2022年06月01日

財務省が狙う「参院選後の増税」、既定路線になりつつある“標的”を検証

財務省が狙う「参院選後の増税」、既定路線になりつつある“標的”を検証
2022.5.31 Diamondオンライン
小倉健一:イトモス研究所所長

防衛費や子育て支援予算を大幅増額する方針を示している岸田文雄首相だが、肝心の財源については明言を避けている。
しかし、首相周辺では参議院選挙に勝利した後の増税は既定路線になっていると見られる。
では何の税金を標的にするのか。
財務省の経験則などから検証する。(イトモス研究所所長 小倉健一)

参院選後の増税は既定路線?
何の税金が「標的」になるか検証
 岸田政権への高い支持率が続き、参議院選挙は自公勝利が確実視される状況になってきた。
今夏の参院選が終われば、岸田文雄首相が衆議院を解散しないかぎり、3年間は大きな国政選挙がない。
与党と中央省庁、特に財務省の関心は、参院選後に移りつつある。
つまり、増税だ。

財務省は今、どの税金を上げようとしているのだろうか。
 これまで岸田政権では増税議論を慎重に避けてきた。
昨秋に行われた自民党総裁選挙で、岸田首相は「今後10年程度は消費税増税が不要」と明言。
一方、ライバル候補だった河野太郎氏は「長期にわたって年々小刻みに年金の実質価値を下げていくマクロ経済スライドによって、基礎年金の最低保障機能が果たせなくなる」と訴え、補強のために消費税財源を充てる」として、消費税増税を主張した。
 ここで全国紙政治部記者に総裁選を振り返ってもらおう。
「河野氏が消費税の増税を考えているのが分かった途端、選挙を前に党内の仲間がサーッと離れていった。
序盤優勢だった同氏が中盤で失速したタイミングと一致する。
安倍晋三元首相の電話攻勢ばかりが語り継がれているが、河野氏の失速はそれでは説明がつかない。
河野氏以外の候補もそんな失速を見て、増税を否定し続けた」のだという。

 3年間のフリーハンドを握るとはいえ、岸田首相がその3年で何をしようとしているのかは全く分からないままだ。
金融資産課税、新しい資本主義など、マーケットに打撃を確実に与えるとおぼしき主要政策は、選挙を前に棚上げをしてしまった。
 そして、消費税減税の可能性を問われると「消費税は社会保障の安定財源に位置づけられており、いま触ることは考えていない」と否定した。
「触れない」ということは増税もしないということなのか、真意は不明だ。

 物価高対策を盛り込んだ2022年度補正予算案、総額は2兆7000億円規模で、財源を全額赤字国債で賄う。
さらに、先日のジョー・バイデン米大統領の初来日時に岸田首相が「相当な増額」を伝えた防衛費も今後かさんでくる。
安倍元首相は来年度の当初予算について6兆円台後半から7兆円が必要との認識を示している。
1年かぎりで日本の防衛危機が去るとも思えず、毎年の予算となるのだろう。

 防衛費以外にも子育て支援政策の大幅増額を掲げているが、それらの財源について岸田首相は明言を避けている。
ただ、岸田首相の周辺の考えは固まっているようだ。
前出の政治部記者はこう解説する。
「そもそも岸田首相が所属する宏池会は、財務省の影響力が特に強い派閥。
そして、国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)を25年度に黒字化する目標を変更していない。
財政制度等審議会(財務相の諮問機関)にも『安定財源が不可欠』と強調させている」

「聞く力」を掲げて、全員にいい顔をし続ける岸田首相だが、メリハリなく政府支出を増やしている実態の中、選挙後に大増税を決断するのは既定路線のようだ。
では、「消費税には触れない」と強く断言する岸田首相は、「何税」を上げるつもりなのか。
マーケットの関心もここに集まるだろう。

 財務省が「増税の標的」として狙うポイントを基に、検証してみよう。

財務省が狙う増税の標的は 「野党の公約」
 財務省が狙うポイントの一つは野党の公約だ。
野党が容認している「増税」については批判が集まりにくいというこれまでの経験則があるからだ。
 思えば、安倍政権時代に2度も行われた消費税増税も、野党時代の自民党と当時の民主党政権(現在の立憲民主党と国民民主党)が合意したことがベースだった。
与党が強引に増税をしたとすれば国民の反発は一挙に与党にきてしまう。
共産党・れいわと組むことは決してないが、日本維新の会や国民民主党、立憲民主党が容認している増税策が狙われるのは間違いがない。

 では、今年の参院選を前にして、主要野党が政策として掲げている増税案はなんだろうか。見ていこう。

(1)立憲民主党の増税案
・「金融所得課税の強化などを進めます」
・「グリーン税制全体の中での負担を見据えつつ炭素税の導入を検討します」
「立憲民主党基本政策」で増税に触れているのは、以上だ。
直近では日本維新の会に追い上げられているとはいえ、立憲は野党第一党の位置を占めている。
政権、財務省としても最も狙いをつけていることだろう。

(2)日本維新の会の増税案
 増税政策として、一番困るのが維新だ。
先だっての衆院選では「減税で経済成長」と掲げていた。
ところが、最近の幹部の発言では「維新は減税政党ではない」と事実上の公約の撤回を主張。
実際に同党の政務調査会では増税議論を繰り返してきた。
 しかし、参院選を前にしてインターネット上で「貯金税」とやゆされている「日本の資産全てに1%を課税する」という増税プランは、現状撤回したと言い張っている。現在地が不透明だ。

 先立って、維新の藤田文武幹事長がTwitterで「政策方針について論点整理」したとつぶやいて、突如提示した1枚紙の資料を見ても疑問は深まるばかりだ。
維新の政策集「日本大改革プラン」に関する資料のようだが、税制の個別政策の例として「消費税、所得税、法人税、相続税、固定資産税、金融所得課税、金融資産課税、総合課税、租税特別処置、マイナンバー制度、行政のDX(デジタルトランスフォーメーション)、徴税権の3層構造、歳入庁、など」と税制とは関係ないことまで含めた謎めいた項目が羅列してある。
資料の表題には「コンセプトプレイヤーの整理」とある。これから整理をするというのだろうか。

「フロー活性化」という文言もあるので、増税の優先順位があるとすれば「金融資産課税」辺りが狙われるのではないか。…そう言いたいところだが、国政の維新は、地域政党である大阪維新の会と違って、よりポピュラリズム(世論の動きでフラフラする大衆迎合主義、「ポピュリズム〈民衆主義〉」とは一線を画する)的指向の強い政党であり、正体が全くわからない状態だ。

 また、参院選に向けて維新が政策を分かりやすく伝えるために作った漫画冊子「日本大改革プラン」では、「金融取引で所得を増やしている人の税率は累進課税ではない」とあり、その横のイラストと共に現状のフラットタックスを批判している(27ページ)。
ところが、その次の次のページ(29ページ)では、「『フラットタックス』とも呼ばれるシンプルでわかりやすいチャレンジ推奨型の課税制度を導入することで『頑張った人が報われる』」と主張している。
 その漫画の基である日本大改革プランでは「高額所得者ほど総所得に占める金融所得の割合が高く、所得税負担率に逆累進性が働いている」とも指摘。
合計所得金額が1億円超になると所得税の負担率が右肩下がりになる現行制度を批判している。
これらを踏まえると、金融所得には増税したい意向なのではないかと推測する。

(3)国民民主党の増税案
・「格差是正の観点から、富裕層への課税を強化します」
・「推計を踏まえ、法人課税、金融課税、富裕層課税も含め、財政の持続可能性を高めます」
 参院選後の与党入りが確実視される国民民主党は、「国民民主党重点政策」の中で減税・ばらまき色の強い公約をうたっているが、増税に触れた箇所が二つあった。
どちらも富裕層には課税するということだが、「法人課税・金融課税」という聞きなれない増税を容認するようだ。
 調べてみると、法人課税は法人税のことを指しているようだ。なぜ、別の言葉に変えたのか不明だ。
金融課税は、金融所得課税(株投資などで得た利益に課税)のことか、金融資産課税(貯金、国債などの持っている金融資産に課税)のことなのかが分からないが、いずれにしても金融に関する項目について課税をするようだ。

3党の公約から考える 実現可能性が高い「増税案」は?
 以上、3党の増税に関する公約を並べたが、最大公約数を考えると、金融所得課税の強化がまず狙われるのは間違いがない。5月27日の衆院予算委員会で、岸田首相は金融所得課税の見直しについて「決して終わったわけではない」と述べていることも、その説の信ぴょう性を高めている。
 次に、立憲が掲げていた炭素税についても、増税はすでに既定路線になりつつある。
 岸田首相は20兆円規模の「GX(グリーントランスフォーメーション)経済移行債(仮称)」の発行を表明している。
そしてこの債券は、「炭素税による収入が入るまでの「つなぎ」の役割」(前出の政治部記者)とされているからだ。

 国民民主が掲げる法人課税も動く可能性がある。
これらの増税案は、野党も選挙で掲げた以上、法案に反対しないだろう。
この三つの増税は、マーケットをますます冷え込ませ、日本経済を傷つける可能性が高い。

 しかし一番の心配は、岸田首相の軽過ぎる言葉だろう。
これまで、政策を掲げておいて動かないと言うことが繰り返されているからだ。
消費税は触れないと言ったが、防衛費の大幅増額を理由に、「やっぱり上げざるを得ない」と判断する可能性は当然ある。

 岸田首相が掲げる政策と維新の公約は、後になってコロコロ変わってしまうので、何一つ、信用できない。
 岸田政権の参院選圧勝で、日本のプレゼンスはまた落ちていくことになりそうだ。
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2022年06月02日

「何もしない」ことが支持されている岸田内閣だが、いま動かないと日本は落ちぶれてしまう

「何もしない」ことが支持されている岸田内閣だが、いま動かないと日本は落ちぶれてしまう
5/31(火)  ニッポン放送

地政学・戦略学者の奥山真司が5月31日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。
岸田政権の姿勢について解説した。

岸田総理が外国人観光客に民間医療保険への加入を要請
岸田総理大臣は5月30日の参議院予算委員会で、外国人観光客の受け入れ再開に伴って作成するガイドラインについて、「ツアーの参加者から民間医療保険への加入の同意を得ることを記載する。
順守されていないと認められるケースが生じた場合は、観光庁から受け入れ責任者である旅行代理店に対し適切に指導を行う」と述べた。

飯田)
補正予算について審議されていますが、国政のニュースがあまり聞こえてこないところがあります。

岸田政権の支持率が高い理由
奥山)
岸田首相の現在の支持率が上がっているという報道がありました。

飯田)
記事になっていますね。

奥山)
ほぼ6〜7割の高い支持率だということです。
私自身は岸田首相にもっと仕事をして欲しい、改革を進めて欲しいと思っています。
しかし、それほど動いていないのに、なぜ岸田首相の支持率が高いのかを考えてみると、いくつか理由があるのです。

コロナ禍が収束に向かい経済的にも上がっているところが好感を持たれている 〜深刻な医療危機も起きていない

奥山)
まずコロナ禍が収束に向かっているではないですか。外国から2万人くらい毎日入れるという話にもなってきて、全般的に雰囲気が明るくなっているような部分はあるのだと思います。
全面解除してから制限を掛けていないので、経済的にも上がっているところが、好感を持たれているのではないでしょうか。

飯田)
経済的に。

奥山)
もう1つ、オミクロン株は重症化率が低いのです。それほど深刻な医療危機もまだ起きていないということです。
ウクライナ情勢によって、国民の関心が内政に向かない

奥山)
いちばん大きいのが、ウクライナ危機です。
内政に関心が向いていないということが大きいのだと思います。
ニュースもそれだけウクライナの話が多くなるので、内政の方に国民の関心が向かないのです。

10〜30代では「不支持」が多く、40代から上の支持率が高い岸田政権

奥山)
私自身は具体的な仕事をもっとして欲しいと思います。
具体策に関して、実は岸田さんが行ったものはゼロです。
個人的には岸田さんが嫌いというわけではないのですが、検討するという割に、あまり仕事はしません。

飯田)
検討はするけれど。

奥山)
しかし、支持率が上がっているのは不思議だなと思う部分があります。
内閣支持率について、4月23日に「社会調査研究センター」が発表していますが、若者の間では支持率が高くありません。
特に10〜30代は「支持する」と答えている人が3〜4割くらいで、「支持しない」という人は4〜5割の間くらいです。

飯田)
若者の間では。

奥山)
年齢が上になり、60〜70代になると、岸田さんに対する支持が上がって、不支持が少なくなります。

飯田)
10〜20代は支持37%、不支持45%。30代は支持43%、不支持46%と、不支持の方が高いのですけれども、ここから逆転します。

奥山)
40代から上ですね。

飯田)
70代では支持62%、不支持25%。高齢者に優しい政権なのですか?

奥山
高齢者にとってはすごくいい政権です。
なぜかと言うと、改革をしていないからではないかと思うのです。動かず、「現状維持でいたい」と思うシニアの方の意識に寄り添っているのです。

飯田)
シニアの意識に。

奥山)
しかし、私はこのままではいけないと思います。
いま日本は改革をしなくてはいけない。
菅さんのときのように、バリバリといろいろな仕組みを変えてもらわないと、日本は落ちぶれていってしまいます。

「何もしない」ことが支持されている岸田内閣 〜改革をし続けないと、政治の方が乗り遅れてしまう

奥山)
しかし、あまり大きな仕事をせずに、抑えていこうという姿勢がウケているのかなと思います。「何もしないことがウケる」というのは、あまりいい傾向ではないと思います。

飯田)
小泉さんの時代からそうかも知れませんが、「改革を打ってきた」という疲れが出てきてしまったということもありますか?

奥山)
そうかも知れませんね。何か物事を変えると、必ずリアクションがあるのです。リアクションを起こさずに抑えていこうという状態だと、問題は起こらないので、仲よくできて幸せなのかも知れません。
しかし、それではダメだと思います。

飯田)
リアクションを起こさないということでは。

奥山)
改革し続けないと、いまは世の中の動きが早いですから、政治の方が乗り遅れてしまう。これはいかがなものかなと常に思っています。
動いて嫌われるくらいでなければ、歴史的には評価されない

飯田)
菅さんがつくったデジタル庁は、「ここを変革の一丁目一番地にしよう」ということで設立されましたが、マイナンバーの話なども進んでいません。

奥山)
「進まないところが支持されている」のが嫌なのです。
やはり現状維持ではなく、積極的に進めていかなければいけないと思います。

飯田)
今回の補正予算も2兆円あまりで、ずいぶん小粒だけれども、小粒の動かなさがいいのかという。

奥山)
そうなると、日本はますます停滞していってしまうのではないでしょうか。
改革しなくてはいけないのに、停滞して支持率が高いというのはどうなのか。
首相は動いて問題を起こして嫌われるくらいでないと、歴史的には評価されないのではないかと思います。

飯田)70代では支持62%、不支持25%。高齢者に優しい政権なのですか?

奥山)高齢者にとってはすごくいい政権です。なぜかと言うと、改革をしていないからではないかと思うのです。動かず、「現状維持でいたい」と思うシニアの方の意識に寄り添っているのです。

飯田)シニアの意識に。

奥山)しかし、私はこのままではいけないと思います。いま日本は改革をしなくてはいけない。菅さんのときのように、バリバリといろいろな仕組みを変えてもらわないと、日本は落ちぶれていってしまいます。

「何もしない」ことが支持されている岸田内閣 〜改革をし続けないと、政治の方が乗り遅れてしまう
奥山)しかし、あまり大きな仕事をせずに、抑えていこうという姿勢がウケているのかなと思います。「何もしないことがウケる」というのは、あまりいい傾向ではないと思います。

飯田)小泉さんの時代からそうかも知れませんが、「改革を打ってきた」という疲れが出てきてしまったということもありますか?

奥山)そうかも知れませんね。何か物事を変えると、必ずリアクションがあるのです。リアクションを起こさずに抑えていこうという状態だと、問題は起こらないので、仲よくできて幸せなのかも知れません。しかし、それではダメだと思います。

飯田)リアクションを起こさないということでは。

奥山)改革し続けないと、いまは世の中の動きが早いですから、政治の方が乗り遅れてしまう。これはいかがなものかなと常に思っています。

動いて嫌われるくらいでなければ、歴史的には評価されない
飯田)菅さんがつくったデジタル庁は、「ここを変革の一丁目一番地にしよう」ということで設立されましたが、マイナンバーの話なども進んでいません。

奥山)「進まないところが支持されている」のが嫌なのです。やはり現状維持ではなく、積極的に進めていかなければいけないと思います。

飯田)今回の補正予算も2兆円あまりで、ずいぶん小粒だけれども、小粒の動かなさがいいのかという。

奥山)そうなると、日本はますます停滞していってしまうのではないでしょうか。改革しなくてはいけないのに、停滞して支持率が高いというのはどうなのか。
首相は動いて問題を起こして嫌われるくらいでないと、歴史的には評価されないのではないかと思います。
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2022年06月03日

「敵基地攻撃能力」という落とし穴。リアルな国防に勇ましい言葉は不要

「敵基地攻撃能力」という落とし穴。
リアルな国防に勇ましい言葉は不要
2022年06月02日 SPA!
小林節 慶大名誉教授・法学者

◆にわかに盛り上がる「敵基地攻撃」論
 ロシアによるウクライナ侵攻というまさかの現実を前にして、ロシア、中国、北朝鮮という非友好的諸国と隣接しているわが国では、にわかに国防論議が盛んになってきた。
 政権政党・自民党の安全保障調査会は、「敵基地攻撃(反撃)能力」(先制攻撃能力?)の保有、防衛費をGDP2%以上に、米国との核共有、反撃の対象に敵国の指揮統制機能(指令中枢)も含む等の勇ましい提言をまとめた。

「敵基地攻撃」論は、ある意味で分かり易い議論である。
1956年(鳩山一郎首相)当時は、敵からまずミサイルの第1撃を受けた場合、わが国は滅んでおらず、敵のミサイルは特定の基地から発射されていた。だから、その基地を叩き返すことで以後の発射を止めることはできた。
そこで、当時の政府は、「現に急迫不正の侵害を受けて、他に防衛手段がない」以上、敵基地攻撃は専守防衛の正当な手段の内だと考えたのであろう。
「憲法を守って国が滅んで」良いはずはないのだから。

 しかし、その後、技術の急速な進歩の結果、議論の前提が変わってきた。
まず、ミサイルの弾頭の威力が向上し、スピードが上がり、迎撃難度が増した。
加えて、一機で複数の弾頭を搭載するミサイルや、途中で進路を変更するミサイルまで現れた。
そこで、こちらがやられてしまう前に、相手が発射準備に入った段階でそれは既に攻撃「着手」なのだから反撃することは許されるとしないと国が守れないと考えるに至った。
さらに、列車や台車や潜水艦からの発射など、発射自体が神出鬼没になったために、ついに、敵の指揮命令の中枢を叩かなければ自衛にならないという結論に至った。
 しかし、これでは要するに「やられる前にやるしかない」という先制攻撃論で、それこそ、自衛しか許していない国際法と憲法に違反してしまう。

◆国際法を無視した「敵基地攻撃能力」論
 もちろん、憲法9条違反だけなら、それこそ「憲法守って国滅ぶ」では本末転倒であるから、自国の憲法を改正すれば済む。  しかし、最上位の国際法である国連憲章(51条)や不戦条約(1条)等をわが国の都合で無視することなどできるはずがない。
 しかも、国連憲章53条の存在を忘れてはならない。
同条1項は、要するに、「日本などの第二次世界大戦の旧敵国における侵略政策の復活に対する地域的国家連合による軍事的措置には安全保障理事会の承認は要らない」旨を規定している。
 だから、「敵基地攻撃能力」論は、「今のウクライナから常に脅威が発せられる中で、ロシアは安全を感じることも発展することも存在することもできない」(2022年2月24日、プーチン大統領の演説)などと「被害妄想」のような理由で侵攻を始めたロシアが、「日本の軍国主義の復活」を理由に中国と北朝鮮を誘って日本に侵攻する口実を、こちらから与えている様なものである。
 しかも、今、わが国では、「勇ましい言葉だけ」で、具体的には自衛力はいささかも向上してはいない。

◆「敵基地攻撃能力」論の前にやるべきこと
 そこで、今回のロシアのウクライナ侵攻に学んでわが国の自衛力を実際に急速に向上させる方法を考えてみたら、次の様になるはずだ。
 まず、日本を侵略しようとする国は、できるだけ無傷の日本を占領して活用したいと考えているので、戦わずに降伏させようと、外交と軍事演習で恫喝してくる。
だから、それに世論が負けないように、「専制」国家と「自由と民主主義」国家の違いを主権者国民に正しく知らしめ、独立の気概を養うことが重要である。
 加えて、アメリカにとって自由民主主義国家群の橋頭堡として日本と台湾が存在する以上、日本有事の際に米軍が参戦しないはずはないということを国民に知らしめておくことも肝要である。

 また、軍事侵攻は突然に始まるものではなく、十分な準備を整えて始まる以上、非友好国内における軍や物資の移動について常に情報収集を怠らないことである。
 さらに、今回、専制国家の軍隊は士気が低く意外に弱いことも露呈した。
その点で、日本の自衛隊が、国際的に比較して、能力が高いことはあまり知られていない。
だから、現行制度を変更せずに自衛隊の能力を向上できること、例えば弾丸の備蓄増などは至急行われるべきである。

 非友好国の側も常に日本の情報を収集している。
彼らも「ウクライナの泥沼」の再現は望まないはずである。
だから、彼我を比較してみたら、容易に日本に侵攻することなどできないはずである。
「勇ましい言葉」は不要である。
<文/小林節 初出:月刊日本6月号>)

こばやしせつ●法学博士、弁護士。
都立新宿高を経て慶應義塾大学法学部卒。
ハーバード大法科大学院の客員研究員などを経て慶大教授。現在は名誉教授。
著書に『 【決定版】白熱講義! 憲法改正 』(ワニ文庫)など

―[月刊日本]―
【月刊日本】 げっかんにっぽん
●Twitter ID=@GekkanNippon。
「日本の自立と再生を目指す、闘う言論誌」を標榜する保守系オピニオン誌。
「左右」という偏狭な枠組みに囚われない硬派な論調とスタンスで知られる。
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2022年06月04日

高齢者医療の専門医が「老いと闘うな」と訴えるワケ

85歳を過ぎて認知症傾向のない人はいない…
高齢者医療の専門医が「老いと闘うな」と訴えるワケ
2022年06月03日 PRESIDENT Online
和田 秀樹  精神科医・国際医療福祉大学赤坂心理学科教授

老いとはどう向き合えばいいのか。
精神科医として35年近くにわたり高齢者医療の現場に携わってきた和田秀樹さんは「どれほど気をつけて努力したところで、ある程度の高齢になれば認知症になることは避けられない。
老いを受け入れて、できることを大切にするほうがよりよい人生を送れる」という――。
※本稿は、和田秀樹『老いの品格 品よく、賢く、おもしろく』(PHP新書)の一部を再編集したものです。

■「90歳でもこんなに元気に歩いています」はうらやましいのか
いま、老いに対する人びとのスタンスが二極化していると感じます。

一方は、老いとずっと闘いつづけなければならないと考える、「アンチエイジング派」です
いつまでも若々しくありたい、老け込みたくない、寝たきりや認知症にならないようにしたいと考える人たちです。
健康食品のコマーシャルで、「90歳でもこんなに元気に歩いています」「人間、心がけしだいでいくつになっても若くいられます」と語る人たちを見て、「私もそうなりたい」と思う人も多いことでしょう。

もう一方は、その対極の反アンチエイジング、「自然に老いる派」です。
50歳そこそこで早くも「自然に歳をとりたい」と、反アンチエイジングを公言する女性芸能人も見かけます。
90代の女性脚本家が認知症になって生きることをよしとせず、安楽死を望む一方で、50代の女優が早々に老化を受け入れる姿勢を見せているというのは、何やら奇妙にも思えます。

いつまでも老いと闘いつづけるべきという考えのもと、美容医療やカツラの装着にも意欲的で、アンチエイジングに余念がないグループと、「ボトックス注射でしわをとるなんて許せない」と批判したり、「ヅラ疑惑」と揶揄したりするグループに二分されている現状があります。

■遺体が語る「85歳を過ぎるとがんがない人はいない」
実態 老いと闘うか、受け入れるか。
私自身は、残念ながら、人間は最終的に老いを受け入れざるをえないと考えています。
そのベースにあるのは、高齢者医療の現場での経験です。
私が勤めていた浴風会病院は、もともとは関東大震災で身寄りを失った高齢者の救護施設として、皇室の御下賜金などをもとに設立されました。
その後、老年医学の研究のため、当時の東京帝国大学医学部からこの施設に医師が派遣され、入所者の診療を行うとともに、亡くなった人の解剖を行い、高齢者の脳や臓器について研究が進められました。
いまでもその伝統が残っており、私が勤務していた当時は、年間100例ほどの解剖が行われていました。

私はその解剖結果をずっと見てきました。
その結果、わかったのは、85歳を過ぎると、脳にアルツハイマー型の神経の変性がない人、体内にがんがない人、動脈硬化が生じていない人は一人もいないということです。

■いずれにせよ人間はいつか必ずボケるし歩けなくなる
つまり、どれほど認知症にならないようにがんばったところで、あるいは生活習慣病を予防するために食生活や運動に気をつけたところで、ある程度の高齢になれば誰もが認知症になるし、生活習慣病にもなるのです。
かつては成人病と呼ばれていた脳卒中や心臓病などを、「生活習慣病」と改称することを提唱したのは、100歳を過ぎても現役医師として活躍していた日野原重明先生(享年105)ですが、その日野原先生でさえ、晩年は脳内に変化が起こっていたと考えられます。

同じくらい脳が縮んでいても、すっかりボケたようになってしまう人と、驚くほど頭がしっかりしている人がおり、症状の表れ方には個人差があります。
認知症になったとしても頭を使いつづけて、なるべくしっかりした状態を保つようにしてほしいと思います。
いずれにせよ、人間はいつかボケます。いつかは歩けなくなります。それを覚悟しておく必要があります。

■安楽死を望むよりも「ボケたらしかたない」と考えるほうが健全
認知症について「ボケる」と表現するのは、侮蔑的であるとして避けるのが一般的になっていますが、私は必ずしもネガティブなニュアンスの言葉とは思っていません。
むしろ、脳の老化がもたらす自然な状態を表すものと認識しているので、本稿でも使用することをここでお断りしておきます。
認知症の検査法である「長谷川式簡易知能評価スケール」を開発したことでも知られる、精神科医の長谷川和夫先生は、88歳のときにみずからが認知症であることを公表しました。
日本の認知症医療の第一人者といわれる当人が認知症になったわけですが、長谷川先生本人は、新聞のインタビューで「隠すことはない、年を取ったら誰でもなるんだなと皆が考えるようになれば、社会の認識は変わる」とあっさり言い、「認知症の人自身が何を感じているかを伝えたい」と、講演活動を始めました。

認知症を受け入れず、「認知症になってまで生きたくない」と安楽死を望むより、「ボケたらしかたがない。ボケたなりにできることをやろう」と考えるほうが、老いに対するスタンスとして健全なのではと私は思います。

■老いと闘ったほうがいい時期は存在する
老いと闘うことと、老いを受け入れることは、二項対立ではなく「移行」だと私は思っています。
老いと闘えるあいだは、闘ったほうがいいと思います。
まだ十分に闘える時期なのにそうしないと、年齢以上にずっと老け込んでしまいます。
定年後に何もしない生活をしていると、60代でも歩行がよろよろしたり、すっかり老人そのものの顔つきになったりする人もいます。
70歳そこそこで寿命がきていた時代であれば、それでもかまわないと思いますが、いまや日本人の平均寿命は男性が81歳、女性が87歳を超えています。
これは平均ですから、60歳より前に亡くなる人がいることを考慮し、平均余命を見るかぎり、男性でも85歳くらいまで生きる人が多数派でしょう。

60代から20年以上ものあいだ、ヨボヨボの状態で過ごすというのは、さすがにつらいのではないでしょうか。
歩けなくなると行動範囲がかなり狭くなってしまうので、できるかぎり毎日、散歩を楽しむようにしたいですね。
また、認知機能があまりにも急に衰えると、本も読めなくなるし、人との会話もままならなくなるので、なるべく頭を使いつづけるようにすることです。
こうして、ある時期までは老いと闘っておいたほうが、少なくとも残りの人生を楽しめると思います。
ただ、認知症になって軽い物忘れが始まった、あるいは歩行がおぼつかなくなったら、それで人生終わりかといえば、そんなことはありません。

老いを受け入れるということは、老いているなりにどう生きるかということです。
老いと闘うフェーズが終われば、次は老いを受け入れるフェーズがあって、そこでジタバタしないことが、格好よく老いることだと思います。

■できなくなったことを悲観せず、できることを大切にする
歳をとると、体や脳が衰えてきます。
それは確かですが、だからといって、いきなり何もできなくなるわけではありません。
たとえば、認知症になると、とたんに何もかもわからなくなると思われがちですが、初期には記憶障害が起こるものの、理解力などはそれほど低下せず、それこそ長谷川和夫先生のように講演さえできるものです。
また、認知機能は衰えても、体は丈夫で長く歩けるという人もいれば、反対に、歩行困難で車いす生活を送らざるをえないものの、頭はシャキッとしている人もいます。

老化によって、すべての能力が一様に低下するわけではないのです。
ニュースキャスターの安藤優子さんのお母さんは、認知症が進み、老人ホームに入居していたそうですが、施設で「臨床美術」のセラピーを受けて、大好きだったハワイの思い出を描くようになったといいます。
終末期になれば、寝たきりでほぼ何もできない状態になりますが、それまでは、できないことは増えても、できることは残っています。

重要なのは、できなくなったことを悲観するのではなく、できることを大切にして、それを活かしていくという考え方です。 パラリンピックの選手たちは、障害者という枠のなかで競争しているというイメージをもたれがちですが、彼らは多くの競技において、ほとんどの健常者よりもはるかに高い能力を見せます。
つまり彼らは、できることの能力を最大限に伸ばし、できることのすごさで世界を相手に競っているわけです。

■老いや死をうまく受け入れた人は魅力的に見える
できないことがあってもいいのです。
「できることはこんなにすごい」という方向に目を向けることが大事なのです。
人は自分の欠点ばかりを気にして、長所を見過ごしがちです。
たとえば、受験勉強では、苦手科目を克服しようとするより、得意科目を伸ばすほうが、合計の点数が上がることが多いものです。
実際、高齢になっても、できることの何かがすごければ、人から一目置かれます。たとえ寝たきりになっていても、おもしろい話ができるなら、話を聞かせてほしいと思う人が周りに集まってくるはずです。
絵や音楽、運動など、これまでやってきたことがあれば、できるかぎり続けていくことで、さらに新しい境地にいたることもあるでしょう。
ピカソなど巨匠と呼ばれる画家でも、歳をとってからの作品のほうが高い評価を得ることはめずらしくありません。

老いや死は、ある程度上手に受け入れておいたほうが、他人から見ても魅力的であるばかりでなく、自分自身も平穏な気持ちを保つことができます。
そして結果的に、老いによるダメージの程度がそれほど大きくならずにすむことが多いと思います。
老いを受け入れると、できないことをあきらめられるぶん、できることを慈しみ、それをもっとやってみようという意欲が湧いてきます。
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2022年06月05日

迫る参院選で「優勢」の岸田自民党、実は死角だらけ

参議院選で優勢の岸田自民党、実は死角だらけ
コロナ対策や景気対策、防衛費増額など難題山積
2022/06/04 東洋経済オンライン
星 浩 : 政治ジャーナリスト

参院選の投開票(7月10日の見通し)が迫ってきた。
日米首脳会談などの外交日程をこなした岸田文雄内閣の支持率は堅調で、野党が勢いを欠いているため、自民党の優勢が伝えられている。
だが、ウクライナ戦争による資源高や急激な円安で物価が急騰。年金の減額など国民生活の困窮も広がる。

岸田自民党の足元は、盤石とはいえない。
その死角を探ってみよう。

 防衛費増額を主導しようともくろむ安倍元首相
「クアッド」の4首脳会談でも中国の海洋進出を牽制するなど、日本外交の存在感を示した。
防衛費は現在、約5.4兆円で国民総生産(GDP)比は1%程度。
自民党内では、5年以内に北大西洋条約機構(NATO)並みの2%程度に引き上げるべきだという意見が強まっている。
そのためには毎年1兆円ほどの増額が必要になる。
これに対して、野党の立憲民主党や共産党は「防衛費の中身の議論がないまま増額が優先されている」と強く反発している。

財政状況が厳しい中、防衛費増額分の財源の確保も難しい。
@国債増発、A社会保障などの経費削減、B増税、といった選択肢が考えられるが、いずれも容易には受け入れられそうにない。
安倍晋三元首相は、来年度の防衛費について「6兆円後半から7兆円が見えるくらいの増額」を提案。
この問題を主導しようと狙っている。
安倍氏はさらに、ウクライナ戦争でロシアのプーチン大統領が核兵器の使用を示唆したことに関連して、日本にアメリカの核兵器を置く「核共有」についても議論すべきだと主張。
岸田首相は「非核三原則を遵守し、核共有は議論しない」と明確に否定した。

防衛費や核共有をめぐる議論は、参院選で大きな争点となることは必至だ。
岸田首相は野党からの批判にさらされる一方で、安倍氏らの主張も無視できず、板挟みになる可能性がある。
安倍氏は財政問題をめぐる論議でも波乱要因となっている。
自民党内では来年度の予算編成に向けて財政再建を唱える麻生太郎副総裁や額賀福志郎元財務相らのグループと、財政出動を訴える安倍氏や西田昌司参院議員らのグループとの対立が激しくなっている。

岸田首相は当面の景気対策のための財政出動は容認しつつも、将来的な財政再建の必要性を重視する立場。
麻生、安倍両氏に挟まれている岸田氏は、参院選の論争で立場を明確にするよう迫られるだろう。
防衛費だけでなく、医療費などの社会保障や教育関連経費など歳出増が予想されるのに対して財源を確保するための増税に踏み切るのか。岸田首相は参院選の党首討論などで追及されるだろう。
そこで、増税を打ち出せば反発を招くし、増税を否定すれば「無責任」といわれる。
どっちつかずの対応を続けるようだと、「優柔不断」との指摘を受ける。
岸田首相にとっては綱渡りの論争になる。

物価高騰も懸念材料
岸田首相にとって、物価高騰も懸念材料だ。
ウクライナ戦争で世界的な原材料高が続いているのに加え、急激な円安が消費者物価を押し上げ、4月は対前年同月比2.1%を記録した。
消費税率引き上げのケースを除けば13年ぶりの上昇率である。

野党側は「岸田インフレ」と批判を強めている。
アベノミクスによる金融緩和で進んだ円安は当初、輸出企業の業績を好転させ、株高につながった。
しかし、アベノミクスでは成長戦略や構造改革が立ち遅れ、日本経済は停滞。
日本経済の弱さを示す「悪い円安」が続いている。

今回の円安は、金利引き上げを続けるアメリカとマイナス金利の日本との「金利差」にも起因している。
政府・日銀は、円安による物価高への影響は「全体の3分の1程度」と分析しているが、金融緩和・低金利政策から脱却できない岸田政権の経済政策が批判にさらされている。

年金の減額も政権批判につながる可能性がある。
平均給与が下がっているため、それに連動する公的年金も引き下げられる。
厚生労働省によると、4月から国民年金が月額259円下がって6万4816円、厚生年金(夫婦2人分、モデルケース)が月額903円下がって21万9593円になるという。

首相官邸のスタッフは「4、5月分の年金が6月15日に支給され、郵便局や銀行の口座で減額を知った高齢者が政権に不満を募らせるではないか」と気をもんでいる。
野党側はここぞとばかり、「高齢者へのしわ寄せ」と批判するだろう。
政権側は、低所得者には給付金支給などで対応していると説明するだろうが、高齢者の理解が得られるとは限らない。

岸田首相は「新しい資本主義」を掲げてきたが、当初、目玉だった格差是正のための富裕層増税は、株式の売却益や配当への課税強化が見送られた。
代わって「人への投資」などが強調されているが、予算の裏付けも乏しく、世論の関心も集めていない。
一方、新型コロナウイルスの感染対策で、岸田政権はワクチン接種で出遅れ、医療体制強化のための法整備も進めていない。このところ、新規感染者数は減少傾向にあり、この間に検査や医療の体制整備を急ぐ必要があるのだが、医師会などの抵抗もあり、抜本的な改革は進んでいない。

細田議長のセクハラ疑惑、「桜を見る会」問題も 自民党の不祥事にまつわる報道も止まらない。
自民党最大派閥の清和会(現在は安倍派)の前会長でもある細田博之・衆院議長の女性記者らへのセクハラ疑惑は週刊誌をにぎわしている。
安倍氏が首相在任中に開催した「桜を見る会」は、大勢の地元後援会員を招待するなど公私混同が明らかになったが、その前夜祭に安倍事務所が資金補填していたことに加え、こんどは大手飲料メーカーのサントリーが大量の酒を無償で提供していたことが発覚。野党側は批判を強めている。

こう見てくると、いまの岸田自民党は「突っ込みどころ満載」なのだが、参院選は盛り上がりを欠き、岸田自民党は安泰という見方が大勢となっている。
なぜか。主な理由は2つだろう。
まず、ウクライナ戦争や中国の台頭によって、日本でも安全保障についての関心が高まり、アメリカとの同盟関係を強め、国内的にも防衛力を整備していくことが必要だという国民の意識が強まっている。
それが自民党政権の安定を求める意識にもつながっているだろう。

加えて野党の分断である。
2016年、2019年の参院選で野党陣営は1人区を中心に連携し、一定の成果を出した。しかし、2021年の衆院選で立憲民主党と共産党が連携したにもかかわらず、伸び悩んだ。
それを受けて、同じ旧民主党系の国民民主党は国会での予算案の採決で賛成に回るなど自民、公明の与党に接近。
維新も立憲民主党とは距離を置いて独自の路線を歩んでいる。

この参院選で野党候補は乱立模様で、結果的に自民党候補を利する形となっている。
参院の定数は現在245。今回124議席が改選される(比例区50、選挙区74=補選を含む)。
自民、公明の与党には、非改選の70議席があるので、過半数の123議席を占めるには今回、53議席を確保すればよい。自公両党は、前回(2019年)70議席、前々回(2016年)76議席を取っているので、岸田首相にとってのハードルはかなり低い。

「憲法改正は急ぐ必要はない」が岸田首相の本音
参院選が波乱のないまま、自公の勝利、岸田政権の存続となったとしても、ここに列挙してきたさまざまな政策課題は、選挙後も待ったなしで取り組まなければならないものばかりである。
自民党内には、参院選で勝利したら憲法改正に取り組むべきだという意見もあるが、実際にはコロナ対策や景気対策、防衛費増額など当面の難題が山積しており、憲法改正に注ぐ政治的エネルギーは残らないだろう。
岸田首相はそもそも、宏池会の「護憲DNA」を引き継いでおり、憲法改正を急ぐ必要はないというのが本音だ。
当面の政策課題に政権の力を振り向けることになるとみられる。

岸田首相が参院選を乗り切れば、任期が3年あまり残っている衆院の解散・総選挙は当面なさそうだし、次の参院選は3年後。そのため、政権にとっては「黄金の3年間」となるという見方がある。
だが、それは政策課題に疎い「政局記者」たちの皮相な見立てだろう。
参院選を勝ち抜いても、岸田首相を待つのは「黄金の3年間」ではなく、次々と難題に直面する「七転八倒の3年間」になるだろう。
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「コロナで生じた同調圧力」の背景

精神科医が分析「コロナで生じた同調圧力」の背景
「長いものには巻かれない」ための対応策も紹介
2022/06/04 東洋経済オンライン
和田秀樹 精神科医

2年以上におよぶ新型コロナとそれに伴う自粛生活が、私たちの心身に与えたダメージは大きく、その副作用は実はこれから出てくる――。
『マスクを外す日のために今から始める、ウィズコロナの健やかな生き方』を緊急出版した精神科医、和田秀樹さんはそう警鐘を鳴らします。
自由に暮らせないストレスや同調圧力、マスク依存から脱却し、自らの免疫力を高めながら健やかに暮らすのにはどうしたらいいのか。
これからも続くであろうウィズコロナ時代を、自分らしく生きるための心構えを解説します。

経済学に「マクロ経済学」と「ミクロ経済学」がありますが、同様に心理学にも「マクロ心理学」と「ミクロ(マイクロ)心理学」という言葉があります。
まだ新しい区分法であるため、その定義は論者によってさまざまですが、本稿では「マクロ心理学」は国民全体の心理状態、「ミクロ心理学」は個人レベルの心理状態をあつかう心理学という意味で使いたいと思います。

さて、マクロ心理学的にいうと、コロナ禍以後の日本社会では、「同調循環」とでも呼ぶべき心理現象が起きています。
政府やメディア、そして国民などの各セクターが影響し合って、「同調」現象を拡大・維持する状況です。
ここでは、政府や分科会(新型コロナウイルス感染症対策分科会)を「ふりだし」にして、考えてみましょう。
政府の方針にメディアの大勢が同調 まず、
政府や分科会が何らかの方針を打ち出すと、テレビをはじめとするメディアの大勢が同調します。
一応はマスコミですから、少しは嫌味をいって、批判する姿勢を見せはするものの、むしろToo Late(遅すぎる)、Too Little(少なすぎる)ことを問題とし、実質的には賛成します。
むろん、全面的な反対キャンペーンを張ったりはしません。
そして、国民は、大勢としては賛成のメディアの影響を受けて、政府方針を是とする「世論」を生み出します。

たとえば、飲食店に対する政府の自粛要請があれば、「深夜まで営業している店はけしからん」という意見が多数を占めるのです。
そして、世論がそちらの方向に傾けば、政府は選挙怖さに、その世論に同調した方針をさらに強化します。
分科会では、形式的な異論は上がっても、大勢としては、政府の意向に沿った見解を出して、専門的に政府の政策を補強します。
こうして、互いに同調し合う循環構造が生まれ、その回転音が響くなか、「異論」はノイズとしてかき消されていきます。
要するに、この循環構造のなかでは、互いに同調し合うだけで、誰も「自分の頭で考えていない」のです。

このような同調圧力に関する社会心理学の研究は、おおむね欧米で行われてきました。
ですから、日本人だけでなく、人類全体にこうした傾向はあるわけです。
ただし、欧米、とりわけアメリカは、「人と違う意見をいう」ことをよしとするお国柄です。
たとえば、日本語で「とくに意見はありません」というのは、ごく普通のフレーズですが、アメリカで「I have no opinion」といえば、「意見もいえないバカ」と見下されることでしょう。
そのぶんアメリカは、日本ほどには同調圧力が働かない国です。

一方、日本人は、同調圧力に屈する傾向がひときわ強い。
一般的に、「閉鎖的社会に、同質性の高い人々が暮らしている」ほど、同調圧力は強くなります。
その点、わが国は「島国」という地理的な閉鎖空間で1つの国を形成し、社会的活動は企業・学校単位という閉鎖社会内で行われることが多い国です。
しぜん、人間関係は固定化し、同質性が高まっていきます。

日本人は「集団規範へ同調する傾向」が強い
そもそも、国内で暮らす異民族の割合が少なく、宗教や価値観も同質性が高い国です。
コロナ下で私たちの社会が強力な同調圧力を生み出し続けているのも、その閉鎖性と同質性ゆえです。
そうして、私たち日本人は「集団規範へ同調する傾向」がひときわ強くなりました。

閉鎖的な社会で、個人が勝手な行動をとると、秩序が崩れ、みんなが迷惑します。
そこで、日本社会の至るところに、どう行動すればいいかというルールが用意されています。
それが「集団規範」です。
ただ、ここで問題なのは、集団規範には、合理的根拠があるものと、そうした根拠のないものがあることです。

たとえば、「因習」と呼ばれるような掟、しきたりには、現代の目から見れば、根拠のないものが大半を占めています。
しかし、たとえ不合理でも、人間には、集団規範から外れることへの恐れから、規範に従う傾向があります。
そこに合理的思考はなく、安心を得るため、自ら思考停止する道を選んで、不合理な規範に同調するのです。
新型コロナに関する自粛ルールも、私は根拠に乏しい点では、「因習」に近い規範だと思います。
それでも、この国の同調圧力の高さが、人々にそれを守らせているのです。

と、「同調圧力」をめぐって、さまざまに述べてきましたが、残念ながら、この国の同調圧力は今後も簡単には弱まらないでしょう。
この国の政治家には、欧米の政治家のように、大胆な政策変更を提案する力はありません。
そこで、私は、1人ひとりの個人が、少しずつでも「自分の生き方を取り戻す」気持ちになることが大事だと思います。

「したかったこと」をリストにしてみる
その手始めとして、コロナ禍がはじまる前に、「自分がしたかったこと」を思い出してみてはいかがでしょうか。
それをリストにしてみるのです。
「ピアノを習いに行きたかった」「親に孫の顔を見せたかった」「あちこちに写生に出かけたかった」。
──どんなことでも、かまいません。
そうして、今、できることから、1つずつトライしてみるのです。
そうして、人生を「自粛」のなかで、これ以上、空費するのはやめませんか。

人生は、おおむね、人の意見に従うと、不幸になります。
失敗したとき、自分のせいではなく、人のせいにするためです。
その負の感情が人を不幸にするのです。
良識を働かせながら、自らの判断で、自分のしたいことをする。
──そうして、同調圧力には100%は屈しない。
同調圧力という「長いもの」に巻かれながらも、巻き返す。
この時代、自分らしく生きるには、そんな覚悟が必要だと、私は思うのです。
posted by 小だぬき at 18:09 | 神奈川 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年06月07日

健康診断で「糖尿病予備軍です」、結果表の見方と血糖値改善の5つのコツ

健康診断で「糖尿病予備軍です」、
結果表の見方と血糖値改善の5つのコツ
岡田明子:管理栄養士
2022.6.6 Diamondオンライン

年に一度の定期健康診断や人間ドック。届いた結果の数値が悪かったり、再検査と記載されていたりすると心配になるものです。
前回の「高血圧」編に続き、今回は糖尿病の疑いがある場合、あるいは「血糖値が高いです」と言われた場合、結果表のどこを見ればいいのか、数値改善のためには食生活のどんなことに気を付けたらいいかについて解説します。(管理栄養士 岡田明子)

健診結果を見るときのポイント
 血糖値は「空腹時血糖」と「HbA1c」の数値を注意してチェックしてください。
空腹時血糖というのは、前回の食事から10時間以上絶食した状態で測定した血糖値です。
健診前に何か食べている場合も、高い数値が出てしまいます。

一方、HbA1cというのは過去1〜2カ月間の平均的な血糖値の状態を把握できるものです。
 糖尿病は複合的に診断がされるため、どちらかが異常の数値であっても、すぐに糖尿病とはなりません。
糖尿病と診断されるのは、「空腹時血糖≧126mg/dl」、かつ「HbA1c≧6.5%」という場合です。

他にも、食事時間とは関係ない「随時血糖値」が200mg/dlの場合なども、糖尿病と診断されます。
要注意の範囲は、糖尿病予備軍となります。

数値がさらに悪くなる前に、食事や生活習慣の見直しをしていきましょう。

血糖値が高くなる要因は何?放っておくとどうなる?
 私たちの体は、食事をすると血糖値が上がります。
血糖値が上がると、インスリンというホルモンが膵臓(すいぞう)から分泌され、肝臓や筋肉、脂肪組織に送られるとエネルギー源として使用されたり、蓄えられたりします。
しかし、カロリーや脂質の取り過ぎ、食物繊維の不足といった食生活の乱れや、運動不足、ストレス、睡眠不足、喫煙習慣などの生活習慣の乱れによって、インスリンの分泌量や働きに異常が生じると、血糖値が下がりにくくなり、血糖値が高くなってしまうのです。

 このような食事や生活習慣の乱れが原因の糖尿病を“2型糖尿病”と呼び、全ての糖尿病患者の約9割を占めると言われています。
他にも、妊娠がきっかけの糖尿病や、膵臓の病気が原因で血糖値が高くなる場合もあります。
 血糖値の高い状態が長期に及ぶと、全身の血管に障害が起きるようになり、失明や腎不全、足の切断などの合併症や脳梗塞、心筋梗塞といった病気を引き起こすこともあります。

 一生で使えるインスリンの量は決まっていて、加齢に伴いインスリンの分泌量も減ってきます。
手遅れになる前に、今からできることを探していきましょう。

血糖値が改善するための五つのコツ  
今回は血糖値の数値改善につながる、取り入れやすい食事や食習慣の工夫を五つ紹介します。

(1)糖質の多いものの取り方を見直す
 まず、糖質の多い食品を、普段自分がどんなふうに食べているかについて見直しましょう。
ごはんやパン、麺といった主食はもちろん、普段良く口にする飲み物、間食などでも糖質を取り過ぎていませんか?
主食は夕食だけ軽めにする、清涼飲料水を無糖の飲み物に変える、お菓子は個包装のものを選ぶなどして、少しずつ糖質を減らしてみてください。
 3〜7日くらい、毎日食べたものをすべて写真に収めて見返してみると、どこで糖質を取り過ぎているのか見えやすくなります。

(2)食物繊維を意識して取る
 食物繊維は、余分な糖質を体外に排出する働きがあります。
葉物野菜や根菜類、海藻やコンニャク、キノコ類、玄米、胚芽、もち麦などに多く含まれていますので、1日の中で意識して食べるようにしましょう。
 具沢山の汁物にすると、野菜のカサを減らしてたくさん食べられます。
主食を精製度の低い玄米に変えたり、麦ごはんに変えたりといった方法のほか、汁物やサラダにワカメを加えるといった工夫もおすすめです。

(3)食事は「ベジタブルファースト」!食べる順番に気を付ける
 ダイエットでもよくいわれる「ベジタブルファースト」を意識しましょう。
食事の一口目は野菜から、そのあと他のおかずを食べ、最後にごはん(主食)を食べるという「食べ順」を意識する方法です。
 野菜から食べることで、血糖値の上昇が緩やかになり、インスリンを節約することができます。
ベジタブルファーストは減量につながるだけでなく、膵臓の負担も軽減できる食べ方です。
万が一野菜がなければ、海藻類やナッツ、肉や魚などでも大丈夫。
 食べ順を守りやすい、たとえば定食などのメニューを選ぶことも大切ですが、ラーメンのようなメニューの場合でも、野菜をトッピングしてそこから食べるようにしましょう。
血糖値の上昇を緩やかにすることができます。

(4)食後15分はちょこちょこ動き、ゆったり座らない
 食後15分は、座ってゆったりするのではなく、ちょこちょこ体を動かすようにしましょう。
運動でなくても構いません。散歩したり、身の回りを掃除したりするだけでも、血糖値の上昇が緩やかになります。
あえて少し遠いお店に歩いて行ってみたり、食後の歯磨きの間にかかとの上げ下げをしてみたりするなど、食後すぐに座らないよう意識してみてください。

(5)低糖質商品を上手に活用する
 今やさまざまな低糖質商品があり、飲み物やお菓子だけでなく、主食や調味料など多岐にわたります。
「糖質ゼロ」をうたうものから「糖質○○%オフ(カット)」まで幅広く、スーパーやコンビニなどでも扱われているので購入しやすくなりました。
 これまで食べていたものをこうした商品に替えるだけでも、大幅な糖質カットが可能です。

「これなら無理なく続けられそう!」というものが見つかると、数値改善にもつながりやすく、またその後も継続しやすいため、リバウンドも起こりにくくなります。
 血糖値が高くても、初期症状を自覚することはほとんどないので放置してしまいがちです。
しかし、糖尿病は恐ろしい病気です。
具合が悪くなってから「あの時、どうして何も取り組まなかったのか」と後悔したくなるほど、その代償は大きいものになります。
健康診断で引っかかったら、「生活習慣を見直すチャンス」と前向きに捉えて、今日からできることから始めていきましょう。

参考 糖尿病診療ガイドライン2019
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2022年06月08日

愚かな世界を嘆くよりマシな未来を志向しよう

参院選の候補・公約が出揃う。愚かな世界を嘆くよりマシな未来を志向しよう
2022年06月07日 SPA!

―[鈴木涼美の連載コラム「8cmヒールで踏みつけたい」]―
7月10日の参議院議員選挙に向けて各党の公約、候補者が出揃い始めた。
自民党は憲法改正、防衛費増額などを掲げ、6月1日には河野太郎広報部長が参院選に向けた自民党の新たな政治活動用ポスターを発表。
立憲民主党は物価高対策、教育無償化、安全保障を「生活安全保障の3本の柱」と強調するが、野党の足並みが揃わないなか、情勢調査では既に自民党が改選過半数を超えて圧勝との見方が強い

◆半分の「優しさ」の正体
下のお口と上のお口では言うことが違うし、右目と左目で見える世界が違う。
5年ほど前、人生の非処女期間が処女期間より長くなったことに眩暈がしたが、今年の初めに、夜職だった時間より昼職の時間が長くなったことにも気づいた。
それでも私の身体の幾分かはバージンな水でできていて、スレた心だけでできているわけじゃないと信じたいし、約半分は現代人で約半分は古代から続く売春婦であるとも思う。
右目を閉じれば社会にいくらか改善できる点が見つかるし、左目を閉じればどうせ変わらない世界で愚かに生きればいいと開き直る。
統計すら書き換えてしまうような国の中枢に絶望しながら、自己負担が軽減された不妊治療で生まれた命(他人のだけど)に希望を抱く。

7月に予定される参院選に向け、各党の公約や立候補予定者が出揃いつつある。
核シェアリングの議論を開始したがる党がある一方、物価高対策など生活の安全保障を強調する姿もある。
初めて国政に挑む候補が多様な社会を目指すと志し、与党は政治の安定こそ重要だと説く。

上のお口は公約を見比べて護憲や貧困層支援を並べ立てるものの、下のお口は権力は志など一瞬で腐らせると笑って候補者を不埒な目で眺める。
報道各社の調査で岸田内閣の支持率は堅調、参院選での投票先も与党が他を大きく引き離し、一部では半数を超える。
長きにわたる自民党政権下で、報道されてきた多くの疑惑は未解決のまま、統計不正だけでなく安保法制の強行採決、過大な予備費、入管での死亡事故、ブラだかマスクだかわからない布の配布と廃棄、五輪の強行、などいろいろあった。

半面、ネックと言われていた執行が終わっても死刑廃止は進まず、同性婚も夫婦別姓も叶わず、シングル親は困窮し、少子高齢化はいよいよ深刻で、息抜きに大麻も吸えないままだ。
巨悪が暴かれようが巨根がスキャンダルを呼ぼうが、利権が全てを動かすような世の中を前に、下のお口がだらしなくもなる。

すべてが政権与党のせいではない。震災の痛み癒えぬままに疫病禍の日常がやってきた。
香港ではかつてあった自由さえ奪われ、ウクライナの国土は踏み躙られた。社会を映すべくメガホンを握るはずの映画監督は乳や性器を握りつくし、自分の関わる作品の捏造に沈黙して縁のない大学で饒舌に喋り、ジャーナリズムは怠慢で、アニメの主人公は異世界に転生し、人気漫画は戦前を描き、ファッション誌はSDGsの夢の中、AVは相変わらず顔射が好きで、人の心を癒やすのは50年以上前に宇宙からきた銀色巨人くらいだった。

長く権力を握り続け、ご病気とともに去った元トップが軍備増強を訴える姿を見れば、大量に余ったマスクではない、韓国で人気の機能性抜群のものを付けている。
毎日片目ずつ瞬かせて気分はころころ変わる。
それでも、シニシズムが予想するよりはほんの少しだけ光のほうに物事がズレていくこともある。
そのような変化が蓄積し、同性愛者が投獄されず、魔女が狩られないどころか『美ST』の表紙を飾り、農村の娘が遊郭に売られずマイルドにヤンキーになる社会が今ある。
トーキー映画が生まれてたかだか100年、古い映画の中で当たり前に語られる価値観は今ではジョークでも笑えない。

歴史を学び、下のお口を説き伏せるべき時かもしれない。

――連載はこれにて終了しますが選挙に出るわけではありません。

※週刊SPA!6月7日発売号より
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うつ病と認知症の症状は似ている?

うつ病と認知症の症状は似ている? 中年世代にも広がる“薬で治らない”メンタル不調
2022年06月07日  日刊SPA  

給料は上がらず、タスクと責任ばかりがのしかかる中年世代。
ストレスゲージは常に高値安定。
誰かがメンタル病んで休職なんて話を聞いても、「あぁ、またか」「明日はわが身か?」と思う人も多いだろう。

 しかし、メモリークリニックお茶の水の理事長で医学博士の朝田隆先生は、「メンタル不調の診断は簡単ではなく、さまざまな可能性がある」という。
「うつ病だと診断されて治療をしてきたけれど、実は若年性認知症だったという人がいれば、若年性認知症の疑いがあって調べてみると、発達障害があって周囲から孤立しメンタル不調が出たという人などいろいろです」
 メモリークリニックお茶の水は認知症を専門とし、朝田先生は認知症予防と脳画像診断の第一人者。

うつ病だと思ったら認知症!?
認知症だと思ったら発達障害⁉︎
 いったい、どういうことなのか?
うつ病の症状は認知症の初期症状と酷似

一般的にうつ病は、真面目で一生懸命、律儀で責任感が強い人のほうがなりやすいと言われる。
「こうした性格を『メランコリー親和型』あるいは『執着気質』と言い、昔からうつ病になりやすいことがわかっています。
いわば『保守本流』のうつ。
希死念慮を抱き、自殺しやすいのもこのタイプですが、一方で薬が効きやすい。
きちんと医者に行って服薬治療をしながら休養をすれば、数か月で回復していきます」

 ただメランコリー親和型の人は、真面目なだけに弱音を吐かず、我慢強いため発見が遅れがち。
周囲の人は「小さなミスが増えた」「元気がなくなり笑顔がなくなった」「好きだったことにも興味を示さない」「不眠がち」といった変化に気づいてあげるのが大切だ。
 が……実は、これらの症状は認知症の初期症状でもあるという。

「65歳以上なら真っ先に認知症を疑いますが、40代50代だとうつ病や精神的ストレスと診断されることも多い。
うつ病だと診断されて2〜3年、精神科に通い、抗うつ薬を飲み続けてもよくならない。そのうちに、記憶や認知に問題が出てきて認知症のテストをすると、すでに中度にまで進行していた……というケースは珍しくありません」

 認知症は初期に発見し、適切に対処していけば進行を遅らせることができる。
しかし、 “誤診”によって、その大切な時間が奪われてしまうのだ。
「認知症というと70代80代の高齢者がなるものと思っているでしょうが、27歳で発症したという人もいます。
それは稀なケースだとしても、働き盛りの40代50代でも無関係ではありません。
まずはそれを認識してほしいと思います」

対処法が異なる新型うつ
他方で、若年性認知症ではなく、真面目でも几帳面でもなくメンタルに不調をきたすケースもあるという。
仕事のやる気は出ないが、遊びや趣味は楽しめる、というタイプで、いわゆる「新型うつ」と呼ばれるタイプだ。
「医学的には『逃避型抑うつ』『ディスチミア親和型うつ病』などと呼ばれるタイプで、“保守本流のうつ“とは症状が違います。
従来型のうつは、常に気分が落ち込んでいるし、お酒を飲んでも気持ちは晴れず、酔うこともできない。
一方、新型うつ病は飲酒を含め楽しいことはきちんと楽しむことができる。
また、眠れないといううつ病の典型症状がないのも特徴です」

 加えて、もう一つの大きな違いは、従来のうつ病が「なにもかも私が悪い」と自らを責めがちなのに対し、新型うつ病は「悪いのは会社や上司。自分は悪くない!」と、あくまで他罰的であること。
「調べてみると、自閉スペクトラム症や注意欠如・多動症といった発達障害が見つかることがあります。
周囲とコミュニケーションがうまくいかず、トラブルばかり起こして、『私は理解されていない』『自分は評価されていない』という不満や疎外感から、メンタルの不調を引き起こすわけです」

 新型うつは抗うつ剤があまり効かない。
そのため、カウンセリングなども併用した治療が必要になるそうで、その対処法も異なるのだ。

ストレスチェックの問題点
 従来型のうつ病なのか、若年性認知症なのか、はたまた新型うつなのか? いずれにせよ、「早期に見極めることが大切」なのは間違いない。
 働く人のメンタルヘルスの不調を未然に防ぐため、国も2015年12月から50人以上が働く事業所でストレスチェックを義務づけている。
が、このストレスチェックの効果について、朝田先生は懐疑的だ。

 確かに、「眠れない」「元気がない」と正直に書いて、会社にメンタルが弱い人間だと評価されたくないと考える人はいるだろうし、正直、「めんどくさい」と適当に答える人もいるだろう。
「また、新型うつの人は『仕事の内容は自分に合っている』とポジティブに答えるでしょうし、『よく眠れない』ということもない。どうしても、現状のストレスチェックではスクリーニングできないんです。
また、ストレスチェックを受けたところで、診断は出せないのが現状。
産業医の9割が内科医で、脳の疾患やメンタル不調に対しての知識や理解が追いつかないという根本的な問題もある」

 うつ病も嫌だが、若年性認知症もおそろしい……。
どのケースでも治療の第一歩は「病気を自覚すること」。
まずは「メンタル不調もいろいろ」と知っておくことが大切なのかも。
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2022年06月09日

物価高なのに年金減額…安倍元首相がすべての“元凶”だった! 2016年に法改正断行の大罪

物価高なのに年金減額…
安倍元首相がすべての“元凶”だった!
2016年に法改正断行の大罪
2022年06月08日 日刊ゲンダイDIGITAL

 7月の参院選では、自民党政権に対する高齢者の怒りが炸裂しそうだ。
 いま、年金受給者のもとに日本年金機構の「年金額改定通知書」が続々と届いている。
「令和4年度の年金額は昨年度から0.4%の減額改定となります」という「減額通知」だ。
 これだけ物価が上がっているのに減額? と不思議に思うかもしれないが、2016年の法改正によって、年金支給額は直近の物価高だけでなく、現役世代の賃金下落にも連動させる仕組みになった。
その新ルールが昨年度から適用され、これで2年連続の減額である。

 今回の改定では、18〜20年度の現役世代の「実質賃金変動率」がマイナス0.4%、21年の「物価変動率」はマイナス0.2%だったため、より低い方の「賃金」に合わせて年金支給額がマイナス改定になった。

■年金カット法と賃金下落
 18〜20年といえば、安倍政権時代だ。
アベノミクスの失敗で実質賃金が下がり、それがいま、年金にも影響してくる。
4月、5月分の年金は今月15日に支給されるが、実際に受け取ったら、愕然とする高齢者は多いだろう。

「そもそも、16年に『年金カット法』と呼ばれた法改正を断行したのも安倍政権です。
アベノミクスは賃金が減っただけでなく、円安誘導でいまの物価高の原因にもなっています。
安倍元首相は二重、三重の意味で年金減額の“元凶”だし、首相を辞めてからも国民に負担を強いる防衛費倍増を要求している。
防衛費を倍増させるには、社会保障費を削るか、国債発行か、増税しかない。軍拡のために国民生活が痛めつけられる日本でいいのか、有権者は本気で考えるべきです」(法大名誉教授の五十嵐仁氏=政治学)

 安倍元首相は防衛費をGDP比2%以上に増額するよう訴えているが、それには5兆円規模の予算が必要だ。
5兆円あれば、約4000万人の年金受給者全員に月額1万円を上乗せ支給できる。
 この物価高で年金が減らされる不条理に怒りや不安を感じるなら、選挙で与党以外に投票するしかない。
参院選は絶好の機会だ。

小だぬき
国民生活に目を配らないと選挙に影響するぞ!!という投票行動をとることが大切です。
一度「日本共産党」「れいわ新撰組」に投票先を変更して、これ以上、国民を無視すると「選挙による革命」をする覚悟はあるぞ!!と与党に知らしめる必要があると思います。

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2022年06月10日

年金生活者が「生きがい」を作るためには?

年金生活者が「生きがい」を作るためには?
あるじゃん  (All About マネー)

老後のお金や生活費が足りるのか不安ですよね。
老後生活の収入の柱になるのが「老齢年金」ですが、年金制度にまつわることは、難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。
そんな年金初心者の方の疑問に専門家が回答します。
今回は、年金生活をしている人が生きがいを作る方法です。

◆Q:年金生活をしている人の生きがい作りとは?
「年金生活に入り、気力がなくなってしまいました。家でぼーっとしています。そんなに生活に余裕もないですが、年金生活者が生きがいを作るためには何をしたらいいですか?」(元大手企業会社員・60代)

◆A:老後も仕事や趣味を通して、社会と関わりを持ちましょう
相談者のように、仕事一筋で自由な時間がなく過ごしてきた人ほど、退職後、時間を持てあますかもしれません。
リタイア後に「ゆっくり好きなことができる」と思っていたものの、会社に行かなくなったことで、職場の仲間と接することがなくなり、社会との接点がなくなってしまい孤独感がでてくるようです。
会社に行かなくても地域の中で社会に接することで、自分が世の中の役に立っているという存在価値を感じることができれば、新たな生きがいを持って過ごすことができるはずです。

人間はたった1人で心豊かに生活していくことは難しいのです。
社会生活の中で誰かの役に立っている、他人に感謝されることで、幸せを感じるものです。
例えば、シルバー人材センターに登録して、清掃、除草、自転車置き場管理、公園管理、宛て名書き、植木の剪定、障子・襖張り、福祉・家事援助サービスなどの仕事を週に2〜3日ほど、健康に問題がなければやってみてはどうでしょう。
おおよそ1時間あたり1000円ほどの時給であることが多いようです。
1日4時間程度であれば、月額4万〜5万円程度の収入が得られることになります。

まずは自分にできそうなお仕事から始めてみましょう。
趣味についてですが、お金をかけずともできることはあります。
地方新聞などを見ると初心者向けの太極拳やコーラスなどが紹介されており、無理のない程度で身体を動かしたり、声を出したりすることも、年金生活をしている人にはおすすめな趣味のひとつです。
誰でも最初は初心者です。まずは始めてみることが大事だと思います。

年金生活で時間に余裕ができた今こそ、会社での仕事とは違った社会とのつながりができ、自分は世の中に必要な存在であると感じることができるでしょう。
仕事や趣味を通じて、人に感謝されることで、老後も心豊かに、生きがいを持って生活できることと思います。

監修・文/
深川弘恵(ファイナンシャルプランナー)
都市銀行や保険会社、保険代理店での業務経験を通じて、CFP、証券外務員の資格を取得。相談業務やマネーセミナーの講師、資格本の編集等に従事。日本FP協会の埼玉支部においてFP活動を行っている。
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2022年06月11日

フェイクニュースの裏側に、デマ拡散で大金を得ている人がいる!?

フェイクニュースの裏側に、デマ拡散で大金を得ている人がいる!?
2022年06月10日 ダイヤモンドオンライン

「なぜデマは真実よりも速く、広く、力強く伝わるのか?」SNSに潜むウソ拡散のメカニズムを、世界規模のリサーチと科学的研究によって解き明かした全米話題の1冊『デマの影響力──なぜデマは真実よりも速く、広く、力強く伝わるのか?』がついに日本に上陸した。
ジョナ・バーガー(ペンシルベニア大学ウォートン校教授)「スパイ小説のようでもあり、サイエンaス・スリラーのようでもある」、マリア・レッサ(ニュースサイト「ラップラー」共同創業者、2021年ノーベル平和賞受賞)「ソーシャル・メディアの背後にある経済原理、テクノロジー、行動心理が見事に解き明かされるので、読んでいて息を呑む思いがする」と絶賛された本書から一部を抜粋して紹介する。

■アメリカ大統領選で、マケドニアの若者が突然お金持ちに!?
 クリミア危機やアメリカ大統領選挙のさいのロシアの動きから、フェイク・ニュースを作るのにどのような政治的動機があるのかはよくわかる。
だが、経済的動機からフェイク・ニュースを作る人間が多くいることも見逃してはならない。
そのことは、マケドニア(現在の北マケドニア)のヴェレスでの事例を見れば明らかである。

 ヴェレスは、人口5万5000人の小さな町である。あまり活気があるとは言えない。
テレビのチャンネルは2つしかなく、美しい教会がいくつかあるくらいで目立つ建物もほとんどない。
歴史上の人物としては、オスマン帝国の宰相を務めた人物が何人かいるくらいで、歴史的に有名な事件といえば、14世紀終わりのセルビア人とオスマン帝国の戦いがあるくらいだ。
 しかし、そんな小さな町、ヴェレスが、2016年のアメリカ大統領選挙では、世界のなかでも特に大きな影響力を持つことになった。
失業中の10代の若者たち(1)が何人も、ハイプ・マシンでフェイク・ニュースを拡散させるだけで突然、大金持ちになった。

■フェイクニュースが広がる経済的動機
 ヴェレスの若者たちは、ソーシャル・メディアのアドネットワークを通じアメリカの有権者に向けてフェイク・ニュースを拡散するためのウェブサイトを何百という単位で作り、またそのウェブサイトの宣伝をした。
 グーグルなどの企業は、インターネット利用者に向けて広告を表示し、その広告に合った「質の高い」ユーザーをどれだけ引きつけたかに応じて、ウェブサイトの制作者に報酬を支払う。
 ヴェレスの若者たちは、良いウェブサイトを作り、ソーシャル・メディアでうまくそのサイトのコンテンツを宣伝すれば、大金を稼げることを知った。
自分たちの書いた記事を数多くの人が読み、シェアすればするほど、得られる報酬の額が増えていくのだ。

■偽情報は、真実よりも「シェア」される
 私たちが調査で確認したのと同様、若者たちもやはり、フェイク・ニュースは真実のニュースよりも多くの読者を引きつけるのだと知った。
フェイク・ニュースは真実のニュースよりも70パーセントも多くシェアされた。
 若者たちは、拡散のため、ソーシャル・メディアに偽のアカウントも作った。
拡散のための有効な方法を確立してからは、フェイク・ニュースはますます多くの人たちに広まるようになった。
それまでに届かなかった層の人たちにまで届くようになったのだ。

 間もなく投票に行くはずのアメリカの有権者たちの多くが、拡散されたフェイク・ニュースを読むことになった。
選挙の数ヵ月前からアメリカには大量の嘘が流し込まれ、反対にヴェレスには大金が流れ込んだ。
選挙を前にしたアメリカは嘘の洪水に沈み、ヴェレスの街には、BMWの新車が多数走りはじめた。
 ヴェレスの件はほんの一例にすぎない。
2019年に、世界中のフェイク・ニュース関連のウェブサイトが上げた収益は2億ドルを超えた(2)
フェイク・ニュースは今や、ビッグ・ビジネスである。
フェイク・ニュースの問題を解決するには(詳しくは第12章を参照)、まずその経済的効果を認識しなくてはいけないだろう。 【参考文献】

(1) Samanth Subramanian, “Inside the Macedonian Fake-News Complex,” Wired, February 15, 2017. (
2) Global Disinformation Index, The Quarter Billion Dollar Question: How Is Disinformation Gaming Ad Tech?, September 2019, https://disinformationindex.org/wp-content/uploads/2019/09/GDI_Ad-tech_Report_Screen_AW16.pdf.

(本記事は『デマの影響力──なぜデマは真実よりも速く、広く、力強く伝わるのか?』を抜粋、編集して掲載しています。)
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2022年06月12日

「デマを拡散してしまう人」の残念な心理

「デマを拡散してしまう人」の残念な心理
2022年06月12日   ダイヤモンドオンライン

「なぜデマは真実よりも速く、広く、力強く伝わるのか?」SNSに潜むウソ拡散のメカニズムを、世界規模のリサーチと科学的研究によって解き明かした全米話題の1冊『デマの影響力──なぜデマは真実よりも速く、広く、力強く伝わるのか?』がついに日本に上陸した。
ジョナ・バーガー(ペンシルベニア大学ウォートン校教授)「スパイ小説のようでもあり、サイエンス・スリラーのようでもある」、マリア・レッサ(ニュースサイト「ラップラー」共同創業者、2021年ノーベル平和賞受賞)「ソーシャル・メディアの背後にある経済原理、テクノロジー、行動心理が見事に解き明かされるので、読んでいて息を呑む思いがする」と絶賛された本書から一部を抜粋して紹介する。

■「人の注意を引きやすい情報」の共通点
 人間はなぜ、嘘の情報にそれほど引きつけられるのか。
なぜ、みすみす嘘を拡散してしまうのか。

私と、ソルーシュ・ヴォソウギ、デブ・ロイの3人は、この問いに関して、「新奇性の仮説」という仮説を立てた。

 新奇なものは人間の注意を引きつける。
驚いたり、感情を大きく動かされたりすると、その原因となったものに注目するのだ。  それまでの価値観、世界観を変えさせられるような事実を知ると、
人はそれを誰かと分かち合いたいと思う。誰かに知らせれば、知らせた相手も自分と同じように、新たな秘密を知り得た特別な人間(3)になれるだろうと思うのだ。

■嘘であっても、新しい奇抜な情報はリツイートされやすい
 そういう仮説を立てたうえで、私たちは10年分のツイッターのデータを分析した。
フェイク・ニュースが実際に、真実のニュースより新奇性の高いものになっていたかどうかを検証したのだ。
また、ツイッターのユーザーたちが、新奇性の高い情報をそうでないものより多くリツイートしていたかも検証した。

 私たちは、ツイッター上で内容が真実であるか嘘であるかを問わず、ともかく何らかの噂のツイートをリツイートしたユーザーたちについて詳しく分析してみた。
その人たちが、リツイートの前の60日間に触れた全ツイートの内容を精査し、それとリツイートした噂のツイートの内容とを比較したのだ。
 すると、両者のあいだには、一貫した傾向が見られることがわかった。
どのユーザーも、自分がそれまでに目にしてきたツイートに比べて新奇と感じる内容のツイートをリツイートしていたのだ。そして、嘘の噂、つまりフェイク・ニュースを、真実の噂、ニュースに比べて新奇と感じるユーザーが多かった。

■「新しい奇抜な情報」を競いあって発信している
 今のように「アテンション・エコノミー(人々の関心、注意が経済的な価値を持つという考え方のこと。第9章で詳しく触れる)」が重要視される時代には、フェイク・ニュースを流すことには一定の合理性があると言える。

 ソーシャル・メディアに流れる情報(ミーム)は、私たちの乏しい関心、注目を少しでも多く得ようと互いに競争している。
そのなかで新奇なミームは、多くの人の注目を得て、その人たちの消費、行動を操ることができるし、多くの人に拡散に協力してもらうこともできる。

■嘘の噂で、驚きと嫌悪感を抱かせられている
 ただ、嘘の噂が真実の噂に比べて新奇だと判断したのは、あくまで分析した私たちの主観かもしれない。
実際にそのツイートを見た本人はそう感じていない可能性もある。
 そこで私たちは、この「新奇性の仮説」の正しさをさらに検証すべく、ユーザーたちのリプライを分析することにした。

嘘の噂、真実の噂それぞれに、どのようなリプライをしているかを見て、その噂に対して抱いている感情を読み取ろうとしたわけだ。
 それでわかったのは、嘘の噂のほうが、真実の噂に比べ、ユーザーに大きな驚きや強い嫌悪感を抱かせていたということである。
これは「新奇性の仮説」を裏づける結果だと考えられる。

それに対し、真実の噂のほうは、悲しみや期待、喜び、信頼などを抱かせることが多かった。
 この結果を見ると、新奇性に加え、フェイク・ニュースのどのような要素が人々にリツイートを促すのかもわかる。
フェイク・ニュース拡散のメカニズムを理解するには、まず人間がいかにフェイク・ニュースに影響されやすいかを知る必要があるだろう。
(本記事は『デマの影響力──なぜデマは真実よりも速く、広く、力強く伝わるのか?』を抜粋、編集して掲載しています。)
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2022年06月13日

長生きのためには1日どのくらい歩けばいいのか 米医学誌で報告

長生きのためには1日どのくらい歩けばいいのか 米医学誌で報告
6/12(日) 日刊ゲンダイ

【医者も知らない医学の新常識】
 歩くことが健康に良い、というのは科学的にも実証されている事実です。
ただ、どのくらい歩くことが健康に最も良いのかといった点については、まだ専門家の間でも意見が一致しているとはいえません。
「1日1万歩以上歩くことを目標にしましょう」というのは、広く知られている健康のための目安で、日本国内のみならず海外の歩数の基準としても使用されていました。
しかし、じつはこれは日本の歩数計の宣伝が元になっていて、それほど科学的な根拠はないものだったのです。

 2021年の米国医師会関連の医学誌に発表された論文には、アメリカでの研究データが報告されています。
 38〜50歳の2000人を超える一般住民を、10年以上という長期観察したところ、最も死亡するリスクが低かったのは、1日7000から9999歩歩いている人で、歩数が少ない人と比較すると、7割以上も死亡リスクが低下していました。
1万歩を超える人も死亡リスクは低下していましたが、低下率はそれほど大きいものではありませんでした。

 もちろん体力をつけるためには、より長い距離を歩くことや、より強度の高い運動が必要ですが、単純に「健康で長生き」ということを考える時には、1日7000から8000歩くらい歩きましょうというのが、最も効率的な健康法であるようです。 (石原藤樹/「北品川藤クリニック」院長)
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2022年06月14日

反ワクチン団体 神真都(やまと)Qとは何者か

反ワクチン団体「神真都Q」に潜入
ジャーナリストが突撃!その正体とは
2022.6.13 Diamondオンライン
横田増生:ジャーナリスト

ユニクロやアマゾン、ヤマト運輸に潜入したジャーナリストが、コロナ陰謀論を唱える反ワクチン団体「神真都(やまと)Q」に突撃取材を敢行!
一般人には理解不能な主張をする彼らの正体とは?(ジャーナリスト 横田増生)

「ワクチン接種反対」を掲げ押し入り
建造物侵入の現行犯で4人が逮捕
 私が「神真都(やまと)Q」を認識したのは2022年4月上旬のこと。
そのメンバーが、東京都渋谷区で小児用のワクチン接種が行われていたクリニックに、「ワクチン接種反対」を掲げ押し入り、建造物侵入の現行犯で4人が逮捕されたという新聞記事を読んだときだ。

神真都Qの「Q」とは、アメリカ発の陰謀論集団である「Qアノン」を意味している。
 神真都Qとは、「新型コロナウイルスは存在せず、ワクチンには毒性があり、日本の人口を削減するために悪用されている」との陰謀論を主張する反ワクチン団体だ。
 その基本となる考えとは、「大和民族は本来、いい宇宙人と龍神の遺伝子を受け継いでいるのだが、悪い遺伝子を持ったディープ・ステイト(闇の勢力)やイルミナティ(悪の秘密結社)による情報統制によってその能力が封印されている。
光の戦士である神真都Qのメンバーが、その眠ったDNAを覚醒することで、大和民族の真の力を目覚めさせる」――というもの。

 何を言っているのか見当もつかない人がほとんどかと思う。当然だろう。
 オカルト界隈ではスピリチュアル系の陰謀論とみなされているが、そうした分類以上に大切なのは、彼らが外部の人間には戯言(たわごと)にしか聞こえない言葉を信じている集団である、という点だ。
その神真都Qが、「“コロナのウソ”を暴く守護神」として奉るのがアメリカのドナルド・トランプ前大統領だった。
3月に東京都内で行われたデモ行進では、「We are Q(われわれは、Qアノンのメンバーである)」をしきりに連呼していた。

 現行犯逮捕の模様について、全国紙の社会部の記者はこう話す。
「当日は、ワクチン接種会場となった病院に約10人のメンバーが押しかけ、『治験が終わっていないワクチンを子どもに接種するのは犯罪だ』、『ワクチンの成分を開示せよ』、『院長と話をさせろ』などと騒ぎたて、ワクチン反対のビラを院内でまきました。
それが午前9時過ぎのこと。その後、警察が駆け付けたのが10時頃。それでも神真都Qのメンバーは病院から出ていかず、押し問答になり、11時前後に4人が現行犯で逮捕されました。
その後、神真都Qの本部や首謀者の自宅に家宅捜査が入り、関係書類やパソコン、スマホなどが押収されています」

 私は千葉県にある現行犯逮捕された60代の男の家を訪ねてみた。

首謀者は二世俳優
殺人未遂罪で有罪判決を受けたことも
 東京メトロ東西線の駅から歩いて10分ほどの2階建て建売住宅で、玄関には2台の自転車とカヌーボートが置いてあり、駐車場には日産自動車のミニバンが止めてあった。
チャイムを押すも、返答はなし。
その直後、自宅の電話番号に電話を入れると、女性の声が恐る恐るという感じで「はい?」とだけ返事があったので、取材で訪ねてきた旨を告げると、深いため息とともに、電話が切られた。

 現行犯逮捕の2週間後、首謀者である「イチベイ」も逮捕・起訴された。
その後、さらに3人の逮捕者を出し逮捕者は合計で8人となった。
 イチベイとは岡本一兵衛を名乗る人物で、本名は倉岡宏行(43歳)。10年以上前はVシネマに出演していた二世俳優で、父親は俳優の岡崎二朗。
イチベイは役者時代、映画製作会社の役員を刃物で刺し、殺人未遂罪で有罪判決を受けたこともある。

 現行犯逮捕劇の直後、まだ捕まっていなかったイチベイが、現場から逃走している場面をYouTubeに投稿していた。
「緊急ライブ配信 神真都Q 代表 岡本一兵衛」と題する映像で、坊主頭のイチベイが安っぽい青のスーツを着た上に赤のネクタイを締め、襟には「Q」のバッチを付け、襲撃したクリニックから足早に立ち去りながら、周囲を警戒して話している様子がうかがえる。
「現状を説明すると、クリニックに行って、治験も通っていないチクワン(ワクチン)を打っていることと、チクワンの中身を説明してくれということでお話をさせていただきました。
警察が来たので、一回ボクは外に出て、対応に回りました。
そこで警察が病院の中に踏み込み、4人を警察署に連れていきました。
警察は完全に違法なお縄(逮捕)を行いました。
ボクらは、逮捕された仲間を返してくださいと言って、今は警察の対応を待っているところです。
弁護士にも依頼して、警察に抗議をしてもらいました」

緊急ライブ配信は“敵前逃亡”?
神真都Qから離れるメンバーが続出
 この動画の一番の問題点は、クリニックに押し込んだ首謀者であるイチベイが、仲間が逮捕された現場から一目散に逃げているようにしか見えないこと。
首謀者の敵前逃亡だ。
神真都Qに詳しい人物は、「この映像が公開されると、神真都Qから離れていくメンバーが続出した」と話す。

 神真都Qが警察への抗議を依頼した弁護士とは、木原功仁哉(くにや)である。
木原はこう話す。
「メンバーの逮捕の実態は報道とは違っており、建物から出ていってくれとは言われていないのに、建造物侵入に問われている。
ワクチン接種阻止活動自体は“祖国防衛権”の行使なので正当防衛と考えられる。
さらには神真都Qが、反ワクチン運動のスケープゴートにされていると感じている」

 木原自身は神真都Qのメンバーではないが、国を相手取って新型コロナのワクチンの特例承認の取り消しなどを訴えている人物だ。
また、マスクをせずに飛行機に乗ろうとして搭乗拒否された広島県呉市市議の弁護も引き受けている。
反ワクチンと反マスク関連の訴訟を一手に引き受けている弁護士だ。

 神真都Qの連帯を呼びかける投稿が、ネット上で出回り始めたのが21年末。それが今年に入り東京や静岡、大阪、福岡などでも反ワクチンを掲げてデモを行うようになり、世間の注目を集めるようになった。
 神真都Qは逮捕される以前から、東京ドームや早稲田近辺のワクチン接種会場などでも同様の騒ぎを起こし、接種が一時中断に追い込まれる事態となっており、その頃から警視庁公安部がマークしていた。

静岡県焼津市では、複数の神真都Qのメンバーが接種会場に乗り込み、主催者が会場に入らないでくれと要望するも、「お前たちは殺人罪で逮捕されるからな」「われわれは世界で子どもを救う17億人の団体だ」などと大声で叫びながら、傍若無人に会場を歩き回る姿が映像に収められている。

>>6月14日(火)公開予定の(2)に続きます

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2022年06月15日

半年で1万品目!怒濤の食品値上げ「5つの対抗策」

半年で1万品目!怒濤の食品値上げ「5つの対抗策」
2022/06/14 東洋経済オンライン
松崎 のり子 : 消費経済ジャーナリスト

最近、毎日いやというほど聞かされる「値上げ」という単語。
二重三重に膨らんだコストに押された企業は音を上げ、「価格改定のお知らせ」を頻発している。
帝国データバンクが行った調査によると、主要食品メーカーで5月末までに累計1万789品目で値上げの計画があり、半年間でなんと1万品目を超えたという。

6月以降に予定されているものをざっと見るだけでも、パン、食用油、カップ麺、ソース、カレールウ、スナック菓子類、アイスクリーム、ペットボトル飲料、ワイン・焼酎・ビールなど、必需品から嗜好品まですさまじい品目数だ。
先の帝国データバンクの調査では、各値上げ品目の価格改定率は平均で13%に達している。
われわれの食費上昇率は、10%は覚悟したほうがよさそうだ。
そこにきて日銀・黒田総裁が「家計が値上げを許容している」発言をしたものだから、大騒ぎだ。
そもそも発言の根拠となった調査結果を読めば決してそうではないとわかる。

「商品の値段が10%上がっても、そのまま買い続ける」という人が増えたというが、それより「その店で買い続けるが、買う量を減らしたり、頻度を減らして節約する」という人の割合が、2021年よりもぐんと増えているのだ。
我々は生活防衛に必死なのである。

筆者はこれまでも、あの手この手で対抗策を書いてきたが、今の現状を見つつ、少しでもオトクなもの・安いものを探す方法についてまとめてみよう。

今までは選ばなかった商品がオトク

1 据え置きブランドに乗り換える
各食品メーカーが、すべての商品を値上げするかというとそうでもない。
あるスーパーで聞いた話では、「手ごろな価格で、よく売れるもの」が値上げされる動きが目立つそうだ。
考えてみると当然で、あまり売れない商品を上げても利益には寄与しない。
普段利用しているスーパーを見ても、これまで価格が割安に感じたものほど上がっている印象だ。

価格にこだわる消費者なら、ブランドではなく最安値のものから選ぶ。となると、これまでは最安でなかったからと手を出さなかったブランドが据え置きのままになっていることもある。
筆者の例だが、よく買っていた麺類の棚を見ると、値上げしているものとそうでないものが混在していた。
その中でも最安だったものは値上げになっていたが、それより若干高いブランドは据え置きだったため、結果ほとんど価格差がなくなっていた。
しかも、据え置きだったブランドのほうが、よく見ると内容量が多い。
今なら、こちらを選ぶほうがオトクということになる。

味やブランドにこだわりがないなら、これまで高いと思っていた商品の方が価格据え置きで、実は割安になっているかも――そういう目でオトク商品を探してはどうだろう。

ドラッグストアや非・大手スーパーも活用する

2 食品で儲けを出さなくていい業種で買う
スーパーのメイン商品は言わずもがなだが食品で、それで利益を出す必要がある。
しかし、中には食品も置いているが、必ずしもそれだけで儲けようとしていない業種もある。
何度か本連載でも取り上げているが、ドラッグストアや100円ショップなどがそれだ。
この2業態にとっては、食品は客の呼び込みツールであり、食品を買うついでにもっと利益率が上がるものを買ってもらったり、ついで買いをしてもらえばそれでいい。
この理屈で言えば、スーパーほど値上げに過敏にならなくてもよく、まだ安く買える余地は残っていると筆者は見る。

雑多な商品を扱うディスカウントショップやバラエティーショップも同様で、加工品や菓子類などを注意深く見ていくと、掘り出し価格の食品も見つかる。
食品だからスーパーで買うのがいちばんという思い込みは外したほうが、安いものは見つかりやすい。
なお、100円ショップの食品については「物価高でピンチ?『100均』は今のままいられるか」でも書いたが、それこそブランドにこだわらなければ、かなり優位な買い物ができるだろう。

3 あえて非・大手スーパーに行く
筆者は地方に出かけると、なるべく現地のスーパーをのぞくようにしている。
その土地の物価や品ぞろえの傾向を知るためだが、最近はそれほど首都圏と差がないと感じることが多い。
いくつか理由はあるが、看板は違っても大手流通のグループ傘下に入っているスーパーが多いため、品ぞろえも商品価格も、あまり地域差がなくなっているのだ。
大手グループは、大量仕入れによる食材確保とコスト削減のメリットはあるだろうが、「首都圏より地方のほうが安いに違いない」と思ってみてみると、期待外れなことが多い。
同じメーカー品なのに、ある地方では値上げし、ある地方はそのままというわけにもいかないだろう。
むろん、プライベートブランドなどは大手流通の牙城だが、地場スーパーなど非・大手のほうが逆に安く仕入れられる場合もある
大手ほど大量に確保する必要がないので、小回りの利く仕入れルートを持っていることがあるからだ。

野菜には強い、その日に安い魚を安く確保するなど、特徴のあるスーパーが近くにあれば何よりなのだが。
また、こぎれいなディスプレーなどせず、梱包の段ボールを開けただけで並べている雑然とした店も狙い目だ。
これらはボックスストアと呼ばれ、大量に仕入れ、かつ陳列の手間をかけないなどにより合理的にコストを抑えて売値を安くする。
店頭に段ボールが目立つ店があったら、ぜひ覗いてみてほしい。

直売所やさまざまなECサイトを利用する

4 中間マージンがかからないところで買う
これまた当然だが、メーカーから商品がわれわれ消費者に届くまでに中間業者が挟まれば挟まるほどマージンが発生し、そのぶん価格が上乗せされていく。
住んでいる環境が許せばだが、野菜なら生産者が品物を収める直売所で買うほうが安いし、加工品類は工場直売のアウトレット品がお買い得だ。
首都圏近郊でも生産者が出品する直売所はそこそこあるし、ロードサイドの道の駅に併設されていることも多い。
そういうところではスーパーに並ばない規格外の野菜がお手頃価格で買える。

春先に玉ねぎの高騰が問題になったが、筆者もレジャーついでに三浦半島の直売所で玉ねぎのまとめ買いをした。
季節によって並ぶ野菜はまちまちだが、取れたての地物をお手頃価格で買えるのはありがたい。
オンラインを通じて生産者から買い付ける方法もある。

メルカリグループの株式会社ソウゾウは、生産者がメルカリ上で商品を販売できる「メルカリShops」サービスを提供しているが、この食品高騰でメルカリShopsでの食品購入が注目されているという。
アンケートでは、物価上昇でメルカリでの「野菜」「果物」の購入が増えるだろうと答えるユーザーも。
生産者から直接購入する場合は、購入できる分量や届くタイミングに縛りはあるが、割安に買える手段の1つと言えるだろう。

5 ふるさと納税やフードロス削減ECサイトも利用
返礼品として届く食品を目当てに、ふるさと納税を利用している人も多いだろう。
肉や野菜のほかにも、調味料にレトルト食品、ジュースやアルコールなども多い。
これから値上げが予定されているビールを返礼品にしている自治体もいくつかあり、筆者も毎年寄付をしてお礼にビールを受け取っている。
自宅まで届くのもありがたい。

また、フードロス削減目的に、パッケージが古くなったり、賞味期限までの時間が短い商品をお買い得価格で販売するECサイトを幾度か紹介してきたが、お中元に送るような箱ギフトがそのまま買えることもある。
とくに、今後も値上げが続きそうな家庭用油の詰め合わせは狙い目だ。
また、夏に向かって麺類の見切り品も増えてくると思われる。

こうしたフードロス削減サイトは、賞味期限が迫っているものも含まれているが、商品の概要欄に必ず期限の表記がある。
中には1年以上先というものもあり、急いで食べきらないといけないものばかりではない。
期限を確認のうえ、ムダにしないよう有効に利用したい。
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2022年06月16日

「都合のいい労働者?」フリーランスの過酷な実態

「都合のいい労働者?」フリーランスの過酷な実態
搾取からの保護と自由な働き方の保障という難題
2022/06/15  東洋経済オンライン
有馬 知子 : フリージャーナリスト

契約上は企業などから業務委託を受ける個人事業主だが、その実態は限りなく雇用された労働者に近い。
そんな「労務提供型」のフリーランスが、発注者とのトラブルに巻き込まれるケースが増えている。
政府は兼業・副業と並ぶ新しい働き方として、フリーランスの環境整備を進めている。
しかし企業にはフリーランスを、社会保険料や残業代が不要な「都合のいい労働者」と見なす風潮も、いまだに根強いことがうかがえる。

「雇用と一緒」が一転「あなたは業務委託」
「契約を結ぶ際、業務委託契約なのに発注者が働き手に『実際は雇用しているのと同じですよ』などとごまかしの説明をして安心させ、(契約書に)ハンコを押させるといった事例もあります」
フリーランスの契約上のトラブルなどの相談窓口「フリーランス・トラブル110番」を運営する第二東京弁護士会の堀田陽平弁護士は、上のように話す。

働く側が、雇われているのだから雇用も賃金も保障されていると思っていたら、突然、契約解除や報酬引き下げを言い渡される。
抗議すると「あなたは業務委託だから」と言われる……といったトラブルが起きているのだという。

企業側にとっては、本来は直接雇用すべき労働者を個人事業主扱いにすれば、社会保険料や残業代の支払いが不要になる。
正社員に適用されるような、厳しい解雇規制に縛られることもない。
堀田弁護士は相談の中でも、とりわけ深刻なのが「ひとつの発注者からの報酬で生計を立てている人が突然、一方的に契約を解除されるケース」だと指摘する。
内閣官房が2020年に実施した「フリーランス実態調査」(回答数9392)によると、フリーランスの40.4%が、1社だけと取引していた。
堀田弁護士によると、契約によっては一定期間、同業他社で働くことを禁じる「競業避止義務」を課せられ、仕事を失った後も次の顧客探しが難しくなるケースがあるという。
「特に運送業や建設業は、業務量の多さなどからほかの仕事をする余裕のないケースもしばしばあり、契約を一方的に解除されると、突然生計の手段を失ってしまう。
かなり困窮した人から『明日のお金がないんです』という訴えもあります」

昨年4〜9月に「110番」に寄せられた相談のうち、最も多かったのが報酬の全額不払い
次いで契約条件の不明確・契約書の未作成だが、これも実態は「契約上の報酬設定があいまいなことなど、金銭に起因する相談が多い」(弁護士会)という。
3番目が、発注者からの一方的な報酬減額だった。

業務委託の場合、発注者は任意で契約を解除でき、受注者に損害が生じたとしても賠償金を支払うなど「お金で解決」することが可能だ。
一方、報酬引き下げや業務の追加など、契約内容の変更には発注者と受注者、双方の同意が必要で、発注者の一方的な変更は、本来は法的に有効ではない。
しかし立場が弱いフリーランスの場合、引き続き仕事を得るため、泣く泣く変更に応じざるをえないことも多い。
報酬が支払われなかった時も、時間的・経済的な余裕がない、立証に必要な証拠をそろえられないといった理由から、法的手段に訴えず「泣き寝入り」しがちだ。

また堀田弁護士によると、意外と多いのは受注者からの「契約を解除したい」という相談だ。
請負契約の場合、発注者の債務不履行や当事者間での特別な取り決めがない限り、受注者が一方的に契約を解除する権利はない。
このため働き手が、発注者にハラスメントまがいの対応をされたり、過重な業務を課せられたりして「もうやめたい」と申し出ても、「中途解除は契約違反なので損害賠償を請求する」などと言われ、やめられないケースが多いのだという。

「受注者側も契約内容はきちんと果たす、自分にできる業務かどうか確認してから仕事を受ける、といった心構えは必要。
しかしドライバーが極端に長い運転を強いられ、健康を損ねているのに仕事を続けざるをえないといった場合は、大事故にもつながりかねません」

新卒も…若者の無知に付け込む
フリーランスの労働問題に詳しい川上資人弁護士は、新卒学生が「エステの会社に就職しました」と言うので話を聞くと、実はエステティシャンとして業務委託契約を結んでいた……など「就職とは名ばかりで、契約上はフリーランスだった、という事例が増えています」と話す。
「若い世代は、正社員と個人事業主の違いなどの知識があまりないうえに『フリーランス』という語感の良さにも目をくらまされ、危機感を持たず契約してしまう。
その結果、無知につけこんだ会社側に都合よく使われてしまうのです」と、川上弁護士は批判する。

「かつての個人事業主は、経験豊かな専門職や自営業者が主流でした。
しかし現在、フリーを名乗る若者の多くは、被雇用者とほぼ同じ役務提供型の働き方をしています。
スキルも経験もない若者が何の保障も得られず、それがいかに危ういかすら、認識できずにいるのです」

川上弁護士が関わる「ウーバーイーツユニオン」「ヨギーインストラクターユニオン」「ヤマハ音楽講師ユニオン」の3団体は今年5月、フリーランス同士の情報交換や政策提言のプラットフォームとして「フリーランスユニオン」を結成した。
「多くのフリーランスは発注者の指示のもとに労務を提供して対価を得ていて、雇用された働き方と大差はない」として、労災や年金、出産・育児・介護休暇に関する、フリーランスと従業員間の格差是正などを訴えている。

厚生労働省、中小企業庁、内閣官房などは今年3月、共同でフリーランスの働き方に関する「ガイドライン」を定めた。
しかし川上弁護士は「ガイドラインは、弱い立場の個人事業主にとって最も深刻な問題である、契約解除についての記載が不十分。
発注者側は『やむをえない事情』がない限り契約を解除できない、という判例を明文化するなど、実効性のあるフリーランス保護を打ち出すべきだ」と批判した。

副業者からワープアまで 多様なフリーランス
前述した「フリーランス実態調査」によると、フリーランスの国内人口は462万人と試算される。
また世帯の生計を担う人の平均年収は、200万円以上300万円未満の人が19%と最も多かった。
ただ副業としてフリーランスを選択する人も248万人と、本業フリーランスの218万人を上回る。
このように、フリーランスにはワーキングプアに近い層から、成長ややりがいを求めて副業を持つ人、1000万円を超える年収を稼ぎ出す高度専門人材ら、幅広い人々が含まれる。
多様な働き手を同じ「フリーランス」とくくって法整備をすることに、疑問の声も上がる。

堀田弁護士も「発注者の搾取や理不尽な対応は是正すべき」としつつ、フリーランスの多様性を踏まえ以下のように語る。 「やむをえずフリーランスになった人もいる一方、自由な働き方を自ら選択した人も多い。こうした人たちをも労働者的に保護すると、同時に拘束力も強まり、雇われているのと同じ状況に戻りかねません。これは彼らにとって、望ましい姿ではないでしょう」

雇用の流動性が高まる中、近年は大企業も、プロジェクトベースで外部のプロ人材を迎え入れたり、退職者を社内事情に通じた「アルムナイ」として、業務委託の形で巻き込んだりし始めている。
規制が強まると「ようやく社外人材を取り入れ始めた企業の発注意欲が低下し、かえって柔軟な働き方が広まらなくなってしまう懸念がある。
バランスが重要なのです」とも、堀田弁護士は指摘した。

岸田政権は昨年11月、フリーランス保護のための法律を早急に国会提出するとの緊急提言を出した。
搾取される「名ばかりフリーランス」を保護する一方、フリーランス本来の多様性や、自由な働き方をも保障するという、両面の環境整備が求められそうだ。
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2022年06月17日

自民党参院選「圧勝」予想が急変!

自民党参院選「圧勝」予想が急変!
“岸田インフレ”&スキャンダルのWパンチで焦り
2022年06月16日 日刊ゲンダイDIGITAL

 通常国会は15日閉幕。1週間後の22日に公示予定の参院選(7月10日投開票)に向け、各政党・候補者の戦いが本格化する。
内閣支持率の高さから「自民圧勝」との予想も出ているが、ちょっと雲行きが変わってきた。
「岸田インフレ」や自民議員のスキャンダルに有権者が厳しい目を向け始めたのだ。
  ◇  ◇  ◇  
18歳女子大生との“未成年飲酒パパ活”疑惑が報じられ自民党を離党した吉川赳衆院議員に対し、与党内で辞職すべしとの声が強まっている。
13日、自民党の世耕参院幹事長が「比例復活した議員なので自民党の議席だ。議員辞職を求めていきたい」と発言したのは、参院幹部として選挙への危機感の表れ。
14日は公明党・佐藤国対委員長も「一緒に与党を構成する公明党も、多少なりとも(参院選に)影響を受ける可能性がある」と吉川氏の辞職を求めた。

■投票で「物価高考慮」が7割超
 自公の幹部が焦り出したのは、岸田政権に対する有権者の空気が変わりつつあるからだ。
共同通信の世論調査(11〜13日)で岸田内閣の支持率が前月から4.6ポイント下落(56.9%)し、物価高への岸田首相の対応について「評価しない」が64.1%に上った。
さらには、71.1%が参院選の投票の際に物価高騰を「考慮する」と答えたのだ。

自民党の2ケタ敗北もあり得る
 自民には「パパ活」の他に「セクハラ疑惑」の細田衆院議長問題もくすぶっている。
参院選は選挙期間が長く(最低17日間)、風が起きやすいと言われるだけに、「岸田インフレ」と「スキャンダル」のダブルパンチが選挙情勢に異変をもたらしかねない。
「衆院選のような地域密着選挙と違い、参院選は選挙区が広く、候補者は有権者から遠い。
一度も候補者の顔を見ないで投票日を迎える有権者も少なくなく、政権選択選挙でもないので、その時々の政治課題に左右されやすいのです。物価高やスキャンダルで一気に政権与党への不満が高まる可能性があり、ギリギリまで分かりません」(ジャーナリスト・鈴木哲夫氏)

 32ある1人区は「与野党一騎打ち」が前回の半分以下の11選挙区に落ち込み、自民の圧倒的優位が囁かれている。
しかし実際は、野党に勝機のある選挙区では共産党が候補者を立てないなどの調整がなされているため、「自民党の2ケタ敗北もあり得る」(自民党関係者)という。
複数区についても、北海道や東京の自民の2人目は当落線上にいて、少しの逆風で落選しかねない状況だ。
 有権者の怒りのマグマはたまっている。
まだまだ分からない。
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2022年06月18日

創立100周年。この先の日本共産党に希望はあるのか?

創立100周年。
この先の日本共産党に希望はあるのか?
2022/06/17 集英社オンライン

2022年7月15日、日本共産党が創立100周年を迎えるのを前に、その実像と内幕を真摯に追ったドキュメンタリー映画『百年と希望』が公開される(6月18 日より渋谷ユーロスペースほか全国順次公開)。
映画『わたしの自由について〜SEALDs 2015〜』でも注目された西原孝至監督が、この独自路線を貫く左派政党にカメラを向けた理由、そして伝えたいものとは。

なぜ共産党は支持が伸びないのか

――まず監督自身、政治的スタンスはノンポリで共産党支持でもない、と。

はい。それは全くなくて、学生時代からデモなんて行ったこともなかったし、政治の話をしているやつは意識高いなくらいに、むしろ毛嫌いしていたほどで(笑)。
もちろん、この映画も共産党から依頼されたものではないですし、恥ずかしながら政治に対して自覚的になったのも前作でSEALDsの活動を知ってからです。
その撮影を通して、今の状況に危機感を持ったり、声をあげることの大切さを学びました。

――そんな中、あえて共産党に興味を持ったきっかけは?

毎回、デモや集会に必ずいる政党で、かつ、良いことを言って帰っていくという(笑)。
具体的にその存在を近しく感じるようになったのはコロナ禍になってからなんです。
「SAVE the CINEMA」っていうミニシアター支援の陳情の際に、文化庁とか役所を相手にするなら議員の方に同行してもらったほうがいいと弁護士から聞いて、そこで同席してくれたのが共産党の参議院議員、吉良よし子さんでした。
彼女が“文化庁が今、文化を守らないでどうするんですか?”と啖呵を切るほどの勢いで、自分たちの思いを代弁してくれて。

社会にある様々な問題を自分事として捉え、変えていくために活動する人がこの政党にはいるんだとの印象を強くしました。 同時に、誤解されることも多いし、支持が伸びないのはなぜだろうと。共産党をもっと知れば、この国の現状も見えてくるのではと覚悟を決めました。

――単刀直入にずばり、映画を撮り終えて見えたものとは?

もちろんいいところもあるし、シンパシーを感じながら撮影していました。
ただ、志位和夫委員長を中心とする党の考え方を誠実に実行していこうとする中で、逆に多様性を阻んでいるんじゃないかとか、課題も多々あるなと正直、感じています。
共産主義革命を目指しているのでは?とか、古い価値観での漠然とした印象は薄らぎましたけどね。

党の綱領からはわからない「リアル」

――登場する議員たちはまさに多様性を訴え、弱者に寄り添った代弁者ばかり。
なのに、そこからこの党の問題も浮き彫りになるという……。

私は今年で39歳になりますが、同世代の議員で共感できる方が多いんです。
池内さおり元衆議院議員は、ジェンダーやLGBTQの問題でもとても期待されていますし、池川友一都議はツーブロック禁止の校則問題でメディアに取り上げられたり、お子さんも4人いてプライベートでも興味深かったり。
彼らを、簡単にナレーションで説明するのではなく、日々活動している姿から今の共産党を感じてもらいたいと思っています。

――やはり共産主義や党の綱領、理念といったものではなく、中にいる人間の言動でしか伝わらないものがありますね。

そう思います。60年間、一党員として地元の茨城で「赤旗」の訪問販売などで頑張ってきた木村勞(つとむ)さんや、宮城の山奥で誰が聞いているかわからない雪の中、演説してる吉田剛さんなど、自分が興味をもって撮るからこそ、浮き彫りになる「共産党99年のリアル」を残せればいいなと。
共産党の歴史も勉強しましたが、今作は志位委員長のインタビューをメインとした総括的な作り方ではなく、言いたいことや葛藤も含めて、現場で今、頑張っている若い世代を意識的に取り上げました。

――その中では、旧来の共産党のイメージ、すなわち与党である自民党が最も敵視し、嫌う存在であることのジレンマも痛切に描かれます。

自民党だけでなく、世間一般のアレルギーってすごくあるんだなとあらためて思いました。
共産主義って、旧ソ連で失敗したイデオロギーでしょ、とか、昔のイメージが払拭されないまま、誤解されている部分もあります。
そのあたりも共産党が抱えている問題として、考えてもらうきっかけになればいいなと。

――池内元衆議院議員が、自分の母親から「アカ(赤)に育てた覚えはない」といまだに受け入れられずにいる葛藤を語るシーンは衝撃でした。

地方出身で親世代の保守的な考え方というのか、そのお母さんが受けた苦しみを変えたいと思って本人は入党しているのに、一番理解されたい人からもされないという。
それって共産党が受けてきた苦しみの最たるものだと思います。
例えば党名はこのままでいいのかとか、そうした外部からの批判を含め、党は受け止める必要があるんじゃないかと思います。
僕自身は共産党員でもないし、選挙で必ず票を入れる政党というわけでもないですが、左派政党として応援したい気持ちや期待があるからこそ、色々な声を盛り込みたいと思いました。

希望を託す若い世代は多いが……

――内なる批判でいうと、歌舞伎町での夜回りなど未成年女性の保護支援を行なうColaboの代表・仁藤夢乃さんが「なぜ、池内さんを比例東京ブロックの名簿で1位にしないのか(比例の順位が男女不平等ではないか)」
「多様性を標榜しつつも、変わっていないのは共産党ではないか」と指摘するシーンも刺激的でした。

彼女はSNSでも、そうしたジェンダー平等についての矛盾を発信していて、活動も含めて共感したのでぜひ、紹介したいなと思ったんです。
そういう意見を「赤旗」に掲載してほしいと仁藤さん自身が逆オファーしたものの、それは実現に至らなかったみたいで……。

――それこそ党の機関紙として自己批判的に特集したら画期的ですよね。

その「赤旗」の現場にもカメラが立ち入り、紙面作りの最前線が垣間見えたのは興味深かったですが。
議員や党員ひとりひとりが自分の意見を、もっとのびのび言いやすい環境を作っていってたら、党としての可能性はもっと広がる思います。
支援者たちも今、この社会がおかしいんじゃないか、ヤバイんじゃないかと本気で感じていて、共産党がそうした声の受け皿になれるのかどうか。

選挙でも、どこに投票していいかわからないという人はたくさんいますし、生活が厳しい人ほど保守的になって与党や現政権を支持するという矛盾した状況がある中で、共産党に希望を託している若い世代もすごく多いと肌感覚で感じました。
ポテンシャルはある、後はどう変わっていけるのかですよね。

――世襲や既得権益など、自民党に象徴される新自由主義の限界も露呈する今、そのアンチ的存在の共産党にそれこそ“希望”を見出せるのか。そんなタイトルに感じました。

仰る通り、真逆であり真反対のところを見つめることで、見えてくるものもあるのではと。
今の社会に対して漠然としたおかしさや苦しみを感じている人たちにこそ見てもらいたいです。
今後も共産党には国民が期待を寄せられる政党であってほしいし、見たかたが、自分の中の希望について考えるきっかけとなればと思います。
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2022年06月19日

「ダマされやすい巧妙なデマ」に共通する決定的な要素

「ダマされやすい巧妙なデマ」に共通する決定的な要素
2022年06月18日 ダイヤモンドオンライ

「なぜデマは真実よりも速く、広く、力強く伝わるのか?」
SNSに潜むウソ拡散のメカニズムを、世界規模のリサーチと科学的研究によって解き明かした全米話題の1冊『デマの影響力──なぜデマは真実よりも速く、広く、力強く伝わるのか?』がついに日本に上陸した。

ジョナ・バーガー(ペンシルベニア大学ウォートン校教授)「スパイ小説のようでもあり、サイエンス・スリラーのようでもある」、
マリア・レッサ(ニュースサイト「ラップラー」共同創業者、2021年ノーベル平和賞受賞)「ソーシャル・メディアの背後にある経済原理、テクノロジー、行動心理が見事に解き明かされるので、読んでいて息を呑む思いがする」と絶賛された本書から一部を抜粋して紹介する。

■ガソリン不足の情報がSNSで拡散
 2017年の夏、ハリケーン・ハービーがテキサス南部を襲った。
洪水によって、何万もの人が家を失い、アメリカ南部のいくつかの製油所で操業が止まった。
 ガソリンが不足するというニュースがすぐにツイッターとフェイスブックで拡散された。
ガソリン・スタンドでの長蛇の列と「ガソリン売り切れ」と書かれた間に合わせの看板が写った写真が添えられた投稿もあった。
 パニックが起きた。地域のドライバーたちはガソリンの買いだめに走った
まるで世界が間もなく終わるかのようだった。
オースティン、ダラス、ヒューストン、サン・アントニオなどで多くの人々がガソリンを求めて奔走することになった。

■しかし実際には……
 だが、当局の発表によって、実際にはガソリン不足など起こっていなかったことがわかった。
ソーシャル・メディアを通じて拡散され、それをマスメディアが取りあげたことでさらに広まったフェイク・ニュースだったわけだ。
 ガソリンは不足しているどころか潤沢にあったことが後にわかっている。
製油所の操業停止や、高速道路の閉鎖などは確かにあったが、それでも、ガソリンの配送がやや遅れた以上の影響はなかった。
皆が普段どおりにガソリンを使っているかぎり、大災害のなかでもガソリンの流通システムには何の問題も生じず、ガソリンが足りなくなることなどないはずだった。
 しかし、パニックが起こり、ソーシャル・メディアに煽られて皆が必死に買いだめしたことで、本当にガソリン不足になってしまった。

■同じニュースが何度も繰り返される
 フェイク・ニュースの困ったところは、同じようなニュースが何度も繰り返し、同じようなパニックを引き起こすということだ。

 偽の情報は本物の情報よりも速く広まり、人々の行動を誤った方向に導く。
情報は偽物でも、行動は本物で、それによる影響も本物である。
 このようなフェイク・ニュースは、企業、民主主義、公衆衛生などに重大な悪影響を及ぼす。
フェイク・ニュースそのものは遠い昔から存在していたが、ハイプ・マシンによって、以前よりはるかに速く広まるようになり、拡散の範囲もはるかに広くなった。

■本物の情報に少しの嘘が混ざっている
 フェイク・ニュースの拡散には一定のパターンがあることがわかっている(そのパターンの存在は、あとで詳しく紹介する大規模調査によって明らかになった)。
 フェイク・ニュースは完全な嘘とはかぎらない。
本物の情報を基にして、それを少し歪め、ねじ曲げたものも多い。

虚実を混ぜ合わせて、なかでも最も物議を醸しそうな、最も人の感情を動かしそうな要素を強調する。
 そのソーシャル・メディア上での拡散はあまりに速いため、検証して嘘を暴こうとしても間に合わない。
いったん瓶のなかから出たフェイク・ニュースは瓶のなかに戻すことができない。
あとからいくら本物の情報を流したとしても、フェイク・ニュースを消し去ることはほぼ不可能である。

(本記事は『デマの影響力──なぜデマは真実よりも速く、広く、力強く伝わるのか?』を抜粋、編集して掲載しています。)
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2022年06月20日

そこそこ幸福に生きる40のコツ

そこそこ幸福に生きる40のコツ
「自分のものを買ってはいけない」という悩みにとらわれ、悩んでいた主婦のケース
バク@精神科医
2022.6.19 Diamondオンライン

他人とうまくコミュニケーションできないことからくる孤独感や閉塞感、自己肯定感の欠如、SNSによる誹謗中傷やバッシングなど、私たちは、いま多くの生きづらさを感じさせる事柄に取り囲まれています。
そんな中にあって、毎日を心安らかに、できるだけ快適に生きていくためには、どうすればいいのでしょうか?

発達障害(ADHD)、うつ病など、生きづらさを抱えながらも精神科医として活躍するバク先生は、ツイッターでのつぶやきが共感・絶賛され、今、人気急上昇中。
そんなバク先生の初の著書『発達障害、うつサバイバーのバク@精神科医が明かす 生きづらいがラクになる ゆるメンタル練習帳』(ダイヤモンド社)の中には、生きづらさを解消するための実践的なヒントが詰め込まれています。

月2万円を自分が何に使えば、無駄遣いじゃないのか?
 過去に、「自分のものを買ってはいけない」という思いにとらわれ過ぎ、悩んでしまっている専業主婦のJさん、という人がいました。
 自分の靴下に穴があいて買い替えるタイミングのときにも、ご主人やお子さんに「まだはけるのに贅沢かな? 買わないほうがいいよね?」と何度も確認していたため、「このままではいけない」と、ご主人やお子さんも感じたのでしょう。 「
ひと月に2万円のお金は、自由に使っていいよ」と、Jさんに言ってくれました。

 それで解決しそうなのですが、Jさんは逆に、 「この2万円を何に使えば無駄遣いじゃないのかわからない。私にこんなお金を使う権利はないのに。
2万円の使い道を決められないなんて、自分は何もできない…」と、さらに悩みが深くなりました。

自分のためにお金を使うことを許せないと、 幸せを認識できなくなる
 でも、Jさんだって、何もしないで養ってもらっているわけではなく、料理をつくったり、掃除や洗濯をしたり、ご主人の会社のお手伝いをしたりするなどして、ちゃんと家族をサポートする「仕事」を十分にしているのです。
 それに家計上問題のない範囲でなら、提案された月に一定の額を、自分の好きなことに使っても全くかまわないわけです。  
しかし、ここで「自分のためにお金を使う」ことを「許せない」と思い込んでいる場合、本来であれば自分のためにお金を使うという幸せな行為が、幸せだと認識できない思考回路になってしまいます。
 仕事をして給料をもらっている方ならなおさら、一部のお金を自分のために使うことでストレス解消することに、もっと寛容になったほうがいいです。
 罪悪感を覚える必要は、ありません。

「月に一度だけ、ちょっと豪華な食事をする」
「週に一度、ちょっとだけ高価なスイーツを食べる」
「月に1万円だけ、ファッションにお金を使う」  など、自分の収支のバランスが崩れない範囲で自分にプレゼントを工夫しましょう。

 そうしたことを考えるのを反射的に「悪いこと」と切り捨てるクセのある人は、今一度、お金の使い方をよく考えてみたほうがいいです。
自分の機嫌をとれるのは、自分しかいません。
 自分で自分を追い詰める人間になったら、あなたはどこにも逃げ場がなくなってしまいます。
それだと、そんなに頑張っているあなたが、可哀想じゃないですか。

 特に日本では、清貧の思想というか、質素な生活をして、あくせく貯金することを「美徳」とするような傾向があります。  また将来を考えると住宅費であったり、子どもの教育費であったり、親の介護費であったりと、お金を使いにくくする不安を、誰もがかかえざるを得ない世の中です。

 そうした中で「将来のために今は自分の欲を抑えよう」と、とことんまで自分を縛りつけ、がんじらめの生活を強いてしまうと、生きるのが辛くなってしまいます。
何でも過ぎたるは及ばざるが如し。
 薬も過量であれば毒にしかなりません。
やり過ぎれば誰だって辛くて疲れて悲しくなるのは当然です。

 こういう考え方から抜けられないままだと、あなたは、あなたの人生を非常に辛くしてしまいますし、病気や予想外のトラブルなどに巻き込まれたりすれば、結果的により多くの出費になってしまいます。
 そうならないよう、「自分の心をケアするため」と考えて、普段から楽しみのために適度にお金を使うことを自分に許してあげてください。

 楽しみのためのお金を使うことは、自分への投資。人生において必要な経費なのです。

【POINT】 楽しみのためのお金を使うことは、人生において必要な経費だと考える。
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2022年06月21日

「性教育」を毛嫌いする日本が抱えている大問題

「性教育」を毛嫌いする日本が抱えている大問題
女性の権利に対する意識低下につながっている
阿古 真理 : 作家・生活史研究家
2022/06/20 東洋経済オンライン

アメリカで中絶をめぐる激しい議論が巻き起こっている。
きっかけとなったのは、人工中絶の権利を認めるアメリカ最高裁の判決「ロー対ウェイド裁判」が覆る可能性があるという情報が漏えいしたことだ。
近く最高裁の最終意見が出るとみられる中、アメリカでは著名人も巻き込んだ「プロチョイス(人工中絶擁護派)」と「プロライフ(中絶反対派)」の戦いが激しくなっている。
一方、日本では人工中絶には配偶者の同意が必要とする母体保護法に対する批判が強まっている。

アメリカを含む多くの国では、女性が妊娠、出産、中絶など性や子どもを産むことを選択・決定できる「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利)」が認められているが、日本ではまだこの意識は低いと言わざるをえない。 アメリカでの論争はけっして日本人に関係がないことではない。

本稿では日本でリプロダクティブ・ヘルス/ライツに対する理解や議論が深まらない理由が、性教育を毛嫌いする教育現場にある可能性について、作家の阿古真理氏が論じる。

中絶に配偶者の同意なぜ必要?
人工妊娠中絶ができる飲み薬2種類について、厚生労働省が「投薬や服薬には配偶者の同意が必要」という見解を5月17日の参議院厚生労働委員会で明らかにしたことに対し、批判が広がっている。
これらの薬は、昨年12月にイギリスの製薬会社から日本での使用を認めるよう申請されている。
日本では現状、中絶の方法は手術しかないが、すでに70以上の国と地域で経口中絶薬は承認されている。
厚生労働省子ども家庭局母子保健課に発言の意図を問い合わせたところ、母体保護法に基づいたとのこと。

法律を確認すると、第14条で、母体の健康を著しく害するおそれがある、あるいは暴行などで妊娠した場合は、「本人及び配偶者の同意を得て、人工妊娠中絶を行うことができる」とある。
ただし、「配偶者が知れないとき若しくはその意思を表示することができないとき、又は妊娠後に配偶者がなくなったときには本人の同意だけで足りる」ともある。

批判の焦点は、レイプその他で相手と連絡を取りたくない、相手がわからない場合もあるのに、なぜ配偶者の同意が必要と言うのか、ということにある。
しかし、母体保護法はそういう場合の例外も、きちんと記している。
発言とその内容に関する報道からは、その例外が見えにくい、あるいはそれ自体がきちんと周知されていないことが問題だったと言える。
法律は時代に合わせて変えていける。
今は、中絶の前提として、配偶者の同意が必要と、法律の条文の最初に書く必要があるかを考える時期なのではないだろうか。

厚労省からは、「国民の価値観・家族観を注視しながら、今後も適切な運用を心がけていきます」という回答が得られた
問われているのは、私たち国民の価値観である。
そこで、中絶の権利を含むリプロダクティブ・ヘルス&ライツ(性と生殖に関する健康と権利)とは何か、改めて考えてみたい。

性に関する意識や制度が遅れている日本
自分の体は自分のモノ、とするリプロダクティブ・ライツは、1970年代のフェミニズム・ムーブメントのときから強く主張されている。
1994年にカイロで開かれた国際人口開発会議で提唱されるなどした、国際的に確立した女性の権利である。
日本では、生殖に関わる過程で健康な状態にあることを指す「リプロダクティブ・ヘルス」と組み合わせ、「リプロダクティブ・ヘルス&ライツ」という概念がよく使われる。

2000年の男女共同参画基本計画で、このリプロダクティブ・ヘルス&ライツは、女性の人権の1つとしている。
しかし、性に関する意識や制度が遅れがちな日本で、リプロダクティブ・ヘルス&ライツは本当に確立した権利になっているのだろうか。
「中絶するかしないかは女性の権利で、この問題についてはちゃんと考えないといけないと思います」と話すのは、東京都足立区立中学校で保健体育教師として長年、性教育の授業に携わってきた樋上典子氏だ。
「授業では、いい悪いは一切言いません。中絶するなら、母体保護指定医師がいる病院をちゃんと選ぶこと、初期のほうが体にもお財布にも負担がかからないという話はします」

しかし、日本の教育現場では、中絶の権利以前の問題が山積している。
学習指導要領が「妊娠の過程は扱わないものとする」と歯止め規定を設けてきたため、性交によって妊娠することを教えない学校が多いからだ。
しかし、樋上氏は長年、性交によって妊娠することをきちんと教えている。
段階を追って性は大切なこと、と男女共修の授業で教えているため、生徒たちは恥ずかしがらずに受け止めるという。
樋上氏は、別の中学校の男性教師から「『なんで精子と卵子がくっつくんですか』と聞かれて、『高校生になったら教わります』とごまかしてしまいました」と言われたことがある。

しかし、高校でも"歯止め規定"は有効だ。
樋上氏は関東学院大学でも非常勤講師として「性の健康学」を教えており、選択授業だが400人がオンラインで受講している。
授業でアンケートを取ると、「性についてちゃんと学んでいない学生が多く、『男はこうあるべき』『女はこうあるべき』という考えが見え隠れすることがある。
しかし、多くの学生が関心を持って履修してくれ、授業を受けることで変容することがうかがえる感想がたくさん届くので、うれしい」。

恋愛が自分事として切実な大学生は、束縛しようとする相手にも合わせたいと考えがちだが、「中学生は恋愛経験が少なく、客観的な恋愛観を学ぶことができます。
どっぷり恋愛に浸かる前に考えさせるのは、大切なことです」と語る。

授業で高校生カップルを想定した議論
学校で性教育をきちんと教えなければ、妊娠するリスクも、そのリスクを避けるために避妊や中絶があることも教えられない。
それゆえ、生活力もなくパートナーシップも十分に育めないまま妊娠すると、人生がゆがんでしまうこと、そして、それを防ぐにはリプロダクティブ・ヘルス&ライツが重要なこと、までたどり着けない。
樋上氏は中学校で高校生のカップルを想定した授業で、セックスで妊娠したらどうするかを議論させ、最初と最後にアンケートを取る。
高校生になるとセックスの体験者が増えるので友だちから相談されるかもしれない、と話すと生徒たちは真剣になる。
議論でさんざん悩ませた後に、避妊と中絶の方法を伝えると、より深く理解すると言う。

「コンドームは、けっこう皆知っていますね。
低用量ピルも4、5年前は2割ぐらいしか知らなかったんですが、最近は報道が多いので知っている生徒が増えました。
日本では手術で中絶することを知らない生徒が6割近くいます。
手術可能な時期が限定されていることを知っている生徒になると、20%以下しかいない。
私は必ず『時期があるんだ!』と強調します」

授業前は、2人が合意すればセックスをしてもいいと思っていた生徒たちが、授業後は慎重に考えるようになる。
正しい知識をもとに適切な性教育を行えば、生徒たちはちゃんと受け止めて考えるようになるのだ。

「寝た子を起こすな、とよく言いますが、上手に起こしてあげることが大事。放置していたら、AVなどで学ぶしかない」と樋上氏。
また、「授業で同級生たちの意見を聞くことは、教師が教えるより説得力を持って心に響く」と話す。

学習指導要領が肝心な点をぼかしてきた理由
小中高校生に早いと考えるなら、いつなら教えても大丈夫なのだろうか。
地方では、高校を卒業してからほどなく結婚する人もめずらしくない。
社会人を全員集めて性教育を行うのもほぼ不可能だろう。
リプロダクティブ・ヘルス&ライツを知っていようがいまいが、望まない妊娠をする、あるいは妊娠させるリスクに、子どもたちはさらされている。

なぜ学習指導要領は、肝心な点をぼかしてきたのか。
性教育の歩みを確認してみよう。樋上氏は40年ほどの教員生活の中で、性教育の変化のただなかにいた。
1980年代後半、HIVの世界的な感染拡大を背景に、性教育ブームが起こる。
足立区では、性交を含めた授業を小中学校連携でどのように進めるか検討する、性教育資料作成委員会が結成された。
1992年には小学校でも保健の教科書ができ、性に関する指導が盛り込まれるなどしたことから、「性教育元年」と言われた。 ところが、2000年頃からバックラッシュが始まり、性交を教えることへの批判が起こる。

2001年に母子衛生研究会が作成した中学生向けの教材『思春期のためのラブ&ボディBOOK』は翌年、自民党の山谷えり子衆議院議員(現在は参議院議員)が国会で「行き過ぎたジェンダーフリー教育」と批判し、全国でテキストを回収するきっかけを作った。
その翌年には東京都立七生養護学校(現東京都立七生特別支援学校)の性教育が、古賀俊昭東京都議などから批判され、教員が処分される。
この影響で、「私も何度か教育委員会に呼ばれ、危険な性教育をしないよう言われました。
一緒に実践を検討してきた指導主事に言われたときはさすがに驚き、怒りがこみ上げました。
でも、指導主事も立場上、苦しかったでしょうね」と、樋上氏は明かす。
学校現場が萎縮していった様子が、こうした話からうかがえる。

七生養護学校事件は裁判になり、2013年に最高裁で原告側が全面勝訴している。
そのあたりから風向きが変わり始めた、と樋上教諭は感じている。
2015年、文科省主催で行われた性に関する学習の講習会を受講したところ、あおもり女性ヘルスケア研究所所長で産婦人科医の蓮尾豊氏がピルについてパンフレットに書いていたので驚き、「先生は中学生に避妊・中絶について教えることをどう思いますか」と手を挙げて質問したところ、「絶対に必要です」と断言された。
そこで、仲間や校長に「文科省が変わった!」と資料を送った。

2018年には、再び古賀都議が性交を教える樋上教諭らの教育を問題視し、都教育委員会が足立区教育委員会に介入するなどしたことが、朝日新聞などで大きく報道された。
この事件はしかし、メディアが大きく報じたことで、現状の性教育の不足についての関心を高める結果になった。
#Me Too運動が盛り上がり、性の問題に対する関心度が高い時期になっていた。
樋上氏がバックラッシュの時代でも、正面から性に向き合う教育を行ってこられたのは、周囲の理解があり、仲間がいたことが大きい。

バッシング前によく授業の見学に来た校長は、「性に対する考え方が変わった。子どもたちにとって、絶対に必要な授業だ」と称賛し、教育委員会にも見学に来てもらうなどしていた。
樋上氏の中学校の性教育プログラムは、授業見学に来た教師たちから称賛はされるが、歯止め規定の影響で実施は広がらない。
公務員のままでは声も上げられない、と正規職員の立場を今春、樋上氏は手放した。
世の中を変えるために、仲間と作った性教育の本を7月に刊行し、そうした性教育を広げる活動をしようと考えている。
来年度には、性暴力根絶を目的とした文科省のプログラム「生命(いのち)の安全教育」が全国の学校で行われるようになるが、ここでも性交については記されていない。

「なぜ性器が大事なのか、なぜ無断で人の体を触ることがいけないのか、という科学的なことを伝えないで、『守りましょう』だけでは、子どもたちへの説得力に欠けるのではないでしょうか」と樋上氏は批判する。
このままではいけない、と危機感を持った人々が近年、家庭向けの性教育本を次々と刊行している。
しかし、それだけでは一部の人しか、子どもへの伝え方を学ぶことはできない。

学習指導要領で性をきちんと学校で教えることを妨げるのは、日本が1994年に批准した子どもの権利条約が定める、子どもが学ぶ権利とあらゆる暴力・虐待・搾取から守られる権利を守っていないことになるのではないか。

性についてわからなければ権利もわからない
性交をきちんと教えなければ、リプロダクティブ・ヘルス&ライツについて、理解することもできない。
性教育をきちんと受けられなかった大人たちは、性が豊かな人生と人間関係を育てるものだと理解できていないのかもしれない。
「配偶者の同意が必要」といった、女性の自分の体に対する権利を侵害する言葉に敏感に反応する世論からは、リプロダクティブ・ヘルス&ライツに関する知識があり、人権意識が高い人たちが増えたことが見えてくる。
同時にその反応からは、まだ女性の体を「子どもを産む器」とみなす人がたくさんいることもうかがわせる。

何しろ、性交についてすら、教育現場で教えられない期間が長いのだから。性交も学ばず、宿した命を奪うかどうかという決断をする重みを考えることは難しいだろう。
産む、産まないについては、一緒に生きている、あるいはその予定のパートナーがいる場合は、2人で話し合って決める必要がもちろんある。
しかし、そういう相手の子でない場合は、本人に決める権利がある。
先進国の大半は、日本と違って性交を含めた包括的性教育を実践している。
性についてきちんと知ることもできず、リプロダクティブ・ヘルス&ライツに関する知識も身に着かなければ、本当の意味で豊かな人生を送ることはできないだろう。
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2022年06月22日

「天気が悪いと調子が悪い」は本当だった…「季節の変わり目」に体調を崩しやすくなる医学的根拠

「天気が悪いと調子が悪い」は本当だった…「季節の変わり目」に体調を崩しやすくなる医学的根拠
2022年06月21日 PRESIDENT Online

「季節の変わり目」に体調を崩しやすくなるのはなぜか。医師で中部大学大学院の佐藤純教授は「気のせいでも、心の問題でもない。
原因不明の慢性痛を抱える患者さんたちを1万人以上、診察した結果、天気(気圧、気温、湿度)の変化が心身に大きな影響を与えることがわかってきた。
原因が天気だとわかれば、対処の方法もみえてくる」という――。
※本稿は、佐藤純『1万人を治療した天気痛ドクターが教える「天気が悪いと調子が悪い」を自分で治す本』(アスコム)の一部を再編集したものです。

■「雨が降ると古傷が痛む」は気のせいではない
昔から、「雨が降ると古傷が痛む」とか、「季節の変わり目は体調を崩しやすい」など、天気と体調とを関連付けることはよくいわれてきました。
しかし、その因果関係がはっきりとわからなかったため、当事者が症状をうったえても「気のせい」であるとか、「心の問題」として片付けられてしまっていました。
でも、それは決して「気のせい」でも「心の問題」でもありません。

天気の要素には、日照時間や降水量、風速などさまざまなものがありますが、体に大きな影響を与える原因となるのは、「気圧」「気温」「湿度」の3つです。
30年以上にわたり、気象と痛み、自律神経との関係について研究を続ける中で、天候の変化に伴う気圧のアップダウン、寒暖差や湿度の高低などが、私たちの心と体に不調を引き起こしていることがわかりました。

その症状には頭痛、めまい、首・肩こり、腰痛、関節痛、むくみ、耳鳴り、だるさ、気分の落ち込みなど、かなり多様なものがあり、何らかの症状がある人は日本全国に1000万人以上いるといわれています。
それらの病態を総称して「気象病」と呼んでおり、私は、その中で痛みを伴う症状のことを「天気痛」と名付けました。

天気の変化を体が感じると、その変化がストレスとなって耳の奥の内耳や自律神経に伝わります。
そこで、自律神経の交感神経と副交感神経の調整がうまくいかないと、頭痛やめまい、気分の落ち込みなど、さまざまな体調不良の原因になるのです。

ここでは、拙著『1万人を治療した天気痛ドクターが教える「天気が悪いと調子が悪い」を自分で治す本』(アスコム)より、気象病の中で、最も多くの人が悩む症状である頭痛と天気の関係、そして梅雨時や夏のじめじめ、むしむしした湿度に関する不調を予防・改善するためのセルフケアの方法についてお話します。

■天気と頭痛の意外な関係
天気の影響による症状は多岐に渡りますが、その中でももっとも多いのは、頭痛です。
頭痛には脳に異常が認められない「一次性頭痛(慢性頭痛)」と、脳梗塞や脳腫瘍といった病気に端を発する「二次性頭痛」の2つのタイプが存在し、一次性頭痛はさらに「片頭痛」「緊張型頭痛」「群発頭痛」の3つに分けられます。

天気が大きくかかわってくるのは、こめかみ周辺がズキズキ、ドクドクと脈を打つように痛むのが特徴の「片頭痛」と、首や頭部、肩・背中などの筋肉の緊張で起こる「緊張型頭痛」です。
片頭痛では、症状が出る数日〜数時間前から「眠い」「気分が悪い」「生あくびが出る」などの予兆があり、その予兆が天気の変化(気圧の変化)と連動している場合が多く見受けられます。
緊張型頭痛は、微妙な気圧の変化が身体的ストレスとなって交感神経の働きが優位になり、首や肩の血管が収縮して血流が低下し、引き起こされると考えられます。

気象病のメカニズムについてはまだ完全解明に至っていないものの、気圧の変化と密接にかかわっていることと、気圧を感じるセンサーが内耳にあることは確かだといえます。

■気圧の変化が頭痛やめまいを引き起こす
内耳にあるセンサーが敏感な人は気圧の変化に過剰反応を起こしやすく、それを脳へと伝える情報がストレスとなって自律神経の乱れを誘発し、頭痛などの痛みや、めまい、だるさなどの症状が現れると考えられます。
センサーが敏感になってしまう原因は、内耳の血行不良。症状が現れるタイミングの前に血行をよくしておけば、内耳のセンサーの感受性が下がり、気象病の症状をやわらげることができます。

耳の血行を良くする方法にはさまざまなものがありますが、その中でも簡単にできるおすすめのものをご紹介します。
【耳温熱】
方法は2通りあり、
ひとつは少し湿らせたハンドタオルを耐熱性のポリ袋などに入れて電子レンジで1分間加熱し、それを使って耳と耳のまわりを温めるやり方です。
もうひとつは、ホット専用のペットボトルを使う方法です。容器を用意し、中に200mlの熱湯と100mlの水を入れて上下に振って混ぜ合わせ、両耳にあてます。
どちらの方法も、「完骨(かんこつ)」というツボにあてるとよく効きます。

■梅雨の体調不良の原因は「汗」
一年を通じて、気象病の人にとっていちばんの鬼門といえる時季は、おそらく梅雨ではないでしょうか。
雨が多く、湿度が高く、気圧の変動も大きいため、体が痛くなり、気分的にも憂鬱(ゆううつ)になる……。
これが典型的なパターンです。
とくに湿気が苦手な人にしてみれば、心身ともに大きな不調をきたす、最悪なシーズンといえるかもしれません。

体調不良を引き起こす湿気のことを東洋医学的には「湿邪(しつじゃ)」と呼び、これが体内に取り込まれて水毒となって溜まってしまうために、体の至るところでマイナスの症状が発生すると考えられています。
食欲不振、消化不良、便秘、体のむくみ、頭痛や関節痛、めまい、喘息の悪化、うつにつながるような精神的不調など、影響を受けて現れる症状は枚挙にいとまがありません。

では、状況を改善させるにはどうしたらいいか?
体の中に溜まっている水毒を外に出せばいいのです。
水毒を体の外に出すには、たくさん汗をかくのが、もっとも推奨できる方法です。
梅雨の時季は湿度が高いだけにとどまらず、温度が低めで乾燥しづらいという特徴があります。
これはすなわち、皮膚の水分が蒸発(不感蒸泄)しづらい気象条件ということです。
梅雨に限らず、湿度の高さに起因した体調不良は、皮膚の水分がすぐに蒸発できないようなときに起こります。

日本に住んでいる以上、毎年必ず梅雨を経験しなければなりません(北海道に梅雨はないとされていますが、ほぼ同じ時期に蝦夷梅雨という似たような現象が起こります)。
であれば、湿気が苦手な人は、汗をかきやすくするように体を調整していけばいいのです。

■湿度に負けない体をつくるために
では、湿度に負けない体をつくるためには、具体的になにをすればいいのでしょうか?
日ごろから基礎代謝を上げるトレーニングをして、汗をかきやすい体を維持できるのであれば、それに越したことはありません。
でも、「毎日、汗だくになるまでストイックに運動してください!」といわれたら、さすがにしんどいですよね。
実は梅雨時の湿度対策であれば、2週間もあれば十分です。
その期間だけでも体を動かすことができれば、誰でも湿度による夏バテや梅雨のダルさを乗り切れる体をつくれます。

そもそも発汗というものは、汗が蒸発するときの気化熱を利用して体のなかにある熱を放出する、すなわち体温を下げる機能です。
空気中の湿度が高ければ高いほど、水分は蒸発しにくくなります。
梅雨時に体がベタついてしまうのも汗がうまく蒸発できていないからです。

冬は汗を分泌する汗腺の機能がもっとも低下している時季なので、暖かくなったら、これを活性化させる必要があります。
しかし現代ではエアコンの普及に伴い、季節の温度変化にうまく対応できない人が増えているといえます。

■汗腺を起こして体を「夏モード」に切り替える
体づくりの方法はいろいろありますが、ジョギングであれば1日に15〜20分。これを2週間続けてください。
一度、汗をかける体になってしまえば毎日やる必要はありません。
あくまでも汗腺を起こし、順応するまでに最低でも2週間くらいかかるということです。
運動するのが大変であれば、ぬるめのお風呂に15〜20分浸かりながら、じんわりと体を温めてもよいでしょう。
少しお金はかかってしまいますが、サウナやホットヨガであれば刺激が強いぶん、毎日頑張らなくても何回か行くだけですぐに汗をかける体になります。
私は汗をかける体にすることを“冬モードから夏モードに体を切り替える”と称していますが、スイッチを切り替える作業は自律神経の仕事です。
自律神経の乱れは気象病の原因でもありますので、生活の質を高めるうえでも少しの運動を心がけてみてください。
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佐藤 純(さとう・じゅん)
天気痛ドクター・医学博士
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年06月23日

NHK受信料「死後も請求」が話題に、遺族が悩む故人のサブスク解約の対処法

NHK受信料「死後も請求」が話題に、遺族が悩む故人のサブスク解約の対処法
古田雄介:ライター/ジャーナリスト
2022.6.22 Diamondオンライン

亡くなった人の銀行口座からNHK受信料が引き落とされ続けていたことが判明。NHKは死後も支払いを止めてくれないのか……春先、そんなことが話題になった。
しかし、こうした事態が起こるのはNHKだけではない。各種サブスクサービスが花盛りな昨今、遺族に請求が届くケースは今後ますます増えてくる。
もし家族や親しい間柄の人が定額制サービスの契約を残して亡くなってしまったら、遺族はどう対応するのが正しいのだろうか?(ライター/ジャーナリスト 古田雄介)

亡くなった人の口座から、 NHK受信料が引き落とされ続けていた
 急死した一人暮らしの親戚の遺品を整理した際にNHK受信料が引き落とされ続けていることが判明。
支払いを止めて、死後の支払い分を取り戻すために悪戦苦闘をした……春先、そんな苦労をした人のツイートがネットで話題になった。

 亡くなった人がテレビを見ているわけがないのに、支払いを止めてくれない。
当人以外が手続きするとなると手間は本人のとき以上で、事態を収めて損失を取り戻すには膨大な書類と交渉が必要になる。遺族側からすると実に不条理な状況といえる。

ただ、筆者はこの話題を知ったときに既視感を覚えた。
似た事例をサブスクリプション界隈でもよく耳にしているからだ。

定額制サービスからすると、 契約者の生死は分からない
 毎月、あるいは年単位で一定の支払いが発生する(お金が引き落とされる)という点では、最近増えているネットの各種サブスクリプションサービスも同じである。
NHKにもサブスクリプションサービスにも、契約者の生死を自動で検知する仕組みは存在しない。
継続支払いの設定になっているなら、遺族や代理人からの連絡がない限り、契約者の身に何が起きても変わらず支払いが続くのが一般的だ。
 だから、残された側は頑張って対応窓口を突き止めて、事態を説明したり必要な書類をそろえたりするしかない。
 NHKの場合は、解約手続きには全国共通の窓口として「NHKふれあいセンター(営業)」を設けているほか、払込用紙などに記載している各地域の放送局や営業センターでも対応している。
いずれも電話対応が原則となっており、受付時間が限定されている上、つながりにくいという声もある。
ただ、対応窓口としては比較的見つけやすいほうだ。

 苦労するのは、ヘルプページから解約の方法にすらたどり着けない場合だ。
 あるサブスクサービスは、奥まったところに置かれた解約メニューに2段階認証を設定しており、認証を経ても翻意を促すキャンペーンページをスクロールしないと手続きが進めない構造になっていた。
ページ下段の「解約します」を押してもなお次のアンケートページで翻意できる作りになっていて、そこでもう一度「解約します」と意思表明することでようやく解放される。
契約者本人でも相当面倒で、遺族の立場では到底達成できそうにない。

 こうした状況を踏まえてか、5月25日に可決・成立した改正消費者契約法では、定額制サービスを提供する事業者の努力義務として「解除権行使に必要な情報提供」が盛り込まれた。
将来的には運営元に直接アプローチすればほぼ問題なく解約できるようになるかもしれない。
業界全体での今後の改善を期待したい。

 ここまで読んで、個別に手続きするよりも、銀行やクレジットカードなどの自動引き落とし先を止めたほうが手っ取り早いと思った人もいるだろう。
しかし、むしろそちらのほうが茨(いばら)の道かもしれない。
そこが本記事で伝えたいところだ。

サブスクの支払いがあるからと クレジットカードを退会できないケース
「自動引き落とし先をストップすれば、継続的な支払いが止まる」という認識は、残念ながら甘い。
 筆者は5年ほど前からデジタル遺品に関する相談をサイトで受け付けているが、過去にこんな話を本人から聞いたことがある。
 中部地方に暮らすAさん(60代)は、1年前に実家で一人暮らしをしていた兄を亡くした。
遺品整理を進めるなかで、祖父の代からの不動産や生命保険の確認など難題がいくつも現れたが、なかでも手を焼いたのがクレジットカードの退会手続きだったという。
 クレジットカード会社の窓口は、事情を伝えても「債権が残っているので退会できない」と譲らない。
毎月1200円ほどの引き落としがあり、その債権が止まないと退会手続きに進めないのだという。
それでいて、プライバシー保護の観点から債権の詳細は教えられないとのこと。

 閉口するしかなかったが、粘り強く交渉しているうちに支払い元の情報が少しずつ見えてきた。手元の情報と照らし合わせたところ、どうやら動画配信サービスと英会話アプリの月額課金が残っていると判明。
それぞれのサービスに掛け合って解約したところ、ようやくクレジットカードを退会することができたそうだ。

 また、長年相続関連の仕事をしているBさんからは、亡くなった家族の銀行口座を凍結したところ、その後も毎月500円の出金が続いた事例があり、対応に苦労したとの話も聞いた。
こちらも定額サービスの自動引き落としによるものらしい。

定額制サービスの料金のほとんどが 銀行かクレジットカード経由で支払われる
 NHK受信契約の約8割が自動引き落としで支払われているように、定額制サービスの対価の多くは銀行やクレジットカード会社を経由している。
それゆえに見落としがちだが、定額制サービスの提供元と自動引き落とし先は別物であり、情報も共有されない。
 ただでさえややこしい定額支払いの停止手続きが、自動引き落とし先という新たなステークホルダーが加わることで、さらにややこしくなってしまっているのだ。

銀行の原則は 「口座を凍結したら振替も停止」
 間に挟まった自動引き落とし先では、何が起こっているのか。主要な銀行とクレジットカード会社に実情を尋ねてみた。  まず銀行はメガバンクとネット銀行を含めた全国規模の8行に情報提供をお願いし、5行から回答を得た。
 口座の持ち主の死亡が遺族等によって知らされると、銀行は口座を凍結する。
口座振替のある口座はその後どうなるのか。
回答を得た銀行ではいずれも「停止する」との回答だった。
「預金者死亡の連絡を受けた場合、債権の有無に関わらず、ご預金等のお引き出し、ご入金についてはお取扱いができなくなり、口座振替も停止となります」(みずほ銀行)
 出金が続く可能性があるとすれば、相続人から口座振替の継続の希望を受けたシチュエーションだが、それも例外的な処理といえる。
三菱UFJ銀行は「事前に特定の明細について、従来通り被相続人の口座からの引き落としを希望する依頼書を相続人全員の署名の上受入れしている場合、その明細のみ支払いを許容する手続きもございます」という。

 ただ、これは銀行側の都合だ。
定額制サービスを提供する運営元は契約者の生死を確認できないし、銀行から伝える義務もない。
実際、凍結後に請求が届くことも珍しくないという。
 それでも、「生前お支払いに当社のデビットカードを登録されており、相続開始後に請求が到着した場合、故人口座には請求できないため、当社では原則として当該請求を加盟店(請求元)に返却する対応を行います」(ソニー銀行)といったスタンスが一般的といえる。

個別の事情に応じて 柔軟な対応をしてもらえることも  
一方で、三菱UFJ銀行が特定の明細のみ支払いを継続するケースを認めているように、個別の事情に応じて柔軟に対応している様子もうかがえる。
 Bさんから聞いた事例は5行とも経験がないようだった。
しかし、別の金融機関が何らかの事情から特殊な措置として、そうした措置を行っている可能性も否定できない。
 ただ一般論としては、凍結中は原則として口座振替を継続しないのは確かなようだ。
そして、銀行側から定額制サービスの運営元へ、契約者の生死に関わる情報が自動で伝わるような流れも確立されていない。

クレジットカードは 退会後も請求が継続しうる  
クレジットカードも主要な8社にアプローチし、6社から回答を得た。
 こちらも契約者の生死を知りようがないため、遺族等から連絡がない限りは自動引き落としの処理が継続することになる。死亡の連絡を受けたら退会の手続きを進めることは可能だが、預金口座の凍結のように直ちに処理するわけではない。
あくまで遺族等の希望に基づいて処理を進めるというスタンスだ。
 いずれもカードも定額制サービスとの契約は事前に解約した上での退会を促しているが、イオンカードが「支払い義務(債権)が残っている場合であっても退会は可能です」というように、回答を得た中では債権が残った状態でも退会手続きを止めるケースはなかった。

 Aさんのケースは特殊事例なのかもしれない。
ただし、あるカード会社は匿名で「支払い義務が残ったまま退会されると後々面倒なことになることも。それを防ぐための対応としてはあり得る措置といえます」と見解を教えてくれた。

サービスを停止せずにクレジットカードを 退会するとどうなるのか
 注意したいのは退会後だ。債務ありの状態で退会すると、その債務の請求が後日届くことになる。
クレジットカードは決済と請求までタイムラグがあるため、単発の決済であっても翌々月支払いということも普通にあるし、定額制サービスの契約が継続している場合は数カ月先まで請求が届くということも起きてしまう。
「基本的にはカード解約後にカード支払いをご利用いただけませんが、サブスク等については、ご利用先に契約解除の連絡をしていただくまで利用が継続する場合がございます」(セゾンカード)

 クレジットカードを退会しても、退会前にした買い物や契約には影響を及ぼさない。
「各種サービス料金の支払契約は、あくまでお客様とサービス提供業者間で取り交わされたものです。
第三者である弊社はその契約関係には入り込むことはできかねます」という三井住友カードの回答が端的だ。
 この原則に従えば、遺品整理時に気付かれなかった定額制サービスの支払いはその後も延々と続くことになる。
しかし、何年も請求が続いて困ったという声は聞かない。
今回得た回答でも、数カ月先までの請求が続くというタイムスケールで言及する企業が大半だった。
年額支払いの請求が絡んで、せいぜい2年弱だ。

 どうやら、現実としては半永久的に請求が続くというわけでもないらしい。
 あるカード会社は「退会後に定額制の請求が続く場合は、債権を回収管理する部門があり、そこから退会したお客様やご遺族に契約解除や支払い方法の変更を促しています。
それと同時に、水面下では定額制の提供元にも停止をお願いすることもありますが、応じてくれるか否かはまちまちです」と明かす。
 つまるところ、支払いが滞った後のスタンスは定額制サービスがどう動くかにかかっているといえる。

引き落としが止まった後に 郵送で請求書が届くケースも
 定額制サービスを提供する立場からすると、契約者が亡くなった後にいつまで請求を続けるかは判断が難しい。
何しろ生死を正確につかめる手段はない。
 そのため、遺族からの申請をきっかけに契約を終了するとしているケースが多いようだ。

 NHKも解約の届け出があった日を解約日とすることを原則としている。
遺族等により要望があった場合は住民が亡くなった日までさかのぼっての解約とする措置も個別に応じているが、それは例外的な対応だ。
例外ゆえに、契約者の死亡やその後の利用状況を含む多くの証明が必要になるなど手続きは煩雑になってしまう。

 しかし、口座振替やカード退会で支払いが滞った際は、請求書を郵送する形で支払いを促すケースも増えている。
葬儀を終えた数カ月後に故人名義の請求書が届いたという話は、ここ数年でよく耳にするようになった。
支払い滞納分を含めても数千円程度という比較的少額の請求も珍しくない。
 一方で、お金の流れが滞った時点で解約とみなすケースもある。
典型例はマイクロソフトだ。
同社はオフィススイートアプリやクラウドサービスなどを定額制で提供している。
その契約者が亡くなった場合は、遺族等が代理でログインしてサービスの停止を申請することを認めているが、IDとパスワードが分からない場合は「お客様の銀行口座やクレジットカードの停止、承認の取り消し、または銀行への通知を行うことで停止することができます」と明言している。

 定額制サービスのすべてがマイクロソフト型の対応をしてくれれば、口座の凍結やカード退会で一網打尽が可能だが……。残念ながら、いまのところはサービスごとに対応がバラバラだ。

もし、故人が契約していた定額制サービスを 解約することになったら
 以上を踏まえて、遺族の立場から、故人が残した定額制サービスの契約はどうしたらいいのか対応を考えたい。
 理想を言えば、すべての定額制サービスを個別に調べて、それぞれに沿った形で解約や引き継ぎを進めていくのが安全だ。しかし、あまたのサブスクや定額制サービスを利用している人の全契約を正確につかむのは難しいだろう。
Apple IDやGoogleアカウント、通信キャリアの月額支払いにまとめられたサブスクなどは、お金の流れからたどっても個別に探すのは至難の業だ。
それぞれの契約に気付けたとしても、故人のアカウント名を突き止め、解約の窓口をそれぞれ調べて、それぞれに必要な書類をそろえるとなると相当骨が折れる。
 正直、定額制サービスの提供元が求める手続きのすべてを遺族が完遂するのは不可能だと思う。
だとすれば、現実との折衷案を組み立てるしかないだろう。

(1)通常の遺品整理の過程で特定できた定額制サービスは、個別に解約や名義変更などの手続きをする。
(2)その上で、口座の凍結やカードの退会を済ませる。
(3)その後にさまざまな形で請求が届くことを想定し、1〜2年程度はアクションがあるたびに個別に支払いや解約などを進める心構えだけしておく。
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<社説>沖縄慰霊の日に 小さな骨が訴えること

<社説>沖縄慰霊の日に 小さな骨が訴えること
2022年6月23日 東京新聞

太平洋の潮騒が絶え間なく聞こえてきます。
沖縄本島南部糸満市の「平和創造の森公園」。
丘の頂に、沖縄戦や南方方面で戦没した東京都関係者十万三千五百柱を慰霊する「東京之塔」があります。
 黒御影石でできた塔の背後にはガジュマルやテリハボクが生い茂る崖が迫ります。

四月下旬、沖縄戦遺骨収集ボランティア団体「ガマフヤー」代表の具志堅隆松(たかまつ)さん(68)が小柄な体でこの崖を下りていきました。
琉球石灰岩に囲まれた中腹の窪地(くぼち)まで来ると、ヘッドランプをつけ地面を探ります。
 「これが足の指、こちらはすねの骨ですね」。
収集歴四十年の具志堅さんは、腐葉土の下から小石と区別がつかない数個のかけらをすぐに見つけ出しました
言うまでもない、沖縄戦の犠牲者とみられる遺骨です。

◆迫撃砲弾がここで炸裂
 はっきりと形が分かったのは、人の歯。
「このすり減り方からすると高齢の住民でしょう」
 次に拾って見せてくれた長さ七〜八センチの金属片の説明には身震いしました。
「米軍の六〇ミリ迫撃砲の砲弾の羽根です」。
ここで砲弾が炸裂(さくれつ)したのだ!
 窪地は身を隠すのに適した場所だったけれど、米軍は見逃さなかった。
骨や歯は砲弾に吹き飛ばされた兵士や住民のものかもしれません。

 「鉄の暴風」と形容された米軍の激烈な砲撃を想像しました。
 糸満市など本島南部は約三カ月に及んだ沖縄戦の後半、日本軍が司令部を置いた首里(那覇市)から撤退する道筋に当たり、住民を巻き込む激戦地となりました。
沖縄戦跡国定公園に指定され、東京之塔以外にもひめゆりの塔や魂魄(こんぱく)之塔などの慰霊塔が多数あります。

 七十七年後の今、具志堅さんら多くの沖縄県民が強く抗議しているのが、一帯の鉱山開発による土砂を防衛省が名護市辺野古沿岸の米軍新基地建設現場で埋め立てに使おうとしていることです。
 具志堅さんが遺骨を拾って見せてくれたのは、その鉱山開発予定地に接した場所でした。
一帯に散乱し、風化した遺骨を土砂から取り除くことなど不可能です。

 「戦没者への冒涜(ぼうとく)」「死者を二度殺すことになる」
 二〇二〇年に計画が明らかになって以来、具志堅さんら有志は沖縄や東京でハンストを行ったり、全国の地方議会に土砂の使用中止を求める意見書採択を求めたりしていますが、国側は本島南部の土砂を実際に使うか否かは未定として何も手を打とうとしません。
 防衛省は当初、現在採掘している本島北部と県外から土砂を持ち込む計画でしたが、県が外来生物侵入を防ぐための土砂搬入規制条例を設けたため、ほぼ全量を県内から調達する方針に転換し、南部をその候補地としたのです。
 一六年に施行された戦没者遺骨収集推進法が遺骨収集を「国の責務」としているにもかかわらず、地上戦の戦場となった沖縄への配慮はまったく感じられません。

 南部の土砂使用には県も「(沖縄戦で)多くの犠牲者を出した県民の心を深く傷つける」(玉城デニー知事)と反対の立場です。
 昨年五月、業者に対し採掘前に遺骨の有無を確認することなど自然公園法に基づく権限内で精いっぱいの措置命令を出しましたが、業者側は命令撤回を求めて国の公害等調整委員会に裁定を申請し、審理が行われています。

◆未完のままの平和の礎
 辺野古埋め立て土砂は国の調達価格が割高なので、早く参入したいのが業者の本音でしょう。
 沖縄平和市民連絡会員で、辺野古の軟弱地盤の問題をいち早く指摘した土木技術者の北上田毅(つよし)さん(76)は「このままでは県全土の乱開発に歯止めがかからなくなる」と危惧しています。

 県内全域での土砂採掘に遺骨の有無などの調査を義務付ける条例制定を県側に働きかけているのも「戦場になったのは本島南部だけではない」との思いからです。
 沖縄戦の組織的戦闘が終わった慰霊の日のきょう、県の式典が行われる糸満市の「平和の礎(いしじ)」には新たに判明した五十五人の戦没者の名前が石碑に刻まれ、刻銘者数は米兵らを含む沖縄県内外の二十四万一千六百八十六人に上ります。

 県保護・援護課によると、沖縄戦の日本人戦没者のうち、いまだ二千七百十九柱(暫定値)の遺骨が未収集といいます。  すべての遺骨が収集され、平和の礎に名が刻まれるまで、沖縄の土が無造作に扱われることがあってはならない。
崖に散らばる小さな骨はそう語りかけてきます。 
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2022年06月24日

「年収200万円暮らし」炎上の裏で、最低賃金1000円の公約もみ消す自民党の二枚舌

「年収200万円暮らし」炎上の裏で、最低賃金1000円の公約もみ消す自民党の二枚舌
(ノンフィクションライター 窪田順生)
2022/06/23 Diamondオンライン

「最低賃金1000円」という言葉が 自民党の公約から消えた
 世界各国で着々と賃上げが進む中、日本だけで賃金の横ばいが30年続き、ついには平均給与で韓国にまで抜かれてしまった。
さらに、「年収200万円で豊かに暮らす」という書籍タイトルも炎上したことも受けて、「なぜ日本の賃金はいつまでも上がらないのか」という議論が活発に行われている。
 その「答え」がつい先日、これ以上ないほどわかりやすい形で国民に示された。

6月16日に発表された、自民党の参院選公約である。
 6年前から参院選のたびに掲げていた「最低賃金1000円」という数値目標がしれっと引っ込められたのだ。
野党の多くは「1500円」など数値目標を掲げているのに、自民党はサクッともみ消したのだ。
 岸田政権は「最低賃金1000円の早期達成」を打ち出している。
6月7日に発表した「新しい資本主義実行計画工程表」の中にも、表の「枠外」ではあるが、「できる限り早期に全国加重平均が1000円以上となることを目指す」とちゃんと明記されている。

にもかかわらず、岸田首相が総裁を務める自民党ではスルー。
なぜこんなダブルスタンダードが起きるのか。

反対勢力のご機嫌取り 国民の妥協こそ低迷の元凶
 報道では、「公約に目標額を記載しなかった理由には直接答えず、労働者や企業側の代表者らによる審議会での議論に委ねる姿勢を示した」(東京新聞6月16日)ということだが、「選挙対策」であることは明白だ。
「最低賃金1000円」に反対する中小企業経営者の業界団体である日本商工会議所、全国商工連合会は自民党の有力票田だ。
機嫌を損ねたら大勝できない。
配慮のために引っ込めたと考えるのが自然だ。

実際、2カ月前、日本商工会議所は「最低賃金に関する要望」を政府に届けて、「最低賃金の引上げを賃上げ政策実現の手段として用いることは適切でない」と自民にくぎを刺している。
 そう聞くと、「まあ、政治は選挙に勝たないことには何もできないんだからある程度の妥協はしょうがないだろ」と感じる人もいるかもしれないが、実はその“妥協の構図”に日本が30年賃上げできなかった原因がすべて集約されている。

 政府は世論の支持が生命線なので「最低賃金引き上げます!」と国民ウケのいいことを盛んにアピールするが、自民党としては中小企業団体からの選挙支援も大事なので、その裏で「実際はそんなに上げませんのでご安心を」と賃金引き上げの足を引っ張らざるを得ない。
この「選挙での勝利と引き換えに最低賃金の引き上げをあきらめる」という妥協を、自民党政治家が30年以上も続けてきた結果が、「安いニッポン」である。

 この構造は、同じく有力支持団体の日本医師会と自民党の関係を思い出していただければわかりやすい。
新型コロナ感染拡大で公立病院などに患者が集中しても「町医者」がノータッチという問題や、「2類相当」の扱いがいつまで経っても見直されず結局ウヤムヤにされたのは、日本医師会が自民党の有力支持団体だからだ。
政治力学的に自民党政権は、日本医師会が嫌がる「医療改革」ができないのだ。

 賃金もこれとまったく同じことがいえる。
世界では最低賃金の引き上げは国民生活を維持するためのメジャーな経済政策だが、日本ではいつまで経ってもウヤムヤにされている。
自民党的に有力支持団体の逆鱗に触れる「NG政策」だからだ。

各国で賃金は上がっているのに 日本は労働者、消費者を貧しくさせる
 こんな話をすると脊髄反射で、「最低賃金を大きく引き上げると、中小企業が倒産して失業者が大量にあふれかえるので、自民党は責任政党として慎重に判断をしているのだ」という反論する自民党支持者の方も多い。
しかし、実はそういう珍妙なロジックを唱えて、最低賃金を引き上げない国は世界でもかなり珍しい。

 例えば、米国のロサンゼルスでは7月1日から、最低賃金がこれまでの時給15ドルから16.04ドル(日本円で約2179円、6月22日現在)へと引き上げられる。
これは中小零細だからと免除されるようなものではなく、全ての事業所が対象だ。

また、法定最低賃金に物価スライド制が採用されているフランスでも、5月から最低賃金が10.85ユーロ(日本円で約1552円、同上)にアップした。

オーストラリアの公正労働委員会も7月から現在の最低賃金20.33豪ドルから21.38豪ドル(日本円で約2006円、同上)に引き上げる。
こちらも5.2%の引き上げ幅だ。

 アジアも普通に最低賃金を引き上げる。
ベトナム政府も7月1日から最低賃金を月額で全国平均6%引き上げる。
これは世界的な物価高とかではなく「平常運転」で、20年1月1日にも平均5.5%引き上げている。
マレーシアでも5月1日、地域により月額1000〜1200リンギットだった最低賃金が全国一律で1500リンギット(約4万6305円)まで一気に引き上げられている。

 これらの国々は、今回の世界的な物価上昇で慌てて賃上げをしているわけではなく、それ以前から継続的に最低賃金を引き上げているのだ。
しかし、そこで日本のように、「最低賃金を引き上げたら倒産が増えて国内は地獄になる」みたいなヒステリックな終末論が叫ばれることはない。
 もちろん、どの国でも反対する中小企業経営者はいる。
しかし、物価が上昇して価格が上がるのが当たり前のように、物価が上昇すれば賃金もそれにともなって上がっていくのは経済の常識である。
むしろその好循環を後押ししないと、経済は成長しないという考え方がベースにある。

 だから日本のように「物価は上がったけど、今こそ辛抱の時だ!」なんて精神論を唱えて、労働者=消費者を貧しくして、自国経済を冷え込ませるようなことはしないのだ。
「いや、韓国を見ろ!最低賃金を引き上げたことで今は地獄のようになっているぞ」とか言う人もいるが、実はそれはウクライナ報道と同じで、「日本人は日本人がハッピーになれるような国際ニュースしか耳に入れない」といういつもの悪いクセだ。
 最低賃金を引き上げても失業率には影響がないという海外の論文を紹介して、最低賃金引き上げの必要性を唱えるデービッド・アトキンソン氏の「反論」を引用しよう。

<それはやはり日本のマスコミと日本の評論家の中身のなさを反映しているだけですね。
あの時(韓国が最低賃金を引き上げた時)に、失業率はボンっと跳ねた。
日本では絶対にするもんじゃないって。
(マスコミも)いいこと言うじゃんって。
ただマスコミはそれしか見ないですから。その後どうなったかって、みんなもう無関心・思考停止っていいますか。
あの2回目(賃上げを)やった後に、韓国の労働生産性は日本より初めて上にいったんです>(nippon.com 21年10月25日)

 確かに冷静に考えれば、「最低賃金を上げたら失業者増」というストーリが思考停止の賜物だということはわかる。
 社員を最低賃金ギリギリで使っている経営者は、確かに最低賃金引き上げによって会社が倒産するかもしれない。
しかし、そこで失業者になるのは、その経営者だけだ。
社員たちは別にこの会社と「奴隷契約」をしているわけではないので転職をするからだ。
しかも、新しい就職先は、最低賃金引き上げによって前の会社よりも賃金が高い。
同じスキルの人がそれまでよりも高い賃金を生み出すということは、労働生産性も上がったということだ。
こういう現象が、日本全国で広がれば、日本の労働生産性も上がっていくのだ。
 日本経済が成長していないから賃上げできないというが、海外のエビデンスを見ると事実は真逆だ。
日本は継続的な賃上げをしないから、いつまで経っても経済が成長しないのである。

88年前から指摘されている 日本の労働者の賃金が安い理由
 では、なぜ日本だけで、「最低賃金を上げたら失業者増」というこの珍妙な経済観が根付いたのだろうか。
 ひとつにはこれまで述べてきたように、日本商工会議所など有力経営者団体と自民党がしっかりとタッグを組んで半世紀以上も「最低賃金の引き上げは恐ろしい」という常識を広めてきたことが大きい。
これまで自民党議員は、最低賃金の引き上げを阻止すればするほど選挙に強くなるというインセンティブがついたからだ。

 そこに加えて、「賃金は低くていい」というのが日本の伝統的な美徳だったということも大きい。
それが保守政党である自民党の政策的にもフィットしたし、保守的な考えの政治家も受け入れやすいということもあるだろう。
 実は日本の低賃金はこの30年の問題だと勝手に思い込んでいる人が多いが、日本が「高賃金」だった時代などほんのわずかで、日本は近代からずっと低賃金だ。
 例えば、今から88年前の経済書「平価切下とソシアルダンピングの話」(昭和9年 和甲書房)の中で、「日本の労働者の賃金は何故安いか」という問題が論じられている。

低賃金の原因として、日本が世界第2位の人口密度をもっている「超満員の国」だからなどさまざまな考察がされているが、注目すべきは、現代にも通じる中小零細企業の問題を指摘していることだ。
「第三には我が国の企業組織だ。紡績業や鉄工業・船舶製造業等の如きは欧米各国に劣らぬ大規模な進んだ設備を持つているが、尚一般には小規模の手工業・家内工業が甚だ多く取り入れられている。
(中略)家内工業の性質として、少ない資本で長い時間を働き。家族全体がこれを手伝って、一人前の仕事をするといふやうな事から、賃金はグッと低下される」(P.87)

 日本企業の99.7%は中小企業で、労働者の7割が働いている。中小企業の賃金が低いので、日本の賃金は低い。
約90年前から日本の産業構造と、それがもたらす低賃金という問題は何ひとつ変わっていないのだ。
 このように、「小さな会社の賃金はグッと低下される」というのが日本経済の伝統だとすると、自民党が最低賃金の引き上げに消極的なのも納得ではないか。

 保守政党というのは基本的に、これまで続いてきたことを続けようという考えがベースにある。
そこには科学的視点や合理性はない。
「続いてきたことを守る」ということが何よりも大事なのだ。

年収200万円で豊かに暮らす道は 日本人にピッタリ!?
 低賃金を守る、という自民党の基本スタンスを多くの日本人は消極的だが受け入れている。
 今回、自民の公約から「最低賃金1000円」が落ちたということにも、ほとんど関心がない。
「給料が上がらない」と文句は言っているが、そこにマグマのような怒りはなく、「まあしょうがないか」とあきらめてしまっている。
 これも約90年前から続く日本人の伝統である可能性が高い。

先ほどの経済書が興味深いのは、日本人労働者が低賃金である理由として、日本人の国民性も指摘していることだ。
「第四には国民の生活が伝統的に、一般的に簡易だから、安い賃金でも暮し得る。
第五に、日本人は個人主義的な欧米人と違ひ、家族主義であり、家族員各自の稼ぎを出し合つて暮しを立てて行く良風があるから、自然安い賃金でも満足している。
第六に、日本は資源に乏しいから、どうしても賃金が安くなる。
第七に、労働能力が低いから賃金も安い。
これ等の事で、日本人は安い賃金でありながら大した苦痛を感じてはいないのだ」(同上)

 最近、「年収200万円で豊かに暮らす」という書籍タイトルが炎上したが、実はあれは日本人の本質をついている。
我々は祖父母の世代から、「労働者ってのは低賃金で生きるものだ」と受け入れて、さまざまな理由をつけて自分たちを納得させてきた。
一方、企業経営者や政治家という「上級国民」は、その低賃金労働者をこき使って、彼らがそこそこ満足をする豊かな社会をつくってやる。そういう役割分担がしっかりなされていた。

 今回の自民党の公約からも、そういう日本の伝統的な社会システムが、実が100年経過してもそれほど変わらず続いているという現実を浮かび上がらせている。
 中小企業経営者団体によれば昨年、日本は最低賃金を約3%ほど引き上げたが、経済に大変なダメージを負わせているという。
物価高で疲弊する中小企業にはこれ以上の重い負担は課せられないという。
 世界とは全く逆の考え方だが、これが日本の伝統的な経済観なのだ。

自民党も参院選で大勝すると言われているので、この流れは止められないだろう。
そろそろ我々も悪あがきはやめて、先人たちのように賃金が上がらない事実を受け入れて、「年収200万円で豊かに暮らす道」を模索していった方がいいのかもしれない。

小だぬき
我慢することを今回の選挙で止め 共産党に希望を託してみませんか。
参議院選挙では政権交代は起こりません。安心して「実験」してみませんか?

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2022年06月25日

「一見普通の弱そうなおじさん」が一番怖い。自衛隊員が答えた驚きの理由

「一見普通の弱そうなおじさん」が一番怖い。
自衛隊員が答えた驚きの理由
6/24(金) bizSPA!フレッシュ

 仕事やプライベートでなんとなく疲れた、イライラするときは、極限状態で仕事をする「自衛隊流」のメンタルハックを参考にするといいかもしれません。
教えてくれるのは、『ノンストップ!』(フジテレビ系)でも紹介され、SNSでも毎週のようにバズる、Twitterフォロワー19万人超え(※2022年6月時点)の異色の元自衛官・ぱやぱやくん(@paya_paya_kun)。
 今回は、ぱやぱやくんの最新の著書『飯は食えるときに食っておく 寝れるときは寝る』より、違和感の重要性と危機察知能力の高い人の特徴を紹介します(以下、同書より一部編集のうえ抜粋)。

「違和感」を大切にする
 自衛隊で教わったことですが、「よくわからない違和感を大切にしろ」という話があります。
「よくわからないけど何かおかしいぞ?」と感じたときは、一度立ち止まってください。
自分が気がついていない過去の経験から違和感を覚えることが多いです。

 すべてにおいて「何かあやしいな」は立ち止まるサインです。
初対面で、「すごくいい人っぽいんだけど、ちょっとだけ違和感あるなぁ」と思ったら、とりあえず一線をひいてください。そういうケースは、「何か問題がある人」の可能性があります。
自分の感じた違和感は大切にしてください。

 そもそも私は、初対面から「明るくていい人」の場合は、少し警戒するようにしています。
理由は、「明るくていい人」を演じている可能性が高いからです。
会話をしていて、所々に違和感を覚えるようでしたら、さらに要注意です。
2〜3回会ってから判断しても遅くないですよ。

「一見普通の弱そうなおじさん」が一番怖い
 また、人間関係でイラっとしたときは、「その人に悪意があるかないか?」という判断基準を覚えておいてください。
もし、「あなたをおとしめてやろう」という感じが明確であれば、注意が必要です。
しかし、たいていは「相互理解の不足」といった理由なので、思い込みであるケースが多いです。

忙しいとストレスが溜まって、相手の言動をネガティブにとらえる傾向があるので、気をつけなくてはいけません。
 ただ、先ほども述べたとおり、本当に悪意を持っている人もたまにいるので、その人からは全力で逃げましょう。
気持ちがやられます。

 ちなみに陸上自衛隊の格闘教官に、「街で歩いていて一番怖いのはどんな人ですか?」と聞いたら、「一見普通の弱そうなおじさん」と答えていました。
理由を聞いたら、「殺気のあるチンピラや不良は警戒して対応できるけど、弱そうなおじさんが急にナイフで刺しに来たら避けられない」とのことでした。
見た目には危険そうではない人が「一番危ない」ということを覚えておいてくださいね。

すぐには理解されない能力の持ち主
 世の中ではコミュニケーション力のある人が求められますが、それは「よくしゃべるけど何を言っているかわからない人」ではなくて、「口数が少なくても話を理解して、しっかりと伝えようとする人」だと思います。
勢いも時には大切ですが、口下手だからこそわかる誠実さは確実にあります。
なめらかに話すだけが「コミュ力」では決してありません。

 イベントなどでみんなが盛り上がっていると冷めてしまう人は、「集団における危機察知の能力が高い」と聞いたことがあります。
みんなが熱狂すると集団が全滅することがあるので、そういう人が生まれるようです。
 つまり、イベントが嫌いな人は「能力者」と言ってもいいでしょう。
世の中には、トラブルやピンチのときに大活躍する「地獄に強いタイプ」がいると思います。

自衛隊にも平時はボンヤリしているのに、災害時に大活躍する人たちがいます。
 彼らは日常生活では能力を発揮できないのですが、日常の秩序が崩壊すると大活躍します。
破天荒で生き物として強いタイプですね。

人柄が抜群にいい「腕の良い職人」はほぼいない
 世の中にいる一芸に秀でていたり、スペシャリストの人は、たいていは「クセがある」ことが多いことを理解してください。
別にあなたに意地悪しているのではなく、「職人気質」や「独特の感性」からクセがあるだけなのです。
 人柄が抜群にいい「腕の良い職人」はほぼいないと思っていたほうが付き合いやすいと思います。

 クセがある人も「実はいい人だった」というパターンも多いので、クセを嫌がって敬遠する前に、まずはよく見極めたほうがいいでしょう。
ある側面から見たら完璧な人も、見えないだけでその人なりの欠点を抱えており、自分なりに社会と折り合いをつけて生きているので、できる人もできない人も互いを尊重する姿勢は大切ですね。

<TEXT/元自衛官 ぱやぱやくん>
                     bizSPA!フレッシュ 編集部
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2022年06月26日

生きていくために、いちばん大切なこととは?

生きていくために、いちばん大切なこととは?
バク@精神科医:精神科医
2022.6.25 Diamondオンライン

他人とうまくコミュニケーションできないことからくる孤独感や閉塞感、自己肯定感の欠如、SNSによる誹謗中傷やバッシングなど、私たちは、いま多くの生きづらさを感じさせる事柄に取り囲まれています。
そんな中にあって、毎日を心安らかに、できるだけ快適に生きていくためには、どうすればいいのでしょうか?

発達障害(ADHD)、うつ病など、生きづらさを抱えながらも精神科医として活躍するバク先生は、ツイッターでのつぶやきが共感・絶賛され、今、人気急上昇中。
そんなバク先生の初の著書『発達障害、うつサバイバーのバク@精神科医が明かす 生きづらいがラクになる ゆるメンタル練習帳』(ダイヤモンド社)の中には、生きづらさを解消するための実践的なヒントが詰め込まれています。
本連載では、同書の中から心がスッと軽くなるアドバイスをお届けします。

休憩することは、サボりではない
 自分へのプレゼントだけでなく、そもそも自分を休ませたり、慈しんだり、自分で自分を大事にすることにすら罪悪感を持つ人がいます。前回のJさんもそんなタイプでした。
 ですから2万円の使い道を考える前に、私はJさんに「休み」を設けることを提案しました。
「毎日やっている家事をちょっと休憩する時間を、週に2回でいいからつくりましょう。
その時間は自分の好きなことをやって、それで欲しいものができたら、2万円を使ってみませんか」

 ちょっと休憩するなんて、言われなくても誰でもできるんじゃないのと思われますか? 
 そう思えるなら、あなたは凄く幸せな人か、実はこの話を十分に理解できていない人かもしれません。

 この世の中には、休憩することをサボっていると誤解している人が山のようにいます。
休憩はサボることと違い、一回ではやり遂げられないことを最後までやりぬくために、必ず取らないといけない行動の一つです。

あなたは人生、ちゃんと 休憩しながら送れていますか?
仕事の場合では、厚生労働省の定める労働基準法で「休憩」については厳密に定められています。
 たとえば、6時間以上8時間以下の勤務時間の場合は、少なくとも45分以上で、8時間以上の勤務時間の場合は、少なくとも1時間以上の「休憩」を取る権利が労働者には存在している、と明記されています。
 この「休憩」中にちょっとでも仕事をすると、その時間は「休憩」に含まれません。
就労時間の上限も1日8時間、週に40時間までと制限されています。
 なぜ、このような条件が定められているかと言うと、これ以上の労働時間が長期間継続した場合、過労死する可能性が非常に高くなることが判明しているからです。

 これが家事などのように、いつからいつまでが労働なのかわかりにくい場合、完全に家事をしない時間は非常にとりにくく、無理をしていることにも気づきにくいのです。
 人生は長いので、必ず適度、適切に休憩を取らないと倒れて当たり前です。
あなたはちゃんと人生、休憩しながら送れていますか?

「自分をケアすること」は、 生きていくうえで最優先にするべきこと
 かつてブッダは悟りを得ようと、苦しい修行をずっと続けていました。
 けれども、断食修行を続けても悟りが開ける気配すらありません。
ブッダはボロボロの体を清めるために近くを流れる川にフラフラと向かいます。あまりに身なりもボロボロで、痩せ細っていたためか、ブッダは樹に間違えられます。
 そして、たまたま近くで樹の神様へ感謝を捧げていたスジャータさんという人が、ブッダを樹の神様だと思い込みミルクがゆをご奉納しました。
多分ブッダも相当悩んだと思います。
 受け取ってしまったら、数年にわたって苦行をしてきた自分が間違えていたと認めてしまうことになるのではないか?
これまでの苦行が無駄になるのではないか?
他の僧仲間にも苦行を断念したとバカにされるに違いない。
 いろいろな思いが去来しつつも、ブッダはここで「過去の間違った考えにとらわれた自分」と決別することを選び、ミルクがゆを口にします。

脳がエネルギー不足でマトモに動かないとき、人はうつになりますし、判断力は概ね欠如し間違った選択をします。
苦行中のブッダもそうだったのではないでしょうか。
 ミルクがゆで脳にエネルギーが回るようになったブッダは、身体も回復。心身共に健康、穏やかな気持ちで近隣の菩提樹の下に座し「人間は、あまりにしんどいことを自分に課しても得るものはない!」と悟ります。
これが仏教の出発点です。

 過去の偉人ですら、「やり過ぎはダメ。しんどいだけでは何も成し遂げることはできない」と言っているのに、現代の私たちが、自分に厳しくしたところで得られるものは病気だけだと思います。
 そう考えると、「自分をケアすること」は、生きていく上で最優先にするべきことです。

野生動物だって、基本は自分が生存することが最優先で、他者のために生きている動物なん「利他」を強調しすぎてはいけない
 シマウマのように群れのために一匹だけが犠牲になる草食動物もいますが、それは「自分だけが犠牲になる」というわけではありません。
単純に彼らは群れ全体の生存を優先し、自分たちの種族が今後生き残ることを目標に動いているだけです。

 たとえば、体の弱い一体がライオンに襲われているうちに、他の皆が逃げる。
残酷と思われるかもしれませんが、自然の中では生存のために必要なことです。

 現代社会の人間は昨今やたら、「誰かのために生きる」ということを強調し、よいことだと言う流れですが、これはとても不自然なことなのです。  

【POINT】
「誰かのため」ではなく、自分を最優先にして生きる。

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2022年06月27日

絶対に放置してはいけない「目の疲れ」…治療を怠ると、失明に至るリスクも

絶対に放置してはいけない「目の疲れ」…治療を怠ると、失明に至るリスクも
2022年06月26日 SPA!

2021年10月、日本生活習慣病予防協会が40〜60代の男女3000人を対象に調査したところ、コロナ禍以前の2019年と比較して体重が増えた回答した人は、27.5%にものぼった。
リモートワークや外出自粛を余儀なくされた毎日を送るなかで、体重が増えたと嘆いている人は少なくないだろう。
 しかし、体調の変化に関する項目で、体重の増加よりも回答者が多かった体の不調が存在する。
「目が疲れやすくなった」と回答した人は28.8%にも達したという。
 2006年、都内に「眼科 かじわら アイ・ケア・クリニック」を開設し、およそ16年間で9万人以上の患者を診察してきた眼科医の梶原一人氏もコロナ禍で在宅傾向が進むなか、「眼精疲労に悩んでいる方は増えている印象です」と指摘する。

◆眼精疲労になるリスクを減らす方法
 それでは、どうすれば眼精疲労になるリスクを減らすことができるのか。
「眼精疲労の原因のひとつとして、ドライアイが考えられます。
ドライアイは目を守ってくれる涙の量が不足したりすると発生するので、パソコンで作業をするときは、モニターからできるだけ目を離して、上から画面を見下ろすようにするといいですよ。
 目とモニターの距離が近すぎると、集中してまばたきの回数が減ってしまい、涙が乾きやまた、画面を下から見上げるように見るのも、まぶたが開いて涙が乾く原因になるのでご注意ください。

 姿勢も大切で猫背だと首周りの血流が悪くなり、眼精疲労の原因になるので20分程度作業に集中したら、5m以上先を見るようにして目を休ませ、肩をストレッチするといいでしょう」

◆根治や回復が望めない緑内障
 目をつぶってまぶたの上から優しくマッサージをしたり、温かいおしぼりで目の周りの血流を促したりするのも効果的とのことだが、「眼精疲労が気になる方は、この機会に目の精密検査を受けてみたほうがいい」と梶原氏は語る。
「うちのクリニックには、検査をしてみると緑内障だったという患者さんが非常に多い。
緑内障は視野が狭くなる病気で、自覚症状がほとんどないうえ、治療が遅れると失明に至るケースもあります。
 たとえ失明を免れても、緑内障で失われた視野は元には戻せません。
根治や回復は望めず、今の医学では進行を予防することしかできないので、緑内障は早期に発見できることが何より大切です」

◆「高齢者の病気」のイメージは誤解
 日本人の失明原因の1位である緑内障は「高齢者の病気」というイメージも抱かれがちだが、実は「40歳以上の20人に1人は緑内障。
総数は500万人にものぼると言われています」と梶原氏は警鐘を鳴らす。
 「緑内障を発症する年齢は、個人差があるので一概には言えませんが、うちには20代で重症化して発見された方も珍しくありません。
なかには9歳で緑内障が見つかった女児もいる。
30代、40代で緑内障の検診を受けたことがない方は、必ず受けたほうがいいです」

 会社の人間ドックで目の異常がなかったからといって、安心するのは早計だ。
梶原氏によると、「人間ドックで緑内障を見つけるのは非常に難しい」という。
「症状がある程度進行した緑内障は人間ドックの検査で引っかかると思いますが、初期の緑内障を見つけるのは困難です。
そもそも緑内障の検査には、特別な機械が必要なうえ、視野検査までやるとなると時間もかかるので、オプションで検査しているところもほとんどありません」

◆眼科医が緑内障に気づかないケースも…  
緑内障を早期に発見するには、眼科での検査が必要になるのだが、梶原氏によると「眼科医が緑内障に気づかないケースもある」という。
「失明寸前まで自覚症状がほとんどない緑内障は患者さんだけではなく、眼科医にとってもとてもやっかいな病気です。
 患者さんの立ち場で眼科医の腕の善し悪しを判断するのは難しいかもしれませんが、説明がわかりにくかったり、検査結果に納得できなかったりしたときは、別の眼科で再検査してもらったほうがいいかもしれません。
 私のところに相談される方も検査結果や症状についてちゃんと説明してもらえないと不安を抱えて、受診されるというケースも多く、『眼科難民』と呼んでいます」

◆早期発見、早期治療が何より大切
 万が一、緑内障が見つかったときは、症状の進行を遅らせるために通院を続ける必要がある。
「特に男性に顕著なのですが、緑内障は自覚症状がないこともあって、仕事を理由に病院から足が遠のいてしまうケースも多い。
せっかく早期に発見できても、治療を怠ったせいで緑内障が進行し、すぐに手術しても視覚障害者になってしまうほど重症の患者さんもいました。

 放置すればするほど治療が大変になりますし、失明するリスクも上がります。
そうならないように、うちでは患者さんに正しい情報を伝えて、治療の必要性を理解していただき、希望を持って前向きに治療に取り組んでもらえるように全力で寄り添うようにしています」

 長引くコロナ禍で目を酷使していると自覚している人はもちろん、普段から目に優しい生活を意識している人も定期的な検査を欠かしてはいけない。
目の異常に気づける絶好の好機だと心得たい。


【梶原一人氏】
1959年、東京都生まれ。
慶應義塾大学医学部卒業後、眼科医に
1990年にハーバード大学に研究員として留学、世界的権威の科学雑誌『ネイチャー』『サイエンス』に研究結果が掲載される。
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2022年06月28日

参院選「無風」の理由はリアリズムの誕生か、深刻すぎる余裕のなさか?

参院選「無風」の理由はリアリズムの誕生か、
深刻すぎる余裕のなさか?
2022年06月27日   週プレN EWS

『週刊プレイボーイ』で「挑発的ニッポン革命計画」を連載中の国際ジャーナリスト、モーリー・ロバートソンが、参院選が盛り上がらない理由について語る。
(この記事は6月20日発売の『週刊プレイボーイ27号』に掲載されたものです)
* * *
本号発売の直後には参議院選挙が公示されますが、普段にも増して盛り上がりを感じません。
コロナが落ち着いてきたからだとか、野党に元気がないからだとか、いろいろな事象が絡み合ってのことなのでしょうが、私の中には、日本社会において"大きな物語"が求心力を失っているのではないかという仮説があります。

その理由のひとつは、やはりロシアのウクライナ侵攻という冷酷な現実を目の当たりにしたことでしょう。
以前から指摘されていた中国の台湾侵攻の可能性もより具体的にイメージされるようになり、防衛費の大幅増を「まあ、そうなるよね」と受け止める人、あるいは「日本は平和憲法の特別な国」といったイデオロギー優先の"大きな物語"に違和感を覚える人は明らかに増えた。
その是非はともかく、この流れは憲法改正問題や沖縄の米軍基地問題に波及していく可能性もあります。

原発についても同様です。資源大国ロシアの暴挙によって世界のエネルギー事情は激変しました。
そんななかでも原発再稼働を検討することさえなく、綱渡りの電力供給を続けることへの疑問の声は、少しずつ、しかし明らかに大きくなっていると感じます。
もしこの夏、電力危機を理由にどこかの原発でなし崩し的に再稼働が始まっても、「原発は人類が生んだ悪である」という"大きな物語"が10年前のように広がったり、当時ほどの大規模なデモが起きたりしそうな雰囲気はありません。
また、右派の"物語"も消失しつつあります

象徴的だったのが東京五輪に対する冷めた反応です。
コロナ禍での開催だったという事情を差し引いても、20年前のサッカーW杯の頃と比べて「日本はすごい」「感動をありがとう」などと共鳴する人は減りました。
五輪の記録映画も動員に苦戦しているようですが、ナショナリズムで自分たちの生活が豊かになることなどないと多くの人が気づいているのかもしれません。

こうした潮流を好意的に解釈すれば、旧来の価値観が徐々に退場し、現実をシビアに見る世代が増え、日本にもリアリズムが誕生しつつあるとの見方もできるでしょう。
保守vs革新という"大きな物語"を前提とするパラダイムが機能不全に陥っているのは明らかなので、現実的な視点が増えることは歓迎できます。

しかし一方で、多くの社会的イシューに対して「憤るより慣れろ」と現状を追認するムードが定着しつつあるとすれば、それはリアリズムというより、「"大きな物語"にリソースを割く余裕すらなくなった」という解釈も成り立ちます。
SNSに飛び交う声を見ても、現役世代の人々には、日々の生活で直面している格差や不平等、上の世代に対する不公平感が充満しているように思えてなりません。
そして、そういった根源的なニーズを政治に託すほどの期待感すらなくなってしまったのだとすれば、事態は相当に深刻です。

だからこそ今、日本の政治家には外交的リアリズムだけでなく、「不公平を解消するための現実的な議論」が求められているように思います。
高齢者の票がどうとか、支持母体がどうとか、いろいろと都合はあるのでしょうが、それによって選挙が「無風」になっているのだとすれば、それは本末転倒も甚だしいのではないでしょうか。

●モーリー・ロバートソン
(Morley ROBERTSON)
国際ジャーナリスト、ミュージシャン。
1963年生まれ、米ニューヨーク出身。
レギュラー出演中の『スッキリ』(日テレ系)、『報道ランナー』(カンテレ)、『所さん!大変ですよ』(NHK総合)ほかメディア出演多数。
昨年はNHK大河ドラマ『青天を衝け』、TBS系日曜劇場『日本沈没―希望のひと―』への出演でも話題に!
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2022年06月29日

与党圧勝予測の参院選で注目、生き残る党首は誰?

与党圧勝予測の参院選で注目、生き残る党首は誰?
泉 宏 : 政治ジャーナリスト
2022/06/28 東洋経済オンライン

真夏の政治決戦となる参院選も投開票(7月10日)まであと2週間足らず。記録的猛暑の列島を汗まみれで駆けめぐる各党党首の顔は日焼けし、喉の酷使でしわがれ声も目立つ。
選挙戦の真っただ中、異例の首脳外交で5日間(6月26〜30日)も国内を留守にしている岸田文雄首相を筆頭に、国政政党9党首の表情には自信と不安が交錯し、それぞれが自らの命運も懸け、絶叫調で「わが党にご支援を」と有権者に訴える。

大手メディアなどの序盤情勢調査での予測はほとんど「与党圧勝」。
それだけに、岸田首相や山口那津男公明党代表が自信と余裕をにじませる一方で、野党第1党を激しく争う泉健太立憲民主党、松井一郎日本維新の会両代表は、眉間にしわを寄せてのライバル批判に血道をあげる。

また、中間勢力に位置する志位和夫日本共産党委員長、玉木雄一郎国民民主党代表は、それぞれ独自の立場での組織固めなどで、改選議席確保に懸命。
さらに、山本太郎れいわ新選組代表と福島瑞穂社民党、立花孝志NHK党両党首は、自らと国政政党としての生き残りをかけ、ネットも含めたゲリラ戦術などに命運を託す。

公明党の山口氏は退任確定的、維新の松井氏も引退
序盤情勢予測どおりの与党圧勝なら、岸田首相はいわゆる“黄金の3年”を手中にし、「国政選挙は3年後の衆参ダブル選となる公算大」(自民選対)との見方が支配的。
政権に挑む野党7党首も、内心ではそれを前提に選挙後の党運営に臨む構えだ。 ただ、
各党首の続投には選挙結果や任期が絡んでおり、それぞれの立場は極めて複雑。

与党の山口氏は9月の任期満了退任が確定的で、大阪市長の松井氏もすでに、来年春の市長選不出馬での政界引退を明言している。
さらに、泉、志位、玉木、山本、福島、立花の6氏も、「続投の可否は選挙結果次第」(選挙アナリスト)とみる向きが多い。

昨秋の衆院選を戦った9党首の中で、選挙後に退任したのは立憲民主の枝野幸男前代表のみ。
しかし、今回とまったく同じ選挙日程となった2016年参院選時の9党首(各党の構成は現在と異なる)をみると、現在まで続投しているのは、山口、志位両氏だけだ。

これも踏まえ、公示前日の6月21日午後に開催された、恒例の日本記者クラブ主催の各党党首討論会でも、選挙後の各党首の出処進退が話題となり、それぞれの応答ぶりに会場が沸き、関係者が耳をそばだてた。
続投が確定的とみられている岸田首相を除き、記者クラブの代表質問者から各党首に進退を絡めた質問が飛んだ。 その中で松井氏は「(次の代表は)やっぱり吉村(洋文大阪府知事)さん?」との直撃に、「いやいや、それはわが党の中で議論して決める。
僕は自民党にピリッとしてもらうために、最後の戦いで横綱に挑みたい」とややうろたえ気味に交わした。

また、今秋の7期目任期満了での退任の際の後継指名の是非を問われた山口氏は「決めるのは私ではない」と苦しい説明に終始。
20年以上も党首を続けている志位氏も、「野党共闘は途上にある」とあえて進退への言及を避けた。
党存亡の崖っぷちに経つ社民党の福島氏 一方、大激戦の東京選挙区での当選に、党代表の命運も懸けるのが山本氏。
質問者から衆院議員を約半年で辞職して参院選に出馬した手法を「有権者への裏切りでは?」と詰問され、「参院選に受かったら任期どおりやらせていただきます」と再鞍替えを否定した。
比例得票率2%未満なら政党要件を失うという、党存亡の崖っぷちに立たされている福島氏は、比例代表での自らの当選と政党要件維持に向け、「憲法改正を阻止するためにも(社民党と私は国会に)いなくてはならない」と必死な顔で哀願。
一方、同じ立場の立花氏は「今回は2人、3人(の当選)まで自信がある」と得意のユーチューブ作戦への自信と手応えをアピールした。

記者クラブ主催の党首討論会はすでに約30年の歴史があり、国選選挙公示直前に実施されるため、「国政選挙の際の風物詩」(自民長老)との位置づけ。
討論前の控室での打ち合わせの段階から、各党党首の表情や何気ない会話にそれぞれの置かれた位置がにじむ。
中央・地方各新聞社に共同・時事両通信社、さらにはNHKと民放各局のいわゆる伝統的メディアが集結するのが日本記者クラブ

討論会は慣例どおりの2部構成で、コロナ対応や物価高に円安などの経済問題、ロシアのウクライナ軍事侵攻に絡む日本の軍備増強の可否に憲法9条改正など話題は多岐にわたった。
第1部では各党首が他党首を指名して質問する個別対決。1人2回ずつ機会が与えられ、野党7党首はすべて岸田首相(自民党総裁)に“口撃”を集中したが、“岸田沼”とも呼ばれる岸田流ののらりくらり答弁に論議はすれ違ったままで、盛り上がりに欠けた。

「安倍氏への対応」質問で岸田首相は苦笑い これに対し、第2部は記者クラブ代表による質疑応答で、とくに、締めくくりともなった、選挙後の出処進退も含めた各党首への個別質問が、最大の見せ場となった。
岸田流応答で討論全体を「岸田ペース」に巻き込んで微笑を浮かべていた岸田首相に代表質問者がぶつけたのは、党内に元首相が多くいる状況への対応ぶり。
「安倍(晋三)さんの場合、いろいろな形で注文があって大変じゃないかと。どう対応しているのか、ぜひ本音で」と質問。 これには岸田首相も苦笑を禁じえず、「党内にいろいろな議論があり、私も意見を承っております。最後に結論を出さなければならない。結論が出たら一致結束してまとまっていくのがよき伝統。
最後、決めていかなければならないのが総裁の立場」と、安倍氏らへの過剰な忖度は否定して、党総裁としての決断力をアピールしてみせた。

一方、後継指名問題を突かれてうろたえた松井氏の「自民党にピリッとしてもらう」との発言にかみついたのが立憲民主の泉氏。野党第1党としての低支持率を指摘されたのに「ピリッとさせるだけではいけない。政権交代」と松井氏へのライバル意識をむき出しに。 野党なのに2022年度予算・補正予算への異例の賛成を決断した玉木氏には「参院選後には自公連立政権に加わる?」との直球質問。
真剣な顔で質問者を見つめて応答した玉木氏は「われわれはとにかく政策本位。与党の皆様にも協力してもらって、いくつかの政策を実現することができたので……」と解説したが、与党入りはもごもごと本音を隠すばかり。

衆院議員を約半年で辞職しての参院選立候補を批判された山本氏は、「これまでさまざまな鞍替えがありましたが、それに対して批判されましたか」と肩をそびやかせて反論。
今回当選すれば任期を全うするときっぱり言い切った。
さらに、立花氏は「党ができたときほどの注目度がなくなっている」との意地悪な指摘に、「明日(22日)夜あげるユーチューブにあっと驚く“爆弾”が用意されております」とネット戦法への自信をアピール。
哀願調で不安いっぱいの福島氏との対照を際立たせた。

3年後の衆参同日選挙なら岸田首相も安泰ではない ただ、予測どおりの「黄金の3年」となれば、岸田首相も2024年9月の自民総裁選という難所を抱える。
山口、松井両氏早期退任が既定路線だが、泉氏も大幅議席減となれば「続投困難」(立憲幹部)。
志位、玉木両氏も「選挙結果次第で、安泰とは言い切れない」(選挙アナリスト)。
もちろん、山本、福島、立花3氏は「本人もどうなるかわからないはず」(同)で、「首相も含め、次の国政選挙まで続投確実と言い切れる党首は見当たらない」(自民長老)のが実態。

このため、党首討論会に詰めかけたベテラン記者の間では「3年後の同日選なら、それまで誰も生き残れず、全員新人になるかも」との物騒なささやきも広がった。
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2022年06月30日

学校で「いい先生」が正規教員になれない理不尽

学校で「いい先生」が正規教員になれない理不尽
現場の評価と一致しない採用試験の評価
佐藤明彦 : 教育ジャーナリスト
2022/06/29 東洋経済オンライン

公立学校では非正規雇用の教員が増え続けている。
その数は全国の公立学校で5〜6人に1人に上る。
教師という職業に、いったい何が起きているのか。
特集「『非正規化』する教師」の第4回は、実力のある非正規教員が正規教員になれない背景に迫る。

「なぜ、あの人が正規教員でないのか」 人づてに耳にした言葉に、中部地方で高校の理科教員をする武田晴久さん(仮名)は複雑な思いをした。
武田さんは、今年で非正規教員13年目を迎える。
武田さんが周囲から「正規教員」でないことに驚かれるのは、高校の教師として特筆すべき能力と実績があるからだ。
一つは、大学・大学院時代を通じて深めてきた生物・地学領域での専門性だ。
大学院を卒業後も博物館でボランティアをするなど、この領域への探究心は強く、自ら学んで得た深い知見は日々の授業にも生かされている。

もう一つは、部活動顧問として全国優勝を成し遂げたことだ。
理科教員ならではの知識とスキルを生かし、ある競技でチームを頂点に導いた。
「一般企業ならとうに採用している」 そんな武田さんに対して、部活動で付き合いのある会社経営者は冒頭のように、「なぜ、あの人が正規教員でないのか。一般企業ならとうに採用している」と話したという。

「他の先生から聞いた話ですが、うれしかった反面、自分の実績と立場の釣り合いが取れていないことに複雑な思いもしました」(武田さん)
大学院を卒業後に教員採用試験を受けたが、当時は倍率が10倍をはるかに超えていたこともあって合格することができなかった。
その後も毎年、採用試験は受けているが、あと一歩のところで合格ラインには届いていない。
その結果、現在に至るまで臨時的任用教員(常勤講師)として教壇に立ち続けている。
教員として10年以上のキャリアのある武田さんは、周囲から一人前と認められ、「仕事ができる人」と言われることもある。 民間企業の場合、非正規社員として実績を残せば、それが職場の評価となって正規社員に登用されることがある。
加えて、有期労働契約が通算5年を超えた場合、本人が希望すれば期間の定めのない労働契約に切り替えられる、いわゆる「無期転換ルール」がある。
そもそも、昨今は中小企業を中心に人手不足が著しく、人材の確保という側面から、非正規社員の正規化を図る企業も少なくない。
そうしたことから、民間企業の非正規率は2019年の38.3%をピークに2年連続で減少するなど、状況はわずかながら改善に向かっている(総務省「労働力調査」)。

しかし、公立学校には民間企業のような「無期転換ルール」がなく、長い人は10年以上にわたって非正規雇用のまま働き続けている。
人手不足が著しい状況にもかかわらず、非正規教員の正規化を積極的に図ろうとする自治体は皆無に等しい。

「現場の評価」と「採用試験での評価」が一致しない
教員には民間企業のような正規化のルートがないことから、どんなに学校での評価が高くでも、正規教員になる唯一の道は教員採用試験を突破することだ。
実は武田さんのように、高い能力と実績を持っているにもかかわらず、採用試験に落ち続ける人は珍しくない。
中には高い授業力があり、学校のキーマンとして活躍しているような人が、非正規教員というケースもある。

首都圏の公立小学校に勤める川島和希さん(仮名)も、そんな教師の一人だ。
非正規教員として働き続けて10年近くの間、正規教員が敬遠するような難しいクラスの担任を幾度となく受け持ち、時に荒れた学級の立て直しを任されることもあった。
学校教育や子どもたちに対する貢献は計り知れない。
こうした人たちが非正規のまま働き続けているのは、「職場での評価」と「教員採用試験での評価」が一致しないことによって起こる現象だ。

教員採用試験の実施形態は自治体によって異なるが、おおむね1次試験と2次試験の2段階で行われる。
1次では主に筆記試験が課され、教育に関する学術的・制度的な知識が問われる。
出題範囲は非常に広く、しっかりと対策をして本番に臨むことが必要となる。
それを突破して2次に進めば、面接や模擬授業などが待っている。

しかし、臨時的任用教員としてフルタイムで働きながら受験する人の場合、対策の時間を取りづらい。
そうした状況がある中で、試験対策の時間を十分取れる大学生と肩を並べて毎回試験に挑まなければならない 。
武田さんも1〜2年目は仕事を覚えるのに手いっぱいで、試験対策をほとんどすることができなかった。
その結果、あえなく1次試験の壁に阻まれることとなった。
3年目に初めて1次を突破した武田さんは、2次試験の面接・論文に向けて、万全を期そうと思った
だがその矢先、部活動関連の仕事が次々と入り、2次の前日には大会のリハーサルで、ほぼ終日拘束されてしまった。
その結果、十分な準備もできないまま本番に臨み、不合格となってしまった。

「断ったら二度と講師はできない」 教員は、部活動の顧問の仕事をボランティアに近い状態で担っている。
大事な採用試験を前に、そうした仕事を断ることはできなかったのか。
「仕事をきちんとやらないと、講師(臨時的任用教員)として働けなくなるという恐怖心がありました。
だから、そんなことは言えませんでした」
当時をそうふり返る武田さんは、非正規教員1年目の終わりごろ、忘れられない経験をしている。

当時、特別支援学校に勤務していたところ、近隣の高校の教頭から「来年度、うちの学校で講師をしないか」との電話が入った。
武田先生が「少し考えさせてください」と答えると、その教頭はこう言った。
「この話を断ったら、二度とこの県で講師はできないと思え」 武田さんは、今もこの言葉が頭から離れない。
そんな経験をすれば、「採用試験があるので、部活動の仕事は軽減してください」と言えなくなるのは当然であろう。

職場の優秀な人材を正規教員に登用する仕組みが存在せず、教員採用試験というやや特殊な選考システムにより、多くの教員が非正規雇用のまま放置され続けている。
公教育の質の担保という点でも問題と言わざるをえない。
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