2021年11月23日

今さら人に聞けない「NISA」トコトン知る超基本

今さら人に聞今さけない「NISA」トコトン知る超基本
初めの資産運用はNISA活用で経験を積むといい
2021/11/22 東洋経済オンライン
森永 康平 : マネネCEO/経済アナリスト

この1カ月ほど、過去に投資未経験者や初心者向けにさまざまな媒体で書いた“NISAの記事”が読まれているという連絡を受ける機会が何度もあった。
とくに株式市場に大きな動きもなかったのに不思議だなと思い、その理由を探っていると先の総裁選や衆院選で「金融所得税率の引き上げ」や「NISAへの課税」という話題でSNSが盛り上がったからということがわかった。
結果としてはいずれも実現はしなかったのだが、せっかくの機会なので改めてNISAについて書いてみようと思う。

NISAの記事が再び読まれたキッカケ
NISAを理解するためには税金についての基礎知識が必要だ。
税金と一言でいってもさまざまな種類があるが、ここでは所得税について簡単に説明をする。

働いて得た給料の一部が所得税として徴収されていることは多くの方が知るところであろう。
そして、所得税には所得が多いほど税率が高くなる、いわゆる「累進性」がある。
例えば、年間の課税所得が195万円未満だと税率は5%だが、課税所得が4000万円以上になれば住民税も含めて税率は最高の55%(所得税45%・住民税10%)となる。
なお、念のためお伝えしておくと、4000万円以上は45%だが、それ未満の部分は各税率区分に該当する課税所得の税率が適用される。

しかし、インカムゲインと呼ばれる株式などの金融商品から受け取る配当金や、キャピタルゲインと呼ばれる株式の売買益は同じ所得でも「金融所得」という扱いになり、これらは各人の所得や資産の多寡にかかわらず一律で20%(所得税15%、住民税5%)となっている。
その結果、いわゆる富裕層は所得に占める金融所得の割合が大きくなる傾向があり、金融所得課税は一律で20%なので、富裕層ほど所得全体で見た税負担率が下がっていくため、その格差を是正すべく金融所得課税を見直して、一律引き上げようという議論が生じ、個人投資家を中心にSNSで議論が盛り上がったのである。

筆者は分離課税の廃止や金融所得税にも累進性を持たせるという議論であれば価値があると考えるが、一律の引き上げは断固反対している。
一律の引き上げは格差是正というよりも、ただ単に国民の税負担を引き上げるだけになるからだ。
しかし、さらにおかしな発言が政治家から飛び出した。
のちに訂正されたが、NISAにも課税するというものだ。

NISAは「少額投資“非課税”制度」のことを指すにもかかわらず、そこに課税とはもはや矛盾していて意味がわからないのだが、これもやはりSNS上で炎上することとなった。

NISAを活用すれば税金は払わなくていい?
前述のように思いもかけぬかたちでNISAに注目が集まることとなったのだが、やはり資産形成を考えるのであれば、NISAを活用しない手はないだろう。
仮に投資で100万円儲けたとしても、2割近くを税金で持っていかれてしまうのに対して、100万円損をしても、2割損失補填してもらえるなどということはなく、丸々損失になってしまう。
投資家としては理屈ではなく、非常に不公平であるという感覚を持ってしまう。
しかし、NISAを活用すれば投資で得た利益は非課税だ。

また、NISAといっても、「一般NISA」、「つみたてNISA」、そして未成年には「ジュニアNISA」と3種類の制度がある。
筆者は講演後に大人の方から「一般NISAとつみたてNISAのどちらが得か?」という質問をよく受けるが、そもそも制度の内容が違うため、どちらが得かというよりは、自分の目的や環境に適したほうを選べばよいと回答している。
毎月3万円ぐらいをコツコツと積み立てて投資をしたいのであれば、年間投資上限額が40万円のつみたてNISAがいいと思うが、年間で100万円以上投資をしたい、または個別銘柄に投資をしたいということであれば、自然と一般NISAを選ぶことになる

ただし、一般NISAは2024年から新NISAとして、一部投資条件に変更があるため、その点は留意したい。
そもそも、なぜリスクが伴う資産運用をしなければならないのか。
2019年に金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」の報告書によって、「老後の30年間で約2000万円が不足する」と発表されたいわゆる「老後2000万円問題」が、国民が資産運用に興味を持つきっかけになったといわれることが多い。

だが、先進各国のなかで例を見ない低成長を続け、労働者の賃金が上昇しないままに非正規雇用の割合が増えているわが国においてはそのような報告書がなくともわかり切っていた話だ。
あくまで報告書で提示されたのは一定条件の下での試算であり、2000万円でも不十分な世帯もあると考える。

資産運用、または投資というと一攫千金のようなギャンブルというネガティブなイメージを持つ人もいまだに多いが、本稿で触れるのはあくまで老後などの将来に備えて行う資産運用のこと。
誤解を避けるために資産形成という表現を使ったほうがいいのかもしれない。

資産形成はあくまで収入の中から生活に必要な支出をしたあとに残るお金のうち、一部は貯蓄し、残ったお金を投資するといった程度の話であり、決して大きなリスクをとって短期間で大金を稼ごうという話ではない。
資産形成は3つのキホンを大切に いざ資産形成を始めようとすると、何から学べばいいかわからないという声もよく聞くが、そういう人こそ「つみたてNISA」を活用して一歩目を踏み出せばいいと考える。

資産形成には3つのキホンがある。
1つ目は長期投資。
つまり、短期で儲けたとか損をしたという話ではなく、10年、20年という長期目線で複利効果を効かせて投資をするのだ。
つみたてNISAを活用すると非課税で保有できる期間は20年間だから、まさにちょうどいいだろう。

2つ目は分散投資。
例えば1つの企業の株式に全額投資するのではなく、複数の企業の株式、または債券や不動産などさまざまな資産、そして日本だけでなく欧米や新興国などさまざまな地域に分散投資することでリスクも分散するということだ。

そして3つ目は底で買って天井で売るといった、タイミングを計って投資をするのではなく、毎月定額で淡々と積み立てるということだ。
つみたてNISAは投資可能な商品が限定されていると否定的な印象を持つ人も見るが、3500社以上の上場企業や2000本以上ある投資信託の中から手数料や業績などさまざまな条件を見極めて投資対象を選ぶ作業量が圧倒的に削減されるのだから投資未経験者や初心者にはむしろメリットであろう。
NISAについていろいろと書いてきたが、NISA口座を活用したうえで、一般の証券口座で投資することも可能なので、
まずはつみたてNISAを活用して投資を覚え、知識や経験を積む一方で資金的な余裕も出てくれば、その資金を株式投資に充てるというような方法を実践してもいい。

投資をするというと書籍やネット上の情報を読んで知識を増やそうとする人も多いが、筆者は実践こそが最高の学習であると考える。
月1000円でもいいのでとにかく初めの一歩を踏み出すことが重要であるとアドバイスをしたい。
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☁ | Comment(0) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする