2021年10月03日

バリウムより胃カメラがオススメ、2つの理由とは?

バリウムより胃カメラがオススメ、2つの理由とは?
2021.10.2 Diamondオンライン
森勇磨。産業医・内科医

人生100年時代は、健康こそ最大の資産です。
しかし40歳を越えると、がん、糖尿病、腎臓病といった病気を避けては通れません。
国立がん研究センターによれば、40〜49歳のがん患者数は、30〜39歳と比べると3倍以上です(2018年)。
もちろん50代、60代と年齢を重ねるにつれ、がん患者数はどんどん増えていきます。
本連載は、毎日の食事から、大病を患ったあとのリハビリまで、病気の「予防」「早期発見」「再発予防」を学ぶものです。著者は、産業医×内科医の森勇磨氏。
「予防医学ch/医師監修」の管理人でもあり、動画は「わかりやすい説明で参考になる」「怖いけど面白い」と評判で、チャンネル登録者は27万人を超えています。
初の単著『40歳からの予防医学 医者が教える「病気にならない知識と習慣74」』を出版し(9月29日発売)、がん、糖尿病、高血圧、食事、生活習慣、人間ドック、メンタルというさまざまな観点から、病気にならない知識と習慣をあますところなく伝えています。

 胃がんの早期発見に欠かせないのが「バリウム検査」と「胃カメラ検査」です。
「バリウム」とは造影剤の一種です。レントゲンやCTを撮影するとき、コントラストをくっきりさせるために使います。
 実際の検査ではバリウムを飲み、台の上で回転させられ、その中でレントゲンを撮影していきます。
このバリウム検査は「対策型検診」として公費で賄われているにもかかわらず、受診率は1〜2割と非常に低いのです。
 原因としては「バリウムの味が独特で飲みにくい」「気持ち悪くなる」などがあります。
また「医者は絶対にバリウム検査を受けない」「バリウム検査は危険だ」という噂も耳にします。

 まずバリウム検査に関しては、日本で行われた複数の研究結果からは、受診することで男女ともに死亡率が下がったという結果になっており、有効性は証明されています(※1)
 確かにバリウムが腸に詰まってしまう「腸閉塞」や、腸に穴が開く「腸管穿孔(せんこう)」というリスクも存在します。しかし、入院が必要となるレベルの合併症が起こった人は10万人中0.18人、割合にすると0.00018%にすぎません(※2)
この割合を考えれば、バリウム検査は有効性が証明されていて、かつ合併症も少ない素晴らしい検査だと言えるでしょう。  

 一方でバリウム検査とは別に、「胃カメラを受ける」という胃がん検診の選択肢も存在します。
胃カメラも2014年から対策型検診に追加されましたので、非常に受けやすくなりました。
この胃カメラも死亡率減少を示すデータが出ており、オススメできる検査です(※3、4)

バリウム検査と胃カメラの違いは?
 次に両者の特徴と違いについてです。
まず、胃カメラは「早期胃がん」の発見に適しているといわれています。
カメラで胃の壁を内側から直接目視するので、バリウム検査で見落としがちな腫瘍や、でっぱりを発見できる場合があります。
 ただ一方で、「スキルス胃がん」に関してはバリウム検査のほうが発見に適しているとも考えられます。
スキルス胃がんとは、胃の壁全体にしみ込んでいくように病巣を拡大していくがんで、明らかに壁がでっぱったり、膨らんだりすることが少なく、カメラで内側から見ても変化がわからないことが多く、早期発見しにくいものです。

 しかしバリウム検査だと全体の胃の形を俯瞰して観察できるので、スキルス胃がんの発見につながる場合があります。
 バリウム検査は外から全体を俯瞰する検査である一方、胃カメラは内側から局所の早期がんを見つけやすい検査であり、お互いに違った利点があるわけです。
 2つの検査を紹介しましたが、もし「どちらかを選べ」と言われたら、個人的には「胃カメラ」をオススメします。

胃カメラのほうがオススメ! 2つの理由  
バリウム検査には「レントゲンを読影する医師に結果が左右されやすい」という課題があります。
あまり見慣れていない医師が読影することもあります。
病変があっても見逃されてしまうリスクが存在します。
 一方、胃カメラは「消化器内科」という胃の専門の医師が行うことがほとんどです。
「胃カメラができる医師≒胃の粘膜の病変を確認する能力がある医師」なので、胃カメラのほうが安心感は上です。

 オススメの理由はもう1つあります。
胃カメラであれば、咽頭や食道の部分を含めて目視で表面を確認できます。
 早期発見が難しい咽頭がん、食道がんの早期発見に役立つケースもあります。
現在は鼻から挿入できる胃カメラもあり、苦痛の面も安心です。
鎮静剤を使用すれば、ほぼ眠った状態で検査を受けることもできます。
とはいえ、この意見は個人的なものですし、あくまで「強いて言えば」です。

「医者はバリウム検査を絶対に受けない」という通説は極論です。
私の知る限りでもバリウム検査を受ける人、胃カメラを受ける人がそれぞれ存在します。
 バリウム検査も胃カメラ検査も優れた検査方法ですので、どちらでもいいのでしっかり定期的に受けるようにしてください(バリウム検査は「40歳以上に毎年」、胃カメラ検査は「50歳以上に2年に1回」、公費の対策型検診として受診可能です)。

【出典】
※1 坪野吉孝 久道茂 症例対照 研究による胃がん検診の死亡率減少の評価 . 日消集検誌1999;37:182 5
※2 日本消化器がん検診学会:平成28 年度胃がん検診偶発症アンケート調査報告 . 日消がん検診誌 57:1231 1240
※3 Hamashima C,Ogoshi K,Okamoto M,et al.A community based,case control study evaluating mortality reduction from gastric cancer by endoscopic screening in Japan.PLoS One 2013; 8 :
※4 Matsumoto S,Yoshida Y.Efficacy of endoscopic screening in an isolated island : a case control study.Indian J Gastroenterol 2014;33:46 9.

(本原稿は、森勇磨著『40歳からの予防医学 医者が教える「病気にならない知識と習慣74」』を編集・抜粋したものです)
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☀ | Comment(0) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする