないような習慣はわかりやすいものでしょう。
たとえば人間よりも偉い神様が絶対的な存在として君臨していれば、神様との契約は絶対です。
これが強い掟になります。
 ところが、日本では神様がそこまでの存在にはなっていません。
もちろん信心深い方もいることでしょうが、もっと人間に身近な存在です。
だから、人間の都合に応じ平気で神様を作ったり改造したりしてしまいます。

神様が絶対であれば、人間が勝手に手を加えるなんてできないはずです。
ちなみにですが、私の地元には喜多方ラーメン神社まであります。
 明確な掟が少ない日本では、曖昧な掟である空気が諸外国より発生しやすくなります。
また、決まりきった掟が少ないということは、新型コロナ禍における緊急事態宣言のような要請によって、新しい掟を作りやすいということです。
しかも、それが全国に広まりやすいということでもあります。

 新型コロナ禍において、日本政府の国民への制限が極めて抑制的というか、ゆるいことはよく指摘されていました。
ロックダウンとか外出禁止とか営業禁止とか、諸外国がどんどん私権を制限する政策を実行しているのに対して、日本政府は「お願い」を繰り返すのみでした。
しかし、多くの国民は空気を感じて、実質的に私権を制限されていました。
 私も経営する学習塾を「空気」を読んだすえに休業することを余儀なくされていました。
法的に制限されていたわけではありません。
保護者から「開いてほしい」という声もありました。
しかし、それでもやはり開けませんでした。

 もし開けば周囲から何を言われるかわからない。
また万一感染者を出したら再起不能のダメージを受ける。
そう考えると、自粛要請に逆らうのは並大抵の覚悟ではできません。
この感覚は、多くの日本人は共有できるものでしょう。

 宗教的な戒律が強い力を持つ国や、法律による私権制限が比較的容易な国には「明確な掟」が張り巡らされているので、空気という曖昧な掟が幅を利かせる余地があまりありません

一方で、戒律のような明確な掟が少なく、政府が私権の制限に抑制的である日本は、空気という曖昧な掟が自然発生して広まり、人々を縛ることができる。
誰が決めたのかよくわからず、明文化すらされていない掟が国民の行動を実質的に縛るのです。

■「空気」にはメリットもある
 この空気という掟の存在をネガティヴにとらえれば「息苦しい」ということになるのでしょう。
ただ、実はマイナス面ばかりではないと私は考えています。
 東日本大震災からほどなくして、この危機においても規律を重んじる日本人の姿が賞賛されました。
略奪などの混乱が生じず、市民が節度をもって行動したからです。
 これも空気という掟が機能したと見ればわかりやすい現象です。
諸外国では、危機において必要な掟をすぐに準備できないため社会は混乱してしまうわけですが、日本においては必要な掟が勝手に生じるため、かなりのレベルで社会が機能します。
細かく見ていけば小規模な暴動・混乱等々はありますし、実際に東日本大震災後にも見られました。
それでも諸外国より混乱が少なかったのは自生する掟のおかげと見なせます。

 新型コロナ禍でも、法的拘束力のない要請のみで抑え込もうとした日本に対し、疑問を呈した海外メディアも見られましたが、多くの日本人はきちんと自粛生活を送りました。
 ロックダウンといった強権的な政策を取った国の国民よりも、よほど日本人のほうが自制的に振る舞っていたという報告例は数多くあります。
そもそも誰も強制しなかったのに、一斉にマスクを着用し、その習慣を続けたのです。
それは「他人に迷惑をかけないためにもマスクは着用すべし」という掟が定められたからです。
「何となく決まった曖昧な掟」が有効に機能したのです。

 あまり指摘されませんが、このように空気という掟にはいい点もあることは確かです。
ただ、やはりいろいろと問題はあります。
結局誰が決めたのかも曖昧ですし、いつどの時点で変更するかも曖昧です。

■責任者も実は曖昧である
 責任者も曖昧です。
これが最悪の結果を招いたのが「日本は必ず勝つ。敗戦の可能性を口にしてはならない」という空気が支配したときや、「原発は絶対安全。事故の可能性を口にしてはならない」という空気が支配したときであることを私たちはよく知っています。  

法律や契約のような人間が能動的に作った掟であれば、その欠陥がわかり次第、修正することが可能です。
しかし、空気という掟は変えることが容易ではないため、時として欠陥が放置され大変な災いをもたらします。
空気の危険性を把握し、何らかの処方箋が必要であることは論を俟(ま)たないでしょう。

 「やはり日本は息苦しい国ではないか」そんな声が聞こえてきそうです。
実際に窮屈な思いをしている方は多いでしょう(私もそうです)。
しかしながら、「日本は世界でもっとも同調圧力が強い。だから息苦しい」という主張は不正確だと思います。
「日本は曖昧な掟である空気が発生しやすい。だから特異なことが起きる」が、より実態に近いはずです。
 特異なことのなかにはいいことも悪いこともあります。
悪いどころか国難さえも含まれています。
しかし、空気を絶対悪と決めつけてしまうと冷静な判断ができません。

■勇気さえあれば消せる空気もある
 たとえば、政府を批判しただけで逮捕される体制や、宗教や階級制度による縛りが強いため自由に意見を言いにくい国だってあります。
それらと比べて、私たちの国は本当に息苦しいのでしょうか。
空気を絶対視せず視野を広げてみれば、このような見方だってできます。
 また、組織などでは意外と、実は誰もが薄々「誰か言ってくれないか」と空気を破ることが期待されていたということもあるはずです。
少しの勇気さえあれば消せる空気だってあるのです。

 空気を神様や独裁者かのように見なして、必要以上に息苦しさを感じないこと。
そして、新型コロナ禍を契機とし空気について理解を深め、空気の暴走を防ぐため準備を始めること。
これらが今、私たちがすべきことではないでしょうか。
          物江 潤 :著述家、塾経営者
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2020年11月20日

すぐ空気に支配される日本人の「いいかげんさ」こそ国の底力である

すぐ空気に支配される日本人の「いいかげんさ」こそ国の底力である
『「空気」の研究』(山本七平)で読み解く
2020.11.19 ダイヤモンドオンライン
秋山進
プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役

 「空気を読む」ということが、大人であれ子どもであれ、暗黙のうちに「たしなみ」のように強要される世の中になって久しい。
対面のコミュニケーションに限ったことではない。
SNSが発達し、新型コロナウイルスによって仕事でも、プライベートでも、対面でのコミュニケーションが減る今日この頃であっても、「空気を読む」ことはますます重要な能力になってきている。
この意味での「空気」という言葉が一般化するきっかけとなったのは、おそらく、1977年出版の山本七平著の大ベストセラー『「空気」の研究』(現在は文春文庫)であろう。
今回はこの50年近く前の本を読みつつ、「空気」について考えてみたい。

誰もがよくないと思いつつ 誤った意思決定をしてしまう 空気の研究
『「空気」の研究』山本七平著(文春文庫)
 会議が空気によって支配され、明らかに間違った意思決定をしてしまった経験が、おそらく誰にでもあるにちがいない。
会議でなくとも、何人か集まってものごとを決める場でもいい。
そのとき、あなたはどんなふうにその会議に参加していたか?
 反論をしようと思ったのだが、とても言いだせないような空気が充満しており、何も言えなかった。
または、勇気を出して重要なことを提起したのに、何事もないかのように全員から無視された。
さらには、明らかに間違っていると(おそらく)全員が思っているのに、私を含む全員が賛成したということになって終了した………だいたい、こんなところではないだろうか。

 長年、リスクマネジメントの観点から企業の不祥事を扱ってきた私はこのような決定にはなじみが深い。
空気に支配された会議は、全員の総意をもって、禍根を残す意思決定を行う。
『「空気」の研究』著者の山本七平氏は、そんな例として戦艦大和の出撃の意思決定をあげる。
「驚いたことに、『文藝春秋』昭和50年8月号の『戦艦大和』(吉田満監修構成)でも、『全般の空気よりして、当時も今日も(大和)の特攻出撃は当然と思う』(軍令部次長・小沢治三郎中将)という発言が出てくる。
この文章を読んでみると、大和の出撃を無謀とする人びとに比べて、それを無謀とするに断ずるに至る細かいデータ、すなわち明確な根拠がある。
だが一方、当然とする方の主張はそういったデータ乃至根拠は全くなく、その正当性の根拠は専ら「空気」なのである。」(以下、「」内の引用文はすべて『「空気」の研究』(文春文庫))

 山本氏は、組織には、論理的意思決定と空気的意思決定の二つがあり、明らかに後者のがほうが強いと言うのである。
「それ(空気的意思決定:筆者注)は非常に強固でほぼ絶対的な支配力をもつ『判断の基準』であり、それに抵抗する者を異端として、『抗空気罪』で社会的に葬るほどの力を持つ超能力であることは明らかである。」

危機的状況にある組織で 「空気」はより抑圧的になる
 うんうんとうなずく人と、昔はともかく今の会社にはないですよ、という人に分かれるかもしれない。
組織が成長過程にあり、業績も順調なときには、幸いなことに、このような非合理な意思決定はあまり行われない。
 しかし、会社が傾き、事業戦略の失敗が重なり、そこにさまざまな個人のメンツや部門間の利害関係などもからんでくると、組織には、隠したいことやごまかしたいことが増えてきて、会議にはえもいわれぬ“空気”が漂いはじめ、山本氏いわく「論理的判断の基準と空気的判断の基準という、一種の二重基準(ダブルスタンダード)」の状況が発生する。

 あるいは、現代のような激動の時代、そのうえ新型コロナでそれまでの常識が覆されてしまうような異常な事態、そして、事業が壊滅的な影響を受けてしまうような危機的な状況においては、組織は「空気」の脅威にさらされやすい。
 こうした「空気」による意思決定については、現在では、行動心理学や経済学などの分野の研究によって、かなり科学的に解明されてきている。

利用可能性(ヒューリスティックス)や、アンカリング、現状維持バイアスや、確証バイアス、またはゲーム理論などによって、当人の過誤またはプレーヤーの相互関係により、利益の少ない選択肢を選んでしまうことがあることは知られている。  

明らかに成算のない太平洋戦争の開戦についても、プロスペクト理論によって、確実な衰退(ジリ貧)と、ゼロではないがきわめて低い成功の可能性(ただし期待値は低い)を比較し、後者を選んだ可能性が高いことなどが解明されてきている。
また、比較文化論の観点からも、本書をはじめとしたベストセラーになるような「日本人論」については、慎重に扱うべきであるという見方が大勢だろう。

 ともかく、日本型の集合的な意思決定による責任の分散があり、一人で全体に抗しえない状況が生まれると、集団での浅はかな意思決定が行われるのである。
したがって、参加者の誰にも自分が決めたという自覚がない。
皆で話している間に、多くの者が“それは良くない”と思いながら意思決定するのである。
自分としては、状況がそうだったから仕方がなく賛成した(反対しなかった)だけに過ぎない。

 山本氏はこれを「状況倫理」と呼んでいる。
この状況倫理を安易に許容する日本人、および組織に対して山本氏はかなり批判的である。
状況に依存しない、相対的にもう少し確からしい善悪の基準があるはずだろうと言うのである。
しかし、多くの日本人は、閉鎖された組織空間の中で生まれた状況倫理にふりまわされ、そちらを優先してしまう。

王様は裸だと言える人 KY発言が空気を破る
「戦前の日本の軍部と右翼が、絶対に許すべからざる存在と考えたのはむしろ自由主義者であって、かならずしも社会主義者ではない。
あった事実をあったといい、見たことを見たといい、それが真実だと信じている。
きわめて単純な人間のことである。」

 状況を忖度せず、正しいと思うことを正しいといい、見たままのことを見たままにいう人間を警戒した理由は、このような単純な人間たちの一言、たとえば「先立つものがないなぁ(金がない)」といった素朴な雑感が、集団を我に返らせ、現実を直視し、作られた空気を変えるキッカケを生む可能性があるからである。
これを「水を差す」行為として、「空気」への対抗策として山本氏は評価する。
ちょっと前までよく使われた言い方を借りれば「KY」な発言がこれに当たるだろう。

 現在の組織は、新しい技術を持った人、いろんな経歴を持つ人が集まっている。
たとえば社外取締役に外国人や女性を数合わせのために入れることには意味がないが、本来、社外取締役というのは、人種や性別を問わず、社内の「空気」の抑圧のために、見過ごされている明らかな過ちを、組織(ひいては、その空気)の影響を受けない立場から空気を読まず(読めず)に指摘するのが役割であろう。
いずれにせよ、空気に支配されないためには、閉鎖性が崩れることは大変良いことである。

 また、心理学などの発展によって、組織が間違った意思決定を行うことを防ぐ手立ても生まれている。
たとえば、より正しい意思決定をするために、あえて賛成、反対の2チームをつくって報告書を書かせる「レッドチーム」(ある対策が有効かどうか試すために、その対策を立てた側と敵対する考えを持つチーム)を利用する方法などである。
組織のオープン化、意思決定手法の改善などで、新常態においては、空気に支配された間違った意思決定が減ると考えたい。

現代社会全般に 「空気」の抑圧は蔓延
 次に、組織を離れ、社会全体の空気についても考えてみたいと思う。  
 昨今、人気俳優やメダリストらの不倫といった問題が社会的関心事となり、自分とは直接の関係をもたいないそれらの人への異常なまでの不寛容さが社会を覆っている。
少し前までヒーロー、ヒロイン的な「善」の存在であったのが、SNSでの炎上などをともない、いきなり「悪」の象徴として社会的に抹殺されるような状況になってしまうのである。

 さて、『「空気」の研究』では、「臨在感」や「臨在感的な把握」なるものが主題の一つとなっている。
「臨在感の支配により人間が言論・行動等を規定される第一歩は、対象の臨在感的な把握にはじまり、(中略)感情移入を絶対化して、これを感情移入だと考えない状態にならねばならない。」

 臨在感というのは山本氏オリジナルの用語なので、その定義は割愛するが、山本氏が言う臨在感的な把握は、たとえば一人の人間のなかに、「善の部分と悪の部分が対立しながらどちらもある」と認識するのではなく、自分のなかにある善悪の規準で、他人を短絡的に善玉・悪玉に分けてしまい、ある人間には「自分のなかにある善の概念」を乗り移らせて「善」と把握し、別の人間には「自分のなかにある悪の概念」をすべて投入して「悪」として把握するということだと言う。
 ある事件や現象があったとして、なにかのきっかけでそれに多くの人が感情移入し、「そこにマスコミがとびつき、大きな渦となり誇大に宣伝され、世論となる」。

勝手に感情移入してヒーローに仕立て上げたかと思うと、同一人物のなかに悪を発見して、自己の悪をそこに投影させ、一転、全面的な悪の象徴として、てのひらを返したように、たたき落とすのである。
 なぜ、そんなことになるのか。山本氏は一神教の話をする。

多神教ゆえに 「空気」が絶対になる日本
「一神教の世界では「絶対」といえる対象は一神だけだから、他のすべては徹底的に相対化され、すべては、対立概念で把握しなければ罪なのである。」
 キリスト教やイスラム教のような一神教世界には、そもそも絶対的なものなど神以外にはない。
民主主義であろうと、憲法であろうと、何であろうと、である。

一方、日本のような森羅万象に神を見いだす多神教にはそのような基軸になるものがないから、何ものかが選ばれて、それがその場や社会を支配する「空気」となって絶対性を持つことがある。
しかもそれは次々と移ろう。
「民主(筆者注:民主主義のこと)といえばこれは絶対で、しかも日本のそれは世界最高の別格であらねばならなくなる。
憲法も同じであり、あらゆる法は常に欠陥を持つから、その運営において絶えず改正を必要する存在であってはならず、戦前の天皇制が、他国の立憲君主制とは全く違う金甌無欠の体制であったという主張と同様、完全無欠であらねばならないのである。」
 これは、戦後、軍国主義から一転、民主主義や憲法が絶対視されたことを指している。

山本氏は、このようにあらゆるものを絶対的なものとして見ることを警戒する。
一方で、山本氏は、日本の絶対化の“いいかげんさ”も指摘する。
「この世界には原則的にいえば相対化はない。
ただ絶対化の対象が無数にあり、従って、ある対象を臨在感的に把握しても、その対象が次から次へと変わりうるから、絶対的対象が時間的経過によって相対化できる――ただしうまくやれば――」

「空気」と「絶対化」が すぐに移ろうことが日本の底力
 しかし、このようなくだりを読んでいて思い浮かんだのは、空気によって支配され、簡単になにものかが絶対化されつつも、すぐに絶対化の対象が移ろってしまう、このいいかげんさこそが、日本の底力なのかもしれないということである。
 興味関心が揺れ動く。
一瞬大きな力をもつが、すぐに忘れる。
たとえば郵政民営化。
あんなに盛り上がったが、いったい何だったのだろう。
なんでもかんでもすぐに祭り上げ、手を出してみたかと思えば、次の瞬間興味の対象は移ろい、そのことは忘れて、次の関心事にまい進する。
検証もほとんどしない。
悪の権化もしばらくたつと許される(というか忘れられる。あるいは新しいキャラクターに変身したりする)。

 しかしながら、この空気の先導によって何かしらが前に進む。
今回の新型コロナの新常態において、一気にリモートワークが進み、ジョブ型人事や、法規制でできなかったオンライン化がある意味融通無碍に進む。
深い思想など持たないし、全体や過去との整合性など何も考えない。
そして、これらの変化のうち、うまく状況にフィットしたものは一般化して定着するが、合わなければ中途半端なままにとどまり、いつの間にか立ち消えになる。

 この日本型の“いいかげんさ”を、私自身はずっと“絶対的に悪い”ことだと思ってきた。
しかし、案外これこそが、日本社会を進化させ、結果として驚くべき柔軟さで変化に対応する日本社会の原動力なのかもしれない。
生物の進化と同様、国家の進化も計画によるものよりも、行き当たりばったりの突然変異とその環境に適応した適者生存によって達成されているかもしれないのだ。
新常態下における山本七平『「空気」の研究』の再読は、まったく予想もしなかったような発見を筆者にもたらしたのである。
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2020年11月21日

「姑息すぎる」コロナ便乗リストラ&賃金カットは許されるのか

「姑息すぎる」コロナ便乗リストラ&賃金カットは許されるのか
2020年11月20日 PRESIDENT Online
人事ジャーナリスト 溝上 憲文

コロナの感染拡大が止まらない中、「人件費削減目的」ともとれる働き方改革を実施する大企業が増えている。
人事ジャーナリストの溝上憲文氏は「ジョブ型の賃金制度導入など表向きは多様な働き方を提案する改革でも、実のところは賃金ダウンやリストラと会社に都合のいい形になっているケースが見受けられる」という――。

■「コロナのどさくさ紛れ」働き方改革に名を借りた賃金カット&リストラ
新型コロナウイルスの影響で9月中間決算が赤字ないしは減収減益に陥った企業も多い。
そんな暗いニュースの中で、これまで遅々として進まなかった「働き方改革」がなぜか加速している。
だが、この動きはビジネスパーソンが素直に喜べる内容とは言えない。

働き方改革の本来の趣旨は、労働時間の削減などワークライフバランスの確保や多様な働き方を可能にすることで個人の能力の最大化と生産性向上を実現することだ。
国は、働き方改革により「中間層の厚みを増しつつ、格差の固定化を回避し、成長と分配の好循環を実現する」(首相官邸Webサイト)という、いわば賃金の底上げを目指している。

ところが、今進んでいる働き方改革の中には、その趣旨とは逆行するものばかりだ。
とりわけ「人件費削減目的」の改革が横行しているようだ。

下記は、そのおかしな働き方改革の典型例だ。
@ノー残業に名を借りた残業代カット
A週休3日制の導入
B副業容認企業の増加
Cテレワーク推奨の裏で推進するオフィス費用のカット
D「ジョブ型」賃金制度導入に伴うリストラの実施

■例えば残業代、会社の「固定費削減圧力」が増している
@から順番に解説していこう。
コロナ禍の業績悪化による残業代削減圧力が高まっている。
コロナ前はノー残業を推進するために、残業しなくても従来の残業代に見合う一定の手当を支給する先進的な動きも見られたが、今では残業代削減が至上命題になっている。
業績悪化に陥ると固定費で最も大きい「残業代」「採用費」「広告宣伝費」「交際費」を削るのが常套手段となっているが、建設関連会社の人事部長は「すでに中途採用を中止し、定時終業を原則とし残業代の削減も進めている。
大手も下半期から残業代の厳格化をはじめ採用費、広告宣伝費などの削減を行っている企業が増えている」と指摘する。
実際に所定外労働時間(残業時間)は今年4月に前年同月比マイナス30%に落ち込んで以来、徐々に回復しているものの9月もマイナス12%となっている(一般労働者、厚生労働省「毎月勤労統計調査」)。

もちろん残業が少なくなることはよいことだ。
しかし、労働組合の連合のテレワーク調査(6月上旬)によると……。
「通常勤務よりも長時間労働になることがあった」と答えた人が51.5%。
「残業代の対象となる時間外・休日労働を行った」人は38.1%(そのうち「勤務先に申告しなかった」人が65.1%、申告したのに「勤務先に認められないことがあった」人が56.4%もいた)。
本来支払われるべき残業代を申告しない、あるいは支払わないのは会社の固定費削減圧力が増しているとも考えられる。

■週休3日、4日制は人件費カット目的という見方がもっぱら
Aの週休3日制はどうか。
みずほフィナンシャルグループが2020年12月から銀行や証券、信託銀行など主要6社に勤める計4万5000人を対象に週休3日・4日制を導入することを発表し、話題になっている。
希望者による選択制で増えた休日を生かし、資格取得や大学院に通うなど自分磨きに利用することが期待されている。
過去にも佐川急便、ユニクロ、ヤフーが週休3日制を導入している。
ただし、休みが増えるといっても週の労働時間は変わらない。
もしくは休みが増えた分、給与が減るだけだ。

佐川急便やユニクロは週40時間の労働時間は変わらず、変形労働時間制を使って1日10時間働くことによって1日の休日を捻出する。
ヤフーは1日の労働時間は変わらないが、休みが1日増える分、2割程度給与が減額される仕組みだった。
どの企業も週休3日制といっても、1日8時間、週5日勤務という働き方の大枠を変えてはいないということだ。
みずほもヤフーと同じ仕組みであり、1日の休みにつき給与を20%削減し、週休3日の社員は月給が8割、週休4日だと6割まで減ることになる。
いかに給与が高い銀行員といえども、家族を抱えている世代で給与が2割、4割減ってもビジネススクールに通う余裕がある人はそんなにいないのではないか。
それでも休みが増えることで「多様な働き方」という働き方改革の趣旨には沿っているが、業績悪化のこの時期に導入することに疑念を抱く声もある。
住宅関連メーカーの人事部長は「みずほが発表した週休3〜4日などの制度の導入は、表向きはいろいろな働き方を提案する改革だと思うが、実のところは賃金ダウンであり、人件費カットという見方もでききるのではないか」と指摘する。
もともとメガバンク各行は2017年に将来を見据えたビジネスモデルの転換や省力化によって大規模なリストラ計画を発表し、みずほFGも1万9000人の人員削減を発表していた。
さらに2020年の9月中間決算の連結純利益は前年同期比25%の減益、21年3月期の通期も約22%の減益を見込んでおり、人件費カット目的の週休4日制という見方もあながち的外れとはいえないだろう。

■「生活は保障できないので副業で稼いでください」
一方、政府の副業推進策もあり、Bの副業容認企業がここにきて増加している。
副業を容認する政府や企業の表向きの理由は、個人のキャリアやスキルの幅を広げることで成長意欲を高め、自社の仕事にも良い効果をもたらすことが大きな目的だった。
しかし、コロナ不況で残業代カットやボーナス削減が相次いでいるなかで、収入補てんのための副業解禁も目立っている。
その典型例はANAだ。
冬のボーナスゼロや基本給の引き下げなど人件費削減を打ち出しているANAは、従来も認めていた個人事業主での副業から他社と雇用契約を結ぶ副業を認めることを検討している。
その理由として「年収が平均3割減となり、社員に理解を求めるために副業を拡大した」と報道されている。
つまり、会社としては今までの生活は保障できないので副業で稼いでくださいというメッセージだ。
ANAのように個人のキャリアやスキル云々とは関係のない、収入補てん・生活費補てんを目的とした副業容認が増えてくる可能性もある。

■企業は在宅勤務のパソコン、ワークスペース環境の整備の負担をしない
じつはCのようにテレワーク推進の裏で人件費を含む固定費の削減も進んでいる。
テレワークは通勤時間の分だけ自由な時間が増え、自由度の高い働き方として官民を挙げて推奨されているが、一方で従来のオフィススペースを削減し、フリーアドレス制(自席がない)を導入する企業が増えている。
当然、会社にとってはオフィス賃料が少なくてすむ上に、通勤定期代の支給を廃止し、実費精算に切り替えるなどコスト削減効果も大きい。
一方で社員は負担増になる。
テレワークの長期化によって在宅勤務に必要なパソコンや機材、机や椅子などワークスペース環境の整備の負担だけではなく、通信費や暖房を含む光熱費などのランニングコストも負担しないといけない。
そのための費用として「在宅勤務手当」を支給する企業もあるが、まだ一部の企業にすぎない。
労働基準法では、労働者に情報通信機器、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合は就業規則に規定する必要がある(89条第5号)。
就業規則は労使で話し合って決める必要があるが、じつはそうした規定がないままに社員に負担を強いている労基法違反企業が多いのが実態である。

■「テレワーク・ジョブ型」という働き方に反対の人は辞めてほしい
希望退職者募集などDのリストラは人件費削減効果が最も大きい。
リストラは退職費用など当期だけの“特損”(特別損失)で処理すれば、来期に人件費削減分の利益を生み出すための常套手段として一般化しているが、最近では大手企業のリストラが本格化している。
じつはリストラと同時に構造改革と称する賃金制度改革を実施する企業が多いが、とくに今回注目を集めているのが、年功賃金制度から職務給型(ジョブ型)賃金への移行だ。

ジョブ型は職務範囲や評価基準が明確なためにテレワークと相性がよいとされるため、まさに働き方改革を前面に掲げて導入する企業も少なくない。
企業にとってジョブ型は固定費である年功的賃金から脱却できるだけではなく、職務の見直しによる降格・降給も発生するなど人件費をコントロールできるメリットがある。
一方、社員は年功的な昇進・昇格などの人事異動がなくなるので、給与を上げるには努力して職務レベルを上げるなど主体的なキャリアの構築が不可欠となる。

そのジョブ型導入とリストラを絡めて実施したのが三菱ケミカルだ。
同社は10月に管理職にジョブ型人事制度を本格的に導入したが、一方、11月4日に50歳以上の管理職と再雇用者の2900人を対象に希望退職募集を実施すると発表した。
親会社の三菱ケミカルホールディングスのCFO(最高財務責任者)はジョブ型導入の狙いを「活力の高い会社にしたい」と述べ、希望退職募集の理由について「主体的に自分のキャリアを決めてほしい。
ご賛同いただけない方には転身を支援する。
入社した時はそうじゃなかった、という人のミスマッチを金銭的に解決する」と述べている(『朝日新聞』11月5日付朝刊)。
つまり、テレワーク・ジョブ型という新しい働き方に反対する人は、退職割増金を支払うので会社をやめてほしいと言っている。

これも働き方改革に名を借りた人件費削減策と呼べるだろう。
こうした一連の働き方改革は、賃金削減ありきで個人の働きがいや幸せにつながるものとは思えない。
ましてや冒頭に紹介した「中間層の厚みを増しつつ、格差の固定化を回避し、成長と分配の好循環を実現する」という国の目標にも逆行し、中間層の減少と格差の固定化を促進していく危険性もはらんでいる。
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2020年11月22日

コロナワクチン効果「90%以上」の誤解 数字の罠に要注意

コロナワクチン効果「90%以上」の誤解 数字の罠に要注意
2020年11月21日 NEWSポストセブン

 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。
心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。
今回は高い有効性が示され話題になっている新型コロナウイルスのワクチンについて。
 * * *  
新型コロナウイルス感染拡大の第3波が危ぶまれる中、アメリカの製薬会社で開発されているワクチンが90%以上という高い有効性を示したことが大きく報じられた。
もしかすると、来年のオリンピック前には日本でもワクチンの接種が始まるかもしれない、と期待させるには十分なニュースだろう。

 このワクチンを開発しているのは、新興製薬会社のモデルナと大手製薬会社のファイザーだ。
両社のワクチンには「メッセンジャーRNA(mRNA)」という新しい技術が使われている。
小学生の頃、学校の体育館でワクチンを打った記憶がある人も多いだろうが、それら従来の「BCGワクチン」は、病原菌やウイルスを弱体化させ、病原性をほぼ無くしたもの。
接種することで体内に抗体を作り出し感染に備えることが出来るが、この方法は病原体そのものを体内に入れるうえ、培養にも莫大な時間とコストがかかる。

 一方、mRNAワクチンは病原体そのものではなく、新型コロナウイルスの表面のたんぱく質を使って作られるため比較的安全で、ウイルスの遺伝子配列さえ分かれば素早く人工的にワクチンを作ることが出来るという。
 ファイザーは、最終段階の臨床試験で予防効果が95%と発表。
中間報告を行ったモデルナのワクチンも有効性は94.5%と高かった。

ファイザーのワクチンはマイナス70〜80℃で保存しなければならず、「そんな温度で保存できる冷蔵庫が日本のどこにあるんだ?」と話題になっていたが、モデルナのワクチンは2〜8℃で30日間の保存も可能という優れものらしい。

 94.5%と聞けば、かなりの安全性が担保されているという印象を受ける。
100人にワクチンを打ったら94人には効くと思いがちだが、ここが落とし穴だ。

発表によると、治験の対象者は3万人。
半数にワクチンを投与し、残り半数には偽薬が投与された。
だが、感染した95人のうち、ワクチンを接種していたのは5人、残る90人は偽薬を打っていたという。
 免疫学の第一人者である大阪大学名誉教授の宮坂昌之氏は、11月18日付けの毎日新聞ネット版で、90%以上というワクチンの有効性についてこう語っている。
「『有効性』とは、ワクチンを打たなかった人(非接種者)の発病率を1としたときに、
接種してその発病率がどのぐらいの割合に下がるかを推定したものを言う。
『9割の有効性確認』を言い換えると『ワクチンを打たずに発病した人の9割は、ワクチンを接種していたら発病しなかったはず』ということを表している」。

臨床試験で高い「予防効果」は確認出来たものの、「ワクチンを接種すれば94.5%の人が感染しない」と断定するものではないのだ。
 このように、同じ情報であっても、伝え方次第で捉え方や見方が変わることを「フレーミング効果」という。
ファイザーもモデルナも、「接種すれば90%以上の人は感染しない」のではなく、感染した人の90%は打っていれば感染しなかった“かも”ということなのだ。

 ワクチンの有効性の高さばかりに目を奪われるが、モデルナの治験者数はまだ3万人に過ぎず、サンプルサイズにこそ注意しなければならない。
人は数値を示されると、それを鵜呑みにしてサンプルサイズに目を向けない傾向があると言われる。
少数のサンプルによる結果でも、十分に正しいデータが得られていると思い込みやすいのだ。
まして、全世界で一日も早いワクチンの開発が望まれているのだから、希望のある明るいニュースは好まれやすく、数値ばかりが独り歩きしやすい状況でもある。

 もちろん、まだワクチンが完成したわけではないが、高い有効性が示され、副反応についても「明らかな安全性の懸念は報告されていない」と言われても、効果の持続性など分からないことは多い。
田村憲久厚生労働大臣は、11月13日の衆議院厚生労働委員会で、ワクチンについて「国民にしっかりと情報提供したうえで、本人の意思に基づき、それぞれの判断で打ってもらう」と述べた。

飛び交う情報をどこまで信じて良いのか判断するのは自分次第だ。
慎重になるかリスクを覚悟するか。
いよいよ接種が可能になった時、あなたならどちらを選択するだろうか。
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2020年11月23日

当選確率は「2000万分の1」!?それでも宝くじが買われる理由とは。

当選確率は「2000万分の1」!?それでも宝くじが買われる理由とは。
11/21(土)  LIMO

2020年もあとわずか、今年も「年末ジャンボ宝くじ」の季節がやってきました。
毎年多くの人が宝くじ売り場に並んでいるのを目にします。
にもかかわらず、高額当選を経験する人はほんの一握り。
ほとんど当たらない、つまり損をすると分かっていながら、毎年たくさんの人が宝くじを購入するのです。
これはどうしてでしょうか?
  そんな心理について、今回は行動経済学の「プロスペクト理論」から読み解いていきます。

「プロスペクト理論」って?
人は必ずしも、いつも合理的に判断しているわけではありません。
その場の感情や感覚で選択をすることも多いでしょう。
そういった人の心理や行動を説明したのが「行動経済学」です。

今回紹介するプロスペクト理論は、この行動経済学の中で最も代表的な理論の一つとされています。
プロスペクト理論は、行動経済学者のダニエル・カーネマン氏とエイモス・トベルスキー氏によって1979年に提唱されました。
プロスペクト(prospect)とは日本語で「見通し、予測」という意味です。
どうなるか分からない状況において、人がどう予測してどう行動するか? を明らかにした理論となります。
プロスペクト理論は「価値関数」と「確率加重関数」という2つの柱で成り立っています。

(1) 価値観数:価値の感じ方のゆがみを示したグラフ
(2) 確率加重関数:確率の感じ方のゆがみを示したグラフ

人は同じ大きさの「利得」と「損失」では感じ方が違う、ということを示したのが(1)です。
そして、得をするよりも損をする方が1.5〜2.5倍痛みを感じる、ということが分かっています。
加えて、人は高い確率は低く、低い確率は高く感じてしまう傾向があります。これを示したのが(2)です。

宝くじを買う心理は、この(2)確率加重関数から説明することができます。
当たる確率は低いのに、なぜ期待してしまうの? 普段私たちは「合格率○%」「成功率○%」「降水確率○%」などと、さまざまな確率に触れて過ごしています。

数字で示されることで分かりやすいと感じますが、実は正しく理解できているわけではありません。
先ほど述べたように、プロスペクト理論の確率加重関数では、以下の傾向が示されています。

・高い確率は、実際よりも低く感じる(過小評価する)  
・低い確率は、実際よりも高く感じる(過大評価する)
例えば、90%成功する手術と言われても、残りの10%の失敗が大きく見えてしまいます。
あるいは、80%の社員はリストラしないと告げられた場合、数字以上の不安を覚えるのではないでしょうか。

一方で、事故や大きな病気、自然災害に対する“万が一”は、実際に起こる確率が非常に低くても、その可能性を大きく考えてしまいます。
だから多くの人は備えとして保険に加入するのです。
また、天気予報で降水確率20%の日に、折りたたみ傘を持っていく人は珍しくありません。
このように人は、確率という数字に対して、正確に捉えず主観的に感じているのです。

年末ジャンボ宝くじ1等の当選確率は2,000万分の1、つまり0.000005%。
こう見ると、ほぼ0とも言えるほど極めて低い確率です。
しかし宝くじを買う人は、この数字(客観的確率)を実際よりも高く見積もっているからこそ、その機会を購入するのです。

「もしかしたら当たるかもしれない」「誰かは当選するのだから」と、実際の確率よりも大きな期待をしてしまう…それが人の心理なのです。

「2000万分の1」を何かにたとえると・・・
ところで、「2000万分の1」とは、例えるならどれほどの感覚でしょうか。
総務省統計局「日本の統計2020」によれば、2018年推計人口は東京都が約1382万人、千葉県が約626万人となっています。
つまり、東京と千葉に住む全員を足しておよそ2000万人、その中でたった1人が選ばれる…それが2000万分の1という確率です。
(※1) そう考えると、「夢の1等当選」は非常に難しいということが分かるでしょう。
しかし、1等とは言わずともせめて1000万円、いや100万円でも当たれば! という人も多いはずです。
確かに2等、3等となるにつれて当選本数は増え、当選金を手にできる確率は上がります。

ただし一つ知っておくべきことは、宝くじの還元率は「当せん金付証票法」という法律で、50%を超えないよう定められているということです。
したがって、最初から半額程度しか還元されないように設計されています。
この還元率は、他の公営競技に比べてもかなり低い数字です。
(※2) 1枚300円で購入したとしたら、その時点で戻りが期待できる金額(期待値)は150円未満となります。
理論上は、買えば買うほど損をする仕組みといえるでしょう。

しかし、人の心理として当選確率を高く見積もる傾向があることは、先に述べた通りです。
客観的な確率や期待値から判断することなく、毎年宝くじを買ってしまうのは、やはり「一攫千金のチャンス」という夢の大きさが数字を惑わしているのかもしれません。
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2020年11月24日

論点.「まず自助」に違和感

論点.「まず自助」に違和感
毎日新聞2020年11月20日 東京朝刊

 菅義偉首相は臨時国会の所信表明演説で、「自助・共助・公助」を目指す社会像とした。
しかし、自助が1番目に提示されたことに、「困ったことがあっても、まずは自分で何とかしろと言われているようだ」と反発の声も上がる。

自己責任だけでは解決できない課題が増える中、自助・共助・公助の望ましいバランスを考える。

「皆で助ける」なぜ言えぬ 
奥田知志・認定NPO法人「抱樸(ほうぼく)」理事長
 菅首相の掲げる「自助」は、「まずは自分で何とかしろ」と聞こえる。
それでダメだったら国が支えるから安心しろ、と。
言わば「ダム決壊論」。
「自助」というダムが決壊したら「共助」のダム、すなわち周囲で支える。
「共助」のダムが決壊したら、最後に「公助」(国)のダムがある、と。しかし困窮者支援の現場から見ると、これは机上の空論だ。
 なぜなら「公助」の対象となる時にはすでに「自分」も「周り」もボロボロに傷ついているから。
公助を後回しにした結果、困っている人も地域も崩壊し、二度と立ち上がれなくなってしまう。
公助を出し惜しみするほど自助の成り立たない社会となってしまう。

 菅首相の最大の過ちは「助ける」ということに序列と順番を持ち込んだ点だろう。
「まず自助」であってはいけない。
「自助」を成り立たせるためにこそ、同時に「共助」「公助」が必要なのだ。
 国や周囲に支えられた人々が、今度はほかの誰かへの「共助」「公助」を支えていく。

自助・共助・公助に順番はない。
三つセットであるべきで、その根底にあるのは「人間は一人では生きていけない」という普遍的な思想だ。
 コロナ禍は全世界を「当事者」にした。自分や自分の国だけが助かれば問題解決とはいかない。
しかし社会には「自分や自分の家族だけでも何とか助かりたい」という風潮が広がっている。  
「自分だけ」が肥大化する時代に「まず自助」と言ってどうするのか。

私が首相ならこう言うだろう。
「社会の皆で助けるから、絶対に心配しないでください。
思いあまって自死を選ぶようなことはしないでください。
この国、いや世界中が助け合わねば、コロナ禍は乗り切れませんから」と。

 32年前からホームレス支援を始めた。
その中で学んだことがある。
それは「自立は孤立ではない」ということ。
家がないこと、経済的な困窮の問題を解決できても、人間は社会的に孤立している限り、「自立」が困難になる。

 路上生活を脱し、アパートに入り、就職できた男性の家を訪ねると、彼は部屋にぽつんと座っていた。
その姿が、駅の通路で段ボールを敷いて座っていた姿とかぶって見えた。
「自立」の意味を与えるのは他者の存在。
人間は、あの人が支えてくれたから、あの人を支えたいから、だからこそ、生きていこうと思えるのだ。

 菅首相が「まず自助」と言った時、そこに「他者」の姿が見えないと感じた。
「自分で何とかしろ」と国に切り捨てられ、孤立する人々の姿が見える思いだった。
共助や公助を後回しする社会は、人と人との支え合いやつながりをおろそかにする社会へとつながっていく。

国が「まず自助」と言うことで、日本はますます「助けて」と言えない社会になっていく。
 菅首相は「たたきあげ」だという。
地盤も看板もカバンもない東北地方の若者が首相に上り詰めるまで、きっと誰より多くの人々に支えてもらってきたのではないか。
「俺は周囲に助けられ、ここまで来た。だからこの国を助け合える国にしたい」となぜ言えないのか。
【聞き手・小国綾子】

共助でしか解けぬ問題も 寺脇研・元「新しい公共」円卓会議委員
 菅首相は、まず自助、次に共助、最後に公助の順番で語るが、本当に共助を意識しているだろうか。
一般的な議論は、「公助では財政がもたないから自助でやれ」と「自助よりも公助。大きな政府にしろ」の二者択一で、共助はまるで刺し身のつまである。

 私たちが約10年前の民主党政権下で、「新しい公共」という言葉で共助を論じた前提は、「自助は当然」だった。
我が身が可愛くない人はいないからだ。
公助も当然。
セーフティーネットのない社会はあり得ない。
そのうえで、共助でしか解けない問題もある。
 代表例が、子どもの問題(貧困や虐待、育児放棄など)だ。
子どもに自助は無理。
親の責任はあるが、金銭や精神面の問題で責任を取れない親もいる。

公助は限界がある。
生活保護ならば、審査のためにプライバシーに踏み込んだり、子どもがアルバイトをしたら打ち切られかねなかったり。
 私が企画して2月から上映している映画「子どもたちをよろしく」は、子どもの貧困を扱った。親はギャンブル依存症で、給食費の免除も生活保護も知らないから申請しようがない。
その子どもが苦しむのは、自己責任だろうか。
 ケースワーカーなどの充実で、公助につながりやすい環境を広めなければならないのはもちろんだ。
ただ、たとえば今はプライバシーの関係で、学校が家庭訪問をできなくて児童の生活がわからず、児童相談所に通報が来る頃には相当ひどい状況になっていたりする。
NPOやご近所などによる、問題深刻化前の助けも必要なのだ。

 たとえば、アパートの隣人がシングルマザーならば、「大変だね、なんかあったら子どもを預けてよ」と言えないだろうか。
子どもをいくら愛していても、孤立して疲れ切って、育児放棄や虐待に走る可能性はある。
自分から声を上げるのは難しい。
周囲の一言だけで、その可能性を減らせるかもしれない。
共助は、こんな身近なところから始まる。
 子どもの問題に限らず、もっと「手軽」な共助もある。

コロナ禍で、経営不振になった映画館や飲食店のクラウドファンディングが爆発的にはやった。
給付金の10万円をNPOなどに寄付した人も多い。
民主党政権が今のNPO税制を作って、NPOへの寄付がかなりしやすくなった。
去年から、休眠口座のお金を社会団体が使えるようになった。
この話も、民主党政権下の「『新しい公共』円卓会議」から始まった。

NPOへの参加・支援は、以前と比べものにならないほど容易になっている。
 弱者に冷淡な態度が目立つ今の政府に、今さら公助の大幅拡充を求める気にはならないが、自助の強調だけはしないでほしい。
私が子どもの頃、日本の人口構成は子ども1人に大人2人だった。今は子ども1人に大人が7人。なのに子どもが虐待死や餓死をするのは、明らかにおかしい。
生活に余裕のある大人たちが、特に子ども問題で共助の担い手になってくれれば、財政支出を増やさずとも多くの社会問題を解決する糸口がつかめる。

子ども問題の背後には、必ず、親など大人の問題があるのだから。
【聞き手・鈴木英生】

助け合いの後押し強化を 千正康裕・株式会社千正組代表
 昨年まで18年半勤めた厚生労働省で、社会保障や労働政策を担当してきた。
「自助・共助・公助」は、戦後一貫して政府が維持してきた日本の社会保障制度の基本的な考え方であり、全く新しいキャッチフレーズではない。
にもかかわらず、「自助を強調するのは弱者に冷たい新自由主義ではないか」という声が上がった。

 誰もが「失業」「病気」「高齢で働けなくなる」など人生の中で大きなリスクに直面する時があるが、こうしたリスクを支えるために、雇用保険、医療保険、年金などの制度がある。
これらは支え合いを「社会化」したもので、皆が納める保険料を中心とした「共助」と言われる。

共助でも救えない場合、最後のセーフティーネットとして、税金を活用した生活保護、福祉などの「公助」がある。
 日本はこのような重層的なセーフティーネットを、高度経済成長期に築いてきた。
共助も公助も、分厚い中間層が存在し、税金や保険料を支払ってくれなければ実現できないのだから、菅首相が話した「自助・共助・公助」という順番は、私は間違ってはいないと思う。
 ただし、忘れてはならないことがある。

「自助」とは「誰の世話にもならずに一人で生きる」ということではない。社会保障制度が整備されてきた時代は、家族、親類、職場、地域などさまざまな人に支えられて、何とか自助努力が成り立ってきたという前提があった。
 今や核家族化が進み、未婚・離別・死別による一人暮らしが増え、終身雇用も崩壊して非正規雇用も少なくない。
地域のつながりも希薄になって、一人で頑張るしかなくなり、かつては支え手だった若い世代にも、ひきこもり、ホームレス、ワーキングプア、一人親など困りごとを抱える人が出てきた。

正社員も所得が上がらず、子育てや親の介護などもあって決して楽ではない。
 このように「自助」を支えていた社会の機能が壊れる中で、いきなり「自助」と言われると、突き放されたと感じるのではないか。
もちろん、経済の低成長や少子高齢化などを背景に社会保障そのものの持続可能性や世代間の公平性への疑問を感じている人も少なくないだろう。

 私は「自助が先か公助が先か」ではなく、「今の時代に合わせた形で自助を支え直す」という視点が必要だと考える。
つまり、自助と共助の間にあった「互助」だ。
地域やコミュニティーの人のつながり、助け合いを後押しする取り組みを強化すべきだ。
NPOなどの民間の活動や市民参加、テクノロジーの活用も重要になる。
 たとえば、60歳代の元気な高齢者が75歳以上の後期高齢者の生活支援をする地域が出てきたり、子育て中の女性向けに保育園の迎えを支え合うアプリが開発されたりするなど、新しい取り組みも出てきた。

生活困難者に伴走するNPOも増えているし、政府もこのような活動を支援するようになってきた。
自助は「一人で生きていけ」ということではない。
経済政策や制度の改革に加えて、「互助」にも目を向けてほしい。
【聞き手・永山悦子

次の次に政府の出番
 菅首相は、自民党総裁選に出馬する際の政策として「自助・共助・公助」を掲げ、経済的、社会的に弱い立場の人たちに波紋が広がった。臨時国会の所信表明演説でも、同じように「目指す社会像は、『自助・共助・公助』そして『絆』」と述べ、「自分でできることは、まず自分でやってみる。そして、家族、地域で互いに助け合う。その上で、政府がセーフティーネットでお守りする。そうした国民から信頼される政府を目指します」と訴えた。
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2020年11月25日

詐欺に騙されないためには…「彼らと一流営業マンは紙一重」元知能犯担当刑事に聞く

詐欺に騙されないためには…「彼らと一流営業マンは紙一重」元知能犯担当刑事に聞く
11/24(火) 日刊ゲンダイ

 不況になると詐欺がはびこると言われる。
このような詐欺や儲け話にひっかからない術はあるのか。
知能犯罪と闘ってきた森透匡氏はこう指摘する。
「持続化給付金の不正受給などのようにわかりやすい詐欺はありますが、詐欺をやる連中はその都度ネタを変えます。
なにを専門ってことはありません。
今でも仮想通貨などの詐欺話は続いていますしね」

 典型的なものが一獲千金を狙う投資話だ。
「投資話は深入りしないことが一番です。
それでもという人には、あえていくつかアドバイスをしましょう。
まず誰が投資話を持ってきたかが大事。
詐欺師グループは詐欺被害者のリストを持っています。
信じられないでしょうが、騙される人はホントに何度も騙されるんですよ。
信用できない人からの話には絶対に乗らないことが大前提です」

 ただ、信用している旧知の人でも、その人が話を理解していない場合や騙されている場合があるので要注意だそうだ。
そんな場合にどうしたら詐欺話を確認できるのか。
「話の根拠を把握することです。
あなたは実際にそれをやっているんですか?
 どういう利益が出た実績があるんですか? 
と質問をして相手の話を自分自身で確認すること。
私も投資はしていますが、投資って結局は自己責任になりますよ」

 インターネットで調べることは意味があるのか。
「ネットにはいろいろな情報が書いてあります。
ある投資話が危ないと否定をしていても、その記事があなたをひっぱりこむ目的のために書かれているってことがよくあるんです。
ネットだけで正しい情報かどうかを判断するのは難しいです」

 確かに各種不正取得やダイソン詐欺のように、生身の人間を介さないネット完結型の詐欺も目立つ。
「ともかく最終的な判断をする前に誰かに相談をすることです。
詐欺師は口がうまくて、よくしゃべる。
どんな質問をしてもなんとなくすべて答えてきます。
しかも人間に慣れていて、コミュニケーション能力がとても高い。
詐欺師と一流営業マンは紙一重と言われるゆえんです。
そして第三者に相談できないような状況や心理状況に持ちこみます。
振り込め詐欺はまさにそうですよね。
そして誰にも相談できないまま気づけばおカネを渡しています。
とにかくいったん立ち止まって気づくということが大事です」
 欲が出ると自分で秘密を抱えてしまうもの。
公的機関など、どこかに相談することが大事なのだ。

▽森透匡(もり・ゆきまさ)
 一般社団法人日本刑事技術協会代表理事。
某警察の元警部。詐欺・横領・贈収賄事件を扱う知能犯、贈収賄事件を20年の間担当。
東日本大震災を契機に独立。
毎年180カ所の講演をこなしている知能犯罪対策のプロ。
近著に「ウソや隠し事を暴く全技術」(日本実業出版社)。
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◆有名大学生も持続化給付金の不正受給
 緊急性があることからネット上の手続きだけで最大100万円が支給される持続化給付金に不正受給が相次いで発覚している。
不正受給を繰り返し1億円以上受給した神戸市の会社役員には10月26日に懲役3年の求刑。
 10月21日には関西有名校、同志社大学の学生ら2人が組織的に持続化給付金を不正受給したとして逮捕。
学生らはサークルを使って仲間を勧誘していたともされる。
「朝日新聞」電子版(10月21日配信)によれば、愛知県警が相談を受けた申請者の半数以上が10代から20代だったという。

◆Go To トラベルの電子クーポン不正取得
「Go To トラベル」の電子クーポン券はチェックインする日の午後3時に発券される。
千葉県のホテルでは大人8人、5連泊、総額62万9200円分の予約があった。
午後3時に宿泊費の15%にあたる電子クーポン9万4380円分が発行されたものの予約者はついに現れなかった。
制度の隙間をついたネット詐欺とみられる。

◆ダイソンの偽サイト詐欺
 高級掃除機ダイソンの偽サイトが発覚。
格安だと思わせて買わせ、さらにニセ商品を間違えたと送りつけて油断させる。
その間に入金は完了させてしまうという手法のネット詐欺。

◆オーナー投資詐欺? 
  高級車専門カーシェア会社破綻
 ローンを組んでポルシェやメルセデスなど高級車のオーナーとなり会社に預け、ローン支払い分と同額のレンタカー収益を得るというオーナー系投資話。
しかし運営会社(埼玉県)の破綻により600人以上が数百万円から数千万円のローンを抱えた。
運営会社は新車ではなくコストの低い中古車を購入していた手口も明らかになっている。
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2020年11月26日

集うシニアの気持ち

香山リカのココロの万華鏡
集うシニアの気持ち
毎日新聞2020年11月17日

 病院の昼休み、若手の医師がポツリと言った。
「あーあ、今年はいろんな誘いを全部、断ってるんですよ。
高校の同窓会とか趣味の集まりとか。
医者が“密”なところでコロナに感染するのはマズいですからね」
 彼が言うには、帰り道にある居酒屋や中華料理店はけっこうにぎわっているそうだ。
「お客さんの多くはシニアのグループなんです。
あの人たちは、感染のリスクはないと思ってるんですかね?」

 仕事に追われ、さらにプライベートでも会合に参加せずにがまんしている若手医師は、平気で会食をしているグループにちょっといらだちを覚えたのかもしれない。
 すると、その場にいた私と同世代の医師がこんなことを言った。
「そうか、今年は先生、本当にたいへんだったね。
でも、先生たちは未来があるから、これからいくらだって楽しいことがあるだろう。
この年になると“いま同窓会を中止にしてしまったら、この先、もう集まる機会はないんじゃないか”って考えちゃうんだよね」
 そのやり取りに私は思わず噴き出してしまった。
たしかに、若い人たちがパーティーやスポーツをがまんするのはつらいことだろう。
とはいえ、彼らには先がある。
新型コロナウイルス感染症が収束したあとに、これまでの分を取り戻すことだって十分にできる。

 それが50代、60代以上になると「今年はこの行事をやめておこう」と思ったときに、ふと頭の中でこんな声がするのも事実だ。
「本当にやめていいの? いまやらずにいて、何年かあとでできるようになったときには、自分がすっかりおとろえているかも」
 もちろん、無理をして旅行や宴会をやるのは、決して良いことではない。
とくに高齢になればなるほど、感染のリスクも考え、慎重に行動するにこしたことはない。
ただ「全面的に集まりを中止するのは残念だから、人数を少なくして短時間だけ会いますか」と言って、お互いの顔を見ながら小規模な会食をする人たちの気持ちも、よくわかる。

 これから忘年会やクリスマスパーティーのシーズン。
いつも通りというわけにいかないのは明らかだ。
若い人たちにとっては、この季節の予定が減るのは、さぞ残念だろう。
 でもシニアだって同じ、いやシニアこそ「この機会を逃したら……」と思っていることを若い人たちにも知ってほしい。

来年こそは気軽に集まり、食事や会話を楽しめる年になるよう願っている。(精神科医)
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2020年11月27日

「人は人、自分は自分」言葉の意味から学ぶ人生の法則とは

「人は人、自分は自分」言葉の意味から学ぶ人生の法則とは
2020.11.25 Grapps

座右の銘として「人は人、自分は自分」という言葉がありますが、この言葉をただ知っているだけでは意味がありません。
心から自分と他人を分けて考えられるようになるために、以下ではこの言葉の意味をより掘り下げて考えていきます。

人と違っても良いという意味
自分だけが他の人と違う物を好んだり、選んだりする事が続くと「自分も他の人と同じものを好きにならなければ」と考えてしまう事は珍しいことではありません。
人は群れで生きる生き物なので、どうしても「周囲と同調できなければ不安に感じてしまう本能」が存在するからです。
しかし同調することと自分のやりたいことをやるというのは時には反発してしまうものです。
そんな時は自分を殺して同調するか、同調を拒んで孤独だけど自分のやりたいことをやるかという選択になってしまいますし、どちらを選んでも完全に満たされることは無いかもしれません。
そんな時は「人は人、自分は自分」と考えることで無理に共感する気持ちを抑える事ができます。
自分のやりたいことを選んだ方が気持ちはスッキリしやすいでしょう。

人それぞれに優れている部分が違う
自分も精一杯頑張っているのに、どうしても他の人のように良い成果を出せなかったりする事はよくあります。
しかし、それは人によって得意分野が違うだけであり、その人が何にどれくらい練習時間を割り振ったか、というだけの話でしかありません。
どんなに優れている人にも苦手とする分野は存在しますし、別分野の勝負になればあなたはその人に圧勝するかもしれません。
なにか一つの勝負で負けたからと言って「自分はダメなんだ」と思うのはやめましょう。

「人は人、自分には自分の得手不得手がある」ということを忘れないようにし、様々な分野で競えばあなたのほうが優れている部分もあるはずだと思うようにしましょう。

人の持っているものを羨む必要はない
例えば他の誰かがおしゃれな物を好んでいたり、おしゃれな料理を毎日のように食べていたりという話を聞くと、羨ましいな、自分も同じものが欲しいなと思うかもしれません。
しかし、物の価値と言うのは人によって大きく変わります。
周りの人やテレビなどで持て囃されているから欲しくなるものの、実際に手に入れると大して魅力を感じない物というのは実は非常に多くあります。

今あなたが日常的に使っている物というのは、あなたが無意識に「これが自分に最適だ」と感じているからこそ手に入れたものです。
「人は人、自分は自分」に最適なアイテムや物があるため、高価なものを持っている人を羨んでも仕方有りませんし、高くても自分にとって使いやすく良い物だとは限らないのです。

人の基準に振り回されず自分らしく生きよう
「人は人、自分は自分」という言葉は「人はみんな個性や好みがあり、無理に同じになろうとしても不毛で実りがない」という注意喚起でもあります。
周囲の人や噂に惑わされて自分が本当に望んでいるものを見失うことが無いように、誰かを見て羨ましく思った時は「人は人、自分は自分」という言葉の意味を思い出しましょう。
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2020年11月28日

「右派」vs.「左派」では、もはや世界は読み解けないワケ

「右派」vs.「左派」では、もはや世界は読み解けないワケ
11/27(金) Voice

今、世界中で大分断が進んでいる。
しかも様々な思想が入り乱れ、対立構造が非常に複雑にわかりづらくなっている。
そこでカリスマ予備校世界史科講師であり、時事問題に詳しい茂木誠氏に、現在の複雑な世界情勢をシンプルに整理する視点を教えてもらった。
※本稿は、茂木誠『世界の今を読み解く「政治思想マトリックス」』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

なぜ、思想のねじれ現象が起こるのか
「朝日新聞は、左がかっている」とか、「産経新聞は、右寄りだ」とよく言われます。
どうやら、政治思想を説明するうえでもっともベーシックな対立構造が、「右派」VS.「左派」ということのようです。

そもそも政治思想において、何が「左」で、何が「右」なのでしょうか。
たとえば「左」の人たちは日本政府に対して、「女性や外国人の人権を守れ!」「国旗や国歌を押しつけるな!」「軍国主義反対!」「国家より個人が大切だ!」と大きな声でおっしゃいます。
「左」の中でも一番「左」が共産党であることは、共通認識になっていると思いますが、その共産党が長期政権を維持している中国で、少数民族が抑圧され、愛国心を徹底教育され、年10%の軍備増強を続け、共産党が独裁権力を保持し、個人の人権が無視されている。
このことに対して、「左」の人たちが中国大使館前でデモをやったり、反対署名活動をやったりするのを見たことがありません。
ということは「左」の本質は、中国共産党のような一党独裁体制を、是とするということでしょうか。
普段言っている「人権!人権!」とどのように整合性をつけているのでしょうか。
アメリカの二大政党は、「右」の共和党と「左」の民主党です。
共和党は北部の大資本家の支持をバックに成立し、これに対する民主党は労働者の政党として、社会保障政策や労働者保護法の制定など、弱者の側に立った政策を実施してきた─―と世界史の教科書には書いてあります。

歴史的には、これは間違いではありません。
ところが2016年の大統領選挙では、「右」と思われてきた共和党のトランプ大統領が、「アメリカ人の雇用を取り戻す!」と訴え、もともと民主党支持だった労働者層の支持を受けて当選しました。
民主党と共和党の役割が、入れ替わったようにも見えます。
同じような現象がヨーロッパ諸国でも起こり、「右」と思われてきた政党が大躍進しています。

いったい、何が起こっているのでしょうか。
思想の大逆転「ルーズヴェルト大統領のリベラル宣言」 本来「右派」は、共同体(社会や家族)の伝統や秩序を重んじ、急激な変化を求めない考え方です。
「保守主義」と言ってもいいでしょう。
社会や家族を守ることが最高の価値であり、個人はその一員として頑張ろう、という立場です。
これに対して「左派」は、「共同体より個人。個人の権利と自由を制限するような伝統は、根本的につくり変えてしまえ」という考え方。

改革や進歩を好み、言葉の本来の意味で「リベラル(自由主義者)」と呼ばれる人々です。
ところが、20世紀初頭のアメリカで大転換します。
世界恐慌に喘いでいた当時のアメリカでは、民主党のフランクリン・ルーズヴェルト大統領が登場し、実験的な経済政策を次々に打ち出していきました。
「ニューディール政策」です。

企業間で協定(カルテル)を結ばせ、生産量や価格をコントロールする。
政府が農家に対して生産量を制限させ、補助金を支払う。
大規模な公共事業を行い、政府が失業者に職を与える……。

これらの政策は、「ニューディーラー」と呼ばれるルーズヴェルト大統領の側近たちによって立案、実行され、25%の失業率を15%まで下げるという成果を残しました。
彼らの多くは社会主義者でしたが、国民はこれに熱狂します。
いずれにせよ、この政策はアメリカの伝統的な自由経済をストップさせる抜本的な取り組みでした。
このニューディールに対して、財界から疑問の声が上がりました。

「政府の強力な権限によって経済を指導する。
果たして、これが自由主義経済と呼べるだろうか。
アメリカは自由の国だ。
経済活動の自由は、合衆国憲法で保障されている。
ニューディールは憲法違反だ!」

実際、彼らは最高裁に提訴し、企業間カルテルは憲法違反という最高裁判決を勝ち取りました。
思想史のうえで特筆すべきは、この時ルーズヴェルト政権が、「我々こそがリベラルだ!」と主張したことです。

ここで、自由主義(リベラル)とは本来、どういうものだったのか、もう一度振り返ってみましょう。
リベラルの思想は、もともと「個人の自由と権利が最大限に尊重される」自由主義の考え方でしたね。
ところが、ルーズヴェルト大統領がリベラルの意味を逆転させてしまいました。
彼の言い分はこうです。
「自由放任の古典的な自由主義が貧富の差を拡大し、個人を不幸にした。
国家が責任を持って、個人の生活を守るべきだ。
社会保障をしっかりと提供し、一人ひとりの生活の面倒を見るべきなのだ。
これが本当のリベラルだ」と。

ここに「リベラル」の逆転現象が起こりました。
今日、「リベラル」という言葉は、手厚い社会保障、これを実現するための強力な政府と巨大な官僚機構(大きな政府)、重い税負担と、一人ひとりに富を平等に分配するシステムのことを指しますが、これはルーズヴェルト政権に始まるのです。
ニューディール政策が政治思想史に与えた影響がいかに大きかったか、これでわかるでしょう。

「右派=国家」「左派=個人」の矛盾が混乱を生む
大きな政府を志向する民主党的、ルーズヴェルト的リベラルは、個人の自由を最大限に尊重する古典的リベラルとは真逆です。そのため古典的リベラルを志向するアメリカ人は、「リベラル」という言葉を嫌い、新しい言葉を使い始めます。
それが「リバタリアニズム」です。

この思想を支持する人々を「リバタリアン」と呼びます。
リバタリアンは、あらゆる国家の統制や規制に反対する人たちです。
銃は規制するな、重税も反対、福祉も必要ない、国家は治安維持だけやっていればいい。
とにかく、個人の生活に干渉するな、という「小さな政府」を志向する、究極の自由主義者です。

アメリカでは世界恐慌以降、左派であるリベラル(民主党)が、大きな政府による平等分配を志向するようになりました。
すると今度は、対抗する右派の保守(共和党)が、ニューディール政策に反対します。
「あんな政策は、ソ連の官僚統制経済となんら変わらない。
国家権力の強大化は、個人の抑圧を招く。我々は認めない」と。
そして、「個人の自由を尊重し、福祉は最小限に抑えて減税を要求する。小さな政府を求める」というリバタリアンの思想が生まれました。
これは19世紀以来の開拓農民の思想であり、アメリカにおける「保守主義」「右の思想」なのです。

このように、リベラルと保守の意味が逆転したまま現在に至り、日本でも直輸入されて使われています。
リベラルの人たちが、口を開けばやれ人権だ、国家統制をやめろ、と主張しながら、目指している方向は大きな政府、巨大な官僚機構、統制経済であり、中国の独裁と人権抑圧の体制には口をつぐむのはこういうわけです。
こうした矛盾は、リベラルと保守のねじれが原因です。
      茂木誠(駿台予備学校世界史科講師)
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2020年11月29日

インフルエンザ報告数まだ極端に少ない 12月から本格的な寒さへ 要注意

インフルエンザ報告数まだ極端に少ない 12月から本格的な寒さへ 要注意
11/28(土)  tenki.jp

厚生労働省によりますと、47週(11月16日〜22日)のインフルエンザ報告数は前年同時期に比べて極端に少なくなっています。
ただ、12月以降は本格的な寒さが予想されるため、感染症に注意が必要です。

インフルエンザ報告数
 まだ極端に少なく 厚生労働省が11月27日発表した「インフルエンザの発生状況」によりますと、47週(11月16日〜22日)のインフルエンザの指定医療機関の報告数は「46」と前年同時期の総数「15,390」に比べて1%未満と、まだ極端に少なくなっています。
感染症対策などの効果が考えられ、47週だけでなく、今年は極端に少ない状況が続いています。

12月以降、寒さが本格化
ただ、油断はできません。
今後、本格的な寒さが予想されます。
最新の3か月予報では12月の平均気温は全国的に平年並みで、師走らしい寒さになるでしょう。

1月は北日本(北海道・東北)では平年並みか高いですが、東日本(北陸・関東甲信・東海)は平年並みに、西日本(近畿〜九州)や沖縄・奄美では平年並みか低くなりそうです。
西日本を中心に寒気が流れ込みやすくなるでしょう。

2月は北日本は平年並みか高いものの、東・西日本、沖縄や奄美では平年並みの予想で、寒さは続きそうです。
今年は去年のような記録的な暖冬にはならず、冬らしい寒さになるでしょう。
太平洋側では空気の乾燥する日も多くなりそうです。

インフルエンザだけでなく、今年は新型コロナウイルスの感染拡大も心配されますので、体調管理には一段と注意が必要です。
             日本気象協会 本社 吉田 友海
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2020年11月30日

仰向け、うつ伏せ、横向き、どの姿勢で寝るのが一番いいの? 医師が回答

仰向け、うつ伏せ、横向き、どの姿勢で寝るのが一番いいの? 医師が回答
11/28(土) ニッポン放送

「睡眠時の姿勢」に関して、ニッポン放送「健康あるあるWONDER4」(9月7日放送)で解説された。
番組に寄せられた健康の疑問『夜寝るとき、小学生の子どもと一緒の布団で休んでいます。
ふと気になったのですが、人間は仰向け、うつ伏せ、横向き、どの姿勢で寝るのがいちばんいいでしょうか?』に対して、日本健診財団の監修のもと、以下のように解説した。

「仰向け、うつ伏せ、横向きの姿勢には、それぞれメリット・デメリットがあります。

仰向けのメリットは、全身を大きく伸ばせるために血液がめぐりやすいこと、また寝具から体が受ける圧力が分散されるため、体への負担が小さくなることなどが挙げられます。
一方、仰向けのデメリットは、顔を上げて寝ることで空気の通り道である気道が狭くなり、いびきをかきやすくなることです。
寝ているときに短時間呼吸が止まってしまう『睡眠時無呼吸症候群』につながるリスクも、仰向けでは考えられるため注意が必要です。

横向きのメリットは、仰向けに比べて気道が狭くなりにくいです。
それから、いびきをかきにくいという点が挙げられます。
デメリットは、片側だけに体重がかかるため、体の歪みを引き起こしてしまうことです。

最後にうつ伏せは、乳幼児には突然死との関連が考えられるため、厳禁です。
息をするために首をひねって、顔を左右どちらかに向けなければならず、歯並びへの影響なども心配されます」

協力:医療ライター・横井かずえ
監修:日本健診財団
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