「間髪を入れず」誤読多く
2022年11月24日 All About
■「いやがおうにも期待が高まる」は間違い!
間違えやすい慣用表現 「歯に衣着せず」「サバを読む」など、普段の会話の中で、何気なく使っている慣用表現。
意味をきちんと理解して使えているでしょうか。
耳で覚えた表現を、意味や読み方を確認しないまま覚えていませんか?
よく使いながらも、ちょっと自信がないという表現があれば、これを機に確認してみてくださいね。
■「耳ざわりのいい表現」はいいの? 悪いの?
「音は似ているけど意味が違う」「似た言葉と混同している」など、間違いに気付かないまま使っている慣用表現は、結構あります。
▼×取りつく暇もない○取りつく島もない
「話しかけても、ちゃんと答えてくれる余裕がないほど忙しい」という状態を「取りつく暇もない」と覚えている人、いませんか?
正しくは「取りつく島もない」です。
航海中に遭難したときに寄航できるところで「島」という意味。
「島」は、頼りや助けになるもの。
つまり「頼りになるようなところがなく、どうしようもない」という意味。
▼×大目玉をいただく○大目玉を食う
上司に叱られたのだし、「食う」なんて、下品な言葉を使うなんてと「大目玉を食う」を「いただく」と丁寧語に変えてはだめ。
「大目玉を食う」という決まった言い方なのです。
▼×あたりさわらずの意見○あたりさわりのない意見
聞いたことがあるような、ないような表現ですが、これは「あたりさわりのない」と「あたらずさわらず」の2つの言葉が、混同されていると思われます。
両方「物事の核心にふれず、ほかの人やものへの影響が少ない」という意味なので、似ているのですが、言葉としては別のものですから注意しましょう。
▼×的を得た発言○的を射た発言
「得る」と「射る」は、音が似ているのでよく間違う表現ですが、「的」は「射る」もの。
「的を射た」が正しい表現です。
「得た」を使って「当を得た発言」とすれば、同じ意味でこれも正しい表現です。
▼×間髪(かんぱつ)入れずに○間髪(かん、はつ)を入れずに
「カンパツ入れずに答えた」などという風に使う人が多いと思います。
「すぐに、とっさに」という意味はあっているのですが、読み方が違います。
「間髪を入れず」は、もともと“間に髪の毛1本も入る隙間もないほど、(事態が)非常に切迫していてゆとりがない”状態という意味。
「かん、はつをいれず」が正しい読み方。
▼×いやがおうにも、期待が高まる○いやがうえにも、期待が高まる
「いやがおうにも」を漢字で書くと「否が応にも」。
意味は「なにがなんでも、有無を言わせず」。
「いやがうえにも」は、「弥が上にも」で、「さらにますます、その上に」という意味。
さらに期待が高まるという意味では、「いやが上にも、期待が高まる」が正しいです。
▼×照準を当てる○照準を定める、
あわせる 「照準」は、銃の弾丸が的に当たるように、ねらいを定めることが元々の意味なので、照準そのものを標的に当てるという表現は間違い。
「照準を定める、あわせる」が正解です。
▼×汚名挽回○名誉挽回、汚名返上
これも、名誉挽回と汚名返上の2つの言葉を混同したものでしょうか。
「挽回」は、取り戻すという意味ですから、汚名挽回だと、汚名を取り戻すということになります。
「失った名誉、汚名を回復する」という意味で使うなら、名誉挽回・汚名返上が正解です。
▼×微に入り細に入り○微に入り細を穿ち
「とても細かいことについてまで質問された」というようなときに使う表現ですが、「微に入り」と「細に入り」をなんとなくリズムで使ってしまっている人が多いのではないでしょうか。
実は「細に入り」が間違いで、「細を穿ち」が正しい表現です。
ちなみに「穿つ」というのは、穴を開けること。
「微に入り細を穿ち」は、「細かいところにまで及ぶ」という意味です。
▼×耳ざわりのいい○耳に心地いい
「耳ざわりのいい言葉」という風に使う人が時々いますが、「耳ざわり」は、漢字で書くと「耳障り」。
「聞いていて不快、嫌な感じ」がするという意味ですから、「耳障りがいい」とは、全く矛盾した言葉になります。
聞いていて気持ちがいいのは、「耳に心地いい」。
▼×太鼓判つき○太鼓判を押す
絶対に確実という意味で、「○○編集長の太鼓判つき!」という表現を雑誌などで時々見かけることがありますが、「折り紙つき」と混同したものと思われます。
「太鼓判を押した」「折り紙つき」なら正解です。
▼×波紋を投げかけた○波紋が生じた
そもそも、静かな水面に物を落としたときに生じるのが波紋。波紋そのものを投げることはできませんから、「波紋を投げかけた」は間違い。
何かの発言、行為などによって影響・動揺を与えたことについては、「波紋が生じた」または「波紋が広がった」とするのが正しい表現です。
いかがでしたか? あらためて日本語って難しいと感じる方も多いのではないでしょうか。
無理に慣用句を使う必要はありませんが、間違いやすいとされている慣用表現をさらっと使いこなせたら、オフィスでのあなたの評価もグンとアップするはずです。
(文:美月 あきこ(ビジネスマナーガイド))