2023年07月30日

困難を筋肉と団結で乗り越える…通称「小原台刑務所」で繰り広げられる防衛大の"しょっぱい学生生活"

困難を筋肉と団結で乗り越える…通称「小原台刑務所」で繰り広げられる防衛大の"しょっぱい学生生活"
2023年07月29日 PRESIDENT Online

防衛大学校は神奈川県横須賀市小原台にある。
卒業生で元自衛官のぱやぱやくんさんは「学生たちからは『小原台刑務所』や『ニューホテル小原台』と呼ばれている。
新入生は1日に1回は入学したことを後悔するが、不思議な魅力がある」という――。
※本稿は、ぱやぱやくん『今日も小原台で叫んでいます 残されたジャングル、防衛大学校』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■通称「小原台刑務所」「ニューホテル小原台」
防衛大学校(防大)は、神奈川県横須賀市小原台(おはらだい)(※1)にあり、学生たちからは「小原台刑務所」や「ニューホテル小原台」とも呼ばれ親しまれています。
防衛省管轄の教育機関であり、陸・海・空、各自衛隊の幹部自衛官となる者を教育訓練している施設です(文部科学省が管轄する機関ではないので、「大学」ではなく「大学校」なのがポイントです)。

防大は、諸外国で言えば士官学校に該当する学校であり、学生の身分としては「特別職の国家公務員」です。
そのため、学費・衣食住が無料のうえ、学生手当が支給され、防大を卒業すると「一般幹部候補生(曹長)」として任官します。
防大卒業後に与えられる「曹長」という階級は、一般入隊の隊員の場合だと定年まで勤務して到達する階級です。
さらに、現在の制度では防大を卒業すると佐官への昇任はほぼ確定のため、自衛隊内部では「防大はエリートコース」と言われています。

■1日1回は思う「防大になんて来るんじゃなかった」
一方で、防大は全寮制で規律は厳しく、ジューシーで甘酸っぱいキャンパスライフを想像すると間違いなく後悔します。
どちらかと言うと、田舎のおばあちゃんが作った塩まみれの梅干しを想像したほうがいいでしょう。
そのため、残念ながら防大に進学した新入生は「防大になんて来るんじゃなかった」と少なくとも1日に1回ぐらいは思います。

新入生は坊主頭やおかっぱ頭になり、朝から晩までシャウトし、精神と肉体の限界に挑むからです。
進学よりも「出家」に近い学校であり、一般社会を娑婆(しゃば)と感じることさえあります。

■学力だけではなく、生命力を求められる
防大の基本コマンドは「走る」「叫ぶ」「飛び跳ねる」です。
忌野清志郎さんのライブのように躍動感のある生活であり、縦ノリのリズムが求められます。
これは、防大では学力だけではなく、生命力をも求められるからです。
生命力とは「限界に立ち向かう力」「不条理に耐える力」「困難を乗り切る力」のことであり、高校時代に全てであった学力偏差値はなんの役にも立ちません。

防大OBはよく「防大は学力偏差値では測れない」と語ることが多いですが、これは生き物として強くあらねば防大を卒業できないからです。
ボルネオのジャングルにおいて、フーリエ変換と英作文が得意でも、あまり役に立たない感じに似ています。
こうした過酷な環境で生き残っている防大生は非常に個性的な人が多く、「筋肉はパワーであり、パワーは生きる力」と言う筋肉至上主義者も一定数生息しています。
薩摩藩士は困ったときに「チェスト!」と叫んで気合を入れると聞きましたが、かつての防大はそれに近い文化でした。

■一般の自衛隊の文化と少し違う「防大ワールド」
防大では、連帯責任の大反省会、整理整頓不良で空飛ぶ魔法のマットレス、作業服がボロボロになるまでの全力の雑巾がけ、制服にシワを一つも残さないエクストリーム・アイロンなどを行うことになります。
防大生活では「団結力」「挫けない心」「手先の器用さ」「ユーモアのセンス」などの全ての要素が必要です。
新入生は押し寄せる不条理に立ち向かいながら強くなり、国家の一大事を救うヒーローに成長していきます。

ただ、試練があまりにも多いので、「まず1年間を生き残れ。話はそれからだ」という世界観なのです。
このように書くと「とんでもない学校だ!」と読者の皆様は思うかもしれませんが、卒業生である私も「やばい学校だなぁ」と思って4年間を過ごしていました。
しかし、防大生活には不思議な魔力があり、月に1〜2回ぐらいは「防大に入ってよかったなぁ」と思う瞬間がやってきます。卒業生が集まって飲み会をすると狂ったように防大の思い出を語り、昔を偲びます。

防大は陸海空3軍種の統合教育を行っており、文官の教官も多数在籍しているため、一般の自衛隊の文化と少し異なる「防大ワールド」があります。
この特徴が、防大の秘境感、そして多様性に溢れたガラパゴスな感じを醸し出しています(自衛隊内部でも防大卒は「やや独特な雰囲気がある」と言われることが多いです)。

■防大の生活はホグワーツ魔法学校に近い
防大は全寮制であり、学校の敷地内に居住区、講堂、実験室、グラウンド、食堂、浴場、医務室、売店、射撃場や訓練場もあります。柵と塀が校内に張り巡らされており、一般大学よりも「駐屯地」や「基地」に近い構成になっています。
校内には戦車や戦闘機、魚雷なども展示されていて、学生寮には小銃などを保管する武器庫なども存在し、ミリタリー要素で溢れています。
防大の学生は1800名程度であり、1学年は400〜500人ほどです。
全学年を1〜4大隊という編成に分けて寮が分類されます。
ハリー・ポッターでたとえるなら、ホグワーツ魔法学校の「グリフィンドール」「スリザリン」などの寮に所属している生徒それぞれが、自他の寮に誇りとライバル心を持っているように、防大も大隊ごとに伝統や文化がやや異なり、他大隊にはライバル心を持っている学生が多いです。

■筋肉と同期の団結で困難を乗り越える
私が在籍していたときは、ざっとこんな感じの特徴がありました。
・「お祭り大好き1大隊」(男子学生が多く、ノリのよい荒くれ者が多い)
・「お掃除大好き2大隊」(海上自衛隊の文化が強く、清掃や整理整頓に厳しい)
・「楽勝(※2)3大隊」(全体的に規則がゆるく、生活が厳しくないと言われている)
・「パレード4大隊」(観閲式パレード(※3)に対する情熱が強い)

ホグワーツ魔法学校では困難に直面すると魔法と友情で乗り越えますが、防大では筋肉と同期の団結で乗り越えます。
そのため、MP(マッスルポイント)が重要になります(MPがなくなると腕立て伏せができなくなります)。

各大隊には1〜4中隊があり、各中隊はフロアごとに分類され、100人規模の学生がいます。
これが防大における生活単位であり、全員の顔と名前が一致する最大の単位でもあります。

※1防大は横須賀市小原台にあるため、関係者は防大のことを「小原台」と呼称することが多い。防大卒に「小原台はどうだった?」と聞くと、間違いなく「関係者か?」と思われる。なお、住所は走水。

※2防大生は「楽勝」という言葉をよく使う。楽勝とは「ゆるい、簡単」という意味。

※3正装をし、小銃を持って行うパレード訓練。入校式や開校記念祭などで見ることができる。学生からは不人気。

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ぱやぱやくん 元陸上自衛官
posted by 小だぬき at 15:00 | 神奈川 | Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

シニア狙う「電話使った特殊詐欺」その驚く手口

シニア狙う「電話使った特殊詐欺」その驚く手口
国や大手キャリアの強化対策で詐欺撲滅なるか
松原 治雄 : トビラシステムズ株式会社 取締役 技術部長
2023/07/29 東洋経済オンライン

「ダウンロード開始押したらいいです。『はい』を押したらいいです」
「問題解決するために遠隔操作が必要なんです!」
「コンビニに行って2万5000円のGoogle playカードを買ってきてください!」
「私の時間を無駄にしないでください!」
「お客様、頭はないんですか?」

インターネットを利用していたら突然、パソコンの画面に「ウイルスに感染しました」と警告が出てしまった。
表示された、某大手ソフトウェア会社を名乗るサポートの電話番号に慌ててかけてみると、カタコトの日本語を喋る女性が出た。
彼女はパソコンを遠隔操作しようと執拗に迫ったり、プリペイドカードを購入させようとしたり、そして最後は激しく罵倒してきた――。

いまだに「オレオレ詐欺」被害は増えている
この驚くようなやり取りは、迷惑電話をはじめとするセキュリティ領域のシステム開発を担うトビラシステムズ株式会社が、同社のYouTubeチャンネルで公開した動画(「【詐欺音声】サポート詐欺の番号に電話をかけると何が起こるか調査してみたら、最終的に詐欺師に怒られた!」)によるもの。
80万回再生(2023年7月27日現在)と大きな反響を呼んでいる。
動画に出てくるのは、昨今急増している「サポート詐欺」と呼ばれる特殊詐欺で、利用者をニセのサポート電話番号に誘導し、パソコンを遠隔操作しているフリをしながら不要なソフトの購入やサポートのための契約をさせて、お金を巻き上げる手口だ。
高齢者を中心に被害者は後を絶たない。

筆者は、当社で迷惑電話や迷惑SMSの対策サービスを提供している。セキュリティの観点特殊詐欺はなかなか減らない。
警察庁によると、2022年の被害額は、前年より88億円増の370億円で、8年ぶりの増加に転じた。
例えば、2000年代初頭から話題になった、家族を装う電話をかけてくる「オレオレ詐欺」。
すでに全国での啓発活動が活発に行われ、いまどきこんな電話に引っかかる人がいるわけがないと思う人も多いだろう。
しかし、2022年のオレオレ詐欺被害額は129億円(警察庁公表)と、特殊詐欺被害額の中で最も大きな割合を占め、いまだ被害者が減ることはない。

また、昨今は広域強盗事件、いわゆる「ルフィ事件」も問題となった。
ルフィ事件の指示役は複数の特殊詐欺にも関与していたという。
最近の犯行グループは、まず「アポ電」を仕掛けることがある。
ターゲットの在宅状況や資産を確認するため事前に電話でコンタクトを取るものだ。
例えば、「犯行グループの名簿にあなたの名前が載っている」などと不安をあおり、「今、自宅に家族はいるか?」など、在宅状況や資産状況、家族構成などを言葉巧みに聞き出すのである。
金銭を要求される電話ではないため、うっかり回答してしまう人もいる。

電話口で安易に応じるのは、もちろん危険だ。

犯罪に使われる「電話番号」の変化
電話が、特殊詐欺や強盗等の犯行のきっかけとなることは多い。
当社で、月毎に新たに出現する迷惑電話番号の動向について調査したところ、電話の発信元に変化が見られた。
これまでは固定電話番号(03などいわゆる0ABJ番号)が多かったが、2022年9月ごろから徐々に050番号が増えはじめ、その割合が逆転したのだ。
2023年4月に新たに出現した迷惑電話番号は、固定電話番号よりも050番号が約9倍多かった。
また、調査対象の050番号の中には、サポート詐欺や架空料金請求詐欺などに使用された可能性があるものも多数見つかっている。
未納料金があるなどとウソをつき金を騙し取る「架空料金請求詐欺」は、警察庁調べで、2023年5月末時点で2055件が認知されており、前年同期比2倍となっている。

当社の調査員が、架空料金請求詐欺の番号へ騙されたふりをして応答調査を行った際には(「【詐欺音声】不審なSMSの番号に電話してみたら驚くほど丁寧な説明で架空料金を請求された!」)、某大手企業のカスタマーセンターを名乗る男性が「有料サイトで未納料金が29万円」「今支払えば国の救済制度で95%返金する」「守秘義務があるので誰にも相談しないで」など、言葉巧みに誘導してきた。
050番号のIP電話は、電話回線や設置工事が不要で、申し込みからわずか数日で使用できる。
加えて固定電話より安価な料金で使用できることから、利用者を大幅に伸ばしてきた。
これらのコスト面や利便性のメリットから、050番号はビジネスの開業時や新規事業開始時、事務所の移転拡張時などに広く活用されている。
また、IP電話専用アプリをダウンロードしたスマホやパソコンで使用できることから、コロナ禍でテレワークを始めた企業が在宅勤務者に付与するなど、本来はとても利便性の高い電話番号だ。

一方で、その利便性を逆手に取り、特殊詐欺などの犯罪にも悪用されるケースが散見されるようになっているのも事実だ。
現行の携帯電話不正利用防止法では、050のIP電話は、契約時の本人確認義務の対象外となっていることが1つの大きな要因だろう。
手軽に番号が取得でき、安価であることは、大きなメリットである反面、「使い捨ての番号」として犯行に使用されやすくもなってしまう。
詐欺などの悪用防止のため、本人確認をしっかり行っている事業者も、もちろんいる。
しかし、中には特殊詐欺グループに050番号を大量に卸している悪質な番号再販事業者も存在しているようだ。
過去にはそういった悪質な事業者が逮捕された事例もある。

「050番号」の規制で犯罪を未然に防げるか
このような状況を受け、行政機関や民間団体なども対策に動き出している。
総務省は6月に、これまで契約時の本人確認義務がなかった050番号のIP電話について、本人確認を義務化する方針を発表した。
まずはこの方針に対する国民からの意見を受け付け、その後、法律施行規則の改正に動き出す予定だ。
また、行政機関だけでなく、民間団体も対策に力を注いでいる。

IP電話サービス提供事業者が複数加盟する「⼀般社団法⼈⽇本ユニファイド通信事業者協会(略称:JUSA)」は、総務省や警察庁と連携して、特殊詐欺などの犯罪に悪用された番号を停止する「番号停止スキーム」を2022年12月から運用している。 この「番号停止スキーム」について、2023年6月には、悪⽤された電話番号だけでなく、悪⽤した契約者や再販事業者がすでに保有する電話番号(在庫番号)を⼀括停止できる仕組みも追加された。
これは、特殊詐欺に対する小さくない抑止力となるはずだ。

行政機関や民間団体により、特殊詐欺防止の取り組みは進んでいるとはいえ、犯行グループは、つねにあの手この手で抜け道を見つけ出し、ターゲットを狙っている。
私たち1人ひとりが、日頃から防犯を心がけることも忘れてはならない。

対策として、不審な電話に出ない・応じないということは大前提である。
知らない番号からの着信は、番号をネットで検索してみて、発信元に心当たりがあるか確認してみるのもいいだろう。
不審な電話を自動で遮断する対策もある。
例えば大手携帯キャリアでいうと、NTTドコモは「あんしんセキュリティ」、ソフトバンクは「迷惑電話ブロック」、KDDIは「迷惑メッセージ・電話ブロック」という、セキュリティオプションがある。
これらを利用すると、データベースに登録のある迷惑電話が自動的に警告される仕組みだ。
特に1人暮しの高齢者などは、「アポ電」相手につい話し込んでしまうことや、不審な電話を受けても相談する相手がいないこともある。

テクノロジーをうまく活用し、危険な電話を察知することは有用な対策だといえる。
ただ、新たな電話番号も日々発行されている。
すべてを遮断できるわけではないということを念頭に置き、気を緩めてはならない。
詐欺にあった人のほとんどが「自分だけは大丈夫」と考えていたと話すという。
自分は大丈夫と過信せず、テクノロジーもうまく活用して自分自身や家族を守っていきたい。
それでも詐欺に遭ってしまったら… 冒頭に出たサポート詐欺については、そもそも警告メッセージに慌てない心構えも必要だ。

インターネットを利用していて、突然パソコンの画面に「ウイルスに感染しました」といった警告画面が出てしまったら、慌ててクリックしてしまうなど、その先に進んではいけない。
「タスクマネージャー」を立ち上げて、警告が出ているブラウザを選択し、「タスクの終了」をクリックすれば画面は消える。
また、万が一、何らかのソフトウェアをインストールしてしまった場合は、まずは外部からパソコン内部を見られたり操作されるのを防ぐため、インターネットを切断していただきたい。
そのうえで、ソフトウェアのアンインストール(削除)をしたほうがいいだろう(手順は以下の画像の通り)。

超高齢化社会となった日本では、高齢者を狙う特殊詐欺や犯罪が深刻になっている。
行政機関や通信事業者、民間団体などの対策推進や、テクノロジーの活用、個々人での意識の底上げなど、全方位的な対策が求められるだろう。
犯罪被害者が減ることを期待したい。
       (構成:井澤 梓)
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする