2022年02月06日

「超高齢化社会」という危機。シルバー民主主義に現役世代は絶望

「超高齢化社会」という危機。
シルバー民主主義に現役世代は絶望
2022年02月05日 SPA!

コロナ禍の陰で、日本に今、“超高齢化”という新たなクライシスが迫っている。
2025年には、約800万人いる団塊の世代が75歳の後期高齢者となり、歴史上前例のない高齢化社会が訪れようとしている。果たしてそこに希望はあるのか?
その現実に向き合った。

◆「超高齢化社会」という未曽有の危機
 内閣府の「令和3年版高齢社会白書」によれば、’20年の高齢化率は欧米諸国が20%前後であるのに対し、日本は28.8%と突出している。
この未曽有の事態に、経済学者の小黒一正氏は警鐘を鳴らす。

「日本における少子高齢化は、’80年代半ばから問題視されていましたが、政府は付け焼き刃的な処置しか行ってきませんでした。
しかし’25年には、いよいよ団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、膨張が進む医療費や介護費に一層の増加圧力がかかると予想されています。
さらに’25〜’40年に、現役人口(20〜64歳)が約1000万人減少すると予測されており、今後、津波のように危機的状況が押し寄せることになります」

◆超高齢化社会は2100年頃まで解消されず
 社会学者の西田亮介氏も、超高齢化の波に肩を落とす。
「高齢者はいずれ天寿をまっとうするとしても、残念ながら超高齢化社会は2100年頃まで解消されず、その頃には日本人口は半数まで激減しています。
その間、超高齢化により社会保障費が増加し続ければ、’50年には65歳以上の高齢者1人を現役世代がほぼ1人で支えなければなりません」

◆大増税も
 これは同時に、莫大な社会保障費を賄うための大増税も意味する。
「’40年度の社会保障給付費は、’18年度に比べ、約70兆円近く増える計算です。
裏側でGDPも790兆円まで増える試算なので、増税幅は抑制できるとしても、仮に社会保障費の増加分を消費税で賄うとすれば、約5%の増税が必要。
さらに、これまでの財政赤字を加味すれば、消費税を’40年までに22%、’60年には30%まで引き上げなくてはならない可能性も。
恐ろしいのは、この政府の試算が、毎年1%以上の経済成長を前提とした楽観的な予測だという点です」(小黒氏)

◆「シルバー民主主義」で現役世代は絶望の淵へ
 また超高齢化の弊害として、政治が高齢者優遇の政策に偏る「シルバー民主主義」も危惧されると小黒氏は続ける。
「私が関わった実証研究(※)では、有権者の高齢化と老人福祉費の増加の間には強い相関が見られました。
実際、日本の所得再分配の状況は、30〜34歳の働き盛りの世代より65〜69歳のほうが恩恵を受ける歪んだ状態にあります」 (※)47都道府県の2000〜2010年のデータを用いて、高齢化と高齢者関連支出の間の関係を分析

◆このまま投票率が低下すれば…
 この現状を「どうせ投票してもムダ」と放置すれば、自分の首を絞めるだけと西田氏は諌める。
「昨年の衆議院選挙の投票率は約56%と戦後3番目に低く、『投票に行かないのが当たり前』の時代になりつつあります。
しかし、このまま投票率が低下すれば、高齢者優遇のみならず、経済界など特定の団体や組織の影響力が相対的に増すことに。  そうなれば、子育て世代や生活者のための政策が後回しになり、負担が増えるだけでなく、労働環境の悪化など、現段階のシミュレーションよりもさらに暗い未来を歩むことになります」
 もはや見て見ぬふりは許されないのだ。

◆【経済学者 小黒一正氏】
法政大学経済学部教授。 元大蔵官僚。
専門は公共経済学。財務総合政策研究所客員研究員と、国政にも携わる。著書に『日本経済の再構築』(日本経済新聞出版)

◆【社会学者 西田亮介氏】
東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授。
専門は公共政策。博士(政策・メディア)。著書に『コロナ危機の社会学』(朝日新聞出版)など

<取材・文/週刊SPA!編集部 撮影/橋慶佑 モデル/関口 衡(古賀プロダクション) アンケート/QiQUMOを利用して調査>
―[[超高齢化]の危機]―
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☀ | Comment(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする