2022年07月25日

眉毛整えもブラジャー着用も禁止 理不尽校則、子どもを管理対象とみなす日本の危険性

眉毛整えもブラジャー着用も禁止 理不尽校則、
子どもを管理対象とみなす日本の危険性
7/23(土)  GLOBE+

先日、福岡県久留米市の公立中学校が「眉毛を整えていた」という理由から女子生徒に対して3日間の別室登校を課したことが発覚し、市議会で「行き過ぎた指導ではないか」と問題になりました。
同じ女子生徒が、ある日ポニーテールをして登校したところ、先生から「はねた髪の毛が後ろの人の目に入る危険がある」と髪形についても注意を受けたといいます。

今春には、都立高校の話ではありますが「新年度から下着の色の指定や頭髪に関する校則が撤廃される」というニュースが話題になったばかりで、筆者は「日本の学校も少しずつ多様になっていくのだな」と思っていましたが、そうとは言い切れないようです。
なぜ日本では長年にわたり理不尽な校則が問題視され、定期的に話題になっているにもかかわらず、全面的な見直しについて一進一退なのでしょうか。

在日外国人らに衝撃 最高裁「頭髪指導に違法性なし」の判断
理不尽な校則は、地域を問わず日本全国で見られます。
大阪ではかつて府立高校に通っていた女性が「地毛の茶髪を黒く染めるよう強く指導されたことが原因で不登校になった」として、大阪府に損害賠償を求める裁判を起こしていました。
一審で、大阪地方裁判所は、女子生徒の机の教室からの撤去、座席表や名簿からの氏名の削除といった学校側の対応は許されないとし、府に対して慰謝料など30万円あまりの支払いを命じたものの、指導自体に関しては「学校の裁量の範囲内であり、頭髪指導が違法だとは言えない」と判断しています。
二審の大阪高等裁判所も同じ判断であったため、女性側は上告をしていましたが、最高裁(菅野博之裁判長)は今年6月15日付で「学校側の黒染め校則や指導に違法性はない」とし、元生徒側の上告を退けました。
この高校はかつて、原告の女子生徒の代理人弁護士に対して「たとえ金髪の外国人留学生でも規則で黒染めさせることになる」と説明しており、日本に住む外国人や外国にルーツのある人から「あまりにも差別的」と非難の声が上がっていました。 今回、最高裁が学校の黒染め指導について違法性はないと判断したことで、司法までもが多様性に否定的だということが明らかになり在日外国人の間で動揺が広がっています。

「小学生らしさ」「中学生らしさ」とは?
昨年、ある小学校の「体操着の下に(ブラジャーも含む)肌着を着てはいけない」というルールが理不尽だとメディアで話題になりました。
小学生が肌着をつけることに反対する理由として「運動時の皮膚の鍛錬」「汗でぬれた下着を着たままだと風邪をひく」という声があります。
しかし、成人した女性に対して、たとえその女性が身体を動かす必要のある仕事に就き、汗をかくことが想定されていても、「風邪をひくからブラジャーをつけるのは禁止」といったルールが課されることはありません。
もしそのようなルールがあったら、セクハラだと言われてしまうことでしょう。

では、なぜ大人の女性に対して課さないルールを、女児に課しているのでしょうか。
そこには「小学生の女の子なら、身体がそこまで発育していないはず」「小学生ならブラジャーなど必要ではないはず」といった、ルールを作る大人側の「子供とはこうあるべきだ」という思い込みがあるとみてよいでしょう。

小学生であっても胸の発育した子はいますし、ブラジャーが必要な子もいます。
そういったことを考慮せずに「子供にはこうあってほしい」「子供には子供らしくあってほしい」「だから子供にブラジャーはそぐわない」というような大人側の願望がこのルールからは見て取れるのです。
ルールを作った側に「間違った前提」があったといえるでしょう。

眉毛に関する校則についても、「眉毛を整えるのは中学生らしくない」という考えに基づいてルールを作ったのだと想像します。
しかし、相手に「らしさ」を求めることで幸せになる人はいません。 「女性だから女性らしくふるまうべき」「男性だから男性らしくふるまうべき」…そういったことが近年「時代遅れ」だと見なされ見直しが行われつつあるのに、なぜ学校現場では子供に対して昔ながらの「小学生らしさ」「中学生らしさ」を求め続けるのでしょうか。

校則がないドイツの学校
ドイツでは外国籍の子供にも就学の義務があるなど、就学に関する規定が厳しく、病気を除いて「学校に通わない」という選択肢はありません。
不登校になった子供についても、学校が医師からの診断書を求めるなど、大変厳しいものとなっています。
その一方で、ドイツの学校には日本の学校でいう「校則」は存在しません。
基本的に髪形も服装も自由です。

筆者が10代のころ、ひざに穴が開いているジーンズがはやっており、多くの同級生が穴だらけのジーンズで授業を受けていました。
アクセサリーも自由で、同級生の耳元には大ぶりのイヤリングが揺れていました。
今思い返してみても、生徒が自由な格好をしていたことが勉強に支障をきたしていたとは思いません。
前述のように、ドイツでは「学校に通うこと」は重視されますが、「学校でどんな格好をしているか」については基本的に自由です。

教育関係者も含むドイツの大人の中に「子供といえども、人間には好きな格好をする自由がある」という共通認識があるからです。
日本では一部の教育関係者の「子供は管理をしなければいけないもの」という認識が目立ちます。

「自由を奪う」以外にもある 校則の重大な弊害
校則には「子供の自由が奪われる」ということ以外にも弊害があると筆者は考えます。
たとえばブラジャーの色を規定する校則があると、先生はそれに違反した生徒を指導するわけです。
長年の学校生活のなかで「下着などの女性のもっともパーソナルなことについて、他人が言及しても仕方ない」と子供たちに思わせてしまうことは大きな問題です。
世界経済フォーラム(WEF)による今年の「男女格差(ジェンダーギャップ)報告書」で、日本は146カ国中116位でした。 日本で女性の地位が低いのは明らかです。

そんな状況を変えるためには、生徒(特に女子生徒)が将来社会に出たとき積極的に様々なことに取り組めるように学校で子供に自信をつけさせることが大事であり、細かい校則で生徒を縛り付けるのは根本的に間違っていると言わざるを得ません。
(サンドラ・ヘフェリン=コラムニスト)
朝日新聞社
posted by 小だぬき at 16:32 | 神奈川 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 教育・学習 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「老化の進み具合」はなぜ人によって違うのか

「老化の進み具合」はなぜ人によって違うのか
「現役時代の年収」と元気な老後との関連性
山田 悠史 : 米国老年医学・内科専門医
2022/07/23 東洋経済オンライン

全米最大規模の老年医学科を擁するNYのマウントサイナイ医科大学病院で、日々高齢者診療にあたる米国老年医学専門医、山田悠史氏。
この高齢化社会において人々が切望する“健康で自立した老後”を叶える方法を、最新のエビデンスから解き明かした『最高の老後 「死ぬまで元気」を実現する5つのM』を上梓した山田氏が、人によって老化の早さが異なる理由を、遺伝、生活習慣、経済状況などさまざまな角度から検証する。

双子の寿命は近い?
「老化の進み具合や寿命は遺伝によるところが大きい」と考えていらっしゃる方もいるかもしれません。
しかし、過去の研究が教えてくれることは、それとは真逆です。
例えば、遺伝子を同じくした双子について検討したこんな研究があります。
デンマークの研究者たちは、長生きに遺伝子の情報がどれほど影響するかを調べるために、一卵性双生児や二卵性双生児で、それぞれ寿命がどのぐらい近いものになるかを調べることにしました。

一卵性双生児というのは、1つの卵子に1つの精子が受精したあと、その受精卵が2つに分かれて生まれた双子のことです。
一方、二卵性双生児は、2つの卵子にそれぞれ別の精子が受精して生まれた双子を指します。

前者ではほぼ100%同じ遺伝情報を持った双子が生まれますが、後者では、平均的に50%ほどしか遺伝情報は共通しません。
つまり、もし遺伝情報で寿命が決まるのであれば、二卵性双生児の互いの寿命よりも一卵性双生児の互いの寿命のほうがより近づいていくという仮説を立てることが可能です。
この研究では、60歳未満の時点では、寿命はほとんど遺伝子の影響を受けませんでした。
しかし、寿命が60歳を超えると、一卵性双生児の互いの寿命がより近づいていく様子が観察されました。
双子の一方の寿命が1歳延びるごとに、二卵性双生児ではもう一方の寿命が平均0.21歳ほど延びることがわかりました。
一卵性双生児では、平均0.39歳延びていました。
この結果から、遺伝情報は寿命に影響を及ぼしていると考えることができます。
ただ一方で、遺伝子情報が似通った双子であっても、そこまで寿命が一致するわけでもないということもおわかりいただけるのではないでしょうか。

実際、寿命を決めるもののうち、25%ほどが両親からもらった遺伝情報に左右されると試算されました。

ライフスタイルが遺伝子に与える影響
25%が遺伝情報によって規定されるとしたらその部分は自分の力では変えられないものの、逆に、残りの75%については自分の手で変えられる可能性があるとも言えます。
だからこそ、「どのように生きるか」は将来の自分にとってとても大切なことなのです。
一方、遺伝子の重要性は、より長寿になった場合にはより大きくなるようで、特に、女性より男性で大きいかもしれないことが知られています。

アメリカでのある研究では、100歳まで生きた人の男性の兄弟は、一般の人と比較して100歳まで生きる確率が17倍高いのに対し、女性の兄弟では8倍だったことを報告しています。
逆に言えば、女性ではより、ライフスタイルの影響を受けやすいのかもしれません。

また、「遺伝子」とは言っても、生活環境が遺伝子にも影響を及ぼしているということを示唆した研究もあります。
イタリアの研究で、100歳まで生きる人の女性と男性の比率を検討した報告では、サルデーニャ島では性別の比率が2:1であったのに対して、北イタリアの都市マントバでは7:1と、性別の比率だけでも地域によってかなりばらつきがあり、住んでいる地域で大きく差があることから、遺伝子と生活環境の間に何らかの相互的な作用があるのではないかと考えられました。
また、日本の沖縄は世界で最も100歳を迎える人が多い地域の1つですが、沖縄の長寿の理由の1つは、最適な栄養によるものという見解があり、これが遺伝的な要素にも影響を与えているかもしれないと考えられています。

このように、ライフスタイルと遺伝子もまた、密接に関連しているのかもしれません。
私の患者さんに、90歳を超えてニューヨーク市内の大学で教鞭をとる方がいます。
いつも1人で病院に足を運ばれ、「来週の授業の準備で忙しいのよ」と笑顔で話をしてくれます。
この患者さんには目立った大きな病気もなく、大学で、バリバリ現役で授業をされていることからもおわかりになると思いますが、認知症もありません。
それでも何か見落としがあるかもしれないと、認知症の検査をしてみると、間違いは1問もなく、満点をとられました。
90歳を超えた方に認知症の検査を行い、満点をとるのを見るのはそれが初めてでした。

私はすかさずこう伺いました。
「長生きや健康の秘訣はなんですか?」 すると、患者さんは照れ笑いのような表情を浮かべながら、一度は「特に何もないわよ」と即答したものの、その後、少し考えるようなそぶりを見せました。
そして、少し間をおいて、こんなふうに答えてくれました。
「まあ、好きなもの、夢中になれるものがあるってことかもしれないわね」
老化には個人差がある 老化には個人差が大きいことが知られています。
そしてそれは何より、私たちの生き方が大きく異なることに由来しています。

では、この老化の早さの「違い」を生み出すものは何なのでしょうか。
その答えの一端を教えてくれる、アメリカでのこんな研究があります。
この研究では、アメリカで中央値85歳の1677人の参加者を14年間観察し、加齢に伴う身体機能や認知機能の変化を追跡しました。
高齢な人を多く含んだ試験でしたが、参加者の約5割、891人が機能を維持できていました。
この機能を維持した人たちの特徴を見てみると、予想どおりといえば予想どおりかもしれませんが、持病が少ない人、「血管危険因子」が少ない人という共通点がありました。

ここで言う「血管危険因子」というのは、脂質異常症、高血圧、糖尿病、喫煙、肥満といったものです。
これらのいわゆる生活習慣病には、いずれも「自覚症状を感じにくい」という共通点があり、「体調が悪いわけではないのになぜ治療をするのかわからない」と言われてしまうことも多いものですが、実はこんなふうに老化に関わってくるのです。
こうしたことから、生活習慣病を予防し、適切に治療をすることが、「老化を遅くする」ことにつながる可能性が高いということが見えてきます。

それはすなわち、健康な食事の選択であったり、運動習慣であったり、禁煙であったりといったことです。

経済状況が老化に影響を及ぼす
さらに、イギリスでも同様の研究が行われています。
この研究では、約6000人を17年にわたり追跡調査。重大な病気もなく、身体機能も認知機能も維持された状態を「成功した加齢」とし、どんな人々が“加齢において成功”できたのかを調べました。
すると、最も影響が大きかったのは、30代から50代にかけての経済状況でした。
当時、経済状況のよかった人ほど「成功した加齢」と関連をしていたのです。
この研究では、年収約100万円の人から約2500万円の人までが調査されましたが、年収がいちばん低いグループと年収がいちばん高いグループでは大きな差が見られていました。

また、経済状況以外の因子では、喫煙なし、健康的な食事、運動のほか、女性では程よい量の飲酒(ビールで1日350mlまで)、男性では職場での上司や同僚からのサポートが「成功した加齢」と関連していました。
社会的、経済的な地位と健康との関連性はほかにも今までさまざまな研究で指摘されてきています。
経済状況がよければ、生活水準も改善され、医療にアクセスしやすくなること、また健康的な生活習慣を取り入れやすい傾向となることも報告されています。
こうしたことが積み重なり、老化の進み具合と密接に関連しているのかもしれません。
30代から50代は、大きな病気がない人が多く、体調の変化にも気づきにくい年代かもしれませんが、このときの蓄積が、実は老後の健康に大きな影響を与えている可能性があると考えられます。

「体調は悪くない」「症状もない」という直感はあまり当てにならないかもしれず、やはりこの年代から自覚するしないに関わらず健康的な習慣を身につけておくことが大切で、それが将来の自分を助けることにつながると考えられます。
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする