2022年01月29日

能率が上がるのは朝か、夜か?仕事の成否を左右する「体内時計」の仕組み

能率が上がるのは朝か、夜か?仕事の成否を左右する「体内時計」の仕組み
2022.1.28 Diamondオンライン
鈴木 舞:フリーライター

スポーツが趣味のビジネスパーソンにとって、日々のトレーニングは欠かせない。
朝のランニング、仕事終わりのフィットネスやゴルフの打ちっぱなしは充実した時間になる。
趣味とはいえ、自己記録更新や大会を目指して努力する人も多いはず。
仕事と運動の両立には、時間の使い方に工夫が必要だ。
ただし、時間当たりの成果を最適化するためには、トレーニングの内容だけでなく、どの時間帯にトレーニングをするかも重要となる
キーワードとなるのは「サーカディアン・リズム」。
書籍『シリコンバレー式超ライフハック』(デイヴ・アスプリー著、ダイヤモンド社)を参考に、サーカディアン・リズムが導く傾向を紐解いていこう。(文/鈴木 舞

サーカディアン・リズムと 4つのクロノタイプとは
 サーカディアン・リズムは「概日リズム」とも呼ばれており、地球の自転によって24時間周期で刻まれる体内時計を指す。サーカディアン・リズムは人間だけではなく、地球上の生物が持っている機能だ。
哺乳類の体内時計は、脳の視床下部にある視交叉上核に存在することがわかっている。
人間のサーカディアン・リズムは24時間でなく、1時間多い25時間であることも解明された。
 書籍『シリコンバレー式超ライフハック』(デイヴ・アスプリー著、ダイヤモンド社)では、アメリカでスリーブドクターとして活躍するマイケル・ブルース博士による説を紹介。
ブルース博士は、多くの不眠症患者に対応してきた臨床心理士だ。

 1998年、ある研究結果が「mPer3遺伝子」(哺乳類時計遺伝子)の発現段階で、サーカディアン・リズムを刻んでいることを発見した。
ブルース博士はこの研究とこれまで診てきた不眠症患者の症状を通じ、人間のサーカディアン・リズムは1種類ではないと考えた。
人間には生まれつきのサーカディアン・リズムの傾向があり、4つの「クロノタイプ」に分類できると提唱したのだ。

クマ、ライオン、オオカミ、イルカ あなたはどの動物タイプ?
 ブルース博士が提唱したクロノタイプは、「クマ」「ライオン」「オオカミ」「イルカ」の4種類。
それぞれの特徴を簡単にまとめると以下のようになる。

●クロノタイプ「クマ」
 人類の50%を占めるというクマタイプは、基本的に入眠と覚醒が太陽に従って行われる。午前中が最も活動に適した時間帯で、午後の中ごろはややエネルギーの低下を感じる。

●クロノタイプ「ライオン」
 ライオンはいわゆる朝型タイプで、朝に活動するのが向いている。
反対に夕方から夜にかけてエネルギーが低下し、就寝時間も早い。人口の15%を占めている。

●クロノタイプ「オオカミ」
 クロノタイプの中で最も夜型なのがオオカミで、人口の15%を占める。夜型というと深夜に活発になるように思えるが、生産性のピークが2つあるのが特徴的だ。深夜のほか、正午から午後2時ごろにかけてピークを迎える。

●クロノタイプ「イルカ」
 睡眠に困難を抱えやすいのがイルカタイプだ。
ブルース博士によると、不眠症患者として分類される。
高い知性を持つ人や完璧主義者の傾向があり、夜中の長時間を思考に費やしがち。午前の半ばから午後の早い時間までが活動に適している。

 この4つのクロノタイプに当てはまるものは、あっただろうか。
クロノタイプを参考にするならば、ハイ・パフォーマンスを出すためには最適な時間帯が決まっている。

朝型のライオンタイプは夜間にトレーニングをしても、集中力が続かない恐れがある。
反対に、夜型のオオカミタイプは朝から運動をしても、体に力が入らないかもしれない。

 ブルース博士はさらに、クロノタイプの分類を基に生産性の観察を試みた。
24時間のホルモンレベルや身体の生物学的状態を検査し、勤務時間などスケジュールを変えた結果、生産性の上昇が見られたという。
つまり、サーカディアン・リズムに従ってトレーニングの時間帯を見直してみると、モチベーションアップや効率性アップが期待できるというわけだ。

パフォーマンスをダウンさせる 「概日性リズム障害」への対処法
 確かにサーカディアン・リズムが乱れると、心身にはさまざまな不調が現れる。
「概日性リズム障害」という言葉を聞いたことがある人は多いだろう。
 人間の体内時計は25時間であるため、地球の24時間周期とは1時間のずれがある。
このずれを修正できずに、睡眠と覚醒のリズムに乱れが生じた状態を「概日性リズム障害」と呼ぶ。
日中の眠気、集中力低下、だるさ、頭痛や吐き気、イライラなど心身の不調が主な症状。

 概日性リズム障害は、海外旅行や海外出張のための時差ぼけ、シフト制の交代勤務のような昼夜逆転生活を原因として発生することが多い。
概日性リズム障害によって眠気や頭痛などの症状が現れていると、ベッドで横になりたくなったり、家で安静にしたくなったりするのも無理はない。
 しかし症状改善のためには、朝のうちからカーテンを開けて日光を浴びたり、太陽の下で散歩やウォーキング、軽めのジョギングをしたりするのが効果的だ。
なぜならば、サーカディアン・リズムの乱れは日光を浴びるとリセットできることが、研究で解明されているからだ。

「自分は夜型だ」という人でも、サーカディアン・リズムが乱れていれば、夜でも生産性がダウンするものだ。
夜型だからと日光を避けた生活を続けていては、サーカディアン・リズムは乱れるばかり。
ついには心身の不調を招きかねないだろう。
日中の活動に苦手意識がある場合でも、日光浴が健康維持につながることを覚えていてほしい。

 リモートワークが浸透し、働き方がますます多様化する中、時間の使い方への意識も高まっている。
効率性や生産性を上げるためには、時間帯を見直してみるのもひとつの方法だ。
活動の時間帯を変えるだけで、パフォーマンスがアップする可能性がある。
ただし哺乳類として生まれたからには、日光を浴びてサーカディアン・リズムの乱れをリセットすることも忘れずに。

【参考書籍】
『シリコンバレー式超ライフハック』
(デイヴ・アスプリー著、ダイヤモンド社)
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☁ | Comment(0) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする