2022年02月15日

年をとると眠れる時間が短くなるってホント? 不眠症の原因と隠れた病気を専門医が解説

年をとると眠れる時間が短くなるってホント? 
不眠症の原因と隠れた病気を専門医が解説
2/6(日) AERAdot.

 不眠症にはさまざまな原因があり、生活習慣やストレスなどのほか、加齢によるからだや生活の変化で起こるものも多い。また、うつ病や高血圧など病気が原因のことも。不眠症の原因とリスクについて、専門医に聞く。
*  *  *  
不眠症とは、よく眠れないことで心身に不調をきたしたり、仕事に支障をきたしたりと、生活に影響が及ぶことをいう。

不眠症の症状には、なかなか寝付けない(入眠困難)、
夜中に何度も目が覚める(中途覚醒)、
朝早くに目が覚めてしまう(早朝覚醒)
     などのパターンがある。複数の症状を併せ持つ人も多い。

 そもそも、「なかなか眠れないという経験は誰にでもある」と、東京足立病院院長で日本大学医学部客員教授の内山真医師は言う。
「例えば、翌日大事な用事があって緊張する、気が重いことがあって不安、楽しみなことがあってワクワクするなど、さまざまな原因で眠れないことはあるものです」
 ただ、多くの人にとっては一過性で、原因が解消されれば眠れるようになる。
このような場合や、眠れなくてもそれが苦ではない場合は「不眠症」とは考えないという。

「寝付くまでに1時間かかっても、その間ボンヤリと考えごとをするのが好きな人もいますし、夜中に目が覚めても気にせずまた眠りにつく人もいるでしょう。不眠症とは、眠りたいのに眠れずにつらい、そして眠れないせいで日中の生活で困っているという場合に診断されます」(内山医師)

 日中の症状としては、眠気や疲労感、イライラ、落ち込み、集中力・記憶力・判断力の低下などが挙げられる。
 不眠症の原因について、「明確にわかっていないことも多い」と、国立精神・神経医療研究センター病院睡眠障害センター長の栗山健一医師は話す。

「ただ、眠れないことへの不安や恐怖など、心理的な要因が関わっていることはたしかです。
例えば夕方になると『今夜も眠れないのでは』と不安が募り、夜になるほど不安が強くなって、眠れなくなる人も少なくありません」
 寝なくてはと必死になるほど、頭は冴えてしまうことがある。
寝ようと悩むことが不眠を強めることになるのだ。

「また、眠るために良かれと思ってしていること、例えば、リラックスするために夜寝る前にホットココアを飲むとか、寝酒といった生活習慣が不眠症の原因になることもあります」(栗山医師)

■加齢にともない眠る時間は減るもの
 加齢も不眠症の原因となる。
高齢者に不眠症が多い理由については、夜中に何度もトイレに行く(頻尿)、かゆみ(皮膚疾患)や腰の痛みなどで眠れないなど、加齢にともなうからだの変化が関係する。
併存疾患がある場合にはその症状なども挙げられる。

 しかし、高齢者の不眠の最大の要因は、加齢による「生理的な睡眠時間の減少」といえる。
「高齢になると食事の量が減りますが、これは、加齢により基礎代謝量が減り、活動量も減ることで若いときほどエネルギーを必要としなくなるため。睡眠も同じです。
高齢になると若いときほど眠る必要がなくなるのです」(同)

 夜間の睡眠時間は一般的に、25歳で7時間、45歳で6・5時間、60歳で6時間といわれる。
病気のない人では、年齢が上がるほど短くなる傾向がある。
 一方、仕事を引退したり、子育てを終えたりして時間に余裕ができると、早く寝ようとする人が増える。
つまり、高齢になるほどふとんで過ごせる時間は長くなるが、実際に眠れる時間は短くなる。
このミスマッチが高齢者の不眠の一因だ。
「成人に必要な睡眠時間は7時間前後といわれます。例えば、体調不良や睡眠不足のときには8時間、9時間眠ることができますが、健康な人が早くふとんに入っても、そう長い時間は眠れません。10時に寝れば朝4時ごろに目覚めてしまうのが自然なのです」(内山医師)

■うつ病などが隠れていることも
 不眠症には病気が関係して起こるものもある。
高血圧もそのひとつだ。高血圧の中でも、自律神経の乱れが関係するタイプでは、不眠を併発することが多いという。

「例えば、イライラしやすい人や緊張しやすい人、自宅ではそうでもないのに病院では血圧が高く出るような人は不眠になりやすいといえます。
反対に、不眠症の人が高血圧を示すこともあります」(栗山医師)
 また、高血圧の治療に用いられる降圧剤の一部や抗がん剤、ステロイドなど、薬が原因で不眠になることもある。
ただし、不眠の症状が出たとしても、病気の治療のために薬を飲み続ける必要があることも。

患者自身の判断で薬をやめることはせず、気になる症状がみられたときには必ず医師に相談することが必要だ。
 うつ病も不眠症と大きな関わりがある。
うつ病の8〜9割は不眠症状を併発するといわれ、とくにうつ病の初期症状として不眠は多い。
「うつ病は加齢とともに発症頻度が高くなりますが、若い人でもみられます。
若い人で不眠を訴えて受診する場合は、うつ病や不安障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)など、精神的な病気が隠れている可能性があるため、注意深く診断します」(同)

 ほかにも、不眠症は糖尿病などの生活習慣病や認知症など、さまざまな病気との関係を指摘されている。
「どの病気も不眠だけがリスク因子になるわけではありませんが、不眠の症状があり、つらいのであれば早めに適切な治療をすることが大切です。
それが結果的に、さまざまな病気のリスクを下げることにもつながるでしょう」(同)
          (文・出村真理子)
※週刊朝日  2022年2月11日号
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☀ | Comment(0) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする