山本太郎氏「参院鞍替え」実は与党が戦々恐々な訳
出馬選挙区明かさず、各党の選挙戦略は混乱必至
2022/04/19 東洋経済オンライン
泉 宏 : 政治ジャーナリスト
れいわ新選組の山本太郎代表(47)が4月15日、衆院議員辞職と参院選出馬を突然表明し、政界に複雑な波紋を広げた。
当選が見込める比例代表ではなく、「選挙区に殴り込んで議席をもぎ取る」と言い放ったからだ。
出馬する選挙区を「今は言わない。指定席が決まっているところを崩しに行く」とすごみを利かせた山本氏。
1人でれいわを国政政党にした知名度抜群の山本氏の挑戦で、狙われた選挙区の各党候補は、予想もしなかった防戦を強いられることになる。
今回の山本氏の行動に、与野党は「注目されなくなったから辞職しただけ」(自民)、「衆院の軽視で、党勢拡大のための党利党略」(国民民主)などと批判。
その一方で、山本氏がターゲットとする自民、公明両党や日本維新の会などは「おびえと疑心暗鬼」も隠せず、各党の選挙戦略が混乱するのは間違いなさそうだ。
「がんばれ太郎」「選挙をなめるな」ネット上は賛否
山本氏は4月15日午前、自身のツイッターで、衆院議員を辞職する考えを表明し、同日昼に衆院に辞表を提出したあと、国会内で記者会見。
その中で、夏の参院選に鞍替え出馬するため辞職することを明らかにした。
今回の鞍替えについては「現状では参院選で与党が勝って、その後3年間は国政選挙がなく、政治が暴走するのでそれを阻止したい」と説明。
岸田文雄政権や、維新や国民民主の与党接近を厳しく批判するとともに、立憲民主など主要野党の無力さも指摘した。
さらに、「選挙区から立候補する」と明言したが、具体的な対象選挙区は明かさず、複数区を念頭に調整を進める考えを示唆した。
午後2時から始まった会見は、れいわのインターネット番組が生中継。
会見時間は1時間半を超え、視聴者は最大1万5000人を超える活況を呈した。
中継中は画面内の投稿欄に「がんばれ太郎」「選挙をなめるな」など賛否が分かれる書き込みが殺到し、ネット上の注目度の高さも際立った。
会見で山本氏は、参院選情勢について「自民党が大きく議席を減らす結果にはならない」と予測したうえで、「空気を読まない私たちが議席を増やし、声を大きくする必要がある」などと繰り返し、れいわの勢力拡大が必要と訴えた。
注目の挑戦選挙区については、「今は言わない。指定席が決まっているところを崩しに行く」と不敵な笑みを浮かべた。
併せて、れいわが独自候補擁立を決めた選挙区(埼玉、東京、愛知、大阪、福岡)からの出馬は否定。
他野党との連携についても「(改選数2以上の)複数区では仁義なき戦いだ」と立憲民主など主要野党にも配慮しない考えを示した。
山本氏は人気俳優・タレントだったが原発反対で政治活動を始め、2013年の参院選東京選挙区で初当選。
2019年参院選比例区では落選したが、れいわが政党要件を満たしたことで党代表となり、2021年10月衆院選での比例東京ブロック当選で、約2年ぶりに国政復帰を果たしたばかりだった。
山本氏の議員辞職願は4月19日の衆院本会議で認められる見通し。
その場合、れいわの比例名簿で次点だった櫛渕万里氏が繰り上げ当選する。
山本氏は会見に櫛渕氏を同席させ、カメラ撮りのため両氏の握手と議員バッジを手渡す場面を設定するなど、巧妙な演出も見せた。
「嫌ですよ、僕だって議員バッジ外すの」
山本氏は、半年前の衆院選ではぎりぎりまで小選挙区での出馬をちらつかせ、標的とされた自民の大物候補をハラハラさせた。
しかし当選確率の高さを優先した結果、最終的には比例東京ブロック1位を選び、衆院初当選を果たした。
山本氏は会見で、「議員辞職せず、参院選に別の候補を立てるのが筋ではないか」との質問に「嫌ですよ、僕だって議員バッジ外すの。
国会議員であることとないことで発言力が変わりますもん。
落選のリスクももちろんある。でも、やるしかないんです」と語った。
しかし、当選確率の高さを選挙区選びの基準とする考えもにじませた。
このため、会見後半では、参加記者らがあの手この手で山本氏の本音を引き出そうと試みた。
同氏は軽妙な受け答えで煙幕を張り続けたが、「まだ決めきれていない」(れいわ関係者)のが実態とみる向きが多い。
また、山本氏は会見の中で、参院選比例代表を選ばない理由について「れいわ票のうち100万票を私が食うだけだ。確実に1議席を取りに行くほうが全体にプラスだ」と説明。
選挙区で当選した場合は「6年間の任期を全うする」と明言した。
こうした山本氏の発言を前提とすれば、ターゲットとなるのは
@与党や維新など政権寄りの議員の指定席、
A埼玉、東京、愛知、大阪、福岡以外のれいわの支持層が多い大都市圏の複数区ということになる。
その場合、該当するのは「千葉(定数3)、神奈川(定数4+1)と兵庫(定数3)」(選挙専門家)とみられる。
このうち与党だけでなく「与党側の顔をかぶった維新」(山本氏)の議席獲得が見込まれているのは、神奈川と兵庫だ。
神奈川は欠員が出たため今回改選は5議席。
兵庫は自民、公明、維新の指定席とみられているが、同県出身の山本氏にも身近な選挙区だ。
山本氏は今回参院選で3議席獲得できれば「代表質問の権利が得られる」と発言した。
これが最低目標とすれば、常識的には「選挙区1、比例代表2で3議席」(選挙アナリスト)となる。
もちろん、山本氏の選挙区での当選が前提だ。
そうなると、過去の実績から見て「山本氏が東京選挙区(定数6)で出馬し、比例でも2議席を確保するのが一番の早道」(同)ともみえる。
山本氏は2013年の東京選挙区で66万票あまりを獲得して4位で当選しており、当時より高い知名度から、「上位当選は確実」(同)だからだ。
一番スリリングな展開は兵庫選挙区への出馬だが…
これまでの変幻自在な山本流なら、土壇場で東京選挙区に擁立した候補を比例代表に回すことも可能だ。
もちろん、衆院選と同様に比例代表での出馬も当選確実ではあるが、その場合、東京選挙区などでの議席獲得は望み薄だ。
しかも、山本氏の鞍替え出馬表明を受けて、国政政党の「NHK受信料を支払わない国民を守る党」の立花孝志代表は、今回参院選に同姓同名の別人「山本太郎」氏の擁立を発表した。
山本氏の比例代表出馬への牽制であることは明らかだ。
こうしてみると、一番スリリングな展開となるのは出身地の兵庫選挙区への出馬だが、当選を困難視する声が多い。
事前に300万円かけて実施するという山本氏独自の支持動向調査でも手ごたえが悪ければ、前言を翻して東京選挙区出馬を選択する可能性も否定できない。
これまでの選挙でも、ネット上の注目度と実際の有権者の反応には違いがあり、「空中戦」主体の山本氏にとって、予想される低投票率なら情勢は不利になる。
いずれにしても、今回の挑戦への賛否も含め「すべては結果次第」(閣僚経験者)となりそうだ。
小だぬき
私は、今回の選択はベストだと思います。山本氏を「解散のある衆議院」より 解散の無い参議院で腰を据えて 国会、情宣に当たって貰う方が れいわ新選組の今後6年間の活動にとっても「支援したい庶民」にとってもプラスです。
山本太郎君の活動が 立憲のどの議員より また共産党の志位委員長より 話題を集め期待を持たせるというのは、なんだか悲しい野党の現状です。