2021年04月01日

UFOや死後の魂を即否定する人は「本物の科学者」とは言えない

UFOや死後の魂を即否定する人は「本物の科学者」とは言えない
2021年03月31日 PRESIDENT Online
中部大学総合工学研究所特任教授 武田 邦彦

あなたはUFOや死後の魂といった奇妙な現象を信じるだろうか。
中部大学特任教授で工学者の武田邦彦氏は「本物の科学者は『UFOはいない』とは絶対に言わない。
『頭で考えられないこと』を否定するのは科学的な態度ではない」という――。

※本稿は、武田邦彦『武器としての理系思考』(ビジネス社)の一部を再編集したものです。

■UFOが飛んでくる可能性というのは「ある」
世の中にはUFOを目撃したという話はたくさんあります。
航空自衛隊のパイロットやアメリカ空軍のような空を飛んでいる人たちが、随分とUFOを目撃しているらしい。
そのうちのいくつかは写真なども撮られていて、それらを目にすると「いったいどういうことなのだろう」と思います。
こういった話題になると、科学者の多くは「そんなことはないよ」「だいたいUFOが飛んでくるとなれば相当程度の文明の高い星が近くになければならないのに、そんな星はないよ」と言います。

確かに、地球から100光年あたりのところの星で文明のありそうなところはほとんどありません。
1万光年ぐらいになって、ようやくそうした可能性のある星が少しある程度です。
1万光年離れたところから飛んでくるためには光の速さで1万年かかります。
通常の宇宙船の速さだと5万年、10万年とかかる。
10万年もかけて地球の探索にくるなどというものはまったく無駄なことですし、そもそも無理だ――とUFOを否定する人たちは言います。
だからUFOの目撃情報にしても「恐らくは何か光の加減であるとか、パイロットが空を飛んでいるうちに幻想を見たのではないか」と反論するのです。
これは一見科学的な意見のように見えるかもしれません。
しかし、この科学者たちは実は間違っています。
ここに科学の落とし穴があるのです。

UFOが飛んでくる可能性というのは「ある」のです。
それはどうしてかと言えば、光よりも速い移動手段が「ない」と決まったわけではないからです。
「光がいちばん速い」と言っているのは、今の私たちの科学の常識の範囲内でのことに過ぎません。
ですから、私たちの知能の及ばないようなものがあるかと言えば、それは「ある」のです。

■なぜ、紫式部は飛行機を天狗だと言うのか
そのことは過去を見ればわかります。
人間が誕生したのは600万年も前のことです。
しかしわずか1000年前、1000年前というと人類誕生からの600万年のわずか6000分の1です。
その1000年前、たとえば平安時代の紫式部に飛行機をみせて「あれは何だと思いますか?」と尋ねれば、きっと紫式部は「空を飛んでいるのなら天狗ではないか?」とでも言うでしょう。
なぜ紫式部が飛行機を天狗だと言い、今の人は飛行機だと考えるのかと言えば、人間は目に見たものを、今の自分の知識の範囲で判定しようとするからです。
もちろん紫式部のいた平安時代には飛行機はありませんから、あんな巨大なものが空を飛ぶなんて考えもしません。
ならば、それは天狗のような怪物の類ではないかと考える。
このように、私たちはいつも自分の頭の中に入っている知識の中から正解を探すという癖があるのです。

■我々は光より速いものを知らないだけ
科学者が「光よりも速いものはない」と言うのは、アルベルト・アインシュタインが今から100年ほど前に「光がいちばん速い」という理論を構築した、世に名高い「相対性理論」を論拠としています。
相対性理論はその後の量子力学などに発展して、学問的にたいへん大きな功績があったことに間違いありません(物理学的には、相対性理論と量子力学は相いれないところもある)。

しかし、アインシュタインは「光がいちばん速いのだと考えて整理をするとこの世の中をうまく整理できる」ということを言っているだけで、「光よりも速いものがない」と証明したわけではありません。

アイザック・ニュートンによる「ニュートン力学」だけでは説明しきれない不思議なことがあったので、それを整理するためには「光がいちばん速いものである」と定義して、それでいろいろなことを考えるとうまく説明ができると言っているに過ぎないのです。
もちろん、光がいちばん速いということを後押しするいろんなものがあります。
有名な「E=mc2」という式がありますが、これによれば現在の核兵器なども全部説明ができて矛盾がありません。
ところが、最近では「実は、光よりも速いものがあるのではないか」との説も出てきています。

アインシュタインの時代には、「真空」は本当に何もない空間だと考えられていましたが、現在では真空にはヒッグス粒子といわれる素粒子がぎっしり詰まっているというのが正しいのだという理論も出てきました。
そのように現在でも、毎年ということはないにせよ10年に1度ぐらいは新しい現象が発見されているのです。

■100年後にUFOを説明できる可能性
1000年前の紫式部は飛行機を理解できず、スマートフォンなどは明治の乃木希典大将にも理解できなかったかもしれません。
「この小さいものでどこにでも電話ができるとか、汽車に自由に乗ることができるとは、いったいどういうことなのだ」と言ったに相違ありません。
そうしてみると、今から1000年後どころか100年後でも、今の知識がそのまま通じるとはとても考えられないのです。
100年後にUFOを見れば「あれはどうだ、こうだ」ときちんと説明できるかもしれませんから。
このように、私たちの頭脳が正しいとか間違っているということを判断するときに、現在の知識で説明できることは「正しい」と、知識にないものは「間違っている」と判断してしまうのです。
これも、フェイクニュースに騙されることを防ぐ一つの考え方です。

■不勉強な科学者ほど「霊魂」の存在を否定する
UFOの問題と並んでよく質問を受けるのが「魂」についてです。
お墓で何かもやもやとしたものが立ち上がっていたとか、戦争で亡くなった兵隊さんの慰霊式を行うと、そのとき何か魂のようなものが見えるとか、さらにそれが写真に撮られて「こういうものが写っている!」などと言われることがあります。

そういったものを科学者にみせると、その多くはやはり「死んだ人の魂なんてあるはずがない」と言うでしょう。
なぜかと言えば、人間の思考というのは大脳新皮質で司られていて、人が亡くなって頭に血液が流れなくなり、大脳の皮質が朽ちてしまえばそのまま意識も全部なくなると考えるからです。
だから死んだ人は呼びかけに答えない。
しかし、人間は死んだら何もなくなるというのは寂しいので、それで魂が存在するというような話をつくり出したのだというのがごく普通の回答です。
中途半端な科学者というと非常に失礼なのですが、あまりじっくりと科学をやったことのない、もしくはおっちょこちょいの科学者というのはきっとそのように言うでしょう。
しかし、このような答えは、科学的ではありません。
科学というのは自分の考え得る範囲で「こうだ」と思うこと以外に、それとは異なるものが世の中に存在することを発見しようとしているからです。
科学者は、今まで自分たちの頭の中にないものを発見しようと思って研究し、だから実験というものが必要になるのです

■死体から出る「記憶を持った」気体状の物質
前述しましたが、もし自分たちの頭で考えたものがすべて正しいというのであれば、こう実験などはする必要はありません。今の知識からすれば、これから私の言うことは荒唐無稽に感じられるでしょう。
しかし、本書の読者までが同じように現在の知識だけで考えてはいけません。

たとえば、人間の魂は実は大脳旧皮質にはなくて、大脳新皮質の中のほうの小脳や延髄のほうにあると仮定します。
人が亡くなると、脳の血液は滞留するので大脳新皮質の機能はダメになりますが、小脳とか延髄にある人間の魂としてはこれまで生きてきた中で得た知見を失くすわけにはいかない。
なぜかというと生物はそれまでの知識を使ってだんだんと進化してきて、そういう生物が生き残ってきているわけだから、現在の生物は必ず死んだ後に自分の獲得した知識を残しているはずです。
身体のつくりは明らかに自分が生まれる前の構造を知っているのですが、知識については知らないと現在の科学では仮定されているのです。

では人間の場合、それはどういう形で残しているかというと、死体から記憶を持った気体状の物質を出して、それをとりあえず仮のところに貯蔵し、別の人間が生まれたときにはその体内に入っていくようになっている。
その気体状のものを私たちは「魂」と呼んでいて、それは慰霊祭をやってくれるとか、肉親に会うだとか、そういうときに刺激されて何度でも出てくるようになっていて、だから魂は死後も残るのである……。
そのようなことが実証されるかもしれないのです。
ですから、本物の科学者であれば「死後の魂がみえる」ということに対しては、「そういう可能性もありますね」というふうに答えるわけです。
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武田 邦彦(たけだ・くにひこ)
工学者/中部大学総合工学研究所特任教授
1943年東京都生まれ。工学博士。専攻は資源材料工学。
東京大学教養学部基礎科学科卒業後、旭化成工業に入社。
同社ウラン濃縮研究所所長、芝浦工業大学教授、名古屋大学大学院教授を経て、2007年中部大学総合工学研究所教授、2014年より同特任教授。
著書に『50歳から元気になる生き方』(マガジンハウス)、『ナポレオンと東條英機』(KKベストセラーズ)、『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』(洋泉社)ほか多数。
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2021年04月02日

14歳の少女が精神病院で体験した「極限の地獄」

14歳の少女が精神病院で体験した「極限の地獄」
4/1(木) 東洋経済オンライン

精神疾患により医療機関にかかっている患者数は日本中で400万人を超えている。
そして精神病床への入院患者数は約28万人、精神病床は約34万床あり、世界の5分の1を占めるとされる(数字は2017年時点)。
人口当たりで見ても世界でダントツに多いことを背景として、現場では長期入院や身体拘束など人権上の問題が山積している。
日本の精神医療の抱える現実をレポートする連載の第11回。

 「かゆいときも自分ではかけず、寝返りもいっさい打てません。
一度大嫌いなクモが天井から降りてきた事があり、動かせない顔の数センチ横に落ちましたが、どうにもできませんでした。身体拘束された77日間で、『死』よりも『いつ地獄が終わるのかわからない生』のほうが、とてつもなく恐ろしいと知りました」
 14歳の時に摂食障害(拒食症)で都内の総合病院の精神科に入院し、77日間にわたり身体拘束された女性Aさん(27歳)は当時の経験をそう振り返る。

■「思ったより体重あるんだね」の一言をきっかけに
 Aさんは中学2年の冬からダイエットを始めた。
「始めたきっかけは単純で、学校の友達に『思ったより体重あるんだね』と言われたという、ささいなことでした」
 完璧主義者だったAさんは、ほんの少しでも体重が増えると摂取カロリーを過度に抑えるような食事制限を自らに課していた。
生理がなくなったりふらついたりする状態を心配した両親とともに、中学3年の春となる2008年5月にこの病院を受診し、入院した。

 「医学知識はありませんでしたが、拒食症という病気であるならば治さなければならないと思い、また開放病棟での任意入院と聞き安心し、入院にも納得していました」
 受診後、入院するまでの数日間、Aさんはどこかで入院生活を楽しみにしている自分もいたと話す。
「今まで病気らしい病気になったことがなかった自分に病名がつき、皆が自分の体を心配してくれることがうれしくすらありました。
入院中、友達に手紙を書きたいし、家族の面会も楽しみ、同じ病室・病棟の子と仲良くできたらいいな、などと考えていました」

 ところが入院当日、そうした浮かれた考えは一気に打ち砕かれた。
案内されたのは病棟の奥にある、ベッドとポータブルトイレだけがある、無機質な独房のような個室だった。
鉄格子のついた窓の外はつねに日陰で、その日の天気もわからなかった。
 「両親は『頑張ってね』と泣いて私を見送りましたが、私も両親もまさか次にお互いの顔を見ることができるのが、約4カ月半も先になるとは想像もしていませんでした」

 入院にあたって、まず行われたのが持ち物検査だ。
眉をそるためのカミソリはおろか、携帯電話や音楽を聴くためのiPod、書籍や筆記用具、コンタクトレンズまで持ち込みが許されなかった。
一つひとつ選んで持ってきた大切なぬいぐるみは手乗りサイズ1つを残し、すべて持ち帰りが命じられた。

■ベッド上に寝たままで勝手に動かないように
 入院後、Aさんが主治医からきつく課されたのが、ベッド上に寝たままで勝手に動かない(床上安静)ということだ。
ベッドサイドに腰掛けることも認められない。
また個室内の衝立(ついたて)のないポータブルトイレすら勝手に使うことが許されず、看護師の許可を得て利用し使用後確認させることが求められた。
 つまりAさんが自由を許されたのは、個室のベッドの上で横になり、小さなぬいぐるみをひたすらなでることだけだった。

 同じく主治医からは、出された普通食を3分の2以上平らげることを厳しく求められた。
しかも病院ではそれまで胃が受け付けないと避けていた、天丼やカレーなど重い食事が頻繁に提供された。
揚げ物の衣の油がきつく、できれば食べたくなかったが、そうできないのには訳があった。
 「主治医との最初の面談で、3分の2以上食べなければ、鼻から胃に直接栄養をいれる『経鼻胃管』に切り替えると告げられており、胃もたれに苦しみながら必死で食べ続けました」
 テレビも読書も音楽も禁止され、両親や友人との面会はおろか手紙や伝言も許されないなど、外界とつながりが隔絶された日々に、Aさんの病院と主治医への不信感は高まっていった。

入院から約1週間後、Aさんは両親に会いたいとの懇願を看護師にあしらわれると、一連の処遇への不満から点滴を自己抜去した。
 駆けつけた主治医に、Aさんは思いの丈をぶつけた。
「ほかの精神科へ転院させてください」「それが無理なら小児科病棟に移してください」。
主治医に却下されると、最後の希望をかけて、「私は任意入院だと聞いています。
権利があるはずなので退院して自宅に帰ります」と訴え、出ていこうとした。
そのAさんに主治医から非情な一言が告げられた。  
「ああ、今から医療保護入院になるから、それは無理だよ」
 本連載で何度も取り上げたとおり、医療保護入院は精神科特有の入院制度で、本人が拒絶しても、家族など1人の同意に加え、1人の精神保健指定医(経験年数やレポート提出など要件を満たした精神科医)の診断があれば強制入院させられる。

Aさんの両親は入院時に主治医から求められて、あらかじめ同意をさせられていた。
 「『もういいかな?  じゃあやっておいて』と主治医が手慣れた様子で言い放つと、病室に入ってきた4人の看護師が手足を押さえつけ、手際よく柔道着の帯のような平たい頑丈なひもを私の体に巻き付け、ベッドの柵の下側に結んでいきました」
 両手、両足、肩の身体拘束が終わると、次に鼻の穴から、経鼻胃管のチューブが挿管された。
チューブは胃カメラのときに入れるものよりも太くて固い。それが常時入れられたままになる。

 「経鼻胃管をされると、24時間ずっと鼻とのどに食べ物や飲み物が詰まっているような、何ともいえない違和感があります。
例えるなら、柱がのどに突き刺さっているような感覚です。
とにかく、苦くて痛い、そして苦しくかゆいとしか言いようがありません」

■意識が鮮明ゆえの「極限の地獄」
 排尿は、尿道バルーンが自動的に尿を吸い出す形で行われた。
拘束が外れた後も筋力が回復して自力でトイレに行けるようになるまで、2カ月半ほど付け続けた。
 「経鼻胃管の痛みと違和感が強すぎて、尿道バルーンの痛みや違和感はそこまで記憶していません。
ただ、恥ずかしさはとても大きかったです」

 より恥ずかしかったのは排便だ。
おむつを付けさせられたうえ、排便時にはナースコールをして看護師におむつを脱がされ、お尻とベッドの間にちり取りの形をした「おまる」を入れられ、そこにしなければならなかった。
 「排便時もおなかに1枚タオルをかけてくれたぐらいしか、プライバシーへの配慮はありませんでした。
3日に1回お通じがなければ浣腸され、無理やり排便させられました。
恥ずかしいし情けないし、思い出したくない経験です」

 当然のことながら、摂食障害で入院したAさんは意識も鮮明で、はっきりと意思の疎通もでき、もちろん幻覚を見たり幻聴を聞いたりすることもなかった。
「意識が完全にクリアな中でされる身体拘束や経鼻胃管、尿道バルーンの経験は、まさに『極限の地獄』でした」。
 入浴もできず、数日に一度の看護師による手か足の部分浴か清拭のみがなされた。
 「点滴が落ちるのを見ることぐらいしかできない身体拘束中は、1分1秒、時間が経つのがとても長く感じました。
その間、私はどうしたらこの拘束が解け地獄から抜け出せるのか、必死で考え続けました」

■禅問答続きでの拘束継続
 主治医からは身体拘束の理由について、「自分を見つめなおすため」「自分と向き合う時間を作るため」といった抽象的な説明ばかりで、Aさんのその時点での状態の説明や治療目的、どうすれば拘束が外れるかの具体的説明などは、何ひとつなかった。  
「だからいろいろな話し方をして、試してみました。
時には身体拘束を含めすべてを受け入れるような従順な発言や主治医を信頼しているような発言をしてみたり、別のときには激しい口調で反抗的な態度をとってみたり。
それでも『どうしてそう思うのかな?』などと返させる禅問答続きで、一向に状況は変わりませんでした」

 いつまで続くかわからない身体拘束から逃れるべく、必死で考え続けるAさんを前に、主治医はこんな雑談をしたこともあった。
 「この前、映画の『崖の上のポニョ』を娘と見に行って楽しかったと言って、こんな歌なんだよと、『ポーニョ、ポーニョ、ポニョ、さかなの子〜〜』と主題歌を歌いだしたこともありました。
私から奪い取っている外の世界の楽しい様子をなぜ私に聞かせるのか。
私がこんな目に遭っているときに、この人は人生を楽しんでいるんだろうなと、絶望的な気持ちになりました」

 考え続けた結果、Aさんが生育過程での母親との関係性の悪化について話をするときだけ、禅問答のような聞き返しがなく、Aさんの話を納得したように黙って聞いてくれることに気がついた。
 「主治医はこの病気の原因を母親との親子関係に結び付ければ満足してくれるのだと思い、その方向で話を合わせるようになってからは、拘束が緩んでいくのが早くなりました」
 結局、全拘束が解除されたのは8月上旬、5月下旬から77日間にわたって、24時間拘束が続いたことになる。
両親と面会が許されたのは、それからさらに1カ月半先の9月末のことだ。
退院はさらに2カ月後となる11月末、入院からちょうど半年が過ぎていた。
退院後、両親との関係は悪化した。

 「両親に対して、どうして拘束に同意したのか、どうして早く助けてくれなかったのかと何度も責めました。
両親は面会や連絡が許されない中、『拘束しなければあなたが死ぬって、主治医が言うから仕方なく同意した』と言いますが、それにしてもなぜあんなことを許したのかと、わだかまりは残りました」

 半年間の入院で体力が落ち通学自体が肉体的にきつく、さらに半年にわたり主治医から自分の意見を否定され続けたため、親しい友人たちともうまくコミュニケーションが取れなくなっていた。
「緊張してどもってしまったり、文字が書けなくなったり、逆に1人で話しすぎたりと、円滑な関係を築くことができなくなっていました」。
 結局、復学後、数カ月で不登校になり、進学した高校も1日も登校できず退学を余儀なくされた。
専門学校やアルバイトも続かなかった。
 「このころは1日2時間くらいしか起きていられず、あとはずっと寝たままでうつ病状態となり、薬の過剰摂取を繰り返し、救急車で搬送されたこともありました」

 Aさんは19歳のときにいまの配偶者と出会い、結婚。
それをきっかけに精神的な面はだいぶ回復し、2018年5月、不当な身体拘束を受けたとして、この病院に損害賠償を求める裁判を起こした。
現在、東京地方裁判所で係争中だ。

 身体拘束は患者の行動の自由を完全に奪う、最も強度な身体の自由に対する制約だ。
精神科病院における身体拘束は、精神保健福祉法で
@ 自殺や自傷の危機が切迫 A 多動や不穏が顕著 B 患者の生命に危険があるなどのときに、ほかに方法がないと精神保健指定医が認めたとき  のみ、行うことができるとされている。
 裁判所に提出された準備書面によれば、原告側の複数の専門医たちは、Aさんの入院当時の体重は、各種医学文献や摂食障害におけるガイドラインに照らしても、生命に危険が及ぶおそれがある数字ではなかったという。
 またAさんは治療の必要性を理解し、身体拘束されるまで入院中の食事を経口摂取できていたこと、点滴抜去の防止のために拘束以外の代替手段を検討した形跡がないことなどから、身体拘束は要件に欠いた違法なものだと主張する。

 これに対して、病院側は取材依頼に対して、「個別案件についての取材には、応じかねます」とするが、裁判所に提出した準備書面では、「拘束を中止したら、(点滴の)自己抜去や自殺企図、自傷行為の恐れ、安静を守れず過活動や運動もあると判断した。
身体拘束以外に代替方法はなく、継続が必要だった」「両親や友人との交流を避けることが症状改善に必要なので、治療の一環として当面は家族との面会連絡を行わない治療方針で了解を得ている」などと主張している。
 また病院側は「身体拘束を内省や医療従事者に心を開く手段として用いるようなことはしていない」と主張する。
だが、2020年11月、裁判所での証人尋問で、この担当医は耳を疑うような発言をしている。
 「(身体拘束されている患者は)付きっきりのように、もうほかの患者と比べれば、数倍もの時間を医師も(費やしている)、ですから御本人さんが身体拘束が外れたときにものすごく寂しいと言って、特別な座から降りるんだと、まさにそのような、もう病棟患者さんから見れば、ものすごい羨望を集めるような特別待遇なんですよ」

■今も続くフラッシュバック
 この言葉を聞いたAさんは憤りを込めて訴える。
 「精神科医にはぜひ、いつ解除されるかわからない身体拘束を、一度体験してみてほしい。
結果的に1時間で終えたとしても、当事者が訴える、先の見えない底なしの恐怖の一端は感じ取ってもらえると思います。
私は結婚して精神的に安定した今でも、急に手首を握られたときなど、身体拘束のフラッシュバックに苦しめられることがあります」

 今年2月下旬、厚生労働省は精神病床における身体拘束の実態に関する、初めての調査結果を発表した。
2017年夏に当時の塩崎恭久厚労相が近年の身体拘束の急増についての調査と対処に言及してから、すでに3年半が経っていた。
 そこでは患者に対する身体拘束のうち約3割で、1週間以上の拘束指示がなされていたことが明らかになった。
最大日数は15年半におよぶ5663日と、驚くべき数字となっている。
 密室性が高く、情報公開意欲にも乏しい環境の中で、身体拘束のような人権侵害の度合いの強い行動制限が柔軟に行われている日本の精神医療の現場では、患者と医療関係者間の力関係の差は歴然としている。

そうした中で昨年、ある西日本の病院で大規模な患者虐待事件が発覚した。
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2021年04月03日

野村に続き三菱UFJ証券も巨額損失…リーマン・ショック級の金融危機が再来か

野村に続き三菱UFJ証券も巨額損失…リーマン・ショック級の金融危機が再来か
2021年04月02日 日刊ゲンダイDIGITA

米ヘッジファンド「アルケゴス・キャピタル・マネジメント」に絡んだ巨額損失が次々と明らかになっている。
2200億円の損失の可能性を発表した野村ホールディングスを皮切りに、クレディ・スイスと三菱UFJ証券ホールディングスが続いた。
三菱UFJ証券は欧州子会社関連で約330億円の損失が見込まれている。

「巨額損失を発表する金融機関はさらに続き、トータルの損失額が1兆円を超えるのは濃厚とみられています」(兜町関係者)
 アルケゴスは金融機関からの借り入れを利用した投資(レバレッジ)を積極的に行い、自らの保有資産の数倍もの運用を行っていたとみられる。
背景には歴史的な低金利と、株式を中心とした強気の投資環境がある。
「低金利で資金を調達できる中、米国株が過去最高値を更新し続けるなど株式市場は世界的に絶好調です。
その波に乗った“イケイケ”運用でここ数年、アルケゴスは金融機関からも上客扱いされてきました。
ところが、今回、何かの金融商品でつまずき、一気に資金がショートしたと思われます。

リーマン・ショックを引き起こしたサブプライムローンの構図とそっくりです」(金融ジャーナリスト・小林佳樹氏)

■世界中に疑心暗鬼が広がり“信用”が崩壊すれば…
 2008年のリーマン・ショックのきっかけは、前年に米国で起きた住宅バブル崩壊。
住宅価格が上昇し続ける中、金融機関が信用の低い低所得者(サブプライム)に住宅購入資金を貸し付けたため、住宅価格の急落を機に、アッという間に融資が焦げついた。

 株式など金融商品の上昇が続く中、金融機関が自己資金の少ないアルケゴスに、ガンガン融資した結果、行き詰まった――確かにリーマン・ショック直前の状況に似ている。

金融危機は起こるのか。
「今回、アルケゴスがしくじった金融商品が別の金融商品にも組み入れられており、幅広い影響が出る恐れがあります。
一見、無関係と思える他の金融商品も実は中身が複雑すぎて、どんなリスクをはらんでいるか分からない。
また、低金利の下、資産の数倍を投資しているファンドはいくらでもある。
株や商品市況の急落などをきっかけにアルケゴスのように、一気に行き詰まるファンドが次々と現れてもおかしくない。
世界中に疑心暗鬼が広がり、“信用”が崩壊すれば、リーマン・ショック級の金融危機が起こる可能性も否定できません」(小林佳樹氏)
 杞憂に終わればいいが。
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2021年04月04日

ミャンマー虐殺、日本政府の対応に広がる失望

ミャンマー虐殺、日本政府の対応に広がる失望
日本はアジアの人権侵害にどう向き合うのか
2021/04/03 東洋経済オンライン
柴田 直治 : 近畿大学教授

ミャンマー国軍は残忍だ。
非武装の自国民に容赦なく暴力をふるう。
子供だろうが、女性だろうが、ただの通行人だろうが、目に入ったものに銃口を向ける。
これが軍の本質、と同一視されたくないのだろう。
欧米を中心とした12カ国の参謀総長や軍のトップが3月27日、「軍隊は自らの国民を害するのではなく保護する責任を有する」との非難声明を出した。
制服組として極めて異例な対応だ。

在ミャンマーの大使らが2月に発した国軍非難声明には参加しなかった日本も、今回は防衛省制服組トップの山崎幸二統合幕僚長が名を連ねた。

国軍批判を強める日本政府
ミャンマー国軍の残忍さは、いまに始まったわけではない。
学生らによる1988年の民主化運動の際も、僧侶らが行進した2007年のデモのときも虐殺や拷問を常態化させていた。
今回との違いは、兵士や警官らの蛮行がSNSによって世界に動画配信されているところだ。
国民による抵抗の様子も可視化されている。
国際社会が固唾をのんで見守るなかで、非武装の国民が惨殺されている。

日本政府もここにきて国軍非難のトーンを強めている。
暴力を非難し、アウンサンスーチー国家顧問らの釈放を求める談話の主体を外務報道官から茂木敏充外相に格上げし、3月27日の国軍記念日に駐在武官を派遣することもなかった。
岸信夫防衛相も談話を出した。
政府開発援助(ODA)の新規案件停止も宣言した。

クーデターから2カ月。国軍とのパイプがあり、それを使って事態を改善すると主張してきた日本政府も、エスカレートする暴力と犠牲者数の急増を前に、パイプの機能不全を認めざるをえなくなっているのだろう。
ミャンマーはこれまで親日国と呼ばれてきた。
若者を中心にアニメや日本製品、日本料理の人気は高く、旅行先や就労先としての魅力も感じていたとみられる。
ところがクーデターを境に日本に対する失望が広がっていると現地の日系企業関係者は証言する。

国軍がクーデター後に外相に任命したワナマウンルウイン氏を日本政府が「外相」と呼んだことが瞬く間にSNSで広がり、大きな波紋を呼んだ。
その後、日本政府は「外相と呼ばれる人」に軌道修正したものの、「日本はどちらの側に立っているのか」と日本人駐在員が詰問されたり、日本語学習や技能実習生への応募を取りやめるケースが相次いでいる。

日本政府にやれることはある
「日本の『ミャンマー宥和外交』は機能しているか」で触れたように、ミャンマー国軍とのパイプの目詰まりが明らかになったなら、非道な国軍につくのか、それともミャンマー国民の側に立つのか、日本政府の選択肢は2つに1つしかない。
しかも、速やかに旗幟を鮮明にする必要がある。

現在、目詰まりはすでに明らかである。
とすれば日本政府は一刻も早くミャンマー国民、中でも危険を冒して抗議する若者らに伝わる明確な意思表示をするべきだ。現況、「日本はミャンマー国民の側に立っている」とは受け止められていないと感じるからだ。
ではどうするか。日本政府は「人権問題のみを直接、あるいは明示的な理由として制裁を実施する規定はない」(加藤官房長官)との立場だが、やれることはある。

それは、継続案件も含めたODAの全面停止のほか、日本企業に国軍関連企業との取引停止を要請すること、さらに踏み込めば、国民民主連盟(NLD)の当選議員らでつくる連邦議会代表委員会(CRPH)の正統性を認めることだ。
口先だけではない姿勢をミャンマー国民にも国軍にも直接的に示すことが肝心だ。
こうした意思表示は同時に日本国民に対するメッセージにもなる。
日本はミャンマーに対する最大の援助国で、2019年度はヤンゴンとマンダレーを結ぶ鉄道やヤンゴンの下水道などの大型インフラ事業を含め1893億円の供与が決まった。
累計でいえば、有償、無償、技術協力合わせて2兆円近い支出をしている。

2011年の民政移管後に増加が著しく、5000億円にのぼる過去の延滞債権も放棄した。
債権放棄は民主化の進展が前提条件だったはずだが、国軍の暴挙で日本国民の善意が完膚なきまでに蔑ろにされているいま、日本政府は納税者に対しても毅然とした姿勢をみせる必要がある。

ミャンマーに限らず、アジア諸国で民主化に逆行する事態や大規模な人権侵害が起きた際、日本はこれまでも人権を侵害された側に寄り添うより、相手政府に宥和的な姿勢をとってきた。
クーデターで民選の政府がひっくり返されたり、野党勢力が理不尽で暴力的な弾圧にあったりしても、通り一遍の「懸念」や「遺憾」の意を表明し、お茶を濁してきた。
時が経てば何事もなかったかのように遇してきた。

ミャンマー国軍に厳しく対応すれば、中国寄りになる、進出した日本企業に累が及ぶ。
太平洋戦争時に迷惑をかけた負い目から強く出られないなど、いろいろな理屈はあろう。
しかし今回について言えば、ミャンマー国民に広がる強烈な反中感情でその中国にさえ戸惑いが見え、欧米企業は本国からさらに強い縛りをかけられる可能性がある。
それらを勘案すれば、日本政府が国軍に明確な措置を取らない理由は見当たらない。

あるとすれば、一部関係者の利害にからむものではないのか。
国軍とのパイプをつなぐことにより、現地で活動がしやすくなる一部政治家や外交関係者、企業などへの配慮である。

技能実習生と二重写しに
日本政府の対応とミャンマー国民の反応を見るとき、状況はまったく異なるものの、私にはベトナムから日本にやってくる若い労働者たちの苦境が重なって見える。
外国から「現代の奴隷制度」とまで批判されている技能実習制度によりブローカーに巨額の借金を背負わされたり、滞在資格を得るためだけに日本語学校に授業料という名の高額な「ビザ代」を支払わされたりしている若者たちの存在だ。

日本政府が労働者としてきちんと受け入れる態勢を作りさえすれば、不当な利益を得るブローカーや悪質な日本語学校などは排除される。
ところが現行制度を維持することで、ブローカーや一部悪質な監理団体、一部の日本語学校の利権が守られる。
その結果、借金苦の中で労働者としての権利も十分に守られず、多くの若者らが失望し、日本に恨みに近い感情を抱いて帰国する……。
東南アジアの人々が寄せてくれる親日感情や日本へのあこがれは、多くの日本企業、従業員らが積み重ねてきた製品づくりや職業倫理への評価、アニメなどのソフトパワーを含む民間の努力によって培われてきた結果だ。
ODAや援助団体の活動などの意味もあった。

いずれにせよ日本国民が長年かけて築いた財産だ。
それが一部関係者の利益を優先させる日本政府のあいまいな姿勢や不作為によって毀損され、失望が広がるとすれば、日本の将来にとって大きな損失である。
ミャンマーの国民から、アジアの若者から日本はどう見えているのか。
視点をずらすことの大切さを思う。
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2021年04月05日

「1日3食」は良いか悪いか論争 糖質の摂取過多になる恐れも

「1日3食」は良いか悪いか論争 糖質の摂取過多になる恐れも
2021/04/04 NEWSポストセブン

日本人の常識となっている「1日3食」。
NHKが実施した「食生活に関する世論調査」(2016年)では、「1日に平均何食とるか」という質問に対して81%の人が「3食」と答えている。

 その“常識”に警鐘を鳴らすのが、『「空腹」こそ最強のクスリ』(アスコム刊)の著者で、あおき内科さいたま糖尿病クリニック院長の青木厚医師だ。

「日本では昔から『1日3食規則正しく』『腹八分目』などと言われてきましたが、その考えに科学的根拠はありません。
むしろ3食は“食べ過ぎ”で、特に糖質を摂取しすぎてしまう。
 成人が1日に必要な糖質は170gと言われています。
お茶碗1杯の白米が50g程度ですから、ご飯を1日3杯食べれば、それだけでほぼ摂取してしまう。
糖質は米以外にも含まれますから摂取過多になり、肥満や高血圧、糖尿病を招く可能性があります」

 さらに朝、昼、夜と間を空けずに食事をとると胃腸にも悪影響がある。
「たとえば8時に朝食をとると、昼食をとる12時までに消化しきれない。その状態で昼食を入れれば胃腸が絶えず働かされている状態になり、肝臓や腎臓など他器官への負担も大きくなる」(同前)

 青木医師は「空腹時間」が大事だという。
「前日の夜21時に夕食をとって、朝食を抜く1日2食の食生活にするなどして、食事と食事の間に16時間食事をとらない時間を作ってほしい。
 16時間空けることで、『オート・ファジー』と呼ばれる細胞の“リサイクル化”が起きます。
古いタンパク質を除去して新しく作り直すため、免疫機能が高まるほか腸内環境も整うため、便秘なども改善される」

 加齢とともに消化機能の働きは悪くなっていく。これまでの常識を見直す必要があるかもしれない。
   ※週刊ポスト2021年4月9日号
posted by 小だぬき at 03:59 | 神奈川 🌁 | Comment(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年04月06日

うつのサイン「見逃して重症化する人」の超盲点、不安緩和に効く妙薬は「何かに没頭する」こと

うつのサイン「見逃して重症化する人」の超盲点、不安緩和に効く妙薬は「何かに没頭する」こと
4/5(月) 東洋経済オンライン

昨年9月、インターネットを通じて1万人余りを対象に厚生労働省が行った「新型コロナウイルス感染症に係るメンタルヘルスに関する調査」によれば、「半数程度の人が何らかの不安等を感じていた(4月〜5月では6割)」ことが明らかになった。
世界的流行から約1年が経つが、いまだ出口は見えない。
落ち着くかと思えば、またぶり返す。
一体、いつまで続くのか――、そんなイライラが募る日々が続いている。
「不安に加え、いらだちを覚える方も少なくないです」 そう語るのは、うつ病のカウンセリングや依存症の認知行動療法を専門とする『ライフサポートクリニック』(豊島区)の山下悠毅院長。
不安とイライラにはどのような関係性があるのか、対処法を含め話を伺った。  

――抑制された生活が続くことで、小さなことでも「イライラ」してしまう人が増えているような気がします。

 イライラとは、状況や物事が上手くいかない際に出てくるネガティブな感情で、イライラしやすい状態を精神医学では「易刺激性」や「易怒性」と呼びます。
原因としては、不快な出来事が起きたとき(いわゆるストレス)や、体調を崩したとき、睡眠不足、あとはうつ病や躁うつ病、てんかんや認知症の症状として観察されることも少なくありません。

――コロナ禍が長引く中で、ライフサポートクリニックにもイライラが止まらない、なんて方が訪れることはありますか?   

たくさんいらっしゃいます。
最近では中間管理職のような役職の方が多い印象です。
新入社員のミスが気になってしまう、取引先の対応が悪くイライラしてしまうなど。
世間的にテレワークが推奨されているとはいえ、職場に行かないと仕事にならない方はいまだに多い。
規則を順守させたい企業と、「それでは仕事が進まない」といった個人との間にズレがあるようです。
そのギャップに戸惑い、物事がうまく進まないことに対して苛立ちを覚える方が少なくないようですね。
 一方、これは女性に多いのですが、テレワークが可能な職種にもかかわらず、出社を強要する組織や上司にイライラしている方も見受けられます。

■「お金がなくて自殺をする」わけではない
 ――不安を原因として、イライラしやすくなるというのは、よくあることなのでしょうか? 

 イライラとは、物事がうまくいかない際の不快感情のため、不安が募れば人は必ずイライラします。  

――では、イライラが原因で、精神疾患につながるといったことは? 
 過度なストレスによって、うつ病が引き起こされることは周知の事実でしょう。
そうした観点から、イライラがうつ病の発症リスクにはなりえる。
 うつ病で最も恐ろしいのは、自殺リスクの増加です。
人はうつ病を患うと、「死んだほうが楽」と考えてしまう症状が出現しうるのです。
コロナに限らず、「金銭的に困り自殺をした」といった報道は、誰もが耳にしたことがあるでしょう。
 しかし、精神科医が対応する自殺未遂者の多くが、「お金がなくて自殺をする」のではなく、うつ病を発症した結果、「自分はお金がないので死ぬしかない」という妄想(貧困妄想)から、自殺(未遂)に至った方が多いのです。  

――うつ病の初期サインとして、何が挙げられるでしょう? 

 睡眠障害が多いです。
特に、「明け方に目が覚めてしまう」(早朝覚醒)が続いていたならば、早めに専門家へ相談することが大切です。
また、もし「死にたい」といった相談を受けた方は、ただやみくもに止めるのではなく、この人は死にたいと表現してしまうほどのレべルで人生に絶望している――とその人の発言をくみ取り、「あなたが今とても辛い状況にあることは理解できました」と気持ちを受容したうえで、専門機関へつなげることが大切です。

■どうすれば「不安」から解放されるのか?   
――気持ちを理解することが大事なわけですね。イライラしている背景に不安がある……そういったケースでは、まず何から始めることがいいのでしょうか? 

 不安と恐怖を分けて考えることが有効です。
なぜなら不安には「対象」がなく、恐怖には「対象」があるからです。
高所恐怖、先端恐怖、閉所恐怖といった言葉があるように、恐怖には必ず対象が存在します。
それゆえ、人は、恐怖に対しては何かしらの対処や対策が可能です。
 一方、不安とは「対象なき恐怖」であり、自分自身がいったい何に恐れているのかを自覚することができていない状態です。
現在も、世界中の方が新型コロナウイルス(以下、コロナ)に恐怖を感じています。
 しかし、コロナはあまりにも未知なウイルスであるため、「コロナの何が怖いのか」については曖昧なんですね。
日本人は欧米人より本当に感染しにくいのか、収束するのはいつなのか、効果的なワクチンや治療薬はできるのか、仕事や学校はどうなるのか、コロナ以前の日常に戻れるのか……など、誰もがこうした悩みを複合的に抱えている状態は、まさに「不安」と表現できるのです。  

――なるほど。恐怖は理解できるのですが、不安は漠然としているだけに認識することが厄介です。自分が不安な状態にいる……、感覚的には理解している人は多いと思うですが、例えば生活に変化が生じるなどサイン的なものは表れるのでしょうか? 

 留意してほしいのは、「いつもと違う」という点です。
生活の中で、いつもと違う傾向が出始めると、軽度のうつ症状のサインと言えます。
症状は人それぞれですが、睡眠に関してなら、「明け方に目が覚める・お酒がないと眠れない・やたらと眠い」、食事に関してなら「食に興味がなくなる・食べたくないのに食べてしまう」などといった具合です。
こういった傾向が、ほぼ毎日、連続して2週間続いた際は黄色信号です。  

――そういった予兆を自覚した場合、どうすれば? 

 自分の中で抱えている悩みを片っ端からノートに書き出して、それが不安なのか恐怖なのか、仕分けすることが大切です。また、書き出す行為そのものが、マインドフルネス状態となるため不安が広がらなくなります。
そして、書き出したうえで、「解決できること」と「解決できないこと」に、さらに分けることも重要です。  

――「解決できないこと」は考えないようにする? 

 それは「落とし穴」になる対処方です。
なぜなら人は、「能動的に忘れようとしたり、考えないようにしたりすることはできない」からです。
「不可能なことにチャレンジした結果、さらに負荷がかかり、不安が悪化してしまっている方」も少なくありません。
 そうではなく、繰り返しになりますが、まずは悩みを整理し、「考えない」ではなく「置いておく」のです。
「解決できないこと」は文字どおり書いた紙を机の片隅に置いておく。
信じれないかもしれませんが、それをするだけで多くの方が感覚として2〜4割ほど楽になるのです。

■「なぜ」「いったい」といった言葉はNG  
――たしかに、考えないようにするなんてできない(苦笑)。自分に異変を感じるようになったら不安と恐怖を紙に書き出し仕分けする、さらに「解決できること」と「解決できないこと」を書き出して分ける、「解決できないこと」は置いておく……、視認できることもあって気持ちがぜんぜん違いますね。

 コロナのような閉塞感がある状況で、イライラしないためには、「なぜ」、そして「いったい」といった言葉は避けることも肝心でしょう。
「なぜ」は、過去への後悔。
「なぜ、こんなコロナに不向きな事業を始めてしまったのか」などは代表例です。
 しかし、その事業を始めようとした時点では、コロナについて知りえなかったわけですよね。
これでは、じゃんけんで「チョキ」を出して負けた際に、「なぜチョキを出してしまったのか」と悩むのと一緒です。
あまりにも不毛であり、イライラは増すばかりです。  

――「いったい」も良くないことですか? 

 「いったい」は、絶対に知りえない未来へ焦点が向いた質問です。
「いったい自分の仕事はどうなるのか」、「いったい、いつ治療薬ができるのか」……こうした問いの答えは、そのときにならなければ知りようがないため、やはりイライラが増幅してしまうんですね。
 大切なことは、「今を楽しむ」、「できることしかできないのだから、できることだけに取り組む」というマインドです。人は不安が高まると、すぐにでもその気持ちをゼロに近づけようとしてしまいがちです。
しかし、それは極めて困難なことであり、さらなる不安を生んでしまうのです。

■「何かに没頭する」だけで不安は減少する  
――未来への不安は未来にならなければ解消できない、と。やっぱり横に置いておくしかない。

 そのとおりです。
それどころか、未来ではそのまた未来への不安が、必ず出現します。
そこで有効なのがマインドフルネス思考と呼ばれる「今を楽しむ」という考え方ですが、難しく考える必要はありません。
好きな映画を観る、作りたかった料理にチャレンジする、好きな運動をする――、いま自分ができること、したいことに没頭するだけで、人の不安やイライラは少なからず減少します。
 一方で、「今を楽しむものが見当たらない」なんて方も患者さんの中にはいらっしゃいます。
そうした方に対して私は、無理をして新たな趣味を見つけようとするのではなく、「新型コロナウイルスが収束した際のやりたいことリスト」を作って貰っています。
 すると、実はその中に、コロナ禍の今でもできることが存在していたり、リストの中身について診察の中で話し合うことで気持ちが落ち着いたり、そもそもリストを作成すること自体が「できること」であるため、「やってみて良かったです」、「新型コロナが収束した後も、定期的にリストを作ってみたい」などと話される患者さんもいらっしゃるのです。
「今を楽しむ」ようにする一方で、「解決できないこと」にはしない。
それが気持ちを落ち着かせるうえで、大切なことなんですね。

山下 悠毅(やました・ゆうき) 1977年生まれ。
精神科医。ライフサポートクリニック院長。
専門は依存症全般、パーソナリティー障害。
さまざまな企業においてコーチングやマーケティングの研修講師としても活躍する。
極真空手の選手としても知られる。
著書に『いい子をやめれば幸せになれる』(弘文堂)など。

我妻 弘崇 :フリーライター
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2021年04月07日

ペットボトルは大丈夫?「隠れ老化」6つのSOSサイン

ペットボトルは大丈夫?「隠れ老化」6つのSOSサイン
2021年04月06日   日刊大衆

 なんだか最近、よく息切れする腰が痛い歯がグラグラする……人間、誰しも“老い”には勝てない。
 ただ、気づかないうちに、衰えが進む“隠れ老化”には用心が必要だという。
これを放置しておくと、さらに老化が進んでしまう恐れがあるからだ。

 隠れ老化の恐怖……
たとえば、「新品のペットボトルのフタがうまく開けられない」経験をした人はいないだろうか。
これは、末梢神経と筋力の衰えのせいだという。
 また、家族に「テレビの音量が大きすぎる」と言われたことはないだろうか。
「この症状は、鼓膜などの聴覚器官の衰えが原因。補聴器で改善できます。

一方で、居酒屋など雑音の多い場所では会話が聞こえにくいという症状は、脳が特定の音(人の声)を拾う能力が低下して起こることもあり、補聴器では対応できないケースもあります」(都内の耳鼻科医)
 循環器の専門医で、中高年の心身医療に詳しい医学博士の石蔵文信氏は、「老化現象については、どこが老化しているのかを判別するのが難しいケースがあるのため、注意が必要です」と、指摘する。

 脳の老化では、ズボンのチャックが開けっぱなしというものも。 「今年で66歳になる私も、思い当たる節があるんですが、最近、車を駐車スペースにピシッと止められないんです。これも、脳が老化している証拠だと言えます」(石蔵氏=以下同)

 脳の老化を防ぐには、「まず、血圧や血糖値などを、しっかり管理すること。老化は血液や血管から始まるんです」
 便秘も、体の発する老化の“SOSサイン”。
「食が細くなり、腸を動かす筋肉が弱くなっていることが主因です」
バランスの良い食事を心がけ、腸に良いとされる発酵食品を食べよう。

 医食同源老化防止には食生活の見直しが有効だとされるが、“気持ちの切り替え”も重要だという。
「老化するのはある意味、しかたがないこと。
“老いを受け入れる気持ち”を持つことも大切なんです」
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2021年04月08日

6時間睡眠の人ほど「体調不良に陥る」納得理由

6時間睡眠の人ほど「体調不良に陥る」納得理由
ミスが多いのはただの「睡眠不足」が原因かも
2021/04/07 東洋経済オンライン
樺沢 紫苑 : 精神科医、作家

忙しい日本のビジネスパーソンは総じて、睡眠不足に陥りがちです。
しかし、「睡眠時間を削って働く」よりも「睡眠時間を1時間増やす」ほうが、圧倒的にパフォーマンスが上がるということが、科学的にも証明されているのをご存じでしょうか?

書籍『ブレイン メンタル 強化大全』から、精神科医の樺沢紫苑氏が「パフォーマンスを上げる睡眠法」についてご紹介します。

6時間睡眠続けるだけで「酔っぱらい状態」に
睡眠時間を削ると脳のパフォーマンスが著しく低下します。
どのくらい下がるのかというと、6時間睡眠を14日間続けると48時間徹夜したのと同程度の認知機能になります。
別の研究では、6時間睡眠を10日間続けただけで、24時間徹夜したのと同程度の認知機能になるという研究もあります。
これは具体的には、日本酒を1〜2合飲んだときの「酔っぱらい状態」での認知機能に相当します。

つまり、毎日6時間睡眠を続けている人は、「毎日徹夜明けで仕事をしている」「お酒を飲みながら仕事をしている」のと同じくらい低いパフォーマンスで、日々仕事をしているということです。
睡眠を削ることで、集中力、注意力、判断力、実行機能、即時記憶、作業記憶、数量的能力、数学能力、論理的推論能力、気分、感情など、ほとんどすべての脳機能が低下することが明らかにされています。
さまざまな実験や研究の結果から、睡眠不足の人は、本来持つ自分の能力の1〜2割も低い能力で、毎日仕事をしていることがわかっているのです。

がんばっても仕事がはかどらない。
ミスや失敗が多く叱られる。疲れやすい。感情が不安定。人間関係も悪化する……。
睡眠時間を少し増やしただけで、仕事や人間関係の悩みが解決するとしたら、どんなに素晴らしいことでしょうか。
多忙な人にこそやっていただきたいのが、「1週間限定、睡眠時間1時間アップチャレンジ」です。
今日から、「ずっと」睡眠時間を1時間増やさなければいけない、というと「難しい」と感じるかもしれません。
なので、ずっとやる必要はありません。
「1週間限定」でいいので、いつもより1時間早く寝て、1時間だけ睡眠時間を増やしてください。
スマホ、テレビ、ゲームなどの余暇時間を少しだけ削る。
帰宅後の家事も1週間だけサボッてみる。
1週間だけなら、できるのではないでしょうか?

睡眠時間6時間以下の人は、集中力、注意力、判断力、記憶力など著しい脳機能の低下を伴っており、「徹夜明け」と同程度の認知機能、作業能力しかないことをお伝えしました。
「そんなわけはない」と思うかもしれませんが、「認知機能が下がっている人は、自分の認知機能の低下に気付かない」という研究があります。
慢性的な睡眠不足による仕事のパフォーマンス低下には、自分では気付けない。
仕事が終わらないので残業が必要になる。
残業が多いので睡眠時間を削らざるを得ないという悪循環なのです。

さらに疲労やストレスもたまり、何をやってもうまくいかないという泥沼の状態に陥っているのです。
それは、単なる「睡眠不足のせい」です。
たった1時間睡眠を増やすだけで脳の機能は著しく改善します。
仕事のパフォーマンスは上がり、仕事の生産性は上がります。
仕事のミスも減り、仕事は効率化し、仕事が早く切り上げられるようになり、そこで睡眠時間が確保できるようになります。

睡眠不足では、「10キロ」の足かせをしているのと同じ。
それを取り除けば、今までとは別次元のパフォーマンスが出せるのは当然のことです。
「しっかり眠ると、こんなに調子がいいんだ」という気付きを得るだけで「睡眠改善」へと、大きな一歩を踏み出すことができるはずです。
「睡眠時間を1時間増やす」は、最も簡単で、最も効果が得られる最強の仕事術なのです。

「26分の仮眠」で能率が向上する研究も
平日、睡眠不足の人は、「仮眠」をとるといいでしょう。
仮眠によって、日頃の睡眠不足がなしになるわけではありませんが、「集中力低下」などの脳のパフォーマンスを改善し、健康に対する害を減らすことが可能です。
アメリカのNASAの研究によると、26分の仮眠によって、仕事効率が34%アップ、注意力が54%アップしたそうです。
アメリカでは、Googleやナイキなど、仮眠室やナップポッドと呼ばれる睡眠マシンを導入する企業が増えています。

では仮眠の場合、何分眠るのがいいのでしょう?
仮眠についてさまざまな研究がありますが、20〜30分が効果的と考えられます。
30分を超えると効果が徐々に悪くなり、1時間を超える仮眠は、脳のパフォーマンス的にも健康的にも悪影響を及ぼします。

1時間を超えると深い睡眠に入ってしまうため、その後、目を覚ましてもすぐに脳は正常のパフォーマンスには戻りません。また、1時間を超える仮眠は、夜の睡眠に悪影響を及ぼします。
仮眠の健康に対する影響ですが、1日30分以下の仮眠が、アルツハイマー病の発症リスクを5分の1にするという研究があります。
しかし、1時間以上の仮眠は、アルツハイマー病のリスクを2倍に増加させます。
働く男性の場合、週に3回以上、毎回30分の昼寝をする人は、死亡率が37%低く、心臓病での死亡率は64%も低くなります。
また、糖尿病に関しても同様で、毎日30分程度の仮眠をとる人は、糖尿病のリスクが低く、逆に1時間以上の仮眠をとる人は、糖尿病のリスクが45%高くなる、という研究があります。

まとめると、1日30分前後の仮眠は、疲労回復、認知症予防、心臓病予防、糖尿病予防、身体の健康という観点からも、非常にいい。
1時間を超える仮眠は、健康によくない、といえます。

「正しい仮眠」を取るための5つのルール

1:30分以下20〜30分が効果的 60分を超えないように注意してください。

2:眠る前にカフェイン摂取
眠る前に、コーヒーや緑茶などカフェインを摂取しておくと、約30分後にはカフェインの効果があらわれるため、自然に目覚めやすくなります。

3:できれば身体を横に 理想的には平らなところで眠るのがベストです。
難しい場合は、リクライニングチェアで60度くらい角度をつける。
できるだけ身体をリラックスさせたほうが、身体の疲労回復効果が得られやすいです。

4:15時までに終了 15時以後の仮眠は、夜の睡眠に悪影響を及ぼすので、マイナス効果となります。

5:30分で食事、30分仮眠 60分の昼休みがある方は、30分で食事をして、残りの時間を仮眠に当てると、ちょうど、20〜30分を仮眠時間として確保できます。
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2021年04月09日

生きることに疲れた人が「手放すべきもの」とは?

生きることに疲れた人が「手放すべきもの」とは?
生きづらいのはあなたのせいではない
2021.4.8 Diamondオンライン
クルベウ 藤田麗子

長引くコロナ渦中。引きこもりがちな毎日に、ストレスを感じている人も多いのではないだろうか。

寝ても疲れが取れない、ちょっとしたことですぐ不安になる、自分だけが取り残されているように感じる……という人にぜひ読んでほしいのが、2021年4月14日に刊行する『大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをした』(クルベウ著 藤田麗子訳)だ。

原著は韓国で2020年7月に発売。
発売後5ヵ月で6万部を突破し、韓国の大手書店でもベストセラーランキング入り。
「つらいときにひとりで読みたい」「低くなった自尊心を満たしたいときはこの本が役立つ」「誰が読んでも共感できる内容」と絶賛の声が数多く寄せられている。

著者のクルベウ氏は事業に失敗し、自分を励ますためにSNSに投稿していた癒しの言葉が多くの共感を集め、2015年に作家デビュー。
処女作『心配しないで』はBTSのファン感謝イベントでJ-HOPEから「メンバーのJINにおすすめしたい本」として紹介され、ファンの間で「BTSおすすめの作家」として話題に。クルベウ氏は韓国では著書累計55万部を突破するなど、「韓国のSNS作家として一番人気」との呼び声も高い。
そんな人気作家のベストセラーエッセイの邦訳が2021年4月14日に刊行となる。
「自分らしく、豊かに生きるためのメソッド」が詰まった本書。今回は、日本版から「人生に訪れる三度のチャンス」について、一部抜粋・編集して紹介する。


人生に訪れる三度のチャンス
タクシーに乗ったとき、運転手からこんな話を聞いた。
その運転手はふだんは、とある企業の理事をしていて、会社のプロジェクトの一環として、タクシーを運転しながら客の悩みを聞く活動をしていると言う。

生きていれば、誰にでも三度のチャンスが訪れる。
でもほとんどの人々は、そのチャンスがジャンボ宝くじに当選するとか特別な幸運に出会うとか特別な人が自分に会いにくることだと考えている。

でも、それはチャンスじゃない。
すでに完成された幸運だ。
実際、人生においてそんな幸運は、たった一度巡ってくるかこないかだ。

人生に訪れる三度のチャンスはこういうものだ。

1つ目は、まるで反りが合わない人やまったく自分に合っていない仕事を手放すチャンス。
この機会を逃してはならない。これを逃したら、間違ったことにとらわれ続けて人生をムダにしてしまう。

あまりにも自分に合わないことを続けていると、経験だと見なすことすらできなくなる。
心が傷だらけになって、新しいことに挑戦するために必要な勇気を失ってしまうからだ。

「あなたを大切にしてくれる人」を大切にしているか

2つ目は、自分を心から愛してくれる人をもっと大切にしながら共に生きていくチャンス。
人は本当に奇妙だ。
いくら好きでも時が過ぎれば慣れてしまう。
それが大きな問題だ。

慣れのせいで感謝の気持ちと相手を大切に思う気持ちが消える。
そして、この世に2つとない相手の思いやりが、どうでもいいもののように感じられる。
その状態が続くと、いろいろなことが気に食わなくなって、相手に憎しみを感じ、愛が冷めていく。
その結果、大切な人を失って、ひとりになってから後悔の念にさいなまれたり、
この先の人生において二度とそんな相手に出会えなくなったりするかもしれない。

もし今、家族や友だち、恋人など、あなたを心から心配して、あなたを心から愛してくれて、あなたを心から大切に思い
あなたと一緒に過ごしたいという人がいるなら あなたにはその気持ちを大切にして、かけがえのない人を守るチャンスがあるんだ。

年齢は関係ない!得意分野は必ず見つかる

3つ目は、年がいくつであろうと、今どんな状況に置かれていようと、誰にでも必ずある、得意分野を見つけるチャンス。
私は会社に勤めながら、さまざまな人を見てきた。
それぞれに好みがあって気質もちがうが、誰にでもうまくやれることが存在する。

仕事を辞めてそれを探せと言っているわけじゃない。
もちろん、自分が望むならそうしてもいいけれど、大切なのは好きなことを見つけるのをあきらめない姿勢だ。

誰の人生にも、好きなことを探すチャンスがある。
そのチャンスを捨ててはならない。
好きなことはたいてい、時間が経つにつれて得意なことになっていく。

生きる「速さ」を見直そう

そして、最後にもう1つ付け加えるとしたら、自分を愛するチャンスだ。

生きていれば、どんな慰めの言葉も耳に入らず、二度と立ち上がれそうにない困難が訪れることもある。
積み上げた砂の城を波がさらっていくように、一瞬にして心が崩れることもある。

そのときにできるのは、自分をもっと愛することだ。
あなたには、自分を愛するチャンスがあるということを忘れないでほしい。

自分をもっと理解して
自分にもっと寛大になり 生きる速度が速すぎるときは立ち止まって自分のためになることとは何なのか、真剣に考えてみるといい。

話を聞いているうちに、いつのまにか目的地に到着していた。
降りるために私が荷物をまとめていると、運転手は言った。

美しく咲く人よ
日々の小さな出来事に失望せずに
今日も明日も幸せに過ごせますように。

(本原稿は、クルベウ著 藤田麗子訳『大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをした』からの一部抜粋・改変したものです)
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2021年04月10日

平均月給は28万円弱…日本のサラリーマン「唖然の手取り額」

平均月給は28万円弱…日本のサラリーマン「唖然の手取り額」
4/9(金) 幻冬舎ゴールドオンライン

厚生労働省のレポート「令和2年賃金構造基本調査」によると、日本のサラリーマンで、いわゆる平社員の平均給与(所定内給与額)は27万8400円(平均年齢40.7歳、平均勤続年数10.2年、平均所定内実労働時間165時間、超過実労働時間平均11時間)。
手当や賞与などを加味すると、平均年収は442万6800円となる。

税率は高くなり、物価も上がるなか、どのような生活をしているのか。

手取りにすると「月収約24万円」という悪夢
日本のサラリーマン、平社員の平均月給27万8400円は、手取りにすると約24万円となる計算だ。
「老後2000万円不足する」「いや、余裕がある暮らしいは3500万円は必要だ」などと言われるなか、コツコツと貯蓄するにあたっても、あまりにも少ない。
厚生労働省は「働き方改革実行計画」(平成29年3月28日 働き方改革実現会議決定) を踏まえ、副業・兼業の普及促進を図っている。

令和2年9月には「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が改定された。
ガイドラインには、副業・兼業の促進の方向性に関して、 “労働者が副業・兼業を行う理由は、収入を増やしたい、1つの仕事だけでは生活できない、自分が活躍できる場を広げる等さまざまであり、業種や職種によって仕事の内容、収入等も様々な実情があるが、自身の能力を一企業にとらわれずに幅広く発揮したい、スキルアップを図りたいなどの希望を持つ労働者がいることから、
こうした労働者については、長時間労働、企業への労務提供上の支障や業務上の秘密の漏洩等を招かないよう留意しつつ、雇用されない働き方も含め、その希望に応じて幅広く副業・兼業を行える環境を整備することが重要である。

” と書かれており、「収入を増やしたい」「1つの仕事だけでは生活できない」という労働者の切実な思い(それは切迫した家計によるものであろう」が、理由としてまずあげられていることに注目される。

実際、生活にはどのくらい余裕がないのであろうか。
家賃は収入の25%〜30%くらいで設定することが貯蓄のポイントとしてよく言われる話ではあるが、手取りを約24万円とすると、6万円〜7万2000円……都内では1Kでも厳しいところがある。
これに食費・光熱費・スマホ代と加わってくるわけだから、自由に使えるお金などまるでなく、貯蓄などはしたくてもできないジリ貧の状況が続く。

つみたてNISAやiDeCoなど税メリットのある制度を国が用意しても、そもそもカツカツに節約してようやく生活が成り立つ収入であるわけだから、投資資金などは準備できるわけがない。

お金もないが、時間もない…サラリーマンの実態
ならば、と副業・兼業が推進されているわけだが、そもそも日本のサラリーマンは「時間がない」のも実情だ。
働いた分、稼ぎが増えるならばいいが、大手でなければいまだにサービス残業のような風習は根強い。
文京区に勤務する30代の安西さん(仮名)はこう語る。
「給与にみなし残業が含まれているので、残業代をもらったことはありません。
タイムカードも手書きで上長がチェックする雑なものなので、なんとか時間内におさまるように適当に記入するのに、また頭を使って時間をかける……という本末転倒な状況になっています」

労働基準監督署に訴えるという方法は取れないのだろうか。
「労基に訴えて、我々の労働環境が是正されたところで、今度は会社がうまく回らなくなるのは目に見えています。
それでは自らの首をしめるようなものです。
転職をしたいと考えていたこともありましたが、コロナ禍でいつの間にか人材市場は買い手市場になってしまいました。
生活は苦しいですが、動くことで今よりよくなる見込みがありません」

政府は「副業・兼業」も推進しているが。 「仕事もプライベートも、今あることをただただ懸命にこなすことで、なんとか生活できているという状況です。
副業をする時間など捻出できません。
片手間にやって成功するものでもないでしょうし、そもそもうちの会社が副業を認めているかどうかもわかりません。
もし少しの稼ぎがそれでできたとしても、今度は確定申告をやらなければならなくなるでしょう。
会社から提出を要請される年末調整の書類でさえ記入するのに精一杯なんです。
よほど大きく儲かる見込みがなければ、費用対効果も合わないと思います。

疲労が蓄積し、仕事にも影響が出て、会社にも迷惑がかかります」
「働き方改革」は誰にとっても「人ごとではない」

「お金がない」というリアル
会社での労働で忙しく、副業などする時間はないという安西さん(仮名)。
政府は「働き方改革」も進めているがその実感はない。

厚生労働省のホームページには、「働き方改革の目指すもの」として、下記のように書かれていた。
“我が国は、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化」などの状況に直面しています。
こうした中、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作ることが重要な課題になっています。
「働き方改革」は、この課題の解決のため、働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指しています。
” 政府の取り組みをみるかぎり、日本は、超少子高齢化という問題を抱えるなか、「企業で働く」ことだけでは、個人が満足に生活できない社会に突入しているようだ。

安西さんのように「とはいえ動けない」労働者も、「動かざるをえない」状況にまで追い込まれる日は近いかもしれない。
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2021年04月11日

これは何かの冗談ですか? 「日本の戦場化」につながる動きを多くの人はまだ知らない

これは何かの冗談ですか?
「日本の戦場化」につながる動きを多くの人はまだ知らない
4/10(土) 現代ビジネス(半田 滋)

 防衛省が米空母艦載機の離着陸訓練(FCLP)施設の建設を計画する鹿児島県西之表市の馬毛島。
計画通り、米軍のFCLPが実施されることになれば、長崎県の米軍佐世保基地の「空母準母港化」が浮上し、在日米軍基地の運用に変化を呼び込む可能性がある。

 防衛省は、馬毛島の99%以上の土地を保有する地権者との間で買収契約を交わし、今年2月、訓練の騒音や工事に関する環境影響評価(アセスメント)の手続きを始めた。
 想定しているのは、横須賀基地の米空母「ロナルド・レーガン」の艦載機による訓練基地として米軍に提供することだ。
日本政府は米軍の運用に注文を付けられないため、ひとたび提供すれば、使い方は米軍次第となり、佐世保入港する空母の艦載機の訓練基地として利用することも可能になる。

 佐世保基地には、横須賀基地を事実上の母港とする米第7艦隊の艦艇のうち、強襲揚陸艦「アメリカ」など沖縄の米海兵隊の「足」となる揚陸艦5隻と掃海艇4隻が常駐している。

空母の佐世保入港の歴史 
 空母は配備されていないが、空母の佐世保入港の歴史は古く、1960年2月のミッドウェイを皮切りにこれまで113隻が入港した。
 1967年には翌年1月に予定された原子力空母「エンタープライズ」の佐世保入港をめぐり、革新団体、学生らが「佐世保港がベトナム戦争の出撃基地になる」と訴えて入港阻止闘争を繰り広げた。
 米国が本格的にベトナム戦争に参戦するきっかけとなった64年のトンキン湾事件以降、73年にパリ和平協定が締結されて終戦を迎えるまで、米空母の佐世保入港は61隻を数え、佐世保市はベトナムで戦う米軍のための補給拠点および休養地として利用された。

 エンタープライズの初入港以来、原子力空母の佐世保入港は16回。通常動力型空母の退役により、2007年以降の寄港はすべて原子力空母だ。
 原子力空母の寄港数はロナルド・レーガン、ジョージ・ワシントンが3回ずつ、エンタープライズ、カールビンソン、エイブラハム・リンカーン、ジョンC・ステニスが2回ずつ、ニミッツが1回となっている。

 横須賀配備の空母が沖合で艦載機を発艦させ、甲板、格納庫ともほぼ空っぽになった状態で横須賀入港するのに対し、佐世保に入港する空母は艦載機を満載している。
 艦載機を積んだまま入港するのは滞在期間が5日前後と短いためだが、逆に言えば5日前後と短いのは艦載機を降ろすのに適当な航空基地が近くにないからだともいえる。
 例えば、ロナルド・レーガンの艦載機は横須賀基地と同じ神奈川県にある厚木基地を利用してきた。
しかし、佐世保基地に入港する空母の艦載機が厚木基地を利用しようにも、佐世保からの距離は約900キロと遠い。
実際の艦載機の発艦はより遠方の沖合で行われるから佐世保入港する前の空母から発艦した艦載機は1000キロ以上の距離を飛行することになる。

 現在、硫黄島で行っているFCLPは厚木基地から硫黄島までの距離が1200キロあり、以前から米軍は「遠すぎる」と不満を訴えていた。
佐世保入港する空母からすれば、厚木基地は遠すぎたのだ。

岩国移駐を受け入れた理由
 だが、厚木基地の艦載機部隊のうちの固定翼機は、2006年5月に日米合意した米軍再編最終報告にもとづき、2018年3月に山口県の岩国基地へ移駐した。
 岩国移駐は日本政府にとって、住宅が密集する厚木周辺の騒音解消が狙いだったが、米軍は空母の拠点である横須賀基地から離れることで利便性が低下するにもかかわらず、岩国移駐をすんなり受け入れた。
 それは米軍にも利点があるからだ。

米軍は艦載機の岩国移駐でスカスカになった厚木基地を1平方メートルも日本政府に返還していない。
その一方で移駐先の岩国基地に官舎、宿舎、格納庫など必要な施設を日本政府の費用で建設させた。
 この結果、米軍の艦載機部隊は厚木、岩国という2つの基地を労せずして手に入れることなった。
これが岩国移駐を受け入れたひとつの理由である。

佐世保基地の「空母準母港化」
 もうひとつの理由は佐世保基地の「空母準母港化」にあるとみられている。
 佐世保基地から岩国基地まではわずか250キロ。
沖合から発艦させても艦載機が楽に飛行できる距離だ。
艦載機が岩国基地で訓練するようになれば、空母は長期間、佐世保にとどまり、補給を受け、乗員が休養することが可能になる。
まさに佐世保基地の準母港化である。

 米軍再編最終報告の日米合意から1カ月も経たない2006年5月25日、エイブラハム・リンカーンが佐世保に入港した。
この年から5年連続して合計6隻の空母が佐世保に入港、準母港化の既成事実化が始まった。
 2011年以降、空母の佐世保入港は4回にとどまっているが、この間、米政府は太平洋重視の政策(リバランス政策)を打ち出し、太平洋配備の空母を6隻に増やした。
常時2隻がインド太平洋の任務航海に就いている。
いつ佐世保に空母が入港してきたとしても不思議ではない。

 一方、横須賀配備のロナルド・レーガンは毎年6カ月程度、横須賀基地を離れる。
艦載機を満載して任務や訓練に出ている間、艦載機部隊の岩国基地は閑散としており、別の空母の艦載機部隊を受け入れる余地が生まれる。
 問題だった佐世保基地と厚木基地との遠すぎる距離は、艦載機部隊の岩国移駐により、解消した。
硫黄島で行っているFCLPが馬毛島で実施できるようになれば、佐世保に入港する空母の艦載機部隊も馬毛島を利用可能となり、「佐世保の空母準母港化」の受け皿は整うことになる。

 母港化ではなく、準母港化と「準」が付くのは、佐世保基地には横須賀基地のような空母を本格修理できるドライドックが
なく、また横付けできる岸壁もないので基地の沖合に停泊する中途半端な使い方にとどまるからだ。

馬毛島が“日米一体化のシンボルに
 しかし、準母港化の環境が整えば、これまでのような5日前後の滞在では終わらない。
艦載機パイロットが乗艦資格を得るのに不可欠なFCLPを行う馬毛島は目と鼻の先である。
長期の佐世保滞在が想定される。

横須賀を含めて、日本が空母2隻の拠点になるのだ。
 防衛省は馬毛島に自衛隊を常駐させてふだんは自衛隊基地とし、米軍は自衛隊との共同使用とする方針だ。
単独の米軍基地とした場合、米軍のやりたい放題となり、周辺住民の不満を高めることになりかねないからだ。
 防衛省の計画では、馬毛島を硫黄島と同様の「基地の島」とする。
硫黄島には滑走路を備えた海上自衛隊の基地がある。
ふだんは海上自衛隊が使用しているが、ロナルド・レーガンが艦載機を搭載して出港するのに合わせてFCLPが行われ、米兵らは防衛省が提供した米軍宿舎に寝泊まりする。
 馬毛島の場合、岩国基地から約400キロメートルと近いことから、FCLPの日帰り訓練も可能になる。
とはいえ、整備員らは数日間の訓練期間を通じて、馬毛島に滞在する必要があり、硫黄島と同様に必要な米軍施設は防衛省が建設することになる。

 馬毛島に自衛隊が常駐すれば、南西防衛は強化される。
大量の燃料を備蓄することになるので、物品役務相互提供協定(ACSA)の規定により、FCLPにやってくる米軍に提供することができる。
馬毛島は日米一体化のシンボルともなるだろう。

 護衛艦「いずも」の空母化とも無縁ではない。
空母化した「いずも」は、南西防衛に活用することから、米国から買い入れるF35B戦闘機の配備先は宮崎県の新田原基地が有力視される。
 南西諸島に向かう「空母いずも」は海上自衛隊横須賀基地から出港し、訓練海域のある四国沖で新田原基地から飛来したF35Bを搭載。
さらに南下して馬毛島を利用した離発着訓練や対地攻撃訓練が実施されることになるだろう。
 馬毛島は西之表市のある種子島に近く、騒音被害への警戒感などから西之表市の八板俊輔市長は「受け入れ反対」を表明し、1月の市長選挙で再選された。
 防衛省は何とか住民を懐柔しようと、環境整備法による消防施設、ゴミ処理施設、農林水産業施設などの建設助成を行い、また米軍再編交付金により、医療費助成、診療所運営助成、福祉バスの購入などの各種助成金も支払うとし、経済面の波及効果を前面に押し出している。

 「騒音というムチ」を与える一方で「カネというアメ」をしゃぶらせようというのだ。
 防衛省が馬毛島を購入するのに地権者に支払う金額は160億円。当初、予定した45億円に100億円以上も上乗せしたのは安倍晋三政権の官房長官だった菅義偉氏の指示とされる。
菅首相の肝いり案件のひとつが「馬毛島の基地化」なのだ。
 同時にそれは佐世保基地の空母準母港化を促し、米軍の基地機能が格段に強化されることになる。

米インド太平洋軍のデービットソン司令官は「台湾有事は6年以内にあるだろう」と述べており、日本列島はベトナム戦争以来の米軍の出撃拠点となりかねない。
 ベトナム戦争と違うのは、台湾と地理的に近い日本が戦場となるおそれがあることだ。
「馬毛島の基地化」は「日本の戦場化」を呼び込む結果にならないだろうか。
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2021年04月12日

「桜田門外の変」で食べ物の恨みは怖いと思う訳

「桜田門外の変」で食べ物の恨みは怖いと思う訳
4/11(日) 東洋経済オンライン
青沼 陽一郎 :作家・ジャーナリスト

 NHK大河ドラマ『青天を衝け』は、江戸幕府の最後の将軍となる徳川慶喜に仕え、のちに「日本資本主義の父」と称された実業家の渋沢栄一の生涯を追う物語。
4月11日は幕末の政局を変える桜田門外の変が描かれる。
この歴史的事件の裏には、おそらくはドラマで語られることのない、深い食べ物の恨みが絡んでいる。

 水戸脱藩浪士17名と薩摩藩士1名が、大老の井伊直弼を暗殺した桜田門外の変。背景には開国に端を発する、慶喜の実父である水戸の徳川斉昭と井伊大老との対立があったことで知られる。
 水戸の御老公と呼ばれた斉昭の好物は牛肉だった――そういうと違和感を覚えるかも知れない。
そもそも牛肉を食べる習慣は、明治維新によって広まったはずだし、仏教信仰が広く浸透していた江戸時代には、ほとんどの日本人は肉食を忌避していたとされる。

 ところが、江戸時代には肉を食べていた。
それも「薬」として。
例えば、安永年間(1772〜1781年)には、麹町平河町に「山奥屋」という店があった。ここに通う武家たちは「紅葉」や「牡丹」という料理を食べていた。
鹿や猪のことをしゃれや隠語でそう呼んでいたのだ。これを「薬喰(くすりぐい)」といった。

■牛肉生産を認めていた彦根藩
 その江戸時代に、代々にわたって牛の屠畜と牛肉生産を認めていた唯一の藩があった。彦根藩だった。  それこそ、『忠臣蔵』で知られる大石内蔵助は、堀部弥兵衛に牛肉を送っている。
弥兵衛は赤穂浪士四十七士の中で最年長の討ち入り当時77歳で、その娘婿が高田馬場の決闘で見そめた堀部安兵衛だ。
このときに大石が送ったのが、彦根名物の味噌漬けだった。
 そのことを記した手紙の一文にはこうある。
倅(せがれ)主税などにまいらせ候と、かへつてあしかるべし、大笑大笑  大石の息子である主税のような若者には、強すぎる薬。
「悪しかるべし」と笑っている。

 彦根藩主の井伊家では、太鼓の張り替えに毎年5枚の生皮と一緒に、牛肉を「薬」として幕府、将軍家に献上。御三家や老中などにも進呈していた。このお裾分けの牛肉が大好きだったのが、水戸の御老公斉昭だった。  ところが、直弼が藩主の座につくと、牛の屠畜を一切禁止してしまったのだ。直弼は、母親が側室で庶子であったことから、家督を継ぐことはないはずだった。
若い頃から井伊家の菩提寺に入り、袈裟血脈を許された僧侶の資格を持っていた。
 その後も「埋木舎(うもれぎのや)」と呼ばれた邸宅で、世捨て人のように暮らしていたが、兄の死により人生が一転する。それでも敬虔な仏教徒だったから、殺生を忌み嫌ったのだ。

 そうすると、斉昭のもとに牛肉が届かなくなる。
毎年、寒い時期になると彦根から届く牛肉の味噌漬けを楽しみにしていた斉昭。
ところが、どうしたことか、その年はやって来ない。
事情を知らない斉昭は、直弼に使いを出す。毎年楽しみにしていたのに、今年はやってこない。何卒お送りください、と。
  すると直弼から、今年から領内の牛を殺すことを禁止いたしましたので、牛肉を差し上げられません、お断りいたします、との返事がくる。

■特別扱いを申し出た斉昭
 それでも諦めきれない斉昭は、再び使いを出す。
領内の牛を殺すことを禁じたのであれば、しかたがないが、これまで毎年食べていることで、特に江州の牛肉は格別だから、私のためだけにでも特別に手配していただきたくお頼みします、と。
つまり、特別扱いを申し出たのだ。

 これを直弼が承知するはずもなかった。
なんと言われようと、領内の禁止事としたので、そんなことはできない旨を伝え、「たつて御断り申し上ぐる」と厳しく断っている。
 このやりとりを記録した『水戸藩党争始末』の「老公と大老の不和」と題する項目の原書は、こう結んでいる。
かくのごとく、公よりたびたび御頼みありし事を、さらに承知せざりしかば、さすがに不快に思召されしとなむ
 水戸の御老公と大老の不仲は牛肉から始まっていたのだ。

 記録に残るくらいだから、好物を分けてくれない相手をなじるくらいのことはしただろう。
上司の吐いた言葉が部下の耳に伝わり、言葉だけが広がっていくことは、どの時代にもある。
私怨がいつしか大義と入り乱れ、相手への恨みが膨れていく。
それが究極の事件となる――。

 そんな事情もあって、斉昭に近い諸侯は直弼のことを「愛牛先生」と呼んだ。やはり直弼から処罰を受ける福井藩主の松平慶永(春嶽)が斉昭に送った書面にも、また、土佐藩主の山内豊信が慶永に送った書簡の中にも「愛牛」の文字を見ることができる。
 それだけ諸侯の間には、彦根の牛肉事情は知れ渡っていた。
 もっとも、大名の多くは直弼の牛への愛情をして、「佞佛(ねいぶつ)」と呼んでいた。
「佞」とは、へつらう、おもねる、の意味。
つまり、仏をおもねるあまり、道理を欠いた仏徒のことをさしている。
牛の屠畜を禁じながら、安政の大獄で反対派の首を次々とはねていったのだから、そう呼びたくもなる。

 斉昭にも劣らず、肉好きだったのは息子の慶喜も一緒だ。
のちに慶喜が、江戸の街火消しだった新門辰五郎を、京に連れてきていたことは広く知られる。
その辰五郎に2分ずつ渡して「今日も買ってきてくれ」と、牛肉を買いにやらせていた。
生粋の江戸っ子の侠客が、寺社仏閣の建ち並ぶ京の都で、四つ足の肉を買い漁るのだから、京童部たちに嫌われていたのも無理はなかった。
 一橋家に奉公するようになった渋沢栄一も、京都滞在中の月の手当が4両1分で、抱えた借金返済のために節約を心がけ、「朝夕の食事も汁の実や沢庵を自分で買出しにいって、時々竹の包みに牛肉などを買って来た、それが最上の奢りであった」と自伝『雨夜譚』に記している。
栄一も牛肉をごちそうとして味わっていたことがわかる。

■豚肉も大好きだった慶喜
 ただ、慶喜は牛肉もさることながら豚肉も大好きだった。
そのことは市中にも知れ渡っていたようで、ついた渾名が「豚一殿」。
豚が好きな一橋のお殿様、という意味だ。

当時、豚は薩摩藩の名産だった。
統治していた琉球の文化の影響もあって、薩摩では古くから豚肉を食べた。
西郷隆盛の好物も「とんこつ」という豚料理だったことで知られる。
 もともとは、薩摩藩主だった島津斉彬が水戸の斉昭に豚を送っていた。
そこからはじまる慶喜の豚好きが薩摩を困らせる。
弱冠28歳の若さで薩摩藩の家老に就いた小松帯刀が、元治元年(1864年)に京の屋敷から郷里に送った手紙に、慶喜からたびたび豚を所望されて困っていることを、まさに愚痴のように書いている。
 帯刀は自分が持っていた豚肉を3回も慶喜に送ったこと、それで手持ちがなくなったこと、それでも使いを寄こして催促してくることなどを書き連ね、「大名と申者不勘弁之者、大キに込入申候」と締めくくっている。
大名とは、どうしてこう聞き分けのないわがままなのか、大いに困り入った、というわけだ。

 肉をしつこくねだる姿は、父親の斉昭にそっくりだ。
ひょっとしたら、この豚肉が由縁で倒幕につながるのかもしれない。
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2021年04月13日

「みんなマスクしていますよ」なぜ日本人はこう言われると弱いのか

「みんなマスクしていますよ」なぜ日本人はこう言われると弱いのか
2021年04月12日 PRESIDENT Online
ルポライター 早坂 隆

日本人は海外からどう見られているのか。
『世界の日本人ジョーク集 令和編』(中公新書ラクレ)を出したノンフィクション作家の早坂隆さんは「新型コロナの感染拡大で、日本人の独特な行動様式は海外から不思議がられた。
当の日本人は無自覚だが、真の変人とはそういうものだ」という――。
※本稿は、早坂隆『世界の日本人ジョーク集 令和編』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したのもです。

■コロナによって浮き彫りになった国民性 【パンデミック】
●外出 コロナ禍において、世界各国の政府が国民に外出を控えるよう求めることになった。
アメリカ政府はこう発表した。
「外出は正義に反する」 アメリカ国民は外出しなくなった。

イギリス政府はこう発表した。
「外出は紳士的ではない」 イギリス国民は外出しなくなった。

中国政府はこう発表した。
「外出したら拘束する」 中国国民は外出しなくなった。

フランス政府はこう発表した。
「外出しろ」 フランス国民は外出しなくなった。

日本政府はこう発表した。
「外出の自粛を要請します」 日本国民は外出しなくなった。

2020年、新型コロナウイルス感染拡大という災厄は、世界各国それぞれの「お国柄」を見事に浮き彫りにしました。
否、「本性を炙り出した」と言ったほうが良いでしょうか。
いわゆる「第1波」の際、アメリカでは銃弾の売れ行きが急増。これは日用品不足に端を発する略奪行為に市民が備えた結果でした。
いかにも「銃社会」のアメリカらしい反応でしたが、ネット上には「ウイルスより銃のほうが怖い」「銃メーカーがウイルスをばらまいているのでは?」といった投稿が溢れました。

フランスでは人気サッカークラブ「パリ・サンジェルマン(PSG)」の試合が無観客試合となりましたが、スタジアムの周囲には数千人ものサポーターが集結。
大声でチャント(応援歌)を唄いながら、花火を上げたり発煙筒を焚いたりしました。
フランスのネット上には「彼らが感染して亡くなれば、フランス国民の知能水準があがる」といったシニカルなコメントが相次ぎました。

アフリカのチュニジアでは「感染の予防にニンニクが効く」とのデマがSNSを通じて拡散。
ニンニクの価格が急騰しました。

日本を含むいくつかの国々では、トイレットペーパーが品薄に。こちらもデマが原因でしたが、オーストラリアではトイレットペーパーを巡る乱闘騒ぎが勃発。香港ではついに「トイレットペーパー強盗」まで登場しました。
そんな一連の騒動を皮肉って、SNS上にはこんなツッコミも。
「そんなにトイレットペーパーを買っても、お尻は一つしかないよ」。

■世界が驚いた「ジャパン・パラドックス」
結局、欧米などの多くの国々ではロックダウン(都市封鎖)を実施。
罰則を伴う厳しい外出禁止令に踏み切りました。
しかし、日本はあくまでも「自粛要請」という「緩い」かたちでの対応を選択。
当初、海外のメディアはこのような日本の姿勢に対して、かなり懐疑的でした。
「罰則がなければ外出者数を抑え込めるわけがない」というのが世界の常識だったのです。

国際社会は「日本人は甘すぎる」と冷笑しました。
しかし、日本人は外出を控えました。
感染者数や死亡者数は、欧米諸国などよりも低い水準で推移し、今に至っています。
結果、世界のメディアは態度を一変。
「ミラクル」「ジャパン・パラドックス」といった言葉を使って、日本のコロナ対応を評価するようになりました。
もちろん、日本政府のコロナ対策が万全だとはとても思えませんが、例えばイギリス紙「ガーディアン」(電子版)はこう報じています。
「日本は確固たる証拠を持って、新型コロナ対策に成功した国だと主張することができる」。
2021年1月には再び緊急事態宣言が発令され、改めて外出の自粛が呼びかけられました。
さすがの日本人も、一回目の時ほどの自粛には至りませんでしたが、それでも街の人出は総じて減少傾向に転じました。

●コロナ対策
ヨーロッパの感染症医が新聞記者に言った。
「日本のコロナ対策は断崖絶壁の一歩手前である」
新聞記者が尋ねた。 「それではヨーロッパのコロナ対策は?」 感染症医が答えた。 「日本より一歩進んでいる」

■奏功した日本の「マスク文化」 【マスク】
●AIの解答
日本人の研究者グループが最新式のAI(人工知能)を搭載したスーパーコンピューターを使って、新型コロナウイルス対策を立てることにした。
ワクチンの開発方法や、新たな感染予防策の提示などを期待して、ウイルスに関するデータをすべて入力した。
数分後、スーパーコンピューターが話し始めた。
「最適な解決策がわかりました」 研究者たちは歓喜した。
スーパーコンピューターが続けて言った。 「マスクをしてください」

●マスク政策
コロナ禍において、各国の政府が国民にマスクの使用を求めることになった。

アメリカ政府はこう発表した。
「マスクをすればあなたは英雄です」

ドイツ政府はこう発表した。
「マスクをするのがルールです」

イタリア政府はこう発表した。
「マスクをすると異性にモテます」

日本政府はこう発表した。
「みんなマスクしていますよ」

このジョークには元ネタがあります。
それは「沈没しそうな客船から乗客を海に逃がす際、船長は各国の人々に何と言えば良いか」というもの。

アメリカ人には「飛び込めば英雄です」、日本人には「みんな飛び込んでいますよ」というわけ。
このネタがコロナ禍によって「変異」しました。
余談ですが、かつてこの「沈没ジョーク」を紹介した拙著の広告コピーが「みんな読んでいますよ」。
出版社側のアイデアでしたが、なかなかシャレが効いていました。

■マスク警察の登場…もはや笑い事ではなくなった
さて、そんな「集団主義」が特徴の一つとされる日本人。
今回のコロナ禍では「同調圧力」という表現が話題になりました。
「外出時にマスクをしていないと周囲の反応が怖い」と感じる人が少なくないという調査結果も報告されています。

マスク未着用の人に対して過度に攻撃的な「マスク警察」なる人々の登場に至っては、もはや笑い事ではありません。
ただし本来、集団主義自体が悪いわけではないはずです。
自分の身の回りに丁寧に気を配り、他者の迷惑にならないように留意し、自身の行動を律していくという行為であれば、それはむしろ「日本人の美徳」とも言えるでしょう。
このような公共心こそが、ウイルスの感染拡大を抑制することにつながっているのではないでしょうか。

実際、マスク着用の動機について、「自分が感染したくない」という心理と同時に「他者を感染させたくない」という思いが日本人には強いと言われています。
個人主義の強いアメリカでは、マスクの使用を嫌がる傾向が根強く続いています。
アメリカ国民によれば、「呼吸は神様から与えられた権利」とのこと。
しかし、そのような理由で「マスクをしない」という選択をすることは、「公」よりも「個」の価値観を優先している証拠と言えるでしょう。
無論、アメリカ人にとって「個の自由」は建国以来の重要な理念ですが、個人主義と利己主義の境界線というのは至って曖昧なものです。

■個人主義の強いアメリカ
米テレビ局FOXニュースの有名司会者が、新型コロナウイルスに対するアメリカ人と日本人の国民性を比較したツイートをしたところ、次のようなコメントが集まりました。
「我々アメリカ人は『俺たちはできる』という自信ゆえに、常識に従うことができない。
日本人は風邪をひいた時、周囲を守るために何十年もマスクをしてきた」
「日本は『我々』という部分を意識する。
だが、ほとんどのアメリカ人は違う。
アメリカ人が心配するのは『私』。

アメリカの利己的な部分が破滅の原因」
アメリカのマスク反対派の中には、「わざと穴を開けたマスクをして街を歩く」といった動画をSNSにアップする人まで登場。
「風刺が効いている」「ユーモアがある」という意見があった反面、「くだらない」「レベルが低い」といった反応も多く寄せられました。

●感染拡大
東京で暮らすアメリカ人の子どもが、新型コロナウイルスに感染してしまった。
母親はすぐに子どもを連れて病院を訪れた。
病院はすでに多くの感染者で溢れていたが、医者はすぐにその子を入院させ、薬の投与を開始した。
その後、その子の体調は回復し、数週間で無事に退院することができた。
病院を出る際、母親が医者に言った。
「私は治療費を払いたくありませんわ。なぜって、私はこの病院をたっぷり儲けさせたのだから」
医者は怪訝な顔をして聞いた。
「どういう意味でしょうか? 医療費はどの患者さんも同じです。
私はあなたから特別に儲けさせてもらったことなどありませんよ」
すると母親が言った。
「冗談じゃありませんわ。
この街でマスクもせずに遊びまわっていたのは、うちの子だけですのよ」

■欧米人が抱いていたマスクへの悪印象
今回のコロナ禍以前から、日本人は風邪や花粉症の予防にマスクを使用してきましたが、そのような光景は欧米人などから「おかしい」「不可思議」などと笑いのネタにされてきました。
欧米社会ではあくまでも「マスクは医療関係者や病人がするもの」であって、街で予防的に使うものではないという認識が広く共有されてきたのです。
世界的な感染症学者であるベルギー人のピーター・ピオット博士は初めて日本を訪れた際、マスクをしている日本人を見て、「パラノイア(偏執病)だと思った」と述べています。
そんな博士も、今では日本のマスク文化を称賛しています。

そもそも欧米には「顔を隠すのは犯罪者」というイメージが強くあります。
2017年、オーストリアは公共の場で顔を覆うベールやマスクなどの使用を禁じる「覆面禁止法」を制定。
「マスクは犯罪者の道具」という理屈からでした。
さらに、欧米人がマスクに抵抗を示す背景の一つには、「相手の表情や感情がわかりにくくなるのが嫌だ」という理由もあるようです

日本人と欧米人では「顔のどこを見て相手の気持ちを読み取っているか」が異なると言われています。
日本人は相手の目から感情を理解しますが、欧米人は口の動きを見るというのです。

■マスクを嘲笑した欧米人の反省
例えば、日本で用いられる顔文字は、「(^_^)」「(*_*)」「(T_T)」のように、目の変化によってその感情を表します。しかし、欧米では「:-)」「:-D」「:-(」のように口元の違いで喜怒哀楽を伝えるのです。
欧米で流行した「スマイルバッジ」を見ても、口元が強調されたデザインになっています。
一方、日本には「目は口ほどにものを言う」という表現もあります。

つまり、欧米人にとって口元とは、他人とコミュニケーションを深める上でとりわけ大事なものなのです。
日本人よりも欧米人のほうが歯並びを気にして矯正する人が多いというのも、このような背景が作用しているのかもしれません。
そんな彼らにとって、口元を隠すマスクという道具は、日本人にはピンとこない抵抗感を生じさせるものなのでしょう。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大によって、マスクとの付き合い方も転換せざるを得ない状況に。
日本のマスク文化を嘲笑していた国際社会は、ついにその態度を改めることとなりました。

■「何かのジョーク?」海外にも拡散したアベノマスク
さて、そんな「マスク大国」のはずの日本ですが、コロナウイルスの第1波が花粉症の時期と重なったこともあり、国内は深刻なマスク不足に。
ドラッグストアの開店前にマスクを求める人々の行列ができるというような悲喜劇的な光景が出現しました。
そのような状況を解消するため、安倍政権(当時)が打ち出したのが「全世帯にガーゼ製のマスクを二枚ずつ配布する」という緊急対応策でした。
これには安倍政権の経済政策の通称である「アベノミクス」をもじって「アベノマスク」なる俗称がすぐに生まれました。
その政策に対する意見は様々ですが、結局、「アベノマスク」という言葉は海外にも拡散。

「日本人は不思議すぎる」「何かのジョークだろう」といった報道が相次ぎました。
発表が4月1日だったことから「エイプリルフールのジョークに違いない」とも言われました。
しかし、「国民へのマスク支給」という政策は、その後、イタリアやフランスといった多くの国々が追随することになりました。
また、日本では「マスクが小さい」との声があがりましたが、ベルギーでは某自治体の配布したマスクが「大きすぎる」と問題に。
顔全体を覆うほどの大きさのマスクに「パンツみたい」「パラシュート?」といった苦情が続出しました。
これに対して自治体側は「熱いお湯でマスクが縮むまで洗うように」とコメント。
さらなる炎上を招いたのは言うまでもありません

●マスク不足
深刻なマスク不足に陥った東京。
とある店でマスクが販売されると聞いた主婦が、バスに乗って買いに行くことにした。
やがて、店の近くの停留所に着いたので、主婦はバスから降りようとした。
すると運転手がこう声をかけてきた。
「マスクを買いに行くつもりですか?」 「ええ。そうですが」
「それなら三つ先の停留所まで行ったほうがいいですよ」 主婦は怪訝な表情を浮かべて聞いた。
「どうしてですか?」 運転手が答えた。
「そこまで行列が延びていますから」
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早坂 隆(はやさか・たかし) ルポライター
1973年、愛知県生まれ。
『昭和十七年の夏 幻の甲子園』で第21回ミズノスポーツライター賞最優秀賞受賞。
日本の近代史をライフワークに活躍中。
世界各国での体験を基に上梓した「世界のジョーク」の新書シリーズも好評。
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小だぬきの68歳 誕生日。年々月日が 早く過ぎ去ります。
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2021年04月14日

「政治家は明言を避け、決めるのは専門家」日本の政治はナチス化している

「政治家は明言を避け、決めるのは専門家」日本の政治はナチス化している
2021年04月13日 PRESIDENT Online

コロナ禍で「専門家」という言葉を耳にすることが増えた。
作家の佐藤優氏は「専門家と称する人々が疑問を持たれることなく政治の前面に出てくることに、違和感がある」という。
池上彰氏との対談をお届けしよう――。
※本稿は、池上彰・佐藤優『ニッポン未完の民主主義』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。

■何度も叫ばれてきた「民主主義の危機」

【佐藤】太平洋戦争後のある時期から、日本では一貫して「民主主義の危機」が叫ばれてきたといっても、過言ではないでしょう。
時代によって目の前の課題はさまざまでしたが、国家権力によってこの国の民主主義が奪われつつあるのではないのか、という議論が幾度となく繰り返されてきました。
ただ、今我々に差し迫る民主主義の危機は、これまでとは位相もレベルも違うというか、「いつの間にか、ここまできていたのか」という感が否めないのです。
今回池上さんと「民主主義」を語り合いたいと思った背景には、ざっくり言うとそんな問題意識があります。

【池上】今現在、民主主義が危機に直面しているという認識は、私も持っています。
佐藤さんは、特にどのようなところにそれを感じるのですか?

【佐藤】端的に言えば、2020年春以降、新型コロナウイルス感染症が拡大する中で、いくつもの対策が講じられました。
それらの決定過程などを目の当たりにして、あらためて深刻さを思い知らされたのです。
私が最も違和感を覚えるのは、感染拡大のさ中、「専門家」と称する人たちが、何ら疑問を抱かれることなく、政治の前面に出てくるようになったことです。

■専門家組織内の議論はブラックボックス化しやすい

【池上】確かに、医療関係などの専門家がメディアに登場してこの問題について語るのは、「普通のこと」になりました。
政府レベルでは、当初は医療関係者のみで構成される「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」が設置され、7月には経済学者や労組代表、シンクタンクやメディア関係者、県知事なども加わる「分科会」に「改組」され、現在に至ります。
佐藤さんは「違和感」とおっしゃいましたが、国民の間には、「もっと専門家の意見を聞くべきだ」という声もあります。

【佐藤】政治家がさまざまな課題に関して専門家のアドバイスを受けること自体、もちろん重要です。
しかし、緊急の事態だからといって、本来の民主的な手立て、経路をバイパスして、何でも専門家の言うがまま意思決定が行われるとなると、話は別です。
問題は、専門家組織内の議論は、国会でのオープンなそれと異なり、ブラックボックス化しやすいということです。
専門家集団の発言力が高まるほど、政治のブラックボックス化が進み、代議制民主主義が相対的に軽視されていくことになるのです。

【池上】実際、「専門家会議」や「分科会」では、議事録の有無やその公表をめぐって揉めました。
メディアが情報公開請求で専門家会議の議事録を入手してみたら、大半が墨で消されたいわゆる「ノリ弁」だった。

■ファシズムが愛した「専門家」

【佐藤】私は、いたずらに危機を煽っているつもりはありません。
実は専門家の重用というのは、ファシズムやスターリニズムの特徴でもあるのです。
ナチス・ドイツは、専門家を最大限利用して、政策を遂行しました。

【池上】当時のドイツ国民の多くも、そのことにあまり違和感を覚えてはいなかったのでしょう。

【佐藤】一方、民主主義の下で行われるのは、あえて言えば「素人の政治」。
だから、トランプ前大統領のような人物が出てくることもあるわけです。
その「素人性」と「専門性」の折り合いをどうつけていくのか、どこで線を引くのかというのも、民主主義を考えるうえでは非常に大事なところのはずなのです。
しかし、現実には、そんな議論は全部飛び越えて、事が進んでいる。

【池上】確かに、さまざまな情報が飛び交って、ある意味浮足立っている時だからこそ、「まてよ」と立ち位置を確認してみることが大事になりますね。

■社会に増幅する「自由なき福祉」

【池上】オープンな議論が行われるはずの国会でも、コロナ対策については、主として政府側の不十分な答弁のせいであまり論点はかみ合わず、野党が要求した会期延長なども行われませんでした。
他方、「官邸主導」で物事が決まり、行動の自粛を呼び掛けながら「Go To」を推進するという、ちょっと首をかしげたくなるような施策も「強行」されました。
ちなみに、菅総理がずっと「見直しは考えていない」と言っていた「Go Toトラベル」は、突如2020年の暮れから一時停止となったのですが、この措置は、メディアの調査による内閣支持率の急落を受けたものであることが明らかでした。
「民主的な経路」のところで議論を尽くすことはしないでおいて、「人気」が陰ると慌てて手の平を返す。
率直に表現すれば、そういうことになるでしょう。

【佐藤】そうした状況が、常態化している。
平時ではないということを割り引いても、私には健全な姿には見えません。
ドイツの哲学者ユルゲン・ハーバーマスが、『後期資本主義における正統化の問題』で、こう言っています。
デモクラシーはもはや、あらゆる個人の普遍化可能な利益を認めさせようとする生活形式の内容によって規定されてはいない。
それは、もっぱらたんに指導者と指導部を選抜するための方法とみなされている。
デモクラシーはもはや、あらゆる正統な利益が自己決定と参加への基本的な関心の実現という道を通って満たされうるための条件という意味では理解されていない。
それはいまやシステム適合的な補償のための分配率、すなわち私的利益を充足するための調節器ということでしかない。
このデモクラシーによって自由なき福祉が可能になる。(『後期資本主義における正統化の問題』岩波文庫、2018年、223ページ)
日本の状況に照らせば、こういうことです。
国民のみなさんは、いろんな欲求をお持ちでしょう。
我々権力者は、時に専門家の知恵も借りながら、それを叶えて差し上げます。
それで文句はないでしょうから、どうぞ信じて任せてください??。
そういう「自由なき福祉」が社会に増殖して、逆に政治的な回路を通して民意を実現するということが、できにくくなっている。
そのことを、コロナ禍が図らずも白日の下にさらしたように思うのです。

■「やりたいことをやって当然」を貫いた安倍前首相

【池上】今の話ですぐ連想されるのは、安倍晋三前首相です。
安倍さんは、デモクラシーを「指導者と指導部を選抜するための方法」とみなして、私は国民から選ばれた総理大臣なのだから、やりたいことをやって当然、という姿勢を貫いていました。
その裏返しとして、国会の場で木で鼻を括ったような答弁を繰り返し、それを批判されても、意に介すことがなかったわけです。
まさに、「自由なき福祉」を実践したと言っていいでしょう。

【佐藤】コロナ禍の中、2020年7月5日に行われた東京都知事選挙では、現職だった小池百合子さんが6割近い得票率で圧勝しました。
その日の夜のテレビ番組での池上彰インタビューが、例によって秀逸でした。
国政復帰に意欲をみせていると噂される小池さんに、池上さんが「4年間の任期を全うしますか?」と尋ねると、「しっかりと都知事としての仕事を重ねていきたい」と明言を避けたわけです。
池上さんが「約束しますか?」と念を押したら、「自分自身の健康をしっかりと守っていきたい」と。
結局、知事の任期を全うするという確約はしませんでした。

【池上】その通りです。

■争点にならなかった、小池都知事の「疑惑」

【佐藤】「小池さんは、都知事を踏み台にして国政のしかるべきポストを狙っているのではないか」という「疑惑」は、選挙前からいろんなところで取りざたされていました。

【池上】仮に小池さんが国政に返り咲くステップとして知事に立候補したとしたら、これほど都民を馬鹿にした、非民主的な振る舞いはないのだけれど、実際の選挙戦では、まったく争点になりませんでした。

【佐藤】小池さんにケチをつけるというより、そういう都政の民主主義の根幹に関わるような問題がほとんど一顧だにされず、当然のように6割もの信任を受けてしまう、という現象に大きな疑問を感じるわけです。
有権者としては、コロナでこんなに大変な状況なのだから、とにかくお金を出してくれればいい。 政治が混乱するよりも、「私的利益を充足」させてもらうほうがいい。
そういうところに安住してしまっているのではないか、と。

【池上】気持ちは分かりますが、そうやって一度民主主義の基盤を棄損するようなことがあると、修復するのは大変です。

【佐藤】構造としては、自分が働く会社の株式を持つ労働者に似ているかもしれません。
彼らは、理論的には資本家なのですが、実際には経営に影響力を持つことはありません。
一方で、出資を行うことにより、もしかすると自分からがっぽり搾取しているのかもしれない本物の資本家に、力を貸しているのです。

【池上】「私的利益の充足」の対価としては失うものがあまりにも大きすぎると感じます。


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池上 彰(いけがみ・あきら)
ジャーナリスト 1950年長野県生まれ。 -
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佐藤 優(さとう・まさる)
作家・元外務省主任分析官 1960年、東京都生まれ。
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2021年04月15日

漢字のとめ、はね、はらい、できないと0点? 教育の本当の目的とは/鴻上尚史

連載「ドン・キホーテのピアス」
漢字のとめ、はね、はらい、できないと0点? 教育の本当の目的とは/鴻上尚史
2021年04月14日 SPA!

◆とめ、はね、はらい、できないと0点?
教育の本当の目的とは 「西日本新聞」の記事がネットに出ていて、それは、最近、よく話題になる「『とめ、はね、はらい』ができていないと、漢字ドリルは全てやり直し。
テストは0点―」という小学校の指導に関するものでした。

 読んでいて、なんだか、哀しみが押し寄せてきました。
 よく分かってないと「うん。漢字を習う時は、『とめ、はね、はらい』が大切だよ。当たり前だろう」で終わるのですが、実際の答案用紙を見ると「この厳しさはあんまりだ」と思うのです。
 この記事では、小学校一年の子供を持つ保護者が、担任の厳しい指導を悩み、実際のテストの写真を載せています。
 もうね、この原稿は活字で書いているから紹介が難しいんだけど、「天」という字の右下の「ノ」の字の先が少し離れているだけで減点。ほんのちょっと、外れているだけですよ。 「青」という文字は、下の「月」の右上の角が丸く書いていたから減点。
 以前、教師が、こうやって採点した後、「文字を正しく書きましょう」みたいな書き込みをしていて、その文字が「とめ、はね、はらい」がちゃんとできてなかった、なんて笑うしかない写真がツイートされてたことがありました。
 これね、「なんのために字を学ぶか?」ということを完全に見失っている指導です。
 それは、つまり、「教育とは何か?」という目的の話です。

 教育は、学校だけで完結するものではありません。
 当たり前ですね。
 教育は、学校と社会をつなぐためにあります。
ちゃんと勉強するのは、「よりよい社会人になるため」です。
「よりよい社会人」になるために必要なことは、「ちゃんと読める字を書く」ことです。
 それ以上でも以下でもありません。
「きれいな字を書くと評価が上がる。だから、厳しく指導すべきだ」なんて言う人がいますが、そんなのは大きなお世話です。
綺麗な字を書くかどうかは、本人が選ぶのです。
美意識というのは、押しつけるものではないのです。
 相手がストレスなく、ちゃんと読めること。
手書きの文字で大切なのは、これだけです。
「天」の「ノ」が少し離れていても、「青」の角が丸くても、ちゃんと読めます。

◆学校で満点をとることが、教育の目標になっている
 記事では、「高校生や大学生の指導をしているが、字が雑で読めないことがある」と、厳しい指導に賛成する意見が紹介されていました。
 この意見と、「厳しすぎる『とめ、はね、はらい』を指導すること」は何の関係もありません。
 教育は何が目的か?という点を見失っているのです。

「シ」と「ツ」の違いは大切な問題です。
これがちゃんと書けないと、「よりよい社会人」にはなれません。
 でも、「青」の「月」の角が丸くても何の問題もありません。
 もちろん、「青」の字を教える時は、「月」の角は教えます。
 けれど、それができてないからと言って、間違いにしてはいけないのです。
 それは、そういう指導をすることで、子供達に「漢字を正確に書くことのプレッシャー」しか残さないからです。
間違いなく、「漢字嫌い」「文章嫌い」の子供を作るだけだからです。
「よりよい社会人」になることではなく「学校の中で満点を取ること」が目標になっている結果です。

 記事では、学習指導要領解説の国語編では「正しい字体であることを前提とした上で、柔軟に評価することが望ましい」と書かれていると紹介し、けれど、文科省教育課程課は、「国語ではなく、社会や理科など他教科で書いた字は『とめ、はね、はらい』ができていないからといって、減点はしないという柔軟な評価を意味する」と解説しています。
 つまり、他の教科はオッケーだけど、国語は別だと言いたいのでしょう。
なんだ、それ。文科省が、こんな玉虫色の言い方をするから、教育に真面目過ぎる先生達は、少しの違いでも、減点や0点にするのです。

 じつは、校則と同じく、この「とめ、はね、はらい」指導も、年々、厳しくなっているように僕は感じています。
学校がどんどん、子供達にとって窮屈な場所になってないかと心配するのです。
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☔ | Comment(0) | 教育・学習 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

PTAの役員決めで、病気や宗教の公表まで「できない理由」を言わされるつらさ

PTAの役員決めで、病気や宗教の公表まで「できない理由」を言わされるつらさ
4/15(木) 配信 週刊女性
 この時期になると話題になるのが「PTA」の役員決め。
人には言いたくない事情があるにも関わらず、“できない理由”を公表しなくてはならない学校が今もあると言います。
そこにはどんな苦しさがあるのでしょうか。
『PTAをけっこうラクにたのしくする本』の著者・大塚玲子さんによる解説です。

本来は「できない理由」を言う必要はない
 毎年恒例、PTAクラス役員決めの季節です。
PTAの役員決めではよく、クジ引きやじゃんけんで無理に役をやらされる人が出たり、「できない理由」を言わされたりして、ときには泣く人が出ることもあります。
「あの時間が苦手だ」という人は多いでしょう。

 現状のPTAはなぜか「母親が必ずやらなければいけない義務」と思われていますが、本来PTAは任意で参加するものです。「できない理由」など、本当は誰にも言う必要はありません。
 そこで最近は仕組みを改め、「クラス(学年)から何人の委員」という人数割り当てをやめるPTAも徐々に増えているのですが、残念ながらまだ、旧来型のクラス役員決めを続けるPTAが多いようです。

 なかには、こんな経験をした人もいます。
「子どもの学校のPTAでは、できない人はみんなの前で理由を発表して、全員一致でOKをもらわないと免除されないので、勇気を出してやってきた。
宗教のなかで育ち、虐待を受けてきて、集団でいること、人の視線が怖いこと。
参観日ですら家を出るのが怖いこと。
泣きながら震えながら言ってきた。みんな承諾してくれた」(ツイッターより)

 身のすくむ話です。
こんなふうに、思い出すのもつらいような経験を、みんなの前で告白せざるを得ない人が出てしまうこともあるのです。
 このツイートをしたBさんは子どものころ、新興宗教のコミュニティで育ち、家族から虐待を受けていました。
並みならぬ覚悟のもと、みんなの前で個人的な事情を話してきたのでしょう。
どんな思いがあったのか、Bさんに聞いてみました。
「子どものときは学校の集団になじめなくて、仲間外れ、陰口などを恐ろしく感じていました。
家では母親、兄からの虐待や、宗教での裏切りもあり、どうしても年上の、特に女性の方を怖いと感じます。
学校行事のときは、みんなに見られて、陰口を言われているように感じ、身体が震え、声が震え、涙が出てきて、吐き気がします。
 私は子どものとき、運動会や参観日に誰かに来てもらった記憶がなく、いつも悲しかったので、自分の子どもの行事にはできる限りすべて行ってあげたい。
その気持ちだけで、安定剤を飲んで家を出ます。

ほかの保護者とは話さず、目も合わさず、終わったら一番に帰る。
そして寝込みます。
子どものためにやってあげたいので、毎回必死です」
 こういった人が大勢の前で理由を告げないと、かかわらないことが許されないPTAとは一体何なのか?
 理不尽さを強く感じます。

人には言いたくない“事情”を抱えて  このような状況を避けるため、思いきって「PTAに入らない」という選択をした人もいます。
以前取材を通して知り合ったYさんは、子どもが小学校に入る際、PTAに入らないことを決めました。
彼女も子どものころ、母親や継父から虐待を受けた経験があり、いまもその後遺症に悩まされています。

 Yさんに、虐待を受けた人がPTAをつらく感じやすいのはなぜだと思うか尋ねてみると、こんなふうに話してくれました。 「どうしてPTAがいやなのか、私も最初はわかっていなかったんですけれど。
ママ友などからPTAの理不尽な話を聞くだけで、それがトリガー(引き金)になって虐待されていたころの記憶がよみがえってしまうんだとわかってきました。
 それに、虐待を受けた当事者は学校でひどいいじめに遭っていることも多い。
そうするとPTAって、虐待の記憶に加えて、いじめの記憶もよみがえらせてしまうんです。

まさに、学校のなかでのことなので」
 虐待を受けた人だけでなく、精神疾患を抱える人たちにとっても、PTAへの参加は大きな負担になっていることがあります。
 中部地方に住むTさんは、上の子が小学校に上がるころに統合失調症を発症。
はじめは幼稚園のPTAで役員を引き受けていたのですが、難しい折り紙やダンスなど、Tさんが苦手な活動を強いられることが続き、小学校になってからは声を掛けられなくなってしまったことを、悲しそうに話していました。

 また別の、うつ病の女性は、もうすぐPTAの役員決めがあるので、みんなの前で病気のことを言わなければならないかもしれないと心配していました。
「世間には精神疾患への偏見があるので、子どもに影響があるかもしれない」と感じて、不安なのです。
 せっかく子どもたちが進学・進級するうれしい季節なのに、PTAの役員決めがあるために、晴れ晴れとした気持ちになれない保護者、母親たちが毎年少なからずいることが、残念で仕方がありません。

 どうかもし、PTAの役員決めで「できない理由」を公表しなくてはいけない空気になったら、「そんなのおかしい」と意見してもらえたら。
 それと同時に、世の中にはいろんな事情を抱えた人がいることを、もっとみんなに知ってもらえたらよいのですが。そういう人が身近にいることをみんながわかっていれば、本人につらい思いをして語らせるようなことは、なくなるのではないでしょうか。

大塚玲子(おおつか・れいこ)
「いろんな家族の形」や「PTA」などの保護者組織を多く取材・執筆。出版社、編集プロダクションを経て、現在はノンフィクションライターとして活動。
そのほか、講演、TV・ラジオ等メディア出演も。
多様な家族の形を見つめる著書『ルポ 定形外家族 わたしの家は「ふつう」じゃない』(SB新書)、『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』(ともに太郎次郎社エディタス)など多数出版。
定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。
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2021年04月16日

「欲しいもの」は本当に欲しいもの? 一か月買わずに我慢してみる

ひろゆき連載コラム「僕が親ならこうするね」
「欲しいもの」は本当に欲しいもの? 一か月買わずに我慢してみる
2021年04月15日 SPA!

◆「欲しいもの」は、本当に欲しいもの? 立ち止まり考える力
 子供たちが大人になって路頭に迷わないよう、お金がなくても生活できる方法を義務教育で教えたほうがいい。
そんなことを数回にわたって書いてきたわけですが、普通の人は自分が欲しいものを得るために働いてお金を稼ごうとしますよね。
 ただ、昨今は不景気なので企業勤めしてもなかなか昇給しない時代です。
「頑張っても稼げない」と感じている人もいて、「お金がない状態で、欲しいものを手に入れる方法はないのか?」と考えたりする人もいると思います。
 でも、子供の頃からいろいろと考える癖を身につける訓練をしておくと、大人になってからこういう問題に直面したときに困らないのではないかと思っています。

◆コンビニ弁当も容器を底上げ
 最近は、世の中がギスギスしていて、「アコギなことはしないほうがいいよね」という価値観がだんだん薄れ、「騙されるほうが悪い」という考えでも問題ない状況になりつつあるような気がしています。
大手メーカーでも「水素水」など科学的根拠が全くないものを売っていたり、コンビニ弁当も容器を底上げして内容量をかさ増しするステルス値上げをしていたりと、キリがない感じです。

 今までは「大手企業は、そんなことしないよね」という信頼がブランドにつながっていたと思うのですが、ブランドよりも消費者を騙して利益を取ったほうが得という時代になってしまったのですね。
「消費者を騙すのは良くない」という正義感では、お腹が膨れないわけです。

◆自分が騙されていると思いたくない
 だもんで、世の中の多くの人は企業などから消費者として騙され、利用されていることに気づかないまま暮らしていたりします。
例えば、「サプリ」と呼ばれる栄養価としてはほぼ無価値なものにお金を払う人も多いです。
自分は欲しいと思っているけど、実は「欲しいと思わされている」状況というのは、世の中には多くあって、例えばCMを観なければ欲しくならないのにCMを観たことで本当は不必要なものが欲しくなってしまうわけです。

 ただ、多くの人間は、自分が騙されていると思いたくないので、「自分が欲しいと思っている」「自分の欲望は正しい」「自分の感情に従うことが自分らしさ」などと自己肯定とか自分を騙して、消費者としてまんまと騙されていろいろとものを買ってしまったりするわけです。

◆欲しいものが本当に必要なものなのか?
 新型コロナ禍でアパレル業界の売り上げが減りまくって業界全体が厳しくなっている昨今ですが、リモートが増えたことでマスクもしているから「化粧も服も要らないよね」ということが、ようやく理解してもらえるようになってきました。
身だしなみに気をつけたからといって、それが直接的に仕事の効率を上げるわけでもないです。
小綺麗な格好をした仕事のできない人よりも、汚い格好でも仕事ができる人に業務をお願いしたくなるのは、普通のことだしそれが現実です。
服にいくらお金かけたってモテない人はモテないし、モテる人は何を着ていてもモテたりするのですね。

 なので、「お金がないけど欲しいものを手に入れるには?」を考える前に、例えば、欲しいものを一か月買わずに我慢して、問題なければ必要ないなどの訓練をして「欲しいものが本当に必要なものなのか?」と考えられるようにすることが大事なんじゃないかと。

そういうことを子供の頃からやっておくと、そもそもお金を使わなくても暮らしていける能力というか考え方が身につくと思うのですよ。
―[ひろゆき連載コラム「僕が親ならこうするね」]―

【ひろゆき】
西村博之(にしむらひろゆき)’76年、神奈川県生まれ。フランス在住、たまに日本。2ちゃんねる・ニコニコの元管理人で、英語圏最大の掲示板サイト『4chan』現管理人。
SPA!誌面にて11年間にわたり「ネット炎上観察記」を連載。
近著に『自分は自分、バカはバカ』(SBクリエイティブ)など
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2021年04月17日

JRの車椅子乗車拒否と生活保護叩きの意外な共通点

JRの車椅子乗車拒否と生活保護叩きの意外な共通点
2021.4.16 Diamondオンライン

障害者と生活保護が 繰り返し叩かれる理由とは
 4月4日、コラムニストの伊是名夏子さんが「JRで車いすは乗車拒否されました」と題する記事を公開し、賛否ともに大きな反響を呼んでいる。
 先天性の身体障害を持ち、外出時は常に電動車椅子を必要とする伊是名さんは、新聞へのコラム連載や講演など、幅広い社会活動を行っている。
結婚・出産・妊娠も諦めず、現在は夫とともに、2児の子育てに奮闘中だ。

 社会の多様性や共生に関心を持つ人々の中での伊是名さんの知名度は、もともと高かった。
今回のコラムと「ネット炎上」は、伊是名夏子さんの知名度をさらに否応なく高めたのではないだろうか。
「そうなんです。『それを狙ったんじゃないか』という反応が多くて、びっくりしています。
全然狙ってなかったんですけど」(伊是名さん)

 とはいえ、伊是名さんは社民党の常任幹事でもある。
注目されるとき、何らかの政治的意図を勘繰られるのは、必然かもしれない。
 筆者は、伊是名さんの一件をめぐる「ネット炎上」に、時折発生する「生活保護叩き」を重ね合わせてしまった。
伊是名さんに対する激しい批判と非難は、「障害者叩き」と言い換えることも可能だろう。
 しかし冷静に考えてみると、生活保護を利用していない障害者と生活保護で暮らす人々の間には、共通点はあるものの、相違点の方が多い。

公共交通機関の利用やバリアフリー化は、誰もが必要に応じて利用できる現物福祉のようなものである。
世帯や個人に生活費や住居費が手渡される生活保護とは、やはり決定的に異なる。
それなのに、なぜ似たような「炎上」「叩き」が盛り上がってしまうのだろうか。

 まずは、伊是名さんが「JRに乗車拒否された」とした出来事を検証してみたい。

充分に伝えられていない 「乗車拒否」の真相
 4月1日、東京都内在住の伊是名さんは、子ども2人・友人・業務として同行していたヘルパーと共に、静岡県熱海市への1泊旅行のために出発した。
小田原駅でJR線に乗り換え、来宮駅まで行く予定だったのだが、来宮駅は無人駅である。
エレベータはなく、階段を利用する必要がある。
駅員は「1駅前の熱海駅までなら」と言い、熱海から来宮まではタクシーで移動することを提案したが、伊是名さんは応じず、来宮駅までの乗車および降車にあたっての介助を粘り強く求めた。
 結局、熱海駅から駅員4名が同乗し、来宮駅での降車時の介助、および人力で車椅子を運搬するなどの介助を行った。
駅員の提案に応じなかった伊是名さんに対しては、「クレーマー」という批判もある
実際のところは、どうだったのだろうか。

筆者自身も電動車椅子を利用しているため、非常に気になる。
そこで、伊是名さんに出来事の詳細を聞かせていただいた。
 JR上野東京ラインを利用すれば、小田原駅から来宮駅まで、在来線で乗り換えなく行くことができる。所要時間は31分だ。
伊是名さんたちは、予定していた電車の発車30分前に、小田原駅の窓口で来宮駅まで乗車したい旨を伝えた。
その時点では断られておらず、「発車15分前に案内するので、そのときにまた来てほしい」と言われたという。
「車椅子で乗りたい」という旨を伝えてから発車までの間に鉄道会社で行われる作業は、まず降車駅と連絡を取り、降車介助の了解を得ることである。
来宮駅は無人駅であるため、人手と機材の確保が必要になる。
 無人駅であっても、スロープ板や車椅子用の階段昇降機は配備されている場合が多い。
しかし、「スロープ板のロッカーの鍵が開かない」「階段昇降機が故障している」といったトラブルがつきものだ。
機材の出番が数ヵ月に1回しかないような駅では、特に機材トラブルが起こりやすい。
その駅に備え付けられているのに使えない場合は、近隣の駅から運んでくることになる。
台車タイプの階段昇降機なら、他の駅から運んできて利用することができる。
 いずれにしても来宮駅は無人駅であるから、介助人員とともに、動作確認できている機材を運んで使用することが最も合理的であろう。

小田原駅や熱海駅なら、人員が比較的多く、機材の備えも期待できる。
 伊是名さんたちが、指示されたとおり、発車15分前に小田原駅の窓口を再度訪れると、来宮駅には階段しかないということを理由として、「熱海まででいいですか?」と言われたという。
これは、筆者から見ても「えっ」と驚く対応だ。
何もしていなかったのか。それとも、乗車手配をしようとしたが予定の電車には絶対に間に合いそうになかったのか。

 筆者が伊是名さんに詳しく尋ねてみたところ、他の駅から運べる階段昇降機の可能性については、もちろん聞いてみたそうである。
小田原駅の駅員は、「は〜」という感じの応答だったそうだ。

「熱海駅まででいいですか?」 駅員の残念な対応にも冷静に対応
 結局、伊是名さんたちは予定より1時間遅れて小田原駅から乗車した。
熱海駅から、駅長を含む4人の駅員が乗車し、来宮駅で伊是名さんたちを無事に降車させ、車椅子を地上へと運んだ。
伊是名さん自身は、ヘルパーに抱きかかえられて移動した。
そして、予約していたレストランで、予定どおりに食事を楽しむことができた。
間に合ったのは、小田原駅から乗車した時点で1時間30分の余裕がある予定を立てていたからである。
「車椅子での移動は、本当に何が起こるかわかりません。障害のある人が、何も調べていないということはありません。様々な予測をしながら行動しているものです。それなのに、このような結果になり、残念です」(伊是名さん)

 筆者自身、公共交通機関の利用では、乗り換え1回につき30分の余裕を見込むようにしているが、それでもギリギリになる場合がある。
複数のトラブルが重なると、1回の乗り換えで2時間が必要になる場合もある。
そこに空腹や寒さが重なり、体力の限界への挑戦になる場合もある。
今回の伊是名さんの場合は、幼少の子ども2人もいた。
それでも、あくまでも冷静に丁寧に対応したようだ。

「小田原駅の駅員さんたちは、熱海駅までしか乗せないことが正しい対応だと考えていたようですが、そうは言いつつも『どうしましょうか』とも言っていたんです。
ですから、怒りませんでした。
駅員さんではなく、体制の問題ですから」(伊是名さん)

「生活保護叩き」との 共通点と相違点はどこに?
 伊是名さんのブログ記事の「ネット炎上」には、「生活保護叩き」との共通点はあるものの、相違点の方が大きいように思われる。
「生活保護叩き」の原因には、「申請と審査を経て認められる」という生活保護の仕組みそのもの、選別主義に起因するものが多い。
申請手続きそのものに関する情報を充分に得られなかったり、支援団体とつながることができなかったりする人々は、生活保護の対象となることが難しい。
生活保護で暮らす人々に対する「不当にトクをしている」という批判の原因の1つは、生活保護制度の選別主義的な性格そのものにある。         
そこから、「不当に恵まれている」「義務を果たさず権利ばかりを主張する」「納税者に損をさせている」といった各種のパターンが派生する。
さらに、そういった憤懣が政策的に利用される場合もある。

 今回の伊是名さんの移動の目的が旅行であり、ヘルパーを同行させていたことは、「不当に恵まれた障害者」という妬みにつながったかもしれない。
また、熱海駅から自費でのタクシー移動を行わなかったこと、前日や1週間前に事前の申し入れをしていなかったことは、「義務を果たさず権利ばかりを主張する障害者」という怒りにつながったかもしれない。
 しかし、病気や負傷によって、一時的に歩行が困難になることは有り得る。

障害者がいつでも安心して利用できる公共交通機関は、誰もが必要に応じて、安心して利用できる公共交通機関でもある。
生活保護の今後について、「現金給付から現物福祉へ」という意見もあるが、公共交通機関のバリアフリー化や介助体制は、まさに「現物福祉」そのものだ。
それなのに、なぜ「ネット炎上」が起こったのだろうか。

 福島県で、障害を持つ娘とともに生活保護で暮らすミサトさん(40歳代)に、意見を求めてみた。
ミサトさん自身も、複数の持病を抱え、療養生活を送っている。

生活保護当事者への 「らしさ」の呪縛
「健常者にとっては、駅の階段を上り下りすることも、エスカレーターを使うことも当たり前です。
バリアフリー化されてエレベータが設置されたら、便利な手段が増えるだけです。
でも障害者は、エレベータを利用せざるを得ない状況があるから利用するわけですよね」(ミサトさん)

 生活保護叩きについては、どうだろうか。
「生活保護もまた、利用せざるを得ない状況があるから利用するわけです。
そこにぶつけられる『自分はこんなに苦労しているのに、ナマポもらって、のうのうと暮らしやがって』という悪意は、完全な『やっかみ』だと思います」(ミサトさん)

 伊是名さんの今回の出来事との共通点は、どこにありそうだろうか。
「共通点というより、似ているところは、『らしくしろ』という見方にあると思っています。
『生活保護受給者なら受給者らしく』『障害者なら障害者らしく』というところでしょうか。
だから、生活保護や駅員の介助が『特別扱い』に見えるのでしょう」(ミサトさん)

 生活保護を必要とする事情は、個人の努力ではどうにもならない形で押し寄せることがある。
私たちは今、コロナ禍でその状況を経験し続けている。
そして健常者は、誰もが「まだ障害者になっていない人」である。
健康に高齢期を迎えても、加齢の影響は必ず現れる。

 国交省鉄道局鉄道サービス政策室の職員は、今回の伊是名さんの経験について、「詳細には把握していませんし、JRさんという会社の対応について役所として申し上げることではありませんが」とした上で、「基本的に、乗り降りに制限があるべきではありません」と述べる。
「最終的には目的地まで移動できているわけですが、時間はかかっています。
JRさんとしても、今回の件が全く問題ないとは考えていないでしょう。
国もそうですが、経験値を重ねながら、改善していく必要があると思っています」(国交省鉄道サービス制作室)
 個人が経験する困難やトラブルを、希望ある未来へとつなぐことはできるだろうか。
それは、行政や施策に対する市民の視線と関心にかかっている。
    (フリーランス・ライター)
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2021年04月18日

いじめのピークは「小2」低年齢化の衝撃の実態

いじめのピークは「小2」低年齢化の衝撃の実態
10年前は中1だったのがなぜ変化したのか
2021/04/17 東洋経済オンライン
石井 志昂 : 『不登校新聞』編集長

学校でのいじめというと何歳くらいが多いイメージがあるでしょうか。
最新の調査を聞くと多くの人が驚くかもしれません。 文科省の調査によると、小学校2年生がいじめのピークであることがわかりました。
また、コロナ禍でいじめが増えていくことが予想されています。

『不登校新聞』の編集長としていじめや不登校を20年にわたり取材してきましたが、子どもたちの実態をお伝えします。

小1から陰湿ないじめが
eスポーツの分野で活躍中の永田大和さん(19歳)は、小学校2年生から小学校4年生にかけていじめを受けていました。 「同級生からは『居ない者』として扱われることが多かったです。
ほかのも、物を隠されたり、心当たりのない噂を流されたりすることもありました。
殴る、蹴るという暴力もありましたが、多かったのはそういうネチネチしたやつでした」

無視や噂話などのいじめは「コミュニケーション操作系のいじめ」と呼ばれています。
その特徴は見えづらいこと。殴る・蹴るといった見えやすい暴力ではなく、被害や攻撃性が見えにくい言わば「陰湿ないじめ」です。
陰湿ないじめといえば中高生というイメージが私にはあります。
むしろ見た目もかわいい小学生がまさかそんな陰湿ないじめをするとは思ってもいませんでしたが、永田さんと同様の陰湿ないじめのケースも最近は聞くようになってきました。

今年、小学5年生になった男児は、小学校の入学当初からいじめを受け始めていました。
男児が言うには同級生から「間接的に否定されることが多かった」と。
具体的には
(1)鬼ごっこの際にずっと鬼にさせられる、
(2)遊びの拍子に強く殴られる、
(3)「赤ちゃんみたいだね」など意図がわかりづらい言葉で否定されるなどです。
いじめのストレスから、男児は寝ているあいだに歯ぎしりがひどくなり、ある日、大泣きして学校へ行きたくないと母親に訴えたそうです。
男児はいじめを訴えると「みんなの空気が悪くなる」と思って黙っていたそうです。

小学校にとどまらず、幼稚園から「コミュニケーション操作系のいじめが始まっていた」と語るのは現在20歳の女性でした。女性は幼稚園のころから、仲間外れなどのいじめを受けていたため、小学校に入ってからは、いじめられないキャラを研究。その後は「自分を取り繕うように生きてきた」と話してくれました。
仲間外れや無視などの陰湿ないじめは小学校低学年でも確実に起きており、最近の文科省の調査をみると、それが広がっているという傾向が顕著に表れていました。

2019年度に起きた小・中・高のいじめは61万2496件。
学年別でみると、もっとも多いのは「小学校2年生」。
ちなみに10年前の調査結果を見ると中学1年生がピークでした。
多くの人の感覚と近い調査結果だと思いますが、現在はトップ3が小学校1年生から3年生が占めるなど、いじめの低年齢化は顕著なのです。

専門家の指摘を総合すると、いじめの低年齢化が進んだ要因は2つです。
ひとつは調査の定義が変わったこと。
ひやかしや悪ふざけといった軽微な事例も報告するよう文科省が求めており、これに応じて小学校低学年のいじめ件数は増えました。
ある小学校教員によれば、そもそも小学校低学年の場合の子たちによる人間関係のトラブルはよく起きていたそうです。
もうひとつの要因は、小学校低学年の子どもたちが感じるストレスが増加したことです。
不登校の子どもたちなどを長年にわたり見てきた西野博之さん(フリースペースたまりば)は、ストレスのあまり暴発してしまい、人間関係を築きづらい子も増えてきたと感じているそうです。

背景に早期教育の影響も
西野さんによれば、自分より弱い立場の子どもに暴力を振るうのは、子どもの性格が悪くなったわけではなく、小さいころからストレスをためこむ子が増えたからだと指摘しています。
要因は早期教育。
幼稚園や保育園のころから、学校に適応するための教育が盛んになり「手遅れにならないように」と習い事を掛け持ちするなど、余裕のない生活をする子が増えているそうです。
それだけが理由ではないと思いますが、「子どもたちの生きづらさはピークに達している」と西野さんは言います。

30年以上にわたり、小学校教員を務めてきた先生も「子どもたちの生きづらさ」を指摘していました。
チャイムが鳴る前に座らせることや、班ごとに決めたマナーやルールを守らせるなど「子どもたちに求める規範意識が年々、高くなってきていて、子どもがすごく生きづらそう」だと先生は語っていました。
高い規範意識を年少のころから求めた結果、子どもたちは表面上は「よい子」や「問題のない子」に見えるものの仲間内で暴力が横行してしまうのだそうです。
またコロナ禍でいじめが増えることも懸念されています。

NPO法人「共育の杜」の調査によれば、コロナ禍の影響によって9割の教職員が「今後いじめが増える可能性が高い」と回答していました(※2)。

コロナ禍の今だからこそ
そもそも4月は大人の注意が必要な時期です。
進学・進級により人間関係が刷新され、「問題がない」と見られていた子もいじめの標的になってしまうことがあります。
この時期に大人にお願いしたいことは、たったひとつです。

今回の記事の前半で紹介した小学校5年生の男児は「子どもがやったからといって軽く扱わないでほしい」と話してくれました。
いじめが起きていても「子どもどうしで起きたことだからしかたがない」や「悪ふざけだから大げさにしなくてよい」と判断をするのはいじめを受けた本人であり、先生や親ではありません。
苦しんだ人の年齢が幼少であっても「SOSを邪険にしないこと」は最も大切なことです。

もしもSOSを受けた場合、いじめを受けているとわかった場合は2つの対応をお願いします。
ひとつめは子ども本人が言った話を記録すること。
学校や相談機関と話し合いの資料になるからです。

もうひとつは、子どもの安全を確保すること。
いじめがある場合は躊躇せずに学校を休ませてください。
学校を休めば「社会性や学力が身につかない」と不安視される方もいますが、いじめを受け続けて身につくのは学力や社会性ではありません。憎しみや自己否定感です。
親に訴えても救ってくれなかったという不信感です。

私はたくさんのいじめ経験者に取材してきましたが、避難が早かった人ほど、心の回復は早い傾向がありました。
子どもが苦しいときほど、安心・安全が最優先という原則をぜひ実行してもらいたいと思っています。


※1・令和元年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査(2020年10月22日発表)。
また、いじめ件数の呼称は「発生件数」ではなく 「認知件数」 に2006年度から改められている。
いじめは第三者からは見えづらく「教員が認知できた件数は真の発生件数の一部である」という認識からの呼称変更。
文中では端的に「件数」と省略。
※2・NPO法人「教育改革2020『共育の杜』教職員勤務実態調査(2020年8月21日発表)
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2021年04月19日

「仲間を売ったらあかん。絶対に潰す」内部告発に幹部が激怒…日本郵便“恫喝事件”の呆れた内幕

『郵政腐政腐敗』より #1
仲間を売ったらあかん。絶対に潰す」内部告発に幹部が激怒…日本郵便“恫喝事件”の呆れた内幕
文春オンライン(藤田 知也)  

かんぽ生命の不正販売、売、ゆうちょ銀行の不正引き出し、NHKへの報道弾圧……。
従業員40万人を超える巨大組織「日本郵政グループ」の、信じられないような不祥事が次々と明らかになっている。
そうした“腐敗の構造”の裏には一体何があるのか。
その正体に迫った藤田知也氏(朝日新聞記者)の著書『郵政腐敗』(光文社新書)より、内部通報制度の崩壊から浮かび上がる“いびつな組織構造”について紹介する。(全2回の1回目/明日後編に続く)

組織に潜在するリスクを探知するために欠かせないツールの一つが、「内部通報制度」だ。
通報された事案の解消だけでなく、組織内で深刻な事態が起きていないかを早期に嗅ぎ取り、不祥事の芽を摘み取ることに役立つからだ。
 日本郵政グループでは以前から、内部通報制度がグループ各社で整備されていた。
社内の窓口に加え、社外の窓口も設置され、社員にも周知されていた。
 だが、万全なのは「形」だけで、中身がともなっていないことも知れ渡っていた。

 郵便局の現場では、通報しても調査してもらえないばかりか、通報者が誰かをあぶり出す“犯人捜し”がすぐに起きる。
有力な郵便局長が「仲間を売るのは許せん」と吠え、通報制度の趣旨を真っ向から否定する事件が起きても、経営陣は曖昧な態度しか見せてこなかった。
「通報しないほうが身のため」が組織の常識となるのは当然の成り行きで、通報制度の機能は見事なほどに無力化されている。 。

 旧特定郵便局長を特別扱いするいびつな組織構造とともに、通報制度が破綻していった現場の実態を明らかにする。

仲間を売ってはいけない鉄則
 福岡県の筑豊地区にたたずむ、局員数人の小さな郵便局。
 その応接スペースで2019年1月24日午前、1台のICレコーダーが迫力ある声をとらえていた。
「どんなことがあっても、仲間を売ったらあかん。これ、特定局長の鉄則」
 声の主は、旧特定郵便局長(現エリアマネジメント局長)として九州でナンバー2の座にあった九州支社副主幹統括局長(当時)。
地区連絡会の統括局長も務める。
 音声データにはもう一人、震えながらうめき声を発する男性の声も記録されている。
同じ地区連絡会に所属する配下の郵便局長だ。
 副主幹統括局長は、配下の局長にこう迫った。 「会社はダメちゅうけど、犯人を捜す」 「(通報)してないな? 約束できるな? (名前が)あったらおれんぞ」  九州の大物局長がそう言いながらあぶり出そうとしたのは、同じ地区内で郵便局長を務める息子の不祥事について、日本郵便の内部通報窓口に知らせた“犯人”だった――。
 ことの始まりは3カ月前の2018年秋。福岡県内の旧特定郵便局の局長6人が、同じ地区の郵便局長の内規違反の疑いを内部通報窓口に知らせたことだ。
 6人があえて本社の内部通報窓口を頼ったのは、内規違反が疑われる郵便局長の父親が、本来は不正の疑いを伝えるべき「上司」だからだ。

通報する対象が息子となれば、証拠隠滅のおそれや報復の危険も考えられる。
 内部通報窓口に届いた文書にも、こうつづられていた。
〈この告発内容は統括局長も関係者となるため取扱いに十分注意されてください。調査についても告発者やその協力者が決して不利益をこうむることが無いようお願いします〉
 だが、通報を受けた日本郵便本社のコンプライアンス担当役員は、通報文書の発送から約10日後、件(くだん)の副主幹統括局長に連絡し、息子の内規違反で通報があったために調査を始めることと、その通報者が「複数」であることを明かした。

 担当役員は口止めをしていたものの、調査対象者の父親に事前連絡し、通報があったと知らせていた。
これは、内部通報制度のガイドラインに反すると疑われる行為だ。
 通報内容は、局員への暴力や勤務時間中のゲームセンター通い、内規に反するお金の取り扱いなどだ。九州支社コンプライアンス室が2018年11〜12月に調査したが、本人が否認したことなどを理由にいずれも不正とは認定しなかった。
ただ、暴力を振るわれたとされる局員には話を聞かないなど、調査が不十分と思わせるものだった。
“否認すればシロ”という慣例を通したのかもしれない。

「通報者だったら、絶対に潰す」
 父親である副主幹統括局長が動き出したのは、調査が中途半端に終了したあとだ。
2019年1月に、通報者と疑う郵便局長を一人ずつ呼び出しては尋問のように事情を聴き、通報行為そのものも糾弾した。
冒頭の局長も糾弾されたひとりだった。
 1月24日の音声データには、副主幹統括局長のこんな言葉も残っている。
「局員から(通報が)上がったら、そりゃしょうがない。局長から上がったのが、俺は許せんかった」
「局長の名前が(通報者として)のっとったら、そいつら、俺がやめた後でも絶対に潰す。どんなことがあっても潰す」
「そこにおまえの名前はないね。あるいは名前をのせとったやつをおまえは知らんか?」
「誰に誓ってでもやってないな? 後で絶対、おまえの名前は出てこないな?」

 副主幹統括局長はドスのきいた怒声と優しい声音を使い分けながら話し、言われた郵便局長は終始、震えた声で応じた。  副主幹統括局長は、息子の行為について「悪いことは悪い」と認めつつ、「コンプラに上げるのは間違っている」ときっぱり。通報制度の趣旨を完全否定し、「あんたも仲間から疑われたら嫌やろう? 協力して」と、通報に関わる情報を知らせるよう念押しし、ようやく局長を解放した。

 同じ日の夜。脅された局長が属する部会の数人の郵便局長にも緊急招集がかかり、地域の公民館に集められた。
部会長を務める郵便局長は「ぶっちゃけ言うと、内部通報があります」と暴露し、コンプライアンス室による調査があったことも明かしながら、こう説明した。
「内部通報した人っていうのは、この部会におるっちゃないのかって、疑われています。
全員が疑われています(略)
もう会長(=副主幹統括局長)からは私たちの部会、まったく信用されていません。
信用されてなくって、これから先、どう仕事やっていくのと。
やれないよと言われて、わかったとはいきません」

部会長は「だから」と言葉をつなぎ、“犯人捜し”をこう始めた。
「皆さんの身の潔白っていうものを示していただかないと、私も皆さんを信用して仕事することができないです。
だから、今から聞きます!」
 部会長は“お手本”を示すように、こう切り出した。
「私は、この内部通報に関しては一切関わっていません。断言します。
もし関わっているとあとからわかったときは、職を辞します。では、次!」
 そう言って、別の局長に同様の宣言を促す。
すぐ後に「これはおかしい」という声が出て“潔白宣言”は中断されたが、部会長の局長はなおも求め続けた。
「万一、関わっているようなことがあったとき、『この場で言いにくかったから』ちゅうて、僕の携帯にかけてください。
早ければ早いほうがいい。何か知っていることがあれば、言ってください」
 なんとか通報者を割り出そうという必死の形相は、副主幹統括局長がどれだけ怖いかを物語っている。 (後編に続く)
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2021年04月20日

内部通報者が次々と休職…「告発したら潰される」日本郵政の腐敗しきった“コンプライアンス”

『郵政腐敗』より #2
内部通報者が次々と休職…「告発したら潰される」日本郵政の腐敗しきった“コンプライアンス”
文春オンライン(藤田 知也)

 かんぽ生命の不正販売、ゆうちょ銀行の不正引き出し、NHKへの報道弾圧……。
従業員40万人を超える巨大組織「日本郵政グループ」の、信じられないような不祥事が次々と明らかになっている。
 そうした“腐敗の構造”の裏には一体何があるのか。
その正体に迫った藤田知也氏(朝日新聞記者)の著書『郵政腐敗』(光文社新書)より、内部通報制度の崩壊から浮かび上がる“いびつな組織構造”について紹介する。(全2回の2回目/昨日前編から続く)

除名される通報者たち
 “特定局の鉄則”を振りかざす冒頭の郵便局長は、地区郵便局長会の会長であり、九州地方郵便局長会の副会長でもあった。そして、当然のように、日本郵便の地区統括局長と、日本郵便九州支社副主幹統括局長も兼任していた。
 そんな“大物局長”が常識外れの「通報者捜し」に動いていたことは、日本郵便九州支社コンプライアンス室にも連絡が入っていた。

 2019年1月24日に不当な通報者捜しが起きてから1週間後。
部会のメンバーが再び同じ公民館に集められ、当の副主幹統括局長が登場して土下座して謝るという一幕があった。
本社コンプライアンス担当役員から注意されたためだとみられ、同年春には懲戒戒告処分も受け、統括局長などの役職も降りてヒラ局長となり、出世は見込めなくなった。
通報者捜しに加担した部会長への処分の有無は不明だが、まもなく別の地域の郵便局に転勤していった。
組織として最低限の対応はとられたのかもしれない。

 しかし、通報者と疑われた局長たちには、その後も「嫌がらせ」や「腹いせ」としか思えない攻撃が続いた。
 問題の副主幹統括局長は、地区郵便局長会の会長の座も急きょ降りたものの、単なるヒラ局長に戻ったのではなく、「相談役」に据えられた。
 その地区局長会長の後任を決める2019年3月の会合では、地区会の理事だった郵便局長が「内部通報者捜しがあって引責するようだ」と報告したところ、ほかのメンバーから「中傷だ」「名誉毀損にあたる」と非難を浴び、局長会を「除名処分」された。
別の局長も、判然としない理由で除名になった。2人はいずれも、通報者捜しが繰り広げられた部会に属していた。

 地区郵便局長会のメンバーらはその後、除名した2人の局長に対し、日本郵便の役職も降りるよう迫ったり、九州支社の人事部門に役職を解くよう掛け合ったりもした。
同じ部会に属するほかの局長も、会合で厳しい言葉をぶつけられ、役職を降りるよう求められた。

 通報者らは次第に孤立を深め、うつ状態と診断されて休職する者が相次いだ。
こうした情報も九州支社コンプライアンス室に届き、九州支社総務人事部が調査したこともあるが、業務中の言動でパワハラが認定されることはなく、任意団体である局長会の活動での言動は業務外だと突き放した。
 結局、6人の通報者を含む計7人の郵便局長が2019年秋、元副主幹統括局長と複数の幹部局長を相手取り、通報者捜しとその後の不利益などで精神的苦痛を受けたとして、損害賠償を求める訴訟を起こすまでに至った。

 福岡県警も同時期から捜査に乗り出し、2020年1月には、元副主幹統括局長が一部の局長に通報者と認めるよう迫ったとして、強要未遂罪の疑いで福岡地検に書類送検した(福岡地検は今年4月5日、元副主幹統括局長を強要未遂罪で福岡地裁に在宅起訴したと発表した)。

通報者捜しは「指導の一環」
 郵便局長7人が元副主幹統括局長を含む3人の有力局長に慰謝料を求める訴訟は、福岡地裁で続いている。
被告となった元副主幹統括局長側は、請求棄却を求めて争っている。
 元副主幹統括局長は裁判所に提出した書面で、一連の発言をしたことは認めつつ、こう主張している。

〈被告(元副主幹統括局長)の性格等を知り尽くす原告が、あえて激怒する態度・発言をとり、不穏当な言辞を引き出したのではないか〉
〈原告と被告は親子のような関係。被告自身、原告を実の息子のようにかわいがり、強い絆を築いていた。何でも腹を割って言い合える仲だった〉
〈厳しい口調で叱責することはあったが、どこの会社にも見られる程度のもの〉
〈原告は被告が怖くて(息子である局長の行為を)報告できずに内部通報したと主張するが、およそ信用できない〉

 内部通報制度については、独特の考えを披露している。

〈内部通報したのが郵便局長なら、被告が最も重視する郵便局長同士の絆・結束にひびが入り、修復できなくなるのではないかと考えた〉
〈(通報内容が)不処分となったため、絆・結束を取り戻そうと考えた。内部通報者捜しをするつもりは毛頭なかった〉
 そして、一連の通報者捜しは〈あくまで指導のつもりだった〉と強調した。

 被告側は、ほかの地区郵便局長会幹部らが降職を求めた行為も認めつつ、「あくまで任意の相談・お願いに過ぎない」と主張している。
 元副主幹統括局長の言葉は、音声を配信した朝日新聞デジタルなどで聞くことができる。
その迫力あるやりとりが「どこの会社にも見られる」と本気で考えているのなら、彼らの“常識”はやはり世間のそれとはかけ離れているのではないか。

 被告側の弁護士には書面と電話で何度か取材を申し込んだが、コメントを得ることはできなかった。

無視されたガイドライン
 日本郵便の組織としての対応にも欠陥がある。
 消費者庁が取りまとめた内部通報制度の民間向けガイドラインには、内部通報制度の通報窓口を整備して広く周知するだけでなく、通報者を守ることが制度を機能させるために重要だと、明確に書かれている。
 ガイドラインでは、通報者が特定されないよう配慮を尽くすのはもちろん、通報内容の共有範囲は最小限とし、通報を受けて調査に乗り出すときは、調査の端緒が通報だと知られないよう工夫することも求めている。
定期的な調査に紛れ込ませたり、複数の郵便局に抜き打ちを仕掛けたりする手法も紹介されている。

 通報者の探索や通報者への不利益な取り扱いを禁止し、不利益な取り扱いをしたり通報を漏らしたりした場合は当事者を処分し、不利益の救済・回復を図ることが必要だとしている。

 では、福岡での事例はどうだったか。
 前述の通り、通報を受けた本社コンプライアンス担当役員が、調査対象者の父親に連絡を入れ、「複数からの通報」を知らせていた。
たとえ相手が管理責任者でも、通報があったと調査開始前に知らせたことは、結果から見ても、ガイドラインの趣旨に背くのではないか。
 さらに、日本郵便本社には全国郵便局長会の元会長である専務(当時)がおり、統括局長とも親しいとみられていたため、内部通報文書には「専務には言わないで」とも明確に書かれていた。それにもかかわらず、この専務も早い段階で情報を共有し、通報者の一部に連絡していたことが判明している。

 通報者が「秘密にして」と懇願する相手でも、通報者の同意を得ることもなく、通報の事実や通報者の情報を即座に明かしていたのだ。これでは、通報制度の意味がないばかりか、通報は決してしないほうがいいと知らしめているようなものだ。
 通報者捜しに対しては、懲戒処分を出して統括局長の役職も解いてはいる。
だが、処分の事実や降職の理由を社内でも明かしていない。
通報者のほうは一部が局長会で除名となり、会社の役職を降りるよう迫られて心を患い、降職や休職に追いやられた者もいたが、そうした「不利益」を回復しようとした形跡はない。

 日本郵便は筆者の取材に対し、「(内部通報制度は)ガイドラインに沿って運用し、通報には適切に対応している」と回答した。
ただし、個別の事例についてはコメントできないとし、非を認めることはなかった。
日本郵便は元副主幹統括局長を含む7人に今年3月末、停職などの懲戒処分を出したが、組織としての課題はまだ検証中だとしている。

「告発したら潰される」
 日本郵政グループの内部通報制度に重大な欠陥があることは、かんぽ生命の不正問題でも浮き彫りになっていた。
 2019年9月から立ち入り検査を実施した金融庁は、不正な保険営業などで社員の通報がありながら、それをコンプライアンス部門が積極的には調べず、担当部署に情報を横流しする例がある、などと指摘していた。

 たとえば、中部地方で保険営業に携わっていた郵便局員は2018年、不正を繰り返している疑いが濃い同僚の情報を、日本郵便の内部通報窓口に届けた。

 問題の社員は営業推進指導役という肩書で、地域の郵便局を回って保険営業の成績が上がるように指導する立場だった。
だが、指導を名目に出向いた先の郵便局で、高齢客を相手にいい加減な説明で契約件数を伸ばす一方、相談を受けた家族からの抗議や申し込みの撤回が相次いだ。
地元密着で働く郵便局員にとっては、指導役が契約件数だけ荒稼ぎして顧客の信頼関係を壊していくのは迷惑でしかない。

 通報した郵便局員は、コンプライアンス担当者から連絡を受け、不正な勧誘を目撃した状況や顧客の名前などを詳しく聞かれ、局員も保険の契約番号に至るまで詳細な情報を伝えたようだ。
ところが、知りうる限りのことを伝えたあとに、こう言われた。
「我々が調査すると、通報者が捜されて特定される可能性もあるが、それでも大丈夫ですか」
大丈夫なわけがない。

通報した局員が「それは困る」と答えると、そこから話はうやむやになったと、悔しそうに職場でこぼしていた。
不正の疑いがある同僚はその後も野放しで営業を続け、好成績で昇格もしていったという。

 この事例は、氷山の一角に過ぎない。
通報制度に関する現場からの訴えは、ほかにも少なからず聞かれた。
単に「調べてもらえなかった」ということにとどまらず、「通報者が特定されて恫喝された」「人事で飛ばされた」という趣旨の話もある。

彼らが口をそろえて言うのは「告発したら潰される」ということだ。
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2021年04月21日

尾木ママ、怒りと危機感で政府に注文 「戦時下である認識に立って」

尾木ママ、怒りと危機感で政府に注文 
「戦時下である認識に立って」
2021年04月20日  しらべえ

「尾木ママ」の愛称で親しまれている教育評論家の尾木直樹氏が19日夜、自身の公式ブログを更新。
大阪府や東京都が政府に緊急事態宣言発令の要請する方向であることについて改めて言及した。

■「まんぼうはやっぱりマンボウ」
各地で「まん延防止等重点措置」が適用される中、新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない状況が続いている。
尾木ママは「『まんぼう』はやっぱりマンボウだった!!」のタイトルで、「途中から『まん延防止等措置』となどと慌てて言い換えしたものの、やはりマンボウさんのように、ぬるっと可愛いお魚さんでしたね」と切り出した。
「先手打たないと変異株に勝てません」

■まるで国民総動員体制
続けて、「何のことありませんでしたね! 国民のほとんどが効果なんか期待していません。その通りでした。いやはや、『言葉に騙された感』が強烈です!」と指摘。
「新聞、テレビ、コメンテーター、そして、恥ずかしいことに尾木ママまでも、騙す側に立って大反省」と、自身も当初は効果を期待していたことを振り返った。

効果的な対策が示せないまま、国民が我慢を強いられていることに「中身がなんにもないくせに、まるで国民総動員体制みたい。表現の自由まで自己規制してしまいかねません! 反省、反省の尾木ママです」と記した。

■政府へ3つの提言
尾木ママは20日朝に更新したブログでも、「極めて危険性が高い限界ギリギリのような怖さ感じるのは尾木ママだけかしら?」と現状に危機感を募らせている。
感染防止対策について、「政治は専門家プロジェクトチームの判断をそのまま受け止めるだけで、変に『経済回す』とか考えないで」「規制の仕方と数理統計学など科学的予測データに基づく<収束の時期>と<ワクチン接種の個人見通し>提示する」「さらに【経済的保障】をちまちまじゃなく、全員にたっぷりする」と提言。

「以上3点さえ押さえれば、ワクチン接種時期も見えてきている中、希望の光も見えてきて、【短期集中】で国民はこの泥沼化から脱出できるように思います!!」と綴った。

■大阪の失敗から学んだ
さらに、感染拡大が止まらず、医療崩壊も叫ばれる大阪府の状況に触れ、「反面教師じゃないですが【大阪の失敗】から学びました。病床確保は必須事項ですね」とし、「政府はウイルスとの戦いはある意味、戦時下である認識に立ってほしいですね」と呼びかけた。
尾木ママの提言に、「本当にそう思います。まずは感染症専門家に従うこと。彼らは感染症のプロです」
「規制の仕方は学校閉鎖など、やはり厳しいものでないと、もう国民にはひびかないのでは、と思いました」
「日本型ロックダウンを考えるべき」など共感するコメントが寄せられている。
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2021年04月22日

<社説>コロナと首相 状況認識が甘くないか

<社説>コロナと首相 状況認識が甘くないか
2021年4月20日 東京新聞

 新型コロナウイルスの感染拡大は専門家から「第四波」と指摘される状況だ。
しかし、菅義偉首相は訪米前「全国的な大きなうねりとまではなっていない」と語っていた。
状況認識が甘くはないか。

 緊急事態宣言は二月末から三月にかけて相次いで解除されたが、感染は再拡大し、十都府県で適用されている「まん延防止等重点措置」も現時点では十分な効果が得られていない。
大阪府や東京都では再び政府に対し、宣言発令を要請せざるを得ない状況だ。

 感染拡大防止と経済活動の両立が難しい課題であることは理解する。
対応が手探りになることも、ある程度はやむを得ない。
 ただ、感染拡大状況を見ると、対策が的確だったのかとの疑問は残る。
変異株による急激な感染再拡大も、宣言解除が早かったことも影響しているのではないか。
 感染症対策分科会の尾身茂会長が「第四波」との見方を示したにもかかわらず、首相がなぜ否定する発言をしたのか疑問だ。

いくら危機感があると主張しても、国民に伝わらず、若者の「路上飲み」などを許しているのではないか。
 自民党の二階俊博幹事長は東京五輪・パラリンピックについて感染がさらに拡大した場合「とても無理と言うならやめないといけない」と中止の可能性に言及した。
 首相は「開催に向けて感染防止に万全を期す」と述べたが、状況認識の甘さの背景に、開催への固執があるのなら看過できない。

 ワクチンは感染対策の決め手であり、首相は米製薬大手ファイザー社の最高経営責任者(CEO)との電話会談で追加供給を受けることで合意し、九月までに十六歳以上の国内対象者全員分を確保できる見通しになった、という。
 ただ、首相は当初、確保時期を今年前半としたり、六月が目標だと明言したりした。
なぜ遅れるのか、当初の調達契約に不備はなかったのか、検証が必要だ。

 安倍前内閣当時、感染症対策を実質的に決定していた首相、関係閣僚らの「連絡会議」が菅内閣では一度も開催されておらず、政策決定過程がさらに不透明になっていることも分かった。
 こうした政権の不透明さも首相のメッセージや対策への不信感につながっているのではないか。

 首相は、国民の命と暮らしを守り抜くという原点に立ち返り、感染状況を深刻に受け止め、感染拡大防止に向けて自らが先頭に立つ断固たる決意と、誠意あるメッセージを国民に発するべきである。
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ワクチン「説得」は逆効果? #健康警察 、善意の「おすすめキャンペーン」の落とし穴 カギは「共感」

ワクチン「説得」は逆効果? #健康警察 、善意の「おすすめキャンペーン」の落とし穴 カギは「共感」
4/21(水) withnews

新型コロナの収束の切り札ともいわれるワクチン。
一般の高齢者に対する接種も始まりましたが、SNS上では「副反応も不安だし、打ちたくない」という声も。
それに対して「心配しすぎ!  打つのが正しい」と説得するやりとりも見受けられます。
でも考えてみると、そもそも説得されたり批判されたりすることで、人の行動は変わるものなのでしょうか?(医療ジャーナリスト・市川衛)

「新型コロナウイルスワクチン」打ちたくない!人を批判したくなる心理
2021年4月現在、新型コロナウイルスワクチンに関しては、イスラエルなど実際に接種を行った国から、有効性を示すデータが次々と出ています。
安全性についてもいまのところ、予想外といえるほどの重篤な副反応は報告されていないようです。
この先に筆を進める前に、「まずはお前のスタンスを明確にせよ」というお声もありそうなので示しますと、私は少なくとも現在国内で接種されているファイザー社製の新型コロナワクチンに関しては、多くの人が打つ意義があると思っていますし、私の順番が来れば、できるだけ早く接種したいなあと思っています。
その前提で、でもこんな声があるのもの事実です。

最大の問題は「偽情報」
 ワクチンをめぐる在米研究者の警告(毎日新聞 2021年2月14日) <「コロナのワクチン打ったほうがいいのかな?」。80代の義母から電話があった。副反応が怖いという。
「打つ利益の方がリスクより大きいと思う」と即答したものの、胸がちくりとする。>

「胸がちくりとする」……、良い表現ですね。
記者さんの葛藤が伝わってきます。
前述のとおり、私自身は「打ちたい」と思っている立場です。
なので、もし近しい人から「副反応が怖い」という声を聞いたとしたら、認識を正してあげたいと「いやいや!そんなことないんですよ! このデータ見てください。ほら……」と説得したくなってしまいそうです。
でも、この連載のテーマは「自分の #健康警察 の高まりを感じたら、一度『立ち止まって考えてみる』を実践すること」です。

そこで考えてみました。
「そもそも人は、説得されることで行動や気持ちを変えるものなのだろうか?」
--そしてちょっとフカボリして調べてみると、「人の気持ちって、そんなに簡単なものではない」ことがわかってきました。

データを示しても、物語を示しても、不安な人の考えは変えられない
ワクチンに対して不安を抱える人に、どんなコミュニケーションをすれば、接種する気持ちが高まるのか?
 実はこの問題、公衆衛生の世界では、世界的に大きな関心ごとなのだそうです。
例えば赤ちゃんのときに接種するワクチンとして国際的に使われているものに、「MMRワクチン」があります。
麻疹、風しん、おたふくかぜという3種類の感染症に対するワクチンが混合されているものです(日本では、麻疹と風しんの2種類が混合されたMRワクチンが使われています)。
このMMRワクチン、1998年にランセットという権威ある医学雑誌に、「接種が、自閉症などと関係しているのでは?」と指摘する論文が掲載され、不安の声が広がりました。
この論文は、その後に撤回されたのですが、いまだにSNSなどを中心に副反応を心配する声があり、ワクチンの接種を拒否したり、不安に思ったりする人が後を絶ちません。

そこで2014年、米ダートマス大学の研究チームは、「どんな情報を提供したら、ワクチンに対する接種意欲が上がるのだろうか?」を調べる大規模な調査を行いました。
まず、子どもを持つ親1759人に協力をお願いし、子どもにMMRワクチンを接種したいかや、自閉症と関連すると思うかどうかなどを回答してもらいます。
その後、ランダムに5つのグループに分かれてもらい、それぞれに以下のような異なる情報を聞いてもらいました。

(1)ワクチンと自閉症の関係を否定するデータ
(2)ワクチンで防げる感染症のデータ
(3)感染症で重症化した子をもつ親の「語り」
(4)感染症にかかった子どもの写真(を見る)
(5)ワクチンとは関係のない情報

そして、時間をおいてからもういちどアンケートを行い、どのような情報を提供すれば、接種への意欲が向上するかを調べたのです。
結果は、どうだったでしょうか?
なんと意外にも、「全て効果なし」でした。
どの情報も、接種意欲の向上には結びつかなかったのです。

さらに驚くべきことに、(1)のグループの中で、もともとワクチンに不安を抱えていた人は、接種意欲が以前より「低下」。要は、子どもにもっと打たせたくなくなってしまいました。
「ワクチンと自閉症は関係ない」というしっかりしたデータを見せたのに、以前よりもっと打たせたくなくなる。
これは矛盾しているように思えます。
いったいなぜなのでしょうか?

研究チームは考察の中で、背景に人間の心理的なクセのひとつ、「バックファイヤー効果(逆噴射効果)」があると指摘しています。
簡単にいえば、人は「自分の信条を否定されると、かえってその信条に固執したくなる」ということです。
どういうことか、ひとつ、例をあげてみましょう。

あなたが、どこか地方都市に住んでいるとします。
ある日、東京在住の人に「地方なんて住むもんじゃない! 車を使うから歩かないし、肥満が多いってデータもあるんだぜ!」と言われたらどう思いますか? 
「ああ、確かにそうだ。東京に住まないと……。
引っ越しを考えようかなあ」と思うでしょうか。 そんなことないですよね。
きっとカチンときて、すぐさまスマホを取り出し、東京の住みにくさを示すデータを探すはずです。
そして、東京に住むと健康に「悪そう」な情報はすぐに見つかります(生活費が高いことを示すデータや、部屋が狭いことなど都会にストレス感じてる人の声など)。
それを見て、あなたは「あー、やっぱ、地方に住んでいてよかった!」と強く確信するはずです。

つまり自分の現状を否定されると、そうされる前より、もっと自分の考えに「確信」を持つようになることがあるわけです。難しいですね。
相手を説得するのではなく、やる気を引き出す「共感」がカギとなる では、どうすればいいのでしょう?
 最近では、否定的なデータを示したり不安や恐怖に訴えたりする #健康警察 的な手法を改める動きが起きています。

ワクチンに不安を抱える人の気持ちに「共感」し、そのうえでコミュニケーションをとろうとするやり方です。
イギリスで家庭医として働き、いま日本で教育活動を行っているマハム・スタンヨン医師(福島県立医科大学)に聞いた話です。
ワクチンに不安を抱える人にかける言葉として、否定は禁物のとのこと。
その場では納得したように見えても、その後、二度と病院に来なくなってしまい、結局は目的が果たせないことが多いのだそうです。
そこで彼女がかけているのは「気持ちはわかるわ。お子さんのことを思って、とても良く勉強されていますね」という言葉。一回受け入れたうえで、続けます。

「ちなみに私も、個人的に調べていることがあるので、もし興味が出てきたら、お話しさせてくださいね」。
まず共感。そして、データを伝えるにしても「相手側がその気になる(準備ができる)時を待つ」。
ある意味で遠回りのように思える態度も、「あえて」とっていると話していました。
なお、こうした「相手を説得するのではなく、やる気を引き出す」方法として「動機づけ面接(Motivational Interviewing)」がありますが、実際、医療現場で行われた72の研究を調べたところ、その8割で従来のアドバイスより相手の行動が変わるなどの良い効果があることがわかっています。

ワクチンに限らず、喫煙でも運動不足でも、私なんぞはどうしても、自分から見て「不健康」な暮らしをしている人にひとこと言いたくなってしまいます。
それは「健康になってほしい」という善意からなのですが、相手にとっては「大きなお世話」であり、かえってその行動に固執するようにし向けていたのかもしれません。

ああ、また私の中の #健康警察 は、きちんと思考を深める前に、誰かを悪者にしようとしていた……。
毎度のことで恐縮ですが、反省します。
自分の #健康警察 の高まりを感じたら、いちど「立ち止まって考えてみる」を実践していけるよう、今後も精進していきます。
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2021年04月23日

なぜ文春砲だけが特別なのか。元編集長が明かす秘密組織の実態

なぜ文春砲だけが特別なのか。元編集長が明かす秘密組織の実態
2021年04月21日 SPA!

検事長の賭けマージャン、元法務大臣の選挙不正、総務省の接待問題、そして東京オリンピック開会式をめぐる騒動……芸能スキャンダルだけでなく、政界にも“文春砲”が轟く。
 週刊文春の編集員は60人程度。
グラビアや連載の担当者を除く、スクープ(特集)班を担当する記者は40人にも満たない。
数千人規模の大手新聞社とは比べものにならないほど小さな組織であり、さらに記者クラブにも属してはいない。
 それなのに、なぜ文春だけが大手メディアでもできないスクープを連発するのか?
 元「週刊文春」編集長で、現在は岐阜女子大学副学長の木俣正剛氏に、文春だけが特別な理由を聞いた。

◆文春に叩かれる?
「正剛(せいごう)、正剛、正剛。古巣の文春で私の名前が叩かれるのは奇妙な感じです」
「週刊文春」と「文藝春秋」の編集長を務めた木俣正剛氏は、37年間におよぶ記者生活の日々を『文春の流儀』(中央公論新社)にまとめ、3月に出版した。
 奇しくも、菅義偉首相の長男・正剛氏が総務省幹部たちを接待していた問題が文春報道によって明るみに出た時期だった。 「名前の由来まで同じ。
東条英機に反抗し、自決したジャーナリスト出身の政治家である中野正剛にちなんだようです。
本が出るタイミングでの“文春砲”に、私も困っています(笑)」

 1978年、文藝春秋社に入社した木俣氏は、花田紀凱編集長のもと、西川清史、勝谷誠彦、松井清人らと共に黄金期を築く。
「当時の会社全体の売上は、編集(雑誌売上)100億、広告100億、出版100億。営業にも力があり、財政基盤が盤石で、取材費は潤沢でした」

◆ケタ違いの取材費で、高級接待の場にも同席
 出版不況とはいえ、今でも文春の取材費はケタ違いだ。
スクープだと記者が思えば、百万円単位の取材費を投入することもある。
「総務省官僚の接待スクープ。
一人5万を超える高額な値段ですが、宴会の部屋にも文春の記者は潜入して写真を撮影しています。
接待の舞台は、会員制のラウンジレストランなので、記者が足を運んだのは一度や二度ではないでしょう。
文春の記者は誰も接待してくれないので、すべて経費ですよ(笑)」

◆自らタレコミ電話をかけ旅行に出かける伝説の記者
 経費を使ったからといって、必ずしも取材が成功するとは限らない。
過去には怪しい記者もいたという。
「私がデスクのときには、伝説の記者がいました。
自ら編集部にタレコミの電話をかけ、取材と称して彼女と沖縄旅行に出かけたようです。
 沖縄から『取材は難航しています』と電話がかかってきたので、意地悪に『次の取材もあるから帰ってくるか?』と聞くと、『いえいえ、もう少し沖縄で粘ってみます』と。
案の定、日焼けしただけで、なんの収穫もなく戻ってくるんですが、この記者は、次の週は汚名返上とばかりに特大のスクープをとってくるんですよ」

 文春の強さは潤沢な取材費だけではない。
事実関係を徹底的に詰める記者の取材力は同業他社も舌を巻く。
「他誌では取材と執筆の分業制を取っているところが多い。
一方で、文春は経験が浅くても、ネタを持ってきた記者が重要な取材をし、記事を書きます。
ネタを持ってくる人が一番尊敬される。
そして、散々訴えられてきたから、徹底的に裏を取るように記者は鍛えられています」

 他誌が訴訟リスクを懸念し、スクープから撤退していくなか、文春記者との取材力の差は広がっていく。

◆老舗なのに社長も編集長も“さん”づけの不思議な会社
 さらに、文春の忖度のない社風も読者に問題提起できる記者を育てるという。
「多くのメディア・出版業界はオーナー一族の影響力が今も強いですが、文藝春秋は社員持株会社です。
忖度とは無縁で、社長も編集長も“さん”づけ。
上下関係のない社風だから、年間契約の記者と社員の関係もいい。
記者はみなノンフィクション作家の卵という位置づけで、社員は尊敬しています。

そういう社風もあって、なにが正しいかを決めつける上から目線の記事は誰も書きません。
まず第一に当事者の声を聞こうとします」

 一見、死角なしの文春だが、木俣氏は一抹の不安を覚えている。
「2012年、局長となった私は新年会の挨拶で『ABC(実売部数調査)の1位に慣れてないか君たちは? そんなところでとどまってはいけない、あらゆるメディアを置き去りにする圧倒的な1位を目指しましょう』と言いました。
ちょうど新谷くんが週刊文春の編集長になった年です。
これは本音でしたが、口にした瞬間、嫌な気持ちになった。
平成初期、文春の黄金期で、おごりが芽生えた瞬間、あらゆる悪いことが襲ってきたことを思い出したんです」

◆最強と言われるほど怖い あっという間に国民の敵に
 1990年初頭、文春の黄金期は長くは続かなかった――。
「当時は、テレビ局のプロデューサーが文春の編集部に集まって、発売前の見本誌を見ながら、『これをうちの番組でやらしてください』って、直接交渉していました。ここはテレビ局かと思うぐらいでした。

 でも、すぐに日本中が文春の敵になりました。
1993年の皇室批判キャンペーンです。
社長宅が右翼に銃撃もされました。
翌年の『JR東日本に巣くう妖怪』の記事ではJR東日本のキオスクから文春が撤去され、そして、1995年には花田編集長が会社を去る契機となったマルコポーロ事件と立て続けに起きました。

 文春は新聞やテレビには対抗できるような大きな組織ではない。基本はゲリラなんです。
後輩たちのがんばりには感心するばかりですが、最強、最強ともてはやされるときこそ心配しています」

◆“文春砲”は知っていても、文春は知らない
 文春砲ばかりが注目を浴びるなか、各世代によって“文春”のイメージは大きく変わってきている。
「私が教えている岐阜女子大学は、大半の学生は卒業したら教員や幼稚園の先生になりますが、アンケートで好きなメディアを書いてもらうと、ユーチューブばかりです。
 彼女たちは“文春砲”は知っているのに週刊文春は知らない。

『文春は“春”という字が入っているから、エロ本だと思っていました』とも言われました。
一冊読んでもらえれば、林真理子さん、阿川佐和子さんの連載などもあり、文春のことをちゃんと知ってもらえるのですが……。
 私たちが守ってきた文春のイメージと世間が抱いているイメージは全然違うんです。
ネットでは政治家のスクープより、芸能人のスキャンダルのほうがPVはいいでしょう。
でもスキャンダル報道に走れば、文春を応援してくれている定期購読者は減ってしまう傾向にあります。
カメラマンがせっかく撮ってきたからと、掲載したくなる気持ちは私もよくわかります。
しかし、この記事で『誰が救われるのか?』ということが、これまでになく問われる時代になっています」
 いまや国民的“ペン”となった文春砲。 
どこに向けられるのか、みなが気になるのは仕方ないのだろう――。
       <取材・文/村田孔明>
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2021年04月24日

危機あおる小池都知事 “五輪返上”ブチ上げ国政進出画策か

危機あおる小池都知事 “五輪返上”ブチ上げ国政進出画策か
2021/04/23 日刊ゲンダイ

 “女帝”の動きが活発だ。
東京都への緊急事態宣言の発令が23日決定。
さかのぼること2日前、政府への発令要請を巡り、小池都知事は水面下で奔走していた
野望実現に向けて動き出した可能性がある。

 もともと、22日のモニタリング会議後に政府に発令を要請する予定だったが、21日夜に急きょ前倒し。政府の発令決定は23日と決まっていたから、要請のタイミングを早めても決定が前倒しされることはない。
わざわざ、小池知事が早期要請したのには裏がある。
「今回は大阪府の吉村知事の動きが早い。
小池知事は『都の動きが遅い』と受け止められることを嫌がっている。
早めに危機感を示し、吉村知事に対抗したかったようです」(都政関係者)

■菅政権に責任をなすり付け
 つまり、吉村知事とのパフォーマンス合戦で“やってる感”を演出したワケだ。
やってる感を今、出しまくる理由は吉村知事への対抗心だけではない。
菅政権への当てこすりも狙っている。
「今のうちに動いておけば、後に感染爆発しても『都は頑張ったのに、政府が鈍かった』という印象を世間に植え付けることができる」(同)という思惑だ。

 この自分勝手な振る舞いに、識者からはある見立てが浮かぶ。
小池知事が「五輪返上」をブチ上げ、国政進出を画策するというものだ。
 文筆家の古谷経衡氏は〈(小池氏の狙いは)国に先行してコロナ危機を棒大に訴えることで支持を得、将来の国政復帰と初の女性総理就任への布石を打つこと〉とツイート。
 コラムニストの小田嶋隆氏は〈小池百合子都知事が突然五輪の中止を宣言〉〈都知事を辞任とか言い出す〉〈でもって衆院選に打って出る〉との所見をツイートしている。

 小池都政で汗をかいてきた元中央卸売市場次長の澤章氏はこうみる。
「小池知事が必死に動いているのは、感染爆発した際に政府に責任をかぶせるためのアリバイづくりでしょう。
『国の動きが遅くワクチン供給が滞った』と訴え、自らに有利に働くと判断すれば、知事自らが五輪の中止や返上を表明する可能性はあると思う。
『開催都市の長として責任を痛感』と釈明した上で、知事を辞任。
国政に進出することも考えられます。

何にしろ、5年前、既定路線だった旧築地市場の移転を突然、延期。
注目を集めた上で、1年後には希望の党を立ち上げて国政に打って出たほどですから」

 “女帝”なら何をしでかしてもおかしくない。
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2021年04月25日

無能政治存続の剣ヶ峯 衆参3選挙での鉄槌が絶対条件

無能政治存続の剣ヶ峯 衆参3選挙での鉄槌が絶対条件
2021/04/24 日刊ゲンダイ

 3度目の緊急事態宣言に隠れがちだが、25日、この国の行方を左右する選挙が投開票を迎える。
与野党が次期総選挙の前哨戦と位置付ける衆参3選挙だ。
 野党が1つでも落とせば、無為無策のコロナ対応、狂乱五輪の強行開催など亡国の政治が永遠に続くことになる。
これ以上、デタラメを続けさせるかの剣が峰。
25日の選挙結果は、それだけ重要な意味を持つ。

 そもそも、選挙のキッカケからして自民のハレンチ政治の極みだ。
立憲民主の羽田雄一郎氏のコロナ死に伴う参院長野補選以外は「政治とカネ」の腐敗が要因である。
 最終盤の情勢は、長野が雄一郎氏の弟で立憲の羽田次郎候補が、自民の小松裕候補を引き離し、“弔い選挙”を制する勢い。贈収賄事件で在宅起訴された吉川貴盛元農相の議員辞職に伴う衆院北海道2区補選は、自民が候補擁立を見送り“不戦敗”。
立憲の松木謙公候補が他候補を圧倒しそうだ。

 残る参院広島選挙区の再選挙こそ、天下分け目の戦いとなる。
2019年の参院選を巡る大規模買収事件で有罪が確定した河井案里氏の当選無効に伴う選挙で、自民はここを落とせば3連敗必至。
何が何でも必勝を期す重点区である。
 ようやく案里氏が2月3日に議員辞職した当時、自民党内は楽観ムード。

広島は17年の衆院選で7小選挙区中6つを占めた自民の牙城だ。
基礎票の数が野党とはケタ違いで、誰も不安視していなかった。
むしろ、「補選連敗だと菅首相もメンツ丸潰れ。広島を死守して1勝2敗なら『選挙に勝てない』との声も鎮まる」(自民党関係者)と余裕をかまし、案里氏辞職を歓迎する声すら上がっていたほどだ。

 ■政治不信を見誤り保身王国に吹く大逆風
 そんな思い上がった空気も告示を待たず、一変した。
党の調査で自民公認の西田英範候補(公明推薦)が、野党系の宮口治子候補(立憲、国民、社民推薦)と横一線に並んでいることが判明。
地元選挙民に渦巻く自民への不信感の強さを完全に読み違えたわけだ。
 何しろ、案里氏の夫で議員辞職した克行元法相が現金を配った地方議員らの数は100人に上る。
本部から河井夫妻に渡った1億5000万円もの選挙資金の使途も不透明なまま。
菅首相も二階幹事長も説明責任を果たさない。
これだけ選挙民を舐め切り、よくも「楽勝気分」であぐらをかいていたものだ。

現地を取材するジャーナリストの横田一氏が言う。
「保守王国で野党系が奇跡の横一線。西田陣営には逆風が吹き荒れています。
街頭演説の反応も熱気に欠け、動員した聴衆以外にはソッポを向かれる。
だから西田陣営は企業・団体頼みに傾かざるを得ず、23日は福山市内の支援企業の横で演説するなど、組織固めに躍起です。
には地元有力紙に西田氏の名前こそないものの、シルエットと経歴の入った折り込みチラシを配布。
公選法違反スレスレの禁じ手で、もはや、なりふり構っていられないのでしょう」

 告示直後は「買収事件を思い出させると票が逃げる」と判断し、西田陣営は「政治とカネ」への言及を避けてきたが、終盤になって急変。
演説で「党本部からの1億5000万円」に触れ、「自民党は変わらなくてはいけない」と身内批判を展開したのも、焦りの表れ。
今さら小泉元首相の手法をマネしたところで後の祭りだ。

期日前投票でも野党にリードを許し、陣営は青ざめている。

野党が広島を落とせば安倍復権を許すハメに
追い打ちをかけるように、23日は菅自民に再び「政治とカネ」の醜聞が炸裂。
原一秀・前経産相に新たな現金提供疑惑が浮上した。
 菅原は秘書を通じて選挙区内の有権者に香典を渡した公選法違反事で不起訴(起訴猶予)となったが、検察審査会は「起訴当」と議決。
その再捜査の過程で、東京地検特捜部が地域の祭りや旅行の主催者に「祝儀」などの名目で現金を配った疑いを掴んだ。
 特捜部は菅原を再び任意で聴取。
菅自民のハレンチは底なしで、広島の選挙民に改めて河井夫妻の買収事件を想起させるに違いない。
西田陣営にトドメを刺し、陣頭指揮を執る広島県連会長の岸田文雄・前政調会長にとっても大きな痛手だ。
敗北すれば秋の総裁選に出る資格を失い、政治生命すら絶たれかねない。
 孤軍奮闘の岸田に救いの手を差し伸べるように、選挙終盤に細田派の幹部が続々と広島入り。
惨敗させまいと業界団体を回ってネジを巻いているという。
細田派は安倍前首相の出身派閥で、中でも萩生田文科相や下村政調会長ら安倍に近いメンツが馳せ参じている。
安倍の指示があったとみるのが妥当だろう。

 安倍が岸田に恩を売る魂胆はミエミエ。
自分の後継に推していた経緯もあり、秋の総裁選をにらみ、岸田カードを手の内に温存させたいとの思惑である。
菅が総裁再選を目指すにせよ、岸田が名乗りを上げるにせよ、カギを握るのは安倍自身。
キングメーカーとして党内に君臨するためにも、岸田の顔に泥をかぶせたくないワケだ。

 つまり、参院広島再選挙で完膚なきまでに自民を叩き潰さないと、安倍は完全に復権。モリカケに桜を見る会など「縁故主義」に染まったアベ政治の私物化路線が、ますます意気盛んとなるのは目に見えている。
 逆に善戦むなしく、野党が取りこぼせば年内に総選挙を控える中、「共闘」機運が一気にしぼみかねない。
前出の横田一氏はこう言った。
「参院広島再選挙で共産党はカヤの外。
23日は志位委員長らが広島入り。選挙終盤に『市民連合』の仲介により、やっと立憲の議員らとミニ集会で顔をそろえましたが、その場に宮口候補はいなかった。
それもこれも共産党を目の敵にする連合が選挙戦の前面に立っているから。

国民の玉木代表が応援演説に立つと、立憲の枝野代表がその場を後にするなど野党幹部同士のすきま風も目立つ。
共闘構築には課題だらけで選挙に敗れれば、その面が大きくクローズアップされ、野党間に亀裂が生じかねません」

 野党共闘が霧散すれば、この国をマトモに戻す好機は二度と来ない。
25日の3選挙は菅の首相就任後初の国政選挙だ。
その勝敗は今後の菅の求心力に直結することを忘れてはいけない。
 菅が2度目の緊急事態宣言を全面解除したのは、先月25日の聖火リレー開始直前だった。
既に感染は増加傾向にあり、専門家の多くは変異株蔓延を懸念していたのに一切無視。
「再び宣言を出すことがないように、対策をしっかりやるのが私の責務だ」と豪語しながら、ホンの1カ月で3度目の宣言だ。

 普通の感覚なら、その責任を痛感し、潔く身を引くが、菅は恥じ入りもせず権力にしがみつく。
「思い切って人流抑制に踏み込んだ」と言うが、昨年秋に「人の移動が感染拡大の主要な要因とのエビデンスは存在しない」とぬけぬけと語り、「GoToトラベル」に固執したのは誰だ。
 こんな厚顔無恥な人物に、いつまでもコロナ対策を担わせ、国民の命と暮らしを預けておくわけにはいかないのだ。

「25日に3連敗すれば『選挙に勝てない』とのレッテルを貼られ、菅首相は“解散権”を失うでしょう。
本人が9月の総裁選前に総選挙に打って出たがっても、党内は黙っていません。即、政局です。
いくら粘っても10月21日の衆院任期満了に伴う“追い込まれ解散”になるのは確実。

25日の選挙は、この国に正常な政治を取り戻すための重要な第一歩です。
有権者の健全な批判精神が問われています」(政治評論家・森田実氏)

 泥縄コロナ対応から抜け出し、明るい兆しを望むのならば、25日の3選挙で菅自民に鉄槌を下すのが絶対条件となる。
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2021年04月26日

「健康番組の情報」鵜呑みにする高齢者の超危険

「健康番組の情報」鵜呑みにする高齢者の超危険
インターネットの健康情報も怪しいものが多い
2021/04/25 東洋経済オンライン
松村 むつみ : 医師・医療ジャーナリスト

ある調査によれば、高齢者の多くが健康情報の多くを「テレビ」から得ているそうです。
依然として大きな影響力を持つテレビ。
しかし、テレビが発信する健康情報の多くはいまだ玉石混淆とも言えます。

正しい情報を得るには、どうすればいいのでしょうか?
医師で医療ジャーナリストの松村むつみ氏による『自身を守り家族を守る医療リテラシー読本』より一部抜粋・再構成してお届けします。

2017年に国内の雑誌に発表された、高齢者が医療健康情報をどこから得ているかの調査を図に示しました。 (画像:『自身を守り家族を守る医療リテラシー読本』より) これは、東京都と長野県で合計518人の60歳以上の高齢者に対して行われた調査の結果で、
テレビから得る情報は、「医者や専門家」から直接得る情報よりも割合が多くなっています。
調査によっては、「かかりつけ医」「健康診断」などがテレビよりも上位にきているものもありますが、どの項目も、総じてテレビが上位にきており、特に高齢者においては、インターネットの影響はそれほど高くはありません。

情報を得る先として「テレビ」、「医者や専門家」に次いで多いのは、「新聞」、「友人や家族」となっています。
また、株式会社インテージヘルスケアが全国11万人に対して行った調査によると、年齢が高くなるほど「かかりつけ医」「健康診断」などの信頼できる情報源から情報を入手する割合が高くなると報告されています。
この調査では、若い人ほど、テレビCMや家族や友人などの口コミから情報を得る割合が高い、という結果でした。
高齢になるほど病院にかかり、専門家から直接情報を得る機会が多いことを反映していると思われます。

依然として、テレビは大きな影響力を持っています。
文字情報だけではなく、映像や音声などを駆使して総合的に情報を伝えるのがテレビといえますが、昔と比較して正確性が求められるようになったとはいえ、医療情報に関しては、番組や局によってはまだまだ玉石混淆の情報を発信しているようです。

視聴者のリテラシーが試されます。
印象に残る情報に触れたときほど冷静になり、深呼吸して、自分で調べたり、さまざまな角度から検討してみたりすることが必要です。
高齢になるほど、かかりつけ医などから情報を得ることが多くなるという調査結果があるのは、喜ばしい傾向であるといえるでしょう。
最近は、薬局で薬をもらう際に、薬のことや病気のことについて、薬剤師に気楽に尋ねられる環境ができつつあります。
以前は、病院でないと処方してもらえなかった薬が薬局で手に入ることも増えました。

医療者と患者さん、一般の方々とのコミュニケーションを考えると、薬剤師が果たす役割は大きくなってきていると思います。
何か疑問があれば、薬局で気軽に聞いてみるのも、一つの方法です。

インターネットの健康情報も怪しいもの多い
薬や病気の治療について調べたいとき、インターネットであれば「どのサイトを見るか」は非常に重要です。
一つ安心できるのは、以前ディー・エヌ・エーにより運営されていたメディア「WELQ」の誤情報が問題となった際、グーグル社はSEOを変更して公的な情報や信頼できる情報が上位に表示される仕組みに変更しました。
このため、本書執筆時点では多くの医療情報に関して、公的ページが上位に表示される仕組みになっています。

 例えば、「大腸がん」をキーワードに検索エンジンのGoogleで検索すると、国立がん研究センターの「がん情報サービス」が最上位に表示され、診断や治療についての正確な情報が手に入るようになっています。
どうしても、テレビやインターネットのメディアが扱う情報は断片的になりがちです。
インターネットを使って何か情報を得ようとするのなら、まずはこのような公的なページで病気について一通り調べ、基本的なことがらを把握するのがよいでしょう。

また、病気になったときに使える制度は、厚生労働省や自治体のページに掲載されています。
あわせてそちらも見てみましょう。
(画像:『自身を守り家族を守る医療リテラシー読本』より) がんをはじめとするさまざまな疾患について、現在は「ガイドライン」が出版されています。
日本で診療ガイドライン作成を支援している、Minds(厚生労働省委託事業EBM普及推進事業)によると、診療ガイドラインとは、「診療上の重要度の高い医療行為について、エビデンスのシステマティックレビューとその相対評価、益と害のバランスなどを考慮して、患者と医療者の意思決定を支援するために最適と考えられる推奨を提示する文書」と定義されています。
簡単な言葉で言い換えると、さまざまなエビデンスを統合して、診断や治療に対して、どの方法がどの程度勧められるのか、あるいは勧められないのかが書いてある文書のことです。

ガイドラインでは、その診断や治療を勧めるのにどの程度確証があるかを、A−Dに分けています。
一般的には、AやBであれば、その診断法や治療法は勧められるということを意味します。

A=行うよう強く勧められる。
B=行うよう勧められる。
C=行ってもよいが、十分な科学的根拠がない。
D=行わないよう勧められる。

ところで、「ガイドライン」は通常、あくまでも医師をはじめとする医療従事者が、診療の指針として使用するものであることに注意しなければなりません。
しかし、大腸がんや乳がん、子宮がん、膵がんなどでは、患者さんのためのガイドラインや、ガイドライン解説の本も出版されています。
これらの本は、自分が受ける予定の治療の説明を聞くのにも参考になりますし、医師への質問や、医師との話し合いにも参考として使用できます。
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『ポエム大臣』健在 進次郎環境相「おぼろげながら」で批判殺到「すぐ辞めて」

『ポエム大臣』健在 進次郎環境相「おぼろげながら」で批判殺到「すぐ辞めて」
2021年4月25日 ココカラネクスト

意味不明な発言で『ポエム大臣』と揶揄される小泉進次郎環境相がまた波紋を広げている。
2030年度の温室効果ガスの新たな削減目標をめぐり、TBSの取材に「おぼろげながら浮かんできたんです、46という数字が」と発言。
SNS上では〈おぼろげながら浮かんできました。辞職の2文字が〉〈神のお告げですね、すぐ辞めてください〉などとおちょくられている。

 22日に開かれたオンラインによる米主催の気候変動サミットに出席した菅首相は、2030年度の温室効果ガスの新たな削減目標について、2013年度比で「46%削減する」との方針を表明
欧米と足並みをそろえるため、現在の26%削減から大幅に引き上げた。
急進的なカーボンニュートラルに慎重な経済界の意向を汲む経産省は「40%削減」で譲らず、環境省は「45%」を主張。進次郎氏はさらに高い「50%削減」を目指したとされている。

こうした流れを受け、TBS「NEWS23」が進次郎氏の単独インタビューを23日にオンエア。
進次郎氏は「46%削減」に着地した理由について、こう話した。
「クッキリとした姿が見えているわけではないけど、おぼろげながら浮かんできたんです。
46という数字が。シルエットが浮かんできたんです」
「意欲的な目標を設定したことを評価せず、一方で現実的なものを出すと『何かそれって低いよね』って。

だけど、五輪目指す時に『金メダル目指します』って言って、その結果銅メダルだった時に非難しますかね」
SNS上には〈横須賀市民なんとかしてくれよ〉〈おぼろげでする政治があるか?〉〈ほんまもんのバカ決定〉〈三万円賃上げするつーて一万円しか上げなかったら殴られるべ〉などと批判の書き込みが続々だ。

「いま窓の外に東京の代表的と言っていいのか、高層ビルがいっぱい並んでますよね。
この景色、変わりますよ。見てください。
空いてる屋根いっぱいありますでしょ。太陽光、できる限り置いていきたいと思っています」

 温室効果ガス削減とセットで、世論の賛否が分かれる原発再稼働が浮上している点については、「再エネをできるだけ入れていく。
もしも入らなければ、ほかの電源をどのように活用するかという話になります」と言葉を濁していた。
言語不明瞭意味不明なんじゃないか。
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2021年04月27日

ワクチン会社から謝礼を受け取っていた番組コメンテーター医師の実名

ワクチン会社から謝礼を受け取っていた番組コメンテーター医師の実名
4/26(月)  NEWS ポストセブン

 テレビで連日、コロナワクチンの有効性についてコメントをする医師たち。
ワクチン接種を待つ視聴者にとって、専門家の発言は判断を左右する重要な情報だが、気になるデータが存在する。
 NPO法人「医療ガバナンス研究所」と探査報道メディアの「Tansa」は、共同で「製薬会社から医師個人に支払われた金銭」をデータベースとして公開している。

医療ガバナンス研究所の調査責任者である尾崎章彦医師が言う。
「医療者(医師)が処方する薬の売り上げが製薬会社の収益の大部分を占めている。
両者の関係性について透明性を高める必要があると考え、作成しました。
製薬会社がホームページで公開している医療者への支払い情報を基に、金額を調査した」

 製薬会社が医療機関や医師に支払う謝礼は、「研究開発費」「学術研究助成費」「原稿執筆料等」「情報提供関連費」「その他の費用」に分類されるが、尾崎医師らが着目したのは、病院を通すことなく医師個人に渡される「原稿執筆料等(講演料や新薬開発のコンサル料)」だ。
 そうした金銭を受け取る医師たちには、テレビでコメンテーターとして活躍する専門家もいる。

 本誌・週刊ポストが確認すると、「2020新型コロナ関連専門家・テレビ番組出演本数ランキング」(ニホンモニター調べ)の上位10人のうち4人がワクチンメーカーから謝礼を受け取っていた。
 一番金額が多かったのは、昭和大学医学部客員教授の二木芳人医師(出演本数1位)だ。
 すでに公開されている2016年度(337万9300円)と2017年度(286万3811円)、未公開の2018年度分(90万3690円)を合わせると、3年間でファイザーから約714万円、アストラゼネカからは11万1370円(2017年度)、ジョンソン・エンド・ジョンソンの製薬部門であるヤンセンファーマからも5万5685円(2017年度)を受け取っていた。

「コロナ前」のものとはいえ、製薬会社から謝礼を受け取っていて、客観的なコメントができるのか。二木医師に質した。 「全部講演料で、肺炎球菌のワクチンに関する講演をファイザーさんから頼まれることが多かった。
昨年医療現場をリタイアしてからは、ほとんど講演をしていません。
今はワクチンに対する不安が必要以上に大きくならないよういろんな情報をお伝えするように努めている。
特定のメーカーの肩を持つことはありません」

 次に金額が多かったのは愛知医科大学大学院教授の三鴨廣繁医師(出演本数10位)。
ファイザーからは約504万円、ヤンセンファーマから17万6366円となっている。

国際医療福祉大学主任教授の松本哲哉医師(出演本数4位)はファイザーから2017年に約154万円など計約348万円、
東京歯科大学市川総合病院教授の寺嶋毅医師(出演本数5位)もアストラゼネカから約139万円を受け取っていた(いずれも2016〜2018年度の合計)。

 寺嶋医師は、 「呼吸器系がテーマの勉強会や講演の座長や講演料だったと記憶しています。
2019年、2020年も講演はあったと思いますが、今までもそしてこれからも、謝礼金などで発言が左右されることはありません」  と回答。
松本医師、三鴨医師からは回答を得られなかった。
前出・尾崎医師が語る。
「謝礼を受け取ること自体に違法性はないが、テレビ局側もその医師がどれくらいのお金を受け取っているかを把握していないはず。
視聴者に誤解を生まないためにも、社会に影響力が大きい医師にはもう少し厳格なルールを設けるべきです」

 彼らの意見を参考にするにあたり、製薬会社との“距離感”は、視聴者も把握しておくべきだろう。

  ※週刊ポスト2021年5月7・14日号
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2021年04月28日

4.25トリプル選全敗、高まる「反自民」のうねり

4.25トリプル選全敗、高まる「反自民」のうねり
与党内に広がる「菅では選挙を戦えない」との声
2021/04/27 東洋経済オンライン
泉 宏 : 政治ジャーナリスト

 菅政権発足後、初の国政選挙となった「4.25トリプル選挙」で自民党が全敗し、コロナ禍での政局混迷に拍車をかけている。
菅義偉首相の命運がかかる解散・総選挙の東京五輪前断行も絶望的との見方が広がり、与党内から「菅政権では選挙を戦えない」(閣僚経験者)との不安も漏れてくる。

菅首相は投開票から一夜明けた26日午前、官邸で「国民の審判を謙虚に受け止め、さらに分析をしたうえで、正すべき点はしっかり正していきたい」と述べ、平静を装った。
ただ、自民党内には「逆風は政権を失った2009年に匹敵する。
自民はもう崖っぷち」(若手)との厳しい見方も出ている。

唯一勝ち目のあった広島でも敗北
一方、全勝した立憲民主など主要野党は、次期衆院選での自民打倒を目指して勢いづく。
政府が25日に発令した3度目の緊急事態宣言も「後手にまわった」との批判が強く、大型連休を前に、菅首相の政局運営は一段と厳しさを増しそうだ。
  次期衆院選の前哨戦となった参院広島選挙区再選挙と参院長野選挙区、衆院北海道2区の両補欠選挙は25日に投開票された。
その結果、自民党は与野党対決となった広島と長野で敗北し、候補者擁立を見送った北海道も含めて全敗となった。

トリプル選挙で自民党が「唯一勝ち目のある戦い」(選対幹部)としていたのが広島再選挙だった。
しかし、野党統一候補となったフリーアナウンサーの宮口治子氏(45)=立憲、国民、社民推薦=が、自民新人で経済産業省出身の西田英範氏(39)=公明推薦=との事実上の一騎打ちを、3万票以上の差で制した。
同再選挙は、巨額の買収事件で公職選挙法違反の有罪判決が確定した河井案里前参院議員(自民を離党)の当選無効・失職を受けたもの。
選挙戦では「政治とカネ」が唯一最大の争点となり、金まみれの買収に対する有権者の強い怒りが保守王国・広島での野党勝利につながった。

広島と同様に与野党対決の構図となった参院長野補選は、野党統一候補となった立憲民主新人の羽田次郎氏(51)=共産、国民、社民推薦=が、自民新人で元衆院議員の小松裕氏(59)=公明推薦=を破った。
立憲民主の羽田雄一郎参院幹事長が2020年末に新型コロナで死去したことに伴う補選で、野党側は実弟の次郎氏による弔い選挙を前面に出して圧勝した。

支持率に表れない「反自民」のうねり
一方、収賄罪で在宅起訴された吉川貴盛元農林水産相=自民を離党=の議員辞職に伴う北海道2区補選は、自民党が不戦敗を決める中、野党統一候補として立候補した元衆院議員の松木謙公氏(62)=国民、社民、共産道委員会推薦=が、維新の新人ら5氏に圧倒的大差をつけて国政復帰を果たした。
投票率は3選挙区とも前回選挙をかなり下回り、有権者の無関心さも目立った。
中でも、これまで自民候補が野党候補の2倍近い票を得てきた広島で、公明党の全面支援を受けた選挙戦で自民が敗北した。そのことは、同党への逆風の強さを浮き彫りにしている。

2019年以降に実施された衆参補選・再選挙は計7回(衆院4回、参院3回)。このうち自民が勝利したのは2020年4月の衆院静岡4区だけとなった。
いずれも2017年秋の前回衆院選以降に実施されたもので、自民党内には「政党支持率には表れない『反自民』のうねりが感じられる」(選対幹部)との不安も広がる。
開票状況を自民党本部で見守った山口泰明選対委員長は25日夜、「(結果は)厳しいが厳粛に受け止める。謙虚に反省し、しっかり検証して正すところは正したい」と述べ、広島での「政治とカネ」批判についても「(影響は)ないとは言わない」と肩を落とした。

その一方で選挙の最高責任者の菅首相や二階俊博幹事長は党本部に姿を見せず、結果判明時のコメントも出さなかった。
広島の再選挙につながった前回参院選での河井氏の買収事件は、二階派所属の河井氏と岸田派重鎮の溝手顕正元参院幹事長による熾烈な保守分裂選挙がもたらしたもので、自民広島県連も菅首相や二階氏の現地入りを拒否していた。
今回の再選挙は岸田派による遺恨試合ともなり、前回選挙で河井氏に肩入れした自民幹部は地元県連の反発に配慮して現地入りを見送るケースが相次いだ。

党執行部内にも「敗北は岸田氏の自己責任」との突き放した声も出ている。
都議選とのダブル選はほぼ不可能に 次期衆院選に命運が懸かる菅首相にとっても、「広島での敗北は大きな打撃」(自民幹部)となる。
今国会終盤の衆院解散断行による7月の東京都議選とのダブル選という選択肢も、「政治的には今回の自民全敗でほぼ不可能になった」(閣僚経験者)との声が支配的だ。

広島での敗北は、次期総裁選出馬を目指す岸田文雄前政調会長にも大きなダメージとなった
広島は池田勇人元首相以来の「宏池会(岸田派)の天領」とされ、現在も県選出の自民党国会議員の半数が岸田派所属だ。
今回選挙で岸田氏は告示前から地元に張り付き、岸田派の所属議員や秘書団も大量投入して「宏池会選挙」を展開したうえでの敗北だからだ。
岸田氏は25日夜「素晴らしい候補者に恵まれながら、選挙戦を勝ち抜くことができなかった。力不足をお詫びしなければならない」と沈痛な表情で頭を下げた。
記者団からの責任を問う声にも「結果を出せなかったことは申し訳ない。それに尽きる」と言葉少なで、選挙に協力的ではなかった菅首相や二階氏への恨み言は封印した。
岸田氏周辺には「菅首相や二階氏による岸田つぶしにやられた」(側近)との怒りの声も少なくない。
ただ、党内には「これで、岸田氏のポスト菅の目はなくなった」と冷笑する声と、「岸田氏はよく頑張った」との同情論が交錯する。

「ゼロから出直して戦う政治家に変身する、いいチャンス」(自民長老)との見方も出る。
今回のトリプル選全敗の背景には、地方選挙における自民党の退潮があるとみられる。
各種世論調査での政党支持率をみると、自民は一貫して主要野党の支持率合計を大きく上回り続けている。
にもかかわらず、地方選挙で自民苦戦が目立つのは、「有権者の間で反自民の空気が強まっている証拠」(選挙アナリスト)でもある。
今回最も注目された広島も、コロナの影響を差し引いても投票率の低下が際立った。
自民県連は「従来の自民支持者の多くが棄権に回り、無党派層は積極的に野党に投票した」と分析。
背景には、安倍前政権以来の政治とカネの問題だけでなく、コロナ対応でも国民の命より政治的思惑を優先する菅政権への反発があると指摘する。

全敗でも「菅降ろし」は起きず
ただ、トリプル選全敗でも自民党内の菅降ろしの動きは顕在化しそうもない。
岸田氏をはじめとするポスト菅の有力候補らが、「軒並み挑戦権を封じられている」(閣僚経験者)からだ。
「選挙で勝たないと政権は続かない」として、再選狙いで衆院解散への意欲を隠さない菅首相に対し、正面から挑みかかる実力者も現状では見当たらない。

野党も足並みの乱ればかりが目立つ。
一部メディアの調査でも、「菅首相より枝野幸男立憲民主党代表のほうが嫌われ度が高い」との結果が出ている。
だからこそ、与党内に「結局、次期衆院選は菅首相のもとで戦うしかない」(自民幹部)とのあきらめムードも漂う。
菅首相は26日午前、解散・総選挙の時期については「新型コロナウイルス対策に最優先で取り組んでいく考えに変わりはない」と改めて早期解散断行に慎重な姿勢を示した。

広島での敗北の原因となった政治とカネの問題についても、「いろんな指摘をいただいている。自民党総裁として重く受け止めたい」と淡々と語った。
自民党内ではすでに、「菅首相は東京五輪・パラリンピックの開催にこぎつけ、その直後の9月に解散して一定の議席を確保することで、自民総裁選を無投票にする戦略」(有力幹部)との見方が広がる。

当面、「すべてはコロナの感染状況次第」(自民長老)という状況が続きそうだ。
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2021年04月29日

生活費の値上がりが家計直撃!ポークカレーで検証すると…

生活費の値上がりが家計直撃!ポークカレーで検証すると…
2021/04/28 日刊ゲンダイ

 総務省は先週23日、2020年度の全国消費者物価指数(2015年=100)を公表した。
前年度と比べると0・4%の下落で、マイナスは4年ぶりだ。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う原油安によるガソリンなどのエネルギー価格の大幅下落の影響が大きいという。

■消費者物価は10年ぶりの下げ幅でも…
 低下幅は10年度(0・8%下落)以来、10年ぶりの大きさだった。
物価が下がれば生活は楽になるはず。
でも、そんな実感を持つサラリーマンは多くない。

緊急事態宣言が発令され、外出は自粛。居酒屋で飲む回数は減り、自宅時間が長くなった。
家での食事は増加し、その分、料理の食材やインスタント食品を購入する頻度は増えている。
「確かにガソリンや灯油など下落している品目はあります。
ただ、生活に必要な食品や日用品に目を向けると上昇しているものがたくさんあるんです。

生鮮野菜は5・9%上昇し、生鮮果物も5・3%上がっています。
庶民感覚では生活費はかなりアップしていると思います」(市場関係者)

夕食にポークカレーを作ると…
 夕食にポークカレーを作るとどうなるか。
じゃがいも(23・7%アップ)とにんじん(18・1%アップ)は昨年より高くなった。
たまねぎ(マイナス0・5%)やカレールー(マイナス1・3%)は安くなったが、豚肉(3・3%アップ=国産ロース)は値上がりしている。
 ビール(マイナス2・1%)は値下がりしたとはいえ、350ミリ缶で200円を超す。
一方、100円ちょっとで購入できる第3のビール(5・3%アップ)は高くなった。
ビール類は酒税改定の影響が大きいとはいえ、家飲みが増えた分、家計への負担は増している。

つまみにピッタリのえだまめ(3・6%アップ)も値上がりだ。

鮮魚も高騰
 鮮魚の上昇も激しい。庶民の味方、さんま(24・5%アップ)やししゃも(10・4%アップ)、あじ(2・5%アップ)も高騰した。
「物価の上昇はティッシュペーパーやトイレットペーパーなど在宅時間が長くなったことで消費量が増えた日用品にも及んでいます。
電子レンジや炊飯器なども値上がりです。
コロナ禍で需要が拡大した空気清浄機も上昇でした」(前出の市場関係者)

 東京や大阪など4都府県では5月半ばまで緊急事態宣言が続く。物価上昇の少ない食材や食品でしのぐしかない。 
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2021年04月30日

「共産党の支持がなければ……」名古屋市長選で漏れる恨み節

「共産党の支持がなければ……」名古屋市長選で漏れる恨み節
2021年04月29日 SPA!

◆出馬するも地獄、せぬも地獄の河村氏だったが……
 名古屋市長選は接戦の末、河村たかし氏が5選を果たした
。当初、対抗角であった横井利明氏にほぼ全ての政党が相乗りし、大船団を形成。
開戦前夜は「横井圧勝」と目されていた。
在名全国紙記者は選挙戦を振り返る。

「リコールの不正疑惑で窮地に立たされていた河村氏ですが、出馬を取りやめれば不正を認めたことになるし、出馬して負けようものなら政界引退の危機になった。
全政党相乗りという史上希に見る応援を取り付けた横井氏がほぼ勝つと見られていたので、出馬するも地獄、せぬも地獄の状況でした。
 実際、河村氏は出馬の判断を最後までできず、代わりとなる候補者はいないか方々に声を掛けていたとも。
しかし、誰も『負け戦』に出る者はおらず、結局、出馬することとなったようです」

◆予想以上だった河村支持層
 だが、蓋を開けてみれば思わぬ河村人気が河村氏を後押しすることとなった。
その辺りの詳細はこちら「“疑惑”の河村たかし氏が優勢。市長選で河村ラブな、名古屋人の謎気質」を参照してほしい。
この状況に後手を踏んだのが、「村・村コンビ」から「村・村戦争」の相手となった大村秀章愛知県知事と横井氏の陣営だ。

「誰もが盤石の選挙戦になると思っていたが、予想外の世論調査に横井氏の陣営だけでなく、最大の支援者である大村知事の対応は後手に回ってしまった。
コロナ対策と称してカネをバラ撒く“実弾戦”に出たが、これも焼け石に水。
横井氏はほぼ全政党の支援を取り付けながらも苦しい選挙戦を戦うことになったのです」
 政党の支持は取り付けたが、横井氏は選挙戦の中盤からなんとも微妙な立場に立たされたのである。

◆共産党の支持がなければ……
 ある名古屋市議は今回の選挙をこう分析する。
「共産党が横井支持を表明したことで、自民と公明支持層の半分近くが河村氏に流れたと見られてます。
自民支持層だけでなく、立民支持層にもいるアンチ共産党の支持者が河村氏にながれたのは大きかった。
もしも共産党が公に横井支持を表明せず、自主的な支持程度だったら選挙はもっとカオスになったと思いますよ。
 ある自民党議員は『共産党の支持がなきゃよかったのになぁ……』なんて愚痴をこぼしてたくらいです」
 普段は難敵である共産党の支援が支持層からの離反を促すことになるとは……。
なんとも皮肉な結果である。

◆物言う市長、河村たかしの人気
 図らずも共産党の支援が河村氏の追い風となってしまうとは、なんとも皮肉な結果である。
だが、共産党の支持表明だけが河村氏の追い風になったわけではないというのが、前出の記者だ。
「昨年の春に発出された緊急事態宣言の際、名古屋市は登園自粛を呼びかけつつも、河村氏は『働くおかあちゃんに休めというのはあまりに残酷』と言って、保育園の通園を申告制にして開園させたのです。
こうしたわかりやすい施策に対して市民からの評価は高く、“物言う市長”というイメージが定着したんでしょう。
横井氏は大船団とも言える応援団をバックに出馬しましたが、これまでの河村氏の実績と人気を読み間違えたとも言えるんじゃないでしょうか。
それほどまでに河村氏の人気はすごかったということ」  とは言え、5期目を向かえることとなった河村氏だが前途は多難だ。
大村知事との関係に加え、市議会では支持母体の減税日本は野党であるため、捻れ市議会を運営するためには最大会派の自民党との折衝も大きな壁となる。
5期目を向かえる河村市政には、全国から大きな注目が集まりそうである。
     〈取材・文/SPA!編集部〉
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「五輪に看護師500人」に呆れる海外大手紙やジャーナリスト 猛抗議にも着目

「五輪に看護師500人」に呆れる海外大手紙やジャーナリスト 猛抗議にも着目
2021年04月29日 しらべぇ

変異株N501Yの流入により、日本でも感染者数がいきなり急増している新型コロナウイルス。
首都圏の医療機関がその感染症と闘う患者への対応で精一杯というなか、東京五輪・パラリンピック組織委員会が日本看護協会に「五輪のため看護師500人を」と要請。
医療従事者を呆れさせ、怒らせた。

「五輪開催まで100日を切った。ワクチン接種率もまだまだの日本で安全に開催できるものか」との報道も目立ってきたが、看護師が猛反発という話題も、さっそく海外メディアやジャーナリストの目に留まったようだ。

■現役の看護師ら猛反発
「東京五輪・パラリンピックのため、看護師500人を確保したい」という組織委員会からの要請を受けた日本看護協会。
それに対し、五輪の成功より目の前の患者のほうが大切、私たちは使い捨ての駒か、と猛反発を見せる現役の看護師たち。
家族も同じ気持ちなのだろう。

抗議はTwitterに『#看護師の五輪派遣は困ります』というハッシュタグを生み、愛知県医労連は「4月28日午後2時からTwitterでデモを開催します」と宣言。
そちらも、ものすごい勢いで拡散している。
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■海外紙も反応
この状況にさっそく反応したのは、シンガポール最大の新聞『海峡時報(The Straits Times)』だった。
記事からは、疲弊しながらも使命感ひとつで新型コロナとの厳しい闘いを続けている、医療従事者らへの同情が見て取れる。 重要な医療資源である看護師を500人も奪われることに彼らは激怒しているとし、「本当に大事なのは五輪なのか、目の前で苦しんでいる日本人の患者なのか、優先順位を見誤るなと訴えている」などと報じている。

■ジャーナリストが英語で拡散
また、米国の元プロサッカー選手でジャーナリストのジュールズ・ボイコフ氏も、東京五輪の厳しい状況に注目しており、この度の件もしっかりとツイート。
今後は英語圏への拡散も期待できそうだ。
ボイコフ氏は2016年に著書『Power Games:A Political History of the Olympics(原題)』を出版。
そのなかで、五輪はスポーツマンシップを利用した偽善事業にほかならず、開催国・都市に巨額の負担を強い、一部の関係者、政治家、企業の利益になるだけだと主張。
公平で透明性のある事業に転換する道を模索せよと訴えてきた。

■「確保する体制を整える」
それでなくとも、大病院の看護師たちが続々と退職、あるいは町の小さなクリニックに転職などと報じられている。
過労、強すぎる精神的ストレス、感染への不安、家族への影響など理由は様々だという。
その後、「医療従事者を確保するためにも、手伝ってもいいといってもらえるような体制づくりに努める」などと言葉を加えた組織委員会。実弾をばら撒く感覚で、看護師500人を集めようとしているのかもしれない。

■再延期が不可能な理由とは
東京五輪の再延期が不可能な理由について、組織委員会の武藤敏郎事務総長は28日、最大の理由として東京・晴海の選手村マンションの購入者に居住をこれ以上待たせられないこと、そしてアスリートたちのモチベーション維持の難しさを挙げた。
新型コロナの感染爆発の不安や、医療従事者の使命感の搾取といった批判が湧いている今、それら2つの理由で「再延期は困難」と言われたところで、国民は納得するだろうか。

SNSを甘くみてはならない。
このままでは、五輪開催そのものをボイコットするオンライン署名運動が始まる可能性もゼロではないだろう。
   (文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)
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