2023年03月10日

“独裁批判”高まる日本共産党のお友達、「立憲民主」の迷走とどん詰まり

“独裁批判”高まる日本共産党のお友達、「立憲民主」の迷走とどん詰まり
小倉健一:イトモス研究所所長
2023.3.9 ダイヤモンドオンライン

立憲民主党のどん詰まり感が強まっている。
党是である「反原発」は、世界的なエネルギー危機や、それに端を発する電気代の高騰によって厳しい立場に追いやられている。
また、選挙で手を組んできた日本共産党では、「異論排除」と目される党員除名が明らかとなり、批判を浴びている。
立憲民主党は次の選挙で何を訴え、どう戦うのか。(イトモス研究所所長 小倉健一)

原子力の最大限活用を明記した 岸田政権の政府方針
 岸田政権は2月10日、次世代原子力発電所の建設を進め、既存原発の60年超の運転を認める閣議決定をした。
この「GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」という閣議決定では、原子力発電を最大限活用すると明記している。
 2011年の東京電力福島第1原発の事故を受けて、原発の新増設や建て替えはストップしていたが、今回の閣議決定では「廃炉を決定した原発の敷地内での建て替え」を念頭に具体化が進むことになる。

原発の運転期間は、原子力規制委員会の安全審査への対応などで停止した期間について延長を認めたことになる。
 ただ、そもそも海外で原発を持つ主要国である米国や英国、フランスは原発の運転に上限年数を設定していない。
米国は運転期間が40年を経過して以降は、規制機関による審査を通過すれば20年間の延長が何度でも可能となっている。
また、英仏は10年ごとに安全審査を実施するが、運転期間に上限は設けていない。
 そして、現在原発の運転期間の上限とされている「40年」という期限について、経済産業省は審議会などで「科学的根拠はない」としている。

原発稼働に反対するにしても、運転年数の上限を論点にするのは間違っている。
しかし、この運転年数の上限撤廃に反発するのが、反原発を党創設の原点としている立憲民主党だ。
立憲民主党は 反原発・再エネ推進  例えば、立憲民主党の逢坂誠二衆議院議員は、自身のブログでこう述べている。
「科学的根拠の有無云々以上に、甚大な事故の教訓の一つとして、当時の与野党が一致して40年ルールを作ったのです。
それをコソコソと推進側と規制側が談合して変更するのは、国会軽視だと言わざるを得ません。

『推進』と『規制』の一体化は、日本にとっての自殺行為です。
失われた10年とともに、原子力にとって何のための12年だったのでしょうか。
忘却の12年にしてはなりません。
さあ今日もブレずに曲げずに、確実に前進します」(2023年2月10日)
「科学的根拠の有無云々(うんぬん)以上」とは一体何を言っているのだろうか。
原発を動かすのに安全か否かの判断は、科学的根拠に基づいて行うべきだ。
「国会軽視」というが、科学的根拠を軽視するのが立憲民主党のやり方らしい。
逢坂氏は「確実に前に進む」らしいが、そっちの未来は行き止まりでしかない。

 立憲民主党が21年の衆議院選挙時に打ち出した「政権政策2021」のホームページ(政策・Policy3)には、原発・エネルギー政策について、次のようなことが書いてある。
・原子力発電所の新増設は認めません。
・原子力発電所のない社会に向けた不可逆的な方針をすみやかに確立し、国の監督と責任の下で廃炉を着実に進めます。
・ソーラーシェアリング・洋上風力・小水力などの自然エネルギーによって地域でお金を回し、エネルギー自給を目指す自治体や地域の事業者を支援して、2030年自然エネルギー電力50%、2050年自然エネルギー電力100%を目指します。

電気代高騰の大きな責任が 立憲民主党にある理由
 国会議員なら誰もが知っていなくてはいけないことだが、現在の電気代の高騰は原発が稼働していない地域に偏っている。また、再生可能エネルギー発電促進賦課金という名目で、主に太陽光発電普及のために電気代が上乗せされている。
 ネット上には、電気代が昨年の同時期に比べて、3万円増えた!とか「10万円を突破した」という“被害”の報告が次々と寄せられている。

原発に対する何となくの不安を主張し続けた野党第1党の罪は極めて大きいだろう。
 小選挙区という選挙制度においては、与党勢力を信任するか、与党が信任できないなら野党第1党に入れるという投票行動が散見される。
時の政権は、やはり野党第1党の政策や主張に引きずられるものである。
電気代高騰の責任は明らかに、原発の再稼働の足を引っ張り、自然エネルギーを推進してきた立憲民主党にある。
 この電気代高騰に対し、立憲民主党幹部の長妻昭政務調査会長は、「4月から電気料金がさらに高騰することが予測されており、時間もないので急ピッチで、短期的に成果が出るような対策を政府に対してぶつけていく」と述べている。
ただ、電気代を政府の補助金で安くするとして、そのお金の出どころは、国民の税金なのである。

 電気代が国からの補助金で安くなっているように見えて、結局安くはなっていない。
補助金制度を実施するのにコストがかかるのだから、実際には、国民に補助金としてばらまいたお金は、金額が大きくなって国民の負担となる。

 やはり、即効性があって抜本的な対策とは、原発を動かして電気の安定供給を行うとともに、安価な電気供給にとって迷惑な存在でしかない太陽光発電への補助金を打ち切ることだろう。
問われるべきは、科学的根拠のある原発の安全性なのだ。
海外の脱原発も ロシアのウクライナ侵略で頓挫の危機  脱原発を党是としているのは、立憲民主党だけではない。
ドイツの環境政党「緑の党」も同じ方針だ。
しかし、ドイツはロシアによるウクライナ侵略によって、これまでのエネルギー政策が行き詰まってしまった。

 今年の冬が幸運にも比較的暖かかったがために、天然ガスの価格は落ち着いている。
しかし、ウクライナ戦争は泥沼化していて、欧州連合(EU)の天然ガスの在庫は今年中に、底を突くことが予想される。  

ロシアからの天然ガスの輸入がストップしてしまったがために、ドイツは原発の停止をいったん延期し、世界中を飛び回ってエネルギーの供給を確保しようとしている。
天然ガス王国のカタールと液化天然ガス(LNG)供給の長期契約を結び、大々的な報道がされたものの、その量は年間200万トン(26年から短くても15年間)。
EU全体が年間1億トンもの天然ガスを輸入していたことを考えると、大きなボリュームを確保しているとは決していえない。

 近年のEUは「環境教」とも呼ぶべき、カルト宗教に陥ってしまったようだ。
今回のウクラナ戦争に原因があるエネルギー危機も、脱炭素による発電でカバーしようという一定の勢力が存在している。
具体的な計画もなく、「ロシアから輸入していた分は、中長期的には太陽光や風力で補えばいい」と意気込んでいる。
 EUが炭素燃料(石炭、天然ガス、石油)の調達について、長期契約よりも、スポット(短期)契約に偏っているのを見ても、彼らの脱炭素への思い入れの大きさが分かるというものだ。

立憲民主党が、そんな「脱炭素におけるカルト宗教」ではないと主張するなら、具体的な計画をぜひ明らかにしてほしいものだ。

立憲民主党の選挙協力パートナー 共産党で起きた「異論排除」
 立憲民主党はまた、小選挙区での得票を伸ばしたいがために日本共産党との選挙協力をしてきた政党でもある。
共産党は、22年の参議院選挙において、比例代表選挙で約362万票を獲得している。
仮にこれを衆院選の289の小選挙区で割ると、1選挙区当たり1万2500票余りを獲得していることになる。
立憲民主党の候補者が獲得した得票にプラスする形で共産党支持者に投票をしてもらえると、当選ラインに届く候補者も多いという皮算用なのだろう。

 しかし、共産党で最近起きた、党本部を公の場で批判した党員を、「党への攻撃」として除名した行動は、民主主義国家において論外だろう。
このことは、朝日新聞の社説(23年2月8日)でも次のように批判されている 「党勢回復に向け、党首公選を訴えた党員を、なぜ除名しなければいけないのか。
異論を排除するつもりはなく、党への『攻撃』が許されないのだと言うが、納得する人がどれほどいよう。
かねて指摘される党の閉鎖性を一層印象づけ、幅広い国民からの支持を遠ざけるだけだ」

 党首公選を訴えることが、なぜ「党への攻撃」なのか。志位和夫委員長による長期独裁体制をさらに印象付ける結果になった。
 このような社会主義独裁政党と、本気でこれからも組む気なのだろうか。
統一地方選挙においては、各党がバラバラに選挙を戦うために統一戦線を組む必要はない。
しかし統一地方選挙後には改めて、次の衆院選をどう戦うのかが問われることになる。

立憲民主党と国民民主党の共闘は 「脱原発」が妨げに
 そこで存在感を発揮するのは国民民主党だ。
22年の参院選挙比例での国民民主党の得票は、約316万票だった。
共産党にほぼ匹敵する得票を得ていて、やはり立憲民主党が一緒に戦うべきは、共産党ではなく国民民主党となろう。
その場合、「脱原発」が両党の合流を妨げることになる。

 中長期的に世界的なエネルギー不足が続くのは間違いない。
電気代の高騰で国民を苦しめ、そして社会主義独裁政党との選挙協力を続けていくつもりなのだろうか。

 原発の大きな欠陥として、小泉純一郎元首相が主張していたのが、行き場のない核廃棄物の問題だった。
まさしく、今の立憲民主党は、これと同様に行き場のない状態だ。
立憲民主党の執行部は、統一地方選挙後に重大局面を迎えることになる。
 ちなみに、その厄介な核廃棄物だが、次世代の原発の燃料とできることが分かっている。
こちらは解決策が生まれた。
では、立憲民主党はをどう身の処し方を考えていけばいいのだろうか。
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 | Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする