危ぶまれる五輪開催、7割超が「反対」。賛成派、反対派の理由を聞いてみた
2/17(水) HARBOR BUSINESS Online
緊急事態宣言を出してもなお、新型コロナウイルスの感染者数は思うような減少傾向に転じていません。
そんな中、1年間延期された東京五輪の開催までおよそ5ヶ月と迫っています。
この状況での開催を国民はどう考えているのか、調査結果から民意を探っていきます。
開催反対が圧倒的多数の結果に
この調査は、紀尾井町戦略研究所株式会社がインターネット上で1000人にアンケートをとったものです。
「2021年の東京五輪開催に賛成?反対?」と聞いたところ、賛成273人、反対727人という結果になりました。
アンケートが実施された1月末は、東京都だけで連日1000人を超える新規感染者が確認されていた頃。
その状況も背景に、開催反対が7割を超えて賛成を圧倒するという結果になりました。
賛成の人々の意見は
開催に賛成と回答した273人にさらにその理由を尋ねると、多い順に次のような理由が並びます。
「アスリートや五輪関係者の準備を考えれば開催すべきだと思うから」(117人)、
「五輪の準備に際して行った投資の回収や、開催による経済効果を無視できないから」(68人)。
しかし、こうした理由とは異なる理由で賛成する人もいます。
筆者の取材に応じてくれた東京都に住む甲田さん(30代男性)は「NBAのスター軍団が日本で見られるのが楽しみなので、基本的には賛成です」といいます。
現地の治安が不安視された2016年のリオ五輪では、NBAのスター選手を擁するバスケットボールアメリカ代表は、選手村に入らず、安全のために港に横付けされた専用の豪華客船で生活をしていました。
ただ、そうした特別な対応ができる選手団はごく一部に限られることは自明。
甲田さんが「ワクチン接種が進んで、その後の感染状況を見ないとわかりませんね」ともいうように、賛成といえど慎重な声も聞こえてきます。
開催反対の理由は
一方で、開催に反対と回答した727人に理由を聞くと
「新型コロナ感染症が収束しない現状では時期尚早だと思うから」(355人)や
「五輪を開催することで感染拡大する可能性が否めないから」(229人)と、賛成派に比べて対策云々よりもコロナ自体への危機感が高いことが伺えます。
とはいえ、「東京都および国の新型コロナ感染症対策や五輪運営に不安があるから」(78人)といったように対策への不安に、都や国がアプローチできていない現状も見えてきます。
神奈川県在住の武田さん(30代男性)は筆者の取材に対して、「数多ある競技で、こないだのテニスの全豪オープンでの混乱のようなことが起きる可能性があるから」と話します。
開催期間中にロックダウンが宣言され、急遽無観客に変更されるなどの混乱が生じた、先日のテニス全豪オープンは記憶に新しいところです。
さらに武田さんは「準備してきた選手が可哀想ではあるけど、準備できない選手はもっと可哀想。
比較的大丈夫な国とそうでない国の格差もあり、フェアな大会にできる可能性も低いからです」とも。
世界中から選手の集まる大会であるため、武田さんのように、日本国内の感染状況だけでなく、世界的な収束が先だと考える方もいるようです。
東京都在住の綾部さん(20代女性)は「精神的な面も含め、ある程度は開放的になれたら開催しても良いかと思います」と、中途半端な開催を避けたいとの理由を話してくれました。
さらに綾部さんは「オリンピックを思いきってやるのであれば、その後も自粛要請等で制限するようなことはやめてほしい」と、五輪の開催によって感染が再拡大しコロナとの戦いが長引く懸念も示しました。
どういった条件が整えば開催可能か
とはいえ、アスリートや関係者の準備と思い、それに経済効果があるのも事実。
そこで「どういう条件下なら開催可能と思う?」という質問もされています。
これに対しては、反対派が多数であるため「何をしても安心できないのでとにかく開催すべきではない」が419人で最多となりました。
開催を視野に入れた中では「無観客での開催」(227人)といった五輪の運営としての対策だけでなく「開催までに感染者数が一定の人数以下になること」(134人)といった、国全体の状況を鑑みた決定も望まれているようです。
「海外の方が来ることによってまた医療体制が更にひっ迫すると思われるので、医療従事者のことを考えると反対です」と話す井沢さん(20代女性)は、条件について「海外の方が多くこられることで、医療体制の逼迫が考えられます。なので、それを拡充することと、入国者の追跡を他国のように本当に厳しく取り締まりをすることですかね」といいます。
ただし、井沢さんは「本音を言えば、反対ではなく延期にしてほしいんですけどね」とも。反対と回答した人の中にも、東京でのオリンピックは実現してほしいと願っている人は多く、反対という意見も、苦渋の回答であることがわかります。
ワクチンの接種が本格的に始まると、また国民感情には変化があるかもしれません。
開催ありきではなく、そうしたあらゆる状況を踏まえて、決定が下されることを願います。
<文/Mr.tsubaking>