2022年03月29日

止まらぬ値上げ 4月も

食卓も光熱費も家電も…「値上げの波」4月からどう影響?
 背景には原油高・円安・ウクライナ危機
2022年3月29日 東京新聞

 3月に続き、新年度が始まる4月もさまざまなモノやサービスが値上げされる。
原油価格の高騰に伴う物流費や原材料費の値上がりが主な理由で、円安も上昇の圧力になっている。
値上げは食品のほか紙製品や調味料、家電など広範囲に及ぶ。
ロシアのウクライナ侵攻も穀物や原油の価格を一段と押し上げている。(大島宏一郎)
 食品では、小麦を原料とするパンや麺類が値上がりする。
小麦は国が輸入して製粉業者に売る仕組みで、売り渡し価格は4〜9月が前期(昨年10月〜今年3月)比で17.3%上昇。ロシアが輸出規制を強化するなど、国際的な相場上昇の影響を受けた。
食用油も大豆などの価格高騰を受け、日清オイリオグループが値上げする。
 原油価格の上昇は幅広い商品の値上げに波及。石油が原料の不織布のおむつの値上がりや、電気・ガス料金の引き上げの要因となった。輸送費の高騰にもつながり、家電メーカーは「物流コストが増した」と、増加分を価格に上乗せした。

◆朝ごはん、1年前と比べてみたら
 値上げの波は既に私たちの食卓に押し寄せている。
朝食のメニューで1年前と比べてみると―。

 主食のパンは原材料の小麦の価格が昨年から北米での不作などの影響で上昇。1月からフジパンが8%、山崎製パンが7.3%の値上げを発表した。
調査会社インテージ(東京)によると、全国のスーパーの食パン1斤の2月の平均価格は144円で昨年4月(135円)と比べ、9円上がった。

 パンに添えるジャムも、果実原料と食用油の価格高騰を理由に、アヲハタが251円だった「アヲハタ55イチゴ」(150グラム)を262円とするなど2月から35品目の価格を3〜7%上げた。

コーヒーは豆相場の高騰からUCC上島珈琲が20%値上げ。

サラダにかけるマヨネーズはキユーピーが昨年7月と今年3月と短期間で2度の値上げを実施した。
 毎日口にする食材だけに家計への負担は大きい。

この1年の食費の負担増を、第一生命経済研究所の永浜利広さんは「3人家族で月3000円程度」とみる。
さらに「ウクライナ侵攻で小麦はいっそう高騰する。製品価格に転嫁される来年から一気に上がるだろう」と語る。(大島晃平)

◆物価上昇の要因はさまざまな分野に
 国際情勢の変化に伴う昨年来の原油高や原材料高に、輸入価格を押し上げる円安も相まって、日本の物価上昇が止まらない。
円安は28日に一時1ドル=125円台まで進んだ。
ロシアによるウクライナ侵攻の影響なども重なり、今後もさまざまな分野で値上げの動きが広がりそうだ。
 生活を直撃する値上げは原油高の影響が強い。
原油価格は昨年来、新型コロナ禍から世界経済が回復に向かい需要が増えたことで上昇傾向にあった。
脱炭素への転換をにらみ、産油国が供給抑制に動いたことも値上がりに拍車をかけた。

 ウクライナ情勢の悪化で主要産油国のロシアからの供給が滞る懸念から、原油価格は一段と上昇。
2021年はじめに1バレル=50ドル台だった先物価格は、最近では110ドル台とうなぎ上りだ。
国内のレギュラーガソリン価格は、08年以来の1リットル当たり170円を突破。
原油価格に連動する形で、電気やガスの料金も高止まりしている。

 原油から精製されるナフサも値上がりしたことで、ナフサを原料とするプラスチックや衣類などの幅広い生活用品の生産コストも上昇。
販売価格への転嫁も徐々に始まる。
原油高は輸送費の増加も招き、値上げが続く小麦など原材料の価格をますます上昇させる。
 さらに、英米の中央銀行がインフレに歯止めをかけようと相次いで利上げ。日本との金利差が広がり、円を売る動きが強まる。

円安は歯止めがかからなくなっており、原油や原材料などの輸入価格がさらに高くなる恐れが強まっている。(岸本拓也)
posted by 小だぬき at 11:00 | 神奈川 ☁ | Comment(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「小室圭さんバッシング」が世間で止まらない3つの理由

「小室圭さんバッシング」が世間で止まらない3つの理由
2022.3.28  Diamondオンライン
佐藤直樹:九州工業大学名誉教授・評論家

結婚後も止まらぬ報道 小室夫妻は「一般人」のはず
 小室圭さんへのバッシングが止まらない。
 最近でもたとえば「女性自身」(2022年3月22日)は、2月に司法試験会場に現れた小室さんの様子を見て、「小室さんの髪はボサボサで、またおなか回りも膨らんでいました」
「とても新婚の夫には見えない。小室夫妻はうまくいっていないのではないか」という、NY在住のジャーナリストのコメントを載せている。

 昨年10月に結婚し、現在ニューヨークに住む小室夫妻は、正真正銘「一般人」になったはずだ。
こうしたメディアの報道は、はっきりいって大きなお世話だと思う。
 なぜ、執拗なメディアのバッシングが続くのか。
この問題の根本にあるのは、日本における「個人の不在」だ。

自分は自分、他人は他人」と 思えない“共感過剰シンドローム”
 そもそも日本人は、欧米人に比べて他者に対する共感能力が高いといわれる。
 たとえば、会社で同僚がまだ仕事をしていると、自分が終業時間になっても帰りづらくなる。
時間になれば、さっさと帰宅する欧米の職場とはまったく違う。
 もちろん、共感能力が高いのは日本人のよい面でもある。

だが、自分とは直接、何の関わりもない、テレビに画面に登場する有名人についても、なぜか「我が事」のように考え、過剰な共感能力を発揮することがある。
 当初好感を持って見ていた人物に対しても、犯罪や不祥事などの何らかのきっかけがあると、そのキモチが「裏切られた」となって反転し、ひどい非難やバッシングになることがよくある。
これを私は「共感過剰シンドローム」と呼んでいる。

 要するに、日本人は「自分は自分。他人は他人」と思えないのだ。
 実は「個人」は、もともと日本にあったものでなく、ヨーロッパ産のコトバだ。
 欧州では、農村が解体して都市に人口が流出する都市化と、自分の罪を神に告白するキリスト教の「告解」の普及によって、12世紀前後に“individual”たる個人が生まれた。
 この個人こそ、「自分は自分。他人は他人」と考える人間のことだった。

 日本には明治期にこのindividualが欧州から輸入され、江戸時代には存在しなかったので、1884年頃に「個人」と新たに造語された。
 個人は現在、普通に使われるコトバになっているが、「あいつは個人主義的で勝手なヤツだ」という言い方にあるように、「世間」では必ずしもよい意味では使われない。
 つまり、今でも英語のindividualと日本語の個人は似て非なるものである。
 端的に言って、欧米とは異なり日本では個人を主張すると嫌われる。
「自分は自分。他人は他人」と思えないことが、「共感過剰シンドローム」を生み出す。
 これが、小室さんに対する奇妙なバッシングが、なかなかやまない理由になっているのだ。

「個人の不在」が 「家が責任を取れ」に
 二つ目の理由は、日本では「個人が不在」であるために、家族の中も個人と個人との関係にならず、家族構成員の不始末があると「家が責任を取れ」になるからだ。
 もともと「世間」によるバッシングが始まったのは、2017年9月の婚約内定記者会見から3カ月ほど後だ。
 元婚約者に借金を返済していないという、母親の「金銭トラブル」が週刊誌で報道された。
この報道をきっかけに、それまでの「世間」のお祝いムードが、「裏切られた」という感情に反転し、一気に小室さんバッシングに向かったのだ。

 私は若干疑問を持っているが、元婚約者の主張にどれだけ法的な正当性があるのかは、ここでは置く。
いずれにしても、小室さんがバッシングされたのは、「母親の不祥事は息子が責任を取るべきだ」と、「世間」が考えるからだ。
 ところが、個人から構成される欧米の家族を見ると、日本の家族とはまったく異なっていることが分かる。
 欧米では、仮に家族構成員が重大な犯罪を犯したような場合でも、「家が責任を取れ」などとは言われない。
社会が家族を強く非難したり、バッシングしたりすることはまずない。
 家族がバラバラの個人からできているために、「親は親。子どもは子ども」「夫は夫。妻は妻」と、親子や夫婦の間が、独立した人格の関係と考えられるからだ。
 ここには、欧州で12世紀に成立した個人の伝統が連綿と受け継がれている。

 しかし日本では、家族構成員の犯罪や不祥事には、「家が責任を取れ」と「世間」から非難されるのが普通だ。
 家族は一体であって、一人一人が独立の人格を持つ個人だとは考えないからだ。
 それはあたかも、犯罪者の家族もまた責任を負わされた、江戸時代の連座責任や縁座責任の亡霊が、いまだに生き続けているかのようなのだ。

根強い「家意識」の存在 「家柄がつり合わない」は差別
 バッシングの三つ目の理由は、個人を認めない「家意識」の存在だ。
これはきわめて厄介な問題だ。
 確かに戦後、明治民法にあった「家制度」は消滅し、両性の本質的平等を掲げる現行民法が成立した。
 また憲法24条には、婚姻は「両性の合意のみに基いて成立」すると書いてある。
 これは、戸主が子どもの結婚の同意権を持ち、結婚の自由がなかった戦前の「家制度」を否定し、人生の伴侶を決める結婚は個人と個人のつながりであり、結婚の自由が尊重されなければならないことを宣言したものだ。

 ところが、法律上の「家制度」は消滅したのだが、結婚は個人と個人のつながりではなく、「家」と「家」とのつながりであるとする「家意識」に基づく結婚観が、今も厳然と存在する。
 これが、部落差別などの深刻な結婚差別につながっているのだ。
 ちなみに、2017年に実施された愛知県の県民意識調査によれば、結婚相手の家柄を問題にすることについて、「当然」とした答えが27.2%を占めた。
これと「おかしいと思うが反対しても仕方ない」を合わせると、実に64.4%になるそうだ。
 これにたいして、「間違っている」と答えたのは31.2%にすぎないという。

 結婚が個人と個人のつながりでないため、「借金トラブル」などの「母の品格」を問題にして、小室さんが秋篠宮家の婚約者としてふさわしくない、との主張をしたメディアも多かった。
 これは端的にいって、小室家と秋篠宮家では「家柄がつり合わない」といっているのと同じで、憲法14条(法の下の平等)で禁じている「門地」による差別にほかならない。

日本のTwitterユーザーの匿名率は75%以上 他国に比べ突出、誹謗中傷の温床に
 昨年の結婚時には、メディアやネットの誹謗(ひぼう)中傷による眞子さんの「複雑性PTSD」が公表された
天皇に対する直接のバッシングは見当たらないが、皇室に対するバッシングは実は以前からあった。
 1993年には皇后美智子さま(当時)が倒れて「失語症」となり、2004年には皇太子妃雅子さま(当時)の「適応障害」が公表されている。
 総じて言えば、これらのバッシングは、皇室の一員が、個人であろうとすることに対する「世間」の反発だと考えられる。  天皇家の一員という身分に反するような個人の振る舞いは、「わがまま」だといった批判がされたのだ。

 かつての皇室バッシングと、今回の小室さんバッシングが決定的に異なっていることは、誰でも自由に発信ができ、それがリアルタイムで爆発的に広がるインターネットが普及していることだ。
 日本はSNSのTwitterユーザーの匿名率が75%以上で、他国の30〜40%と比較して突出して高く、これがネットの誹謗中傷をまん延させる大きな要因になっている。

 私は、公益性のある内部告発などは別としても、実名でネットに発信できないような内容は、匿名でも発信すべきではないと考える必要があると思う。
 それが、日本に「自分は自分。他人は他人」という個人を生み出す一歩になると考えるからだ。

(九州工業大名誉教授・評論家 佐藤直樹)
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☀ | Comment(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする