梅雨時の頭痛・メンタル不調はなぜ?「6月病」を防ぐ4つのポイント
2021.6.16 Diamondオンライン
池井佑丞:医師
関東甲信地方でついに梅雨入りが発表された。
じめじめとした天気が続くと、「何だか体の調子が悪く感じる」「気分が憂うつ」という人も多いのではないだろうか。
今回は、梅雨時に起こりやすい体調不良の要因と、予防する上でのポイントを解説する。(医師 池井佑丞)
梅雨時に感じる 体調の悪さ…原因は?
6月に入り、気温と共に湿度の上昇を感じるようになってきました。
西日本は歴史的な早さで梅雨入りした一方、東日本では梅雨入りが例年より遅れていた今年。
6月14日、関東甲信地方でついに梅雨入りが発表されました。
日本気象協会が行った調査によると、男女300人のうち75%の人が、梅雨を「嫌い」と回答したそうです。
その理由の中には、
・憂うつになる、ストレスがたまる
・体調が悪くなりやすい といった心身の不調に関するものも見られます。
読者の方にも、はっきりとした体調不良はなくても「梅雨時はなんとなく具合が良くないな」と感じている方は多いかと思います。
まだ医学的に解明はされていませんが、「気象病」という概念に注目が集まり始めています。
「気象の変化によって症状が起きる、または悪化する」といった状態を総称した言葉です。
実際、大学生を対象としたある調査では、天気が悪い日に「頭痛」や「体のだるさ」といった気象病の症状があると答えた人が全体の44.2%であったという結果が出ています。
また、そのうちの79.2%の人は、天気が回復すると症状も回復すると回答しています。
そこで今回は、梅雨時によく見られる疾患や体調不良に焦点を当てていきたいと思います。
自律神経の乱れが影響した頭痛も 梅雨時でも熱中症に要注意!
「気象病」の症状としては、「頭痛」を訴える方が最も多いことが分かっています。
気象と頭痛の関係性はまだ全て明らかになってはいませんが、気圧の変化などによって自律神経が乱れ、その結果頭痛が引き起こされると考えられています。
現在、気圧の変化は「内耳」で感じ取っているということが分かってきており、研究が進められています。
また梅雨時は雨の日には涼しく、合間に晴れるときには蒸し暑いといった「寒暖差」が大きいことも、同じく自律神経に影響する要素となります。
自律神経には「交感神経」と「副交感神経」の2つがあり、
交感神経が優位になると脳血管が収縮、逆に副交感神経が優位になると脳血管が拡張するのですが、梅雨時には気圧や気温の変動によるストレスで交感神経が活発になり、脳血管が収縮したり筋肉が硬くなったりすることで頭痛が起きやすくなると考えられます。
さらに交感神経が活発な状態が続けば、エネルギーの消費や筋肉のこわばりから、疲労やだるさを起こすこともあります。
また、梅雨時にも注意しておきたいのが、熱中症です。
昨年の6月から9月の間で、全国で約6.7万人もの方が熱中症により救急搬送されました。
その大部分は8月に集中していますが、6月だけで見ても全体の1割近くに当たる6336人が搬送されており、熱中症対策はこの時期から大変重要であることが分かります。
梅雨時に起こる熱中症には、次に挙げる要因が深く関わっていると考えられます。
気温は、春から真夏に向けて徐々に上昇していきます。
この変化に人の体は無意識に対応し、少しずつ高い気温に順応していくようになっています。
しかし、梅雨の時期は寒暖差が大きく、急に気温が上がってしまうことがあります。
そうすると、体はすぐに順応することができず、熱中症を起こしてしまうリスクが高くなるのです。
今年の梅雨は全国的に平年並みかそれ以上の気温になると予測されていますから、天候による温度差には特に注意が必要です。
また、コロナ禍によって外出の機会が減っている今、空調の効いた室内で多くの時間を過ごしている方も多いと思います。そういう方は、気温の変化を感じることが少ないでしょうから、梅雨時を過ぎてからもなおのこと注意が必要です。
熱中症を引き起こす環境要因は「気温の高さ」だけではありません。
環境省が「熱中症予防情報サイト」で発表している「熱中症警戒アラート」は、気温に加え、湿度や周辺の熱環境を取り入れた「暑さ指数(WBGT)」を採用しています。
「湿度の高さ」も熱中症を引き起こす重要な要素となっているのです。
気温が上昇して体温が上がると、体は熱を逃がすために汗をかきます。
汗が蒸発する際の気化熱を利用して体温調整を行うわけですが、湿度が高いと汗が蒸発しにくくなってしまうので身体に熱がこもり、熱中症のリスクが高まってしまうのです。
体温が下がらないと、体はさらに汗をかいて体温を下げようとするため、脱水のリスクも高くなります。
環境変化+気象変化による 「6月病」に要注意
天候の悪い日が続くと、気が滅入りますよね。
冒頭にご紹介した調査で梅雨時に「憂鬱になる、ストレスがたまる」と回答した方は全体の3分の1ほどに上りました。
誰でも感じる当たり前のこととも言えますが、梅雨時のストレスはメンタル不調に発展しやすいと考えられます。
「5月病」は皆さんご存じでしょう。
新年度で進学や就職、異動や転勤など、環境の変化を迎えた方が、そのストレスによりメンタル不調を起こしがちなのが、5月頃だと言われています。
そして、最近は「6月病」という言葉を聞くことも多くなってきました。
上記の環境変化に6月の天候不良が重なった結果、不調が長引いたり、悪化したりしてしまうことがあるのです。
前述の通り、気圧の変化や湿度の上昇が引き起こす自律神経の乱れによるストレスや体調不良も、メンタルリスクを高める要因となっています。
そして5月病や6月病は慢性化したり、さらに悪化したりしてしまうと適応障害やうつ病へと進行してしまう可能性があります。
梅雨時の不調を防ぐ すぐに実践できる四つのポイント
これらの体調不良を予防するためには、気候の変化にうまく順応していくことが重要です。
そのために簡単に実行できる方法をいくつかご紹介します。
(1)ゆっくり湯船につかる
気圧変動や湿度による自律神経の乱れを予防するには、湯船にゆっくりと浸かることがおすすめです。
このとき、熱いお湯だと交感神経が刺激されてしまうので注意してください。
就寝30分〜1時間ほど前に入浴し、上昇した体温が下がるタイミングで眠りにつくと良く眠れます。
入浴〜就寝のリズムを作ることで、自律神経の切り替えがなめらかに行えるようにしましょう。
(2)汗をかく
涼しい日が続いた直後に気温が上がった場合、体がうまく汗をかくことができず、熱が体にこもってしまうことがあります。
日ごろから汗をかく習慣を身に付けておくと良いでしょう。
普段スポーツやトレーニングで汗をかいているという方は、そのままの生活を続けましょう。
普段運動をしない方は、「入浴時に汗をかく」というのが取り組みやすいでしょう。
この場合には熱いお湯がおすすめです。
そのため、就寝直前の入浴は避けてください。
毎日ではなく週に1〜2度取り組むだけでも効果があります。
ただし脱水状態になる危険もあるため、合わせて水分補給を行うことも重要です。
汗が蒸発しにくく体温が下がらない場合、さらに汗をかいてしまうので、のどの渇きを感じなくてもこまめに水分を摂りましょう。
(3)日光をあびる
梅雨の時期、外出を嫌って引きこもりがちになってしまう方も多いかと思いますが、メンタルバランスを整えるには午前中5〜15分程度の時間、日光を浴び、セロトニンの分泌を促すことが必要です。
曇りや雨の日でも、外出をすれば屋内の倍以上の照度の光を浴びることができます。
また、セロトニンは目から光を取り込むことで生成が促されると言われていますので、外に出られない時には窓の外をよく眺めるなど工夫をすると良いでしょう。
(4)通常の活動量・活動リズムを保つ
睡眠時間の変化や活動量の低下、外出頻度の減少などはメンタル不調の原因となります。
例えば、1日当たりの歩数が4000歩を下回るとメンタル不調のリスクが高まることが分かっています。
睡眠時間が6時間を下回ったり、9時間を超えたりするとメンタルに悪影響を及ぼすという調査結果もあり、毎日決まって7〜8時間の睡眠を取り続けることが望まれます。
これはコロナ禍の自粛生活にも同じく言えることですが、外出のできない日にも、規則正しく活動的な生活を送るよう心掛けることが何より大事なことです。
これら四つのポイントを心の片隅に置き、梅雨を乗り切っていただければ幸いです。