2022年10月15日

「自衛隊は時間にルーズな組織」と米軍が思う訳

「自衛隊は時間にルーズな組織」と米軍が思う訳
元陸自隊員が驚愕した米軍との「文化の違い」
ぱやぱやくん : 元自衛官
2022/10/14 東洋経済オンライン

「陸上自衛隊」と聞くと、皆さんはどんなイメージを持たれるだろうか?
 一番身近なのは、教科書やテレビでもおなじみの、災害派遣やPKO(国連平和維持活動)などで活躍している姿だろう。
戦車に乗る姿や、厳しい訓練に勤しむ様子を思い浮かべる方もいるかもしれない。
確かに、これらは実態と乖離ない事実だ。
しかし一方で、これらは、自衛官の「オン」の姿であると言える。

ビジネスパーソンが、仕事モードのときとプライベートのときとでは行動や言葉遣いを切り替えるように、自衛官達もまた、「オフ」の姿がある。
Twitterフォロワー21万人超えのぱやぱやくん(@paya_paya_kun)は、知られざる陸上自衛官の”オフ”の姿、彼らのユーモアあふれる日常や恋愛事情、家族生活までを語る元自衛官。

本記事では、ぱやぱやくんが陸上自衛隊と米軍の違いや、米軍から学んだことを紹介する。

「国」が変わればますらおの文化も変わる
自衛隊では、米軍と共同作戦を行うこともあるのですが、彼らと一緒に作戦をすると「そもそもの考え方が違う」とつくづく実感します。
皆さんも「外資系企業で働いてみたら日本企業と違うことが多くて驚いた!」なんてエピソードがあると思いますが、それと同じように、自衛隊と米軍にも大きな差があるのです。
アメリカの風習が影響していることが主な理由かと思いますが、それ以外にも実戦をつねに経験している米兵からは、気づかされることは多くあります。
そんなアメリカのますらおたちから教わったことをいくつか紹介していきましょう。

日本では「時間をしっかりと守る」いうのが当然のマナーですし、特に陸自のますらおたちは時間厳守を叩き込まれています。
しかし、米軍から見れば「自衛隊は時間にルーズな組織」と映ることもあるようです。
というのも、彼らにとっては「始まりと終わりの時間を破らない」というのが当然のルールだからです。
自衛隊に限らず、日本の組織は開始時刻には非常に厳しいのですが、終わり時間がルーズなことが多いですね。
会議の時間は当たり前のように延び、飲み会もダラダラと終わることがなく延びていきます。
これは、日本人が「場の空気」を大切にすることが要因だと思います。
終了時間が延びたからといって、「ほな、私は時間なので失礼するでおじゃる」と言って勝手に帰ると、戦国時代なら織田信長あたりに打首にされるでしょう。

しかし、「場の空気が支配する文化」がない米軍はそうではありません。
終わり時間を守らないことは「他人の時間を奪う」という行為であり、部下の時間を奪う上官は最低の上官なのです。
そのため、たとえ戦場であっても可能な限り定刻に終わるように調整をします。
どんなに無理な場合でも、一定期間戦場に行ったら一定期間バカンスを与えます。
そのようにして、きっちり仕事に従事すべき時間とそれ以外を分けるのです。

そして誰もいなくなりかけた、日米パーティー
自衛隊と米軍でちょっとだけフォーマルなパーティー(飲み会)をしたときの話です。
自衛隊側の調整ミスで式の始まりが45分遅れたため、自衛隊側はそのまま45分遅れでパーティーを司会進行しました。
当然、予定解散時刻になっても予定を後ろに倒す形で会は続いていたのですが、なんとパーティーがまだ終わっていないのに米軍側は帰ってしまいました。
自衛隊側は「おいおい! マジかよ!?」と唖然としましたが、米軍側にとってはフォーマルなパーティーは半ば仕事と同じであり、本来の解散時間に帰って家族サービスをすることはごくごく当たり前なのです。
ただ自衛隊側は「よし! じゃあ俺たちも帰りましょうか」とはとても言えず、そのまま会を進行することになってしまいました。
ところが、もちろん肝心の米兵はほぼほぼ帰ってしまっています。
会場には、エドワード・スノーデンに雰囲気が似ているナードっぽい米兵1名のみが残されていました。

彼は、自衛隊側が「頼むから俺たちの一発芸見てくれよ!」と頼み込んで残ってもらったのです。
そして、陸自のますらおたちは、そのスノーデンに対して「タッチのOP曲が流れる中、C3POとストームトルーパーが相撲する」という一発芸を披露しました。
これにはスノーデンも苦笑いで、自衛隊側の気分は浅草キッドの「客が一人しかいない演芸場」で芸を披露した気持ちでした。

アメリカ人に「場の空気」は関係ない!
ただ誤解してほしくないのですが、「米兵は飲み会やパーティーが嫌い」というわけではありません。
あくまでも「フォーマルな宴会は仕事と同じ」というわけです。
今時の若手社員が「プライベートの飲み会は大好きだけど、会社の忘年会はマジで行きたくない……」という感覚に似ています。
このあたりは日本人と一緒ですね。
ちなみに「ビール飲み放題! 騒ぎ放題! 肉もじゃんじゃん食べてくれ!!」といった感じのパーティーであれば米兵もウキウキです。
そして「日米腕相撲大会」とか、「日米相撲大会」が始まって大いに盛り上がり、時間になってもビールを飲み続けて帰ってくれなくなります。
家に遊びに来て、晩ご飯の時間になっても帰らずにゲームをやりたがる友達に似ていますね。

また、働き方についても米軍は「リーダーが残業をしていると部下が帰れなくなる」という考え方が根強く、できる限り定時に帰りますし、任務や訓練中の休息や睡眠についても自衛隊よりも重要視して時間を確保します。
そうした理由から、「米軍とは働きやすい」と言う幹部自衛官も多いです。

幹部以外の自衛官でも、そんな「個人の自由」と「ルール」をしっかり守る米軍の文化に憧れるますらおがたくさんいます。 米兵は今話題の「ジョブ型」という考えがかなり強いです。

職務内容が明確に定義されているので、違う仕事をやってほしくても「それは私の仕事ではありません!」と断られてしまいます。
その人が対応できるような業務であっても、与えられている任務と異なると基本的に対応をしません。
これが日本の役所であれば、「他の部署にたらい回しにするな! ふざけるな!」と顔をタコのように真っ赤にして怒る人が出てきそうですが、これが彼らのルールなのです。

また陸上自衛隊では、決定権が指揮官にあるので、それ以外の隊員の一存で何かを決めることは難しいです。
このように、陸上自衛隊は基本的に「隊長の指針」をベースに意思決定しますが、米軍は個人の権限が強いので分隊長レベルでも状況判断をガンガン行います。
この背景には、米軍は「権限」と「取るべき行動」に曖昧な部分が少なく、現場単位で速やかに状況判断しやすいことが挙げられます。
そうした違いがあるので、日米共同訓練などの打ち合わせでは、自衛隊側が即決せず「持ち帰って判断します」という回答をしがちなので、米軍側は少しヤキモキすることが多いようです。

米軍の指揮官は自衛隊が羨ましいことも?
米軍は物事すべてに明確な境界線を引く傾向が強いので、日米共同訓練でも自衛隊側との作戦の境界が明確です。
無条件で助けてくれるのではなく、「あくまでも自分たちの持ち場で戦う。自衛隊は自衛隊の持ち場で戦ってね」というのが米軍なのです。
なんだか米軍のやり方は理想的に思えますが、一方で米軍の指揮官が「上司の考えを察して動いてくれる自衛隊が羨ましい」とぼやいているのを聞いたことがあります。
隣の芝生が青いのは米軍でも同じかもしれないですね。
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☔ | Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする