日銀に忍び寄る黒田総裁更迭の足音…誰が首に鈴をつけるのか【政官財スキャニング】
2022年02月09日 日刊ゲンダイ
【政官財スキャニング】#20
官界通(以下=官) 日本銀行の黒田東彦総裁(77)の任期は来年4月までだが、満了を待たずに交代させる話が、首相官邸で出ているのか?
政界通(同=政) 早耳だな。確かに、くすぶっている。
財界通(同=財) それは、岸田文雄首相が進めている「脱・安倍カラー」の一環か?
政 それだけではない。在任9年になっても目標とした物価上昇率2%が実現しない一方、悪い物価上昇と景気低迷が重なる「スタグフレーション」に陥る懸念が出てきたからだ。
財 原油など資源や穀物の相場が上がり、企業のコストが膨らみ、生活用品にも値上げが続く。
でも、2%目標を実現できていない黒田日銀が、米欧の中央銀行のように物価抑制のための利上げ策は取れない。
そんな局面を乗り切るには、総裁を代えて、閉塞感に包まれている金融市場の雰囲気を一新したい、というわけか。
官 でも、不祥事もなく、本人が「辞めたい」と言い出さない限り、更迭は難しいぞ。
政 問題は、そこだ。中学校からエリート学歴で大事にされてきた黒田氏に、自ら退く発想はないだろう。
では、誰が「そろそろ退任されては」と首に鈴をつけるか。
普通なら監督官庁で人事案を決める鈴木俊一財務相の仕事だが、人柄がいい鈴木氏には向かない。
財 鈴木氏は、麻生太郎・前財務相の義弟だ。
安倍政権で9年も財務相を続けた麻生氏が交代したのも、脱・安倍カラーの象徴。
しかも、麻生氏は自民党の副総裁になり、岸田政権を支えている。その役を引き受けても、おかしくない。
政 その通り。ただ、麻生氏は、異次元緩和で地方銀行などの経営が悪化した副作用を追及される黒田氏を擁護してきた。
強硬姿勢へ変わるには、理由が必要だ。
官 黒田氏が2月2日の衆院予算委員会で副作用について「異次元緩和の影響を認めるか」と追及されたとき、「認めません」と語気を強めた。
この答弁に、与野党から失笑が漏れた。「もう辞めたら」という雰囲気だったな。
(構成=竜孝裕/ジャーナリスト)