2023年07月31日

少子化直撃・ハラスメント問題で自衛官採用に逆風…最前線の「士」、予定の6割しか採用できず

少子化直撃・ハラスメント問題で自衛官採用に逆風…最前線の「士」、予定の6割しか採用できず
7/30(日) 読売新聞

ハラスメント対策、処遇改善急ぐ
 自衛官の採用活動に逆風が吹いている。
少子化の直撃を受けているうえ、ハラスメント問題に揺れた昨年度は、最前線で活動する自衛官を予定の6割しか採用できなかった。
人材確保のあり方を議論してきた防衛省の検討会は今月、ハラスメントの根絶や処遇の改善など抜本的な改革を提言しており、自衛隊は対応を急ぐ。(狩野洋平)

「天王山」の夏
真夏の日差しが照りつける東京・秋葉原。
21日昼、制服姿の高校生に自衛官が駆け寄った。
「自衛隊です。全国でイベントをします。ぜひ来てください」。
大粒の汗を流しながらチラシを渡していった。

 防衛省は8月末まで、各地の施設で艦艇の一般公開や部隊の見学など約600の交流イベントを開く。
これまでにない規模のキャンペーンで、この日は錦糸町や水道橋などの繁華街でもPRに励んだ。
 来春卒業予定の高校生に対する採用広報活動が解禁されたのは1日だ。

陸上幕僚監部募集・援護課の松元三展1佐は「この夏が採用活動の天王山という気持ちで臨んでいる。
自衛隊の勤務環境や雰囲気、成長する過程を懸命に伝え、まずは興味を持ってもらいたい」と強調する。

人がいなくて−
 強引な海洋進出を強める中国を念頭に、政府は2023〜27年度の防衛費を現行の1・5倍にあたる43兆円に引き上げる方針だ。
 しかし防衛省の検討会は12日に公表した報告書でこう指摘した。

 <どれだけ高度な装備品をそろえようと、運用する人材の確保がままならなければ、防衛力を発揮することはできない>
定員約24万7000人の自衛官は、〈1〉最前線で活動する「士」〈2〉部隊の中核となる「曹」〈3〉それらを指揮する「幹部」などに分かれている。特に採用が難航しているのが士の階級だ。

 防衛省によると、士の採用率は過去10年間、8割から10割で推移してきた。
しかし、昨年度は1万6225人の必要人員に対し、確保できたのは1万120人で、採用率は62%に急落した。
士階級の中でも、2〜3年間の任期で活動する「自衛官候補生」の採用率は43%にとどまる。

 背景には、コロナ禍で採用を控えていた企業の求人が回復したことや、ロシアのウクライナ侵略を目の当たりにし、子どもを入隊させることをためらう親が増えたことがあるという。
陸自の元女性自衛官が性暴力を受けた問題が発覚し、同省が全隊員に特別防衛監察を行う事態となったことも影響したとみられる。
 今年度に入っても、自衛官候補生による銃撃事件が起きるなど、採用活動には逆風が吹いている。

 防衛省幹部は「士階級は体力のある若者が中心で、それが集まらなければ、自衛隊の力が徐々にそがれてしまう」と危惧する。

Z世代
 採用の対象となる18〜32歳はネットに親しんだ「Z世代」だ。
防衛省は勤務環境の改善を急いでいる。
 数か月に及ぶ長期航海の任務がある海自は、乗員がスマホで家族らと連絡できるように、米宇宙企業スペースXの衛星通信網「スターリンク」の高速通信サービスの導入を検討している。
現在も限られた区画で無線LANが提供されているが、通信速度は遅く、若い隊員らに不満が根強いためだ。

 議論は髪形に関するルールにも及ぶ。
例えば空自では、男性隊員に側頭部を短く刈り上げる「ツーブロック」にすることを禁じている。
陸自では女性隊員に「ショートカットが望ましい」とし、ポニーテールにしないように求めている。
主に制帽や装備を身につける際に妨げとならないように設けた規則という。

 しかし、検討会の報告書は自衛隊内のルールについて、「国民の信頼が損なわれない範囲で、合理性に乏しいものは変更・廃止すべきだ」と指摘した。
 報告書は、自衛官の給与・手当の増額などにも言及し、ハラスメントについては「一切許容しない組織環境が不可欠」と強調した。
同省はこうした提言を踏まえ、改革を進める。

「人材採りこぼさぬように」
 厚生労働省が公表している昨年の出生者数は過去最低の77万人で、200万人前後だった1970年代と比べ半数以下となっている。
少子化が進む中で、将来の募集環境はさらに厳しくなることが予想される。
 同志社大の太田肇教授(組織論)は「Z世代は縦の人間関係を避ける傾向があり、組織内でハラスメントが横行していれば敏感に感じ取る。
少子化が進んでも、自衛官の仕事にやりがいを見いだし、目指す若者はいるはずだ。
こうした人材を採りこぼさないように、ネットを駆使し、組織改革も進める必要がある」と指摘する。
posted by 小だぬき at 14:00 | 神奈川 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

糖質制限ダイエットをしても効果が出ない理由 糖質の抑えすぎにも注意を

糖質制限ダイエットをしても効果が出ない理由 
糖質の抑えすぎにも注意を
2023年07月30日 PRESIDENT Online

糖質制限ダイエットを始めたのに、体重が落ちない、痩せられないダイエッターは多い。
その原因はどこにあるのか。
糖尿病専門医であり女子栄養大学名誉教授の田中明さんは、「ごはんを減らすのはむしろ太る要因になる。そればかりか、極端な糖質制限が不調や将来の病気にもつながる」という――。

■糖質が余ると中性脂肪となり肥満や脂肪肝に
手軽で始めやすいダイエットとして定番化した糖質制限。
糖質は、主にごはんやパン、麺などの炭水化物に多く含まれる栄養素で、活動するためのエネルギー源になっています。
私たちが生きるために欠かせない栄養素といえる糖質ですが、摂りすぎて余ると中性脂肪となり体内に蓄積。
脂肪細胞に蓄えられることで、体重が増えたりぜい肉に変わったりして肥満につながります。
また、脂肪細胞だけでなく、中性脂肪が肝臓に蓄積すると脂肪肝に。
まるでフォアグラのように脂肪が溜まった肝臓になり、進行すると肝硬変や肝臓がんのリスクが高まります。

お酒を飲まない女性でも、糖質の摂りすぎによって脂肪肝になることもあるのです。
そのため糖質を抑えた食生活を送ることは、ダイエットや体型維持につながるとされ、多くの人が糖質制限を取り入れていることでしょう。
しかし中には、「糖質制限をしているのに痩せられない」という人がいます。
ダイエットが成功しない原因は“過剰すぎる制限”にあるかもしれません。

■極端な糖質制限ダイエットは逆効果に
糖質制限の効果が表れない人の特徴として、糖質を抑えすぎていることが挙げられます。
実は「炭水化物=太る」は間違い。
ごはんの食べすぎは当然太りますが、減らしすぎても太るのです。
「炭水化物はひと口だけ」「ごはんは一切食べない」など、糖質を極限まで減らした食事をしていませんか。
このような人に共通するのが、間食の増加です。
糖質を減らしすぎると、食事による満足感が低下します。
小腹が減ったり、口寂しい感じがしたりして、3食以外のおやつについ手が伸びていることも。

一回の食事から摂る糖質量は少なくても、間食が増えるとその分全体の摂取カロリーが上がり、痩せられない要因になります。
次に考えられるのが、糖質の高いイモ類や野菜類の摂取です。
ジャガイモ、サツマイモ、サトイモといったイモ類、カボチャやトウモロコシ、レンコンといった野菜類は、食物繊維は豊富ですが糖質は高く、ダイエットには注意が必要。
ジャガイモを使ったポテトサラダや、カボチャの煮物など、健康にいいと思って食べたおかずが実は糖質過多だった、ということも。

糖質制限をする際は、このような野菜類にも気をつけましょう。
意外と盲点なのが、果物です。
ビタミンやミネラルが豊富な果物は毎日摂りたい食材ではありますが、糖質が多いため食べすぎると中性脂肪が上がりやすくなります。
「ヘルシーだから」といって、果物を山盛り食べていると糖質制限の効果が半減するといえるでしょう。

また、糖質制限でリバウンドを繰り返しているという人も多いのではないでしょうか。
極端な糖質制限は一時的には有効かもしれません。
しかしがまんしすぎることでストレスとなり、結果的に過食に走ってしまうパターンも多いのです。

■炭水化物抜きの食生活が続くと筋力低下やむくみに
過剰な糖質制限がダイエットの逆効果になることを解説しました。
そのほかにも体にとってさまざまな弊害が起こることがわかっています。
その一つが筋力の低下。
食事で摂る糖質が減ると、タンパク質がその代わりをせざるを得ない状況に。
本来タンパク質は、筋肉やあらゆる細胞をつくる材料として働きますが、糖質の働きであるエネルギー源として使われてしまうのです。
この状況が長く続くことで、年齢問わず筋力の低下につながっていきます。

タンパク質がエネルギー源に使われることで、血中では低タンパク質血症も起こります。
タンパク質濃度が薄くなると、それを補正しようとして血中から水を排出して濃縮。
排出された水は体の組織に溜まり、むくみが発生しやすくなります。

また、糖質を抑える代わりに、大量に肉を食べている人もいますが、塩分摂取量が増えて高血圧になったり、タンパク質の代謝に関わる腎臓にも負担がかかります。
肉の大量摂取は、同時に脂質量も増えるため、高コレステロールのリスクも高まります。
さらに、アルコールを飲む人は尿酸値にも影響するなど、過剰な糖質制限によって食事のバランスが極端に偏ることは、長い目で見ると健康に悪影響といえるのです。

■糖質は3食摂ったほうが実は痩せる
筋力を落とさずに健康的に痩せるためには、糖質は3食摂ることが大切です。
糖質制限という言葉と真逆のことをいうようですが、糖質はむしろ食べたほうが理想的な体重、体型に近づきやすいのです。タンパク質がしっかり筋肉の材料になり、代謝のいい体をキープできるからです。

食事は1日3食摂り、1食の中で炭水化物は50〜60%、タンパク質は15〜20%、脂質は20〜25%の割合にするのが、糖質制限の黄金バランスです。
めざすのは、ごはん、汁物、肉もしくは魚、野菜を使った副菜がセットになった定食スタイル。
ごはんは、1食につき茶わんにさらっと1杯盛った程度の「150g」が適量。
白米でも問題ありませんが、ミネラルや食物繊維が豊富な麦ごはんや雑穀米に置き換えるのもおすすめです。

果物の1日の目安量は、リンゴなら2分の1個、バナナは1本、スイカは2切れ、ブドウは10粒程度です。これ以上食べると糖質が多くなるので注意を。
副菜や付け合わせには、糖質やカロリーが低い、野菜や海藻、キノコ、こんにゃくを料理にたくさん使うのが効果的です。

糖質制限をしても痩せられない、もしくはリバウンドを繰り返しているという人ほど、食事による満足度が不足しています。これらは糖質を抑えながらダイエットできる優秀な食材といえます。

■糖質で太らないためには食べる時間にも注意を
糖質はしっかり摂ったほうがいいと述べましたが、一つだけ注意したいのが、食べる時間帯です。
「何をどの時間で食べるか」を研究した時間栄養学によると、22時〜深夜2時までは、糖質が吸収され中性脂肪が増えやすくなる時間帯といわれています。
活動量が減る夜の時間帯は、糖質を摂らないようにしましょう。
どうしても仕事で食事が遅くなる場合は、炭水化物とそのほかのおかずや汁物を分けて食べる「分食」を。
例えば17〜18時頃の早い時間帯に炭水化物を食べて、仕事が終わってからそれ以外を食べる工夫をすると、糖質の吸収を抑えることができ、ダイエットに効果的です。
糖質は、タンパク質や脂質とともに3大栄養素の一つで、体にとってなくてはならないものです。
極端にカットすれば一時的には痩せますが、長続きはしません。
痩せるか太るかを決めるのは、糖質の摂り方が重要。
適正な量を正しいタイミングで摂り、健康的に痩せる体をつくりましょう。

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田中 明(たなか・あきら)
糖尿病専門医/女子栄養大学名誉教授
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする