「相手の名前が出てこない」時、どう切り抜けるか?
2022.5.26 Diamondオンライン
野口 敏:話し方教室TALK&トーク主宰
「相手を主人公とした会話」を使えば、口ベタな営業マンもみるみる成績アップ。
信頼と成果を勝ち得ることができる話し方のテクニックとは。
話し方講師の野口敏氏の新著『またすぐに!会いたくなる人の話し方』からの一部抜粋で、仕事や人間関係に役立つコミュニケーションの極意を紹介していく。
名前で呼びかけられたら 誰もがうれしい
ずいぶん前のこと、ふと後ろから「野口さん」と女性に声をかけてもらったことがあります。
その日から1週間ぐらい前に、一度だけ彼女の会社で会ったことのある方でした。
私の名前を覚えてくれていたのです。
たったそれだけのことですが、私は「この人、いい人だな」と感じたものです。
名前とは本人にとって、とても大事なもの。これを大切にしてあげられる人は、人の心をつかめます。
たとえば商談の時に、相手のことをつい「社長」と肩書だけで呼んでしまいがちですが、ここは「野口社長」と名前付きで呼ぶほうが親しみを持ってもらえるはずです。
婚活や恋愛のシーンでも、相手が先に来て待っていたら、ただ「お待たせしました」ではなく、「○○さん! お待たせしました」と呼びかけたほうが、愛が生まれる可能性が高くなります。
異動や転職で新しい部署に入った時、新人として入社した時に真っ先にするべきことは、関わりのある人の名前は手帳にでも書いておき、初日に全て言えるよう記憶しておくことです。
そして、「○○さん、おはようございます」と、できる限り名前を付けて挨拶すること。
それは「あなたは私にとって、とても価値のある人です」というメッセージになるからです。
どうしても覚えられないときは 有名人の名前と連動させる
私は講座を行なう時、生徒にはなるべく名前で呼びかけるよう努力しています。
若い頃は20人ぐらいの名前は、すぐに覚えられましたが、最近はそうもいきません。
そこで、裏で色々と努力を重ねているのです。
まず大事なことは「その人にとって名前はとても大切なもの」という気持ちを強く持つこと。
名前で呼びかけられたら、誰もがうれしく感じることを肝に銘じています。
次に、そこにいる方の顔を見て、名前が出てくるかどうかチェックをしています。
出てこなければ、名簿を見て何回も心の中で「この人は○○さん」と、意識付けを行ないます。
それでも記憶できない場合は、芸能人やスポーツ選手の名前と連動させることもあります。
心の中で「この人を見たら、東京ヤクルトスワローズの○○選手を思い出せ」というようにするのです。
それでも頭に入らない人もいるのですが、その場合は初めに何回も名前で呼びかけて、なるべく頭の中にインプットできるようにしています。
思い出せない時は 「自分から名乗る」
久しぶりに会った人の名前が出てこない。
相手は笑顔なので、こちらのことを覚えていそう。できれば名前を呼んであげたい。
そんなピンチに、覚えておいて損はない一策があります。
それは「久しぶりです。野口です」と、まず自分から名乗ること。
すると、相手も名前を言ってくれる可能性が高くなります。
相手が気の利かない人で、自己紹介をしてくれない場合は、「お久しぶりですね!」と感激した表情で歓待し、間髪を入れずに「お名前は何でしたっけ」と伝えます。
この笑顔と質問とのギャップに、相手は名前を忘れられたことを悪く思わないだろうと、私は思っているのです。
以前、相手が話していたことを さりげなく話題にする 「○○さんって、熊本の方でしたよね」 「えっ! 覚えていてくれたんですか!」 相手が以前、話したことをあなたが覚えていた。偶然そのことを話題にしたら、相手がいたく喜んでくれて、その後の会話がスムーズに運んだ。 そんな経験が、あなたにもあるでしょう。
相手から見れば、自分の話を覚えてくれているということは、あなたが自分の話をとても印象深く聞いてくれて、そこにとても価値を感じてくれたということです。
それは、とてもうれしいこと。あなたも誰かが自分の話をよく覚えてくれていたら、きっと心がはずむはずです。
ということは、大事な人の話はしっかりと覚えておくと、それが相手の心をつかむことにつながるということです。
予約が絶えない鍼灸師の 魔法のカルテ
私の生徒に鍼灸院を開いている女性がいるのですが、そこで働くある鍼灸師がカルテに患者と交わした会話のことばかり書いて、治療のことは隅っこに少ししか書いていないことに不安を感じていました。
院長としては、患者の状態や治療の進捗を書くことが最優先だと思われたのです。
ところがこの鍼灸師、患者さんからのリピート率は院内で一番だということで、院長もそのことにはふれずにいたとか。
その院長が私の講座を受けて、なぜその鍼灸師は患者さんのリピート率が高いのか、ようやくうなずけたと言っています。
この人は患者と交わした話をカルテに書き、再来院時にはそれを使って話をしていたのです。
「そう言えば、もうすぐ銀婚式って、おっしゃってましたね。お祝いはされたのですか?」 「ご主人とお二人で落語を聴きに行かれたんでしょう。落語って、どんなところが面白いんですか?」
こんなふうに接してもらうことで、患者さんは自分がとても大切にされているような感覚になったのでしょう。
リピート率が高くて当然ですね。
これは営業でも商談でも婚活でも、同じように使って喜ばれる素晴らしいスキルです。
ぜひ活用してください。