「ネガティブな想像」実現する確率は1割のワケ
それでも人々はなぜ不安になってしまうのか
2020/12/04 東洋経済オンライン
星 渉 : 作家・講演家・起業家プロデューサー /
前野 隆司 : 慶應義塾大学大学院
システムデザイン・マネジメント研究科教授
私たちの幸福度に影響を与える感情は3つあります。
@ポジティブ感情
Aネガティブ感情
B人生満足度
3つそれぞれが影響するから、ネガティブ感情を感じる機会はできる限り少ないほうがいい。
ネガティブパワー「100」よりも、ネガティブパワー「1」のように、小さいほうがいいのは明らかです。
さまざまな幸福学の研究で、ネガティブ感情は「心配事や不安」が影響することがわかっています。
つまり、心配なことや不安なことが多かったり、大きかったりすると、よりネガティブになりやすいということです。
では、ここで問題です!私たちの心配事は、どのくらいの確率で実際に起きてしまうでしょうか?
A:90%以上
B:60%以上
C:40%以上
D:10%以上
答えは、Dの10%以上。
正確に言うと、私たちの心配事が実際に起きるのは 13%の確率でしかないのです。
「降水確率13%」だったら、あなたは傘を持って出かけますか?
そう、「まっ、大丈夫かっ」と傘を持たなくてもいいレベルでしか、私たちの心配事は実際には起きないのです。
ネガティブ感情は消そうとするほど大きくなる
しかも、13%の実際に起きた心配事のうち80%は「自力で解決できるもの」だと、国際認知療法学会会長のロバート・L・リーヒ博士の研究は明らかにしています。
つまりは、本当に解決できない心配事が起きる確率はたった3%となるわけです。
降水確率3%で傘を持って出かけますか?
そう考えるだけでも、心配事を気にしなくなりますよね。
ネガティブ感情は「消す」ではなく「記録する」。
不安、心配、緊張などネガティブな感情を消そう〞とする人がいますが、その考え方はNG。
ネガティブな感情は消そうとすればするほど大きくなります。
ネガティブな感情を感じたら、記録を取ることが有効です。
先ほど、「心配事は13%しか実際に起きない」とお伝えしましたが、そうは聞いても、やはり心配で不安に思ってしまうという人もいるでしょう。
「不安に思っていることが実際には起きない」と言われてもなお、なぜ不安に思うことをやめられないのか?
それは「実際には起きないという実感がないから」です。
では、なぜ実感がないのか?
それは、不安に思ったことが実際にはほとんど起きないので、不安に思ったこと自体を忘れてしまっているから、です。
さらに、不安に思っていたことを忘れては、また新しい不安が襲ってくる。
そして、また実際に起きなかったから忘れる。
そして、また新しい不安が……ということを繰り返し、「いつも不安」な状態から抜け出せないのが、私たちなのです。
「記録を取る」ことが大切!
そこで、心配事は実際に起きないのだと「実感」するために「記録を取る」。
これが「ジャーナリング」という手法です。
さっそく手順を紹介しましょう!
【「ジャーナリング」を試してみましょう!】
@ 心配に思うことがあったら、その心配に思うことを手帳にメモする(スマホのメモ機能などを使ってもOK)
A それを1カ月間続ける
B 1カ月後、メモした内容(心配に思ったこと)を見返して、それが実際に起きたかどうか○×をつける
C 心配に思ったことがどれだけ起きていないかを実感する
この4ステップを実践するだけで、客観的に心配事はそんなに実現しないのだと実感できるでしょう。
余裕があれば、
@の心配事をメモする際に、心配の大きさを10段階評価で書いておくとさらに効果的です。
自分の感覚で構わないので「この心配レベルは、すごく心配だから8だな」「これは、そこまで心配ではないから2だな」という感じです。
なぜこれがネガティブ感情に対して効果的なのか?
その理由は、私たちがどんな心配事に対しても「心配だ」という1つの言葉でしか表現していないことにあります。
夜も眠れないくらい心配なことについても「心配だ」。
いいタイミングで電車が来るか心配なときも「心配だ」。
全部同じ「心配だ」で表現するので、必要以上の心配をしていることが多々あるのです。
そこで、記録を取るときに心配のレベルを記載すると、「あっ、これはそこまで心配してないんだ」と実感でき、ネガティブ感情がその場で小さくなります。ぜひ、試してみてください。