2022年04月05日

実は子どもの死因「不慮の死」長年上位の衝撃実態

実は子どもの死因「不慮の死」長年上位の衝撃実態
原因がわかれば予防できるのに情報取得を阻む壁
2022/04/04 東洋経済オンライン
Frontline Press

予防のための子どもの死亡検証「チャイルド・デス・レビュー(CDR)」が、本格導入に向かって動いている。
地方公共団体でのモデル事業は2年目。
省庁横断的な施策であり、「こども家庭庁」成功の試金石になるとの声もある。

子どもの命を救うために、米国でCDRがスタートしたのが約40年前。
日本でも始まろうとしているCDRとは何か。何が期待できるのか。展望と課題を4日連続連載でお届けする。
第2回:米国発「子どもの死の予防制度」日本導入への課題(4月5日配信) 第3回:国の導入遅い「子の死因究明」に山梨が力入れる訳(4月6日配信) 第4回:子の「不慮の死」防ぐ事業に制約課す厚労省のなぜ(4月7日配信) 岸田首相が施政方針演説で言及 現在、開かれている第208回国会。その施政方針演説で岸田文雄首相は、ある言葉を口にした。

「子どもの死因究明」。
子ども政策をわが国社会のど真ん中に据えていくため、「こども家庭庁」を創設します。
こども家庭庁が主導し、縦割り行政の中で進まなかった、教育や保育の現場で、性犯罪歴の証明を求める日本版DBS、こどもの死因究明、制度横断・年齢横断の教育・福祉・家庭を通じた、子どもデータ連携、地域における障害児への総合支援体制の構築を進めます。 1万2000字近くに及ぶ演説のうち、たったの8文字

しかし、それに反応し、快哉を叫んだ人たちがいる。
「来たな!」 自見英子・参議院議員(46)もそうだった。
複数の省庁が個別に行っている子ども施策を一元的に進める省庁の必要性を訴え、こども家庭庁の創設に奔走してきた。
CDRを充実させなければという思いがあったからだ。
岸田総理がこの言葉を演説に盛り込んだことは、率直にうれしかったという。

「日本のCDRの取り組みはうまくいくと、私は信じています。
(こうしたタイミングで)こども家庭庁ができることは大きな前進です」

CDRは、子どもの死を検証する制度だ。単なる検証が目的ではなく、和名で「予防のための」とあえて挿入されているとおり、子どもの死を少しでも防ぐことを目的にしている。
子どもの死亡に関しては、医療機関や保健所、学校・保育園・幼稚園、福祉、救急、警察、児童相談所など多様な機関が関係する。
ただし、各機関はそれぞれ個別対応だ。
広範囲にわたる関係機関の間で情報を共有し、予防策を検討する仕組みはこれまでなかった。

NPO法人「Safe Kids Japan」によると、子どもの死の予防は長年の課題だった。
日本では1歳以上の子どもの死亡原因の上位は「不慮の事故」。
つまり、予防できる事故だ
しかも、状況は1960年代から変わっていない。
そうしたなか、この分野での先進国・アメリカから約40年遅れで、日本でもCDRを本格導入する動きが始まった。
子どもの死に関わる多機関が集まり、情報を共有し、死に至った経緯を明らかにしたうえで、予防策を考える。それがCDR事業の基本形だ。

「多機関連携」が制度の肝で、縦割りによる情報共有の壁を打ち砕く手だてとして期待されている。
ところが、2020年度から始まった国のモデル事業(厚生労働省主管)では、当初のもくろみどおりに事が進んでいない。
調査報道グループ・フロントラインプレス取材班の取材では、
@警察から捜査情報が得にくい、
A個人情報保護がネックになって必要な情報が集まらない、という2つの課題が浮き彫りになった。
これらが足かせとなって「CDRは理想形では導入できない。できたとしても10年はかかるだろう」
「導入は結局できないのではないか」という声もある。

自見議員はそうした現状も知っている。
それでも「こども家庭庁ができたらうまくいく」と力を込める。
なぜか。それは、こども家庭庁が最後の一押しの役目を果たせるからだ、という。

やりたくても法律がなければ動けない
子どもの死亡検証は、これまで手つかずの分野だった。
自分の子が亡くなっても、死亡した経緯がわからない。そんなケースが後を絶たなかった。
国会議員になりたてのころ、その事実を知った自見議員は、子どもの死亡検証を行政が責任をもって遂行できるように、法律を作らなければと判断。その後、成育基本法(2018年12月成立)、死因究明等推進基本法(2019年6月成立)が次々に施行され、子どもの死亡検証は一応、「行政がやるべきこと」に含まれるようになった。

ただ、これらの仕組みは文部科学省や厚生労働省が中心となって所管する、依然とした縦割りだ。
そこからこぼれ落ち、検証されないままのケースも出る。
あるいは、他省庁や他機関の協力が得られず、十分な検証ができないケースもある。
省庁横断的なこども家庭庁は、そうした隙間を埋め、CDRを実りある形で導入できるはずだ。
「こども家庭庁ができたらうまくいく」と自見議員が力説する背景には、こうした事情がある。

小児科医でもある自見議員がCDRと出合ったのは、東京大学医学部に入局したころだったという。
手伝った研究がCDRにつながる内容だった。 決定的だったのは、その後、一般社団法人「吉川慎之介記念基金」代表理事の吉川優子さん(50)と出会ったことだ。
吉川さんは2012年7月、私立幼稚園に通っていた5歳の息子を川の事故で亡くし、その後は水難事故予防の活動を続けている。
自見議員にしてみれば、吉川さんは極めて良識的な人だった。
普通の立派なお母さんが、自分の子どもが突然亡くなって、『なぜ子どもが死んだのか知りたい』と言っているのに、そのシンプルな問いに社会が答えられていなかった

激烈な縦割りでたらい回しに遭っていた
当時は、0〜6歳の子どもを主に対象とした「教育・保育施設等における事故報告集計」(内閣府取りまとめ)もなかった。 「激烈な縦割りだったんです。今でこそ内閣府が取りまとめて、ゼロロク(0〜6歳)の子どもの事故については、必ず自治体をかませて、たらい回しがないようにすることができています
けど、吉川さんのときはそういう仕組みもない。私立幼稚園は文科省だと言うので文科省に問い合わせたら、それは自治体だと言われて、自治体に行くと、それは文科省だって……。
吉川さん、もう、とにかく、たらい回しに遭っているんです。自分の子どもの死因究明で
吉川さんのそうした話は、聞くだけでとにかくつらかったという。

「一人っ子の男の子を亡くしているから、もう自分に子どもはいないんですよ。子どもが亡くなったというだけで、吉川さん、とてもつらいのに、それ以上のつらさと苦しみを与えているわけですよ、社会の仕組みが。
正直、なんてひどい国なんだと思って。グリーフケアするならまだしも、『遺族のお母さんにこんな思いさせる国って何なの!』って思ったのが最初ですね」
1期目だった自見議員は、吉川さんからたらい回しの話を聞いた後、すぐに関係省庁の担当者を呼んだ。
文科省、内閣府、法務省、警察庁……。ところが、いずれの担当者も「自分の所管じゃない」と言い出した。

「子どもが1人死んで、 お母さんもこんなに苦しんでるのに、よく関係ないって言いますね、と無茶苦茶怒ったんですよ。
でも、その怒りは私が新人だったから。その後、議員活動をしていて、わかったんです。
行政というのは法律を基にして動く。
でもCDRは法律がない。だから、彼らがいかに使命感を持っていても、やりようがない。
担当者も気の毒だなとCDRの根拠となる上述の法律が2つでき、省庁横断的な施策を可能にするこども家庭庁も2023年4月に創設されることが決まった。
だが、調査権限をCDRの担当者に与えることについてなど、課題はいくつかある。
「だからもう1回立法が必要」という。

自見議員によると、課題の1つに解剖がある。
解剖は、死因究明に重要な役割を果たすが、現状では実施率が10%程度にすぎない。
吉川さんのケースでも、解剖は行われなかった。
事故直後は、子どもの体にこれ以上傷をつけたくないという思いが強かったからだ。
しかし、解剖を選択しなかったことが、吉川さんを後悔させることになった。
取材班が取材した他の遺族からも、似たような経験が語られている。

他の先進国に比べて低い日本の解剖率
そもそも日本の解剖率は他の先進諸国と比べて低い。
行われたとしても、質は予算不足を反映したレベルになっていることが、長年にわたって指摘されている。
2007年、大相撲の時津風部屋で新弟子(当時17歳)が部屋での暴行によって死亡していたという事件があった。
当初は病死と判断されたこの事件を契機に、死因究明を推進する法律はいくつかできた。

それでも状況は大きく改善していないと自見議員は言う。
「解剖に関わる予算が少ない。所管する警察が解剖に結び付ける努力をしなければいけない。事件性があるかどうか、ちょっとよくわからないグレーゾーンの解剖を、調査法解剖と言うんです。
でも、法律を作ったのに、普及しないんですよね。
だから、本当にCDRをやろうと思ったら、調査法解剖も同時にあまねく受け入れるような体制にしないとまずい

これまで放置されていた子どもに関わる問題に、こども家庭庁はどこまで迫れるのだろうか。課題はCDRだけではない。
例えば、岸田首相の施政方針演説に出てきたDBS(Disclosure and Barring Service)。
子どもに接する仕事をする人に「無犯罪証明書」の提出を義務づける、英国で運用さている制度だ。
ベビーシッターや教職員による性犯罪から子どもを守ろうと、導入を要望する声が高まっている。
その制度導入に関しても縦割り行政が立ちはだかる。」

自見議員は言う。
「小児性犯罪者がどこで働いているか。保育園で働いていると所管は厚労省、幼稚園だと文科省、ベビーシッターだと内閣府だし、塾だと経産省なんですよ。分かれている。
例えば1人の性犯罪者がいて幼稚園でクビになっても、(バレなければ)保育園でも働いていけるし、ベビーシッターでも働ける。学校でも働けるし。しかも、無犯罪証明書なので、法務省が出さなきゃいけない。
似てるなあと思うんですよね、CDRと」

こども家庭庁で、縦割りの弊害を打破できれば、放置されてきた各種問題の解決に弾みがつく。
特に、導入が「あと一息」となったCDRは、縦割りの狭間で放置されてきた子ども問題を解決する試金石になる、と自見議員は見ている。
CDRがどれくらい世の中に理解されているか CDRのモデル事業は2020年から7府県で始まり、現在は9道府県で実施されている。
これを、いかに全国規模の本格導入につなげるか。

その調査研究を続けている名古屋大学医学部附属病院の沼口敦医師(50)は、こども家庭庁とCDRについて「どれくらい国民の期待を受けている省庁なのか、ちょっとわからないのですが」と前置きしつつ、次のように語った。
「厚労省に協力するのと同じくらいの熱意をもって、こども家庭庁の協力要請に(医療現場などが)応えるか。『それは(当然)応えるでしょ』って、全員同じように思っていれば話は簡単なんですけどね。
それだけの理解が世の中にあるのかな」

例えば、医師は厚労省から子どもの死に関するデータを出すように要請されると、応じやすい。他省庁から要請されると、身構えてしまう。そんな現実があるのだという。
「受け手側の意識のほうが問題かもしれない。
モデル事業(の段階)だからかもしれないですけど、上がいくら号令を出しても、『いや、そうは言われても』とかね」 CDRは今、ゼロから形をつくろうと模索している段階だ。
そして、早急に成果を求めない長い目が必要だと沼口医師は言う。

予防は積み重ねの上に成り立つ、成果だけを見すぎないことが大事だ――。
こう語るCDRの関係者はほかにもいる。
沼口医師は言う。
「今、結果を出すってことじゃなくて、将来、結果を出すことに向けて、(関係者が)一緒に取り組む。そんなイメージを持っていただけるといいなと思います」

取材:益田美樹=フロントラインプレス(Fromtline Press)所属
第2回:米国発「子供の死の予防制度」日本導入への課題(4月5日配信)
posted by 小だぬき at 05:29 | 神奈川 ☔ | Comment(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

日本の国防最前線で起きているヤバイ事態

現役自衛官の告白「いま日本の国防最前線で起きているヤバイ事態」
3/25(金) FRYDAY

国際社会の制止を振り切って強行されたロシアのウクライナ侵攻、とどまるところを知らない北朝鮮のミサイル発射、中国による覇権主義的海洋進出――日本を取り巻く安全保障の環境は日々厳しさを増している。

具体化した脅威に対し、防衛省は’22年度予算の概算要求で5兆4797億円を計上した。
防衛費は過去最大規模となった。
軍事ジャーナリストの清谷信一氏が一刀両断する。
「本予算のみで補正予算は含まれていません。
’21年度は8000億円近い補正予算が組まれています。
防衛省のおカネの使い方はデタラメ。
国民はもとより、現場の自衛官への裏切り行為です」

防衛費が増額されることがなぜ、裏切りとなるのか。
ある防衛省事務官は「中身が伴っていないのです」と嘆く。
「額が大きいだけのハリボテ。海外からの武器等の購入について、防衛省は基本的に値引き交渉をしない。
完全に商社任せで、言い値で買っている。
防衛省の各部署に『専門官』という役職がありますが、名前だけ。私も人事異動で、突然やったこともない分野の『専門官』を命じられました。
研究どころか関連する本を一冊も読んだことがないのに……」

先の清谷氏は日本の防衛事情をこう例えた。
「具が全然ないスキヤキの鍋に、超高級なアメリカ産牛肉がチョロッと入っている状態」だと――。
今回、国を憂う5名の現役自衛官がFRIDAYに登場。ニッポンの国防の、お寒い現状を語り尽くした。

◆尖閣有事に米軍は来ない
40代陸上自衛官A
「ウクライナの惨状を見て思うことは『明日は我が身』だね」

30代陸上自衛官B
「いや本当に。これまで、防衛予算を獲得するために恐怖を煽(あお)るストーリーとして語られてきた『ロシアの北海道侵攻』も、『中国の尖閣諸島侵攻』も俄然、(がぜん)現実味を増してきました」

40代航空自衛官C
「北海道侵攻は旧ソ連時代の話で、ここ十数年のメインシナリオが尖閣への中国軍の上陸。尖閣に安全保障条約が適用されるかどうか、歴代の自民党内閣が何度もアメリカに確認してきたけど、今回のウクライナ侵攻の対応を見たら望み薄だね。
尖閣有事の際に米軍が出張ってくるとは考えづらい」

30代陸上自衛官D
「北海道と尖閣で2正面作戦を展開されたらと思うとゾッとします。
ただ、中国が侵攻するとしたら、まずは台湾でしょうね。
ウクライナ東部の親露派の要請を受けて、平和維持のために軍を派遣――というロジックが通用するなら、台湾にも応用できるわけで」

30代海上自衛官E
「中露がガッチリ手を結んでいるのは不気味。中国と握れているから、ロシアは安心して西方に戦力を集中できているわけですからね」

「ロシア機と見られるヘリが3月2日に北海道・根室半島の南東沖で領空を侵犯したのは不気味だった。空自の戦闘機が緊急発進(スクランブル)したが……」

「領空に接近しているとの通告、侵入したことに対する警告を、いずれも無視されたんですよね?」

「空の守りと言えば、最新鋭戦闘機F-35が導入されたけど?」 C「ステルス性が高く、飛行能力も非常に高い。けど……値段も高い。導入まで、もっと慎重に物事を進めるべきだった。2兆5000億円も払って147機買うことになったけど、『高すぎる』と世間から袋叩きにあった後に突然、一機あたり10億円ぐらい安くなった。総額で1500億円ほど圧縮できた。財務省にうるさく言われて、防衛省がしぶしぶ交渉したら、ロッキード・マーチン社が値下げに応じたみたい。つまり、いままで値下げ交渉していなかったということ」

「もっとおカネをかけてほしいところは一杯ありますよ。日本の主力戦闘機のF-15って、’70年代の戦闘機ですからね。計器など内部のシステム等をアップグレードして、’22年の現在も使っている」

「機体設計自体が古いから、アップグレードには限界がありますよね?」

「中国やロシアはどんどん新しい戦闘機を開発していて、完全に置いて行かれている。北朝鮮が使っている古い兵器のことを笑う資格はないね」

「初期型のF-15は、もはやアップグレードすらできないと聞いています」

「空自が対艦、対地上用のスタンドオフミサイルを搭載できるようにF-15を改造。空対空の戦いを捨てようとしつつあるのは現実的だね」

「空対空じゃ勝てないですからね。1月に小松基地(石川県)を飛び立ったF-15が墜落して、パイロット二人が亡くなる事故がありました。調査結果が出ていないので何とも言えないですが、不可解な点が多すぎますよね」

「考えられるのは機体トラブル、落雷、バーティゴ(空間識失調)でしょうか」

「F-15は機体が古いからね……事故になっていないだけで、バーティゴもよく起きているとか?」

「バーティゴは私も何度も経験しているけど、陥りやすいのは曇天のときや、雲の中、夜の闇を飛んでいるとき。
とくに夜は星の光や漁船の灯が海に反射して、海面が夜空に見えて上下がわからなくなる。
その状態になると、不思議と計器が信じられなくなる」

◆戦後初の空母が「定員割れ」
「戦後初の空母『いずも』は既存の護衛艦『いずも』を改修して、空母化すると聞きましたが……」

「それが大問題なんですよ。現時点で『いずも』は定員約500名に対し、半分の200名台半ばぐらいしかクルーが乗っていない。
空母化すれば搭載する航空機の整備士など、さらに多くの人員が必要になるのですが、いったい、どこから連れてくるのか。現時点ですでに定員割れしているというのに……」

「結局、自衛隊内部で人の奪い合いになるんだよね……」

「たとえばエンジンを担当する3分隊(機関科)は、エンジンのオート化によって人員が削減されているんですけど、整備や点検、清掃には人力が必要。
だから、他の分隊から人員を回してもらわないといけない。タコが自分の足を食べて生きながらえている状態ですよ」

「その『いずも』にはF-35の短距離離陸・垂直着陸タイプのF-35Bが搭載されることになって、隊員の教育が始まったんだけど、ここでも人手不足がネックになった。
海自が運用しようとしていたけど、結局、人員を集められず、『教育ができない』ということで、通常型F-35が配備される空自が担当することになった」

「そうなると『いずも』のイニシアチブは誰がとるのか、という話になります。
もちろん、トップは艦長に間違いない。『いずも』型の艦長は一佐(一等海佐。軍での大佐に相当)職。もし、空自の部隊が乗ってくるとすれば、二佐の飛行隊長クラスがトップになるでしょう。
ただ、これだと、空自の意見が通りづらくなる。もしかしたら『派遣部隊指揮官』とか、よくわからない役職を作って、一等空佐を乗せるかもしれないですね。
ただでさえ、現場は人がいないというのに、見栄だけで無駄な幹部が配置に付きそうな予感……」

「陸自に配備され始めたMV-22B(オスプレイ)でも同じような現象が起きていますよ。
尖閣や南西諸島への侵略に対する島嶼(とうしょ)防衛の切り札として水陸機動団が使用し、かつ『いずも』にも搭載されるのですが、オスプレイ用の乗組員が全国から掻き集められて、現場は人手不足に陥っています」

「オスプレイは不満の声が多いね。機体性能は確かに素晴らしいが高い。なのに、3600億円もかけて17機も配備することにしてしまったものだから、他のヘリが買えなくなっている」

「今、攻撃ヘリも輸送ヘリも観測ヘリも数が足りていません。もっと普段使いが出来て、安いヘリが絶対に必要。現場は『誰でも気楽に使えて小回りがきくママチャリが欲しい』って言っているのに、ベンツが続々と納車されているようなもの。
不便でしょうがない」

「この間、引退したはずの小型ヘリOH-6Dも結局、完全引退できていないみたい。輸送ヘリや観測ヘリがないので、いざという時用にいつでも使えるように補給処でモスボール(劣化防止処置を施しての保管)しているからね」

◆当たらない機関銃
「F-35やオスプレイ、スタンドオフミサイルなど、世界もうらやむ高額な高性能兵器を買い揃えたおかげで、末端の部隊は大変なことになっていますね」

「高額の装備品の購入に伴い、防衛予算を大幅に取られることで、陸自では小銃や防弾チョッキがお粗末な事態になっている。
わけても衝撃だったのが、住友重工の不正。
自衛隊が配備する数種類の機関銃を製造していた住友重工が40年以上にもわたり、性能や耐久性に関するデータを改竄(かいざん)していたことが’13年に発覚。防衛省は同社を指名停止処分にするなどの制裁を科し、『住重に裏切られた』という姿勢を見せましたが……」

「バッテリーで言えば、広帯域多目的無線機のバッテリーもヤバいですね。
本体と、本体に接続されている端末の両方にバッテリーが搭載されているのもどうかと思うけど、その端末側のバッテリーがすぐ切れる。
演習中、ずっと電池切れの警報が鳴っていたこともあった」

「あの無線機、コードが細くて弱いからよく切れる。アンテナもよく折れます。
骨伝導イヤホンの耳に入れる方のゴムが取れやすくて、落ちないようにテープでとめているから耳が痛い。よほど、AirPodsの方が丈夫で便利ですよ」

「防弾チョッキも、身長に合わせてサイズが決められているはずなのにブカブカ。
3号サイズの次が5号とサイズの選択の幅がザックリ過ぎるところからして、おかしいよね(笑)。
もう少し小さいサイズの防弾チョッキが欲しいと言っても『数が足りないから無理』と一蹴される」

「今回、ロシアがウクライナの原子力発電所を次々と占拠しました。
原発が砲撃されるたび、放射能汚染を恐れるヨーロッパ諸国は恐怖のドン底に突き落とされましたが、日本の地上部隊はこんな有り様。守る以前の問題ですよ」

E「
ほとんど丸裸な日本の原発は、侵略者から見れば格好のターゲット。
しかも、列島のあちこちにあるから、それだけで守りづらい。
大兵団を送りこまなくても、やすやすと占拠できるでしょう」

「原発はいろんな意味でリスクだね」

「在日ウクライナ大使館は日本人、それも自衛官を集めて義勇兵としての参加を呼び掛けていたけど、言語が理解できない以上、大した戦力にならない」

「戦車は国やメーカーが違っても、操縦方法に大差はない。
だからと言って、すぐに乗れるかと言うと、やはり車内での連携が取れないと戦えないですね」

世界第9位の防衛費は「ハリボテ」。
人手不足で老朽化した役に立たない戦力、それが自衛隊の実態だ。
5人は最後にこう嘆いた。「国防破綻ですよ」と。

    『FRIDAY』2022年3月25日号より
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☔ | Comment(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする