安倍元首相の「国葬」は“世界標準”からもズレている 海外では疑惑を残した人物は対象外の例
2022/07/23 日刊ゲンダイ
9月27日に日本武道館で──安倍元首相の「国葬」が22日、閣議決定されたが、市民団体が差し止めを求める仮処分を東京地裁に申し立てるなど、異論反論は少なくない。
海外の国葬に目を向けると、ますます「いかがなものか」と思えてくる。
米国では当然ながら、大統領経験者は国葬になるが、1972年に起きた「ウォーターゲート事件」で74年に米国史上初の大統領辞任に追い込まれたリチャード・ニクソン(13〜94年)は、本人の遺志などもあって国葬は行われなかった。
ニクソンも対ソ、対中など外交に関する評価は高いものの、疑惑を残したままの人物は対象から外れるようだ。
国家のリーダー以外でも、国民的かつ世界的な“カリスマ”が国葬になることもある。
中南米ジャマイカではレゲエ歌手のボブ・マーリー(45〜81年)、ブラジルではF1レーサーのアイルトン・セナ(60〜94年)の国葬が行われているが、2人とも世界的に知られた“神様”クラスの人気者。
他国民でも納得だろう。
「そういう意味では、安倍元首相の訃報も世界中で報じられましたが、それは銃撃事件があまりに衝撃的だったからです。基本的に国葬は国家元首か、それと並ぶほどの国民に対する功労者というのが“世界標準”ですね」(ジャーナリストの堀田佳男氏)
たとえば英国では王室関係者はもちろんだが、第2次世界大戦時に首相を務めたウィンストン・チャーチル(1874〜1965年)も国葬だった。
「ただ、英国初の女性首相で『鉄の女』とも呼ばれたマーガレット・サッチャー(1925〜2013年)でさえ、国葬に準じる扱いでした。
葬儀費用の推計1000万ポンド(約16億6000万円)が公費で賄われることに反発した国民も大勢いたんです」(在英ジャーナリスト)
その一方で「近代看護教育 の母」と称される英国のフローレンス・ナイチンゲール(1820〜1910年)のように、国葬を打診されても遺族の要望で辞退したケースも。
そういう選択だってあるわけだ。
「モリカケ桜」に加えて旧統一教会との関係など、多くの疑惑を残したままの元首相が“世界標準”に当てはまるかといえば、やはり「いかがなものか」だ。