孤独を乗り越える、「科学的に正しい」3つの方法とは?
2022.5.19 Diamondオンライン
コロナ禍という、自分ではどうしようもない状況下はもちろん、仕事やプライベートなど、わたしたちは不安や孤独、焦りなど、ネガティブな感情をよく感じます。
もっと言えば、ネガティブな感情を抱くのは当たり前のことです。
ケンブリッジ大学でメンタルヘルスを10年ほど研究しているオリヴィア・リームス氏は、人が本来の力を発揮するのを妨げているネガティブな感情は、大きく9つに分けられるといいます。
本記事では、これらのネガティブな感情に対処する科学的なメソッドを新刊『STRESS FREE』より一部紹介します。
わたしたちはなぜ孤独を感じるのか
孤独感は、多くの人が悩まされている感情です。
2020年以前には、イギリス人の約5人にひとりが孤独を感じていましたが、新型コロナウイルス感染症のパンデミック以降、状況はさらに悪化しています。
それにしても、孤独とはなんでしょう?
人間の望んでいるつながりの数や質は、実際に得ているそれと、必ずしも一致しないといいます。
おおぜいの人に囲まれていても、寂しさを感じるときはあります。
結婚していようと、家族と住んでいようと、人は孤独になりえます。
と同時に、たとえひとりかふたりしか友だちがいなくても、その絆が強く、社会的欲求が満たされていれば、孤独だと思わないことも多いのです。
心理学者のジョン・T・カシオポは、孤独感の不快さは、飢えや渇きや身体的な痛みの不愉快さにも匹敵する、と言います。人間は社会的な生きものであり、つながりなしには心身が参ってしまうのです。
慢性的に孤独な人々は、若くして死に至るリスクが高く、免疫機能が低下するおそれもあります。
これはすべて、生物としての進化によるものです。
わたしたちの初期の祖先は、長いあいだひとりでいるとリスクにさらされる、つまり、外敵に襲われる危険がありました。
けれども集団のなかにいれば、危険から守られる確率は高まります。
このような、他者といることで安心感を得ようとする人間の基本的な本能は、そのころから変わっていません。
したがってわたしたちは、飢えから食べものを、渇きから飲みものを求めるように、孤独感から仲間を見つけようとします。
人はみな、何かに帰属したいという欲求があり、この欲求が満たされないと、心身に悪影響が出始めるのです。
おしゃべりの心理的効果
だれかと話すと、気分は確実に変わります。
シカゴ大学の研究者が、朝の通勤列車で乗り合わせた人と話をするとどんな気分になるか、人々に試してもらいました。
ほとんどの人は、「知らない人と話すのは気まずい」と考えていましたが、実際はその逆でした。
実験のためにランダムに選ばれた被験者が、同じ列車に乗っている人に話しかけて雑談をしたところ、「今までになくポジティブな気分で通勤時間を過ごせた」というのです。
それでは、話すと気分が良くなるなら、なぜ多くの人は通勤中に黙っているのでしょうか?
その理由は、人間が「他者のつながりへの関心を低く見積もっている」からだと、この研究の執筆者はいいます。
バスや列車のなかなどさまざまな場所で、わたしたちは他人の沈黙を「つながりを避けている」と解釈しています。
沈黙を自分への無関心と見なして、かかわるのをためらってしまうのです。
孤独感は人の思考回路を変える
孤独な時間が長くなると、進化の生存メカニズムが働き、わたしたちは不安を感じ始めます。
「脅威」を感じて警戒しだすのです。
けれども、現代社会における脅威は、もはやジャングルに潜む襲撃者でも動物でもありません。
もっとずっとささいなもの――たとえば、「ズーム会議でだれかが不機嫌そうな顔をしている」といった、不安を呼び起こす漠然とした状況――になります。
孤独なとき、人は他人のなんでもない表情をネガティブに受け取り、「自分は嫌われている」などと思い込みやすくなります。
研究においても、孤独な人は身のまわりで生じる社会的脅威に強く反応し、ちょっとしたことで「拒絶されている」と思ったり、自分や他者への評価が低くなったりするとされています。
さらに孤独な人は、睡眠時間はそれなりに取れていても、朝、すっきり起きられないことが多いといいます。
そのせいで日中に活動的になれず、社会的孤立(つまりは孤独)の痛みをさらに強く感じるという、負のスパイラルにはまりこんでしまいます。
孤独感の及ぼす影響の大きさに気づくことが大事なのは、それが「そろそろ生き方を変えないとまずいですよ」という、一種の警告でもあるからです。
孤独は、取るに足らないことではありません。
友人は、いなくても困らないものではありません。
わたしたちの幸せや健康のために、なくてはならない存在なのです。
孤独を乗り越えるためのメソッド1:
自分の「内面」ではなく「行動」にフォーカスする
孤独感から抜け出したければ、認識の持つ力について理解することが重要です。
一緒に過ごす相手がいない理由をしょっちゅう自問したり、「自分は口下手だから」と自分を否定してばかりいると、見えない心の壁(メンタルブロック)が形成されます。
そうなった原因は自分にあるのだから、自分に状況を変えられるはずがないと、自己暗示をかけてしまうのです。
そうして問題が固定化されます。
この心の壁を壊すには、自分の意識を内ではなく外に、つまり、自分が「どんな人間か」ではなく「どんなことをしているか」に向けるのが肝心です。
現状を変えるために何をしているか。
寂しさを克服するために、どんな取り組みをしているのか(「今日は○人に話しかけた」とか、「新しいグループやオンラインコミュニティに参加した」など)。
自分の行動に自覚的な人は、孤独感から抜け出してその状態を維持しやすいことが研究でわかっています。
自分自身へのネガティブな認識を手放せば、行動に集中できるようになります。
自分の殻から出て、他者とつながっている感覚を取り戻しましょう。
孤独を乗り越えるためのメソッド2:
他人の反応はコントロールできないことを受け入れる
孤独感の解消に役立つもうひとつの方法は、ものごとへの反応の仕方は人によって異なると理解することです。
他者とうまくつき合うには、相手から必ずしも期待する反応が返ってくるわけではないことを認める必要があります
あなたの幸せを同じように喜んでくれないかもしれないし、恩を仇で返してくるような人もいるかもしれません。
こんなふうに、他人の反応は予測できないので、あまり深刻にならず状況を受け入れる努力をすべきでしょう。
あの人の反応や表情がどうだとか、せっかく親切にしたのにそっけない態度を取られたとか、そういったことに一喜一憂しないようになると、ブレない芯の強さを得られます。
このブレのなさに人は魅力を感じるものです。
「友人をつくりたければ、自分から話しかけるなどして関心を示そう」とよくいわれます。
これは、最初の一歩としては悪くない方法です。
けれども、その相手からつれない反応が返ってきたらどうでしょう?(がっかりしますよね)。
だから、他人の反応は考えてもわからないと思って、やりすごせるようになったほうがいいのです。
孤独を乗り越えるためのメソッド3:
自分以外の問題に目を向ける
自分を孤独だと思うほど、ネガティブな感情は増します。
これを解消するひとつの方法は、「自分以外の問題に目を向ける」ことです。
自分自身や自分の問題に当てているスポットライトを、ほかのものに向けてみましょう。
たとえば、人のために何かできないでしょうか?
ボランティアをしたり、精神的に苦しい時期を過ごしている隣人や友人に食事を差し入れたりするのも一案です。
一日の時間のいくばくかを他者に差し出すとき、ふたつのことが起こります。
ひとつめは、自分自身から意識をそらすことで、孤独の痛みを感じにくくなること。
そしてふたつめは、自分もだれかの力になれるのだと気づくこと。
そのことが、わたしたちの幸福感を高めてくれるのです。