茂木幹事長の「調整能力の低さ」に公明・学会は激怒 よみがえる「甘利落選ショック」
2022年01月24日 デイリー新潮
■態度を硬化させる公明・学会
連立を組んで20年余の自民党と公明党の関係が、夏の参院選での相互推薦をめぐって悪化している。
選挙の準備を急ぎたい公明と結論を先送りしてきた自民との温度差が明確になった格好で、選挙を取り仕切る自民党の茂木敏充幹事長のリーダーシップを問う声は根強く、甘利明前幹事長が選挙区で落選した悪夢がよみがえるとの指摘もある。
相互推薦とは2016年の参院選から本格的にスタートしたもの。
参院選には1人区と複数区とがあり、公明が擁立しない1人区では自民を支援し、その代わりとして公明が擁立する複数区では自民から推薦を受けるというやり方だ。
「去年秋に解散総選挙があったばかりなので、公明は準備が遅れがち。
1年以内に支持母体の創価学会をフル回転させるのはかなりの荒業ですからね。
公明としては去年から早めに選挙協力を固め、選挙に走り出したいと自民側に伝えてきたのですが、自民の茂木幹事長がなかなか結論を出さなかった。
その後、公明側は態度を硬化させ、山口那津男代表は会見でも相互推薦の見送りもちらつかせています」 と、政治部デスク。
茂木幹事長がなかなか結論を出さなかったことについて、こう解説する。
■兵庫選挙区での苦境
「モメることになった直接の原因は、改選定数3の兵庫選挙区の扱いでした。
過去2回の参院選(2016年、19年)で自公候補は共に当選しています。
ただ、16年では、1位自民、2位公明、3位おおさか維新だったのが19年は1位日本維新、2位公明、3位自民となっており、自民候補は16年と比べて約17万票も減らし、次点の立民候補に約3万票まで迫られています」(先のデスク)
加えて今回の自民候補は現職の文科相であるうえに、伸長著しい維新が2人出してくればさらに苦しくなるのではないかという悲鳴にも似た危惧が自民の地元組織にはあるようだ。
「維新の本拠地・大阪でならまだしも、兵庫で維新が2人当選するというのは考えにくいのですが、地元の危機感は相当なものと聞いています。
自民党の遠藤利明選挙対策委員長が兵庫入りして県連幹部と話をし、公明候補の推薦は難しい旨を聞き取りましたが、最終的には党本部の方針に従うという言質は取ったようです」(同)
公明が候補を立てる埼玉、神奈川、愛知、福岡の選挙区でも調整を進めるとみられるが、これで一件落着とは行かないようなのだ。
■“何を今さら”という思い
「学会としては茂木幹事長に、“何を今さら”という思いが強いのです」 と、学会関係者。
「去年から相互推薦を固めてほしいというのは再三要望していたのに、茂木氏に反故にされたという思いが強い。
茂木氏は“遠藤選挙対策委員長の管轄だ”などと言ってきたようですが、さすがに遠藤氏も困っていましたよ」
参院選の趨勢は32ある1人区での勝敗が握っている。
「公明が推薦すれば絶対に獲得できるはずの票を失いかねず、学会の協力なしには自民の候補が苦戦するのは目に見えている。例えば15勝17敗といった結果になれば茂木氏は幹事長に留まっていられないでしょう。
ポスト岸田だと言われるのは現職の幹事長だからであって、そこをはき違えるべきではないと思いますよ」 とし、こう突き放す。
「半分冗談ですが、去年までなら土下座は1回で済んだのに、このままだと10回になってしまうなどと言われています」
他方、先のデスクは、 「自公がギクシャクしている」のは明らかですね。
甘利さんのケースがよみがえるようです」 と話す。
甘利前幹事長の選挙区での落選は先の総選挙で公明からの推薦が「第3次」と遅れに遅れたことに関係するようだ。
■甘利前幹事長落選の記憶
甘利氏が一時失脚することになった政治とカネの問題については、公明や学会は極めて厳しい姿勢を取っており、いわばタブー中のタブー。
特捜部から貸金業法違反容疑で在宅起訴された遠山清彦元議員が除名されたことも記憶に新しいところだろう。
「甘利さんの敗因は学会組織が積極的に稼働しなかったことが大きい。
選挙戦の最後の方で、“日本には甘利明が必要なんです”と絶叫するように支持を訴えていましたが、公明支持層に必要なのは学会であり宗教なのであってまるで的外れだと言われていました。
推薦の『第3次』と語呂を合わせて『大惨事』などと揶揄する声までありましたね」(先のデスク)
甘利氏に公明や学会をないがしろにする意図はなかったのかもしれないが、軽視や慢心が祟って苦杯をなめたことは事実のようだ。
「相互推薦は選挙の勝敗を左右しますから、責任者である茂木氏自身に返ってくる問題でもあります」(同) 勝てば官軍となるや否や。< デイリー新潮編集部>