「五輪に看護師500人」に呆れる海外大手紙やジャーナリスト 猛抗議にも着目
2021年04月29日 しらべぇ
変異株N501Yの流入により、日本でも感染者数がいきなり急増している新型コロナウイルス。
首都圏の医療機関がその感染症と闘う患者への対応で精一杯というなか、東京五輪・パラリンピック組織委員会が日本看護協会に「五輪のため看護師500人を」と要請。
医療従事者を呆れさせ、怒らせた。
「五輪開催まで100日を切った。ワクチン接種率もまだまだの日本で安全に開催できるものか」との報道も目立ってきたが、看護師が猛反発という話題も、さっそく海外メディアやジャーナリストの目に留まったようだ。
■現役の看護師ら猛反発
「東京五輪・パラリンピックのため、看護師500人を確保したい」という組織委員会からの要請を受けた日本看護協会。
それに対し、五輪の成功より目の前の患者のほうが大切、私たちは使い捨ての駒か、と猛反発を見せる現役の看護師たち。
家族も同じ気持ちなのだろう。
抗議はTwitterに『#看護師の五輪派遣は困ります』というハッシュタグを生み、愛知県医労連は「4月28日午後2時からTwitterでデモを開催します」と宣言。
そちらも、ものすごい勢いで拡散している。
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■海外紙も反応
この状況にさっそく反応したのは、シンガポール最大の新聞『海峡時報(The Straits Times)』だった。
記事からは、疲弊しながらも使命感ひとつで新型コロナとの厳しい闘いを続けている、医療従事者らへの同情が見て取れる。 重要な医療資源である看護師を500人も奪われることに彼らは激怒しているとし、「本当に大事なのは五輪なのか、目の前で苦しんでいる日本人の患者なのか、優先順位を見誤るなと訴えている」などと報じている。
■ジャーナリストが英語で拡散
また、米国の元プロサッカー選手でジャーナリストのジュールズ・ボイコフ氏も、東京五輪の厳しい状況に注目しており、この度の件もしっかりとツイート。
今後は英語圏への拡散も期待できそうだ。
ボイコフ氏は2016年に著書『Power Games:A Political History of the Olympics(原題)』を出版。
そのなかで、五輪はスポーツマンシップを利用した偽善事業にほかならず、開催国・都市に巨額の負担を強い、一部の関係者、政治家、企業の利益になるだけだと主張。
公平で透明性のある事業に転換する道を模索せよと訴えてきた。
■「確保する体制を整える」
それでなくとも、大病院の看護師たちが続々と退職、あるいは町の小さなクリニックに転職などと報じられている。
過労、強すぎる精神的ストレス、感染への不安、家族への影響など理由は様々だという。
その後、「医療従事者を確保するためにも、手伝ってもいいといってもらえるような体制づくりに努める」などと言葉を加えた組織委員会。実弾をばら撒く感覚で、看護師500人を集めようとしているのかもしれない。
■再延期が不可能な理由とは
東京五輪の再延期が不可能な理由について、組織委員会の武藤敏郎事務総長は28日、最大の理由として東京・晴海の選手村マンションの購入者に居住をこれ以上待たせられないこと、そしてアスリートたちのモチベーション維持の難しさを挙げた。
新型コロナの感染爆発の不安や、医療従事者の使命感の搾取といった批判が湧いている今、それら2つの理由で「再延期は困難」と言われたところで、国民は納得するだろうか。
SNSを甘くみてはならない。
このままでは、五輪開催そのものをボイコットするオンライン署名運動が始まる可能性もゼロではないだろう。
(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)