2022年05月01日

「愛国心やナショナリズムは危険だ」という大誤解

「愛国心やナショナリズムは危険だ」という大誤解
ウクライナ問題で露呈、「大人の道徳」なき日本
2022/04/30  東洋経済オンライン
古川 雄嗣 : 教育学者、北海道教育大学旭川校准教授 /
大場 一央 : 中国思想・日本思想研究者、早稲田大学非常勤講師 

ロシアによるウクライナ侵攻に伴う混迷は、深まる一方だ。
グローバル化が進んでいたはずの世界はかつての冷戦期さながらに色分けされ、互いの「不正義」を糾弾し合う。
そのような中、欧米諸国と歩調を合わせるばかりの日本の対処方針は、過去の有事で繰り返された泥縄そのもので、戦後70年を超えても、国家として主体性を持つ「大人」になり切れていないのではないか。
こうした現状を打破するには、どのような思考が必要か――。
『大人の道徳: 西洋近代思想を問い直す』著者の古川雄嗣氏と、中国思想・日本思想研究者の大場一央氏がオンラインで対談した。
両氏の熱い議論の第1回(全2回)をお届けする。

帝国主義 vs ナショナリズム
古川
今回のウクライナ戦争に関する報道をみていて、私は主に2つのことを感じています。
1つは、あえてナイーヴな言い方をしますが、祖国防衛のために戦うウクライナ市民の勇敢さに感じ入ったところがあります。もちろん、その裏にはロシア軍による「虐殺」として報じられている悲惨な状況もありますが、それについてはあとで触れます。
ともかくも、ロシアの侵攻に対して丸腰の市民でさえ立ち向かおうとする姿には、先に出版した『大人の道徳―西洋近代思想を問い直す』でも強調した、いわゆる共和主義的精神の発露をみるような思いがしています。
ここでいう共和主義というのは、「公の事柄(レス・プブリカ)」に対する市民の積極的な参加を重視する考え方で、そこには「共和国(リパブリック)」の自由と独立を守るために、市民は時として武器をとって戦わなければならない、ということも含まれます。
これは戦後の日本にもっとも欠けている考え方だと思います。

あともう1つは、今回の戦争は、おおまかにいえば帝国主義とナショナリズムの戦いであるということです。
ナショナリズムをどうとらえるかということも、日本人は問い直されていると思います。

大場
『大人の道徳』で提示された議論に引き付ければ、この問題は異なる歴史意識・世界観の戦いと言えるでしょう。
中国思想史で「帝国」を定義する場合、民族や地域共同体などで培われた、固有の感覚や常識を超越するイデオロギーを提示し、それを破壊する存在、と考えられます。
そうした意味で、帝国は地域に根ざすナショナリズムと対立関係になりますね。
それをロシアに当てはめれば、ウクライナだけでなく、ソ連時代のフィンランドやポーランド、アフガニスタンへの侵攻など、「共産主義」「スラブ」「ロシア」などの観念を覆い被せて、固有の価値観を破壊、吸収しようと振る舞う帝国としての性格を持つことは明らかです。

古川
日本の学者や知識人のなかには、愛国心やナショナリズムは危険だ、悪だと思い込んでいる人が、いまだに多いようですね。そんなイデオロギーはとっくに前世紀で終わったものと思っていたのですが、どうもそうでもないようです。
最近も、私の学生が論文のなかで「自由で民主的な社会を作るには一定のナショナリズムが必要だ」という、ごく平凡な主張をしただけで、審査委員の教授からやたら感情的な批判を浴びて、話になりませんでした。
「ナショナリズム」という言葉を聞くだけで、反射的に拒絶反応を起こす人が、まだ一定数いるんですね。
そういう人たちは、ロシアに抵抗して戦っているウクライナ人のことも、「危険なナショナリスト」だといって糾弾するのかと問いたいです。

ワイドショーをにぎわした「奴隷」たち
古川
それにも関連しますが、日本のワイドショーやメディアでは一部のコメンテーターが「ウクライナ政府は早々に降伏すべきだ」と主張して炎上騒ぎになっていたようですね。
彼らがいうには、「国家の戦争で市民が犠牲になるべきではない」と。
たしかに、最近の悲惨な虐殺の報道をみていると、そういいたくなる気持ちもわからないではありません。

けれども、考えるべきなのは、そもそも近代国家において「国家の戦争」と「市民の犠牲」を分けて考えることができるのかということです。
近代国家の基本的な論理は、国家の主体(主権者)は市民であるということです。
だから当然、国家の戦争はただちに市民の戦争でもあります。
「戦争は政治家や軍隊だけがやればよい。市民は関係ない」というのは「戦争は王や王の軍隊だけがやればよい。庶民は関係ない」という中世国家の論理です。
「政治の主体は市民だが、戦争の主体は市民ではない」などといった論理は成り立ちません。
市民の主体性を否定するなら、それは民主主義の否定ですよ。

大場
国家や社会の運営に主体的に参加せず、自身の身体的快楽を満たすために、経済的利潤を追求してばかりの人々と言えるでしょうか。
『大人の道徳』で古川先生が厳しく批判された「奴隷」そのものでしょう。

古川
彼らの主張は、戦後日本の思想界や社会科学を支配してきたイデオロギーを端的に露呈させていると思います。
それは、「国家は市民社会を外部から統治する権力機構であり、したがって国家と市民社会は対立する」という考え方です。 さらにその背景には、「戦前の日本では一部の狂信的な政治家や軍部が始めた誤った戦争に国民が巻き込まれた。国民は国家の犠牲者であり、アメリカがそれを解放したのだ」という、戦後アメリカが喧伝した歴史観があります。

市民が国家に支配される無力な犠牲者でしかないのであれば、いつまでたっても市民は国家の政治的主体として自立することはできません。
戦後日本に民主主義が根づかない、いちばんの原因は、この「アメリカの物語」だと思います。

大場
あのような言説に対し、江戸時代に荻生徂徠や会沢正志斎ら錚々たる儒学者が説いた「武士土着論」を対比させるとはっきりと問題が見えてきます。
いま、産経新聞(大阪本社版夕刊)で『日本の道統』という連載を担当していまして、その中でも触れたのですが、大まかに言えば、この議論は、地域共同体を主力に、足腰の強いナショナリズムを構想しようとした際、理論的なバックボーンとして機能していたものです。
天皇に対する忠誠心をかきたてて、一気に「日本」という中央集権国家を志向する観念的なナショナリズムとは対照的な発想です。
同じ「愛国心」といっても、両者の想定するものの間には深い断絶がありますね。

今回の件であれば、ウクライナの人々からは、土地に対する愛着を基盤としたナショナリズムの影を見ることも不可能ではありません。
しかし、あの類のコメンテーターからは、たとえ彼らが「愛国心」を打ち出したとしても、抽象的な「日本」といったイメージに対する愛着は認められても、一人一人の生活や、思い出を投影した具体的国土への思いはなかなか見えてきませんね。
だから平気で降伏しろなんて言えるのでしょう。

しかし、ロシアは歴史的に土地を奪ったら絶対に返さない国です。
故郷を失うということは、自分自身のアイデンティティを失うことを意味します。
ゼレンスキー大統領も英誌『エコノミスト』のインタビューで「ここがわれわれの家であり、土地である」と抵抗への強い決意を述べていますね。
こうしたことがわかっていないのではないでしょうか。

ナショナリズムの再評価
古川
帝国主義とナショナリズムという観点についていうと、そもそもこの両者が混同されているという思想状況があると思います。
たしかに連続する面もあって複雑ですが、原理的には、帝国主義はナショナリズムを破壊するものであり、両者は本来、対立するものです。
わかりやすい例でいうと、日本の左翼は総じて、戦前の日本の帝国主義とナショナリズムを、もろともに批判しますね。
ところが彼らは、朝鮮の三一独立運動など、植民地側の民族主義運動は肯定的に評価するわけです。それは要するに、「台湾や朝鮮のナショナリズムはけっこうだが、日本のナショナリズムはダメだ」といっているにすぎない。明らかにダブルスタンダードなんですよ。
彼らは帝国主義に抵抗するナショナリズムを肯定しているわけですから、はっきりと「自分はナショナリストだ」といわなければならないはずですし、日本のナショナリズムだって正当に評価しなければならないはずです。

大場
例えば半島統治時代、ハングルなど文字の体系化に朝鮮総督府が果たした役割は大きいですね。
また、先の大戦も表看板≠ヘすべての民族が西欧化されるのを防いで、固有の文化に立脚して独立することを目的にしました。
世界を見ても、古くはフランスのナポレオンが、すべての民族がそれぞれの国で市民革命を起こして独立し自由になる、としてナショナリズムを輸出≠オ、ベトナム戦争も英米型の資本主義で分断され、均質化された民族の伝統・文化を社会主義によって取り戻すためのものだった、と言えます。

帝国主義とナショナリズムに相互補完的な要素がある点が、理解を複雑にしているでしょう。

古川
多様な文化・伝統を大事にするといっても、それだけなら果てしない分裂しかもたらしません。これがいわゆる多文化主義が陥った状況です。
だから今日の多文化主義者たちは、むしろ国民の共通文化の創出や共通言語の教育を重視するナショナリズムの方向にシフトしてきています。
それをも同化主義だというなら否定はしませんが、それなくして国家は成り立ちません。
ある程度の同化主義的な側面ももちつつ、同時に多様な文化的アイデンティティを保障する、という両面で考えていくしかないと思います。

そうすると、「多様な民族的・文化的な集団が、同じ一つの国を作っている」という意識を、ある程度、人為的に創り出していく必要があります。
そのときに、「歴史」をどう語るか、つまり大場先生がおっしゃった「歴史意識」という問題が、決定的に重要になると思います。

「アイヌは存在しない」という「逆張り保守」
古川
ところで、大場先生は札幌のご出身で、私も大学の教員として旭川に7年ぐらい住んでいます。
北海道に縁がある2人としては、歴史意識を論じるうえで、アイヌの問題は避けられないですね。
最近、一部の「保守」と称する人たちが「アイヌは存在しない」などと主張しているそうで、困ったものだと思っているのですが、大場先生はどのようにみておられますか。

大場
北海道の地名一つとってもアイヌ抜きに考えることは無理ですからね。
確かに松前藩などにいた「内地人」と狩猟民族であるアイヌは生活文化や価値観が大きく違ったでしょう。
しかし、幕末の探検家、松浦武四郎の著書『アイヌ人物誌』では、日露雑居の樺太にいるある民族が「私たちは皇国の民だから、日本に帰属したい」などと訴えたエピソードを記すなど、同じ日本人であるという理解をしながら生きようとした姿も描かれている。
もちろん、場所請負制のもと奴隷のように扱われたケースもある。
良い話、悪い話両面あって、「北海道」は形作られてきた。
それが日本と北海道を語るうえで欠かせない歴史意識でしょうね。

古川
プーチンはすでに2018年に「アイヌ民族をロシアの先住民族に認定する」という意向を表明していますから、今回のウクライナ侵攻と同じ論理で、「アイヌ民族保護」を名目に北海道に侵攻する可能性も否定できないでしょう。
にもかかわらず、日本がアイヌを排除していたら、ますますその名目に正当性を与えることになってしまいます。
そういう観点からも、まずいと思いますね。

大場
アイヌに限らず、異なる価値観の民族を内に含みながら、日本という国を、確固とした価値観で成立させなければなりません。
異なる価値観を無視すると「日本民族は他民族を抹殺する」と左翼に利用されるだけです。
そのカウンターで例えば「アイヌは左翼で反日だ」などと世界観を逆張りするだけの集団が「保守」を謳っている状況も危うい。
ただ、いわゆる「つくる会」運動以降の主流は、逆張り保守になっているような気がしてなりません。

「歴史学」が「歴史意識」を破壊する
古川
しかし、いまの若い世代と話していると、歴史をどう語るかという問題以前に、そもそも歴史意識そのものというか、自己の存在を歴史においてとらえるという観念そのものが、もう根本的になくなってしまっているような感じがします。
たとえば、私の大学の学生はほとんどが北海道の出身ですが、彼らは自分のルーツも全然知りませんし、当たり前のように「日本は単一民族国家です」というんです。

大場
う〜ん。『わたしたちの札幌』とかで郷土史をやったはずなのに……。

古川
君たちは学校でアイヌのことを教わらなかったのかと聞くと、はじめて「ああ、そういえばそうでしたね」と。もう自分には何の関係もない話になってしまっているんですね。

大場
それは「歴史学」のあり方も影響しているかもしれませんね。
膨大な史料をもとに、通説の「事実」をひっくり返していく学問上の仕事は、確かに刺激的です。
ただ、思想を専門に研究している私としては、「事実はこうだった」と言われたところで、「だから何なの」となってしまう。
むしろ、私が私自身を、そして世界を考える時に、過去はどういう意味を持ち、将来にどのような価値を示してくれるか、ということを期待しています。
例えば、『三国志演義』はしばしば「作り話で、事実でない」などと評されますが、あの作品の主題は、事実の提示ではなく、世界観をどう持つかということでしょう。
司馬遷の『史記』でも色濃く出ていますが、何を善とし、悪とするのか。
そして世界はどう動かすべきかという物語の提示が目的ですね。
「物語」というとフィクション、おとぎ話のように聞こえますが、歴史という素材を加工し、ストーリーを作りながら、思想を表明しています。
全知全能の神でない限り、すべての「真実」を並列して語ることは不可能でしょう。
歴史意識をつむぐ物語は、そうした限界を前提に、世界をどう見るのか、どう生きるのかを示そうとするものだと思いますね。

古川
まったくおっしゃるとおりです。
ナショナリズム研究者のアンソニー・スミスも典型的な例として挙げていますが、たとえばスイスの英雄、ウィリアム・テルの物語を知らないスイス人はいません。
しかし、では彼は本当に息子の頭上のリンゴを射抜いたのかといえば、もちろんそんなのはフィクションに決まっていますし、そもそも歴史学的には彼の実在さえ証明されていません。
しかし、そんなことはどうでもよいわけです。
ウィリアム・テルの物語が重要なのは、それが、不当な支配には断固として抵抗するとか、祖国の自由と独立のためには命懸けで戦うとかといった、スイス人の共和主義的な国民的価値を表現しているからです。
歴史の諸事実を客観的に明らかにすることは、学問としての歴史学の大事な仕事ですが、それとは別に、歴史をいかに語るかという思想的な問題も同時にあります。
歴史学と歴史認識、あるいは歴史教育は、異なる次元の問題なのに、歴史学者の多くが、もっぱら歴史学が語る歴史だけが歴史だと思っているのは大きな問題ですね。

「プロレス」としてのナショナリズム
古川
歴史をどう語るかという問題において重要なのは、「フィクションか、フィクションでないか」ではなくて、「どのようなフィクションを語るか」です。
歴史は物語られる時点ですでに本質的にフィクションなのですから、それをフィクションだといって批判したって何の意味もありません。
これはまさにナショナリズムの問題です。
大場先生と私は同世代ですが、ちょうど我々が学生の頃、ベネディクト・アンダーソンの『想像の共同体』が流行って、日本の知識人はこぞって「ネイションなど想像の産物にすぎない」と、そのフィクション性を批判していましたよね。

大場
鬼の首でも取ったかのようにね。

古川
そうそう(笑)。あれほどバカバカしい言説もなかったと思います。
アンダーソンがいいたかったのは、ネイションは想像力――私は「構想力」といったほうが適切だと思いますが――の産物であるがゆえに、むしろ強いリアリティをもつということです。
最近、ある政治学者と話していておもしろかったのが、ナショナリズムというのは、いわばプロレスみたいなものだ、という話です。
子どもは、リアルに殴り合っていると思ってプロレスに熱狂しますよね。
ところが、少々知恵がついてくると、「あんなのはショーにすぎない」などと小賢しいことをいって、熱狂している子どもをバカにするやつが出てくる。
けれども、大人になると、プロレスがたしかに一種のショー、つまりある意味ではフィクションであることを理解したうえで、しかしそのフィクションを命懸けで真剣に演じるところにこそ、プロレスの本当の魅力があることがわかってくるわけです。
大人はそのへんのことを全部わかってプロレスを楽しんでいるのに、それを「リアルな格闘じゃない」などと批判して、いい気になっているやつこそが、実はいちばん子どもなんですね。

ナショナリズムもまさにそうで、ナショナルな物語を文字どおりの真実として信じ込むのはたしかに子どもですが、それをフィクションにすぎないなどと批判して知的ぶっているのは、もっと子どもです。
フィクションをフィクションと知りつつ、あたかも真実である「かのように」真剣に引き受ける、というのが「大人」の態度ではないでしょうか。
そういう意味で、私の『大人の道徳』の続編は、『大人のナショナリズム』にしようと思っています(笑)。

歴史と思想がもつ「力」
大場
おっしゃるとおりだと思います。「フィクション」というと、嘘だと思って拒否反応を示す人がいるかもしれませんが、そうではない。
たとえば祖父母や父母の話を子に伝える時、立派なエピソードや仕事の話をして、子どもが楽しんだり憧れたりします。
そこで自分もそうした人になりたいと思って向上するものであって、わざわざどうしようもない性格や失態を話しません。
これはある意味「フィクション」ですが、嘘ではない。
「あいつもこいつもただの人間だった」では、「自分がこうなのも仕方ねえや」で進歩がない。
こんなものは文明ではなく、祖先も親もなく、ただ生まれて死んでいく動物と同じです。

やはり人間が文明を作り、進歩するには物語が必要なのです。
そうした意味で今必要なことは、「自由と民主主義を奉じる世界の人々の連帯の表明」といった構図ではなく、われわれ自身の歴史意識に立脚しつつ、ウクライナの問題も同時に語ることができる物語です。
フィンランド、ポーランド等々、ロシアという帝国の圧迫を受け続けてきた国々は数多く、日本も千島列島や樺太での一件を踏まえればその一員です。

今回はたまたまウクライナでしたが、北方領土、北海道への侵攻も、絵空事ではない。
「共同体を破壊してくるロシアという帝国から守るために、国境を接する国々は連帯して抑え込まなければならない」、といった主体的な構図が求められていると感じます。
歴史や思想がリアルポリティクスのうえで意味を持つのは、このような視点を示せるからでしょう。

古川
何しろロシアではプーチン自身が歴史の論文らしきものを書いて物語を作っていますからね。
人文・社会科学、なかでも歴史や思想は、良くも悪くも現実の世界を動かす力をもっているということを、日本の政治家はもっと認識するべきです。
最近は中国も哲学研究や思想研究に相当力を入れているらしいですね。
かたや我が国の政治家は、大学を「稼げる大学」にするのだとか息巻いているようなありさまですから、今後ますます、歴史、哲学、思想などは「稼げない」研究として大学から締め出されていくでしょう。
おっしゃるとおり、国際社会からも蔑まれることになるでしょうね。

  (後編に続く)
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岸田首相が突き進む「自公国路線」落とし穴…蠢く参院選“大惨敗”シナリオ

岸田首相が突き進む「自公国路線」落とし穴…
蠢く参院選“大惨敗”シナリオ
2022年05月01日 週刊実話Web

ロシアによるウクライナ侵攻が激化する中、岸田文雄首相はひたすら「自公国路線」に突き進んでいる。
夏の参院選に勝利し、名実ともに本格政権になるためだ。
しかし、原油高や円安、経済の失速など懸案事項は多く、油断すると足元をすくわれることになる!

「参院選は大変重要な選挙になる。政治の安定のために、ぜひとも協力と力添えをお願いしたい」
岸田首相は4月16日、自民党山形県連の政経セミナーに、わざわざオンラインであいさつを寄せて訴えた。
山形市内の会場で聞いていた地元選出の遠藤利明選挙対策委員長も、深々と頭を下げた。

首相が「政治の安定」と強調したのには訳がある。
日に日に深刻さを増すロシアのウクライナ侵攻や、収束が見えない新型コロナウイルス感染といった重大案件に、迅速かつ的確に対応するには、まさに政治の安定が必要となる。
首相はそのために、野党である国民民主党(以下、国民)の協力を確かなものにしようと、参院選で山形には公認候補を立てず、同党の現職、舟山康江氏に議席を譲る方針を固め、反発を強める県連に理解と協力を求めたのだ。

遠藤氏は谷垣グループの代表世話人でもあるが、岸田首相が会長を務める岸田派と同じ宏池会を源流としており、遠藤氏はいまや首相の側近の一人だ。
首相は2日前の14日、遠藤氏を官邸に呼び寄せ「選対委員長の立場で、お膝元の山形なのに、大変申し訳ない」と詫びた。
遠藤氏は「ボコボコにされてきますから」と、逆に首相を気遣った。

自民党から国民の玉木雄一郎代表にアプローチを仕掛けたのは、麻生太郎副総裁だった。
麻生氏に近い自民党関係者によると、今年に入って東京都内で玉木氏と密かに会い、同氏が訴えるガソリン高対策のための「トリガー条項」凍結解除の検討や、今回の山形選挙区の件を持ち掛けたという。
国民は昨年12月、衆院憲法審査会の与党協議に、日本維新の会とともに出席。
国会を常時開催し、憲法論議を促進していく方針で一致するなど、「与党接近」への素地はあった。
麻生氏によるアプローチは「効果てきめん」(先の関係者)で、会談後には岸田政権への接近に拍車が掛かり、トリガー条項を巡る自民、公明、国民の3党協議を開始。
国民は野党でありながら、2022年度予算案に賛成する異例の対応に踏み切った。

当初、トリガー条項の凍結解除に、公明党は難色を示していた。
だが、公明党が参院選で議席維持に全力を挙げる兵庫選挙区を巡り、公明党の支持母体と国民を支持する民間労組が「選挙協力」の密約を締結。公明党の現職候補を支援することで手を握ったという。
公明党が凍結解除で足並みをそろえたのは、この直後からだ。

「国民民主党はもはや与党」 この情勢に立憲民主党と共産党は「国民民主党はもはや与党」として、野党共闘の枠組みから事実上排除した。
だが、それでも首相を支える岸田派幹部は「国民にはもう2回、踏み絵を踏んでもらう」と話す。
「22年度補正予算案に賛成することが1つ、もう1つは内閣不信任決議案を与党とともに否決してほしい」というのだ。
前出の岸田派幹部は皮算用する。
「そこまで国民がやってくれれば、かつて民間労組が支援した旧民社党との『自公民路線』の復活と言っていい。
参院選後は3党連立もあり得る」

この路線は「岸田首相の方針」であり、すでに閣僚ポストの話も内々に進んでいるという。
首相が、国民の取り込みに力を入れるのはなぜなのか。
7月の参院選で勝利を確実にするため、勝敗の行方に直結する32ある1人区での野党共闘に、くさびを打ち込みたいとの思惑があるのは間違いない。
参院選1人区は、過去2回の選挙で自民党はいずれも20勝以上しているものの、共闘の成果もあり10選挙区で野党に負けている。
しかし、今回の選挙で、取られる選挙区を5程度に抑えることができれば、定数124議席(非改選を合わせ248議席)のうち、自民党単独で60議席は獲得できるとの計算も成り立つ。
公明党がこれまでと同様に14議席を取れれば、自公で74議席、非改選を合わせれば140議席以上となり、過半数の125議席を大きく超えることになる。

狙いは共闘分断だけではない。
首相にしてみれば、ギクシャクしがちな公明党との関係もやっかいだった。
そりの合わない山口那津男代表は今夏に70歳を迎えるため、参院選後に石井啓一幹事長と交代するとの見方が出ている。
とはいえ国民との関係が強まれば、公明党へのけん制にもなる。
首相は、公明党が4月に入り、今国会中に22年度補正予算案をまとめるよう要求を強めていることに対し、周囲に「また創価学会に言われているのか」と不快感を示しているという。

だが、国民を取り込む最大の理由は別にある。
国民を支持する連合傘下の民間労組のうち、自動車総連やUAゼンセン、電機連合、電力総連といった、公称で20万〜180万人もの構成員がいる大規模労組を引き込むために他ならない。
国民と3党連立を組んだとしても、議席数は衆院で11、参院は今回が前回並みの5議席なら計10議席。連立に加わらない議員も出るとみられるので、それほど大きな勢力にはならない。
しかし、旧同盟系を中心とする民間労組の支援が得られれば、もともと安全保障を含めて政策も近く、政権の安定感は計り知れないものになる。

小池百合子都知事との連携も可能
さらに、国民が東京選挙区で共闘する地域政党「都民ファーストの会」が、参院選後に国民と合流すれば、小池百合子都知事との連携も可能だ 「安倍・菅政権では、安倍晋三元首相と菅義偉前首相との人間関係で、野党の日本維新の会が政権運営に協力していた。
岸田首相も独自の『自公国』の枠組みをつくれれば、どこにも気兼ねすることなく政権運営の自由度を高められる」(前出・岸田派幹部)
しかも、大規模労組と小池都知事も味方に付くなら、まさに「鬼に金棒」状態である。

もちろん岸田首相は、自民党最大派閥の安倍派を率いる安倍氏を、敵に回すようなことはしない。
ウクライナ情勢への対応は政権の最重要課題であり、米国との太いパイプを維持し、外交・安全保障政策に強い影響力を持つ安倍氏との連携は、今後も不可欠だ。
首相は4月10日夜、都内ホテルのステーキ店で安倍氏と会談した。安倍氏に近い関係者によると、首相は引き続きロシアへの対応と、安保政策での助言を要請。
参院選後に内閣改造を行うと耳打ちし、岸信夫防衛相を交代させるとして「後任は安倍派から出してほしい」と伝えた。

内政において自公国路線が確立すれば、首相は中間層育成に重点を置く「新しい資本主義」や、活力を失った地方の発展を図る「デジタル田園都市国家構想」など、自身の経済政策を押し進める考えだという。
これは「アベノミクスの転換」を意味しており、来年春に任期を迎える日本銀行の黒田東彦総裁の交代が視野に入る。

首相は「異次元緩和」の「出口」を探っているとみられ、「早ければ秋にも日銀プロパーと交代する」との観測もある。
さらに、首相が参院選後の実施をにらむのは、東京電力福島第一原発の敷地内に保管する大量の処理水の海洋放出だ。
ウクライナ侵攻を受けた原油高とエネルギー需要のひっ迫で、原発再稼働も急務となっている。
中でも喫緊の課題は、世界最大級の出力を誇る東電柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働に道筋をつけることだ。
ここに電力総連を引き込む狙いがある。

政権幹部は「労組も一丸となって国民世論に訴えれば、処理水放出と柏刈再稼働も実現できる」と期待を込める。
国民は参院選の比例代表で「500万票」獲得を目標とする。
組織内候補4人の議席確保を目指すためだが、永田町では「2〜3議席がせいぜい」との声が大半で、構成員が相対的に少ない、電力総連の新人候補が落選する可能性が出てくる。
そこで自民党内では、今回の候補が東電出身でもあることから、「自民党から50万票ほど電力に流すことも検討されている」(党選対関係者)という。

岸田首相の野望がどんどん大きくなっている… 宏池会のベテラン議員は話す。
「岸田首相の野望がどんどん大きくなっている。
関係改善のため中韓歴訪に行きたがっているし、来年のG7サミットは地元・広島での開催を望んでいる。
24年秋の自民党総裁選で再選し、25年は夏に衆参同日選を仕掛けたい。
憲法改正の国民投票と、トリプル選挙になるかもしれない」

内閣支持率は高く、政権発足当初は誰も予想しなかった順風満帆ぶりだが、本当にこの先、岸田首相が描くようなシナリオで政権運営が進むのだろうか。
首相が描く青写真の前提は、自公国路線が完成することだが、国民が想定以上に失速し、3議席程度しか取れずに惨敗する可能性は否定できない。
そうなれば玉木氏の責任が問われるのは必至で、自公国路線は白紙になりかねない。
報道各社の世論調査でも、国民の支持率は1%台に低迷したままだ。
失速分を自民党がカバーできればいいが、実のところ不安要素は少なくない。

コロナ感染者数はいまだに全国で5万人を超える日があるなど、収束が見通せない。
感染者数と内閣支持率は相関関係にあると言われ、より感染力の強い変異株が出現すれば、感染拡大「第7波」の最中に参院選を迎えることになる。
さらに懸念されるのは経済だ。
原油高と円安が止まらず、賃金が上がらないまま物価だけが上昇する「悪いインフレ」に陥れば、立ち直りかけた経済が息切れし、生活不安は増大する。
安全保障への不安も尽きない。ロシアが日本への軍事的圧力をさらに強めてきた場合、岸田政権はどう対処するのか。
中国や北朝鮮の脅威にもさらされており、対応を誤れば選挙を前に痛恨の失点となりかねない。

先の選対関係者は、これらの懸念材料が参院選に集中したら、「自民党は50議席を割り込んで惨敗する事態もある」と話す。 首相の求心力が低下すれば、安倍氏の発言力が増すのは確実だ。
岸田政権が継続したとしても、これまで以上に安倍氏に配慮せざるを得なくなる。
菅氏は党内無派閥グループを束ねつつ、「河野太郎党広報本部長と小泉進次郎前環境相の二枚看板を手元に、今はじっと政局をうかがっている」(菅氏に近い無派閥議員)ようだ。

選対関係者によると、首相サイドは二階俊博元幹事長に対し、今国会中の「電撃引退」を促しているという。
参院選の特例として衆院補選も同時に行えるため、「二階氏の和歌山3区への出馬を狙う世耕弘成党参院幹事長を出し抜き、息子に地盤を譲ることができる」からだが、二階氏は政局をにらんでか首を縦に振らないという。

参院選が岸田首相にとっての「天王山」になるのは明白だ。
勝てば長期政権が視野に入る。
しかし、負ければ、すべては「絵に描いた餅」に終わることになる。まさに正念場だ。
posted by 小だぬき at 12:34 | 神奈川 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年05月02日

養老孟司氏が指摘「健康診断に一喜一憂する人」に決定的に欠けている“ある視点”

養老孟司氏が指摘「健康診断に一喜一憂する人」に決定的に欠けている“ある視点”
2022.4.28 finasee

資産形成の目的を問われると、多くの人が「老後の資金のため」と答えます。
その資金には、医療費や介護費用も含まれるのでしょう。
「老いたら、何らかの病気になり、医療のお世話になる」。漠然とそう思っている人がほとんどだからです。
447万部のベストセラー『バカの壁』(新潮新書)でも知られる養老孟司氏は病院嫌いで、「現代の医療システムに巻き込まれたくない」と、長年健康診断も受けないできたそう。
しかし、2020年には突然の体調不良から大病が発覚、東大病院に入院することに――。
その経験を通じ、養老氏は医療、老い、死について、あらためて何を思ったのか。教え子であり、主治医でもある中川恵一氏との共著『養老先生、病院へ行く』(エクスナレッジ)に綴られています。その第1章を特別に公開します(全4回)。
●第3回はこちら ※本稿は養老孟司、中川恵一『養老先生、病院へ行く』(エクスナレッジ)の一部を再編集したものです。

過去の医療にはもう戻れない
がん予防では禁煙がとても重要だといわれています。
中川さんによると、喫煙者は膀胱がんになる確率が2倍になり、肺がんになる確率は5倍になるそうです。
それはデータの解釈としては確かでしょう。
では1日1箱(20本)タバコを吸う人と、3日で1箱吸う人ではどうなのか。
20歳からタバコを吸い始め、40歳でやめて、今60歳の人はどうなのか。
タバコとの付き合いは千差万別です。それを1つに丸めて、全体の数値を出して確率を提示しているのが統計データです。
中川さんはタバコを吸わないのに、膀胱がんになっています。
タバコと無縁に生きている人でも、がんにかかることがあるのです。

では医療における統計を否定すればよいのかというと、そんなことは不可能です。
そう願ったとしても、過去の医療に戻ることはありません。
現在、病院に行くというのは、この医療システムに完全に取り込まれてしまうことなのです。
これが2020年6月に、病院に行くべきかどうかで悩んだ理由です。

一方で、未来の医療は個人に合った医療にするとか、オーダーメードの医療にするとか言われています。
ただしそれをやるには、膨大な情報量が必要です。
AI化が進んで、いずれそんな時代がくるかもしれませんが、今は過渡期というか、昔の医療と未来の医療の中間にいるわけです。
その中間にいるときは、どうすればよいのでしょうか。

新型コロナの対策では、みんなが勝手なことを言って、どういう対策をたてればいいのかはっきりしないまま1年以上も終息できずにいます。
でもそんなことは、はっきりしなくて当然です。
誰かが1つの論理で決めていかなければはっきりさせることはできません。

自分が医療を受けるのも同じです。自分で決めるしかないのです。
ところが、普通の人は決めるための十分な知識を持ち合わせていません。
自分で決めるために、セカンド・オピニオン(納得のいく治療法を選択することができるように担当医とは別の医療機関の医師に「第2の意見」を求めること)という制度もありますが、病気について十分な知識がなければ、結局、確率が高いほうを選ぶしかありません。

データよりも身体の声を聞くことが大事
医者のほうも、データばかり見ていると、確率的にあなたはこうだから、この治療が最善です、終わり。というようなことになってしまいます。
本当は治療しながら仕事を続けたいとか、家族との関わりとか、患者個人の事情をよく聞き出して、それに沿って治療方針を決めることが大事なのです。
中川さんはそういうタイプの医者ですが、データに乗っかって楽をしている医者が圧倒的に多いような気がします。

統計的データは、あくまで判断材料の1つです。
今後、医療システムの中にAIが本格的に入ってくるはずですが、事情は変わりません。
もしも最終的な判断をAIに預けるような医者が出てきたら、どうしようもありません。
身体がある状態を示す要因は複合的です。健康診断や人間ドックで、まったく異常が見つからなかったのに、突然倒れてしまうことがあります。
血圧とか血液検査の数値とか、身体の状態から情報化されるのはほんの一部です。
だから、予想外の病気が見つかることがあります。

私のような胸の激痛がまったく出ない心筋梗塞もその1つでしょう。
数値に目を奪われていると、健康のためにはそれだけが重要なことのように思われてきます。
健康診断に一喜一憂する人は、この罠にはまっているといえます。
もちろん、私のように健康診断を受けないことを勧めるわけではありません。

ただ、データさえ見ていれば病気にはかからない、という論理に囚われないようにする必要はあると思います。
なかなか難しいことではありますが。 自分の身体の異変に気づいて、例えばがんかもしれないと思ったとき、ネットで検査して、「万人に1人」という数字が出てきたとします。
確率が低いので、「これは違うな」と思うかもしれません。
身体に異変を感じていながら、それを無視する結果になるので、これは危険です。

私がさんざん悩んだ末に病院に行くことにしたのは、体調が悪くてどうしようもなかったからです。
前述したように、病院に行く前の3日間は眠くて眠くて、ほとんど寝てばかりいました。
それが身体の声だったのでしょう。
動物は意味ではなく感覚だけで生きています。猫が日当たりのよいところにいるのは、そこにいるのが気持ちよいからです。すべての猫を見たわけではありませんが、少なくともうちの猫(まる)は正直です。
そこにいたいからそこにいる。身体の声に従って生きているのです。

ただ、身体の声を聞こえるようにするには、自分が「まっさら」でなければなりません。
私は花粉症がありますが、症状がひどくても、これまで薬は飲まないようにしてきました。
薬で症状を抑えてしまうと、身体の声が聞こえなくなるのではないかと思うからです。
しかし、今回のように病院に行って、医療システムに取り込まれてしまうと、医者が出す薬を飲まないわけにはいきません。退院後は仕方がないので、処方された薬を毎日きちんと飲んでいます。
身体は自分だけのものではないので、これまた仕方がありませんね。

これからも医療とは距離をとって生きていく
なぜ病院に行きたくないのか、いろいろ理屈を言ってきましたが、今回は医療に助けられたことに感謝はしています。
しかし、原則として医療に関わりたくないという気持ちは今も変わりません。
中川さんも言っていましたが、受診の予定を7月にしていたら、もはや生きていなかったかもしれません。
そもそもかつての東大病院というのは、どこの医者に診てもらっても匙を投げられ、最後の望みとして患者さんがやってくる病院だったからです。
とりあえず、今回は生きて帰ってきました。
それどころか、病院嫌いの私が再び入院して、白内障の手術も受けました。 おかげで、メガネなしで本が読めるようになりました。
本を読むのが仕事の一部なので、これはとても助かっています。

ただ、白内障の手術を受けたことで、中川さんなどは私の医療に対する考え方が変わったのではないかと言っていますが、実は何も変わっていません。
これからも、身体の声に耳を傾けながら、具合が悪ければ医療に関わるでしょうし、そうでないときは医療と距離をとりながら生きていくことになるでしょう。
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2022年05月03日

レジ袋の有料化は義務ではなかった。政府の言いなりになる危険さ/倉山満

―[言論ストロングスタイル]―
レジ袋の有料化は義務ではなかった。政府の言いなりになる危険さ/倉山満
2022年05月02日 SPA!

◆レジ袋の有料化は、“強く推奨”されただけ。義務ではない
 多くの人々が「騙された」との気持ちになるのではなかろうか。
「レジ袋有料化は義務ではなかった」と聞かされれば。
 4月20日の『日刊SPA!』で「レジ袋有料化は義務ではない。単なる『強い推奨』にすぎなかった、政府が答弁」という記事を配信したら、反響が大きい。

 ’20年7月1日から「レジ袋有料義務化」と大々的に宣伝された。
多くの人が「環境問題だから仕方がない」と協力した。
 レジ袋有料義務化は、過去に何度も法制化しようとしたが、「憲法違反の疑義がある」との意見が出され、断念してきた。憲法22条「営業の自由」に抵触するからだ。

 ところが、法律どころか内閣の出す政令ですらなく、一つの省が出せる省令で「レジ袋有料義務化」がなされた。
なぜ法律で不可能なことが省令で可能なのか。

◆なぜ法律で不可能だった「レジ袋有料義務化」が省令で可能なのか
 その理由を調べようと、私が理事長兼所長を務める救国シンクタンクで、委託研究を立ち上げて調査した。
担当は早稲田大学招聘研究員の渡瀬裕哉理事、委託者はラジオ番組でこの問題を毎週のように取り上げている郵便学者の内藤陽介先生。
調査には浜田聡参議院議員の協力で、官民問わず幅広くヒアリングを行えた。

 官僚が国民に命令を出すには法律に根拠が必要である。
その根拠法が「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(いわゆる容器包装リサイクル法)で、ここに罰則規定が定められている。
 大臣はプラスチックを減らすための基準を定めることができる。
プラスチックを減らす努力が著しく足りない業者に対しては、「指導、助言、勧告、名前の公表、命令、罰金」という段階を踏んだ手続きを行うことができる。
 最終的に罰金がとんでくるのだが、「著しい」か否かは、役所の匙加減一つだ。
 この法律を施行する為の省令で、環境省は経産省を巻き込んで「レジ袋を無料で配布してはならない」との省令を定めた。ただし例外があり、環境に悪くないレジ袋は無料配布をしても良いとした。

◆「有料化が義務化されたというふうに聞こえてしまったのかもしれません」
 この過程で、
@環境保護という公共の福祉が目的であること、
A「指導〜罰金」の慎重な手続きを踏んでいること、
B例外規定があることの三つが憲法違反ではない理由とされた。

つまり、すべてのレジ袋の有料化は義務ではないのだ。
 この点を、4月8日衆議院経済産業委員会で、日本維新の会の漆間譲司衆議院議員が糺した。
要するに、レジ袋有料化は義務なのか義務ではないのか。
 これに対する経産省局長の答弁は「単純に言えば実質的には義務化ということでございますけれども、法令上はですね、命令に従うことが義務だというようなことでございます」だった。
 これを受けて大岡敏孝環境副大臣は「確かに、私どもの言い方が十分でなかった面があるかもしれません。
すべてのレジ袋を有料化するっていうふうに有料化が義務化されたというふうに聞こえてしまったのかもしれません」
「これから私たちもしっかりと正しく正しく説明するように心がけてまいります」と率直な答弁を行った。

◆法的な強制力もない「お願い」のはずなのに
 別に私は、「環境問題などどうでもいい」「プラスチックなど減らさなくてもいい」などと、一言も言っていない。
それはそれで大事な問題だ。
だが、一言「環境問題」を持ちだせば、手続きも何も飛ばして政府が国民を統制しても良いとする考え方が危険だと言っているだけだ。
 戦時中、東條英機首相は「憲法違反だ」「手続きに問題がある」と指摘されるたびに、「戦争に勝つためだ! 見逃してくれ!」と泣き落とし、それでも言うことを聞かない人間は弾圧、時に死に追いやった。
まだ戦争に勝てたのなら救いがあるが、結果は敗戦で国中が焼け野原になった。

政策の検証がなされないまま、政府が暴走したなれの果てだ。
 今のコロナ禍も同じだ。「未知の伝染病に対処しなければならない!」との大義名分を批判する者はいない。史上初の「国家経済そのものを止める」との試みにも、国民はよく協力した。マトモな補償もないし、そもそも法的な強制力もない「お願い」「要請」なのに。

◆大義名分のもと、国民は飼いならされた羊の如く言いなりになる
 ところが、コロナ禍も3年目。いったい、何の為に自粛を続けているのか?
ちなみにマスクもワクチンも、何の法的強制力もない「お願い」「要請」にすぎないが、いったい何の為にやっているのか、政府が説明している文書を誰か提示できるのか。そして、いつまでこれを続けるのか。

 東條英機も「戦争に勝つ」と絶叫していたが、何がどうなったら戦争に勝ったことになるのか、一度も説明をしたことが無かった。
大戦末期、誰の眼にも敗色濃厚となった時期には「聖戦完遂」を言い出した。
もはや何が「完遂」なのかを聞くのも愚かしい状況だったが、「いいかげんにこんな戦争やめてしまおう」と一言でも言えば、良くて刑務所、悪ければ家を焼かれるか殺された。今のコロナと同じだ。

 コロナ禍の日本政府の政策は、褒めるところが難しいほど愚策の連続だ。
国民の驚異的な忍耐によってのみ、死者や重症者の拡大を防いでいる。
しかし、その国民が政府を甘やかしているので、いつまでたっても愚かな自粛が終わらない。

 結局、戦争もコロナもレジ袋も、根っこは同じなのだ。
「戦争に勝つ」「伝染病を防げ」「環境問題だ」などなど、もっともらしい大義名分を掲げれば、国民は飼いならされた羊の如く言いなりになる。

◆批判不能な権力は、絶対に腐敗する
 そして権力は絶対に腐敗する。
批判不能な権力者は、権力をふるって人に言うことを聞かせる行為そのものに快感を抱くようになる。
 PTAでもいるだろう。その場を仕切ること自体が快感な人が。

何かの目的があって結果を出すために仕切っているのではない。
人を仕切ること自体が快感だから、ひたすら他人を振り回す。
 政治家か官僚が、その種の人たちのようになればどうなるか。  こうなる。今の日本だ。

 ウクライナ問題の唯一の救いは、コロナのニュースを脇に追いやったことだ。
ウクライナで起きていることは遊びではない。殺し合いだ。
 人殺しが国を荒らしまわっている時、政府を批判する余裕はない。
東條のような人物が政府の首班にならないよう、政治を監視する。民主政治の要諦だ
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2022年05月04日

ウクライナ危機で強まる「専守防衛」見直し論…自民党ハト派の重鎮が危機感

ウクライナ危機で強まる「専守防衛」見直し論
…自民党ハト派の重鎮が危機感
5/3(火)  TBSニュース

5月3日は75年前に日本国憲法が施行された憲法記念日です。
ロシアによるウクライナ侵攻などをうけ、今、憲法9条に基づく「専守防衛」の見直し論が強まっています。
日本の平和をどう守っていくのか。多くの人が不安を感じ始めています。

大学生(20代)
「めちゃくちゃ北朝鮮のこと気になります。日本なんかあったら怖くない?」

会社員(20代)
「ウクライナのこととか、自分の国に対する防衛が他人事ではない」

ミサイルの発射を繰り返す北朝鮮、軍事力を強化する中国、ウクライナに侵攻したロシア・・・。
厳しい現実を前に自民党は先週、弾道ミサイルなどによる日本への攻撃に対応するため、日本が相手国の基地などへの反撃能力を保有することを提言しました。

さらに議論の過程では・・・
自民党 福田達夫総務会長
「専守防衛では限界があるのではという指摘が複数の方からございました」
長年、日本が守ってきた「専守防衛」を見直すべきとの意見が出たのです。
そもそも「専守防衛」とは、戦力の不保持などをうたった憲法9条に基づくものです。
日本からの先制攻撃は原則禁止。相手から武力攻撃を受けたときにはじめて防衛力を行使できます。
しかも、自衛のための必要最小限に限られます。

しかし、これに総理経験者が疑問の声をあげました。
自民党 安倍晋三元総理
「そもそも相手は戦争ですから、殲滅しに来てるわけですよね。
殲滅しようとしている国に対して、必要最小限度はどこかと考えながらやることはなかなか大変ですよね」
たとえば専守防衛を今のウクライナにあてはめれば、ロシアへの反撃を必要最小限に留めるということにもなりかねません。

自衛隊の前のトップも「必要最小限」という縛りは「非現実的」だと訴えます。
自衛隊 河野克俊前統合幕僚長
「(自衛隊は)災害派遣には全力であたってます。『いいかお前、必要最小限だぞ』なんて、そんなことやるわけないんですよね。
戦争は自然災害よりももっとひどい状況。
国民の皆さんにとっては。いまだに自分たちの手足を縛って『必要最小限です。世界のみなさんご安心を』なんてことは次の世代に負わせてはいけない」

ただ、勢いづく防衛力強化の議論に強い懸念を抱く人もいます。
岸田総理に派閥の会長の座を譲った、自民党の古賀誠元幹事長です。
自民党 古賀 誠元幹事長
「感覚で戦争を実体験している人たちがいない今、とっても怖いということを僕は言ってる」
太平洋戦争で父親を亡くした古賀氏。「力で平和を実現する」という議論は、戦争を実体験していない世代が理屈で考えた議論だと訴えます。
自民党 古賀 誠元幹事長
「戦争だけはね、理屈で収まるんじゃないんです。どれだけのね、尊い命が失われたり、財産無くしたり、血を流したりと、そういう尊い犠牲の上にあるんです。
だからこそ戦争というのは繰り返してはならないし、理屈で収められるような簡単なものではない」

古賀氏は日本の周辺国が力を振りかざす今こそ、憲法9条の理想を追求すべきだと考えています。
自民党 古賀 誠元幹事長
「平和憲法があることは大きな力であるし、先人が残した決意と覚悟なんです。もっと言えば理想なんです。
その理想を実現するために外交を使ったり、経済使ったり。だから理想であることは間違いないですよと、9条は。
だけど政治ってそもそも理想を実現するためにあるんじゃない」

施行から75年。憲法は岐路に立っています。
     TBSテレビ
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2022年05月05日

新型コロナワクチン4回目接種前に知っておきたい5つのこと

新型コロナワクチン4回目接種前に知っておきたい5つのこと :
2022年05月03日 日刊ゲンダイ

 新型コロナワクチン接種が始まって1年2カ月が過ぎた。
この間、早い人で3回接種を終えたが、連休明けには4回目接種が始まるという。
対象は3回目接種から半年以上たった人だ。
接種を希望する人が知っておきたい5項目を、先日、新型コロナウイルスの新しい治療メカニズムをつきとめ英医学誌に発表した、ハーバード&ソルボンヌ大学医学部の根来秀行客員教授に整理してもらった。

【Q1】全国で置き換わりが進むオミクロン変異株には効果があるの?

【A1】これまでの変異株の主な変異は、人の細胞にとりつくのに必要なスパイクタンパクの変化なので、一定の効果はあると考えられています。
 米国の報告では、mRNAワクチン(ファイザー社製またはモデルナ社製)3回接種と未接種の比較では、有効率はデルタ株で93.5%、オミクロン株で67.3%。3回接種後に入院を防ぐ効果は、オミクロン株が主流になった時期で、接種2カ月以内91%が、4カ月以上78%に低下しました。
とはいえ、感染者や入院者を減少させ続けるためにはワクチンの3回目接種は極めて重要だと考えます。
 4回目接種後は、イスラエル保健省などの研究結果によると中和抗体の値は10倍程度に上昇し、3回目接種を終えた後をやや上回る水準になったそうです。
また、ファイザー社とモデルナ社のワクチンで差は出なかった一方、オミクロン株の働きを抑える働きは、従来株に比べ10分の1程度にとどまりました。
 以上の研究データから、イスラエル保健省は「3回目の接種までに免疫は完成されていて、その後は低下するも、4回目の接種で回復すると考えられる。
ただ、4回目接種は健康な若い世代にはわずかな利益しかない可能性もある」としています。

【Q2】なぜ感染が増えているのに重症は少ない?

【A2】オミクロン株は主に咽頭部に感染し、咳などでウイルスが発散されやすい一方で従来株に比べて肺の組織への広がりが少ない可能性が考えられています。

【Q3】とくに接種を検討すべきはどんな人?

【A3】
@65歳以上
A慢性呼吸器疾患
B慢性腎臓病
C糖尿病
D高血圧
E心血管疾患
F肥満
G生物学的製剤の使用
H臓器移植後やその他の免疫不全
IHIV感染症
J喫煙歴
K妊婦
L悪性腫瘍--これらのリスク因子がある人です。

その多くは毛細血管に問題がある人といえます。
新型コロナの感染者の致死率を分析した結果、重症化のリスク要因が「ない」人(0.41%)に対して、「ある」人(2.28%)で5.6倍上昇したとの報告があります。

【Q4】副反応の頻度は?

【A4】2回目と3回目はほぼ同等なので、4回目も同様の副反応が予想されます。
長期的にはまったくわかりません。
イスラエル保健省の4回目データでは、ファイザー社とモデルナ社の2種類のワクチン全体で、局所の痛み78.8%、倦怠感33.2%、筋肉痛24.5%、頭痛21.5%、37.5度以上の発熱6.6%で、大きな影響はありませんでした。

【Q5】ワクチン効果を上げる生活習慣は?

【A5】体内時計に合った質の高い7時間の睡眠をとる人は、ワクチン効果が高いことが他のワクチンで報告されています。
接種1週間前から心がけましょう。
起床から1時間以内に朝食、3食を定期的にとる、定期的に適度な運動をするなど体調を整えることも大切です。
 ◇  ◇  ◇  
ワクチンはメリットとデメリットを秤にかけ、副反応のリスクと接種当日の体調も検討したうえで、メリットが上回ると判断できたら打てばいい。
自分の体のことだから、納得のいく選択をすることが大切です。
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2022年05月06日

「貯金も保険も一石二鳥」の変額保険はお得なのか

「貯金も保険も一石二鳥」の変額保険はお得なのか
結局「虻蜂取らず」の残念な結果になりかねない
2022/05 /05 東洋経済オンライン
岩城 みずほ : ファイナンシャルプランナー・CFPⓇ

長くデフレが続いてきましたが、このところ、さまざま商品が値上がりし、家計への影響を心配する人も増えています。

「変額年金」の特性とは?
会社員の戸田雅彦さん(仮名・53)は、この春、長女が大学に進学しました。
2年後には長男も進学を控えていますので、2人の教育費の支払いで、預貯金が大きく減ることになります。
戸田さんは、「もしこのままインフレが続くと生活費が増えるだけでなく、預貯金の実質的な価値も目減りするのではないか……」と、自分たちの老後資金を心配しています。
そんな戸田さんのもとへ、先日、20年ほどの付き合いになる保険会社のライフプランナーから連絡がありました。

「今度Y社に転職するので、現在の契約しているX社の変額年金を払済(はらいずみ)保険にして、新しくY社の変額年金に加入してもらえないか」というものでした。
払済保険とは、保険料を支払うのが苦しくなったときなど、加入中の保険を見直す方法の1つです。
その時点での解約返戻金相当額を一時払い保険料に充当することで、その後の保険料の支払いはなくなります
保険金額は少なくなりますが、保障は維持されます。特約などはなくなります。
戸田さんは、ライフプランナーの申し出になんとなく不信感を覚えたといい、私のところにご相談に来られました。

戸田さんが加入していたのは円建ての変額年金でした。死亡保障を持ちながら、老後資金を作る目的で加入したと言います。解約返戻金が、払い込み保険料の総額を上回る65歳頃をメドに解約するつもりだったそうです。
変額年金は、運用対象(特別勘定)を自分で選ぶことができ、運用実績に応じて、保険金額や払い戻し金額などが変動するものです。
戸田さんは、アメリカの株式と日本の株式をそれぞれ50%ずつで運用していました。
契約したのは2005年、保険料は月額約3万1000円です。保険証券には20年後の2025年の解約返戻金は、約690万円と記されています。
死亡したときには、1500万円が支払われます。

私は、以下のシミュレーション結果を戸田さんに見せました。
このシミュレーションは、契約をした期間は同じ2005年として、2022年2月末までで、毎月3万円ずつ、アメリカの株式と日本の株式の指数連動型の商品に、それぞれ50%ずつ積み立て投資をした結果です。
「2005年から月3万円」で618万円が1776万円に 累計投資額(配当再投資分は除く)は618万円。2022年2月末の時価総額は約1776万円となりました。
内部収益率法で計算した年率の利回りは10.96%です。
ここで使っている指数は、TOPIX(東証株価指数)と、アメリカの指数(S&P500にほぼ連動するMoringstarUS Large Cap)です。

実際は株価指数に直接投資することはできませんし、税金、手数料なども考慮していません。
あくまで一定の想定のうえでのシミュレーションであり、類似した投資信託で運用すれば年平均10%までは届かないかもしれません。
しかし、時間を味方につけて複利効果で資産を増やしていけば、ご覧のとおりかなりの成功と言ってよいと思います。
つまり、私がお伝えしたいのは、お金を増やす目的なら、「お金の置き場所は非常に大切です」ということです。

保険会社は、変額保険の保険料のうち、諸費用を控除した金額を特別勘定で契約者が選定した投資対象に投資して運用を行います。
保障と運用の両方にコストがかかるため、このように、どうしてもお金の増え方に差がついてしまうのです。
なお、このツールは、NPO法人「みんなのお金のアドバイザー協会」が無料で提供しているものです。
当ウェブサイトの「家計の資産形成応援ツール」にあります。

内外の株価指数に連動した定額積み立て投資の長期にわたるリスクとリターンを正しく理解していただく目的で、過去の株価データに基づいたシミュレーションをするために作成、公開されたものです。
このシミュレーション結果は、実際の投資信託などの運用商品の成績に一致したり、保証したりするものではありません(詳しくはHP掲載の注意書き等をお読みください)。

「保障」と「貯蓄」は別々に考える
端的に申し上げると、戸田さんはお金の置き場所を間違えたわけです。
保険は保障を目的に保つもので、保険ではなかなかお金は増えません。
保障と貯蓄は別々に考えるべきでした。
でも、過ぎ去ったことを後悔しても仕方がありません。
すでに支払ってしまって取り戻すことのできない費用(コスト)のことを経済学ではサンクコストといいますが、過去は忘れ、気持ちを切り替えて、お金を増やしていく合理的な方法をとりましょう。

今回のお話で行くと、やはりライフプランナーが戸田さんに新たに勧めているY社の変額年金も、お勧めできるものではありませんでした。
お金を増やす鉄則は、「長期、分散、低コスト」です。
投資対象をグローバルに分散し、運用コストを抑え、長く積み立て投資を続けることです。
税制優遇のある個人型確定拠出年金(iDeCo)や「つみたてNISA(少額投資非課税制度)」を、お金の置き場所として優先的に使うといいでしょう。
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2022年05月07日

ドンキで働くウクライナ避難民に密着! 見えてきた日本の支援の課題とは【WBS】

ドンキで働くウクライナ避難民に密着!
見えてきた日本の支援の課題とは【WBS】
5/6(金)  テレ東BIZ

ロシアによるウクライナ侵攻により、他の国に避難したウクライナ国民は500万人を超えていて、日本も現在820人の避難民を受け入れています。
日本では、避難民たちが希望すれば、1年間就労しながら滞在することが可能で、避難民の受け入れに名乗りをあげる企業も増えています。

WBSでは、大手ディスカウントショップ「ドン・キホーテ」が受け入れた避難民のクリスさんの密着取材を続けてきました。そこから見えてきた日本の課題とは?

東京・足立区のドン・キホーテの店舗「MEGAドン・キホーテ環七梅島店」。
ここで働くのがウクライナから避難してきたクリスさん(33)です。
この日は初の出勤日で「この日をずっと待っていた。早く仕事がしたかった」と話します。
クリスさんがウクライナを出国したのは3月上旬。
南東部の町から知人らとともに車や列車を乗り継ぎ、まずはポーランドに移動。
娘のレラちゃんと2人、義理の姉が住む日本にやって来たのです。

勤務は週4日、時給は日本人と同じ1050円。
日本語が話せないため接客ではなく、品出し作業がメインです。
通訳も交え、スタッフから棚に置かれている商品の番号と同じ番号の商品をその場所に並べるように指示がありました。
「番号は一緒だけど包装が違う」(クリスさん) 「ここ(番号)が一緒なら大丈夫」(店長)
クリスさんが指摘したのは季節限定商品と通常商品の微妙な違い。

「MEGAドン・キホーテ環七梅島店」の吉田千尋店長は「すごい熱意がある。覚えるのが早い」と話します。
スタッフも携帯電話に翻訳アプリを入れ、積極的にコミュニケーションを図ります。
「言葉にできないほどのサポート。日本語を覚えたら、必ず感謝の気持をみんなに伝えます」(クリスさん)

クリスさんが住んでいるのはドン・キホーテが用意した都内のアパートで賃料は無料。
マットレスや家電、生活用品なども提供されたものです。
「家の提供と家賃の負担をしてもらい、本当に救われた」(クリスさん)
ただ決して生活が楽なわけではありません。

政府は日本に身寄りのないウクライナの避難民に対しては1日最大2400円の生活費を支給していますが、クリスさんの場合、義理の姉が日本で暮らしているため支給の対象外。
10万円に満たない月給でやりくりをしないといけないのです。
クリスさんはできる仕事を増やすため、娘とともに日本語の勉強を必死にしていました。
日本の企業で働きながら自立して生活したい。
そう考えるクリスさんは通訳の付き添いを断り、一人で仕事を始めていました。
ところがお客さんから話しかけられても何も答えられません。
「海苔はもうない?」(お客さん) 「すみません」(通訳)

結局、見かねた通訳が飛んできてお客さんに謝ることに。
「お客さんに声をかけられていたけれど?」(番組スタッフ) 「言葉が分からないから、聞かれてもなんと答えればいいか分からない。罪悪感がすごい…」(クリスさん)

避難民ではなくなったとき日本は受け入れてくれるのか
クリスさんが働き始めてからおよそ1週間。日本での安全な暮らしに感謝しながらも不安は尽きないといいます。
現地に残してきた夫の安否がなにより気がかりでした。
「夫は穏やかな人。金属加工の工場で働いている。4日前にその工場の近くに爆弾が落とされた」(クリスさん)
先月の娘のレラちゃんの5歳の誕生日でも、誕生パーティーに夫が参加することはできませんでした。
クリスさんがいま願うのは、夫とともに家族3人で日本に住むことだといいます。

「夫が日本に来ることが可能なら日本に残りたい。
ただ夫がウクライナを出られるのは戦争が終わったとき。
避難民ではなくなるけれど、日本は受け入れてくれる?
もし夫が日本に来られなかったら、私たちはウクライナに帰らざるを得ない」(クリスさん)

ウクライナ避難民の受け入れを決めた日本政府は今後こうした問題に直面することになります。
難民支援協会の石川えり代表理事は「戦争終結後にどのような在留資格が保障されるのか、続いていくのかは今の段階では分からない。
家族を呼び寄せられるかも不透明。
先が見通せないことで『日本にこのまま居ていいのか?』と、日本語を勉強して定住していく意欲をそぐことになってはいけない。
本人が見通し可能な制度・情報を提供していくべき」

先行きの見えない毎日を懸命に生きるクリスさん親子。
それでもクリスさんは前を向いていました。
「夫が日本にくる夢を実現するために私はここで全力を尽くす。素晴らしい日本で生きていきたいから」(クリスさん)

 ※ワールドビジネスサテライト
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2022年05月09日

「ウクライナ紛争は対岸の火事にあらず」元陸自トップが見たロシア侵攻 自立自衛の必要性

「ウクライナ紛争は対岸の火事にあらず」元陸自トップが見たロシア侵攻 自立自衛の必要性
2022年05月08日 乗りものニュース

ロシアが侵攻を開始してから2か月が経過してもなお、先行きが不透明なままのウクライナ情勢。
国連の常任理事国で、かつ核兵器の保有国である大国ロシアが起こした紛争の怖さを元陸自トップがひも解きます。

独立直後から始まっていたウクライナの政治対立  
ロシアがウクライナに侵攻を開始してから、早くも2か月が過ぎました。
双方とも停戦で合意することはなく泥沼の様相を呈しています。
 今回の侵攻は「決して他人事として捉えるべきではない」。
こう話すのは第32代陸上幕僚長を務めた火箱芳文(ひばこ よしふみ)氏です。
元陸自トップに、ロシアのウクライナ侵攻とその影響について聞きました。

――ロシアがウクライナに侵攻を開始してから早くも2か月が経ちました。そこで改めて伺います。なぜロシアはウクライナを攻めたのでしょうか?

 それについては、時計の針を戻して1991(平成3)年のソ連邦崩壊からお話しした方がよいでしょう。
ソ連邦時代、ウクライナ領内にはソ連軍の核兵器も配備されていましたが、ウクライナが連邦から分離独立するにあたり、核兵器は放棄するなど、さまざまな条件が付与された軽武装国家として歩むことが定められました。
 これにより、当初は軍事的には中立を保持していたものの、その後に行われる大統領選挙では親ロシア派と親欧米派が対立を続けていくことになります。
そして訪れたのが、2004(平成16)年の大統領選挙の不正に端を発した「オレンジ革命」です。
このとき、親欧米派のユシチェンコが大統領に選ばれNATO加盟に傾くかに思えたのですが、政権内部の抗争により彼が支持を失った結果、2010(平成22)年の大統領選挙では親ロシア派のヤヌコヴィッチが大統領に返り咲きます。
これによりウクライナはNATO加盟を自ら拒否しました。

 ところが2014(平成26)年の大規模な反政府デモ、いわゆる「ウクライナの騒乱」により親ロシア派のヤヌコヴィッチがロシアに逃亡したことで同政権が崩壊。
再び親欧米派のポロシェンコが大統領に選出されたことで、非同盟方針を改め、NATO加盟に舵を大きく切ったのです。
加えて、この選挙戦ではヤヌコヴィッチを支持する東部地域のロシア系住民に対して西欧の支援を受けたポロシェンコの支持者たちがロシア系住民を虐殺するという悲劇を起こしています。

プーチンがウクライナ侵攻を決断した2人の発言
 これに猛反発したのがロシアのプーチン大統領です。
ウクライナのNATO加盟阻止と、東部ドンバス地方のロシア系住民への虐待を阻止するという名目で、3月にロシアはウクライナ領であったクリミア半島をほぼ無傷のまま占領併合します。
しかも、翌4月には親ロシア派武装勢力がドンバス地方においてウクライナ軍との間で戦闘を起こし、これにより東部ドンバス地方にドネツク人民共和国、ルガンスク人民共和国を創設したのです。
このとき燻った民族対立が、今回の紛争の火種となったと言えるでしょう。

 2019年にはNATO加盟を公約にして、現大統領のゼレンスキーが当選しています。
彼は憲法を改正してEUとNATO加盟を目指し、2021年9月にウクライナはNATO15か国と軍事演習まで実施し、NATO加盟への準備を整えるに至りました。
しかもアメリカなどは対戦車ミサイルを始めとした各種武器を供与してウクライナを公然と支援するようになります。

 この頃のNATOはロシアの影響が強い東方に勢力を拡大しており、NATOとロシアは激しく対立していました。
そのような中でウクライナとNATOが親密化したため、プーチン大統領の警戒は強まり、10月にはウクライナ国境に10万人規模の兵力を集めて大規模な演習を実施したのです。
ただ、こうしてウクライナへ圧力を強めたことが、かえってウクライナ側の反発を招いたと言えるでしょう。
 ただ、プーチン大統領が侵攻開始を決断するに至ったのには、次のふたりの発言が挙げられます。

欧米諸国は、ロシアが直接的な侵略行動に踏み切ることはないと判断していたため、アメリカのバイデン大統領は2021年12月8日、プーチン大統領と会談したのち「ウクライナで戦いが起きても米軍派遣は行わない」と全世界に発表しています。
加えてNATO事務総長も「ウクライナには部隊を派遣しない」と明言しました。
これら発言によりプーチン大統領はアメリカを始め、NATO諸国の直接介入はないと確信した結果、ウクライナ侵略を決心したと考えられます。
こうして2022年2月24日、ロシアはウクライナへ侵攻を開始したのです。

 プーチン大統領が求めるのは、NATOの東方拡大阻止と、ウクライナを旧ソ連時代の状態に戻すことです。
ウクライナを親露化させロシアの支配下に置き、地理的にNATOとロシアの緩衝国にしておきたいのです。

日本が危機感を持たねばならない理由
――今回のロシアによるウクライナ侵攻を鑑みたとき、対岸の火事とは言えない、日本が危機感を持たねばならない点があるとお聞きしました。

 私(火箱芳文:第32代陸上幕僚長)が伝えたいのは、今回の侵略紛争は、核大国で、かつ国連の常任理事国であるロシアが、非核保有国で軍事的には軽武装国家であるウクライナに対し、真正面から武力による侵攻を行ったという点です。
 国連憲章には「侵略戦争を否定し、国連が許す戦争は国連安保理が容認する懲罰的戦争と自衛の戦争」と書かれており、これに照らし合わせると、今回の侵攻は明白な国連憲章違反です。
しかし、いかなる国もロシアの侵略を止めることはできませんでした。

 そもそも、国連(国際連合)は第2次世界大戦後に米・英・仏・ソ(現ロシア)・中の戦勝国が作ったものですが、その中心国で、かつ安保理の常任理事国であるロシア自ら国連憲章を破ったと言えるでしょう。
 これに対し、アメリカは、NATO諸国とともに対戦車ミサイル、装甲車、榴弾砲、弾薬武器などを供与するとともに、情報も提供してウクライナを積極的に支援しています。
しかし、軍隊は一切派遣していません。
 これはウクライナがまだNATOに加盟していないため、集団安全保障の対象国ではないからだともいえますが、一番大きな理由はロシアが核を保有している核大国だからでしょう。

 核大国との軍事衝突は核戦争に発展する可能性があるから避けたと思われます。
翻って、現在、日本の安全保障にとって一番の脅威といえる中国ですが、台湾有事の際は尖閣諸島を含む南西諸島が同戦域に入るため、日本の有事にもなり得ます。

日本有事でアメリカが参戦してくれないリスク
 台湾有事で南西諸島が戦域となった場合、直ちに自衛隊が対応するでしょう。
一方で、アメリカは日米安保条約に基づき行動を起こすことになっているものの、どこまで支援してくれるかは、時の大統領の考え如何で変わる可能性があるのです。
 同盟が成立するには、価値、利益、リスクの共有がなければあり得ません。
日米が価値や利益を共有していても、尖閣有事の際の相手は中国だとなると、核大国の場合何らかの支援はするものの、直ちにアメリカ軍を派遣して日本を守る行動を取ってくれるかどうかは極めて不透明だと言わざるを得ません。

 今回のウクライナに対するアメリカの対応から日本はリスクを考えておく必要があります。
従って、南西諸島エリアの防衛については、まず日本単独で防衛する体制を整え、その上でアメリカ軍の支援を受ける体制を構築するという、共同作戦計画の立案が急務だと考えます。

 ウクライナは、ソ連邦崩壊後、米・英・ロとの間で安全保障の保証を得るとの覚書に署名し中立的立場で独立しましたが、自国は自ら守るということを軽んじてきた結果、ロシアの大規模な侵略を許してしまったと言えます。
これからは、この冷厳な現実を直視し、日本は自立自衛のできる国造りに励む必要があります。
 国の安全をアメリカ頼み、国連中心主義におくのではなく、自分たちの国は自分たちの力で守るということを改めて覚悟すべきなのです。
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2022年05月10日

格差を語る人なら絶対押さえたい「共感」の要点、「資本主義」自体を否定してもしょうがない

格差を語る人なら絶対押さえたい「共感」の要点、
「資本主義」自体を否定してもしょうがない
5/9(月) 東洋経済オンライン

格差って、ダメなの?  それとも必然か! 
どういう原因で生じてくるのか、どういう格差が問題なのか? 
どういう条件の下でだったら、どの程度の格差は許容できるのか?  そして、正義の基準とは?

  いまや避けて通れない格差問題。
近年、重要な学問のキーワードになりつつある「共感」とはなにか、を軸に、最近刊行されたばかりの『〈学問〉の取扱説明書』改訂第二版に沿って、議論の道筋を、整理してみましょう。
現代思想の紹介や丁寧なテクスト分析でも定評のある仲正昌樹氏が、大学4年生(♂)と博士課程に在籍する自称“高学歴ワーキングプア”(♀)の質問に答える問答形式で、学問の基本やそのツボを伝授します。

 ■格差社会に「共感」できるか!?   ♀
♀:「共感」しないと、そもそも社会的正義についての議論がはじまらないのでは?   

仲正昌樹(以下、仲正):
「社会的正義」について議論する以上、その原点に「共感」があるのではないか、という議論はそのとおりだと思います。
ロールズは「無知のヴェール」の下での選択においては、自己チューな選択と、社会的公正について各人が何となく抱いている「正義感覚」が一致すると考えました。
無知のヴェールの下で「社会的に最も不利な立場にある私」の視点から考えるというのは、「共感」論であるとも言えます。  アダム・スミスも『道徳感情論』(1759年)において、市民社会の中での道徳の基礎として、苦しんでいる人たちに対する「共感」を設定しています。
ちょっとだけ説明しておくと、スミスは人間にはもともと、他者の立場に我が身を置いて共感する能力があるけれど、市民社会の中での多様な経験を通して、いろいろな人の立場に立って公平=非党派的に(impartially)考えることができる能力が培われていく、という議論をしています。

 最初はどうしても、自分にとって共感しやすい人への共感に偏っている(partial)けれど、様々な立場を経るうちに、次第に公平になっていくというわけですね。
井上達夫さんや宮台真司さんが、リベラリズムの正義論の基礎だとしている「立場の入れ替え可能性(互換性)」、つまり「その(苦しんでいる)人と立場を交換したとして、あなたはそれに耐えられるか?」という可能性の考察も、スミス流の「共感」論の延長線上にあるのではないかと思います。
 そうやって正義の原理としての「共感」を再発見しようという発想には私も賛成なのですが、問題は、特定の形での「共感」を議論の出発点に置いてしまうことにあります。
正義感覚の原点にあるかもしれない「共感」を再構成することは重要ですが、絶対的な出発点にしてしまうとおかしなことになる。
 マルクス主義的左翼はマルクス、エンゲルス、レーニンなどが残した主要テクストに基づいて、「格差は人間本性(=労働)に反する」「このまま格差の原因である資本主義を放置すると、世界的破局が来る」というような議論を正当化しようとしていたわけです。
理論を重視する左翼は少なくとも建前としては、共感それ自体を直接的に押し付けるのではなくて、自分たちの理論装置の有効性を証明しようとしていた。
その証明の仕方が乱暴的だとしても、いきなり共感を求めてくるよりはずいぶんましです。

■「苦しんでいる労働者」への共感  
♀:でも、マルクス自身の思想の原点にも「共感」があったのではないでしょうか? 

仲正:
マルクス個人の心情は本当のところ分かりません。
マルクスの個人の生き方については、マルクス研究者で有名な的場昭弘(1952―)さんがいろんな本や論文を出しておられるので、そういうものを読んでいただいた方がいいと思いますが、少なくとも、マルクス主義という思想運動の原点に、「苦しんでいる労働者」への共感があった、という言い方はできると思います。

 ただ、そこで忘れてはならないのは、マルクスは共感をそのまま思想にしようとはしなかったことですね。
今では共産党でさえ、あまり使わなくなりましたが、「科学的社会主義」という言い方がありました。
マルクス以前のフーリエ(1772―1837)とかオーウェン(1771―1858)は、科学的な思考に基づかない「ユートピア的社会主義」だったけど、自分たちは科学的で批判的な思考に基づく「科学的社会主義」だというのです。
 もちろん、昔の左翼学生の中には、「科学的社会主義」を信奉している自分たちは知的だと決め付けて、傲慢になっていた者も多かったわけですが、科学的、あるいは学問的な議論をしようとする姿勢自体は重要だと思います。

仲正:
これはマルクス研究者がよく言うことですが、疎外論にこだわっていた初期のマルクスは、ドイツ観念論の影響から完全に脱皮していなくて、かなり主観的な、つまり労働者の現状に直接的に共感するような議論をしていた。
けれど、次第に、人間本性からの「疎外」に見える状態を生み出している構造的要因を客観的に分析するようになり、アダム・スミス的な労働価値説によって成り立つ世界の歪みを把握するに至った。
単なる共感≠フままに留まらないで、その共感の正体を解剖していって、「交換」「貨幣」「資本」「労働」などをめぐる資本主義的世界の構造的問題に行き当たり、そこからその構造的な歪みを正すための理論体系を構築することを試みた。
自分を共感させたものを、必ずしも同じ様に共感してくれない人でも理解できるように、理論的な言語として定式化しようとしたんですね。
 そうやってマルクスたちが、共感の根源にあるものを説明するために創り出した概念群が、19世紀後半から20世紀前半にかけての西欧の経済・社会的矛盾をうまく説明し、現状からの脱出口を示しているように見えたわけです。

■労働価値説はもう通用しない
 しかし、20世紀の終わり頃になったら、肝心の「労働」という概念が多様化し、人類を2つの階級に分けることが難しくなった。
単純に、肉体労働だけが価値の源泉である、とする労働価値説はもう通用しない。
貧困層が増えているといっても、それに伴って、資本家階級がどんどん没落しているわけではない。
 現代ではほとんどの大企業が株式会社になっているので、1つの企業を資産として丸ごと所有している資本家はほとんどいません。
大企業が大株主として他の企業を支配しているのであれば、大企業の重役が資本家に相当すると見る人もいるかもしれませんが、株で資産運用しているのは大企業だけとは限りません
年金とか保険などの福祉関連のお金も直接的・間接的に入っています。

 企業が所有している株の運用益も、その企業の労働者の賃金や福利厚生に回っているということがあります。
各企業が発効している株の配当や運用益のうちのどれくらいが純粋に、大金持ちの個人の懐に入っているのかなどは正確には分かりません。  

仲正:
こういうのは、東欧の社会主義諸国が崩壊するずっと前から言われていたことです。
では、なぜ私がそんな分かりきったことを言っているかというと、マルクスと同じような思考回路で、人々を苦しめている矛盾≠フ根源まで遡ろうとしても、ダメだからです。
マルクスは労働者の苦しみを生み出しているものを、スミス的な意味での労働価値説を基礎に成り立っている「世界」の基本構造の中に見出そうとしたわけですが、我々が生きているのは、そういう分かりやすい世界ですか? 

■誰かを「資本家」と名指ししたって、あまり意味がない
 「資本家」のような搾取の究極の実体のような存在がいるのであれば、それを除去することによって、構造的な矛盾≠解消するという解決策が考えられますが、現状では、誰かを「資本家」だと名指ししたって、あまり意味がない。
「資本家」ではなく、「資本」に問題があるにしても、「資本」をなくして、全て物々交換にするというわけにもいかないでしょう。
「資本」に相当するものが全くなかったら、「生産」を組織化するのが困難になり、社会の中での「物」の流れが止まります。

♂:格差社会を批判している人たちもそういうことは本当は分かっているんじゃないですか? 

仲正:
ごく一部の本当にバカな人を除いて、ほとんどの人は「資本主義」自体を否定してもしょうがないことは分かっているでしょうね。
「マルクスの時代と同じ問題がある」とか「蟹工船状況だ」と言っている人も、多くの場合、レトリックとして言っているのでしょう。
そういうレトリックを使わないと、苦しんでいる人に対する共感と表裏の関係にある悪に対する怒り≠ぶつける場所がなくなる、と思っているのかもしれません。

♂:だったら、それほど問題ないのでは? 

 レトリックだらけになっていて、しかも先ほどお話ししたように、特定のレトリックを強制するような傾向が強まっていることが問題なんです。
資本家であれ政治家であれ、あるいはアメリカの白人富裕層であれ、労働者を不当に搾取しているという意味で「格差」の元凶であり、なおかつ世界経済にとって百害あって一利なしの寄生虫のような人たちを1つのカテゴリーできれいにくくれるのなら、それを声高に攻め続ければいいと思います。
 マルクス主義はそれをやり続けたわけですから。
でも、昔のマルクス主義と同じ感覚で、分かりやすい「敵」を名指しして糾弾しても、その名指しされた「敵」にあまり実体がないのは見え見え。
純粋に「搾取」だけして、生産性がゼロの存在がそんなにたくさんいるわけないでしょう。

仲正 昌樹 :金沢大学法学類教授
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2022年05月11日

岸田首相を悩ませる「3つのチン」…自民楽勝ムード漂う参院選に不安要素ジワジワ

岸田首相を悩ませる「3つのチン」…自民楽勝ムード漂う参院選に不安要素ジワジワ
5/10(火)  日刊ゲンダイ

 参院選の公示まで50日を切った。
就任以来、岸田首相はナーンもしていないのに内閣支持率は高め安定。
そのうえ野党がバラバラで足を引っ張り合っている状況で、自民党内には早くも楽勝ムードが漂っている。
 だが、余裕をカマしていられるのは今のうちだけかもしれない。

「選挙は魔物。甘い見通しの時ほど危ない。実際、ここへきて不安要素がジワジワ大きくなっているように感じます」(自民党ベテラン議員)
 岸田首相を悩ませるのは3つの“チン”だ。

 まず“ワクチン”。
首相官邸のデータによると、5月5日時点で3回目のワクチン接種を終えたのは国民の53.6%にとどまり、特に若者世代の接種率がなかなか増えない。
各地で人出が増えたGWを境に、新型コロナの感染者数は増加傾向にある。
参院選前に感染爆発の第7波で死者数が増加すれば、岸田政権の無策に批判の矛先が向かうのは確実だ。

物価高が庶民生活を直撃  
2つ目は“プーチン”の戦争が長期化しそうなこと。
世界的に石油やガスなどのエネルギー資源や、小麦の価格が高騰しているが、今後ますます拍車がかかる。
円安も進み、エネルギーや小麦を輸入に頼る日本はジリ貧だ。
物価高が庶民生活を直撃するのは目に見えているのに、岸田政権は有効な対策を講じようとしない。

 物価と同様に賃金も上がっていればいいのだが、日本は自民党の失政で賃金が上がらない国になってしまった。
この“チン上げ”問題は、夏の参院選で与党への大きな逆風になりかねない。
 賃金が上がらないのに、税金や保険料の負担は増える一方で、可処分所得が減っているところへ物価高が家計を圧迫。
岸田首相は外遊先で「預金から投資へ」なんて大見えを切っていたが、国民の金融資産を吐き出させる経済政策のどこが「新しい資本主義」なのか。
カツカツで預金もままならない庶民の実態がまるで分かっていない。
「石油価格が上がれば、輸送コストなどにも影響が及び、あらゆるサービスが値上がりしていく。

夏が近づいてエアコンの使用頻度が増えれば、電気料金の高さにも驚くことになるでしょう。
企業の負担も大きく、賃上げどころではなくなる。これまでは目先の“やってる感”だけで高支持率を保ってこられましたが、無策のまま国民生活を放置していたら、不満が噴出しかねません」(政治ジャーナリスト・角谷浩一氏)
 ちょうど参院選の頃に、物価高による痛みが一気に顕在化。岸田自民は3つの“チン”への対応に苦しむことになりそうだ。
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2022年05月12日

報道を見てつらい人の心の対処法

上島竜兵さん突然の訃報
 報道を見てつらい人の心の対処法
5/11(水) YAHOOニュース
海原純子博士・心療内科医・産業医・昭和女子大学客員教授

お笑いタレントでダチョウ倶楽部のメンバーの上島竜兵さんが亡くなったことが分かりました。
自殺とみられるとも報じられショックを受けたという声を聞きます。
最近は俳優の渡辺裕之さんがなくなったこともあり、働き盛りで元気に活躍していると思っていた方たちの突然の自殺ということで、実際に面識はなくてもテレビで活動を見て身近に感じていた方には衝撃になります。

身近に感じていた人の死に接した時、どのように心を保ち癒すかについて考えます。

まず気をつけたい「ネガティブな同一化」
実際に面識がなくても身近に感じている人の自死の場合、気がかりなのが「ネガティブな同一化」です。
上島さんの訃報報道を見て自分もゆううつになったという方はこうしたネガティブな同一化に陥っているリスクがあります。

身近な方の死により、身体的不調をきたしたり、自分も死にたくなったりすることが多くなることがあります。
これがネガティブな同一化です。
特に同じような年代の方にとって衝撃は大きく、コロナ禍の影響が続いたなかで過ごしてきた方は「上島さんのように元気そうに活躍している人が急に亡くなるということは、自分などはうまくいくわけがない」というように感じてネガティブな同一化を起こしてしまうリスクがあります。

どう対処すればいい?
まずは「言語化」をお勧めします。
言葉にしてつらい気持ちや悲しい思いを表現することが大事な癒しへの一歩になります。
「実際には知らないけれど身近に感じている人がなくなるとつらいね」というように、つらさを表現することは大事です。
同じ思いをしている方は多いと思います。
ただ「何かあったのか」「コロナ禍が影響したのか」など憶測や詮索をすると、さらに気持ちが落ち込む原因にもなります。

「言語化」が苦手な人はどう対処?
上島さんと同年代の男性の方はつらくても我慢して人に助けを求めたりつらいと言えない傾向が大きいといえます。
つらくても平気な顔をして振舞ったり、つらさを紛らわすためにアルコールの力を借りたりすることも多いものです。
また年代は異なっても、ご自分には気持ちを抑え込む傾向があると思う方は身体を動かすことも大事です。

言語化が難しい、つまり言葉で表現するのが苦手な方は、身体を動かすことが感情の表現になるからです。
5月の季節に気をつけたい自律神経の調節 ロシアのウクライナへの侵攻や、知床の遊覧船の事故など暗いニュースが多い昨今、しかも気温も定まらず身体が気候の変化に適応しにくい季節です。
また連休明けということもあり、自律神経の調整が難しい時期です。

自律神経の調整がうまくいかないと体調が定まらず身体の不調により心が落ち込むことが多いので体調管理が特に重要です。この時期に心をケアするために次のような対策があります。

1.深呼吸とストレッチを朝、昼、夜の決まった時間に5〜6分ずつ行う
2.朝窓を開けて太陽の光を浴びる
3.散歩したり運動したりする時間を毎日20分ほど作る
4.公園など自然と触れ合う時間を定期的に作る

特に太陽の光のバイオレットライトは脳代謝に影響し、うつ予防の効果があると報告されています。
晴れ間を利用して戸外を散歩することなどをお勧めします。
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2022年05月13日

「傷ができたらまず消毒」はNG!?「傷ケア」の新常識

「傷ができたらまず消毒」はNG!?「傷ケア」の新常識
「鼻血・あかぎれ・虫刺され」のときの対処法は?
2022/05/12 東洋経済オンライン

消毒する?しない?
 暖かくなり外遊びをする機会が増える今は、転んだり、ぶつけたり、子どものケガが増える時期でもあります。
GWに子どもがケガをして慌てた人もいるでしょう。
そこで気をつけたいのが傷のケア方法。

昔、自分がしてもらったことをそのまま子どもにしている、という方は要注意です!
 以前は常識だとされていたことが、今では非常識になっていることも。
そこで今回は、「つながる ひろがる 子どもの救急」代表で、竜美ヶ丘小児科 小児救急看護認定看護師の野村さちいさんに、傷ケアの新常識について教えていただきます。

【すり傷、切り傷の対処法】

──昔は…… オキシドールで消毒しヨードチンキ(マーキュロクロム液、赤チン)を塗布しガーゼを貼る。もしくは何も貼らずに傷を乾燥させかさぶたをつくって治すのが一般的だった。
──今は…… ほとんどの傷の場合消毒は不要。
傷を水道水で洗い、早くきれいに治せる「湿潤療法」(モイストヒーリングタイプ)のばんそうこうを貼るのがおすすめ。
ばんそうこうにも傷や目的に適した種類がある 「1990年代は乾かして治す方法が主流でしたが、それだと治りが遅く、傷が残ってしまう場合もあります。

ほとんどの傷の場合、消毒は皮膚の傷を治そうとする皮膚の細胞に影響を与え、逆に治りを遅くすることも。
消毒液による殺菌効果は一定時間しか持続せず、体液の働きを弱めてしまうため実はNGなんです。
また、よく見る肌色タイプの一般的なばんそうこうは、傷の保護をするものであり治癒するものではないため、早く治したい場合にはモイストヒーリングができる治癒タイプのばんそうこうを選びましょう。

なお、ばんそうこうを使用した湿潤療法が適しているのは、紙で指などを切るようなきれいな切り傷、軽い火傷(皮膚が赤くなっている程度で水疱のないもの)、靴ずれ、といった感染のリスクのない傷口です。
ぱっくり裂けた傷や動物などに噛まれた傷、釘などの刺し傷、水疱ができるくらいのひどい火傷、汚染の強い傷などは自宅での湿潤療法は向かないため、まずは病院へ行ってください。
また、モイストヒーリングが行えるばんそうこうを貼ったあとも、2〜3日に1回は貼り替え、傷を観察し、感染を示す症状(傷口の周りが赤くなったり、ズキズキする痛みが続いたり、ウミをもっていたり、熱や腫れなどの異常が認められること)がないか、確認を!

昔は『唾を塗っておけばいい』という方もいましたね。
唾液には抗菌作用のある酵素や傷の修復作用があるので、まったくの気休め的な話……というわけでもありませんが、現在ではそのようなことは行っていません。

正しい知識として『消毒はせず、水道水で傷口を洗い流し、モイストヒーリングが行えるばんそうこうを貼る』と覚えておくとよいでしょう」(野村さん)

【鼻血の対処法】
「上を向くと血を飲み込んでしまい気持ち悪くなったり、血が流れ込み気道をふさいでしまったりすることも。小鼻をつまみ座って下を向き、目と目の間のおでこを冷やすと5分程で鼻血が止まります。
横になるときも顔は下に向けるようにしましょう」(野村さん)

知っておきたい、あかぎれや虫刺されの対処法
【あかぎれの対処法】
「あかぎれは傷なので、すり傷などと同様、水道水で洗い、湿潤療法(モイストヒーリング)が行えるばんそうこうを貼りましょう。
日ごろからハンドクリームや軟膏で手を保湿することも重要。
手指消毒や手洗いを頻回に行っている今はとくに、水気をしっかり拭き取るだけでもあかぎれになるリスクを軽減することができますよ」(野村さん)

【虫刺されの対処法】
「子どもは大人よりも症状が強く出て、腫れやすく、長引きやすい特徴があります。
刺された部位を触ったり、激しくかいてしまうことで化膿してしまうこともあるので、むやみに触らず、洗うなど清潔にして薬を塗布しましょう。

ハチは、以前刺されたことがある方はアレルギーが出ることがあるので、とくに注意が必要です。
皮疹や呼吸困難感などアナフィラキシーの症状などが出た場合は救急車を呼んでください。
ミツバチに刺された場合は、刺し口をよく見て針が残っていれば取り除きましょう。

マダニの場合は針を取り除かず、そのまま病院へ。暑い時期は虫刺されからとびひになることもあります。ジクジクしたかき傷が広がってくる場合は小児科を受診してください」(野村さん)

昔と今では対処法がまったく異なる場合があるので、知識をアップデートしていくことが必要なんですね。

 ──お出かけに常備したい!「キズパワーパッド」
傷を治す成分を含む体液を傷口に保ち、傷を早く治してくれる。傷跡の原因となるかさぶたをつくらず潤いを保つため、きれいに治るのもうれしい。
ジョンソン・エンド・ジョンソン バンドエイドR キズパワーパッド™ ひじ・ひざ用 3枚入 (オープン価格)

野村さちい/「つながるひろがる子どもの救急」代表/竜美ヶ丘小児科 小児救急看護認定看護師 1998年看護師免許取得、小児看護歴20年以上。2013年に小児救急看護認定看護師を取得後はクリニック、地域で勤務。
NHK「すくすく子育て」出演や小学館ベビーブック掲載等、保護者へ正しい情報を伝えることを目標に活動中。
地域に出て行き保護者とのコミュニケーションの中で伝えることをモットーにしている
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2022年05月14日

芸能人の自死関連報道は絶対に見てはいけない訳

芸能人の自死関連報道は絶対に見てはいけない訳
臆測混じりの推察は危険、「相談窓口」誘導への疑問
2022/05/12 東洋経済オンライン
木村 隆志 : コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

ダチョウ倶楽部・上島竜兵さんの訃報が伝えられた5月11日の朝以降、テレビの情報番組は大半の時間が割かれ、ネット上のエンタメ記事を埋め尽くすなど、関連ニュースが次々に報じられています。
12日に入っても朝からビートたけしさん、出川哲朗さん、山田邦子さん、松本人志さんらの追悼コメントが次々に報じられているほか、出演番組での姿を振り返り、ギャグなどの芸を紹介し、芸人仲間との絆を採り上げ、著書のコメントをピックアップし、なじみの飲食店スタッフや恩師に話を聞くなど、さまざまな角度からの報道が見られます。

また、自宅へ押しかけるなどの報道姿勢は論外でしたが、それ以外でも、暗に死を選んだ背景を探るような報道が少なくありません。
さらに、俳優・渡辺裕之さんに続く訃報だけに、関連性の有無や連鎖の不安を採り上げるような報道も見られます。
しかし、芸能人の自死にまつわる報道は、見るほどに自分へのリスクが高まる怖いもの。
ショックや悲しさがあっても、できるだけ見ないほうがいいものであり、その理由を2万組超の悩み相談を受けてきたコンサルタントとしての経験、また、メンタルヘルスの取材を続けてきた経験をもとにつづっていきます。

情報がなくても長尺で放送したい
現在、最も目につくのは、「コロナ禍で芸がしづらくなったのでは」「志村けんさんの死去が影響しているのでは」などと死の背景を推察するメディアの多さ。
「それが今回のことと直接結びつくかどうかはわかりません」などの断りを入れつつ、さぞ意味ありげな報じ方をしているのです。
しかし、今それらを急いで推測することで、人々のショックや悲しさを増大させる必然性はどこにもありません。
むしろショックがやわらいだあとに落ち着いた状態で掘り下げていくほうが、故人を偲び、情報の正確性を上げることにつながるでしょう。

ショックを受けた人が多い中、急いで報道を続けるメディアが多いのは、ビジネス的な要素が大きいことを知っておいてほしいのです。
たとえば、今回の上島さんの関連報道でも、ほとんど情報がなかった11日の段階から、リポーターを自宅前に向かわせたり、専門外で親交がないコメンテーターたちに語らせたりなどの内容の薄いシーンが目立ちました。
これは情報番組の制作サイドが、「長尺で扱うほど全体の数字が上がる」「できるだけ長い時間放送しよう」と考えているからにほかなりません。

事実、これまで芸能人の自死に関わるニュースがあったとき、ある情報番組のプロデューサーと編成担当から直接そのような本音を聞いたことがあります。
メディア側も批判を避けるために、以前よりも関係者への取材を減らし、感動寄りの内容を増やすなどの配慮を見せるようになりました。
ただ、彼らも仕事とは言え、極めてセンシティブな内容だけに、「配慮すればいい」というものではないでしょう。
特に今回は、妻の広川ひかるさん、ダチョウ倶楽部の肥後克広さんと寺門ジモンさん、「竜兵会」の有吉弘行さん、土田晃之さん、劇団ひとりさんらがコメントすら出せない状況だけに、憶測混じりの報道を重ねることは明らかに過剰。
偉大な足跡を語り、故人を偲ぶのはもう少し先でいいはずであり、あまりにビジネスの要素が強すぎるのです。

自死が「ありえる」に変わる怖さ
そんなメディアの報道姿勢よりも怖いのは、「本来自分とは縁遠いものだったはずの自死が少しずつ身近なものになってしまう」こと。
好き嫌いを問わず知っている人の自死には、少なからず自分への影響力があり、上島さんのような有名人であればなおのことでしょう。
たとえば、「自分は自死なんてしない」と思っている人も、「あんなに明るい人で仕事や人望もあった人なのに」という意外性を感じてしまうと、心の奥に「自分もそういう可能性はあるのか?」という小さな疑問が芽生えてしまうものです。
あるいは、「自分たち一般人と同じような悩みがあったのかな」などと親近感を抱いてしまうことは、もっと危険。
自死の連鎖につながるリスクが高まります。

いずれにしても、自死報道を見るほど、心の中に少しずつ自死という選択肢を植え付け、それを選ぶリスクを高めてしまいかねません。
そんな心理状態の根底にあるのは、自死報道がショッキングなだけでなく、「起きたばかりの事実」であり、「芸能人は知っている人」だから。
縁遠かったはずの自死が、自分にも起こりえる可能性がある生々しいリアルなものとして心の奥に認識されてしまうのです。

これまで何度か、家族、友人、恋人が自死した相談者さんの悩み相談を受けてきましたが、ほとんどの人が「自死なんてする人ではないと思っていた」などとショックの大きさを語っていました。
また、ある人は「本当に自死するつもりはなく、衝動的だったのかもしれないし、だから『自分はない』とは言い切れない」と言っていたのです。
つまり、身近な人が自死を選んだ場合、「周囲の人々にこんなに悲しい思いをさせてしまうのだから自分は絶対にしない」と思う一方で、「選択肢の1つとして心に刻み込まれてしまう」ということでしょう。
「ありえないもの」が知らぬうちに「あるかもしれないもの」に変わり、「もともとすべての人間が自死という選択肢を持っている」ことを自覚してしまうのです。

日ごろ相談を受けていると、悩みの程度が軽い相談者さんの中にも、「『死んだら楽になれるかな』と思ったことがある」という人が少なくありません。
「死んでしまいたい」とまでは思わないけど、「死んだら楽になれるかな」という思いが頭をよぎる人たちがいるのです。
実はそれくらい自死は身近なものだけに、できるだけ遠ざけておかなければいけません。
余談ですが、人々の悩み相談を受け続けてきた私は、自死という選択肢が頭の中に刷り込まれていて、これを消すことはもはや不可能でしょう。
だから、たとえば肉を食べるときや、虫を退治したいときに、毎回ためらってしまうほど、つねに生と死に向き合いながら生きることで、その選択肢を遠ざけようとしています。

ファンでなくても連鎖はありうる
そしてもう1つ、みなさんに覚えておいてほしいのは、目につかないところで自死の連鎖が起きていること。
身近な人に先立たれたとき、人は自死というものを強く意識するようになりますが、芸能人の自死に関しても連鎖がつきものであり、一般人への連鎖は報じられないだけで静かに進んでいきます。
しかも怖いのは、連鎖が及ぶのがファンだけではないこと。

特にファンではなくても、「この人も自分と同じ気持ちだったのかな」などと自分に関連づけて親近感を抱き、後追いしてしまう人がいるのです。
たとえば、上島さんに対しても、コロナ禍を原因として決めつけたうえで、「自分も苦しめられているから」と関連づけ、自死を選ぶきっかけにしてしまう危険性は否めません。

その連鎖を避けるためには、まずメディアが最小限の情報を報じるストレートニュースに留めること。
人の生死にかかわることだけに、「他社が報じているからウチもいいだろう」という横並びの意識を捨てる姿勢が求められます。
また、関連記事を報じるメディアがあっても、できるだけ見ないようにすることも大事。

生死やメンタルヘルスにかかわることは、「できるだけリスクを減らしておく」
「対策はやりすぎるくらいでいい」が基本の考え方であり、「自分はありえないこと」と過信しないほうがいいでしょう。
その意味で忘れずに挙げておきたいのが、メディア報道だけでなく、一般の人々が書き込むSNSも同様であること。
自死についての是非や背景の憶測などの議論をネット上で交わすことは心を病むリスクを伴うものであり、避けたいところです。

免罪符として添えられる「相談窓口」
最後にもう1つメディアの報道姿勢に疑問を呈しておきたいのが、「相談窓口」の添付という免罪符。
媒体を問わず自死関連の報道には、最後に「いのちの電話」「こころの健康相談」「生きづらびっと」などの連絡先を添えることがお決まりのようになっています。
しかし、当然「これを添えれば、どんな内容でも許される」というわけではなく、そもそも相談窓口は「悩みが解決できる」という前提のものではありません。

精神状態には個人差があり、たとえば相談員に心を開いて悩みを打ち明けられるかは未知数です。
一方、全国に数千人とも1万人以上とも言われる相談員も、全力で対応しているものの、対処能力に個人差や相性があり、必ずしも万能とは言えないでしょう。
さらに連絡がつながらなければ、「ここも私を見捨てるのか」と絶望してしまうリスクもあるだけに、「自死報道でショックや悲しさを増したうえで、相談窓口に誘導する」という現在の流れは看過できないのです。
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2022年05月15日

中高年がやりがちな「スマホ・SNS」のしくじり事例、“ゆがんだ正義”にご注意を

中高年がやりがちな「スマホ・SNS」のしくじり事例、“ゆがんだ正義”にご注意を
5/14(土) 週刊女性PRIME

「スマホを初めて持つ小学生と、スマホを持っていてもSNSを十分に使いこなせていない50代・60代には、“スマホ・SNS初心者”という意味で共通点があります」

元・刑事が話す、SNSでのしくじり
 そう話すのは、元・埼玉県警捜査第一課刑事でデジタル犯罪に詳しい佐々木成三さん。
 佐々木さんが監修し、このたび出版された小学生向けのスマホやSNSの防犯ガイドを見ると、どうやら気をつけなければならないのは、子どもだけではないようだ。

50代・60代がやりがちなスマホやSNSの失敗にはどのようなものがあるのだろうか。
「まず挙げられるのが、SNSに何げなく投稿したことが炎上してしまうケースです。
10代、20代に比べて社会経験があるため、ニュースになるほどの誹謗中傷にまで発展するケースは少ないかもしれませんが、気をつけなければいけないのは“ゆがんだ正義”です」(佐々木さん、以下同)

 例えば芸能人の不倫や政治問題について持論を展開してしまうケース。
正義感を持って注意をしたつもりの言葉が誰かを傷つけたり、その人を守るつもりで自分の考えを主張し、頑固になってトラブルに発展するケースもあるという。
「テレビの前で文句を言っているような感覚のままSNSで発信してしまうと、瞬く間に不特定多数に広まってしまいます。

炎上が起こるケースのほとんどは、本人に悪意はまったくなく、何げなく投稿したものです。
そのため説明をしようとしてさらに炎上が広がる場合もあります。
インターネットの誹謗中傷行為は増える一方です。
 それを抑止するため、2022年のうちに法改正され侮辱罪が厳罰化される予定です。
また、自分が発信していなくても、再投稿(リツイートなど)しただけで罪に問われることもあるため、注意しましょう」

ウソを見抜けず……大人でもだまされる
 一歩間違えると大きな被害につながるのが、情報の取捨選択だという。
どう見極めればいいのか。
「当たり前のことですが、まずは情報の出どころを確かめることです。
SNSの情報の4割はウソだともいわれています。

信頼できる情報源かどうかを常にチェックする習慣をつけることと、自分の“思い込み”や“偏った見方”で判断しないことが大切です」
 最近、SNSに自動的に表示される広告を信じて購入し、しくじるケースが増えている。
「広告を見て安いからと購入し、個人情報を盗まれるケースや、購入した商品が送られてこないケースなどがあります。

 情報のチェックポイントは、
(1)価格が安すぎる
(2)クレジットカードでしか購入できない(支払い方法が選べない)
(3)会社名を調べても出てこないなどがあります。

 SNS広告から偽造されたショッピングサイトに誘導する被害も増えています。
買い物をするときは、信頼できるサイトから購入するようにしましょう」

宅配業者を装った不在通知の詐欺
 また、注意が必要なのがフィッシングメールだ。
フィッシングメールとは、送信者を詐称して偽のメールを送信し、公式サイトに似せた偽サイトに誘導し、クレジットカード番号やID、パスワード、暗証番号などのアカウント情報を盗む行為のこと。

「よくあるのがSMS(ショートメッセージ)を使い、宅配業者を装った不在通知の詐欺です。
『お客様宛てにお荷物のお届けにあがりましたが不在でした』などの文面とURLがSMSで送られてきます。
アクセスすると、不正なアプリがインストールされる、あるいは偽サイトにつながってIDやパスワードを入力してしまい、キャリア決済などで不正利用されてしまうのです。
 また、銀行を装ったSMSを送り、インターネットバンキング利用者を偽の銀行サイトに誘導し、IDやパスワードを盗み、預金の不正送金を行うという手口も増えています。

偽サイトは、専門家の私でもまったく見分けがつかないほどよくできているため、アクセスした時点で多くの人がだまされてしまいます」
 このような手口に引っかからないためには、SMSでやりとりをしないことが第一。
もしSMSが届いても、決して開かないこと。
万が一開いてしまっても、個人情報を入力しなければ、被害は防げる可能性もある。
「そもそも宅配業者や銀行には公式サイトや公式アプリがあります。やりとりは必ずそこから行いましょう」

短いメッセージだからこそ注意を
 年代を問わずよく見られるのが、SNSによるミスコミュニケーションだ。
「直接顔を合わせて話すのとは違い、SNSでの短い文字のやりとりだけでは、気持ちが伝わりにくいもの。
私自身もかつて、SNSのやりとりで、“そっけない”とか“冷たい”と思われたり、言葉の意味を誤解されたりしたことがあります。
そうかといってSNSで丁寧な言い回しをして長文になるのも避けたいところ。
 言葉の受け取り方は人それぞれなので、送る相手にどう受け取られるかまで考えてメッセージを送りましょう」

 若い世代とやりとりする機会も少なくない。
プライベートだけでなく、仕事上のやりとりをSNSで行うこともあるだろう。
世代間でSNSの認識が違うと、感情面でぎくしゃくすることもある。
「SNSで職場に欠勤の連絡をしたり、重要な仕事上の伝達をしたりするのは、ひと昔前では考えられなかったこと。
でもそれをひとくくりに非常識だととらえるのはどうかと思います。
 SNSはビジネスメールよりも速く、的確に要件を伝えられるメリットも多い。
時代の変化とともに、常識も変わっているのです」

 とはいえ、SNSでメッセージを送っても相手からすぐに返事が来るとは限らない。
送ったほうは、すぐ返事がほしいと思うかもしれないが、そこはSNSをどこまで使いこなしているか、“SNS慣れ”の違いが出るところだという。
「SNS慣れしていないと、メッセージに気づかなかったり、文字入力に時間がかかり、返信が遅くなったりすることもあります。
使いこなしている人は、すぐに返事が来て当たり前だと思っているかもしれませんが、若い人に比べて、使い慣れているかどうかの差が出やすいのが50代・60代の特徴ではないでしょうか」

 写真の投稿はSNSの楽しみのひとつだが、勝手に投稿してはいけないものもある。
著名人の写真はもちろん、友人や仲間と一緒に撮った写真を無断でアップする際にも注意が必要だ。
「自分が撮影した友人の写真を許可なくアップしてしまうと、肖像権の侵害になる可能性があります。
本当に訴える人は少ないかもしれませんが、顔写真をアップすることは個人の特定につながります。
 またなかには、自分の行動を知られたくない人もいるでしょう。
SNSに写真をアップしてたくさんの見知らぬ人にさらしてしまうと、悪用される可能性もあります。
写真を投稿する際には、必ず本人の許可をとりましょう」

 最後に佐々木さんに50代・60代へアドバイスをもらった。
「SNSは正しく使ってどんどん楽しんでほしいのですが、一方でサイバー犯罪は増えています。
 今、警視庁や住んでいる地域の警察はツイッターでサイバー犯罪の情報を日々発信しています。
犯罪の手口を知り、情報をアップデートするためにも、定期的なチェックをおすすめします」

お話しを伺ったのは……
佐々木成三さん●元埼玉県警察本部刑事部捜査第一課警部補。デジタル捜査班長も務める。
現在はテレビ番組のコメンテーターや学校、企業での講演など幅広い活動を行っている。
        (取材・文/樋口由夏)
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2022年05月16日

【ダイエット】食欲を抑えるための単純すぎる1つの方法

【ダイエット】食欲を抑えるための単純すぎる1つの方法
2022.5.15 Diamondオンライン

ダイエット、禁煙、節約、勉強──。
何度も挑戦し、そのたびに挫折し、自分はなんて意志が弱いのだろうと自信をなくした経験はないだろうか?
目標を達成するには、「良い習慣」が不可欠だ。
そして多くの人は、習慣を身につけるのに必要なのは「意志の力」だと勘違いしている。
だが、科学で裏付けされた行動をすれば、習慣が最短で手に入り、やめたい悪習も断ち切ることができる。
その方法を説いた、アダム・グラント、ロバート・チャルディーニら一流の研究者が絶賛する1冊、『やり抜く自分に変わる超習慣力 悪習を断ち切り、良い習慣を身につける科学的メソッド』(ウェンディ・ウッド著、花塚恵訳)より一部を公開する。

「近さ」は人の行動を左右する
 状況の影響を自分に有利に取り入れるなら、もっとも手軽にできるのは「純粋な近さ」の活用だ。
近さは、自分が接する外的な力を決定づける要素となる。
人は自分の近くにあるものとかかわり、遠いものを見過ごしやすい。

 ラボで条件を管理して実験を行えば、食べるものに近さがいかに重要であるかがよくわかる。
仮に、ラボのキッチンでのテイスティング実験に参加することになったとしよう。
調査員に案内されてキッチンに入ると、調査員は「ちょっとアンケート用紙をとってきますね。
そうそう、そこにある食べ物は、あなたのために用意したものですから」と言ってキッチンから出ていく。

そこにはボウルが2つある。
ひとつにはバター味のポップコーンがいっぱい入っている。
もうひとつはリンゴをスライスしたものだ。
 あなたはその場に6分間ひとりきりになる。

ある日の実験では、ポップコーンの入ったボウルが、テーブルの手に取りやすいところに置いてある。
約30センチの距離だ。
リンゴのスライスはカウンターに置いてある。
見える位置ではあるが、立って取りに行かなければならない。

 別の日の実験では、リンゴがテーブルに、ポップコーンがカウンターに置いてある。
さあ、あなたならどうする?
何を食べてもいいのだから、置いてある位置に関係なく自分が食べたいと思うほう(おそらくはポップコーン)を食べて当然だ。
だがこのケースもまた、人の直感が正解とはならない。

 立ち上がって取りに行く必要がなくなったら、ポップコーンを食べる量はどのくらい増えると思う?
実験を通じて、かなり増えると判明した。
実験に参加した人たちは、リンゴが手の届くところにあるときは、約50キロカロリーしか摂取しなかったのに対し、ポップコーンの入ったボウルが手の届くところにあると、その約3倍のカロリーを摂取した。

 この実験における摩擦は、「距離」という単純極まりないものだ。
高カロリーの食べ物を、手を伸ばしてもギリギリ届かない場所に置くだけで、参加者にとっては相当の摩擦となった。
手は届かなくても、ポップコーンは視界にあり匂いも感じたが、距離が遠いというだけで食べる抑止力となったのだ。

距離の摩擦
 私はこの種の行動に対する摩擦を、毎年夏に主催する習慣に関する科学カンファレンスで目の当たりにした。
その年のカンファレンスには、ヨーロッパからの参加者が多かった。
 ヨーロッパの人々はアメリカ人よりも果物を多く食べると思い、私は果物を多めに用意するように要請した。
食事のときに追加の果物が用意されたが、箱に入った状態で隅に置かれた。
参加者が自ら取りに行かねばならない位置だ。
それに気づいた私は、配膳の最後の手に取れる位置に箱を動かした。
すると、果物はすぐさまなくなった。
もっとも、熟れすぎたバナナは残ったままだったが。

 このような距離の摩擦は、カフェテリアやビュッフェ会場でも強力に作用する。
食べ物を置く場所を変えた実験では、目につきやすく手に取りやすい場所に置かれた食べ物が好まれた。
デザートは(最初ではなく)最後に並べ、身体にいい食べ物を目につきやすい場所に置くようにすれば、食事をする人の食べ物の選択に、店側が影響を及ぼせるようになる。

スーパーマーケットの摩擦
 スーパーマーケットはそうした外的な重圧の存在を認識していて、消費者は買い物をするたびに店に操られていると言える。
それを表すフレーズが、「目線の高さが買う高さ」だ。かがんだり、手を上に伸ばしたりしなければならないとなると、人は億劫になる。
 いまではすっかり、陳列棚の両端でキャンペーンが展開されるのが当たり前になり、肉や牛乳など誰もが必要とする食品は店の奥に並ぶ。
これは、来店客に商品が並ぶ通路を歩かせるためだ(そのときに顧客は目線の高さの商品を気にかける)。
そしてレジの列に並べば、お菓子や雑誌の誘惑が待ち受ける。
 牛乳や肉が店に入ってすぐのところにある、最安値の品が目線の高さに並んでいる、レジのところにリンゴが並んでいるスーパーを想像できるだろうか? そういう店があるとしたら、「顧客や顧客にとっての最悪の衝動を利用して儲けよう」とは考えていないのだろう。
顧客と顧客の理想に尽くすことで、顧客の健康と幸せを願っているに違いない。

あるいは、顧客のためになる陳列にしたほうがいい理由があるのかもしれない。
 都市部に暮らす人々は、スーパーマーケットの近くに住むと、果物や野菜を多く食べるようになるという。
この傾向はとりわけ、青果を多く棚に並べるスーパーに見受けられる。青果の直売所がいい例だ。

 2010年の夏、テキサス州オースティンを拠点とするNPO団体のサステナブル・フード・センターが、低収入の人々が多く住む地域に一時的に青果直売所を設置した。
その地域では、新鮮な果物や野菜が簡単に手に入らなかった。
この試みに携わった調査員たちは、住人に健康について教育することはおろか、直売所の宣伝すらしなかった。
彼らは黙って、近さが増したことの効果を観察した。

 この実験が開始される数週間前に、調査員たちは直売所を設置する予定の場所から半径1マイル(約1.6キロ)圏内を調査した。
青果の直売所で買ったことがあると答えた住人は約5パーセントで、住人が一日に食べる果物と野菜の平均は3.5皿前後だった。
その後、学校やコミュニティセンターのすぐそばに直売所が設置された。
コミュニティセンターは、フードスタンプと呼ばれる食料クーポンが配られる場所だ(直売所はクーポンでの購入も受け入れた)。
 2カ月後、事前調査に協力した住人の4分の1近くが、直売所で野菜や果物を購入したと判明した。
それどころか、果物の消費量は倍増し、グリーンサラダなどの野菜、それにトマト(もしくは新鮮なトマトを使ったサルサ。さすがオースティンだ)の消費も少々増えた。

平均すると、調査対象となった住人の青果摂取量は約10パーセント増加し、皿数は4を超えた。
この結果を見ると、身近にあるスーパーに消費者の健康を推進するためにできることは、まだまだたくさんあるようだ。

【本記事は『やり抜く自分に変わる超習慣力 悪習を断ち切り、良い習慣を身につける科学的メソッド』(ウェンディ・ウッド著、花塚恵訳)を抜粋、編集して掲載しています】
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2022年05月17日

「事故の可能性が非常に低くなったのでは」元刑事が語る違和感 山梨・道志村で発見の骨は小倉美咲さんのDNA型と一致 今後の捜査のポイントは

事故の可能性が非常に低くなったのでは」元刑事が語る違和感
山梨・道志村で発見の骨は小倉美咲さんのDNA型と一致 今後の捜査のポイントは
5/16(月) TBSニュース

2019年9月から行方不明になった当時7歳の小倉美咲さん。
5月14日、山梨県道志村の山中で見つかった“右肩甲骨”が小倉美咲さんのDNA型と一致しました。
現場を何度も訪れている元大阪府警の中島正純さんは「事故の可能性が非常に低くなったのではないか」と話します。
一体なぜなのか。今後の捜査のポイントを含め聞きました。

■山の中で発見された“右の肩甲骨”
行方不明になってから間もない内に死亡か

ホラン千秋キャスター:
2019年に行方不明になった小倉美咲さん(当時7歳)。
5月4日に山の中で発見された右肩甲骨が「小倉美咲さんのDNA型と一致した」という発表がありました。
美咲さんのものだとわかっただけではなく、山梨県警によると「右の肩甲骨は生命維持に欠かせない部位であることから、美咲さんは亡くなっていると判断された」ということです。
山梨県警はこれらの事実を美咲さんの母・とも子さんに直接伝えました。
捜査関係者によりますと、骨の状態などから行方不明になってから間もないうちに死亡したとみられるということです。
また、肩甲骨に細かい傷は見られるものの、目立った外傷は確認できていないということです。
今後の捜査について山梨県警は「事件・事故の両面から捜索を続ける」と発表しています。

井上貴博キャスター:
この一連の報道についてどんなことを感じていますか?

田中ウルヴェ 京 スポーツ心理学者(博士):
例えば美咲さんの右の肩甲骨が見つかったという言葉だと美咲さんのお体のことなんですが、こういった報道を「娘という存在を持つ母親の立場」で聞いていたときに、“娘の肩甲骨”となった瞬間に本当に心が重くなります。
でも、私たちはお母さまのお気持ちはわからないので、小倉美咲さんのお母さまの周囲に本音をお話できる方がいらっしゃるといいなとつくづく思います。

井上キャスター:
元刑事の中島さんは何度も現場へ足を運んでらっしゃいますがどんなことを感じていらっしゃいますか?

元大阪府警刑事 中島正純さん:
警察は事件と事故の両方で捜査をしているということですが、美咲ちゃんであると判明したと聞いて、私は事故の可能性が非常に低くなったのではないかと改めて思います。
なぜかというと、まず現場がすごく険しい。小さな女の子が1人で行くのは絶対に無理なような場所です。
それと、行方不明になった直後に1700人態勢で大規模な捜索が行われているんですよね。
その後も5千人以上で捜索しましたが、手がかりは一切見つかりませんでした。
万が一見落としがあったと考えたとき、私も刑事の現役時代に経験したことあるんですが、遺体が白骨化していくと服の中に白骨がある、靴の中に白骨があるという、いわゆる服を着た状態で中身が白骨するという現象が起きます。
ところが、今回は靴や靴下、そして服も発見されましたが、骨の場所とは全く別のところでした。
靴下の中に骨であったり人肉というものもなかった。
服の中にもなかったんです。
例えばクマとか動物に襲われたということであれば、おそらく見つかった服はもうズタズタに破れてると思うんですよね。
そして当然血痕もついてると思います。でもそういうことも全くありませんでした。
そして当時、警察犬の臭いはすぐに途切れているんですね。
それを考えるとやはり事故の可能性は非常に低いのではないかなと思います。

■大規模な捜査をしたはずが…次々と見つかる手がかり

ホランキャスター:
どこで何が見つかったのかというのを改めて見ていきましょう。
動きがあったのは4月23日です。枯れた沢の下の方、キャンプ場からおよそ600メートル離れているんですが、そこで頭の骨の一部が見つかりました。
一般的なDNA型鑑定をしたんですがそこでは結果がわからなかったので、ミトコンドリアDNA型鑑定を行い美咲さんのお母さまと血縁関係があることに矛盾がないと発表されました。
そして枯れた沢の上の方で4月28日に右足の運動靴が見つかっています。
当時美咲さんが履いていたものと大変よく似たものということです。
その次の日には左足の運動靴と片方の靴下も見つかっています。
ただこれらからは個人を特定するだけのDNA型は検出されませんでした。
捜索が続き、5月4日には右の肩甲骨、そして黒っぽい衣服、さらに11日には骨らしきもの2つが見つかったんです。
こちらはどの部分の骨なのかはまだ発表がありません。
最終的に4日に見つかった右の肩甲骨が小倉美咲さんのDNA型と一致したということです。

井上キャスター:
多くの人を投入しても小さなお子さんを見つけるのはなかなか難しい、そこで見つけられなかったものが見つかっている、という可能性も指摘されてるわけですが、中島さんはそれでも不自然だと考えていらっしゃいますか。

元大阪府警刑事 中島正純さん:
私は不自然だと思います。動物もしくは何者かが後から置いたものだというふうに思います。

井上キャスター:
警察はこれからどう立証していくんでしょうか。

元大阪府警刑事 中島正純さん:
やはり今見つかっている骨はほんの少しなので、まずは頭の先から足の指の先までの骨のすべてを見つけるということですね。
できるだけ多くの骨を集めて、司法解剖にかけて死因は一体何だったのか。事故だったのか事件だったのか、まずはそれをきちんと考えるべきだと思います。

井上キャスター:
ある程度の状況証拠が揃えば、そのあたりは特定できると考えてよろしいんでしょうか?

元大阪府警刑事 中島正純さん:
例えばナイフで刺されたのであれば骨に刺し傷が残ります。そして動物に襲われたのであればひっかき傷が残ります。いろいろなことが司法解剖でわかり、死因がわかります。
今後は、DNA検査などをして全ての骨が美咲さんのもので間違いないかというような捜査もしていきます。

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2022年05月18日

山田美保子氏「上島竜兵さんを送った芸人たちの見事な団体芸」

【山田美保子のミホコは見ていた!】
「上島竜兵さんを送った芸人たちの見事な団体芸」
5/17(火) ディリースポーツ

 5月11日、突然旅立ったダチョウ倶楽部の上島竜兵さんについて、ビートたけし、桂文枝、明石家さんまら、お笑い界の大先輩や、同期の「たけし軍団」、上島さんやダチョウ倶楽部を尊敬してやまない後輩芸人らがコメントを寄せた先週末。

「悔しい」「悲しい」という共通の想いはあるものの、そのチャーミングなエピソードには笑わずにはいられない。
明石家さんまは「ヤングタウン土曜日」(MBSラジオ)で、最後に街で会ったときの話を披露。
上島さんが外国人の客引きに、「おっぱいOK?」と交渉していたと明かした。  

ダンカンが「グッド!モーニング」(テレビ朝日系)の取材に応えたのは、昔、自宅に泥棒が入った際、ダンカンが盗みを働いて連行されたと勘違いした上島さんがメロン持参で警察へ。
「魔がさしただけ」「本当はいい人」と警官に対し懸命にフォローをしたという話。

そのダンカンや上島さんと共に「中野猛虎会」のメンバーである松村邦洋は「アッコにおまかせ!」(TBS系)で、阪神タイガースの過去の試合の名場面や往年の名選手の名前を上島さんが「全く憶えていない」「間違ってばかりいる」と、愛すべき虎党を偲んだ。

そしてダチョウ倶楽部が出演した番組や登壇したイベント映像を多数もつテレビ局は伝統芸ともいうべき熱々おでんや熱湯風呂を各番組でリピート
それらがもっとも美しく繋がれているケツメイシの「友よ〜この先もずっと…」のMVは、歌詞も含め、ファンの心に文字通り、この先もずっと残るだろう。

 皆さんが心配していたダチョウ倶楽部の肥後克広や寺門ジモンも二人にしか綴れないであろう微笑ましいコメントを発表。「竜兵会」の土田晃之や有吉弘行は現在の想いと共に、駆け付けた病院や、家族として送ることができた斎場で、“笑い”もあったと教えてくれた。

葬儀のことは、志村けんさんの相方ともいうべきザ・ドリフターズの加藤茶もブログに綴った。
そしてダウンタウンの松本人志は「ワイドナショー」(フジテレビ系)において放送倫理・番組向上機構「BPOさん」に言及した。
 打ち合わせをしたわけでもないだろうに、上島さんと深い関わりがあった芸人らが順に、自身の役割を全うするかのように出したコメントの数々は、人々の心を少しずつ落ち着かせてくれている。

先輩や仲間、後輩らの見事な団体芸に見送られ旅立った上島竜兵さん、どうか天国から、お笑い界を見守っていてください。合掌。
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2022年05月19日

値上げラッシュ加速は必至か

企業物価指数が初の2ケタ増!「価格マインド」に変化で値上げラッシュ加速は必至
022年05月17日 日刊ゲンダイDIGITAL

 驚愕の数字だ。
日銀が16日発表した4月の国内企業物価指数(速報値、2015年平均=100)は113.5となり、前年同期比10.0%上昇した。
上昇率は比較可能な1981年以降で初めての2ケタ。
指数も60年に統計が開始されて以来の過去最高を更新した。

 原油相場の高止まり、原材料高、円安と、物価上昇の材料ばかり。
東京商工リサーチの4月上旬の調査では、7割の企業が「価格転嫁できていない」と答えていたが、企業間取引のコストがここまで大幅上昇では、早晩、どこも転嫁せざるを得なくなるのではないか。

 16日は、サントリー食品インターナショナルが、ミネラルウオーターやコーヒーなどの飲料を10月1日出荷分から値上げすると発表。
20円程度上がる見通しだ。
先週は天丼のてんやが、税込み500円の「ワンコイン」を断念し、6月16日から「天丼」を530円にすると発表した。
こうした「値上げニュース」が毎日のように報道されるが、今後、値上げラッシュが加速するのは必至だ。

消費者物価は年内に4〜5%の上昇も
「4月の輸入物価指数が44%増ですからね。上流が嵐となって水位が大幅に押し上げられれば、中流の国内企業物価、下流の消費者物価が影響を受けるのは当然です。
政府が川下に堤防を築こうと補助金などの対策を打ち出していますが、ばんそうこう程度にしかなりません。
企業の『価格マインド』も変わってきた。

『他社が上げるのだからウチも』と、値上げに抵抗感がなくなってきている。
企業物価の10%上昇分は数カ月遅れて消費者物価を3%程度押し上げる。
企業物価はこの先も毎月上がっていきますから、消費者物価は日銀が目標とする2%どころか、年内に4〜5%まで上昇してもおかしくありません」(経済評論家・斎藤満氏)

 それでも岸田首相と黒田日銀総裁は、傍観するのか。
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『モーニングショー』精神科医、うつ病になりやすい患者に「嬉しい」発言で物議

『モーニングショー』精神科医、うつ病になりやすい患者に「嬉しい」発言で物議
2022年05月18日 リアルライブ

18日放送の『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)に出演した精神科医の発言が話題を呼んでいる。
 この日、組まれたのが「うつ病」特集。
最近特に、うつ病あるいはうつ状態になる人が増えているという。
そこで精神科医で赤坂クリニック院長という坂元薫氏が登場。
うつ病の症状や、その見分け方、さらには対処法を紹介した。

 まず、うつ病増加の背景として、同氏は「どの国の調査でも大体、コロナ禍の後で、2倍あるいは3倍に増えている」と言及。
続けて、「その理由はもう皆さんおわかりだと思うんですが、行動制限、自粛、人と人とのつながりが希薄になってしまった。あとは経済的な問題」と述べていた。
 他には、うつ病の診断基準を満たす症状も紹介。
「食欲減退または増加」や「塞ぎ込んだ状態が続く」など9つの基準のうち、5個以上の症状が2週間以上にわたって続くと、うつ病と認められるという。

 これを受けて、司会の羽鳥慎一アナウンサーがうつ病になりやすい人の特徴として、「仕事熱心、真面目、几帳面、責任感が強い、他人への気配りを忘れない」といった項目を挙げたのだが、これについて坂元氏は「こういう方は、最近あんまり多くないような気がします」とバッサリ。
 予定していた論調と違った羽鳥アナが慌てて、「いや、でも、イメージだとこう、こうですけど……現場だと実際は違う?」と聞くと、同氏は「もちろんこういう方がなりやすいんですが、ただ一般的に、こういう方が来ると嬉しいんです」とあらぬ発言。
その直後、「嬉しいというと変ですが、典型的な几帳面、(いわゆる)“メランコリー親和型”と呼んでまして、こういう方は確かにうつ病になりやすい」などと話していた。

 坂元氏の「嬉しい」発言の真意としては、こういう分かりやすい特徴の患者さんが来たら、救うことができるという意味で言ったのかもしれない。
そこでネットでは「治療もしやすいだろうからな」という声もあった一方、「うれしいって、、本音が出たな」「嬉しいってカモが来たってことか ひでーーーー」「この先生 言葉選びヤバい」「うつになりやすい真面目な人があまり多くないとか、こういう性格の人が嬉しいとか発言がおかしい」といった疑問が寄せられていた。  

 調べると、現在まで延べ2万5千人を超える方々の診療に携わってきたという坂元氏。
それほどの大家であれば、患者への言葉遣いも十分、気を付けているはずだが……。
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2022年05月20日

孤独を乗り越える、「科学的に正しい」3つの方法とは?

孤独を乗り越える、「科学的に正しい」3つの方法とは?
2022.5.19  Diamondオンライン

コロナ禍という、自分ではどうしようもない状況下はもちろん、仕事やプライベートなど、わたしたちは不安や孤独、焦りなど、ネガティブな感情をよく感じます。
もっと言えば、ネガティブな感情を抱くのは当たり前のことです。
ケンブリッジ大学でメンタルヘルスを10年ほど研究しているオリヴィア・リームス氏は、人が本来の力を発揮するのを妨げているネガティブな感情は、大きく9つに分けられるといいます。
本記事では、これらのネガティブな感情に対処する科学的なメソッドを新刊『STRESS FREE』より一部紹介します。

わたしたちはなぜ孤独を感じるのか
 孤独感は、多くの人が悩まされている感情です。
2020年以前には、イギリス人の約5人にひとりが孤独を感じていましたが、新型コロナウイルス感染症のパンデミック以降、状況はさらに悪化しています。
 それにしても、孤独とはなんでしょう?
人間の望んでいるつながりの数や質は、実際に得ているそれと、必ずしも一致しないといいます。
おおぜいの人に囲まれていても、寂しさを感じるときはあります。
結婚していようと、家族と住んでいようと、人は孤独になりえます。
と同時に、たとえひとりかふたりしか友だちがいなくても、その絆が強く、社会的欲求が満たされていれば、孤独だと思わないことも多いのです。

 心理学者のジョン・T・カシオポは、孤独感の不快さは、飢えや渇きや身体的な痛みの不愉快さにも匹敵する、と言います。人間は社会的な生きものであり、つながりなしには心身が参ってしまうのです。
慢性的に孤独な人々は、若くして死に至るリスクが高く、免疫機能が低下するおそれもあります。
 これはすべて、生物としての進化によるものです。

わたしたちの初期の祖先は、長いあいだひとりでいるとリスクにさらされる、つまり、外敵に襲われる危険がありました。
けれども集団のなかにいれば、危険から守られる確率は高まります。
 このような、他者といることで安心感を得ようとする人間の基本的な本能は、そのころから変わっていません。
したがってわたしたちは、飢えから食べものを、渇きから飲みものを求めるように、孤独感から仲間を見つけようとします。

人はみな、何かに帰属したいという欲求があり、この欲求が満たされないと、心身に悪影響が出始めるのです。

おしゃべりの心理的効果
 だれかと話すと、気分は確実に変わります。
シカゴ大学の研究者が、朝の通勤列車で乗り合わせた人と話をするとどんな気分になるか、人々に試してもらいました。
 ほとんどの人は、「知らない人と話すのは気まずい」と考えていましたが、実際はその逆でした。
実験のためにランダムに選ばれた被験者が、同じ列車に乗っている人に話しかけて雑談をしたところ、「今までになくポジティブな気分で通勤時間を過ごせた」というのです。

 それでは、話すと気分が良くなるなら、なぜ多くの人は通勤中に黙っているのでしょうか?
その理由は、人間が「他者のつながりへの関心を低く見積もっている」からだと、この研究の執筆者はいいます。
バスや列車のなかなどさまざまな場所で、わたしたちは他人の沈黙を「つながりを避けている」と解釈しています。
沈黙を自分への無関心と見なして、かかわるのをためらってしまうのです。

孤独感は人の思考回路を変える
 孤独な時間が長くなると、進化の生存メカニズムが働き、わたしたちは不安を感じ始めます。
「脅威」を感じて警戒しだすのです。
けれども、現代社会における脅威は、もはやジャングルに潜む襲撃者でも動物でもありません。
もっとずっとささいなもの――たとえば、「ズーム会議でだれかが不機嫌そうな顔をしている」といった、不安を呼び起こす漠然とした状況――になります。

 孤独なとき、人は他人のなんでもない表情をネガティブに受け取り、「自分は嫌われている」などと思い込みやすくなります。
研究においても、孤独な人は身のまわりで生じる社会的脅威に強く反応し、ちょっとしたことで「拒絶されている」と思ったり、自分や他者への評価が低くなったりするとされています。
 さらに孤独な人は、睡眠時間はそれなりに取れていても、朝、すっきり起きられないことが多いといいます。
そのせいで日中に活動的になれず、社会的孤立(つまりは孤独)の痛みをさらに強く感じるという、負のスパイラルにはまりこんでしまいます。

 孤独感の及ぼす影響の大きさに気づくことが大事なのは、それが「そろそろ生き方を変えないとまずいですよ」という、一種の警告でもあるからです。
孤独は、取るに足らないことではありません。
友人は、いなくても困らないものではありません。
わたしたちの幸せや健康のために、なくてはならない存在なのです。

孤独を乗り越えるためのメソッド1:
自分の「内面」ではなく「行動」にフォーカスする
 孤独感から抜け出したければ、認識の持つ力について理解することが重要です。
 一緒に過ごす相手がいない理由をしょっちゅう自問したり、「自分は口下手だから」と自分を否定してばかりいると、見えない心の壁(メンタルブロック)が形成されます。
そうなった原因は自分にあるのだから、自分に状況を変えられるはずがないと、自己暗示をかけてしまうのです。
そうして問題が固定化されます。

 この心の壁を壊すには、自分の意識を内ではなく外に、つまり、自分が「どんな人間か」ではなく「どんなことをしているか」に向けるのが肝心です。
現状を変えるために何をしているか。
寂しさを克服するために、どんな取り組みをしているのか(「今日は○人に話しかけた」とか、「新しいグループやオンラインコミュニティに参加した」など)。
自分の行動に自覚的な人は、孤独感から抜け出してその状態を維持しやすいことが研究でわかっています。

 自分自身へのネガティブな認識を手放せば、行動に集中できるようになります。
自分の殻から出て、他者とつながっている感覚を取り戻しましょう。

孤独を乗り越えるためのメソッド2:
他人の反応はコントロールできないことを受け入れる
 孤独感の解消に役立つもうひとつの方法は、ものごとへの反応の仕方は人によって異なると理解することです。
 他者とうまくつき合うには、相手から必ずしも期待する反応が返ってくるわけではないことを認める必要があります
あなたの幸せを同じように喜んでくれないかもしれないし、恩を仇で返してくるような人もいるかもしれません。
 こんなふうに、他人の反応は予測できないので、あまり深刻にならず状況を受け入れる努力をすべきでしょう。

あの人の反応や表情がどうだとか、せっかく親切にしたのにそっけない態度を取られたとか、そういったことに一喜一憂しないようになると、ブレない芯の強さを得られます。
このブレのなさに人は魅力を感じるものです。

「友人をつくりたければ、自分から話しかけるなどして関心を示そう」とよくいわれます。
これは、最初の一歩としては悪くない方法です。
けれども、その相手からつれない反応が返ってきたらどうでしょう?(がっかりしますよね)。
だから、他人の反応は考えてもわからないと思って、やりすごせるようになったほうがいいのです。

孤独を乗り越えるためのメソッド3:
自分以外の問題に目を向ける
 自分を孤独だと思うほど、ネガティブな感情は増します。
これを解消するひとつの方法は、「自分以外の問題に目を向ける」ことです。

 自分自身や自分の問題に当てているスポットライトを、ほかのものに向けてみましょう。
たとえば、人のために何かできないでしょうか?
ボランティアをしたり、精神的に苦しい時期を過ごしている隣人や友人に食事を差し入れたりするのも一案です。
 一日の時間のいくばくかを他者に差し出すとき、ふたつのことが起こります。

ひとつめは、自分自身から意識をそらすことで、孤独の痛みを感じにくくなること。
そしてふたつめは、自分もだれかの力になれるのだと気づくこと。

そのことが、わたしたちの幸福感を高めてくれるのです。
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2022年05月21日

「眠りの質を劇的に改善する」たった1つの方法とは?

【睡眠専門医が教える】
「眠りの質を劇的に改善する」たった1つの方法とは?
2022年05月20日  Diamondオンライン

大型連休が終わり、通常の生活を送るなかで、4月には感じなかったような疲労感を覚えている人は少なくないだろう。
その原因は、連休中の睡眠リズムの乱れかもしれない。
睡眠が不規則になると、「なかなか寝つけない」「1日中眠気を感じる」といった睡眠障害の症状が出やすくなり、心身の健康も崩れがちになってしまう。
そこで、睡眠の質の改善に役立つのが、25年以上睡眠専門医として活躍している坪田聡氏の著書『朝5時起きが習慣になる「5時間快眠法」』だ。
本書は、短時間の睡眠でも朝スッキリと起きられ、日中もハツラツと活動できる「5時間快眠法」のメソッドを3つのステップで解説している。
本稿では、多くの人が抱えている「睡眠にまつわる悩み」の現状についてご紹介する。(執筆・構成/根本隼)

■睡眠と健康は密接な関係にある
 いま私たちは、PC・スマホの普及で生活の夜型化が進み、つい「睡眠」をおろそかにしがちだ。
特に連休中は、夜更かしや「寝だめ」、または「遅寝遅起き」で睡眠リズムが乱れてしまった人もいるだろう。
 しかし、心身の健康を正常に保つには、どんな時でもなるべく「規則正しい睡眠」を維持することが重要だ。
眠っている間に、人間の脳や体は疲労から回復し、記憶の整理や身体の成長、壊れた細胞の修復などが促進されるからだ。

 そのため、不規則な睡眠が続くと単に眠気に悩まされるだけでなく、さまざまな弊害が生じてしまう。
たとえば、集中力・判断力・記憶力といった精神機能や、物事に取り組む意欲が低下するといわれている。
 また、睡眠不足が慢性的になると、ストレスが増大する。
これは、睡眠中の脳が、記憶だけでなくストレスの整理もしてくれているからだ。

■9割以上の人が「睡眠に不満」
 しかし、身体的な疲労やストレスをすっかり解消できるほどの快適な眠りを習慣化できている人は少数派だ。
 健康関連機器を扱うフジ医療器(大阪府)が今年1月に公表したアンケート調査によると、「睡眠に関して不満に感じることがあるか?」という質問に対し、なんと93.9%が「不満がある」と回答したという。

 不満の具体的な内容については、「寝ても疲れが取れない」「夜中に何度も目が覚める」「朝スッキリと起きられない」「眠りが浅い」などが代表的なものとして挙げられている。

■若い世代では約6割が「不眠症の疑い」
 また、日本睡眠科学研究所の「睡眠白書2021」によると、調査対象のうち「不眠症の疑いが高い」と判断されたのは約半数で、特に20・30代では6割強だったという。
多くの人にとって、睡眠改善の必要性があるといえる結果だろう。
 さらに、コロナ禍で、睡眠関連の悩みに質的な変化も起きているようだ。

東京医療保健大学が昨年に行なった「睡眠に関する調査」によると、コロナ禍によって「睡眠の悩みが増加した」と答えた人は全体の37.8%で、特に在宅勤務の機会が増えた人にかぎると約7割にのぼった。
 通勤回数が減ったことによる運動量の低下や、日常生活でのストレスの増加、就寝・起床時間の変化による生活リズムの乱れなどが、睡眠の質に影響を及ぼしているといえそうだ。

■睡眠の質を劇的に改善する「たった1つの方法」とは?
 職場だけでなく自宅でも仕事のメールがチェックでき、SNSに24時間つながっている私たちの生活は極めてストレスを抱えやすく、良質な眠りを手に入れづらい状況にある。
しかし、睡眠の質の向上のために「何をすればいいのか分からない」という人も多いだろう。

 そこで、睡眠に関する悩みを解消して仕事もプライベートも充実させるために、大いに参考になるのが、25年以上にわたって睡眠専門医として活躍している坪田聡氏の著書『朝5時起きが習慣になる「5時間快眠法」』(ダイヤモンド社刊)だ。
 本書は、短時間の睡眠でも脳と体が回復し、朝スッキリと目覚めて日中もハツラツと活動できるようになる「5時間快眠法」のメソッドを、以下の3ステップで解説している。

1)「即寝・即起き」の技術で、睡眠効率を高める
2)睡眠の「質」を上げ、脳と体を劇的に回復させる
3)5つの「仮眠」で、1日中、疲れ知らずになる

■睡眠の良し悪しは「時間」×「質」で決まる
 坪田氏によれば、睡眠の良し悪しは「時間」×「質」のかけ算で決まる。
つまり、睡眠の質が低ければ、むやみに長時間眠っても得られる満足度は低くなってしまうのだ。
 逆に、この3つのステップをきちんと踏んだ「5時間快眠法」を通じて質の高い睡眠を実現できれば、睡眠時間を短くしても問題なくスッキリと起床し、日中も元気よく活動できるようになるという。
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2022年05月23日

深刻な悩みやストレスを一晩で解消する「驚くほどシンプルなワザ」

深刻な悩みやストレスを一晩で解消する「驚くほどシンプルなワザ」
2022年05月22日 Diamondオンライン

大型連休が終わり、通常の生活を送るなかで、4月には感じなかったような疲労感を覚えている人は少なくないだろう。
その原因は、連休中の睡眠リズムの乱れかもしれない。
睡眠が不規則になると、「なかなか寝つけない」「1日中眠気を感じる」といった睡眠障害の症状が出やすくなり、心身の健康も崩れがちになってしまう。
そこで、睡眠の質の改善に役立つのが、25年以上睡眠専門医として活躍している坪田聡氏の著書『朝5時起きが習慣になる「5時間快眠法」』だ。
本書は、短時間の睡眠でも朝スッキリと起きられ、日中もハツラツと活動できる「5時間快眠法」のメソッドを3つのステップで解説している。
本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、睡眠効率を高める「即寝」の技術を2つ紹介する。(構成/根本隼)

■睡眠の効率を上げるには?
◎ふとんに入ってから考え事をしてしまって、なかなか寝つけない
 こんな悩みを抱えている人は多いのではないだろうか。このような、眠っているわけでも活動しているわけでもない時間は、はっきり言って無駄である。
 この時間を短縮すれば、睡眠効率は格段に上がる。
8時間ふとんにいて実際の睡眠時間が6時間よりも、6時間ふとんにいて実際の睡眠時間も同じほうが、効率がよいのは当然だ。
 そこで、ふとんに入ってから5分以内に入眠する「即寝」の技術をご紹介しよう。

■科学的根拠のある立派な「問題解決手段」とは?
 夜に考えすぎてしまう人に、伝えたい技術、それは「寝逃げ」だ。
仕事が途中で行き詰まってしまったときや、明日までに解決しなければいけない問題がまだ解決していないとき、ふとんの中でも、その問題に考えを巡らせてしまうことがある。
 しかし、ふとんの中で問題と向き合うより、「もう寝ちゃおう」と現実から逃げたほうが、解決策が思い浮かぶことをご存じだろうか。

 この「寝逃げ」ともいえる行為は、決して「現実逃避」ではなく、科学的根拠のある立派な「問題解決手段」のひとつである。
 眠るだけで問題が解決する。こんな夢のような機能が、睡眠にはあるのだ。

■脳の「最適化」機能があなたの悩みを整理する
 あなたも実際に、「朝起きたら、解決策が急に思い浮かんだ」という経験があるはずだ。
実はこの現象は偶然ではない。
 人の脳は、レム睡眠中、起きていた時間にストックした情報の中から、自分に必要なものだけを抜き出して再処理している。
パソコンの「最適化」のようなものだ。
 とくに大きな悩みがあればあるほど、この「最適化」機能は強くなる。
古い記憶が整理され、新しい記憶と結びつくことで、新たなアイデアが浮かぶのだ。
これが「寝逃げ」のメカニズムである。

 寝逃げをして新しいアイデアを生み出す手法は「追想法」または「レミニセンス」と呼ばれている。
発明家のエジソンや、1949年にノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹博士は、この手法を利用して難題を解いたといわれている。
 ノーベル賞級の潜在能力を引き出すのが、この「寝逃げ」なのだ。

■「寝逃げ」を上手に利用する2つのポイント
 寝逃げをうまく活用するためのポイントは2つ。

ひとつは「眠りに執着しない」こと。
「寝逃げをするために、早く眠らなくては」と焦って眠れなくなってしまっては本末転倒だ。

もうひとつは寝る前に、「解決したいことをきっちり頭の中で整理する」こと。
情報を手帳やノートに書き出してしまうのもいい。
 起きているうちに情報を明確にすることによって、眠っているときの脳の最適化機能はより高まるのだ。

■スムーズに寝つくための効果的な方法とは?
 スムーズに入眠するためのコツをもう1つ。
夜、寝る前に必ずやる、習慣となっている行動を「スリープ・セレモニー」という。
 セレモニーという字面だけ見るとなんだか大げさだが、「歯を磨く」「トイレに行く」「パジャマに着替える」といった行動もスリープ・セレモニーのうちに入る。
要は、寝る前に必ずやる習慣はなんでもスリープ・セレモニーなのだ。
 スリープ・セレモニーは、スムーズに寝つくための効果的な方法となる。
大切なのは、毎日、同じ行動を習慣づけている点。
決まったスリープ・セレモニーを行うことで、脳は「ああ、この行動に入ったということは、そろそろ睡眠に入るんだな」と意識づけられ、自然に眠気を促すのだ。

■「何も考えずにできる作業」が重要
 すでに多くの人がやっているように、「歯を磨いてパジャマに着替える」というのは最も一般的なスリープ・セレモニーだ。
 「簡単な片づけをする」「ストレッチをする」「音楽を聴く」など、活動的な時間と「睡眠」という休息時間の間に、「何も考えずにできる作業」を挟むのはとても重要だ。
 軽い気持ちでも続くような、自然にできるスリープ・セレモニーをつくることができれば、少々、環境が変わってもスムーズに入眠することができるだろう。

(本稿は、『朝5時起きが習慣になる「5時間快眠法」』より一部を抜粋・編集したものです)
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2022年05月24日

「別の犯罪に問われる可能性」嘘か勘違いか…返還された約3500万円 今後の捜査のポイントは

「別の犯罪に問われる可能性」嘘か勘違いか…
返還された約3500万円 今後の捜査のポイントは
5/23(月) TBS NEWS DIG Powered by JNN

山口・阿武町で4630万円が誤送金された問題で、逮捕された田口翔容疑者は「数社のネットカジノに全部使った」としていましたが、少なくとも約3500万円が町の口座に戻ったことがわかりました。

元東京地検特捜部の若狭勝弁護士は、「仮に嘘をついていた場合、別の犯罪に問われる可能性がある」と指摘します。今後の捜査のポイントを含めて詳しく聞きました。

■「数社のネットカジノに全部使った」はずが…
井上貴博キャスター:
これまでの経緯を振り返ります。
4月8日、阿武町が田口容疑者に誤って4630万円を送金。
町の職員が戻して欲しいと交渉しましたがそれを拒否。田口容疑者は「金は全て動かした、戻せない。罪は償う」と話していました。
5月18日に逮捕され、送検、家宅捜索されました。
お金については「数社のネットカジノに全部使った」と話していました。
これまで弁護士が明らかにしたところによると、4630万円を数社に分割して送金していたということですが、最も額が大きかったのがA社へ27回にわたって送金された約3590万円です。
最終的に田口容疑者の口座に残っていたのは7万円弱でした。

■弁護士「別の犯罪に問われる可能性」
 井上キャスター:
関係者によりますと今回、決済代行業者から阿武町の口座に少なくとも約3500万円が送金されたということです。
一体どんなケースが考えられるのでしょうか。

元東京地検特捜部の若狭弁護士は二つの可能性を指摘します。
▼まず一つは、容疑者が本当に全額使い切ったということであれば、決済代行業者が保険などに入っているだろうから保険または自費で送金したのではないか。
▼もう一つが、全部使い切ったというのは嘘で、多額の資金が存在していて、ただ単に隠すためにそこに送金していたという可能性です。
スピード感として保険で払ったというのは考えにくいので、やはり可能性としては、「全て使ったというのは嘘で多額の資金が残っていた」ということではないか、というところです。

元東京地検特捜部副部長 若狭勝弁護士:
決済代行業者としては、こうした犯罪に基づいたお金だということを知りながら保管するということが、刑法で処罰の対象になるので、早々に戻してきたという可能性が一番あると思います。
やはり元々決済代行業者のところにこのお金が残っていたというのが一番自然ではないかと思います。

田中ウルヴェ 京 スポーツ心理学者(博士):
残っていた資金を送金したとすると、田口容疑者の処罰が軽くなることはありますか。

元東京地検特捜部副部長 若狭勝弁護士:
少なくとも、嘘をついていたということになると、嘘をついて犯罪で得た金を隠匿していたということで、田口容疑者がまた別の犯罪に問われる可能性があります。
ですから、これが嘘だったのか、あるいは勘違いだったのか、などが今後の捜査のポイントにはなると思います。

井上貴博キャスター:
これまで決済代行業者などが海外の会社だとお金の動きを追いにくいのではないか、と言われている中でお金が戻ってきたということは、海外の会社ではなかったということが推察されるわけですか。

元東京地検特捜部副部長 若狭勝弁護士:
そうですね。おそらくまだ海外には行ってないで、国内の代行業者のところだった可能性があると思います。
警察からいろいろ捜索が入ったり聞き取りが入る過程で、代行業者において自ら返した方がいいという判断がなされたという可能性が一番あると思います。

■阿武町に批判の声も…
井上貴博キャスター:
ここからは阿武町としても“しっかりとチェック体制を構築するべきじゃないか”という点についてです。
山口・阿武町の花田憲彦町長は今回の問題について「発端が我々のミスということで、いろいろな方々からお叱りの電話やメールなどがたくさんくる。職員もその対応に本当に疲弊している」と話しています。
職員1人が悪かったということではないと思いますが、システムとして、組織として、もう少しダブルチェックやトリプルチェックなどやり方があったのではないかというところです。
SNSでは「20代前半の若者(田口容疑者)の人生を狂わせ、未来を奪ったことは重く受け止めるべき」「町長や関係部署の職員の責任を明らかにするべき」などの声もあがっています。
この点について花田町長は「我々のミスから起こったことなので、耐えていかなければならない」としています。

ホラン千秋キャスター:
こういったことが起きた時に、自治体としてはどういうシステム作りをしておけば次から防ぐことができるのでしょうか?

元東京地検特捜部副部長 若狭勝弁護士:
やっぱり送金する際はダブル、トリプルでチェックするとか、あるいはこういう誤送金が起きたときに素早くどういう対応をするかということを、あらかじめマニュアル的にきちんと浸透させておくということが大事だと思います。
いずれにしても町の責任、行政責任というのが大きいと思うのですが、今回お金が相当戻ってきたことを踏まえると、町の責任が大きいということで場合によっては田口容疑者に執行猶予という可能性が出てきているのではないかと思います。

ホラン千秋キャスター:
それはお金が返ってきているから、ということですか?

元東京地検特捜部副部長 若狭勝弁護士:
“財産犯”というのはやはり被害金が戻ったかどうかというのが量刑において一番大きな要素です。
今回、自分から戻したわけじゃないにせよ、かなりの金額が町に戻ったということは田口容疑者には非常に大きな情状になろうかと思います。

井上貴博キャスター:
田口容疑者が“嘘をついていた”というここだけを見ると悪い心象になるのですが、結果的に容疑者は何もしていないけどお金が戻ってきたということは、容疑者にとってプラスに働くという理解でいいのですか?

元東京地検特捜部副部長 若狭勝弁護士:
ただ、嘘をついていたということで犯罪収益を意図的に隠匿していたという別の犯罪が今後問われるかどうか。その辺は田口容疑者の供述がどうなっているのかというところにかかっていると思います。
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2022年05月25日

日本国憲法に「軍隊と戦争の放棄」という独立国家としてはあり得ない条文が盛り込まれた本当の理由

日本国憲法に「軍隊と戦争の放棄」という独立国家としてはあり得ない条文が盛り込まれた本当の理由
2022年05月24日 PRESIDENT Online
弁護士 堀 新

自民党は「現行憲法の自主的改正」を党是としており、岸田文雄首相は自民党の改憲案の早期実現を目指すと発言している。その前提には、日本国憲法はGHQに押しつけられたもので、日本人が自主的に制定した憲法ではないという考えがある。
弁護士の堀新さんは「憲法のたたき台については、GHQによって『押しつけ』られた要素はある。ただ、それには相応の理由があることも踏まえるべきだろう」という――。

■憲法議論で多くの人が勘違いしていること
今年は日本国憲法が1947年に施行されてから75周年にあたります。
さらにコロナ問題やウクライナ戦争などもあって、憲法のあり方についての議論が例年よりも盛んにおこなわれるようになっています。
ただ、憲法についての議論の中には、かなり乱暴で大ざっぱな印象論も混ざっていることは否定できません。
例えば「日本国憲法は国民の意向に関係ないGHQの『押しつけ』だった」とか「わずか1週間でアメリカ人たちが作った」とか、さらには「外国から押しつけられた憲法ではなく、日本国民の意思で自主憲法を制定しよう」などという声がよく聞かれます。
果たして日本国憲法は「押しつけ」だったのでしょうか。
また、日本国民の意思が何も反映されずに制定されたのでしょうか。
実際の経緯を確認してみましょう。

■「GHQ案=日本国憲法」ではない
まず結論から言ってしまうと、日本国憲法は、敗戦後の占領された日本で、GHQの作成した案をたたき台として、そこに日本側が修正や追加を行ったうえで制定されました。
このことからすれば、少なくとも最初の案については、多かれ少なかれGHQによって「押しつけ」られた要素があること自体は否定できないでしょう。
ただし実際の展開としては、GHQが作成して日本政府に与えた条文をそのまま日本語に翻訳して日本国憲法にしたというわけではないし、民意が反映されなかったというわけでもありません。
GHQの案に日本政府がある程度手を加え、さらに、1946年4月の日本初の男女平等選挙で選ばれた衆議院議員と(選挙の対象でない)貴族院議員が審議して、(GHQの意向に反しない限りにおいて、ですが)さまざまな修正を加えたうえで、現在の日本国憲法が完成したのです。

■そもそもなぜGHQが草案を作ったのか
そこで次の問題は、なぜ「押しつけられた」かということです。
この点、日本国憲法に批判的な論者から「憲法9条の戦争放棄で日本を非武装にするために押しつけたのだ」という主張が時々出てきますが、戦争放棄だけが問題だったのでしょうか。
そうだとすると、戦争放棄の部分だけ「押しつけ」して、それ以外の部分はすべて日本政府に任せる形で憲法案を作らせてチェックするという方法でも良かったはずですが、実際はそういう流れにはなりませんでした。
逆に考えてみましょう。
仮にGHQが日本国憲法(の草案)を「押しつけ」することなく、当時の日本政府に新憲法を作るのを完全に任せていたら、どのようになっていたのでしょうか。
(当時の日本政府というのは、戦前・戦中から政界や官界にいた人々によって構成されていたことに注意してください。) そこで、まず日本政府がどのように憲法を作る(改正する)つもりだったのかを確認していきましょう。

■民主主義体制を目指すために
細かい経緯は省略しますが、ポツダム宣言により日本で民主主義体制を確立させることが前提になっていたことから、敗戦後に日本政府は大日本帝国憲法の改正を検討することとなって、1945年10月、松本烝治(じょうじ)国務大臣を委員長とする憲法問題調査委員会(いわゆる松本委員会)を発足させました。
松本委員会の中でさまざまな憲法案が検討されたのですが、その一方で、政界・民間を問わずいろいろな立場の人々が、それぞれの観点で新憲法案を作成していきました。
この中でも重要なのが、民間の研究者たちによる「憲法研究会」というグループの案ですが、これは後で説明します。

■「天皇主権、軍隊の維持」はそのまま
1946年2月、松本委員長はGHQの反応を打診するために、「松本甲案」と呼ばれる案を提出しました。
これは大日本帝国憲法をそのままベースとしたうえで、部分的にだけ改正して対応するというもので、その全貌をここで紹介することはできませんが、例えば次のようになっていました。

第1条 大日本帝国憲法は萬世一系の天皇之を統治す(★変更なし)
第3条 天皇は至尊にして侵すへからす(★「神聖にして」を「至尊にして」に変更)
第4条 天皇は国の元首にして統治権を総攬し此の憲法の条規に依り之を行ふ(★変更なし)
第5条 天皇は帝国議会の協賛を以て立法権を行ふ(★変更なし)
第6条 天皇は法律を裁可し其の公布及執行を命す(★変更なし)
第11条 天皇は軍を統帥す(★「陸海軍」を「軍」に変更)

■前憲法からまったく脱却できていない
その他、議会の権限を強化すること、軍に対する政府の統制を強化することなどの改正箇所もありました。
ただ、主権者は天皇のままであって国民ではなく、相変わらず「臣民」という時代錯誤な用語が用いられ、さらに現在は当然のこととされている「個人の尊厳」や「平等」や「基本的人権の不可侵」という発想もありませんでした。
自由や権利が基本的には「法律の範囲」でしか保障されないという点も従来通りでした。

この政府案がそのまま受け入れられていたとしたら、議会の権限がより強くなり(つまり、より「民主的」になり)、軍に対するシビリアンコントロールが強化されていたなどの点では、確かに従来よりはましになっていたでしょう。
ですが、相変わらず国民は天皇の臣下という立場であり、天皇が主権者のままで、権利の保障も不十分というひどい状態だったでしょう。
なお、これ以外にも松本委員会の中ではさまざまな案が発案されており、より改正の度合いが高い案もあるにはあったのですが(「臣民」という言葉を「国民」にしたり、平等原則を導入するなど)、いずれも「天皇が統治権を持つ」という発想から抜け出せていませんでした。

■昭和天皇を訴追しようとしていたオーストラリア
1946年2月にこの松本甲案の提出を受けたGHQは、これでは到底他の連合国を納得させることはできないと考えて、急いで自ら草案を作成するに至ったのです。
オーストラリアなどは昭和天皇を戦争犯罪人として訴追することを主張していましたが、アメリカ(とその傘下のGHQ)は、日本の統治と再建のためには昭和天皇を温存することが必要だと考えていました。
GHQとしては一刻も早く、民主主義や人権尊重などの観点で国際的にも通用するような新憲法を作成して、各国を納得させなければならない立場になっていたのでした。
日本国憲法の草案が非常に短期間で作成された背景には、このような事情があったのです。

■GHQが参考にした日本の民間案
GHQが草案を作成するにあたっては、諸外国の憲法だけでなく、日本の民間の憲法案も参考にされました。
この時に大きな影響を与えたとされるのは、高野岩三郎、森戸辰男、鈴木安蔵などの学者グループ「憲法研究会」が作成した案で、天皇主権(統治権)を完全に否定し、国民主権を明確に打ち出していたのでした。

一、日本国の統治権は日本国民より発す
一、天皇は国政をみずからせず国政の一切の最高責任者は内閣とす

さらにこの「憲法研究会」案では、松本甲案には存在しなかった、国民の平等、法律でも制限できない自由の保障、拷問の禁止なども明記されていました。

一、国民は法律の前に平等にして出生又は身分に基く一切の差別は之を廃止す
一、国民の言論学術芸術宗教の自由に妨げる如何なる法令をも発布するを得ず
一、国民は拷問を加へらるることなし付け加えると、

この「憲法研究会」案では、現在の日本国憲法の25条(生存権)の原型となる次のような条項もあったのです。

一、国民は健康にして文化的水準の生活を営む権利を有す

これはGHQ案には反映されなかったものの、後に帝国議会での審議の際に議員たち(前述の憲法研究会のメンバーだった森戸辰男自身も議員となっていました)によって最終的に付け加えられて、憲法25条になりました(後述)。

■当時の政府案が問題だったからGHQ案ができた
以上のとおりで、「日本国憲法はGHQによって押しつけられた」という議論以前に、「当時の日本政府は、大日本帝国憲法を微修正した程度の古い発想の憲法案しか考えていなかった」ということこそが問題なのです。
「9条で戦争放棄をさせるためにGHQは自分の新憲法案を押しつけたのだ」などという意見が世間にあります。
まるで戦争放棄の論点以外では当時の日本政府の憲法案の考え方に問題がなかったかのような意見ですが、決してそういうことではありません。

■「日本国憲法は1週間でできた」わけではない
このような経過で、GHQは、諸外国の憲法や日本の民間案などを参考にしたうえで、約1週間で自ら日本国憲法の草案を作成しました、これを1946年2月に日本政府に交付しました。
日本政府はGHQ側と折衝しつつ、これにある程度の手を加えて日本語化したうえで3月に「憲法改正草案要綱」としてメディアに発表し、国民の知るところとなったわけです。

「日本国憲法は1週間でできた」と言われるのは、正確にはこのGHQの草案の段階の話です。
(このGHQの草案は、国会を一院制としたものであり、これを受け取った日本政府が手を加えて「憲法改正草案要綱」にしていく段階で二院制に変更されています) 日本政府はこの憲法改正草案を1946年6月に帝国議会に提出。約4カ月審議して、さらにさまざまな修正や追加が行われ、日本国憲法が完成するに至ったのです。

この憲法案を審議した帝国議会のうち衆議院は、1946年4月に日本初めての男女平等選挙で選ばれた議員によるものでした(ちなみに参議院はまだなく、帝国憲法下の貴族院がもう一つの議院として存在していました)。
この選挙のときに国民は憲法案の報道発表を知ったうえで投票し、そうして選ばれた議員たちが検討しいろいろ修正も加えたうえで、最終的に現在の日本国憲法が作られたというわけです。
この議会の審議の過程では、いくつかの新たな条文が追加されました。
日本側で追加した条文として特に有名なのは、25条の生存権と、17条の国家賠償請求権です。

■憲法に民意は反映されたのか否か
日本国憲法の誕生のプロセスでは、少なくとも男女平等の総選挙による衆議院議員の審議を受けているので、その限りでは民意が反映されていたことになります。
この点について「連合国の占領下だったのだから、国民の自由な意思が反映されたとはいえない」という意見もあります。
そこで今度は、連合国の占領が終わった後の状況を確認してみましょう。
サンフランシスコ平和条約が1952年4月に発効して日本の占領が終わり独立が回復すると、憲法改正を目指す動きが政界で強まりした。
1955年に旧自由党と旧民主党の二つの保守政党が合同して自由民主党が誕生、時の鳩山一郎内閣は憲法改正を国民に強く訴えて1956年の第4回参議院選挙に臨みました。
しかしこの憲法改正を争点とした参議院選挙の結果、改憲派の議席は3分の2に満たなかったのです。
さらに1958年に岸信介内閣も憲法改正を強く訴えて第28回衆議院総選挙を戦ったものの、やはり3分の2の議席が得られず、改憲の動きは挫折したのでした。

このように見てみると、日本国憲法は、まず占領下の総選挙の民意で選ばれた国会によって審議を受けて制定され、さらに占領が終了した後、1956年の参議院選挙と1958年の衆議院総選挙の2回、憲法改正の是非について民意の洗礼を受けて現状維持が選択されたということになります。
少なくとも「今の憲法に日本国民の意思が反映されていない」という類いの主張には無理があることがわかると思います。

■同じ敗戦国のドイツと日本の違い
最後に、日本と同じ敗戦国だったドイツの憲法制定はどうだったのかを紹介しましょう。
こちらは日本とはかなり異なった経緯をたどることになりました。
日本とドイツの状況の最も大きな違いは、終戦前までの統治機構が残っていたかどうかという点でしょう。
天皇や内閣制度、官僚機構が残って、占領軍がこれらを通じて間接的に統治したのが日本ですが、ドイツの場合は、もともとの統治機構(ナチドイツの政治体制)が消滅し、占領軍が直接統治するようになったのです。
いずれにしても新たな憲法が必要になりますから、占領軍の指示を受けて、ドイツ人の法律家や学者などから構成された委員会が選ばれ、憲法案をゼロから作成し占領軍と協議しながら「ドイツ連邦共和国基本法」を完成させたのです。

結果としては、終戦前に存在したナチの政府が完全消滅したドイツでは、ドイツ人が自主的な憲法案を作って占領軍と調整しつつ完成させました。
逆に終戦前までの政府が残った日本は、古い発想のまま憲法案を作ろうとしたために占領軍にダメ出しをされて、占領軍からたたき台を受け取って手を加えることになったのでした。
皮肉な話になりますが、古い政府体制が残った日本では、古い考えの憲法案を作ったために占領軍に受け入れられず、新たな案を与えられてやり直すことになった一方で、古い政府体制が消えたドイツは、それまでとはまったく違う発想で自主的に憲法を作ることになったというわけです。
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堀 新(ほり・しん) 弁護士 1963年生まれ。
1987年、東京大学教養学部教養学科第三(相関社会科学)卒業。
1987年、株式会社東芝入社、主に人事・労務部門で勤務。2001年〜2003年、社団法人日本経済調査協議会に出向。
2006年、司法試験に合格、2007年、最高裁判所司法研修所にて司法修習。2008年、弁護士登録。
「明日の自由を守る若手弁護士の会」会員。主な著書に『13歳からの天皇制』(かもがわ出版)。
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2022年05月26日

この先の物価高が心配な人に伝えたい7つの心得

この先の物価高が心配な人に伝えたい7つの心得
給料が増えない中で支出減、収入増ができるか
2022/05/25 東洋経済オンライン
岩崎 博充 : 経済ジャーナリスト

気候変動、パンデミック、ロシアによるウクライナ侵攻などなど、世界的な規模で起きた要因でモノやサービスの価格が上がる「インフレ」が蔓延している。
加えて日本では、「円安=輸入物価の上昇」という特有のリスクによってもインフレが進行しつつある。

インフレの番人である日本銀行の黒田東彦総裁はインフレを抑えるために円安を回避する政策を採る意思がないことを明確にしている。
つまり、このインフレは長期的なもの、構造的なものとして準備していく必要がある。
インフレは、お金持ちにとってはそれほど大きな問題ではないが、ギリギリの生活をしている人には重大かつ深刻な問題だ。

これまで、日本経済は長期にわたってモノやサービスの価格が下がるデフレ経済に悩まされてきたが、ここにきてインフレの時代を迎えることになる。
インフレに対応する方法がよくわからない、という人も少なくないはずだ。
インフレに打ち勝つためのノウハウについて考えてみたい。

賃金上昇が望めない中でのインフレ?
今回のインフレの最大の特徴は、気候変動や感染症拡大、そしてウクライナ戦争といった具合に、通常のインフレとは異なる構造的なものが要因になっていることだ。
そのために、原油価格や食料品価格、物流コストといった、人間が生活水準を保つために不可欠な物資が値上がりする傾向が強い。
1970年代の日本の高度経済成長時代に起きた経済成長に伴うインフレと違って、賃金の上昇が伴わない物価上昇ともいえる。

賃金の上昇が伴わないインフレは極めて厄介で、国民生活を大きく圧迫する恐れがある。
たとえば、日本が高度経済成長時代だった1970年の消費者物価指数は31.5(総務省統計局調べ)、それが1980年には74.5(同)となり、10年で物価が2.36倍になったことがわかる。
一方で、人々の賃金も上昇していて、1970年の平均月収11万2949円(総務省統計局家計調査、世帯実収入)は、10年後の1980年には34万9686円(同)になっている。
実収入は3倍も上昇した。これが経済成長を伴ったインフレの姿だ。

しかし、現在の構造的なインフレは経済成長を伴わないインフレ、あるいは景気後退と物価高が同時に襲う「スタグフレーション」に陥る可能性が高い。
とりわけ、資源を輸入に頼り、食料依存率もOECD加盟38カ国中32位に低迷してきた日本は、極めてインフレに弱い体質になっている。

では、どうすればインフレに対応できるのか。インフレから生活を守るためには、大きく分けて「支出を減らす方法」と「収入を増やす方法」の2つがあり、全部で7項目挙げられる。

簡単に整理してみよう。

<支出を減らす>
@節約による生活コスト削減
Aシェアリングエコノミーの活用
B田舎で自給自足によるライフスタイル
C物価の安い国や地域への移住

<収入を増やす>
1.副業による収入増
2.収入の高い仕事への転職
3.投資による資産防衛

今回のインフレで目立つのは、やはりウクライナ戦争によってロシア産原油や小麦などの食料品の値上げが目立つことだ。
日本も含めて、いずれはガソリン価格や水道光熱費、物流などの輸送費等が、さらに上昇していくのは間違いない。
物価が上昇するのに、不況になって賃金が増えないとすれば、やはり支出を減らすしかない。

まずは、支出を削減する方法から取り組むのが王道なのかもしれない
最も単純な節約法は結婚すること?
さて、実際に支出を減らすにはどうすればいいのだろうか。
最もよく知られている方法には、複数人で暮らす方法がある。
単身者であれば結婚して2人で暮らす方法だ。
昔から、「1人ぶちは食えないが2人ぶちは食える」とよく言われる。
実際に、総務省統計局の家計調査(家計支出編、消費支出合計の月額、2021年)のデータを見ると、次のようになる。

●単身世帯の消費支出合計……15万5048円
●2人以上世帯の消費支出合計…… 27万9024円
2人以上だからといって2倍になるのではなく約1.8倍に抑えられている。
単純な計算だが、2人で暮らすことの節約効果は抜群と言っていい。
賃貸住宅やクルマなどをシェアして使う「シェアリング」の発想も節約志向の1つだ。
もともと「シェアリングエコノミー(共有経済)」という考え方は、IT技術を活用したプラットフォームを通じてモノやサービスを共有する新しいライフスタイル。
デジタル社会の進展によって浸透したものだ。

最近は、ここにAI(人工知能)技術が加わり、数多くの種類のシェアリングエコノミーが出てきている
空間(ホームシェア、駐車場)、移動(カーシェア、シェアサイクル)、スキル(家事代行、育児、料理)、お金(クラウドファンディング)、モノ(フリマ、レンタルサービス)などなど、新しいインフレ時代に対応する生活防衛法の1つだ。
パンデミックの蔓延によってテレワークが一般的となり、どこに住んでも仕事を続けられる働き方が定着しつつある。
田舎での自給自足生活も、コロナ以前よりは現実味がある方法だ。

自分が住みたい場所に移住して、仕事も続ける。そんな新しい働き方や住み方が可能になりつつある。
ただ、家庭菜園といっても実績も、スキルもないと難しい。
田舎暮らしには特有のリスクも多い。
周囲の人間関係や自治体活動など、かえってコストがかさむ場合も少なくない。
単なるインフレ対応のためだけに、移住するのは間違いだろう。

とはいえ、将来的にハイパーインフレのような壊滅的な状況を心配する人は、長い年月をかけて準備するにはいい方法といえる。
ちなみに、原油価格の上昇など当面はエネルギー価格が上昇する可能性が高い。
移動手段にクルマを考えている人は、ガソリン代との兼ね合いも考えなくてはいけない。
また北国では暖房費も高くつく。
一方、コロナが終息すれば海外への移住も可能になるかもしれない。
円安がどこまで進むのかにもよるが、1ドル=150円台とか200円台といった円安になると、海外移住も難しくなる。
世界には、日本より物価の安い国が山のように存在するが、残念ながらそういった国では、日本と同じ生活水準を望むのは難しくなる。

副業による収入は月額6万円程度?
一方、副業による収入増もインフレへの対応策としては効果的かもしれない。
テレワークが中心となって、働き方改革などと重なり、時間的な余裕ができた人は意外と多いはずだ。そこで「副業による収入増」というインフレ対応策が考えられる。
副業や兼業が認められている企業の場合、すでに3割弱の人が始めているというデータもある。
「働き方の『いま』と『これから』に関する意識調査(パーソルホールディングス、2021年11月26〜28日調査)」に基づく数字だが、同調査によるとコロナ禍によって超大手企業では74.4%の人が「働き方が変わった」と答えている。
通勤などにかかる時間が減少したことから、副業へのハードルが低くなった、と考えていい。

実際に、副業によって月額どの程度稼ぐことができるのか。パーソル総合研究所の「副業実態意識調査」によると、副業の平均月収は6.82万円。マイナビ転職の調査によると、実際に行っている人の収入は平均で5万9782円(2020年11月実施のアンケート調査)。
つまり月に5万〜6万円、というところが妥当な線だろう。
場合によっては、副業から有利な転職が可能になるかもしれない。
そのまま独立、起業という可能性も出てくる。

1つの企業に縛られて、定年退職まで生きる、という日本独特の価値観は世界的には稀有な存在だ。
収入増のために転職ではなく、あくまでも自分のスキルアップのためという意識が大切だが、転職や起業もインフレ対応策の1つではある。

資産運用によるインフレ対応は可能なのか?
日本はこれまでモノの値段が下がるデフレに悩まされてきた。
その反面で、お金の価値がいつまでたっても目減りしない恩恵にもあずかってきた。
現金を銀行に預けるだけでお金の価値が上がっていく時代だったわけだ。
しかし、インフレ時代になるとそうはいかない。
せっせと預金したお金も、徐々に目減りしていくことになる。
年10%のインフレが押し寄せるような時代になれば、預貯金はあっという間に目減りしていくことになる。
そこでクローズアップされるのが「資産運用」だ。

簡単に言うと「リスクを取って、リターンを稼ぐ」こと。
デフレの時代にはリスクを取らなくてもよかったが、インフレはそうはいかない。
リスクを恐れずに投資しないと、資産は減少し稼ぐこともできない。

実際の運用方法は、金融庁のホームページ等にも詳しく掲載されており、学校教育でもこの4月から金融リテラシーのカリキュラムが始まっている。
年金生活者のように収入の急激な増加が望めない人はもちろん、子育て世代の若い人でもインフレ時代に合った資産運用が必要だ。
何もリスクを取らない人はいつまで経ってもお金は貯まっていかない。

資産運用といっても、基本的には国内外の企業に投資する「株式投資」、国債などの債券に投資する「債券投資」、そして運用のプロに任せる「投資信託」の3つが代表的なもので、投資信託には市場の流れに連動する「インデックスファンド」、ファンドマネージャーの個人的な力量に任せる「アクティブファンド」の2つに分かれる。

最近は、金融商品以外にも「暗号資産」のほか、株式市場を使って原油や小麦に投資ができる「ETF」、為替変動を利用して稼ぐ「FX」などなど、さまざまな商品がそろっている。
ウクライナ戦争によって、原油価格や小麦の価格が急騰しているが、それらの商品に少ない金額から投資することも可能だ。

失敗しても取り返せる範囲から始めるのが成功するコツだ。
証拠金取引や信用取引といったレバレッジをかける運用法は運用のプロでもしばしば失敗する。
インフレ時代は、「知らなかった」「リスクを取るのは嫌」という言い訳が通用しない。
自己責任が厳しく問われる社会になるからだ。
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2022年05月27日

「相手の名前が出てこない」時、どう切り抜けるか?

「相手の名前が出てこない」時、どう切り抜けるか?
2022.5.26 Diamondオンライン
野口 敏:話し方教室TALK&トーク主宰

「相手を主人公とした会話」を使えば、口ベタな営業マンもみるみる成績アップ。
信頼と成果を勝ち得ることができる話し方のテクニックとは。
話し方講師の野口敏氏の新著『またすぐに!会いたくなる人の話し方』からの一部抜粋で、仕事や人間関係に役立つコミュニケーションの極意を紹介していく。

名前で呼びかけられたら 誰もがうれしい
 ずいぶん前のこと、ふと後ろから「野口さん」と女性に声をかけてもらったことがあります。
 その日から1週間ぐらい前に、一度だけ彼女の会社で会ったことのある方でした。
私の名前を覚えてくれていたのです。
たったそれだけのことですが、私は「この人、いい人だな」と感じたものです。

 名前とは本人にとって、とても大事なもの。これを大切にしてあげられる人は、人の心をつかめます。
 たとえば商談の時に、相手のことをつい「社長」と肩書だけで呼んでしまいがちですが、ここは「野口社長」と名前付きで呼ぶほうが親しみを持ってもらえるはずです。
 婚活や恋愛のシーンでも、相手が先に来て待っていたら、ただ「お待たせしました」ではなく、「○○さん! お待たせしました」と呼びかけたほうが、愛が生まれる可能性が高くなります。

異動や転職で新しい部署に入った時、新人として入社した時に真っ先にするべきことは、関わりのある人の名前は手帳にでも書いておき、初日に全て言えるよう記憶しておくことです。
そして、「○○さん、おはようございます」と、できる限り名前を付けて挨拶すること。
 それは「あなたは私にとって、とても価値のある人です」というメッセージになるからです。

どうしても覚えられないときは 有名人の名前と連動させる
 私は講座を行なう時、生徒にはなるべく名前で呼びかけるよう努力しています。
若い頃は20人ぐらいの名前は、すぐに覚えられましたが、最近はそうもいきません。
 そこで、裏で色々と努力を重ねているのです。

 まず大事なことは「その人にとって名前はとても大切なもの」という気持ちを強く持つこと。
名前で呼びかけられたら、誰もがうれしく感じることを肝に銘じています。
 次に、そこにいる方の顔を見て、名前が出てくるかどうかチェックをしています。
出てこなければ、名簿を見て何回も心の中で「この人は○○さん」と、意識付けを行ないます。
 それでも記憶できない場合は、芸能人やスポーツ選手の名前と連動させることもあります。
心の中で「この人を見たら、東京ヤクルトスワローズの○○選手を思い出せ」というようにするのです。
 それでも頭に入らない人もいるのですが、その場合は初めに何回も名前で呼びかけて、なるべく頭の中にインプットできるようにしています。

思い出せない時は 「自分から名乗る」
 久しぶりに会った人の名前が出てこない。
相手は笑顔なので、こちらのことを覚えていそう。できれば名前を呼んであげたい。
 そんなピンチに、覚えておいて損はない一策があります。
 それは「久しぶりです。野口です」と、まず自分から名乗ること。
 すると、相手も名前を言ってくれる可能性が高くなります。
 相手が気の利かない人で、自己紹介をしてくれない場合は、「お久しぶりですね!」と感激した表情で歓待し、間髪を入れずに「お名前は何でしたっけ」と伝えます。
 この笑顔と質問とのギャップに、相手は名前を忘れられたことを悪く思わないだろうと、私は思っているのです。

以前、相手が話していたことを さりげなく話題にする 「○○さんって、熊本の方でしたよね」 「えっ! 覚えていてくれたんですか!」  相手が以前、話したことをあなたが覚えていた。偶然そのことを話題にしたら、相手がいたく喜んでくれて、その後の会話がスムーズに運んだ。  そんな経験が、あなたにもあるでしょう。

 相手から見れば、自分の話を覚えてくれているということは、あなたが自分の話をとても印象深く聞いてくれて、そこにとても価値を感じてくれたということです。
 それは、とてもうれしいこと。あなたも誰かが自分の話をよく覚えてくれていたら、きっと心がはずむはずです。
 ということは、大事な人の話はしっかりと覚えておくと、それが相手の心をつかむことにつながるということです。

予約が絶えない鍼灸師の 魔法のカルテ
 私の生徒に鍼灸院を開いている女性がいるのですが、そこで働くある鍼灸師がカルテに患者と交わした会話のことばかり書いて、治療のことは隅っこに少ししか書いていないことに不安を感じていました。
 院長としては、患者の状態や治療の進捗を書くことが最優先だと思われたのです。
ところがこの鍼灸師、患者さんからのリピート率は院内で一番だということで、院長もそのことにはふれずにいたとか。
 その院長が私の講座を受けて、なぜその鍼灸師は患者さんのリピート率が高いのか、ようやくうなずけたと言っています。

この人は患者と交わした話をカルテに書き、再来院時にはそれを使って話をしていたのです。
「そう言えば、もうすぐ銀婚式って、おっしゃってましたね。お祝いはされたのですか?」 「ご主人とお二人で落語を聴きに行かれたんでしょう。落語って、どんなところが面白いんですか?」
 こんなふうに接してもらうことで、患者さんは自分がとても大切にされているような感覚になったのでしょう。
リピート率が高くて当然ですね。

 これは営業でも商談でも婚活でも、同じように使って喜ばれる素晴らしいスキルです。
ぜひ活用してください。
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2022年05月28日

「8時だよ‼ 昔は集合 今閉店」 サラリーマン川柳ベスト10

昔は集合 今閉店」 サラリーマン川柳ベスト10
2022/5/27 毎日新聞

「8時だよ‼ 昔は集合 今閉店」。
第一生命保険は27日、第35回サラリーマン川柳コンクール(通称・サラ川)の人気ベスト10を発表した。
新型コロナウイルス禍で時短営業を強いられた飲食店の苦境を、大ヒットしたテレビ番組のタイトルとかけた一句が1位に選ばれた。
 長引くコロナ禍の中、暮らしのちょっとした変化をユーモアを交えて詠んだ作品が上位に並んだ。2
位に選ばれたのは「ウイルスも 上司の指示も 変異する」。職場の「あるある」が多くの共感を集めた。

 もはや日常となっているマスク生活にまつわる作品も多数ランクインした。
3位に入ったのは「にこやかに マスクの下で 『うっせぇわ!』」。
動画投稿サイトで話題となった曲「うっせぇわ」をテーマに、マスクで本心を隠しながらストレスを発散する姿が浮かぶ。  在宅勤務が増え、インターネットを使ったオンラインでの会議もすっかり定着。
「ズーム中 ペット参加で 盛り上がる」ことも珍しくない。

一方で、外出の機会が減り「巣ごもりで MからLに 服反応」という新たな危機も。
コロナ禍で企業もいや応なく社内改革を迫られたが、「デジタル化 しますと紙で 通知する」というトホホな現実もベスト10入りした。
 応募6万2657句から第一生命が選んだ優秀100句を対象に、全国約6万人のサラ川ファンが投票、上位10句を決めた。
今回から入選者の性別は非公表となった。【辻本知大】

◇サラリーマン川柳ベスト10

@ 8時だよ‼ 昔は集合 今閉店
A ウイルスも 上司の指示も 変異する
B にこやかに マスクの下で 「うっせぇわ!」
C 巣ごもりで MからLに 服反応
D マスク顔 確信持てず 見つめ合う
E マスクとる 緊急事態 ノーメイク
F あっ、マスク! 降りた階段 また登り
G 恋心 マスク外せば 花と散る
H デジタル化 しますと紙で 通知する
I ズーム中 ペット参加で 盛り上がる
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2022年05月29日

「生活保護受給者は自動車を持つな」という暴論 制度的欠陥を改め、「健康で文化的な最低限度の生活」を確保せよ

「生活保護受給者は自動車を持つな」という暴論
制度的欠陥を改め、「健康で文化的な最低限度の生活」を確保せよ
5/28(土)  Merk mal
昼間たかし(ルポライター)

生活保護受給者の車所有へのバッシング
 生活保護受給者に自動車の所有を認めるよう制度変更を求める声が、批判にさらされている。
きっかけは、東北6県のブロック紙『河北新報』が5月27日に配信した「生活保護受給者に車の所有認めて 制度見直し求める声」という記事だ。
 この記事は、交通インフラの乏しい地方における生活保護受給者の自動車所有を認めるよう求めている。
ところが、ヤフーニュースのコメント欄やSNS上にはネガティブな反応が多い。

 言うまでもなく、自動車には駐車場代やガソリン代、修繕費などさまざまな維持費がかかる。
ネガティブな反応は、そんな自動車を生活保護受給者が所有するのは一般社会から理解を得られないといったものから、生活保護受給者が任意保険へ加入せずに事故を起こした際、被害者が損害を負うことを危惧するものまでさまざまだ。

 今回に限らず、インターネット上では生活保護受給者を非難する声が散見されるが、今回もそのような勢力が一定数見られる。
しかし、本当にそれでよいのだろうか。
「明日はわが身」ではないのか。

「健康で文化的な最低限度の生活」とは何か
 まず大前提として、生活保護制度のベースとなっているのは日本国憲法第25条で定められた 「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」 だ。
 この権利をめぐっては、「何をもって最低限度」とするのかが、いつの時代も論じられてきた。

代表的なものが教科書にも採用されている「朝日訴訟」だ。
 これは、1957(昭和32)年に国立岡山療養所で生活していた男性が、兄から月1500円の仕送りを受けることになった際、社会福祉事務所がそれまで月600円支給されていた生活保護を取りやめ、仕送り分から600円を本人に渡し、残りの900円を医療費の自己負担分として徴収すると命じたことの是非を問うたものだ。
 裁判で男性は、生活保護の月600円の支給では生活できないとし憲法25条に反していると主張。
一審では男性が勝訴、二審では敗訴となり最高裁判決を前に男性が死去したため裁判は終結したが、現代でも「健康で文化的な最低限度の生活」を考える基本となっている出来事だ。
 なお、この時、問題となった当時の生活保護費月600円はシャツは2年1枚、パンツは1年に1枚買えばよいという想定の基準であった。

自動車は「ぜいたく品」なのか?
 その後、家電製品など耐久消費財の所有が当たり前となるなかで、自動車はクーラーと並んで、生活保護世帯が所有すべきかどうかが議論されてきた。
生活保護を受給する際に所有している家電製品などが 「生活用品なのか資産なのか」 厚生労働省の方針や各自治体の判断が極めて曖昧だったからだ。
 1994(平成6)年に毎日新聞が実施した「生活保護世帯の生活用品保有許可実態の全国調査」でも、当時の厚生省は自動車を 「身体障害者や山間・へき地に住む人」 などに限定していると解説。
 福島市では生活保護受給のために廃車させた事例があることや、群馬県では公共交通機関が未整備のため厚生省(当時)に方針の変更を求めていること、秋田県では現場サイドで自動車の所有を認めていることが記されている(『毎日新聞』1994年9月15日朝刊)。

 生活保護受給者に自動車の所有を認めるべきか否かは、近年始まった議論ではなく、方針が曖昧なまま、何度も問題が浮上しているものなのだ。
 1990年代には、生活保護受給者が兄弟から自動車を借りて運転していたところ、福祉事務所が 「自動車の所有・借用・運転は禁じられている」 として生活保護を打ち切った事例もある(『西日本新聞』1994年10月18日付朝刊)。
近年ここまでひどい事例は聞かないが、それでも対応が改善したとは言い難い。

2010年以降、自治体の判断や裁判の結果、生活保護受給者の自動車保有が認められる例は増えている。
状況は改善されているのだが、法律上は曖昧なままなのは制度の欠陥である。
 そもそも、自動車は「ぜいたく品」なのか? 違うだろう。

生活保護受給を諦めさせるもの
 法政大学の藤原千沙教授の研究によると、2015年の都道府県別母子世帯の世帯保護率では、世帯保護率が全国平均13.83%に対して、最も多い東京都は18.87%、最も低い富山県が0.61%だ。
 政令指定都市別では、京都市が35.48%なのに対して浜松市は8.15%で、公共交通が貧弱な地域では自動車所有が避けられないために、生活保護受給を諦めている可能性が強いことを指摘している(藤原千沙「地方における母子世帯の暮らしと生活保護ー自動車の保有・使用の視点から」『月刊自治研』59号)。

 こうしたなか、2021年10月には弁護士らでつくる「生活保護問題対策全国会議」が自動車を保有したままで生活保護を受給するための要点をまとめた冊子を作成し支援団体などを通じて配布している。
ちなみに「自動車を持ちながら生活保護を利用するために!」でインターネット検索すると、リンクが出てくる。
 生活保護受給者の自動車の所有を認めれば、彼らが社会から孤立することを防いだり、生活を再建できたりする。
そうであれば、もっと歓迎されるべきだと筆者は思う。

繰り返しになるが、 「明日はわが身」 なのだ。
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2022年05月30日

"正義中毒"が貧しい日本をさらにダメにする

"正義中毒"が貧しい日本をさらにダメにする
2022年05月29日 プレジデントオンライン

「悪い人には悪い結果が、よい人にはよい結果がもたらされるべき」という認知バイアスが行きすぎると、結果として世の中や自分を取り巻く環境を悪くする、と経済評論家の勝間和代さんは指摘する。
新著『できないのはあなたのせいじゃない』より、“正義中毒”にハマって損をしないためのコツを指南する──。
※本稿は、勝間和代『できないのはあなたのせいじゃない』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

■正義を振りかざす「メディア」を疑え
私は何年も前から、日本のテレビ番組に対して強い違和感を抱いています。
特に、「正義の味方が悪者を駆逐する」というコンテンツに対して疑問を感じます。
ドラマに限らず、バラエティやニュース報道にさえ、この「善悪の対立」という構造が存在しています。
代表的なのが、人気ドラマ「水戸黄門」です。
お金稼ぎをしている商売人や権力を振りかざす悪者を、覆面的なヒーローである水戸黄門が懲らしめるという、勧善懲悪の構成を何百通りにもアレンジして長年放送されてきました。
現在でも再放送を重ねていますが、これも強力なブレインロックになりうると私は考えています。
「公正世界仮説」のワナです。

■「世界は公正であるべき」という認知バイアス
公正世界仮説とは、「悪い人には悪い結果が、よい人にはよい結果がもたらされるべき」という社会的な認知バイアスのことで、社会心理学で使われる言葉の1つです。
「世の中のすべてはフェアである」と信じる心の癖のことで、これがあると、「水戸黄門」でいえば、最後に悪者が懲らしめられるクライマックスの場面では気持ちよくなると同時に、「自分が信じている世界が守られた」という安心感を得るようになるのです。

ところが、当たり前ですが、現実世界においては公正でないことが多々あります。
正義が負けることもあれば、悪者だけが得をすることもあります。
世の中はすべからく公正であるべきですし、世界をその状態に近づけていくのは必要なことですが、現実には、不公正は世の中にあふれています。

■被害者まで責め立てる「勧善懲悪の洗脳」
公正世界仮説がやっかいなのは、「悪い人は、最後はひどい目にあう」という考え方が、「ひどい目にあっているのは悪い人だから」という逆向きにも心を動かしてしまう点です。
そのため、公正世界仮説を現実世界に当てはめると、ひどい目にあった人に対して、「おまえは悪人だからしようがない」と責め立てる心理が働いてしまったりします。

たとえば、犯罪被害にあった人がいると、多くの人が同情する中で、同時に「この人にも何か反省すべき点があったのでは」という声が必ず上がります。
「痴漢にあったのは、あんなに短いスカートをはいていたからだ」 「盗難にあったのは、防犯意識が低いからだ」 「病気になったのは、生活習慣が悪いからだ」
ひどい目にあった人の側にも何らかの過失があったかのように責めるのが、勧善懲悪のブレインロックがかかっている人の特徴です。

■“犯人探し”が過熱する真因
新型コロナウイルス感染症の騒動の中でも、クラスターが発生するたびに“犯人探し”が過熱しました。
ウイルスに感染した人に対して、罪を犯したかのように責め立て、社会的な制裁を加えるような「感染者バッシング」が相次ぎました。
中には、医療関係者やそのご家族への誹謗中傷もあったといいます。

冷静に考えれば、新型コロナウイルス感染症拡大の犯人は、潜伏期間が長く感染力が強いという、ウイルスそのものです。
感染した人に非はありません。
ところが、公正世界仮説という洗脳を受けると、そういった事実と関係なく、ひどい目にあった人こそ攻撃対象だと、固く信じてしまうのです。

■ステレオタイプから外れるものに対して攻撃的になる
公正世界仮説には「ステレオタイプに固執する」という弊害もあります。
つまり、「動物好きは性格がいい」とか「保育士さんは優しい」といったたぐいの思い込みです。
そして、勧善懲悪と同じように、そこから外れることに対して許せない気持ちになり、やはり攻撃を始めるのです。
私自身、テレビ出演をしていた数年前まで、今思うと、公正世界仮説の被害者でした。
当時はクイズ番組や教養番組、討論番組などによく呼ばれて出演していたため、知識人として取り上げられることが多かったのですが、これが「女は男よりものを知らない」と思い込んでいるステレオタイプの人たちの不興を買ってしまったのです。

■バッシングの対象になってわかったこと
その結果、何が起きたかといえば、「えらそう」「性格がきつい」「意地悪」というバッシングの嵐です。
男性なら許される発言でも、女性である私が発すると、途端「上からものを言っている」となってしまうのです。
バッシングは男性に限らず、女性からもたくさんありました。
経営者や政治家も同じです。
女性がリーダーシップや頭脳で勝負しようとすると、途端にバッシングを受けてしまう。
そんな様子を、これまで数限りなく目の当たりにしてきました。

「女は男よりものを知らない」という自分の信じる秩序を乱されることが許せない。そういう人は、信じられないほど多数存在していることが分かります。

■「お金持ち=悪い人」「貧しい人=いい人」という認知のゆがみ
公正世界仮説の延長線上に「お金をたくさん儲けているのは悪いことをしているから」という認知バイアスもあります。
そのためか、「水戸黄門」に出てくる悪者は権力者や富裕層で、派手な着物を着ていたり、箱いっぱいの小判を数えていたりします。
一方で、貧しい農民が悪者として描かれることはありません。
時にこの「お金=悪の象徴」という社会的洗脳によって、社会から敵視される人や企業が出てきます。

最近ではメタ(元フェイスブック)やアマゾンなど、巨大テック企業がその標的となっています。
すでに社会インフラと化しているために、批判しながらもその利便性だけは享受している人が多いようです。
この背景には、「お金儲けに成功した人は悪い人。私はいい人だから成功していない」という認知バイアスの働きがあり、お金持ちが悪役だと“気持ちがいい状態”になっているということがあります。

■「労働収入こそ善」というロックで貧しくなる
もっといえば、「お金持ちは悪者」という社会的洗脳と背中合わせの二重構造になっているのが、「労働収入こそが善」という洗脳です。
労働収入とは、その名の通り、働いた対価として得るお金のことです。
企業に勤めているビジネスパーソンは企業から給与として収入を得ていますし、お店をやっている自営業の場合はサービスの対価をお客さんから受け取り、それが収入になっています。
実は、この「労働収入こそが善」とする認知は、お金に関する最大のブレインロックです。
これこそが日本の生産性がいつまでも世界の最底辺にある原因でもあります。
「長時間労働こそ頑張っている証」というブレインロックと2つがセットになって、広く世の中にはびこっています。

■一人の労働よりも、レバレッジが大事
生産性を考慮すれば、労働収入には本来限りがあるため、できるだけレバレッジをかけたほうがいいことは自明です。
様々なテクノロジーが進化した現代社会において、たった一人が労働することで生み出せる付加価値は、ほんのわずかであるということです。
だからこそ、価値をできる限り増幅するとともに、それを実現するためのテクノロジーをはじめとする仕組みが必要になってきます。

たとえば、私が1つの情報を3万人に伝える必要があるとします。
その情報が欲しい人を募集して、その人たちを一人ひとり訪ね歩きながら情報を伝えていたら、1日に100人訪ねたとしても1年近くかかることになります。
ところが、YouTubeという情報伝達のプラットフォームを使えば、手元で動画をアップするだけで、情報を欲する人がたちまち向こうから集まってきて視聴してくれます。
しかも、私が動画で話す時間はだいたい3分間。
それを加工してアップロードする時間はせいぜい5分間。合計してもたったの8分間で、「3万人に情報を伝える」という目的が1日で達成できるのです。

■労働収入だけでは、もはや収入は増えない
労働時間を増やせば増やすほど収入が増える時代ではなくなりました。
労働収入の最低ラインは、国が定める最低賃金で守られてはいますが、逆にいえば、時給で換算すると収入は非常に限られてしまいます。
テクノロジーや資本、機械を使う形でレバレッジをかけ、できる限り小さな労力で最大の成果を上げることが重要になります。
これは個人に限らず、企業全体の仕組みの中でも同じことがいえます。

たとえば、私はある飲料メーカーの工場を見学したことがありますが、広大な工場内でほとんどの作業はロボットが担っており、人はその管理をするためのほんの数人しかいませんでした。
企業全体の業務に対して、人が担う割合はごくごくわずかになっていることを実感した出来事でした。

■韓国よりも賃金が低くなった日本の現状…
いまや、個人も企業も、いかに労働時間を最小にしながら付加価値を最大限出せるようにするかが重要となるフェーズに入っていることは間違いありません。
特に個人の場合、労働収入以外で収入を上げる仕組みを作らないと、資産を増やすことが難しい時代になっています。というのも、日本の実質賃金は数十年にわたって足踏み状態にあるからです。

OECD(経済協力開発機構)が調査した「2020年世界の購買力平価」資料をもとに、朝日新聞が報道した記事によると、日本の実質賃金は年間424万円と、OECD加盟35カ国中22位。対して、1位のアメリカは約763万円でしたから、その差は2倍近くにもなります。
1990年までは日本よりも低かったフランス、イギリス、韓国にも追い抜かされているのが現状です。
特に韓国は、2000年ごろには日本の約半額だったのですが、2015年には日本は抜かれ、現在ではむしろ大きく差をつけられていることが分かります。
対して日本は、この30年間ほぼ横ばいです。

■最小労働、最大価値を目指せ
これを個人の話に落とし込めば、労働収入だけに頼っているとじり貧になるだけ、ということが分かります。
「創業者が株式公開で自分の株式を譲渡し、巨額の利益を得た」といった報道が時々あります。
広く一般の投資者へ新規株式公開する「IPO(Initial Public Offering)」によって、巨額のお金を手に入れるのはまさしく、多くの起業家の夢でもあります。

有名なのが、ファッション通販大手であるZOZOの創業者の前澤友作氏でしょう。
創業者の苦労がむくわれるのがIPOですが、とはいえ、それまでの創業者の労働やかけた時間に対してお金が入ってくるわけではありません。
投資家たちは創業者が作ったお金儲けの仕組みに価値を見出し、株式投資をします。
その現在価値としてのお金が、創業者に入ってくるわけです。
つまり、より多くの収入を得るためには、「より長時間働けばよい」という考えを捨て、いかに自分の労働を最小限に抑えながら世の中に大きな価値を生むかを考える――すなわち、「労働時間」と「収入」を切り離すことが重要なのです。

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勝間 和代(かつま・かずよ) 経済評論家
/株式会社監査と分析取締役/
中央大学ビジネススクール客員教授
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2022年05月31日

「もはや感覚薄れている」家計直撃の値上げラッシュ6月も次々と〜FPのやりくり術は?

「もはや感覚薄れている」家計直撃の値上げラッシュ
6月も次々と〜FPのやりくり術は?
5/30(月)  +rkb 

コンビニ「ローソン」の人気商品「からあげくん」は今年の4月で発売36年を迎えた。
これまで一度も値上げせず価格は216円(税込み)だ。
その「からあげくん」が5月31日、発売以来初めて値上げされ238円(税込み)となる

これだけではない。6月1日からは即席麺やアイスなどの多くの商品が値上りし、家計のやりくりは今後ますます難しくなりそうだ。
ファイナンシャルプランナーに値上げラッシュに向き合う“やりくり術”を聞いた。

今年中に8385品が値上げ.市民にあきらめムード
今年に入り、連日のように発表される食品の値上げ。
主な要因は物流費や原材料費の値上がりや急激な円安、人件費の上昇だ。
街で取材すると諦めムードが漂う.
−−−値上げについてどう思う?
「厳しいが子供の食べるものは出し惜しみできないので、それ以外のところで大人が我慢するしかない」
「小麦が上がると当然弁当も高くなる。値上がりしても賃金は上がらないので、そこを上げて欲しい」
帝国データバンクによると今年に入り4770品目の食品が値上がりした。
6月から7月にかけてさらに3000を超える品目が追加で値上げされる予定だ。
今年中に値上げされるのは今のところ8385品目にのぼり、平均値上げ率は12%となっている。

「うまかっちゃん」や「サッポロ一番」などの小麦を原材料とする多くの即席麺は6月1日の出荷分から値上がりする。
永谷園は、定番のお茶漬けや即席みそ汁などを約5〜9パーセント値上げします。
ほかにもソースやすし酢などの調味料、アイスクリーム、冷凍食品などが続く。

自衛策?「買いだめ」には注意
子供達に人気のスナック菓子も例外ではなく、カルビーなど商品によっては価格を据え置くかわりに内容量を減らすところもある。
さらに夏から秋にかけてはビールなどの酒類や飲料水も値上がりするという。
市民「前は値上げと聞いたら買いだめしていたけれど、ずっと値上げで備える感覚が薄れている」
値上げラッシュが続く中、家計をうまくやりくりするにはどうしたらいいのだろうか?
ファイナンシャルプランナーに聞いた。

ファイナンシャルプランナー・新田真由美さん
「お菓子はディスカウントストアやプライベートブランド商品を利用するのもおすすめ。
ただ”買いだめ”には注意が必要。
カップ麺は非常食のイメージがありますが意外と賞味期限が短いので確認を。
漠然とした不安にかられて無駄に買いだめしてしまいがち。
かえって無駄づかいになることもあるのでこの機会に家庭の消費量をしっかり確認することが大切」

福岡県では給食費の値上げも
こうした食材の価格の高騰を受けて、学校の給食費の値上げに踏み切る自治体も出てきた。
福岡県中間市は、4月から1食あたりの価格を小学校で40円、中学校で50円値上げしている。
市は、国の臨時交付金を活用して今年度の値上げ分を補填することを検討している。

一方、福岡市や北九州市久留米市は、栄養価を保ったまま安い食材に置き換えることで給食費を据え置く方針だ。
こうした動きを受けて福岡県は、県立学校や私立の小中学校、幼稚園などを対象に給食の値上がり分を補助することにしちえる。
そのための関連費として6月の補正予算案に約8億5000万円を計上した。
九州電力の電気代は17か月連続で値上がり ここまで食品をみてきたが、値上げは電気やガスなどの光熱費にも広がっている。九州電力が発表する標準的な一般家庭の1か月当たりの電気料金は右肩上がり。
値上げは17か月連続で、来月は7253円、そして7月は7271円まで上がる。

去年2月から比べるとすでに1000円以上の値上がりとなる。
ロシアによるウクライナ侵攻などによってLNG=液化天然ガスや石炭などの燃料価格が高騰しているためだ。
また、西部ガスも一般家庭の1か月あたりの7月の料金について、前の月と比べて119円高い6659円になると発表した。
こちらは11か月連続の値上げで、去年8月と比べてこちらも1000円以上上がっている。
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする