神様をバカにする人は運に見放される…
脳科学者が「神社を参拝するメリット」を脳科学的に説明する
7/24(月) プレジデントオンライン
運をつかむためにはどうすればいいのか。
脳科学者の茂木健一郎さんは「私はよく神社やパワースポットに出かける。それは自分の心が整い、積極的に動く習慣が身につくからだ。
『神社やパワースポットなんて迷信でしょう』という人は損をしている」という――。(第1回)
※本稿は、茂木健一郎『強運脳』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
■なぜわれわれは神社にお参りに行くのか
豊臣秀吉や徳川家康といった、日本を動かしてきた天下人の多くが神社を大切にし、参拝を続けてきたといいます。
また、これまで成功を収めてきた偉大な企業人の多くも、積極的に神社参りをしてきました。
松下電器産業(現パナソニックホールディングス)の創業者で、「経営の神様」と呼ばれていた松下幸之助は神様を大切にしてきたことでも有名で、本社や事業所内のあちこちに神社をつくり、現在も同社には祭祀担当の社員がいて社内の社(やしろ)を管理しています。
日本人にとって神社は身近な存在です。
商売繁昌の神様として知られる東京の神田明神にはビジネスパーソンが日々多く訪れますし、ある人たちは疲れた心を癒して運気を上げようと全国各地のパワースポットへ出かけたりもします。
なぜ、私たちは神社やパワースポットに行くのでしょうか。
「苦しいときの神頼み」といいますが、神社に参拝したり、パワースポットに行くことで、今より少しでも運気を上昇させたいと願うからでしょう。
ただし、科学的には神仏にお祈りしたからといって、あるいはパワースポット行ったからといって、何らかのパフォーマンスが上がるというエビデンスはありません。
それでも、自分ではコントロールできない、どんなに力を尽くしてもどうすることもできないことに対して、何とか神様のご加護を得ようと参拝し、手を合わせるわけです。
■脳科学で考えるメリット
では、神社やパワースポットに行くことで、どのようなメリットがあるのか、運を引き寄せることができるのか、脳科学的に説明していきましょう。
脳科学の立場からいえば、神社に参拝したり、パワースポットへ行くことが意味するのは、それによって「自分の内面が変わる」ことにあると私は考えています。
神前で手を合わせ、日常の雑事から離れた空気の中で自分の心を整える。
そうすることで、翌日からの仕事や日常生活に弾みがつくというわけです。
私自身も、実はよく神社やパワースポットに出かけることがあります。
それは神様に何かをお願いするのではなく、むしろ神様の前で「自分はこんなことをする」と誓う意味を込めているのです。事を成すのは、あくまでも自分自身だからです。
目の前のことに集中し、手を動かし、智恵を絞り、一所懸命に働く。
その心の準備をするために、時間やお金を使って神社やパワースポットに出かけ、そこで祈ることが心を整えるうえで有効なのです。
■行動力が運を引き寄せる
以前、世界遺産に登録されている熊野本宮大社に行ったとき、宮司さんからとても興味深いお話を聞いたことがあります。世界中を飛び回っているある有名な起業家が、関西空港から直接車で熊野に向かって参拝した後すぐに東京に帰る、というようなことをされているとおっしゃっていました。
その起業家は決して神頼みに来ているのではなく、むしろ忙しい日常の中で心を整えるためのひとつの区切りとして、熊野本宮までの長い道のりをやってきたというのです。
誰もが簡単にできることではない行動力です。
実はこうした行動力こそ、運を引き寄せる大きな要因となるのです。
たとえば、Aという行動をとる人は、他のBやCという行動にも積極的であるという傾向があります。
つまり、どんなに忙しくても神社やパワースポットに出かける行動力のある人は、普段の仕事や日常生活でも積極的に何か新しいことにチャレンジする傾向があり、その準備をしているということです。
逆に、「神社やパワースポットなんて迷信でしょう。そんなの自分には関係ない」などと言っている人は、何に対しても積極的ではなく、むしろ消極的な行動しかできないようにも見受けられます。
行動力とは、自ら進んで実行に移せる力であり、それと同時に自分が知らないことや経験がないことに対しても、興味を抱けるということです。
■すぐに行動できない人ほど前頭葉が動いている
世の中には、何に対しても素早く行動できる人とできない人がいます。
運を引き寄せられる人が前者であるのは、いうまでもありません。
素早く行動できる、できないという差はどこから生まれてくるのでしょうか。
実は、そこには脳の働きが大きく関係しています。
すぐに行動できない人の原因を脳科学的に説明すると、意外なことに脳が正しく働いている証拠だといえます。
つまり、すぐに行動できない人の脳というのは前頭葉が指令通りに機能して、抑制が利いてしまっているのです。
私は仕事柄、海外のビジネスパーソンとも話す機会が多いのですが、「なぜ、日本人の多くはすぐに決断したり、すぐに行動できないのか」と言われることがあります。
この理由もまた、真面目な日本人がルールや決まり事をしっかりと守るところからきているのです。
「行動に移す前に、まずは慎重に検討しよう」
あなたのまわりでこんな言葉が交わされてはいないでしょうか。
こうしたルールや決まり事が脳の抑制となり、私たちの行動にブレーキをかけているのです。
真面目な日本人の脳がしっかり働いているからこそ、すぐに行動に移せない。
何とも皮肉な話ですが、変化が激しい現代社会においては、時には大胆に行動しなければいけない。
私が常々考えていることのひとつです。
■こうすれば行動力を得られる
では、いったいどうすれば、大胆かつスピーディーな行動力を手に入れることができるのでしょうか。
そのための手掛かりとして、脳の抑制に着目してみましょう。
人間の脳には、すぐに行動できる脳とできない脳が共存していて、すぐに行動できるようになるには脳の抑制を外せるかどうかにかかっています。
これを脳科学的には「脳の脱抑制」といいます。
「なかなか行動に移せない……」と悩んでいる人は、決して行動力がないわけではなく、脳の抑制の外し方が苦手なだけです。
でも、それはある意味では仕方がないこと。なぜなら、脳の抑制の外し方というのは、誰かが教えてくれるわけではないからです。
それどころか、先に述べたように一歩社会に出れば「こうしなければいけない」「こんなことをしてはいけない」といったルールや決まり事だらけで、多くの行動が制限されてしまっているのが実情でしょう。
もちろん、それはそれで悪いことばかりではないのですが、結果として自分の行動にストップをかける癖がついてしまっているのです。
けれどもその一方で、持ち前の行動力を発揮して成功しているトップランナーたちがいます。
プレッシャーをものともせずに素早く行動し、誰も成し遂げられなかったイノベーションを実現している人たちです。
私は、彼らの成功は脳の抑制を外すことができた成果だと考えています。
つまり、ちょっとした工夫次第で誰にでも脳の抑制は外すことができるということ。
そこで大事なのが、あまり慎重に考えずに瞬間的にトップスピードで行動する習慣を身につけるということです。
私はこれを「瞬間トップスピード法」と呼んでいます。
■運は待つのではなくつかみに行くもの
たとえば私の場合、この本のように原稿を執筆しようと決めたときは、とにかくパソコンをパッと立ち上げて、準備もしないですぐにトップスピードで書き始めます。
そこには、「さぁ、原稿を書くぞ!」といったやる気や、「あれをやって、これをして」といった心の準備をするという意識はまったくありません。
どんな行動もまるで歯磨きでもするように、あれこれ考える前にパッとやってみる。
完璧など求めずに、やり散らかしたっていいということです。
大事なのは、自分が何か特別なことをやっていると思わないこと。
特別なことをやっていると意識することで、脳が身構えてしまうからです。
運気アップまずは今すぐ、何かをやってみる。
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茂木 健一郎(もぎ・けんいちろう) 脳科学者