2021年05月02日

菅総理のコロナ感染対策、ここへきて「3つのあり得ないミス」を犯していた…!

菅総理のコロナ感染対策、ここへきて「3つのあり得ないミス」を犯していた…!
5/1(土)   現代ビジネス
中原 圭介(経済アナリスト)

コロナ経済損失は「今年すでに5兆円」に… 
 例年11〜12月には、様々な新聞・雑誌から「来年の経済やマーケットはどうなるのか聞きたい」という依頼が来るのですが、昨年はある新聞を除いてすべてお断りさせていただきました。
 なぜかというと、その後の新型コロナ情勢がどうなるのか読めないなかで、経済やマーケットの見通しを語るのは不可能だったからです。

 昨年秋口〜今年初めの講演会やセミナーなどでも繰り返し申し上げていたように、
(1)新型コロナは第何波まで来るのか、
(2)突然変異がどの程度起こるのか、
(3)ワクチンの効果は長続きするのか、
この3点について私たちはわからないことだらけだったのです。

 とりわけ経済については、楽観的な見通しをまったく立てることができませんでした。
菅義偉政権のコロナ対策の初動を見ていて、今後も効果的な対策を打てないという諦観をもとに、経済には極めて不透明感が高まるだろうという危機感を抱いていました。
 現実にはどうなっているのかというと、新型コロナは昨年の12月以降、第3波、第4波と相次いで拡大し、この短い期間のうちに緊急事態宣言の発出が2度も行われてしまいました。
 おそらく、今年1〜5月の経済損失(GDPべ―ス)は5兆円に達するだろうとみられています。

ありえない「3つのミス」を犯した
 マスクと手洗いの習慣がある日本において、なぜこのような無様な結果になったのでしょうか。
それは、菅政権がありえない大きなミスを少なくとも3つは犯していたからです。
その3つには、「失敗の本質」と呼べるものが色濃く表れているのです。

 まず1つめの大きなミスというのは、「Go Toトラベル」や「Go Toイート」といった事業を始めてしまったことです。2020年12月12日に寄稿した記事 『GoToキャンペーン、なぜか止めない菅政権の反知性主義という末路』でも申し上げたように、歴史の教訓や科学の知見が示しているのは、感染症拡大の主たる原因は人の移動によるものだという事実です。
 新型コロナの感染が終息していないにもかかわらず、政府が歴史や科学のエビデンスを無視して、わざわざ税金を使って一連の「Go To事業」で人の動きを増やそうとしたのは、感染拡大を後押ししていたのと同じ行為です。
あまりにも愚かな政策だったといわざるをえません。  

今年の初めに2回目の緊急事態宣言が発出された当時から、政府は5月のゴールデンウィーク明けに「Go Toトラベル」の再開を模索していたといいます。
さすがに状況の悪化をみて再開の方針を引っ込めていますが、税金を使って感染を拡大させ経済により大きな被害を与えるという人災を、この政府はもう1回起こそうというのでしょうか。

このままではワクチンが効かなくなる…!?
ワクチン接種の出遅れも鮮明に 
 2つめの大きなミスは、水際対策を怠ったことで国内に変異株を入れてしまったことです。
 菅義偉首相は国内に変異株が侵入する以前から、「1人でも変異株の感染者が見つかれば、水際対策を強化する」と度々発言していましたが、これは明らかに判断の誤りでした。
なぜ菅首相のあたまの中では、「1人でも見つかった時点で、数百人に感染が拡大している」という想像力が働かないのか、不思議でなりませんでした。

 この致命的な判断ミスは、ワクチン接種の効果を激減するリスクを孕んでいます。
日本ではワクチンの接種率がまだ1%を超えたばかりですが、国民の大半が接種を終える前に特定の変異株が拡大してしまっては、ワクチン接種による集団免疫の形成が困難になっていくからです。
 たしかに、主要メディアの報道をみていると、ワクチン接種を推し進めれば、変異株の猛威に歯止めをかけられるという認識が一般的です。
いくら変異株の感染力が高いといっても、ワクチンによる免疫力が高まれば、多くの人々が発症を抑えられると考えられているわけです。

 ところが最近の臨床試験では、アストラゼネカ製のワクチンが南アフリカ型にはほとんど効果がないことがわかったばかりか、ファイザー製のワクチンもブラジル型には効果が薄いという研究結果も出ています。
さらには、インドで流行する二重変異株や三重変異株はすべてのワクチンが効かないといわれています。

 国民の大半にワクチン接種が行われる前に、これらの危ない変異株が広がってしまうと、集団免疫の達成はかなり怪しくなってしまいます。
無謀にも東京オリンピックを開催すれば、さらなる変異株の国内侵入を完全に防ぐのは不可能でしょう。
その結果、日本でも感染力と毒性が強い変異株が主流となる第5波や第6波に見舞われるリスクは高まっていきます。

そもそも会食ルールが間違ったエビデンスだった  
3つめのミスは、これまで政府が間違った感染対策を進めてきたということです。
 当初から飲食店だけへの狙い撃ちは、あまり効果がないとみられていました。
それは、飲食店に午後8時までの時短営業を強いたとしても、時間を前倒しして来る客が増えることでかえって密な状態をつくりだしているケースが大都市圏を中心に常態化していたからです。
 それに加えて、飲食店が早く閉まることで、若い人々が仕方なく路上や公園で集まって飲むという行為は、今では当たり前の光景となっています。

テレビの報道などでは「若い人々の気が緩んでいる」と苦言を呈する姿勢がみられますが、それは単なる責任転嫁にすぎません。
 最大の問題は、政府が説得力のあるデータに基づいて、「こういう対策をこれだけの期間実施すれば、これだけの効果が表れるから、若い人々も協力してほしい」と説明しないということです。
だから、菅首相が「協力してほしい」とお願いしても、若者の心には響かないのです。 

 政府は新型コロナに関するさまざまなデータを持っています。
政府がこれらのデータを具体的な数字で示せば、国民全体で避けなければならない行動を認識・共有することができるはずです。
 それにもかかわらず、なぜ公表しないのでしょうか。
 それは、政府がデータをすべて明らかにすれば、これまで間違った感染対策をしてきたことが発覚してしまうからです。

その代表例としては、「会食は4人以下でしてください」というものがあります。
事実、政府関係者によれば、会食の参加者が4人や3人の場合でも感染するケースが多いといいます。
 大手メディアの報道では、大阪市職員が5人以上の会食を行っていたケースが200件以上あったと叩かれていますが、これが4人以下だったら不問に付されていたことでしょう。
そのように考えると、政府が決めた4人以下でという基準は感染対策として間違っているので、一刻も早く是正するべきでしょう。

データを生かす感染対策を
 これまで集めたデータを生かすのであれば、飲食店に時短営業を強いるのはあまり効果がありませんし、協力金を出すのは税金の無駄遣いです。
時短営業を要請する代わりに、「入店は基本的に1人客のみ、黙食を条件に最大2人まで」と制限をしたほうが、感染対策として大きな効果を発揮すると思います。
 当然のことながら、感染対策をしっかり行っている飲食店と行っていない飲食店を同じに扱うのは誤りです。
政府や自治体は感染対策ができていない店に対して、その対策費用をすべて負担する取り組みをすぐにでも始めるべきです。

 政府は自らが広めた感染対策の基準の誤りを正さばければなりません。
通勤で感染している人々も相当数いるはずです。
朝の通勤ラッシュで感染しないはずがありません。
現実に、昨今の感染者数は職場感染、家庭感染のほうが飲食店感染よりも増えているのではないでしょうか。
政府には正確なデータを公表してほしいところです。

 新型コロナの度重なる感染拡大は、これでもかというほど、政府の無力さをさらけ出しました。
すべてのミスに通底しているのは、歴史や科学、データを軽視しているということです。
さらに悪いことに、これまでの間違いを認めることができず、根拠もなく収束させると言い切る精神論に、国民は辟易としています。

政府はこの1年間何をしてきたのか  迷走が止まらない
 政府はこの1年間、一体何をしてきたのでしょうか。
これまでの国内外の失敗事例を研究・分析したうえで、効果的な対策を考える時間は十分にあったはずです。
ところが、政府の対応をみていると、そういった当たり前のことがまったくできず、行き当たりばったりの迷走ぶりを続けてしまっています。
 菅首相の看板政策のひとつに「デジタル庁の創設」というものがあります。
政治・行政のデジタル化は、行政の業務を効率化するということだけでなく、過去の政策を検証して次の政策に生かすというメリットがあります。
そこには、政策が利権に縛られて、非効率で無駄が多くなるという弊害は皆無です。

 しかし、政府のこれまでの「反歴史・反科学・反データ」的な感染対策は、政治のデジタル化とは真逆の方向に動いているようにみえます。
観光利権や五輪利権に固執するあまり、感染対策が後手後手になっている様子をみていると、デジタル庁の創設など悪い冗談としか思えません。

 国民の多くが「政府の対策では感染者は減らない」と考えてきましたし、実際にそのようになってきました。
国民のほうが現実をしっかりと捉えているという点でも、政府の危機管理能力の低さや非効率な対策がいっそう浮き彫りになった1年になったのは、非常に残念なことです。
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☁ | Comment(1) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする