2023年08月01日

「家族と同居」より「独居老人」のほうが幸せなうえボケない…和田秀樹「老後の"住まい"の最終結論」

「家族と同居」より「独居老人」のほうが幸せなうえボケない…和田秀樹「老後の"住まい"の最終結論」
2023年07月31日 PRESIDENT Online

高齢者が健康に暮らすには、どんな生活スタイルがいいか。
医師の和田秀樹さんは「家族と暮らせない老後は可哀想という固定観念は捨てるべきだ。
高齢者の独り暮らしには、自分に居心地のいい空間をつくりあげ、近所の人と交流しながら暮らせるというメリットがある。そのうえ独り暮らしの高齢者のほうが認知症になりにくいし、進行も遅い」という――。
※本稿は、和田秀樹『頭がいい人、悪い人の健康法』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

■薬を飲まないと本当に病気になるのか
たとえば、血圧が高い患者さんに、医師はよくこんな言い方で薬を飲ませようとします。
「ちゃんと薬を飲まないと脳卒中になるよ。脳卒中で死ぬよ」
「飲んでたら大丈夫だからね」
脅したりなだめたりしながら、きちんと服用させようとするのですが、こうした言葉にどのくらい意味があるのでしょうか。

アメリカで、血圧が160mmHgくらいで、薬を飲んだ人と飲まない人を集めて6年後の状態を調べた有名な研究があります。かなり大規模な調査で、エビデンスのしっかりした研究とされるものです。
これによると、薬を飲まない人は10パーセントが脳卒中になっていましたが、飲んだ人では6パーセントでした。
この数字から「有効である」とされたわけですが、医師がもし、「飲まないと脳卒中になるよ」と言っていたとしましょう。 薬を飲まない人の90パーセントは、脳卒中になっていないことになります。
飲まずに脳卒中になった10パーセントの人は、運が悪かった人といえそうです。

薬を飲むと、94パーセントは脳卒中にならないですみ、かかった人は6パーセントに減っていますが、薬を飲んでも脳卒中になって、もっと運の悪い人が6パーセントもいるのです。
飲まなくても90パーセントの人が脳卒中になっていないのですから、「飲まなかったら脳卒中になるよ」というのは詐欺商法に近いといってもいいでしょう。

また、飲んでいても6パーセントは脳卒中になるのですから、「飲んでいたら大丈夫」と言うのも同じく詐欺的といえるでしょう。
このくらいの数字で「有効である」と効果が認められているわけで、「薬を飲まず、かつ運の悪い人」との差がもっと小さい薬はいくらでもあります。
医師の“脅し”を鵜呑みにする必要はありません。

そもそも薬は、体調をよくするために飲むものです。
異常となった検査数値を正常に戻すために飲むものではありません。
処方された薬で、だるさやめまいといった症状があったら、遠慮せずに、医師にはっきり伝えましょう。

■検査データの「異常」の意味を知っておこう
健康診断や人間ドックの検査データには、基準値に正常とされる幅があり、「基準範囲」と呼ばれます。
この基準範囲は、1000人とか1万人とかの健常者の検査数値で、「分布の中央95パーセント区間」という意味です。
したがって、健康であっても5パーセントの人は、この基準範囲から外れることになります。
外れているからといって異常とはいえません。
いわば、あるグループの身長データを見て、95パーセントから外れる人――たとえば、身長178センチメートル以上と、167センチメートル以下は異常といっているようなものです。
検査データを判読するための目安にはなりますが、正常か異常かを判別することはできないのです。

95パーセントの人を「正常」とし、そこから高すぎたり、低すぎたりして外れた5パーセントを「異常」とした統計値にすぎません。
つまり、最大で、健康な100人のうち5人が「異常」となるわけです。
また、もともと健常者を集めた検査です。
「異常」でも病気ではありません。
しかも、若い人のデータがもとになっているので、高齢者は含まれていません。
高齢者の場合は、基準範囲からズレてくるのが当たり前です。

統計的な意味を考える「頭がいい人」は、数値に一喜一憂することはなさそうです。
でも、「頭が悪い人」は、範囲に収まってさえいれば健康にお墨付きが出たと考えて暴飲暴食をしたり、外れていれば必要以上に心配して、数値を正常にするために薬を飲んだりしがちです。
どんな薬でも、体に影響を与えるので、ある臓器の数値がよくなったからといって、健康になるとはかぎりません。
検査データの異常が持つ意味を正しく知っておかないと、無用の薬を飲んでかえって健康を損なうことになりかねません。

■独り暮らしだからといって孤独とはかぎらない
どんなものにもメリットとデメリットがあるので、それぞれの確率を考えて判断することになります。
端的なのは、薬を飲むか、飲まないかを考えるときです。
たとえば、副作用の確率が3パーセントといわれたとしましょう。
服用したことで、いまかかっている病気が悪化する確率とか、死亡率がどのくらい下がるのかを知りたくなりますよね。
病気予防のための薬なら、発症の確率がどのくらい下がるのかが問題でしょう。
当然、メリットとデメリットをそれぞれの確率から判断するはずです。

先述した血圧の薬を例に、脳卒中になる確率は、飲なかった場合は10パーセントだったものが、飲んだら6パーセントに下がるとしましょう。
もし、副作用が表れる確率が20パーセントあったとしたら、飲んだほうが損だと考えられるでしょう。
家族についても、メリットばかりではありません。
大家族で孫に囲まれて暮らすのが幸せというイメージを持つ人も多いかと思いますが、高齢者の自殺率は、独り暮らしの高齢者よりも、家族と同居する高齢者のほうが高いことが知られています。
また、福島県の調査では、独り暮らしの高齢者の自殺者は全体の5パーセント以下にすぎず、ほとんどが家族と同居していたことが明らかになっています。
その理由について、「介護や看護をさせて申し訳ない」「家族に迷惑をかけて心苦しい」といった心理状態なのではないかと推察されます。

独り暮らしの孤独からうつになる人はいるし、自殺する人もたしかにいます。でも、独り暮らしだからといって孤独とはかぎりません。
自分にとって居心地のいい空間をつくりあげ、近所の人と交流しながら暮らすのは、それはそれで満ち足りた毎日だといえます。
独り暮らしの高齢者のほうが認知症になりにくいし、進行も遅いのです。
現代では、むしろ理想的な姿なのかもしれません。
家族と暮らせない老後は可哀想という固定観念は捨てましょう。
家族との同居こそ、デメリットになっている場合があるのです。

■殺人事件1000件中5%は介護がきっかけ
在宅介護をしている家族にアンケートをとると、30〜35パーセントくらいの人が「虐待をした経験がある」と答えています。
具体的にどんなレベルの虐待なのかは不明ですが、言葉による虐待、叩く、つねるといったことが多いように思われます。
いまや、同じことを施設で行えばニュースになって、激しく批判されることは確実です。
それが家庭内ではかなりの頻度で起こっているわけです。

人間は心理的に疲弊すると、どんな行動をするかわかりません。
実際、“介護殺人”は、年間におよそ50件も起こっているのです。
統計上、日本では殺人事件が年間1000件を下回っているので、その5パーセントは介護がきっかけになっているのです。
いまだに高齢者を施設に入れることに対して、ひどく罪悪観を持つ人がいますが、自分を責める必要はないように思います。

単純なイメージでは独り暮らし=孤独で、子供や孫などの親族と離れて暮らすのは不幸に見えるかもしれませんが、同居のほうがかえって不幸だったりするわけです。
イメージではなく、数字で見て、同居と独り暮らしのどちらがいいかの判断が求められています。
高齢者はどちらが幸福になれるか、確率から考えてほしいと思います。

■後戻りができないと思い込みは頭を固くする
いま、日本では、お産で妊産婦が亡くなることはごく稀まれなことです。
2020年の出産10万例あたりの妊産婦死亡率は2.8でした。
この数字はきわめて低いだけに、妊産婦が死亡すると産婦人科医が訴えられるようになりました。
とはいえ、1960年代までは妊産婦死亡率は100を超えており、お産は命がけでした。
不幸なことですが、いまでもゼロにはならず、一定の確率で妊産婦の死亡は起こっています。
お産に関していえば、やはり一定の確率で障害児も生まれているのです。

確率は低いけれども、ゼロではないことはたくさんあります。
たとえば、街を歩いていて車に轢かれて死ぬ確率は、相当低いけれどもゼロではありません。
ただ、そんなことは起こらないと思っているから、高齢者が運転して死亡事故を起こすと大騒ぎをするのです。
運転者が誰であろうが、統計上、日本では1日に約10人が交通事故で亡くなっている(2021年調べ)のです。

都合の悪いことは起こらないと考えていると、リスクの確率を考えたうえでものごとを決定することができません。
当然、リスクへの対策も立てていないので、想定外のことが起こるとパニックになってしまいます。
東日本大震災における東京電力の原発事故も、今回のコロナ禍も、そうした思考が背景にありました。
別の言い方をすると、これは日本人にありがちな「頭の固さ」そのものです。
日本の場合、いったん決定したらなかなか変更しないし、変更したらもとに戻れないという感覚が強すぎるように思います。

政策でも何でも、ダメだったら戻ることができるという思考回路があればこそ、試行錯誤できるはずなのに、そう思えないから改革が進まないというところもあるのではないでしょうか。
うまくいかなかったら、柔軟にやり直せばいいのです。
少なくともいったん決めたことはずっと守りつづけないといけないという意固地さや、逆に、いったん変えたら後戻りができないと思い込む柔軟性を欠いた発想は、「頭がいい人」の頭を確実に悪くします。
確率の考え方を取り入れると、ものごとは起こるときには起こるのです。

リスクに対処することも必要だし、想定外のことが起こったとき、柔軟に対処することも織り込んでおくという姿勢を、「頭がいい人」に勧めたいのです。

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和田 秀樹(わだ・ひでき) 精神科医
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2023年08月02日

「親からもらった命を大切に」と言ってはいけない…自殺願望を打ち明けられたとき最もやってはいけないこと

「親からもらった命を大切に」と言ってはいけない…自殺願望を打ち明けられたとき最もやってはいけないこと
2023年08月02日 PRESIDENT Online

芸能人の自殺など、突然の訃報に「なぜあの人が」とショックを受ける事件は少なくない。
もし身近な人に「死にたい」と言われたら、どうすればいいのか。心理学者の末木新さんは「『死にたい』と打ち明けた人間が最も恐れるのは、意を決して行った重大な自己開示が軽く扱われること。
その気持ちに向き合うことは、打ち明けられた側にとってもしんどくて恐い。そんなとき、取ってはいけない対応を知っておこう」という――。
※本稿は、末木新『「死にたい」と言われたら 自殺の心理学』(ちくまプリマー新書)の一部を再編集したものです。

■自殺の3つの要因から危機介入の戦略を考える
それでは、実際に自分で自殺を防ぐことに挑戦してみようと思った場合に、どのようにすれば良いのでしょうか。
その場合には、自殺がなぜ起こるのかについて分かっていることから逆算して、要因となりうるものを一つずつ排除していけば良いということになります。
ここでは、具体的に、自殺の対人関係理論に沿って考えてみたいと思います。

自殺の対人関係理論とは、自殺潜在能力、所属感の減弱、負担感の知覚という3つの要因が重なった時に自殺の危険性が最大化すると考えるという理論でした。
自殺を予防したいのだとすれば、これらの要因をひとつずつ取り除き、3つが重ならないような状況を作れば良いということになります。
3つの要素をひとつずつ取り除くと書きましたが、優先順位があります。

3つの内、最も優先すべきなのはもちろん、自殺潜在能力への対応ということになります。
死にたいか否かに関わらず死んでしまったら生き返らせることはできないので、とにかくこの部分を優先するように考えるのは自然なことです。

■まずは用意したものを使えないように物理的介入をする
では、具体的にはどのようにすれば良いのでしょうか。
人間は自分の力だけで死ぬことは基本的にできませんので、自殺をする際には何らかの手段を用意する必要があります。
この手段を「物理的に」使えないようにすることによって(例:首を吊るために用意してあった縄をあずかる)致死的な自殺企図をできないようにするのが実施すべき第一の介入ということになります。

逆に言うと、これをやるために、「死にたい」と言われたら、「死ぬための手段は具体的に考えているのか? それはどの程度までちゃんと用意しているのか?」ということを聞く必要があるということです。
多くの人は人生において誰かにこんな質問をしたことがないはずですし、初めてこんな質問をする時にはためらいも生じるのではないかと思います。
変に具体的な手段について聞いたりすると、背中を押してしまうのではないかと不安になるのも、それほど不思議なことではありません。
しかし、このような質問をすることがネガティブな影響を持つ可能性は低く、こうした心配は杞憂(きゆう)に終わります。

というのも、「死にたい」と打ち明けた人間が最も恐れるのは、意を決して行った重大な自己開示が軽く扱われることだからです。
「もう具体的な方法を考えているのか?」という質問は、「死にたい」という自己開示を重く受け止め、本気で死を考えているのだと理解したからこそ出てくる質問です。
そのため、こうした質問が自殺のリスクを高めることにつながる可能性は低いというわけです。

■対話して引き留めるときにやってはいけない3つのこと
具体的な自殺企図の手段を物理的に撤去し、安全な環境を作ったら、次にやるべきことは所属感の減弱への対処となります。これは要するに、「死にたい」と打ち明けた人との関係性を密にし、対話を通じて心の絆を作り、孤独を癒すということです。

心の絆を作るためにやってはならないことは割と単純です。

1)話をそらさない
話をそらして「死にたい」という気持ちに向き合わないことは、最も避けるべきことです。
最も避けるべきことなのですが、最もやらかしてしまうポイントでもあります。
というのは、「死にたい」という気持ちに向き合うということは、向き合う(向き合わされる)側にとってもとてもしんどくて恐いことであり、できれば避けたいものだからです。
自分の対応によっては「死にたい」人が実際に死んでしまうかもしれないわけで、それはやはり我々にとってとても恐いことです。
話題をそらしたくなるのは、ある意味で自然な反応です。
しかし、打ち明けた側は、この人であればと思って打ち明けているわけですから、これぞと見込んだ人に話をそらされてしまえば、相当がっくりくるはずです。

2)相手を叱りつけ説教しない
また、当然のことながら、相手のことを批判して叱りつけたり(例:「そんなことは口に出すもんじゃない!」)、社会的・一般的な価値観を押し付けたり(例:「親からもらった命や身体は大切にするもんだ」)すれば、心の絆ができることはないでしょう。
こうした点は、自殺への危機介入というだけではなく、人間関係一般と共通する点であり、特段おかしなことはないでしょう。

3)無理に励まさない
また、これは難しいところですが、励ましたり激励することも、避けておいた方が無難かもしれません。
もちろん、励まされることによって元気になる人もいないことはありません。
とはいえ、自殺への危機介入の場合、すでに大いに頑張った末に死にたくなっていることがほとんどであり、頑張れと励まされても、これ以上は無理だと思う人が多く、逆効果になってしまうことが多いものです。

助言をすることも同様で、問題状況を解決するための助言やアドバイスは空疎に響くことも多く、当初は避けておいた方が無難です。
死にたい状況に追い込まれた人の置かれた環境は複雑で、簡単な解決策が見当たらない場合がほとんどであり、死にたいと言う前に本人なりに考えたさまざまな解決案がいろいろと試されているはずです。
そのような状況下で、安易な解決策を助言したところで、ほとんどの場合、「もうそんなことはとっくにやったよ」となってしまい、信頼を失う可能性が高くなります。

■否定も励ましもせず、どうやって話を聞けば良いのか
それでは、どのようにすればこのような「やってはいけないこと」を避けつつ、心の絆を作り、孤独感を癒すことができるでしょうか。

最も重要なことは、その人の死にたい気持ちに向き合い、話をじっくりと聞くということです。
そして、話の聞き方はおそらく、普段その人と接する感じで問題はないのだろうと思います。
死や自殺について話をするからといって、何か特別なことをする必要はありません。
普段の関係性で良いと書きましたが、もし話を聞くのが苦手だという意識があれば、以下のようなことを軽く意識してみてください。

相手の話を聞くときに大事なことは、何が起こっているのかという状況と、その時の本人の感情状態を理解し、こちらが理解したことを伝え返すことです。
それが、話を真剣に聞いてもらえているという感覚を生み出し、心の絆を作っていきます。
対話の際に、感情面の話が多く状況についての説明が苦手な人には、状況についての質問をときどきはさみながら話を聞くと良いでしょう。
状況の説明が多く感情面の説明が苦手な人には、「で、その時どう感じたの?」といった感じで感情面に焦点をあてた質問をはさみながら話を聞くと良いでしょう。

うまい返しが思い浮かばない時には、相手の言ったことに対してオウム返しをするのも良いですし、相手の話が分からない時には、「○○の部分が分からなかったんだけど、△△ということ?」みたいな感じで確認とも質問ともとれるような言葉をはさんでいくと良いでしょう。
また、言葉で理解したことを伝え返すだけではなく、表情や声のトーン、相槌など言葉以外のリアクションも大事です。

■沈黙は続く場合はそのまま同じ時空を共有するだけでいい
話を聞くと書きましたが、沈黙が続く場合にはそれを共有する(時空を共有する)だけでもOKです。
死にたい状況に追い込まれた人は、いつでもその人の状態を饒舌に話してくれるわけではありません。
場合によっては、「死にたい」以外にほとんど何も口にしないという状況もあるかもしれません。
そうした場合には無理に話をせず、沈黙を共有するだけでも絆を作る上ではプラスになります。
また、ぽつりぽつりとでも話をしてくれるのであれば、やはり沈黙を大事にし、返答をするにしてもゆっくりと返答をし、相手の発話を大事にすることが求められます。

沈黙が続くと場の雰囲気が悪く感じられ、そのことを恐れた話の聞き手がべらべらとしゃべったり、質問を連発したりすることがありますが、これは心の絆を作るという点で、上策ではありません。

■「そんな状況なら死にたいのも無理はない」と共感を示す
自殺への危機介入の際には、このように共感的に相手の話を聞くことが大事だということはよく言われることです。
実際にやったことのある人から良く出る質問に、「『死にたい』と言われたことについても共感しなければならないのか? そんなことをして死に向けて背中を押すことにならないのか?」というものがあります。
このように感じるときには、もしかすると、共感することと、肯定することを混同しているかもしれません。

大事なことは相手の言ったことを全て肯定して受け入れることではありません。
「死にたい」と言われて、それを肯定する必要はありません(ただし、それを否定する必要もありません)。
重要なことは、「死にたい」と感じる背景にある状況を理解し、そのような状況であれば「死にたい」と思うことも無理はないということに対して共感し、気持ちを分かち合うことです。

● 電話やSNSによる相談窓口の情報
・#いのちSOS(電話相談)
・チャイルドライン(電話相談)
・生きづらびっと(SNS相談)
・あなたのいばしょ(SNS相談)
・こころのほっとチャット(SNS相談)
・10代20代女性のLINE相談(SNS相談)

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末木 新(すえき・はじめ)
            和光大学現代人間学部教授
posted by 小だぬき at 10:17 | 神奈川 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年08月03日

ピンピンコロリは「最悪な死に方」である…高齢者医療のプロが「PPKを目指してはいけない」と訴えるワケ

ピンピンコロリは「最悪な死に方」である…高齢者医療のプロが「PPKを目指してはいけない」と訴えるワケ
2023年08月02日 PRESIDENT Online

■治療をせずに最後を迎える人は非常に少ない
外来診療をしていると、「要介護状態になりたくない」「他人の世話になってまで長生きしたくない」という声をよく聞きます。
とくに高齢の患者さんからは「もう十分生きた。早くお迎えが来てほしい。治療やリハビリなど無駄なことはもうたくさん」と言われることも日常です。
しかし、もし本当に「寝たきり」や「他人の世話になりたくない」というのがその人の最も重要視する希望であるならば、むしろ適切な治療やリハビリを行っておいたほうが得策ではないかと、そのような人に私は言うようにしています。
なぜなら人である以上、その状態を経ずに最期を迎えるケースは、じつは非常に少ないからです。

加齢・老化による生活機能低下は、個人差はあれ、すべての人が直面せざるを得ない問題であって、その自然の流れを力ずくで変えることは不可能です。
巷(ちまた)には「寝たきりにならないために」とか「認知症にならないために」という文言を掲げた書籍やネット記事が溢(あふ)れていますが、むしろこれらにたいする有効かつ決定的な手段や特効薬がいまだまったく存在しないゆえに、これらの言説が世に溢れているともいえるわけです。

これらの情報は、さも「特効薬」であるかのように見せかけた“毒にも薬にもならないサプリメント”のようなものであって、わざわざお金を払ってまで入手するほどのものではないともいえましょう。

■「ピンピンコロリ」は幸せな逝き方なのか?
もちろん、だからといって何もせずに「治療やリハビリなどしても仕方ない」などとお手上げのままそのときを待つわけではありません。
いかにその到来を先送りするか、そのときが到来してもいかに苦痛を最小限にしてより快適に過ごすか、ということに軸足を移して考え準備しておくことのほうが、より現実的であろうと思うのです。

高齢者の中には「できることなら死ぬ直前まで元気にしていて、苦しまずにコロッと」という、いわゆる「ピンピンコロリ」(PPK)を望む人はけっして少なくありませんし、人生100年時代といわれるようになって久しい昨今、PPKを「理想的な死」の代表格としてみなされることさえあるようです。
しかしこのPPK、すなわち徐々に生活機能の低下をきたすなどの要介護状態に至ることなく、いきなり人生の最期を迎えることになる「ピンピンコロリ」とは、本当に「幸せな逝き方」といえるのでしょうか。

もちろん死生観、何を幸せと考えるかは、個々人によって千差万別ですが、少なくともこのPPKが、じっさいどのような死に方なのかを理解していないと、「こんなはずではなかった」ということにもなりかねません。

本稿では、このPPKについて具体例を用いてシミュレーションし、将来の「理想的な死」を思考する上での材料として提供してみたいと思います。

以下の2つのケースを例に考えてみましょう。

■リタイア生活中に突然倒れ、心肺停止に
例1)
あなたは75歳。高血圧で薬は飲んでいますが、ほかに大きな病気もなく、なんら不自由なく暮らしています。
今も定年退職した会社に週に3回、参与という肩書で出勤、とくに重責を押しつけられるわけでもなく、後輩たちと談笑するだけでいくばくかの給与をもらい、退職金と年金で悠々自適の生活です。
妻には「俺は寝たきりになってまで生きていたくない。身体じゅうに点滴やら管を入れられて病院で最期を迎えるなんて絶対勘弁してほしい。自分で買ったこの家、住み慣れたこの家で家族みんなに看取られて、苦痛なくコロっと安らかに死ねれば他に望むことはない」と常々言っていました。
そんなある日、後輩たちと仕事帰りに軽く飲んで帰宅した玄関先で、急に胸が苦しくなって倒れこんでしまいました。
驚いた妻は救急車を呼び、そのまま救急病院へ運ばれましたが、到着時にはすでに心肺停止の状態。
心臓マッサージと人工呼吸器が取り付けられ、フルコード(※1)の救命処置が取られましたが、心拍は再開することなくそのまま救急室での死亡確認となりました。
※1:心肺停止等の場合にありとあらゆる救命処置を行うこと

■脳梗塞の治療をしたら容体が急変し…
例2)
あなたの母親は95歳。過去に軽い脳梗塞で投薬治療は受けていますが、麻痺もなく、認知症もなく、日常生活に必要な機能動作も保たれてれおり、平穏に暮らしていました。
そんなある日、あなたの妹とその息子が遊びに来て、みんなで夕食の食卓を楽しく囲んでいたところ、母親は急に目眩と吐き気を訴えはじめました。
すぐに救急車を呼ぼうとしたが、意識のある本人は「このまま家にいたい。死んでもいいから病院には絶対に行きたくない。延命治療はしてほしくない」と言い張ります。
しかし看護師である妹が、病院で診断だけでもつけてもらおうと説得、けっきょく救急搬送となりました。
病院では脳梗塞との診断でカテーテル治療を提案されたため、緊急の家族会議。「これまで元気だったのだからこの治療に賭けてみよう」と本人を説得して、緊急カテーテル治療を受けることとなりました。
しかし治療開始後すぐに容体が急変、主治医の判断で人工呼吸器が装着され、手術室から出てきたときには意識もない状態で、そのまま集中治療室へと運ばれていき、けっきょくその夜、息を引き取りました。

■「家のベッドで家族に看取られる」状況はまずない
これらが、現代のいわゆるPPKの例です。PPKに厳密な定義があるわけでもありませんし、個人個人でPPKの意味やとらえかたが異なるとは思いますが、直前まで元気にしていてコロっと死ぬというのは、これらの例のような、いわば予測され得なかった突然死ということになります。
つまり、その急変の瞬間を目撃、共有した人は100パーセント救急車を呼ぶなり、即座に救命救急処置を開始することになり、これらは通常避けられません。
逆に、現在の日本において、つい先ほどまで元気に話をしていた人の呼吸や心拍が急に止まっているのを確認したにもかかわらず、ベッドに寝かせたまま“平穏に看取る”という選択をした人は、なぜそのような対応をしたのか、なぜ救急車を呼ばなかったのか、厳しく問われるとともに、あらぬ疑いをかけられる危険性すらあるといえるでしょう。

これらのシミュレーションからいえることは、現在のわが国におけるPPKとは、住み慣れたわが家のベッドで家族に看取られて平穏な最期を迎えるのとはまったく真逆の環境で起きるということです。
もしかすると過去に行ったこともない病院の救急室、しかも家族の立ち入りを禁じられた冷たい救急室の中で、人工呼吸器をはじめとしたあらゆる装置につながれ、採血や点滴の針を四肢に刺され、心臓マッサージをされ……というフルコードの処置のあげくの果てに、人生で初めて会う人たちだけに囲まれて最期を迎えることになる可能性が極めて高いものである、という認識は持っておいたほうが良いでしょう。

■「家族に迷惑をかけたくない」と思うなら
このような「逝き方」は、たしかに何年も要介護状態となって家族に負担をかけるということはありませんが、まったくの覚悟もないままの突然の別れは、遺された人に大きな悲しみや戸惑いを与えることにもなるでしょう。
その意味では、むしろ「家族に迷惑をかけたくない」という考えのもとPPKを理想としている人こそ、これらの例のような突然死よりも、徐々に衰弱し要介護状態とはなってもできるだけ苦痛を伴わずに、家族とともに住み慣れた自宅で平穏な最期を迎えることのほうが、その理想により近いのではないかと私は思うのです。

もちろん本稿は、このような突然死をされた方について、不幸であるとか家族に負担をかけるとして批判するものではけっしてありません。
人は誰しも死を迎えることは避けられないという動かしがたい現実はあるものの、それがいつどのような形で訪れるのかは、誰にも制御できないということを踏まえた上で、さも「理想的な逝き方」であるかのように昨今思われているPPKとはいかなるものかということを、具体的に例示したにすぎません。

■寝たきりや認知症はそんなに悪いことなのか
さらにいえば、PPKを「理想的な逝き方」であるとの思考のなかに、ややもすると「要介護状態」や「認知症」で生きていくことを否定的にとらえる思考が含まれているとするならば、それには高齢者医療・在宅医療にかかわる医師として、非常に残念な気持ちを持たざるを得ないことを、多くの人に理解していただきたいのです。

昨今の少子高齢化、高齢者にかかる社会保障費の増大を懸念する声の高まりとともに、「高齢者は集団自決するのが唯一の解決策」と述べた経済学者の暴論も飛び出しました。
これらの「要介護状態」や「認知症」で生きていかざるを得ない人が、あたかも若者の足を引っ張る存在であるかのような言説がこの国の空気を支配していくことになれば、個々人で多様かつ自由であるべき「理想的な逝き方」さえもその空気に支配されてしまいかねません。

重要なのは「寝たきりにならないために」「認知症にならないために」ばかりに集中して対策することではなく、「寝たきりになっても」「認知症になっても」不安なく穏やかに最期を迎えたいとの希望を持つ人が安心して過ごせる社会を、いかに作っていくかということです。
そしてそのように高齢者が真に安心して生活できる社会であれば、「PPKは理想的な逝き方」などと、それほど言われることもないでしょう。

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木村 知(きむら・とも) 医師.医学博士、
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

救命救急医に聞いた「熱中症」の正しい知識。屋内でも対策しないと驚きの医療費になることも

救命救急医に聞いた「熱中症」の正しい知識。
屋内でも対策しないと驚きの医療費になることも
8/2(水) ESSE-online

どんどん暑さが増すこれからの季節に気をつけたいのが、ときには命まで脅かすこともある熱中症。
そこで、救命救急医・犬飼公一先生に、熱中症の基礎知識から、間違いがちな対策、さらに処置の方法まで教えてもらいました。

正しい熱中症対策はどっち?
基礎知識編
熱中症対策のために知っておきたい基礎知識をおさらいしましょう!

●熱中症になりやすい場所は「屋外」vs「家の中」
→風がとおらなかったり、熱がこもりがちな家の中の方がかかりやすい
発生場所でいちばん多いのは家の中で、その大半が65歳以上の高齢者。
そのほか、学校内などエアコンが適切に使用されていない屋内で多く発生しています。

●「気温が高い日」と「湿度が高い日」はどっちを注意すべき?
→気をつけるべきは湿度が高い日!
気温が低くても、湿度が高いと汗が蒸発しにくくなり、熱中症の危険が高まります。
過去には、気温11.7度(11月・埼玉県大宮市)でも発症した記録が残っているほど。

●熱中症で入院(1泊)するとかかる医療費は「6000円」vs「6万円」
→6万円かかることも!
 対策しておけば、高額な医療費がかからずすみます。
救急車で運ばれ、1泊入院をした場合の総医療費は約6万円で、もっと高くなるケースもあるので要注意。
公的医療保険による保障で自己負担額は一部となる

●熱中症になりやすいのは「身長が低い子ども」vs「身長が高い大人」
→地面からの輻射熱の影響を受けやすい身長が低い子どものほうが発生率が高い。
地面の温度は気温よりも高く、身長が低いと照り返しによる温度の影響を強く受けてしまいます。
また、子どもは体温調整が未発達のため、発症しやすい傾向に。

●年間の入院死亡率が高いのは「がん(大腸がん)」vs「熱中症」
→じつは熱中症の方が多いことも!
2018年の統計によると、熱中症の死亡者は1518人で、年間の入院死亡率は約4.7パーセント。
これはその年の大腸がんでの入院死亡率を上回る結果に。

熱中症は命の危険を脅かすことをぜひ認識し直してください。
posted by 小だぬき at 10:00 | 神奈川 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「兄が入浴中に突然亡くなった、それも夏に」危険なのは冬だけじゃない!夏の“突然死”

「兄が入浴中に突然亡くなった、それも夏に」
危険なのは冬だけじゃない!夏の“突然死”
8/2(水) 週刊女性PRIME

 突然死への注意が呼びかけられてきたのは、毎年冬のこと。
寒い廊下と暖かい部屋の行き来が心臓や血管に負担をかけ、心筋梗塞や脳梗塞、脳出血などが多くの人の生命を奪ってきた。

しかし、注意が必要なのは夏も変わらないという。

浴室で汗を洗い流すのが命に関わる
「義理の兄が入浴中、突然亡くなったんです、それも夏に。毎週のように行っていた草野球から元気に帰ってきた直後のことだったようで、泣きじゃくりながら姉が電話してきました。
お風呂での突然死は冬と思い込んでいたし、まだ60前なのにどうして、と本当に驚きました」(Aさん・50代・女性)

 日頃から健康状態には取りたてて問題などなかったような人が、わずか1時間ほどで命を落としてしまうことさえある突然死。
よく知られているのは、冬場のヒートショックだろう。
 急な気温の変化で血圧が乱高下するといわれれば、たしかに納得してしまう。
ところが、ただでさえ暑い季節、浴室で汗を洗い流すのが命に関わるとなれば話は別だ。

「冬場に突然死が多いのは間違いありません。
とはいえ、夏にもけっこう発生しています。
突然死の多くは心臓や脳の疾患によるものですが、夏季にはそれを引き起こす危険な条件がそろっているのです」
 こう語るのは、テレビの『主治医が見つかる診療所』でもおなじみの医師、秋津壽男先生だ。

危険な条件とは「脱水状態」や、その傾向。
汗をかきやすい季節だけに、知らず知らずのうちに、身体の水分が不足して命を奪ってしまう。
「脱水によって血液中の水分量が減ると、赤血球、白血球、血小板の割合が増え、いわゆる、血液がドロドロといわれる状態に。
ドロドロになった血液は、血栓を生じさせる危険性が高く、それが脳や心臓の血管に詰まってしまうと、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こしてしまうのです」(秋津先生、以下同)

 健康白書のような公的資料こそないが、1960年代〜2000年代の突然死のデータを見てみると、死因の半数以上は脳か心臓の疾患によるもの。
 脳・循環器系の診療科が同じころに調査したデータに注目してみれば、脳か循環器系が突然死の原因となったケースはなんと9割を超える。
水分不足が引き金となる夏の突然死で、注意が必要なのはやはり脳か心臓ということになってくる。

 実は脱水なんて無縁と思っている人こそ、「隠れ脱水」による突然死にあいやすい。
炎天下には出かけないし、エアコンを効かせた涼しい部屋にいれば人ごとだと聞き流してしまう人も多いだろう。
ところが、 「扇風機やエアコンの風に当たっていると気づきにくいのですが、乾燥した空気や風が汗を蒸発させてしまい、自覚がないまま、かなり脱水症状が進んでいるというケースもあるのです」

夏の突然死は「無自覚」や「過信」の部分も多い
 例えばこうした状態でお風呂に入ってしまうと、突然死の危険性は一気に高まる。
もともと血栓ができやすくなっていた血管に、冬場も血圧の乱高下を招いてきた「寒暖差」がさらなる追い打ちをかけるからだ。
 急激な温度変化が夏場にも起こる、といわれても、なかなか理解できないかもしれないが、寒暖差にさらされる状況は、意外と身近に潜んでいる。
熱いお風呂と冷水のシャワーの併用や、冷え切った部屋から高温多湿の浴室への移動などで、ほとんど自覚はなくても血圧は急変動している。

 気づかないまま起こっている脱水や急激な温度の変化。
ここまで説明してきたように、夏の突然死は「無自覚」や「過信」によって引き起こされている部分も多い。
もともと突然死は、健康に自信がある人、例えば若いころと変わらないと頑張る男性のほうが、リスクが高まるといわれてきた。
 もちろん、健康に懸念がある人は当然だが、一般的には健康そうに見える痩せ型も実は危ない。
「痩せぎみの高齢者は脱水症状になりやすいから」と秋津先生。
「動脈硬化が進んでいる人と危険度は変わりません」という話もある。

 突然死につながりやすい動脈硬化リスクの要素を挙げるなら、
・年齢(50代以上)
・遺伝といった属性、
・たばこ
・お酒
・ストレスといった生活習慣、
それらが招く高脂血症・高血圧・糖尿病といった生活習慣病、痩せすぎ(脱水症状)に太りすぎ(血管に負担)と、ほとんどの人が当てはまりそうな項目が並ぶ。
「遺伝や年齢などは、防ぎようのない条件に思えるかもしれませんが、突然死の可能性がなきにしもあらずと自覚することで、対策も重ねていけるのです」

 もちろん心筋梗塞や脳梗塞の前兆として見られることもある「狭心症」や「一過性脳虚血発作(TIA)」が起こった人も、突然死へのカウントダウンが始まっている証拠だと強く警戒を促す。
 「狭心症」には手のひらで示せるような広い範囲にわたる胸の重苦しさが、「TIA」には目の前の暗い感じや手のしびれ、手を振ったときの違和感などが生じる。
 これらの症状は、血管が詰まりかけても辛うじて流れて難を逃れているだけ。
もし完全に詰まれば、突然死を招く心筋梗塞・脳梗塞を発症してしまうのだ。

「すぐ」水を飲むのが重要
 こうした要素に当てはまったり、もしなにか前兆に思い当たったら、危険が迫っていると自覚し、すぐにでも対策を始めたいところ。
では夏の突然死を予防するためには、どうすればいいのだろうか?
「まずできるのは、脱水を防ぐこと。すぐに水を飲む。そして、もし身体に異変を感じたときは何をおいてもいったん休息。そして病院に行くことです」

 水分といってもさまざまだが、秋津先生は水道水でも構わないので「すぐ」がポイントだという。
さらに贅沢をいえば甘くないイオン飲料がいい。
 汗と共に失われたミネラルやカリウムといった電解質を配合したイオン飲料は、体液に近い状態に調整されているために、飲料水よりも体内に吸収されやすいというメリットがある。
さらに、水のとりすぎが原因で頭痛や吐き気を生じさせる低ナトリウム血症も防いでくれる優れものなのだ。

 胸の痛みや手のしびれなど、ほんのちょっとでもおかしいと感じるようなら、水分だけでは不十分で、いったん休むことがポイント。
死に直結する心筋梗塞や脳梗塞を起こす直前にまで進んでいる可能性のある状態から、引き戻してくれることもある。
 もちろん、日頃から突然死などとは無縁の生活が送れればそれに越したことはない。

そもそも予防は最良の防衛策なのだ。
食生活に気を配ったり、定期的に人間ドックに行って生活習慣が身体に悪影響を与えていないかを確認したり……。
 ただでさえ亜熱帯並みといわれる日本の夏。
暑さで汗ばむだけでも耐えがたいのに、突然の苦しさに襲われかねない不調の種など、できるだけ早いうちに摘み取ってしまいたい。
取材・文/オフィス三銃士

秋津壽男先生
 内科医。秋津医院院長
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2023年08月04日

大量退校、玉砕美談…防衛大で今何が起きているか 教授が実名告発

大量退校、玉砕美談…防衛大で今何が起きているか 教授が実名告発
2023/8/3 毎日新聞

 新入生の大量退校、多発する不祥事やハラスメント、極右論者の浸透……。どこの話かと思えば、これが日本の安全保障の要、幹部自衛官を育てる防衛大学校(神奈川県横須賀市)で起きていることだというから衝撃である。
防大の等松春夫教授が実名で告発した。
防大で何が起きているのか?【構成・吉井理記】

新1年生の約20%が退学  
――毎日新聞のインタビューに先立ち、集英社オンライン上で論考「危機に瀕する防衛大学校の教育」を公表しました。
学校運営の硬直化や教官・教育の質の低下が多くの退学者や不祥事を生んでいる、日本の安全保障にとって危機的だ、と警鐘を鳴らすものです。

なぜ実名で告発を?
◆いくつか理由はありますが、ここ3年ほど、アジア・太平洋戦争中の最悪の戦いの一つ「インパール作戦」の戦史の英訳の仕事をしていたことがあります。  

――1944年に旧日本陸軍が北ビルマとインド東部で展開した作戦ですね。
苛酷な戦場の実情を無視した軍司令官の作戦指導が、膨大な犠牲者を生みました。

◆英訳の過程で資料を大量に読み直したのですが、きちんとしたリーダーがいないことがどれほど悲惨な結果を招くか、改めて痛感したのです。
防大は将来の自衛隊のリーダーを育てる学校ですが、防大の現状を思うと、自衛隊もいずれ同じことをやりかねない、と思いました。
これまでも内部で問題提起をしてきましたが、改善の兆しはない。
まともな組織になってほしい、という願いで世論に訴えました。  

――最大の問題は少なからぬ学生が防大や自衛隊に背を向けてしまっていることだ、と。どういうことですか?  

◆少し説明しましょう。
防大を卒業した学生は、自衛官に任官し、さらに陸海空の各幹部候補生学校で学んで部隊に配属されます。
毎年、メディアは自衛官にならなかった卒業生を「任官辞退者」と報道しますが、卒業段階の数字だけ取り上げてもあまり意味はない。

 ――昨年3月の卒業生479人のうち72人が任官を辞退し、自衛隊を去ったことは驚きをもって報じられましたが……。  

◆それも大変な問題ですが、実情はもっと深刻だからです。
昨年で言えば、4月入学の新1年生488人のうち、1年以内に約20%、100人近くが退学してしまったのです。
2、3年生で退学する学生も相当いますし、任官して幹部候補生学校に進んでから間もなく退校する者も少なくありません。  
――読売新聞3月2日付朝刊では「今の若者は打たれ弱いから」などと理由が説明されていますね。

◆とんでもない。防大の現役教官として申し上げるが、それは違う。
体力もあって努力もいとわず、良きリーダーや指揮官になるだろう、と思われる若者ほど幻滅して辞めるのです。
私も彼らの悩みをじかに聞いてきました。
そんな人材が辞めるのは自衛隊にとって由々しき事態です。

――それほど熱意のある学生がなぜ退学を?  

◆大別して二つの理由がある。
まず「学生舎」の問題です。
学生は学生舎と呼ばれる建物で1〜4年生の8人が1部屋で暮らし、上級生が下級生の生活を指導(学生間指導)します。
善良な上級生なら良いですが、悪質な3、4年生のいる部屋もある。
いじめて退学させたり、「指導」と称して私用を言いつけたりする上級生もいますし、2020年には上級生が下級生を巻き込んでトランプ賭博事件を起こし、警務隊が動く事態になりました。
13年には学生たちがウソの負傷申告をして保険金を不当に得た事件も発覚しています。  

――賭博は違法行為です。上級生に逆らえないのですか。  

◆学生間指導のあしき結果で、下級生は上級生に無条件で従う、という「空気」が醸成されてしまうのです。
これは本来はおかしい。
幹部自衛官は上官の誤りを制止するのも責務です。
そのまともな感覚を持ち続ける学生ほどあきれて辞めてしまう。
学年別の部屋にする、学生間指導をやめるなど、学生舎のあり方の見直しは必須です。

衝撃の「エア通訳」  
――ではもう一つの理由とは?

◆防衛学教育学群の一部の教官と科目の質があまりに低く、学生の期待に応えられないのです。
防大は「日本で唯一防衛学を学べる学校」であることを強調しています。
実際、私も面接で志望者から「防衛学を学びたい」という声をたびたび聞いてきました。
防衛学とは諸外国でいえば軍事科学であり、体系性を持った学問です。ですが……。  

――現実は違う?.  

◆同群の教官40人のうち専任は10人で、残り30人は自衛隊のローテーション人事で制服自衛官が務めます。
中には優秀で熱心な教官もいますが、そうでない人も少なくなく、真に防衛学に値する授業が少ないのです。
例えば「リーダーシップ教育」と称して、旧日本軍の将軍や提督を持ち出し、彼らがどう部下を統率したか、あるいはいかに勇敢に戦って玉砕したか、といった精神論のような話を聞かせる。
科学的に安全保障や軍事を考える防衛学と呼べるシロモノではない。
学生から何度も「あんな授業で良いのか」という声を聞きました。  

――旧軍の偉人談を聞かされても……。  

◆さらにあきれるのは、教官が偏った思想の論者らを自分の授業の枠内でゲストスピーカーとして招き、講演をさせることです。
私が実際に見たケースで言えば、最晩年の英国人ジャーナリスト、故ヘンリー・ストークス氏(22年死去)がいます。
彼を招いたのは海自3佐の准教授です。

――補足すると、若い頃は三島由紀夫と親交を持ち、「ニューヨーク・タイムズ」東京支局長を務めた著名ジャーナリストですね。
晩年は極右論壇でもてはやされ「大東亜戦争は日本が勝った」といった著書で「大東亜戦争肯定論」を唱えました。
陰謀論や歴史修正主義的な本もある。
ただし、息子のハリー杉山さんがNHKの番組などで公表したところによると、12年ごろからパーキンソン病と認知症を患っていたそうです。  

◆問題の講演を聞いていて、驚きと不審の念を持ちました。
というのは、ストークス氏には「通訳」と称する男性が付き添ってきた。
ストークス氏は英語を中心にスピーチをして、男性が「通訳」するのですが、私の記憶では、ストークス氏が英語で話していないことまで、日本語で「通訳」していたのです。  

――「エア通訳」ですか。すごい光景ですね。  

◆それでも防大自体では学校としてトンデモ論者を招いたことがないのでまだましですが、幹部候補生学校や幹部学校など他の教育機関では、組織として公式に招いてしまっているんです。  

――20年には陸自の幹部候補生学校が、日本の近隣国について「韓国はゆすりたかりの名人」「韓国の民度が低いというのは単なる事実」といった言動を著書などで繰り返してきた作家の竹田恒泰氏に講演させましたね。  

◆防大時代の教え子で、幹部候補生学校に在学していた若い自衛官からこんな話を聞きました。
竹田氏の講演を聞かされ、感想文の提出を求められた教え子は、竹田氏の言ったことのどこが間違いかを列挙して提出した。後で教官に「失礼だ。書き直せ」と命じられたそうです。  

――失礼って……。自衛隊のエリート養成機関で、そんな講演がまかり通るのはなぜでしょう。  

◆防大でも、文民の教官は一般大学同様の審査を経て採用されますが、多くの自衛官教官は前述の通り、自衛隊のローテーション人事です。
学校教育とは全く別のことをしていた人でも、防大では1佐は教授、2・3佐は准教授という肩書がつく。
修士や博士の学位を持ち、論文や研究書を書いて指導や研究に熱心な教官もいますが、多くはそうした学位もめぼしい論文も指導経験もなく、教員の適性を欠いていると言わざるを得ない。  

――それで教えることができるのですか。  

◆代々受け継がれてきたマニュアル本に沿って授業をするんです。
だから空虚な紋切り型の学習に陥りやすく、中には現在は否定された古い学説を用いて教える人もいる。
のみならず、偏った言説に染まって問題のある論者を招く教官も出てくるのです。  

――そんな授業や学生舎内の理不尽さに学生は幻滅して退学してしまうわけですね。
なぜ優れた人を教官にしないのでしょうか。  

◆一般企業も同じかもしれませんが、自衛隊でも一線部隊が花形で、後方の教育部門は二流の配置だ、という意識があります。
何より一線で能力的にも人間的にも秀でていると評される自衛官は一線が手放さない。
人も金も限られる自衛隊は、第一線に優れた人材を集中させたい、と考える傾向もあります。  

――ならば防大に来る自衛官は?  

◆パワハラや服務に問題のある人が少なくないのが実情です。
一線部隊に問題のある人物を置いておくと、大きな事故やトラブルを招きかねない。
だから仮に不祥事があっても、学内で封じ込められる防大はそんな人物の都合の良い異動先になるのです。
実際、パワハラで知られ、在米大使館の防衛駐在官時代に部下を蹴っとばすという暴行事件を起こし、「ケリー将軍」というあだ名をつけられた陸将が教授に収まりました。
19年には前任地で金銭トラブルを起こした海自3佐の准教授が防大で多数の学生を巻き込む補助金詐取事件を起こし、懲戒免職になっています。  

――問題は根深い。一朝一夕で改善とはいきませんね。  

◆防衛省も自衛隊も、幹部自衛官の教育の何たるかを真剣に考えていないと言わざるを得ません。
でもいくつか手はある。
防大に来る自衛官の人事権は学校長ではなく、自衛隊の幕僚監部が持っています。
教官としての能力や適性に疑問があっても、学校長は実際問題としてその人事を拒めません。
学校運営を担う事務官ら官僚の人事権の大部分も、やはり防衛省の内局が握っている。  

――人事は組織の基本ですが……。  

◆防大に送られてくる官僚の中には、本省への復帰のため、自分の在任中の「事なかれ」ばかりを考えるような人もいます。これでは長期的な視野で、防大の教育はどうあるべきかを考えることはできません。
最低でも校長に人事の協議権は必要です。
自衛官教官も学識や適性を外部機関がチェックして、クリアした人だけを教官にするなどのフィルタリングは欠かせません。  
   *      *  
等松教授の指摘に対し、防大の久保文明校長は「過去に教官・学生によってあってはならないことが起きたことは事実」だが、現在はさまざまな努力によって改善してきているとして、「過去の事案で現在の防大をも象徴するかのように決めつけるのは公正さに欠ける」などとする反論を公表している。

とうまつ・はるお
防大人文社会科学群国際関係学科教授。
専門は国際関係史
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怖い心理テストで衝動性診断

怖い心理テストで衝動性診断
2023年08月03日 シンリ

心理テストの質問
今回の心理テストでは「衝動性」がテーマ。
人間の行動は理性と感情の二つの要素から成り立っています。
しかし、特定の状況下では、感情が理性を上回り、我々は予想外の、時には反社会的な行動に走ることもあります。
これを「衝動性」と言います。
あなたは自分自身の行動を理性的にコントロールできるか、それとも衝動に任せて行動するか、どちらが多いでしょうか。

【質問】
初めての場所で道に迷い、仕事の約束に遅刻しそうになったあなた。
見知らぬ大きなビルの階段を駆け上がっていたところ、上から何かが転がってきました。
それは明らかに誰かが落としたものでしたが、幸い、あなたには当たらず、足元付近で止まりました。
さて、あなたはどうしますか?
A〜Dの選択肢の中から選んでください。

A.足元に止まったものを拾って、手に持っておく。
B.慌てずにその場を離れ、誰かが取りに来るのを待つ。
C.素早くその物を階段の端に寄せて、邪魔にならないようにする。
D.踏んづけて、階段から転がって行くままにする。

心理テストの診断結果

Aを選んだあなたは……「衝動的な行動に走る可能性:低い」
あなたは他人への配慮が深く、自身の行動に対して思慮深い判断をすることができる人です。
この特性は、誰かが困っていたら、まっさきに助けるために駆け付けようとする姿勢を反映しています。
落とし物を拾って持つという行動は、一見無意味な行為に見えますが、他人の為に時間を割くという配慮の要る行為なのです。
これにより、あなたが無意識にでも他人を尊重し、社会的な行動規範を守ろうとする強い意志があることがわかります。
しかしながら、あなたの思慮深さは、自己犠牲につながる可能性もあります。
特に、他人を助けるためには自己の利益や安全を二の次にしてしまう傾向があります。
あなたは他人のニーズを自分のニーズよりも優先し、これにより衝動的な行動を抑制する能力を持っているのです。
しかし、自分自身のニーズも大切にするというバランスは必要です。
自己犠牲を避けるための方法も学ぶと良いでしょう。

Bを選んだあなたは……「衝動的な行動に走る可能性:ゼロ」
あなたの特性は冷静さと観察力にあります。
それにより対象や状況を客観的に捉える力があるのです。
そのため、衝動的な行動に走ることはほとんどありません。
落とし物を無視するという選択は、自分が何か行動してもさほど事態は変わらないだろうと予想される限り、介入せず状況を見守ろうとするあなたの姿勢を示しています。
この観察者的な立場は、一貫して自己をコントロールする強い能力を持つことを表しています。
また、だいたいの場合、この立場を保持することは賢い選択なのです。
しかしながら、この冷静さは極端になると他人から理解されにくいという側面もあります。
冷静に物事を見るあなたの姿勢が、他人からは無関心や無感動と誤解される可能性もあるのです。
よって、状況や関係性によっては、感情的な反応や参加も適切な時もあります。
あなたの冷静さと客観性は大変価値ある性質ですが、柔軟さも併せ持つことで更なる理解と共感を築くことが可能となります。

Cを選んだあなたは……「衝動的な行動に走る可能性:中」
あなたの行動パターンは迅速な判断と直感的な行動力に特徴づけられます。
何か問題や困難が生じたとき、あなたはすぐに対応策を見つけて、それを実行に移す傾向があります。
落とし物を自分で拾うという選択は、問題に対して即座に行動を起こすあなたの積極的な姿勢を示しています。
これらの特質は、多くの場面で高く評価されるもので、特に緊急事態や困難な状況での迅速な対応力が求められる時には、あなたの行動力は極めて有効であると言えるでしょう。
しかしながら、あなたの迅速な行動力は、場合によっては他人を無視したり、自分の行動を過度に優先することにつながる可能性もあります。
また、その結果、衝動的な行動に走ることがあるかもしれません。
一方で、この素早い行動力は問題解決力の高さを示しており、適切なバランスを保つことができれば、あなたの行動力は困難な状況における強い味方となります。 そのため、自身の行動は他人にどんな影響を与えるのか?と考えることを習慣づけ、一呼吸置いてから動くことを覚えると、より良い結果を生むでしょう。

Dを選んだあなたは……「衝動的な行動に走る可能性:高い」
あなたの選択は、一見すると自己中心的に見えるかもしれません。
時間や利益の最適化を追求するあなたは、自分の目的を達成するために、時として他人の物をないがしろにしてしまう選択をすることもあります。
これは、自己の欲求や目的を強く持ち、それを優先する傾向があることを示しています。
この行動パターンは、自己確立という視点から見れば、自分の意志をしっかりと持つことができ、強固な自我を形成する上で必要な特質と言えます。
しかし、あまりに自己中心的になると、他人への思いやりや社会的なルールを無視する可能性があるため、衝動的な行動に走る可能性が高いとも言えます。
そのため、自己の欲求を満たす行動をとる際には、他人の感情や立場を考慮するよう努めることが非常に重要です。
また、社会的なルールや倫理観に基づいて自身の行動を適度に抑えることで、自己中心的な視点を健全な自己確立へと繋げることが可能です。
あなたの行動は自己を強く主張するものですが、それを適度にコントロールすることで、周囲との調和を保つことができるでしょう。

       ライター : シンリ編集長
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2023年08月05日

「夏バテしやすい人」に共通する特徴&生活習慣4つ.。予防するための6つのポイント

「夏バテしやすい人」に共通する特徴&生活習慣4つ、予防するための6つのポイント
2023年08月04日 オトナンサー

夏になると「毎年、夏バテしてしまう」という人もいると思います。
夏バテしやすい人に共通する生活習慣とはどのようなものなのか、循環器内科の専門医に聞きました。

夏バテしやすい人には「共通点」が…?
 厳しい暑さが続くと、懸念されるのが「夏バテ」。
「毎年、夏バテしてしまう」という人もいると思いますが、暑さにバテやすい人には、共通する特徴や生活習慣がみられるようです。
「夏バテしやすい人」の共通点とは、どのようなものなのでしょうか。循環器内科専門医で、医療法人社団正恵会(東京都豊島区)理事長の藤井崇博さんに聞きました。

■汗腺の機能は年齢とともに低下
Q.「夏バテしやすい人」にみられる特徴や生活習慣には、どのようなものがありますか。

藤井さん
「いわゆる『夏バテ』の症状としては、『体のだるさ』『食欲がない』『胃腸の調子が悪い』『よく眠れない』『頭痛』『やる気の低下』などが挙げられ、こうした症状が出る人が多いかと思います。
夏バテの原因となり得る生活習慣には、主に次の4つが考えられます」

【高温多湿な環境、屋内と屋外の温度差】
高温多湿な外の環境や、室内と室外の気温差が大きい環境で過ごすことが多いと、体温調節のため、自律神経に大きく負荷がかかってバランスが崩れます。
その結果、さまざまな体調不良を招きます。
自律神経の乱れは、夏バテの主な原因といえるでしょう。
また暑いとき、人間の体は汗が蒸発することで体温を下げ、調節しています。
しかし、高温多湿な環境では汗の蒸発が邪魔され、体の中に熱がこもりやすくなります。
そのため、体の熱っぽさや頭痛、だるさなどの症状が起こると考えられます。

【冷たい物の取り過ぎ】
暑い時期は、冷たい飲み物やアイスクリームなどをたくさん飲んだり食べたりする人も多いと思います。
しかし、冷たいものを食べ過ぎて胃腸を冷やしてしまうと、胃腸の働きが低下して食欲がなくなったり、胃もたれなど胃腸の症状を招いたりすることがあります。

【水分不足】
高温多湿な環境では、過剰に汗をかくこともあるでしょう。
汗を多くかくと、体内の水分や電解質が失われます
適切な水分補給ができていないと脱水症状が起こり、だるさや熱っぽさといった体調不良を招いてしまう可能性があります。

【睡眠不足】
この季節は、暑さのせいで夜中に目が覚めてしまったり、寝つきが悪くなったりして睡眠不足に陥りやすいもの。
睡眠不足の人は、自律神経の不調を来しやすくなります。

Q.「夏バテしやすい人」が、夏バテをしないようにするためにはどうすればいいですか。

藤井さん
「夏バテを予防するには、次の6つのポイントに注意しましょう。
もし、症状が1週間以上も持続する場合や、どんどん症状が悪くなる場合、新たに症状が出現する場合などは医療機関を受診し、医師の診察を受けるようにしてください」

【温度差に注意する】
室内と室外の気温差が大きいと、自律神経に負荷がかかります。
室内では過剰に冷やさないように着る物で調節したり、屋外でもなるべく涼しく過ごせるように工夫したりするなど、気温差を意識しましょう。

【高温多湿な場所で長時間過ごすことを避ける】
屋外の他、屋内であっても、じっとしていても汗が出るような環境であれば、エアコンなどを使って温度・湿度を調節するようにしてください。
夏は、エアコンを25〜26度に設定し、湿度は60%以下を保つようにして、扇風機との併用がお勧めです。
熱帯夜の日は、一晩中エアコンをつけておいても構いません。

【栄養バランスの取れた食事を意識する】
夏は食欲が落ちたり、炭水化物に偏った食事が多くなったりしがちです。
必要な栄養素が不足する恐れがあるので、夏場はいつも以上にバランスのよい食事を意識しましょう。
特に、ビタミンB1は積極的に摂取したいところです。
ビタミンB1が不足すると、疲労感を感じやすくなってしまうためです。
豚肉やウナギ、大豆製品など、ビタミンB1を多く含む食材を意識的に取り入れましょう。

【電解質をしっかり取る】
汗をたくさんかくと、ナトリウムやカリウムといった電解質が不足しやすくなります。
電解質には、体の機能を維持・調節するという重要な役割がありますが、体内で生成できないため、食事から摂取しなくてはいけません。
電解質を多く含む野菜や果物を、積極的に取り入れましょう。
脱水が疑われる場合は、水分だけでなく電解質を補給する必要があるので、経口補水液を摂取してください。
スポーツドリンクでもいいですが、経口補水液に比べて電解質が少なく、糖質も多いので要注意です。

【有酸素運動】
汗腺の機能は年齢とともに低下しやすくなるため、発汗機能を高めるために、有酸素運動を取り入れることをお勧めします。高い気温によって汗をかくのではなく、適度な運動で“自ら汗をかく”ことが大切なので、自然な発汗を促してくれる有酸素運動が適しているといえます。
さらに、運動による疲労は、睡眠にもよい効果をもたらしてくれることが期待できます。
お勧めの有酸素運動は、ジョギングやウオーキング、ヨガ、水泳、サイクリングなどです。
休憩を含め、1回につき合計20〜30分程度の運動時間を目安にするとよいでしょう。
軽く汗ばむ程度が理想的です。
熱中症対策に、水分補給や電解質補給も早めに行ってください。

【質のよい睡眠】
睡眠不足も体調不良の一因です。寝苦しい日でも快適な睡眠を取るための対策として、夏でも入浴時は湯船につかりましょう。
湯船につかることで血行が改善されるとともに、副交感神経が優位になるため、心身がリラックスして眠りやすい状態になるためです。また、睡眠の質を維持するためにも、エアコンで室温管理し、眠りやすい環境を整えることも大切です。

      オトナンサー編集部

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2023年08月06日

【医師が教える】 スポーツドリンクや経口補水液が 熱中症予防に“NG”なワケ

【医師が教える】
スポーツドリンクや経口補水液が 熱中症予防に“NG”なワケ
2023年08月05日 ダイヤモンドオンライン

TBS系『金スマ 〜中居正広の金曜日のスマイルたちへ〜』で「番組史上最も楽して痩せる食事術」として紹介され、爆発的な反響をみせた『内臓脂肪がストン!と落ちる食事術』(ダイヤモンド社)。

美味しいものをお腹いっぱい食べて、なんならお酒も飲めるのに、運動なしでも痩せられるという驚きの食事術。
この食事術を、やはり運動なしで半年間実践して10kg痩せた経験があり、現在70代にして20代の頃の体重をキープしている著者・江部康二医師が、もう2度と太らない医学的に正しいダイエット法を伝授!
ひもじくなるようなカロリー制限は一切ナシ。
お腹いっぱい食べていいし、筋トレもジョギングもしなくていい。 その体脂肪、運動ナシで落とす方法を教えましょう!
※本稿は、『内臓脂肪がストン!と落ちる食事術』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。

■死と隣り合わせの熱中症
【前回】からの続き 日本はどうやらすっかり亜熱帯化したようで、真夏には35度を超える猛暑日も増えてきました。
そうなると心配になるのが熱中症です。
消防庁は、猛暑だった2018年8月の熱中症による救急搬送者数は全国で3万410人に上り、統計を取り始めた08年以降8月としては過去最高だったと発表しました。
搬送直後に20人の死亡が確認されています。

■家の中でも熱中症に注意
熱中症は体液の不足で起きる障害、体温上昇で起こる障害の総称です。
熱中症の4割は住宅で生じており、その大半を占めているのは高齢者です。
体液が不足して脱水症になると、熱中症に陥りやすくなります。
脱水症になりかけていても、本人も周囲も気づかない隠れ脱水という状態もあります。
65歳以上のおよそ4割に隠れ脱水の恐れがあるという報告もあります。

■スポーツドリンクや経口補水液が熱中症予防にNGなワケ
高齢者が隠れ脱水や熱中症になりやすいのは、体液をためておくタンクの役割を果たす筋肉が少ないのに加えて、喉の渇きにも鈍感になっているためです。
熱中症が気になる季節になると、スポーツドリンクや経口補水液の宣伝が増えてきます。
こうした飲料は糖質をたくさん含みますからNGですし、そもそも隠れ脱水を防ぐために、糖質は必要ではありません。
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2023年08月07日

「老後に不幸にならない人」に共通する、たった1つのインフレ対抗法

「老後に不幸にならない人」に共通する、たった1つのインフレ対抗法
2023年08月06日 ダイヤモンドオンライン

日経平均がバブル後最高値を更新した。
だが、「将来のお金の問題が不安だ」「投資が大切だと漠然とわかっているが、なかなか行動に踏み切れない」
「貯金や投資を始めてはみたものの、自分の方法が正しいかどうか確信が持てない」
──そんな悩みを抱えていないだろうか? そんな人に朗報がある。

全世界350万部突破『サイコロジー・オブ・マネー』著者モーガン・ハウセルが「ニックのように、データの真の意味を理解できるデータサイエンティストでありながら、説得力のあるストーリーを語れる人はまずいない。
絶対読むべき一冊だ」。

全世界1000万部突破『Atomic Habits』著者ジェームズ・クリアーが「お金に関する価値ある知恵と実践的なアドバイスが満載」と強力ダブル推薦する注目書がついに日本上陸。
全米ベストセラー『JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則』だ。

全米屈指のデータサイエンティストによる、お金を貯め、富を築くための証明済の方法を初公開。
本稿では、本書から一部を抜粋・編集しながらたった1つのインフレ対抗法について見ていこう。
 私は本書でこう話した。  現代には、投資すべき確固たる理由がある。
 私たちが今すぐ投資をすべき3つの理由がある。
 今回は、「2」の続きを話そう。

■インフレに対抗するには?  インフレに対抗する効果的な方法がある
――そう、投資だ。
 投資資産は時間が経過しても価値を保ち、増やすことができるため、インフレの影響を打ち消せるのだ。
 たとえば、1926年1月から2020年12月にかけて1ドルを保有するとしよう。
 インフレに対抗するには、この1ドルを15ドルに増やさなければならない。
 米国債や米国株にこの1ドルを投資した場合、インフレの影響を打ち消せるだろうか?
 簡単にできる。
 1926年に1ドルを長期の米国債に投資した場合、2020年末には200ドルになっている(インフレ率の13倍)。
 同じく、1ドルを米国株全体に投資していたら、2020年末にはなんと1万937ドル(インフレ率の729倍)になっている!  このように、投資にはインフレの影響に負けずに資産を維持し、成長させる力がある。
これは、特に退職者にとっては重要だ。
 なぜなら、現役世代とは異なりインフレの恩恵を受けて高い賃金を得ることができず、インフレのために上昇していく物価に合わせてお金を使っていかざるをえないからだ。

■リタイアが近い人が知っておくべきこと
 労働収入のない退職者にとって、インフレに対抗する唯一の武器は投資資産を増やすこと。
リタイアが近い人は、特に留意すべきだ。
 現金保有にもそれなりのメリットはあるが(緊急時に対処しやすい、短期的にリスクを抑えられる等)、長期的にはインフレの影響をもろに被ってしまう。
 インフレの影響を最小限に抑えたい場合は、生活防衛資金以外のお金はすぐにでも投資に回すべきだ。
 それでもまだ投資をする気にならない人は、時間との戦いについてじっくり考えてみよう。
(本稿は『JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則』の一部を抜粋・編集したものです)
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2023年08月08日

’23平和考 78回目「原爆の日」 核なき世界へ思い新たに

’23平和考 78回目「原爆の日」 核なき世界へ思い新たに
2023/8 / 6 毎日新聞社説

 78年前の1945年8月6日、広島に原爆が投下された。
 今年5月に主要7カ国首脳会議(G7サミット)が広島で開かれたのは、記憶に新しい。
「原爆の日」にあたり、被爆者の思いを受け止め、核廃絶への歩みを確かなものにすべきだ。
 サミットでは、初めて「核軍縮」に焦点を当てた首脳声明「広島ビジョン」が発表された。

 「核兵器のない世界」を究極の目標に掲げながら、核兵器は「存在する限りにおいて、防衛目的のために役割を果たす」などと記した。
「核抑止論」を肯定する内容に、被爆者から反発の声が上がったのは当然だ。
原爆の日の式典で市長が読み上げる「平和宣言」について、被爆者団体から「核兵器は廃絶しかないと言い続けてきた」などの申し入れが相次いだ。
市は抑止論への批判を盛り込む方針だ。

厳しさ増す世界の情勢  
被爆者の願いとは裏腹に世界の情勢は厳しさを増している。
 ウクライナへの侵攻を続けるロシアは、公然と「核の威嚇」を繰り返す。
 前大統領のメドベージェフ安全保障会議副議長は「全ての戦争は即座に終わらせられる。
平和条約を結ぶか、米国が広島と長崎を破壊したのと同じことをするかだ」とまで発言した。

 北朝鮮も「自衛権の行使だ」として核・ミサイル開発を加速している。
 核軍縮などを議論する核拡散防止条約(NPT)再検討会議の準備委員会がウィーンで開かれている。

だが、ロシアによるベラルーシへの戦術核配備を巡って欧米との対立が深まり、NPT体制は揺らいでいる。
 また、一昨年発効した核兵器禁止条約の第2回締約国会議が11月に行われるが、核保有国は条約反対の姿勢を崩していない。
唯一の戦争被爆国の日本は、オブザーバー参加すら尻込みしたままだ。

 核戦争のリスクが増し、米誌が発表している人類滅亡までの「終末時計」は今年、47年の創設以来最も少ない「残り90秒」にセットされた。
 そうした中、改めて被爆地の発信力が注目されている。
 サミットで各国首脳が訪れた原爆資料館(広島平和記念資料館)は、焼け焦げた弁当箱、ボロボロになった三輪車など被爆の惨状を実物で示してきた。
被爆者一人一人を思い浮かべてもらえるよう、持ち主の名も記している。
 入館者は今年度、急増している。
4〜7月は昨年度の約28万人に対し、約66万人が訪れた。
過去最多となるペースだ。

 目に付くのは外国人の増加だ。
オバマ元米大統領の来訪が話題となった2016年度でも入館者に占める外国人の割合は2割程度だった。
今年度は4割に上る。
 世界的な旅行サイト「トリップアドバイザー」によると、同館は訪問希望地として以前から日本トップ級の人気があるが、今年4〜6月の海外からの閲覧数は前年比5倍前後に達している。
被爆地の発信力さらに  ヒロシマ・ナガサキで何が起きたかを世界に伝えてきた被爆者の活動が発信力を強め、世界の反核意識の高まりに貢献してきた。

 米国の20年の世論調査では、戦争終結のために原爆投下が正しかったと答える人の割合は、若い世代ほど少なかった。

 被爆地を発信地とする新たな動きもある。
 元国連事務次長や元オーストラリア外相、国内外の有識者が広島で核廃絶への道筋を議論する「ひろしまラウンドテーブル」が打ち出した取り組みが注目される。
 主要国が核軍縮についてどの程度約束を守ったか、義務を果たしたかを評価する報告書「ひろしま・ウォッチ」を来年度から発表するという。
 国によると、被爆者の平均年齢は今年3月末時点で85・01歳と高齢化が進む。
9日には長崎でも「原爆の日」を迎える。
「黒い雨」の被害者救済もまだ道半ばだ。

 サミットで各国首脳の案内役を務めた小倉桂子さん(86)は、その後も体験を語り続けている。
 「私たち被爆者の願いは、絶対に3度目の核兵器使用があってはならないということです」。
海外メディア向け講演で語気を強めた。
 こうした被爆者の声を伝え、「核なき世界」を目指す動きを広げていかなくてはならない。
それこそが日本の使命だ。
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日本人がやりがちな「寿命を縮めてしまう」NG行動とは?

日本人がやりがちな「
寿命を縮めてしまう」NG行動とは?
2023年08月07日 ダイヤモンドオンライン

「病気になりたくない」というのは、すべての人に共通する願いです。
しかし、病気にならないためにどんな行動をとるべきなのかは「よくわからない…」という方が多いのではないでしょうか。 そんななか、「科学的に正しい」健康習慣の身につけ方を明かした、公衆衛生学者・林英恵さんの最新刊『健康になる技術 大全』が話題を呼んでいます。
最先端のエビデンスをベースにした「健康に長生きする方法」を伝授する本書に、読者からは「健康関連本としてはブッチギリのベスト」「一家に1冊置いておくべき」と激推しの声が続々と届いています。

本稿では、本書より一部を抜粋・編集して、睡眠と健康の相関性についてご紹介します 。
監修:イチローカワチ(ハーバード公衆衛生大学院教授 元学部長)

■睡眠不足は心臓病・脳卒中のリスクにつながる
 日本は、国際的にも睡眠時間が短い国の1つです。
OECD(経済協力開発機構)の調査では、日本人の睡眠時間は7時間22分で加盟30ヶ国中、最下位でした。

 睡眠の専門家は、「寝ることは決して無駄な時間ではなく、食事や運動と同じくらい健康において重要なものである」と説いています。
睡眠に関する厚生労働省の指針では、年齢や季節でも変わるために一概に言うことは難しいものの、必要な睡眠時間は約6時間から8時間未満だと述べています。

 睡眠は、体の健康にとって非常に重要です。
寝ることで、起きている間に損なわれたものを修復、回復させる機能があるといわれています。
具体的には、寝ることで、心臓や血管、筋肉、細胞などの機能が修復されます。
睡眠不足は、心臓疾患、腎臓病、高血圧、糖尿病、脳卒中、体重増加、肥満のリスクにつながる可能性があると報告されています。
 ストレスホルモンに影響を与えるためストレスをより感じやすくなったり、免疫機能にも影響を与えたりもします
思春期や成長期においては、心身の発達や問題行動との関連が報告されています。

■「慢性的な睡眠不足」は寿命を縮める
 そして、慢性的な睡眠不足は、寿命をも短くしてしまう可能性があるようです。
睡眠時間は短すぎても長すぎても死亡率の増加との関連が見られました。

日本人を対象とした研究でも、睡眠時間が長いと、男女ともに全体的な死亡リスクが高くなることが報告されました。
 具体的には、睡眠時間が7時間のグループに比べて、睡眠時間が10時間以上は死亡リスクが男性で1.8倍、女性で1.7倍となりました。
どうしてこのように、睡眠時間が長いと死亡リスクが高いという結果になるのかメカニズムははっきりわかっていません。  この研究では、死亡になるような病気の可能性で睡眠時間が長くなることを除外する分析を行っていますが、睡眠時間が長い人は病気を持っている人が多く、より死亡に結びつきやすいことも可能性としてありえます。

 睡眠不足を長く続けると病気になりそうだ、というのは想像できるかもしれないのですが、実は、たった1日でも健康に直結するような結果も出ています。
例えば、睡眠時間が短かったり、睡眠の質が悪かったりした場合、次の日の血圧が上がる傾向が見られました。
1日の睡眠不足でも侮れないのです
(本稿は、林英恵著『健康になる技術 大全』より一部を抜粋・編集したものです)
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2023年08月09日

家のカギをかけたのか何度も確認してしまう…ジワジワと増えている「大人の発達障害」の典型的症状

家のカギをかけたのか何度も確認してしまう…ジワジワと増えている「大人の発達障害」の典型的症状
2023年08月06日 PRESIDENT Online
(初公開日:2023年2月20日)
ジワジワと増えている「大人の発達障害」とは、どんな症状があるのか。認知神経科学者の井手正和さんは、不安を振り払うために同じ行動を無意識に繰り返し、エスカレートさせてしまう傾向があると指摘する。
井手さんの著書『発達障害の人には世界がどう見えているのか』(SB新書)からお届けする――。
※本稿は、井手正和『発達障害の人には世界がどう見えるのか』(SB新書)の一部を再編集したものです。

■最新研究で見えてきた発達障害と不安障害の密接な関係
――大学生のJさん。ゼミの授業で研究発表することになり、迎えた当日。
教授:「では、次はJさん。お願いします」
Jさん:「はい……」
教授:「顔色がすぐれないようですが、大丈夫ですか?」
Jさん:「あ、はい……大丈夫です……」
教授:「では、始めてください」
Jさん:「……(無言)」(どうしよう……全員が私のこと見てる)
教授:「ん? どうしましたか?」
Jさん:「……(無言)」(みんな「お前なんかがうまく発表できるわけないだろ」って思ってるんじゃないかな……)
教授:「Jさん? Jさん?」(初めての体験でガチガチに緊張しているのかな? まあいい経験だよね)
Jさん:「……(無言)」(そうだよね……今までうまくいったことないしね。そんな私がみんなのようにうまくできるわけがない。どうせ今回も失敗するよね……)

――大学からいったん帰宅。
アルバイト先に向かうため、駅へと急ぐJさん。
Jさん:(あれ、そういえば家のカギって掛けたっけ?)
〜家に戻って確認する〜 Jさん:(掛けてたか……よかった。汗かいたから顔を洗ってから出かけよう)
〜再度出発するが〜
Jさん:(あ、そういえば顔を洗った後に蛇口は締めたかな? 家のカギもちゃんと掛けたかな? また心配になってきた) 〜再び家に戻る〜
Jさん:(掛けてるよね……)
〜駅に向かって出発する。
そのとき携帯電話が鳴る〜
Jさん:「店長すみません! あと15分で着きます。本当に、本当にすみません!」(いくら確認しても少し時間が経つと不安が襲ってくる……いったいどうすれば私は安心できるの?)

■ASD者5人のうち1〜2人は不安障害を併発
ASD者(自閉スペクトラム症)の中には不安障害に悩まされている人も多くいます。
不安障害は、社会不安性障害(周囲の注目が自分に集まるような状況で強い不安や恐怖、緊張を感じる)と強迫性障害(強迫観念が強迫行為を引き起こし、日常生活に影響が出てしまう)に大別できます。
この両方を併発している人も、一定数います。

ここでは、ASD者が抱える不安障害の実情と、それらを少しでも和らげるために周囲の人々ができることについて、解説していきます。
「ASD者は社会不安性障害や強迫性障害を併発しやすい」という研究結果があります。
2019年に発表された、デンマークの約3万人を対象とした人口統計データを用いた調査では、約20%の不安障害の併発率を示しています。
アメリカのケネディクリンガー研究所の准教授であるVasaたちが2014年に報告した調査なども考慮に入れると、約20〜40%、つまり「ASD者5人のうち1〜2人は不安障害を併発している可能性がある」ということです。
イギリスのブリストル大学の名誉アカデミッククリニカルフェローであるNimmo-Smithたちが2020年に報告した調査では、不安障害の中でも社会不安性障害や強迫性障害の発症割合が、定型発達者と比べて特に高いことが報告されています。

■同級生の輪から排除されてしまうのではないか…
1つめの社会不安性障害は、社会不安障害、社交不安障害とも呼ばれます。
周囲の注目が自分に集まるような状況で「何か失敗して恥をかくのではないか?」という強い不安や恐怖、緊張を感じることを指しています。

社会不安性障害のある1人の当事者の方に、ご自身がどんな場面で不安を感じるのかを尋ねました。
この方は、幼少期に海外に住んでいた経験があり、小学生の時に日本の学校に転校しました。
集団の中での協調性を重んじる文化の日本の学校の中で、自分だけ外れた行動をしないように大変な苦労を経験したことを語ってくれました。
最初は、同じクラスの人たちは、なにかしらコミュニケーションの訓練を受けているんだと思い、自分もそれを身につけるために、テレビを見て、人がどんな時に相槌を打ち、笑い、振り向くのかといったことを勉強したといいます。
そうして少しずつ自分をカモフラージュしていったそうです。
そうした行動は、自分が人と違う行動をとることで、同級生の輪から排除されてしまうのではないかという不安からとった行動だったといいます。
特に苦手としているのは、いわゆるスモールトークだと教えてくれました。
仕事などの具体的な内容について話すのは緊張しないものの、目的のないちょっとした会話をすることに大きな不安を感じてしまうそうです。

■嫌われることへの不安に敏感になる
当事者 例えば同世代の人と食事をする場面では、会話の輪に入っている空気を出さないといけない、目を見なければいけないなどといったたくさんの不安を抱えます。 こうした会話の場面では、自分が暗黙に想定している定型発達者の期待する返しを自分ができているかが気になり、あたかも狭い橋から落ちてしまわないようにバランスをとっているような感覚でいることを教えてくれました。
ずれた言動をして相手を怒らせてしまうのではないか、相手に不快感を与えてしまうのではないか、そんなたくさんの不安を抱えながら、何とか定型の集団から浮いた存在にならないように努力してきた様子を、この方との会話から深く理解しました。

「ASD者は社会的な情報に対して無関心」というイメージが根強いからでしょうか、社会不安性障害の高い割合を意外に感じる方もいるかもしれません。
しかし実際にはASD者は社会的な情報に鈍感なわけではなく、受け取った情報に対する反応の様式が定型発達者と異なることから来る失敗の経験の蓄積により、定型発達者よりも社会的な情報にナーバスになり、強い不安を持っている場合が多いと考えられます。

■日常生活に大きな影響を及ぼす強迫性障害
2つめの強迫性障害は、意志に反して頭に浮かんでしまった考えが頭から離れず(強迫観念)、その強迫観念で生まれた不安を振り払おうと何度も同じ行動を繰り返してしまう(強迫行為)ことで、日常生活に影響が出てしまう状態を指しています。

例えば、 「不潔に思い(強迫観念)、過剰に手を洗う(強迫行為)」
「戸締まりがしっかりできているか不安に思い(強迫観念)、何度も確認する(強迫行為)」
「手順どおりに物事を行わないと不吉なことが起きるという不安から(強迫観念)、常に同じ方法で仕事や家事をする(強迫行為)」
「同じ状態になっていないと不安という思いから(強迫観念)、物の配置・レイアウトにこだわる(強迫行為)」
などが挙げられます。

「不安を生じる事態を抑えられる」と学習した行動(=強迫行動)を無意識に繰り返すようになり、その行動が安定した日常生活を阻害するほどエスカレートしてしまうわけです。

■闘争か、逃走か、フリージングか
そもそも不安とは、危険が迫ったときに適切に緊張状態を高め、身を守るために起こる、生体としてはごく自然な反応です。 こうした場面では、自律神経の調節機能が働き、心拍数や脈拍や発汗の増進などが生じ、「闘争か逃走か(Fight or Flight)」と呼ばれる、自己防衛反応、つまり「危険となる対象に立ち向かうか、それとも逃げるか」のいずれかの行動をとりやすい状態がつくられます。
なお、「闘争か逃走か」の反応の他に、第三の反応として「フリージング(凍結する、固まる)」という反応も挙げられます。
これは危険に対して自己防衛反応をとることができない状態を意味します。
恐怖場面にさらされて何かしらの行動をとったものの、その行動が事態を好転させることに結びつかない経験を繰り返すと、「何をしても状況は変わらない」ことを学習することになります。

■恐怖や不安の表情が、不安をさらに高める
闘争、逃走、フリージング……不安への反応はさまざまですが、ASD者の中には不安障害を抱えている人が多くいます。
では、ASD者が不安を高めてしまうのは、どんな状況なのでしょうか?

1つは、恐怖や不安の表情を目にしたときです。
例えば、恐怖の表情を浮かべた顔画像を提示すると、ASD者にさまざまな変化(縞模様のコントラストへの感度が上がる、わずかな角度のズレも認識できるようになるなど)が生じます。
このときfMRIで脳の活動を計測すると、恐怖や不安といったマイナスの情動に深く関わる脳の扁桃体(へんとうたい)の神経活動が強くなることが報告されています。
また、私たちの研究チームの研究では、視覚刺激の時間分解能も上がることがわかりました。
つまり、恐怖や不安の表情を目にすると、ASD者は刺激に対してさらに敏感な状態になるのです。

■しっかりと言葉で伝えることが重要
もう1つは、ストレスのかかる環境にいるときや、体調がすぐれないときです。
私たちのチームでは、恐怖の表情を浮かべた顔画像を提示したときに「時間分解能の向上の効果」と「不安の強さとの関係」について質問紙(状態・特性不安検査/STAI:State-Trait Anxiety Inventory)を用いて検討しました。

その結果、状態不安(注:この場合は実験場面での不安の高さを意味します)が高いASD者ほど、嫌悪顔画像の提示による時間分解能の向上の程度が大きい傾向が見られました。
ASD者から感覚過敏についてのさまざまな話を聞かせてもらいますが、 「会社や学校で人前に立って発表する前に感覚過敏が強まった」
「体調が悪いなあと感じていたときに感覚過敏が強まった」 という声が多いのです。

ですから、周囲にいる人たちがASD者の不安を高めないようにできることは、「不必要に表情を用いて相手への怒りや嫌悪を表さないようにすること」ではないかと思います。

ASD者は感情的な顔に対して不安を高めやすい一方で、表情の読み取りが苦手な傾向があるということも報告されています。感情的な表情によって漠然とした不安を高めているのかもしれません。
ASDの方に対して自分の意思を伝えなければならない状況では、しっかりと言葉で伝えた方が、余計な不安感を与えることがないかもしれません。
また、ストレスや体調不良によって感覚が鋭敏になることを考慮すると、「ストレスのかかった環境をヒアリングし、できる
だけストレス要因を取り除いておく」「体調をくずしやすい状況を把握できるように促し、その場合は無理をさせない」……といったことも重要ではないでしょうか。

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井手 正和(いで・まさかず)
認知神経科学者
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冷えすぎに要注意...夏バテの原因「自律神経の疲れ」が和らぐ8つの習慣

冷えすぎに要注意...夏バテの原因「自律神経の疲れ」が和らぐ8つの習慣
8/8(火)  PHPオンライン衆知

暑さで食欲がわかず、取れない疲れにグッタリ...。
そんな夏バテの原因には「自律神経の乱れ」が潜んでいます。
正しい対策をとって夏の不調を予防・改善しましょう!
医師の川嶋朗さんが見直すべき習慣について解説します。

【川嶋朗(かわしま・あきら)】
医学博士。1957年生まれ。
北海道大学医学部医学科卒業。
2022年より統合医療SDMクリニック院長。人の自然治癒力を高めることを重視し、近代西洋医学と補完・代替医療を統合した医療の教育を日本の医療系大学で実践中。
『毎日の冷えとり漢方』(河出書房新社)など著書多数。
※本稿は、月刊誌『PHP』2023年8月号より、内容を一部抜粋・編集したものです。

夏バテに共通する原因 だるい、食欲がない、胃腸の調子が悪い、疲れがとれない...。
夏バテの症状は人それぞれですが、これらに共通する原因として「自律神経の疲れ」が考えられます。
ヒトには外界の変化にかかわらず、体内環境を一定に保つ恒常性(ホメオスタシス)という機能があります。
たとえば暑いときは、血管を拡張させて血液量を増やし、体の表面から熱を逃がして体温を下げようとします。
逆に寒いときは、血管を収縮させて血液量を減らして、熱が外に逃げないようにします。
そのように自律神経は血管を拡張したり、収縮したりして、体温調節をしてくれているのです。

そのおかげで、私たちは体温を一定に保つことができます。

激しい寒暖差が負担をかける
ところが、夏は冷房を使うために室内外の温度差が大きくなります。
私たちが暑い場所と涼しい場所を行ったり来たりすると、自律神経は体温を一定に保つために一生懸命働かなければなりません。
夏のあいだずっと、このような体温調節を繰り返していると、自律神経は疲弊してしまい、機能が低下してくるのです。
自律神経は体温だけでなく、全身の血管や内臓の働きなど、体中の器官をコントロールしているため、自律神経の働きが乱れると、さまざまな不調が起こります。

夏を元気に乗り切り、秋に不調を持ち越こさないためには、自律神経を疲れさせないこと、また多少の温度変化があっても自律神経が乱れない体づくりが大切です。

交感神経と副交感神経
夏バテ予防と改善のかなめとなる自律神経の働きを確認しておきましょう。
自律神経は呼吸や心臓の働き、体温などを意思とは関係なく調整し、さまざまな生命活動をコントロールしています。
自律神経には心臓の動きを速くしたり、血圧を上げたりすることで積極的な活動を支える「交感神経」と、心臓の動きをゆっくりにするなど体をリラックスさせる「副交感神経」の二種類があります。

基本的には、体を動かす日中は交感神経が活発に働き、体を休める夜には副交感神経が優位になりますが、この2つの神経がシーソーのようにバランスをとりながら、すべての臓器をコントロールしているのです。
私たちが健康でいるためには、交感神経と副交感神経がバランスよく働いていることが重要です。

夏も「冷え」にはご用心
体を冷やしすぎると自律神経を酷使してしまいます。
暑い日が続いて、冷房で冷えきった部屋でずっと過ごす、入浴せずにシャワーですませる、冷たい食べ物や飲み物をとりすぎる、肌の露出が増える...などが重なると、体は内臓まで冷えてしまいがちです。

体が冷えると体温を上げるために交感神経が優位な状態が続き、血管が収縮します。
すると全身の血流が悪くなり、ますます冷えるという悪循環におちいります。
自律神経は乱れるいっぽうになるのです。
副交感神経の働きを高め、自律神経を整えるために必要なのが、夏でも体を冷やさないことと体温を上げることです。
そうすれば好循環が生じて、夏バテ知らずの体になります。
下記で紹介する自律神経を整える生活習慣をぜひ実践してみましょう。
2週間ほど続ければ、効果が実感できるはずです。

自律神経を整える8つの習慣
日常生活にひと工夫プラスするだけ。自律神経が整って体も心も健康になる方法を紹介します。

1. 常温以上のものをとる
夏は冷たい食べ物がほしくなりますが、冷たいものは体内の温度を下げ、内臓の冷えを招きます。
どうしても食べたければ、冷たいものの前後に温かいものをとるようにしましょう。
こまめに水分をとって脱水を予防することも大切です。
1日1〜1.5Lを目安に。水分のとりすぎは体を冷やすので注意しましょう。

2. よく嚙んで食べる
一口30回を目安によく噛かみましょう。
嚙むことによって、口のまわりの咬筋から脳に刺激が伝わり、コルチゾールやノルアドレナリンなどのストレス系のホルモンの分泌が抑えられ、リラックスできます。
また、熱をつくり出すヒスタミンが産生されて体温が上昇。
満腹中枢が刺激されて過食を防止する効果もあります。

3. 日常生活に軽い運動を取り入れる
体の熱の多くは筋肉によってつくられています。
筋肉を鍛えて体を温める力を強化しましょう。
激しい運動は活性酸素を増やして細胞を傷つけるのでむしろ逆効果。
洗濯物を1枚干すたびに1回しゃがむ、かかとを上げ下げしながら食器を洗う、電車やバスでは座らない、できるだけ階段を使うなど、生活の中で"少々面倒できつい"と思う動きを習慣にするのがおすすめです。

4. 普段より速いスピードで歩く
いつもの1.5倍程度のスピードで歩きましょう。
夏は汗をかきすぎないように、比較的気温が低い朝や夕方以降に歩くとよいでしょう。
忙しくてウォーキングの時間がとれない人は、通勤時に1駅分歩く、少し遠い場所にあるスーパーに歩いて買い物に行く、店内をぐるぐる歩きまわるなどでもOKです。
楽をするのはやめて、なるべく歩くようにしましょう。

5. 衣類で温度差を防ぐ工夫を
温度差をできるだけ少なくするためには、服装によるコントロールが必須です。
ショールや薄手のカーディガンなどを手元に置いて、電車の中など冷房がきいている場所での冷えすぎを予防しましょう。
夏だからといってノースリーブや素足はNGです。
必ず袖のあるものを着用するほか、靴下をはく、レッグウォーマーをつけるなど、意識して足元を温めましょう。

6. 冷房の温度設定は28℃を目安に
外気温と室温の差が大きいと自律神経が疲弊します。
しかし、熱中症対策として冷房は必要です。
自律神経を休ませるため、冷房の設定温度は少し汗ばむくらいの28℃を目安にしましょう。
暑く感じたら、直接風に当たらない位置に扇風機を置いて、冷気を循環させると効果的。
寝不足も自律神経を乱します。
夜間寝苦しいときは、我慢せずに冷房を使いましょう。

7. ぬるめのお湯に10分つかる
シャワーだけだと体が温まりません。
とはいえ、42℃くらいの熱いお湯につかると、交感神経が刺激されて寝つきが悪くなります。
おすすめは39〜40℃くらいのお湯に10分程度、首までつかること。副交感神経が優位になってリラックスできます。
入浴後はそのまま寝てしまいましょう。
微温浴で血流がよくなり、寝つきもよくなっているはずです。

8. いつもの2倍の時間をかけて息を吐く
意識的にコントロールできる呼吸を整えて自律神経の乱れを改善しましょう。
体が冷えているときや緊張が続いているときは、おなかをふくらませて鼻から深く息を吸い込み、吐くときはおなかをへこませながら、いつもの2 倍の時間をかけてゆっくりと吐きましょう。
10回繰り返すと、副交感神経が作動してリラックスでき、体が温かくなってきます。

  川嶋朗(医学博士)
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高い"夏の旅行"安く抑える技

高い"夏の旅行"安く抑える技
アパホテルでさえ1泊3万円…高すぎる「夏の旅行」を安くおさえる“裏ワザ”6選
2023年08月09日 SPA!

今年の夏こそ旅行を楽しみたい!と、意気込んで宿を予約しようとしたら金額に啞然。
格安ホテルの宿泊料金が高級旅館並みに暴騰している。
その背景には、一言では語れないホテル業界の事情があった――。

◆サラリーマンの懐に追い打ちをかける“宿泊料金の高騰”  
ビジネスホテルの宿泊料金の高騰は、インフレにあえぐサラリーマンの懐に追い打ちをかけている。
 東京都内の食品会社に勤める40代のA氏が嘆息する。
「8月上旬に札幌市内で開かれる大事な取引先の社長の勇退パーティに招かれたのですが、平日なのに宿泊代が軒並み1万5000円以上でのけぞりました。
 うちの会社は、出張宿泊費の支給上限が1万2000円で足が出た分は自腹を切ることになるので、断念。ゲストハウスに泊まるのも考えましたが……」

◆ホテル業界を豹変させた「コロナ禍のトラウマ」
 お盆休みになれば、さらに厳しい金額になる。
 食事なしの素泊まり1名で、アパホテル・札幌すすきの駅前ではダブル3万2900円。ホテルリブマックスBUDGET那覇ではシングル2万1250円など、価格高騰は全国的な傾向にある(楽天トラベル7月27日現在)。
 その背景について、トラベルジャーナリストの橋賀秀紀氏が解説する。
「コロナが明けて、国内や海外観光客による旅行需要は高まっていますが、その半面、コロナ禍で従業員を削減したホテルが多く、フル稼働はできない。
 そのため受け入れられる客数が減り、供給がまったく追いついていません。
 加えて、コロナ禍の全国旅行支援などの施策により、それまで業界内でキープされてきた価格相場が崩れて競争が激化。  需要や相場に合わせて価格が随時変動する『ダイナミックプライシング』のシステムによって、価格がどんどんつり上がっている状況です」

◆「高騰の先行き」専門家も意見が割れる
 また、ホテル業界のコンサルに携わるPwCコンサルティング執行役員パートナーの澤田竜次氏も次のように語る。
「現状のホテル業界は高値で設定してもお客さんを取れる自信がある。
円安やウクライナ紛争で海外航空券が高いことも、国内需要を後押ししている」 高騰の波の先行きは不透明だ。

 澤田氏は「コロナで旅行を控えていた日本人の“リベンジ需要”は年内を区切りに収束しそう」と予想するが、橋賀氏は「国民の旅行にブレーキをかけている中国が全面開放すれば、ますますインバウンド需要が増えるはず。
来年以降も高値が続くのでは」と意見は割れた。

◆お値打ちホテルを見つけるカギは「地域性」
 ただでさえインフレ状態のホテル業界。
かき入れ時のお盆シーズンを控え、お値打ちのホテルを見つけることはできるのか。
 そこで、澤田氏は地域性に着目する。
「例えば、北海道のニセコのようにスキーで有名なエリアは夏に泊まれば比較的お得です。
 また、東北や四国はビジネス需要が少なく、他の地域に比べて相対的に安い。
特に、秋田県は7月の豪雨の影響もあり、価格が上がりにくいのでは。
 ほかにも、長野県の上高地のように、利用客が増えていても値段を上げない昔ながらのポリシーにこだわるエリアも残っています」

◆旅をコスパ良く満喫するための「工夫と努力」
 自由が利く単身旅行なら、あえて予約をせず、当日直接申し込みの賭けに出るのも手。 「ホテル側は空室を寝かせておくのがもったいないので価格交渉に応じやすい。
チェックイン手続きが一段落して、決定権のある支配人の手が空く午後6時以降が狙い目ですね」(澤田氏)
 また、予約サイトに載らないような宿にこそ宝が眠っている可能性もある。
「ダイナミックプライシングを導入せず、相場に関係なく独自の値段設定をしているような老舗の旅館は、お盆でもさほど値段を上げていないことがあります。
 泊まりたいエリアをグーグルマップで調べ、表示された宿に直接電話を入れてみたり、地元の観光協会や観光案内所に電話で相談すれば、紹介してもらえることもあります」(橋賀氏)

 物価高に宿泊費高の今、旅をコスパ良く満喫するには創意工夫と努力でカバーしたい。

◆お得な宿泊法6選

@予約サイトに載らない宿
 個人経営の零細な宿の中には、予約サイトに掲載せず、ハイシーズンでも価格変動をさせずに営業する“独立系”がある。
「ネットに疎いタイプであるため、ホームページさえないこともありますが、旅行愛好家のブログやグーグルの口コミを参考にしたい」(橋賀氏)

A会社契約の宿
「会社や健康保険組合が、福利厚生でホテルと年間契約を結ぶケースがあります。
価格は前年に決めるため、’22年の相場に基づいており、現状の価格の半額程度で泊まれるケースもある。
大抵の会社では、出張以外での利用も認めています」(澤田氏)

B当日直接申し込み
「稼働率が100%の宿というのは実は多くなく、空室はあります。  
本音では安く売りきってしまいたいのですが、ネットに格安の当日価格を出すわけにはいかないので、直接来たお客さんに限ってお値打ち価格を提示することもあります」(澤田氏)

Cラブホテル
 “独立系”旅館同様に予約サイトに登録されていないケースが大半なので、相場や時期の影響を受けず、固定価格を維持する傾向が強い。
「ラブホテルの価格比較サイトがありますが、利用する人は多くないですし、狙い目と言えます」(橋賀氏)
ホテルロータス池袋は、8月はお盆期間を除けば9月と同一の価格設定。
「ラブホテルは休憩サービスでも収益を図れるので相場に引きずられにくいです」(運営会社広報)

D2〜3駅離れた宿
利便性の高い繁華街から遠ざかれば、おのずとホテルの価格は下がる。
「泊まりたいエリアをグーグルマップで表示して『ホテル』と検索すれば、ホテルの場所に価格が表示されます。
レンジを広げれば、掘り出し物が見つかる可能性があります」(橋賀氏)

Eホテルサブスク  
サブスクブームはホテル業界にも広がり、現在20社以上のサービスがある。
「行きたいエリアに拠点があるか、同伴者の不可、ホテルの種類などの条件を必ず確認。
特にハイシーズンであれば、実勢価格よりも安く泊まれる可能性が高くなります」(橋賀氏)
「HafH(ハフ)」では、月会費9800円から毎月300コインが付与され、コイン数に応じて提携先の宿に泊まることができる。
人気の星野リゾートに実質半額で泊まれることも。


【トラベルジャーナリスト・橋賀秀紀氏】
 Yahoo!ニュース・エキスパート。
世界126か国を訪問。モットーは「宿泊代は1万円まで」。
共著に『エアライン戦争』(宝島社)など。


【ホテルコンサルタント・澤田竜次氏】
 PwCコンサルティング執行役員。
ワシントン大学でMBAを取得。
ホテル・観光・不動産業界でアドバイザリーサービスを提供している。


取材・文/週刊SPA!編集部
posted by 小だぬき at 12:22 | 神奈川 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年08月10日

「熱中症で救急搬送の人、だいたい水分はめっちゃ飲んでる!」医師が明かす「水分摂取」と同時に重要な「熱中症対策」は?

「熱中症で救急搬送の人、だいたい水分はめっちゃ飲んでる!」医師が明かす「水分摂取」と同時に重要な「熱中症対策」は?
8/6(日)   まいどなニュース

例の猛暑が続いた2023年7月。8月も厳しい暑さが続くことが予想され、厳重な熱中症対策が必要だ。
熱中症対策として知られるのが、こまめな「水分」の摂取。
しかし、実は熱中症で救急搬送される人の大半は「水分」をしっかり摂取しているのだという。
そんな衝撃の事実をX(旧:Twitter)に投稿したのは、筋肉博士 Takafumi Osakaさん(@muscle_penguin_) 。
糖尿病内科医で、運動療法の専門家でもあるOsakaさんによると、熱中症対策には「水分摂取」と同様に、重要なことがあるという。
「水分摂取」していても「体が冷えない」と熱中症に 「水分摂取しても体が冷えないと熱中症になります。
水分摂取が有効なのは脱水症です。
ぜひ、身体も冷やしてくださいね!
ちなみに熱中症で救急車で運ばれてくる人、だいたい、水分はめっちゃ飲んでますよ! 」
筋肉博士 Takafumi Osakaさんの投稿に、リプ欄には多くの驚きと納得の声が殺到。
さらに、Osakaさんは、自身の熱中症体験も投稿。
「昔、エアコンのガンガン効いた車の中で熱中症になったことがある。
運動した後、暑い車内に入ってそのまま冷房MAX。
運転して帰る途中からどんどん気分が悪くなり、帰り着いて嘔吐。

冷たい風が体の表面に当たる→表面の血管だけ冷える→身体の中は熱いまま→熱中症。

暑い車内は冷やして乗って!」
こまめな水分摂取と同時に、適切に「体を冷やすこと」が鍵を握る
「熱中症対策」について、筋肉博士 Takafumi Osakaさんにお話を聞いた。 脱水症(水分不足)は熱中症の症状の一部 ーー熱中症で救急搬送された方の多くが十分に「水分摂取」をしていた、とは驚きでした。
「『熱中症診療ガイドライン2015』によると、熱中症とは『暑熱環境における身体適応の障害によって起こる状態の総称』と言われています。
わかりやすく言うと、『体が熱くなることで起きる体調不良のすべて』です」

ーー脱水症とは異なるのですか?

「脱水症(水分不足)は熱中症の一部の症状です。
体が熱くなり、汗をかくことで体から水分が失われ、脱水症になります。
極端な話をすると、汗が出なければ脱水症にはなりません。でも汗が出ないなんてことはあり得ないので、重度の熱中症にはほぼ脱水症が合併します。また、体が熱くなくても、例えば急性腸炎で下痢をしていたら脱水症になります。
実際、ひどい熱中症の場合、脱水症が合併していることがほとんどです。
脱水症では舌や脇の下の乾燥、尿量の低下などがあります。

対して、熱中症特有の症状には、けいれんや意識障害などがあります」
もしも熱中症になったら…「体を冷やしつつ病院へ」

ーー昔は「冷たいものは体を冷やすからNG」として、「夏でも熱いお茶を」「水は常温で」と言われていました。
地球沸騰化の現代では、この考えは改めた方が良いですか?

「難しいですねぇ…。
この場合の、『冷たいものは体を冷やすからNG』というのは、胃や腸のお話だと思います。
もし熱中症対策で冷たい飲み物を飲みたくてもお腹を下すようであれば、飲むのではなく、冷たい水を体にかけた方が良さそうです」

ーーOsaka先生おすすめの熱中症対策はありますか?

「体を冷やすことに加えて、まずはできるだけ暑い環境に行かないこと、ですね。
どうしても行かないといけないのであれば、定期的に休憩を取ることです。
また、通気性が良く、体が冷えやすい服を着る。
さらに、環境省が発表する『熱中症アラート』を参考に、スポーツなどは中止を検討してみる。
そして、体調が悪い時には無理をしない。
もし熱中症になってしまったら、とにかく体を冷やしつつ、病院へ!」

体を冷やす=不必要に汗をかかない環境にいることが大切
こまめな水分摂取に加え、熱中症対策には「体を冷やすこと」が重要だという今回のツイートに対して、多くの共感と納得のリプライが寄せられた。
「水でお腹がタポタポなのに、心拍数上がって血圧が異常に下がってました。エアコン使います」
「熱中症とは人体のオーバーヒートと見つけたり。
技術者的には、そら冷却水増やしても加熱された冷却水冷やさなきゃ機械はオーバーヒートするわ、という当然の帰結として理解」
また、熱中症の一部の症状だという脱水症について、「この季節、病院で脱水症の高齢者をよく見ますが、脱水症と伝えると、『え?私1日水分2リットル取ってるよ!』と言われることが多々あります。
2L飲んでてても3L汗かいたら脱水になるんです。
だから、そんなに汗かかないでいい環境にいる=予防するのが大切なのです」と、ツイートしていたOsakaさん。体調を崩さないよう、睡眠をしっかり取ることも大切だ。

(まいどなニュース/
Lmaga.jpニュース特約・はやかわ かな)
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「出撃したら、絶対に帰ってくるな。必ず死んでこい!」…特攻隊員が絶対命令の「体当たり攻撃」からなぜ生還できたのか

「出撃したら、絶対に帰ってくるな。必ず死んでこい!」…特攻隊員が絶対命令の「体当たり攻撃」からなぜ生還できたのか
8/10(木) 現代ビジネス

 太平洋戦争末期に実施された”特別攻撃隊”により、多くの若者が亡くなっていった。
 だが、「必ず死んでこい」という上官の命令に背き、9回の出撃から生還した特攻兵がいた。
飛行機がただ好きだった男が、なぜ、絶対命令から免れ、命の尊厳を守りぬけたのか。  
※本記事は鴻上尚史『不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか』から抜粋・編集したものです。

嘘の戦死報告
12月8日は、3度目の開戦記念日だった。
ようやく耳が回復した佐々木は、カガヤン飛行場にあった短波ラジオで、開戦記念の大本営発表を聞いた。
 それは、12月5日、万朶隊の一機が特攻攻撃により、戦艦か大型巡洋艦一隻を大破炎上させたという放送だった。
万朶隊として、佐々木と石渡軍曹の名前が挙げられた。
 佐々木は烈しく混乱した。
佐々木にとって、2度目の戦死発表だった。
今回はカガヤンにいることはちゃんと無線で連絡し、返電も来ている。
 さらに、発表の内容も理解できなかった。
「万朶隊の一機」が大破炎上させたと発表しながら、11月15日、2回目の出撃で一番機として飛び立ち、行方不明になった石渡軍曹の名前が加えられていた。
 放送を一緒に聞いた整備担当の少尉は、「12月5日の攻撃を、今日発表したのは開戦記念日の景気づけだよ。
そのために、佐々木伍長をもう一度殺したのさ。その方が気勢が上がるからな」と、うがって言った。

 佐々木は、「あの時、爆弾は確かに当たっていた。あれは、間違いなく撃沈している。それを大破炎上ぐらいに言うとは、なんということだ。だいいち、どうして石渡軍曹と一緒に発表するんだろう」と憤慨した。
 そして、「2度も戦死を発表されたということは、猿渡参謀長達は、今度こそ自分を戦死させようとして、ますます厳しく出撃させるようになるだろう」と考えた。
そして、そう思えば思うほど「俺は決して死なないぞ」と心の中で歯を食いしばった。

 12月9日の朝日新聞は「三度目の出撃奏功。佐々木伍長戦艦に体当たり」という見出しを一面に掲げた。
 記事は、「万朶隊佐々木友次伍長が石渡俊行軍曹とともに単機憤怒の殴り込みだ」と書いた。
一機に二人搭乗していたという設定のようだった。
 佐々木の故郷、当別村は大本営発表と新聞記事によって、再び、大騒ぎになった。
2度目の大がかりな葬式が行われたのだ。

不時着  9日午後4時、佐々木はカローカンに戻るためにカガヤン飛行場を離陸した。
兵隊が大勢出て、激励しながら見送った。
誰もが、佐々木の童顔を見るのは、これが最後だろうと思った。
 佐々木は直進を避け、ネグロス島の南部を迂回しながら飛んでいくうちに雨が烈しくなり、マニラのあるルソン島の手前、ミンドロ島に近づくと悪天候のために航路の測定が難しくなった。
 雨雲を抜けようと高度を上げ下げしているうちに、目の下に見えたのがルバング島だと気付いた。
すぐに機首を東北に変更した。すでに日没になっていた。
 雨はますます烈しく、なにも見えなかった。
計器だけが手がかりの計器飛行を続けた。混乱して海面すれすれを飛んだりしながら、ようやくマニラの街の光がかすんで見えてきた。  ホッとして燃料計を見ると
赤い警報灯が4つ光っていた。
それは、燃料がほとんどなく、あと15分か20分しか飛べないことを示していた。

 カローカン飛行場はマニラの北にあった。
すぐに場所が分かれば、なんとかなる。
だが、マニラ市街以外は一面の暗闇だった。
雨の中、佐々木は旋回を続けながら、着陸の合図である飛行機の前照灯を点滅させた。
だが、飛行場の応答らしい灯は返って来なかった。
 不時着しかないと佐々木は思った。
佐々木の頭の中には、マニラからカローカンにかけての地形図があった。
それを暗黒の底に投射して、国道を見つけ出した。
 闇の中から電灯の光が近づいてきた。
速度は200キロから220キロに抑えた。機体の脚は引っ込めたままにしている。  電灯の光が一瞬のうちに後ろに流れ去り、前照灯の光の輪の中に、地面がぐっと浮き上がった。
着陸の姿勢を取ると、すぐに大きな衝撃が起こり、機体は烈しい音を立てて地面を跳ね上がり、ぶつかり、地面の上を滑った。
烈しい衝撃に佐々木は意識を失った。九九双軽は止まった。

 佐々木が意識を取り戻した時、辺りは闇の中で静まり返っていた。
どれぐらい意識を失っていたか分からなかった。
 今にもフィリピン人ゲリラが襲ってくるような恐怖に駆られた。
日本兵が彼らに捕まると、なぶり殺しにされると言われていた。
 佐々木は操縦席から飛び出し、機体の陰で様子をうかがった。体にはかすり傷もなかった。

 雨はやんでいて、遠くに電灯の光が見えた。
辺りはまばらに耕した田畑のようだった。
佐々木は灯に向かって走り出した。
途中で、溝に落ちてずぶ濡れになったが、そのまま走った。やがて、家の床下にもぐり込んだ。
 ゲリラの村かもしれなかった。近くで犬が吠えた。

向かいの家の窓が開いて、フィリピン人が上半身をのぞかせた。
その窓の光が、佐々木の体を照らしだした。
男と佐々木は目があった。
体の大きな、荒っぽい感じのフィリピン人だった。
佐々木は恐怖を感じた。自分は素手で、何の武器もない。

 男は大声を出して佐々木を手招きした。そして広場に案内した。
 そこには、日本語が分かる若い男がいた。
電灯のついた家に案内されると『ボカウェ村役場』という日本語の看板がかかっていた。
けれど、常駐の日本人も日本軍もいなかった。
同時に、幸運なことに、佐々木を狙うゲリラもいなかった。
その夜、佐々木はフィリピン人村長の家に泊めてもらった。
マニラから北に15〜16キロの所にある村だった。

「臆病者」
  翌日、佐々木はボカウェ村から3キロほど離れた所にいた.
日本軍の小部隊まで馬車で送ってもらい、さらに、日本軍に自動車でカローカン飛行場に運ばれた。
 飛行場大隊長は佐々木の顔を見て驚いた表情になった。カ
ガヤン飛行場を出発したという連絡があったが帰って来ないから、今度こそ佐々木もやられたとみんなで話していたのだ。

 佐々木が不時着機の収容を頼むと、すぐに村崎少尉が整備員を集めた。
佐々木も現場に向かうトラックに同乗した。
 不時着現場は田んぼの中だった。機体は頭部を土に突っ込み、尾翼を逆立てていた。
両翼は、鳥の死骸のように、左右に落ち崩れていた。
操縦席の前蓋がぐしゃぐしゃに潰れているのを見た時、佐々木は自分が無傷で助かったことが心底不思議で、そしてゾッとした。

 夜間飛行で、飛行場以外の場所に不時着した場合は、パイロットのほとんどは死ぬか重傷を負うことが多かった。
それが、軽い打撲だけで助かったのだ。
 機体が接地して停止するまでの滑走距離は、300メートルほどだった。
田んぼに稲がなく、地盤が硬かったから、なんとか機体は止まったのだ。
雨と暗闇の中、無傷の胴体着陸は奇跡としか言いようがなかった。

 村崎少尉も地面が見えないまま胴体着陸したことに心底驚いていた。
「この状態じゃあ、燃料が残っていたら、いっぺんに火葬になるところだったな」村崎少尉は冗談めかして言ったが、佐々木の技量と勇気に感心しているようだった。
 佐々木がカローカンに戻ると、司令部から出頭の命令が来ていた。
すぐに出向くと、猿渡参謀長が頭から怒鳴りつけた。
「この臆病者! よく、のめのめと帰ってきたな。
貴様は出発の時になんと言われたか覚えているか!」
 佐々木は黙って参謀長の顔を見返した。
 参謀長はさらに激昂した。

「レイテ湾には、敵戦艦はたくさんいたんだ。弾を落としたら、すぐに体当たりをしろ。
出発前にそう言ったはずだ。貴様は名誉ある特攻隊だ。
弾を落として帰るだけなら、特攻隊でなくてもいいんだ。
貴様は特攻隊なのに、ふらふら帰ってくる。貴様は、なぜ死なんのだ!」

 猿渡参謀長は、佐々木が大型船を撃沈したという戦果にはまったく触れなかった。
「その上、貴様はカガヤンまで逃げて、2日も3日も隠れておった。
ようやく帰ってきたかと思えば、飛行機を壊してしまう。
貴様、飛行機を壊せば、特攻に出ないですむと思ってやったのだろう。
貴様のような卑怯未練な奴は、特攻隊の恥さらしだ!」

 他の参謀達も、佐々木を見つめた。
 佐々木は涙が出るほど悔しかった。
だが、怒りを抑え、ゆっくりと、カガヤンでは体の調子が悪くて寝ていたと説明した。
 佐々木の言葉が終わる前に、猿渡参謀長は吐き捨てるように叫んだ。
「弁解などするな! それより、明日にでも出撃したら、絶対に帰ってくるな。必ず死んでこい!」
 佐々木は少しの反論も許されなかった。

 司令部を出た後、佐々木は直掩隊の操縦士に会った。
佐々木が体当たりをしたと報告した操縦士だった。
彼は佐々木の顔を見て絶句した。
生きているとは思わなかったのだ。
 事情を聞けば、操縦士は、佐々木が爆弾を落としたところまでは見ていたが、その後、大型船が爆発したのか、沈んだのかを見る前に引き返していた。
彼は、自分も気がついたらたった一機になっていたので、急いでその場を離れたと正直に言った。

 佐々木は、操縦士の事情も理解したが、自分が命懸けでやったことを正確に見てもらえなかったことが腹立たしかった。  宿舎に戻ると、鉾田飛行場時代に知りあった津田少尉に会った。
津田少尉は九九双軽を空輸しろという命令を鉾田で受けてフィリピンに来たら、いきなり特攻隊にされたと憤慨していた。佐々木は、自分も似たようなものですと答えた。

 津田少尉は「佐々木は戦艦を沈めたそうだが、本当か」と尋ね、佐々木は「戦艦ではないが、自分は2隻は沈めたと見ています」と返した。
 津田少尉は感心し、けれど、特攻隊がどうして帰ってこられるんだと、不思議そうに尋ねた。
佐々木は「体当たりをしなければいいんです」とあっけらかんと答えた。
津田少尉は驚いた顔で佐々木を見た。
 「万朶隊は5人の将校さんが、攻撃に出る前に戦死したんです。
佐々木は将校5名分の船を沈めるまでは、死なないつもりです。
最後の6番目は自分のものですから、このときは、どうするか、まだ分かりません」
 佐々木の表情は真剣だった。  

「体当たりをしないで、戦艦を沈めるにこしたことはない。
しかし、特攻隊が体当たりしないで生きていたら、うるさいだろう」津田少尉は正直に聞いた。
 「いろいろ言われますが、船を沈めりゃ文句ないでしょう」佐々木は人懐こい目を細くして、笑いを浮かべた。
佐々木は、この頃には、同じようなことを上級下級の区別なく、また新聞記者にも率直に、公然と語り始めていた。
誰がなんと言おうと、どんなに参謀達に怒鳴られようと、体当たりでは死なないということをはっきりと宣言しているかのようだった。

      鴻上 尚史
posted by 小だぬき at 10:30 | 神奈川 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年08月11日

「冷却シート」は“熱中症予防”に効果ナシ…注意点を医師が解説 役立つグッズも

「冷却シート」は“熱中症予防”に効果ナシ…
       注意点を医師が解説 役立つグッズも
  2023.8.6   オトナンサー

 発熱時によく使われるのが「冷却シート」です。
額に貼ると、体が程よく冷めるような感覚が生じるため、中には熱中症予防のために活用する人もいるようです。
実際に冷却シートで額を冷やすと、熱中症予防につながるのでしょうか。

冷却シートを使うメリットや使用時の注意点などについて、あんどう内科クリニック(岐阜市)の安藤大樹院長に聞きました。

額を冷やしても体温は下がらず

Q.額に冷却シートを貼るメリットについて、教えてください。体温を下げる働きがあるのでしょうか。

安藤さん
「まず強調しておきたいのですが、原則的に冷却シートに体温を下げる効果はありません。
貼り付けたときに『冷たくなった』と感じたことがあるかもしれませんが、これは単に皮膚表面の温度が下がっているだけで、体温自体を下げているわけではありません。
額に貼る前の冷却シートは、冷たくありません。
ジェルに含まれている水分が蒸発するときに周囲の熱を吸収する現象、いわゆる『気化熱』が生じることで、貼り付けた部分が一時的に冷えるだけで、熱い地面に打ち水をするのと同じ効果です。
また、体温を下げるためには、首や脇の下、足の付け根など太い血管が走っている場所を冷やさないといけません。
額に太い血管はないため、冷やしても体温は下がらないのです。

冷却シートに含まれている水分量を考えると、首や脇の下に貼ったとしても、体温を下げるほどの気化熱が発生することはありません。
『額に貼るよりも多少まし』な程度です」

Q.では、額に冷却シートを貼っても、熱中症の予防にはならないということでしょうか。

安藤さん
「その通りです。先述のように、冷却シートを額に貼っても、体温を下げる効果はありませんし、首や脇の下に貼っても同様です。
むしろ、貼っていることで『熱中症対策をしている』と勘違いしてしまい、結果的に対応が後手に回ってしまう危険があります。
冷却シートに熱中症予防の効果はなく、あくまで『冷たく感じさせるもの』だと認識しておくべきです」

Q.冷却シートを使うメリットはないのでしょうか。

安藤さん
「まったくメリットがないわけではありません。
発熱時は酸素の消費量が増え、全身のだるさや息苦しさ、頭痛などの症状が出ます。
その結果、自律神経の一つである交感神経を刺激してしまうため、熱の治療で最も大切な睡眠の質を下げてしまいます。
額を冷やすことで、ある程度不快感が取り除かれるため、良好な睡眠が期待できるほか、冷却ジェルに含まれるミント成分自体にも、副交感神経を刺激することによるリラックス効果が証明されています。

また、冷却シートが販売されるようになって30年程度たっているため、現代は『熱が出たから額に冷却シート』が習慣になっていると思います。
『冷却シートを貼っているから安心』と感じることも、個人的にはとても大切だと思います」

Q.額に冷却シートを貼る際の注意点について、教えてください。1日に何度も貼ってよいのでしょうか。

安藤さん
「20年ほど前ですが、発熱した生後4カ月のお子さんが冷却シートを使用した際、親御さんが少し目を離した隙に冷却シートがお子さんの口と鼻をふさいでしまい、脳に重大なダメージが残ってしまったという痛ましい事故がありました。
乳幼児や体が不自由な人が使う場合は、口や鼻に貼り付かないように注意するとともに、様子を十分に観察できない場合は貼りっ放しにさせないようにしましょう。
剥がすと粘着力が落ちてしまうため、できるだけ貼り直しは避けてください。
目の周囲や粘膜のほか、傷口ややけど、日焼けによる熱傷、湿疹など、皮膚に異常がある部位への使用も避ける必要があります。
余談ですが、乳幼児やペットが冷却シートのジェルを誤食してしまう事例もあります。
成分そのものに命を危険にさらすほどの効果はありませんが、粘着力があるため、気道をふさいでしまう恐れがあります。
手の届かない場所に置くなど、保管場所にも注意してください。

1日に貼る回数に関しては、冷却シートを販売しているメーカーの公式サイトを確認しても、特に記載はありませんでした。冷却持続時間は8〜10時間程度のため、1日2〜3回使用しても問題はないと思います。
ただ、頻度は少ないのですが、貼り付け部位の皮膚が炎症を起こす接触性皮膚炎の報告もあるため、肌に異常を感じた際はすぐに使用を中止してください」

熱中症予防に効果的なグッズは?
Q.熱中症を予防するには、どうしたらよいのでしょうか。

安藤さん
「熱中症予防は、『日常生活で行う予防』と『暑い場所に行く前の予防』に分けられます。
『日常生活で行う予防』で有効なのは、『小まめな水分補給』『程よい塩分摂取』『質の良い睡眠』『バランスの良い食事』といった、日々の習慣の見直しです。
最近では、スマートウオッチなどの端末による体調管理のほか、環境省の公式サイトでの暑さ指数の確認なども有効でしょう。
この段階での冷却シートの出番は、残念ながらありません。
強いて言えば、睡眠の質を改善させる目的での使用でしょう。

それに対して、暑い場所に行く際は、『水分と塩分の補充』と『体温コントロール』が予防の中心となります。
体温コントロールのためには『涼しい服装』『帽子や日傘の使用』『日陰の利用』などが基本となります」

Q.熱中症予防に効果的なグッズはありますか。

安藤さん
「暑い環境下で大切なのは、『失った水分とミネラルを補充すること』『深部体温(体内部の体温)を下げること』の2つです。
前者は、スポーツドリングや経口補水液の摂取が効果的なので、ここでは後者に対して有効なグッズを紹介します。
まずは『ミスト機能付きのハンディーファン』です。近年、ハンディータイプの扇風機を持ち歩く人が増えましたが、屋外で使用すると汗が蒸発する前に乾いてしまうため、気化熱で体温が下がらないほか、熱風を体に当ててしまうため、実は使い方を間違えるとかえって熱中症を助長してしまいます。
その点、ミスト機能付きの製品は、ミストにより気化熱が生じ、体温を下げるため効果的です。

太い血管を冷やすという意味では、『ネッククーラー』もお勧めです。最近販売されている製品は機能性が高く、冷却シートよりも高い冷却力があり、ある程度、深部体温を下げる効果があります。
さらに、深部体温を下げるのにお勧めなのが『手のひら冷却グッズ』です。
手のひらには『動静脈吻合(ふんごう)』という、大量の血液が流れている場所があり、この部分が体温調節に大きな役割を果たしています。
ここを冷やすことで冷えた血液が全身を回り、深部体温を下げることができます。
ペットボトルなどでも代用はできますが、おしゃれで持続性の高いグッズがたくさん売られているので、ぜひ利用してみてください。
このほか、ぬれた手ぬぐいやタオルで汗を拭いたり体の表面を湿らせたりすれば、水分が蒸発した際に体温が下がるため、十分に熱中症対策になります。
最近は水分を含ませて振ることで表面が冷える高性能の冷却タオルがあるため、こちらを首に巻いたり汗を拭いたりして使用するのもお勧めです」
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年08月12日

「起きたときが一番だるい」と感じたら危険信号

「起きたときが一番だるい」と感じたら危険信号
腕ふり体操で「ミトコンドリア」を活性化する
御川 安仁 : ナチュラルアート クリニック院長、
統合医療・栄養療法医師 著者フォロー
2023/08/11 東洋経済オンライン

連日の暑さで、疲れがたまりやすい今の時期。
眠って回復すればよいのですが、もし疲れがなかなか取れないようなら注意が必要です。
「疲れは放っておくと慢性化してしまい、『疲れやすい体質』になってしまうからです」。
そう話すのは、自らも慢性疲労に苦しんだ経験を持つ医師の御川安仁さん

疲れを長引かせないためには、体の細胞一つひとつを元気にする必要があるといいます
御川さんの著書『だるさ一掃×よく眠れる×自律神経が整う 1日1杯疲れのおそうじスープ』より一部引用・再編集してご紹介します。

疲れは年のせいと決めつけていませんか?
これという理由もないのに、なんとなく毎日お疲れ気味。
「年齢のせいだから仕方ない」とやり過ごしてしまう。
これをくり返しているうちに、気がつくと体が重だるいのが当たり前の状態になっている。
こんな体調があなたの「普通」になっていませんか?

一見なんでもなさそうなこの状態、実はとても危険なのです。
長引く疲れには根深い理由があり、原因を解決しなければ「疲れやすい体質」になってしまうからです。

特に、体を休めるために寝たはずなのに、「朝、起きたときが一番だるい」という方は、疲れのレッドカード。
気がつかない間に、疲労がたまりきっているといえるでしょう。
疲れを放っておくと、さまざまな症状が複合的に現れるようになり、専門的に治療をしても改善に時間がかかってしまうようになります。

私の患者さんの中にも、「いつも疲れていて体がだるい……」という状態を放っておいた結果、お風呂で髪を洗うときに頭まで手が上がらない状態になった方がいます。
そこで初めて深刻な疲れを自覚され受診されたのですが、もっと早く異変に気づいていれば症状が軽いうちに対策ができ、改善も早かったはずです。

特に、何事もがんばりすぎてしまう人ほど、疲れを我慢して悪化させてしまったり、疲れに気づかないまま働きすぎてしまい、ある日突然燃え尽きてしまったりする恐れがあるので要注意です。

疲れているときは自律神経が乱れている
疲れを感じているときは、たいていの場合、自律神経が乱れています。
自律神経には副交感神経と交感神経があり、刺激を受けて自動的に体の機能を調整します。
簡単にいえば、リラックスしているときは副交感神経、緊張やストレスを感じているときは交感神経が優位に働いています。 この2つの神経のバランスがうまくとれているのが健康な状態なのですが、疲れているときは、1日のうちで交感神経が優位になっている時間が長くなっていることがほとんどです。

すると何が起こるかというと、体の「骨格筋」という筋肉が緊張している状態が長く続き、血行が悪くなり、肩こりや腰痛を引き起こします。
また、骨格筋のこりは緊張型の頭痛の原因にもなります。
痛みがあるときに市販の薬やマッサージで痛みが解消したとしても、その状態が長くは続かず、またすぐにつらい状況になることが多くありませんか?
それは、疲れの原因が根本から解消されていないためです。

交感神経が影響する筋肉は、骨格筋だけではありません。
内臓や血管の壁の「平滑筋」も影響を受けています。
平滑筋は体内のあらゆるところにあるので、消化管にある平滑筋がうまく働かなければ便秘や消化不良などの消化器系の不調が現れることになりますし、血管にある平滑筋が収縮すれば、血流が悪くなり高血圧の引き金になります。
筋肉はもちろん心臓にもあります。
怖い話ですが、交感神経の緊張が心臓、心筋にも影響を及ぼし続けると、心不全や不整脈の原因にもなりかねません。

こうやって見ていくと、疲れた体が抱えやすい不調はとても広範囲ですし、さまざまな症状が重なって引き起こされることがわかります。
だからこそ、疲れを放置して長引かせてはいけないのです。

交感神経が優位になっているとき、コルチゾールというホルモンの分泌が乱れていることがよくあります。
コルチゾールは、副腎の副腎皮質という器官から分泌されますが、その機能の根本にあるのは体の細胞内になる「ミトコンドリア」という器官です。
ミトコンドリアは、私たちの体内の赤血球を除くほぼすべての細胞の中に存在する細胞内小器官であり、人間とは別の遺伝子を持つ「元々は別の生命体」です。
細胞ひとつに対し、数百から数千個あるといわれていて、ここ10年ほどでいろいろな研究が進み、日本が世界をリードしている分野でもあります。

ミトコンドリアはさまざまな役割を持っていますが、なかでも一番重要なのは「ATP」という、いわば「エネルギーのもと」となるものを作り出す働きがあることです。
ATPは「アデノシン三リン酸」という化合物で、私たちが体を動かし、生命活動を維持するために欠かせないエネルギー源です。
たとえていうなら、ミトコンドリアは、体内にある「エネルギー工場」のようなものなのです。
しかし、ミトコンドリアは年齢とともに量や質が低下していくといわれています。
年齢を重ねてから、昔みたいに動けず、ちょっと外出しただけでも疲れてしまうのはミトコンドリアが減少している証拠かもしれません。
だからといって、年のせいだとあきらめてしまうのはもったいない話です!

 ミトコンドリアの数を増やし、元気にする方法があるからです。

筋肉量を増やせば、効率よくミトコンドリアを増やせる
ミトコンドリアは、赤血球を除くほぼすべての細胞に存在します。
血管、脂肪、内臓などのあらゆる細胞にありますが、その数は一定ではなく、運動量の多い筋肉や神経細胞にとりわけ数が多いといわれています。
誰でも運動をしなければ、加齢とともに自然に筋肉量が減っていきます。
それは同時に筋肉細胞内にあるミトコンドリアも減っていく、ということにほかなりません。
これが加齢とともにミトコンドリア数が減る要因のひとつです。

逆にいうと、筋肉量を増やせば、効率よくミトコンドリアを増やすことができるのです。
私たちの体の筋肉には、瞬発力に使われる「白い筋肉」といわれる「速筋(そっきん)」と、持久力に関わり「赤い筋肉」といわれる「遅筋(ちきん)」があります

ミトコンドリアは、赤い筋肉である遅筋に豊富に含まれています。
遅筋はウォーキングやジョギングなどに使われ、背筋や太ももなどに多く存在します。
生物でいいますと、ゆったりと回遊し続けるマグロや、長時間飛び続ける渡り鳥などが多く持っているといわれる筋肉です。

つまり、ミトコンドリアを増やすためには、持久力の筋肉を養う運動がおすすめなのです。
また、運動はミトコンドリアの数を増やすだけでなく、活性化することにもつながります。
適度な運動負荷を体にかけると、エネルギーのもとになるATPが消費されます。
すると失われたATPを補給するべく、エネルギーの生産工場であるミトコンドリアが活性化し、酸素をせっせととり入れて新たなATPをつくり出します。
つまり、有酸素運動を行うことで数と質、両方の効果が得られるということです。

これらを考えあわせると、ミトコンドリアを増やして活性化するには、遅筋を増やす筋力トレーニングと、ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動を行うのがよいでしょう。
気をつけたいのは、激しい運動をやりすぎてしまうこと。
運動でエネルギーが急にたくさんつくられると、活性酸素を大量に発生させてしまうことにもなるからです。

ミトコンドリアのエネルギー代謝活動によくありませんし、体にも活性酸素による不調が出てしまいます。

ミトコンドリアが活性化する「腕ふり体操」
間隔を置いてくり返し適度な負荷をかける筋力トレーニングや、少し息があがるくらいのウォーキングなどの有酸素運動を日々続けることがミトコンドリア活性化には最適です。
とはいえ、運動習慣のない方はなかなか始められませんし、続かないですよね。
そこでおすすめしたいのが、楽にミトコンドリアを活性化できる「腕ふり体操」です。
これは、私の師匠である医学博士の金城実先生が考案したもので、その場で気軽にできて、天候にも左右されません。

【腕ふり体操のやり方】

@両脚を肩幅に開き、両手を腰にあてて、片脚を軽く前に一歩出します。
脚を軽く曲げて、後ろ足のかかとを少し上げ、体重を前脚と後脚の両方に均等にかけます。

A両脚をリズミカルに軽く曲げたり伸ばしたり、小刻みにくり返します。
腰を上下にやわらかくはずませるようにすると楽にできます。
「イチニ、イチニ」と声を出して。

Bその上下の動きを止めないまま、腕を前後にふります。
これを1分間続けます。
朝晩1日2回行いましょう。

リズミカルに腕をふるのも、とてもいいことです。
規則的なリズムを刻む運動を行うと、セロトニンというホルモンが出るからです。
セロトニンは幸せホルモンとも呼ばれ、気持ちが前向きになったり、興奮した神経を静めたりしてくれます。
ウォーキングやジョギングをするときにも、リズミカルに腕をしっかりふってセロトニンを分泌することを意識するとよいでしょう。
腕ふり体操を続けながら、朝起きたときの疲れはどうか、「体が動かない」という感覚が減ったか、夜はぐっすり眠れているか、体を観察してみてください。
少しでも「いつもより体が軽いな」と感じていただけたらうれしいです。
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2023年08月13日

精神科医・和田秀樹が教える、「もう〇〇歳なのだから」の「年齢呪縛」から自由になるコツ

精神科医・和田秀樹が教える、「もう〇〇歳なのだから」の「年齢呪縛」から自由になるコツ
8/12(土) サライ(文・鈴木拓也)

論語の「四十にして惑わず、五十にして天命を知る」という有名な一節を挙げるまでもなく、昔から人々は、何かをしたり、達成するための指標として「年齢」を用いてきた。
逆に、それが足枷になることもある。
その典型が、「もう〇〇歳なのだから」で始まるフレーズだ。
「もう30歳なのだから結婚を考えないと……」のように、若い世代向けの言葉もあるが、シニア世代になると、それが桁違いに多くなる。
もう70歳なのだから、 派手な服装をするのはみっともない。 わがままを言ってはいけない。 分相応の暮らしをしなくてはいけない。 など。筆者なぞ、帰省するたびに老親からこうした言葉を聞かされるが、その中身のバリエーションは十指に余る。

年齢にとらわれない人は若く見える
この「もう〇〇歳なのだから」を「年齢呪縛」と表現し、いたずらに心の自由を奪おうとするだけだと説くのは、高齢者専門の精神科医である和田秀樹さんだ。
和田さんは、著書『心が老いない生き方―年齢呪縛をふりほどけ!―』(ワニブックスPLUS新書)の冒頭で、年齢呪縛に囚われたわれわれに次のように問いかける。
<「もうこんな齢なんだから」と自分の実年齢を意識して暮らす人と、齢のことは忘れて好きなこと、やりたいことを追いかけて暮らす人がいます。どちらが毎日を楽しく、生き生きと暮らしているかは言うまでもありません。(本書17pより)>

言われてみれば、まったくそのとおり。
同窓会の席で、同じ年齢の者が何十人か集まると、年の取り方の個人差が大きいことにびっくりする。
その中でも若く見える人はたいてい、自信の年齢は気にせず、わりと自由に生きている。

年上の元気な人と付き合う
年齢呪縛が骨の髄まで染みこんだ、筆者を含めた大多数は、どうすればそこから抜け出せるのだろうか?
和田さんは、本書の中で幾つかのヒントを教えているが、その1つが「自分より年上の元気な人と付き合おう」というもの。

<あなたが自分の夢や計画を話すと「まだ若いんだからやってみなさい」と応援し、「いまは何でも便利になっているから大丈夫だよ」と励ましてくれます。
「もう少し若かったら私もやりたかったな」と羨ましがってさえくれます。
こうなるとあなたも勇気が出てきます。(本書95pより)>

和田さんにとって、そういった人の1人が東京大学名誉教授の養老孟司氏だ。
和田さんより20歳以上も年上ながら、公私ともにバイタリティ溢れる活動をしているのは、みなさんご存知のとおり。
「そんなすごい人は自分の周囲にいないよ」と最初から諦めず、町内会でもカルチャースクールでもいいから行動半径を広げ、1人でもいいから年上の元気シニアと仲良くなろう。

一方で、「齢を自慢し合うグループには近づかない」ようにと、和田さんは忠告する。
例えば、聞かれもしないのに「オレは先月で80歳になったよ。まだ元気なつもりだけど、いつ何があってもおかしくない齢だな」と、わずかに年上なだけで、なんとなく上から目線の物言いをする人には要注意。

定年は人間関係リセットのチャンス
最近は定年後の孤独が、ネガティブな文脈でよく語られるが、脱・年齢呪縛の観点からすれば、必ずしも悪いことばかりではないという。
そもそも定年退職には、上下関係や同僚とのライバル心で窮屈なこともあった、職場からの解放という側面がある。
「居場所がなくなった」という感覚が勝るかもしれないが、それはもしかすると、不自由な心の枷に慣れていただけかもしれないと、和田さんは指摘する。
数十年も続いてきた人間関係のしがらみをいったんリセットし、その上でなにか仕事を見つけることもすすめられている。

なぜなら、働く意欲もまた「心の若さ」だからだ。
働くといっても、雇用関係にこだわらず、ご近所さんに必要とされる存在になるのでもいい。
<どんな人にも何かしらの「年の功」はあります。
たとえば漬物の得意なおばあちゃんが、近所の若いお嫁さんたちに乞われて教えるようなことでも、世間に背中を向けないで向き合っていることになります。
そのためには隣近所を含めてうわべの付き合いはあっさりと受け入れてください。(本書111pより)>

名付けて「フリーランス老人」という自由な立場。
しかし、この付き合いすらも避けてしまっては、「偏屈」であり、本当に孤立化してしまう。
何か役割を頼まれたら、快く引き受け、あとは自分のペースでこなすようにしたい。
きっと、「自分の齢でもみなの役に立つんだ」と気づき、それは年齢呪縛をほどくきっかけともなるはずだ。
このように和田さんは、本書を通じて、年齢に囚われがちなシニア世代にエールを送る。

読んでいくうちに元気になって、何かしたくなる1冊だ。

【今日の健康に良い1冊】 『心が老いない生き方―年齢呪縛をふりほどけ!―』和田秀樹著 ワニブックスPLUS新書

文/鈴木拓也
 老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライターとなる。
趣味は神社仏閣・秘境めぐりで、撮った映像をYouTubeに掲載している。
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2023年08月14日

「あなたには子どもがいないからわからない」そう言われたとき、最初に返したい一言

「あなたには子どもがいないからわからない」そう言われたとき、最初に返したい一言
2023年08月13日 PRESIDENT Online

2023年上半期(1月〜6月)、プレジデントオンラインで反響の大きかった記事ベスト5をお届けします。
人間関係部門の第3位は――。(初公開日:2023年4月30日)

誰かに共感やねぎらいの言葉をかけようとして、「経験したことのないあなたにはわからない」と拒絶されたときにはどうしたらいいのか。
社会学者の森山至貴さんは「何をもって『わかっている』ことにするのかというハードルの高さは上下する。
そうした拒絶の言葉を批判するのではなく、相手がなぜそういった表現をするに至ったのかという背景に思いを巡らせることで、対処の仕方を考えてはどうか」という――。(第1回/全3回)
※本稿は、森山至貴『10代から知っておきたい 女性を閉じこめる「ずるい言葉」』(WAVE出版)の一部を再編集したものです。

女性A「なんだか疲れているみたい。大丈夫?」
女性B「子どもの夜泣きがひどくてなかなか寝られなくて……」
女性A「想像しただけでも大変そう」
女性B「大変なんてもんじゃないって。あなたには子どもがいないからわからないよ」

■「そんな程度のもんじゃない!」と言いたいときはある
たしかに、経験したことのないことについて軽々しく口にすることは戒められるべきかもしれません。
わかった気にならないで、相手の経験に真摯(しんし)に耳を傾けるべきでしょう。
知ったかぶりほど、相手への敬意を欠いた態度はありません。

とはいえ、だからといって、相手の想像が自分の経験にとうてい及ばないときに、相手の属性を理由にして「あなたにはわからない」と拒絶することは、望ましい態度でしょうか。
もちろん私はこのあと「望ましい態度ではない」と説明していくつもりなのですが、同時に「だからそんなことを言う人は間違っているのだ」と非難することにはためらいも覚えます。

苦しい、つらい、という経験がまさに想像を絶するものであるとき、他者による想像や共感に対して「そんな程度のもんじゃない!」と言いたい気持ちは私にもありますし、誰かがそう叫んでいるときに、その絶望を軽視してはならないと思うからです。
だからここでは、「あなたには子どもがいないからわからない」といった言葉を批判するのではなく、その背後にある発想について考えることで、その発言を生み出した苦しさやつらさにもっとうまく対処できるのではないか、を考えてみたいのです。

■「わかる」のハードルは上下する
このシーンでは、子どものいる女性が夜泣きに困っていることを、話し相手である子どものいない女性ももちろん知っています。
何が問題の焦点となっているかを把握し、共有しているという意味では、子どものいないこの女性もまた「わかっている」のであり、そのことは子どものいる女性だって知っているはずなのです。
でも、子どものいる女性にとってそれは「わかる」と言うにはほど遠い状態のようです。
文字通り休む暇もなく夜中に子どもに起こされることのしんどさ、それが毎日続くことへの絶望感、そういったものを体感していることが「わかる」の意味であると言いたい気持ちは、決して責められるべきではないと思います。

ここですでに明らかになっているのは、何をもって「わかっている」ことにするのかというハードルの高さの設定自体が、会話において決定的な重要性を持っていることです。
うわべだけの誰でも知っている程度のことを知っているというだけで「わかっている」と言ってほしくない、それでは私の経験を共有し、それに心を寄せていることにはならない、という気持ちがわくことも当然あるでしょう。
でも、「わかる」のハードルが固定されておらず、上げることができるということは、下げることだってできるということです。
ハードルを極端に下げ、ほとんど「知ったかぶり」でしかないようなことについても「わかる」のハードルを超えていることにされてしまうことだってありうるのです。
そんなふうに他人によって「わかる」のハードルを下げられたくない、そう思うときに私たちがとっさにしてしまう防御反応がひとつあります。
それが、「○○したことがない人にはわからない」です。
ふだんなら「わかる」という言葉に込めないような極端な含みを持たせることで、ハードルを高く固定してしまおうとするわけです。


■「どうせ他人にはわからない」だけが支えになるときもある
ただ、この極端さには大きな代償があります。
それは、相手の「わかろう」とする努力ではどうにもならない高さにハードルを設定することで、苦しい、つらいといった思いへの共感の回路を遮断してしまうことです。
さらに厄介なのは、あまりにも苦しくつらいときには、「どうせ他人にはわからない」と世間に背を向けることだけが、つらい自分を支えるギリギリの杖のように感じられることもまたある、ということです。

苦しい、つらいと思いつつ、それに対する他者からの共感は拒絶する……これではその苦境から抜け出すことがますます難しくなるばかりです。
だからこそ、「わかる」のハードルが上下に動くことと、それに対する私たちの典型的な防御反応をあらかじめ知っておく必要があるのです。

■絶望的な高さを表現する工夫、共感の回路を閉じない宣言
「経験したことのないあなたにはわからない」と言いたい自分の気持ちを否定するのではなく、「経験してみたら想像以上にたいへんでとても混乱している」などのように、相手が超えられないハードルの設定にならないよう気をつけながら、その絶望的な高さを表現するよう工夫してみませんか。
そのほうが、「わかる」をめぐる断絶を避けつつ誰かに苦しさを分け持ってもらえる可能性は高まります。

他人から「経験したことのないあなたにはわからない」と言われたらどうしたらよいでしょうか。
私なら「そうかもしれませんね」と返答しておきます。
相手が「わかる」のハードルを高く設定したい気持ちを尊重しつつ、共感の回路をこちらからは閉じないよ、と宣言しておく。
あとは相手にゆだねて気長に待つ、くらいでよいのではないでしょうか。

■抜け出すための考え方
「わかる」のハードルは上下するからこそ、ハードルを下げてほしくないと思う側は「経験したことがないあなたにはわからない」といった極端な発言をしてしまいます。
その極端さが悪循環を生むことを理解し、お互いの経験の違いが共感の回路を遮断しないよう、開いておくべきでしょう。

もっと知りたい関連用語【インターセクショナリティ】
アメリカの弁護士、キンバリー・クレンショーが1989年に論文の中で提示した言葉で、交差性とも訳されます。(おもに)女性差別が黒人差別や同性愛差別など、さまざまな差別と相互依存的に成立していることを指す言葉で、女性がそれぞれに置かれた立場の違いを超えて互いの抑圧を解消していくことを目指すためのスローガン的役割を果たしています。

「わかる」が女性を経験で分断しないよう、「わかって」おくべき苦しさやつらさをより精密に、総体的に描くための発想を提示したものとも言えるでしょう。
もっと深まる参考文献パトリシア・ヒル・コリンズ、スルマ・ビルゲ著、下地ローレンス吉孝監訳、小原理乃訳、2021『インターセクショナリティ』人文書院

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森山 至貴(もりやま・のりたか)
早稲田大学文学学術院准教授
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2023年08月15日

これができないとメンタルが蝕まれていく…88歳医師が編み出した「不眠」を一発で解消する驚きの快眠法

これができないとメンタルが蝕まれていく…
88歳医師が編み出した「不眠」を一発で解消する驚きの快眠法
2023年08月14日  PRESIDENT Online

なかなか眠れない状態が続いたとき、どうすればいいか。
浜松医科大学名誉教授の高田明和さんは「実は「眠れない」状況に陥るのは脳の問題だけで、からだは勝手に眠った状態に誘導されていく。
私も、睡眠問題に悩んできた一人だったが、ベッドに入って寝つけないときは体のあちこちが徐々に休息モードになっていくのを感じると、いつのまにか脳も眠りに落ちているのだ」」という――。
※本稿は、高田明和『65歳からの孤独を楽しむ練習 いつもハツラツな人』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

■薬物療法で廃れた対話療法の本当の効果
19世紀から20世紀にかけて活躍した精神分析のパイオニアだったフロイトが、うつ病などの患者に対してまず行なった治療は、「患者さんの話を聞く」というものでした。
患者さんの話を聞き、苦しみの根源がどのような過去の体験にあるのかを探る――それが現在の心療内科における「カウンセリング」的な治療法の出発点となりました。

その後、20世紀末になって精神医学が発達し、うつ病への「薬物療法」が始まったことで、フロイトが行なったような対話療法は、徐々に廃れていきます。
しかし近年、抗うつ剤のような薬物は、「それほどの効き目がないのではないか」とされはじめています。
「プラシーボ(偽薬。プラセボとも)効果」というものがあります。
「この薬は風邪に効きますよ」と言って、ただのビタミン剤などを患者さんに渡すと、その効果を信じた体が免疫力を上げ、風邪の症状などが治ってしまうことがあります。
これまでの抗うつ剤の成果とは、そうしたプラシーボ作用の範囲内ではないか、というのです。

実際のところは、プラシーボというのは言いすぎであり、自殺をしようとするような強度のうつ病に対して、抗うつ剤はそれを引き留める程度の効果はあります。
しかし、その前段階であれば、薬に頼らず、医者がその苦しみを聞きながら一緒に解決する「認知行動療法」が、昨今のうつや不安の治療法の主流になりつつあります。

■「心の内を語れるこんな相手」を確保しなさい
この心療内科の先生と同じような役割を果たしているのが、たとえばキリスト教などの宗教でしょう。
特にカトリックでは、教会で神父に罪や苦しみを打ち明け(告解)、「お前の罪は赦された」と告げられることで、心のケアをしている信者は大勢います。

人は苦しいとき、その心の内を人に聞いてもらうと、気持ちが楽になるのです。
だから、うつへの対策として、人と話すことは重要だ、と言いたいのです。
というわけで、「誰かに心の内を聞いてもらう」ことが、孤独感を抱かずに老化を遅らせることにつながります。
しかし、「そもそも、そうやって打ち明けられる人がいないから、孤独感を覚えるのでないか」と、お思いになるでしょう。 いえ、別に相談する相手は誰だっていいのです。
定期的にクリニックに通って相談するのでもいいし、もしも自分の話をしっかりと聞いてもらえるのなら、お坊さんの説教とか、キリスト教のミサに参加してもいいでしょう(聞いてもらえないなら逆効果になるかもしれませんが)。

市町村の催しには、カウンセラーや心理学の先生に相談できる機会があるかもしれません。
ただ、家族や親しい友人に相談すれば、相手の負担になりかねません。
相手だって、相談されたところで、どうしていいかわからないからです。

本格的にうつの傾向を感じるならば、それこそ心療内科の先生を訪ねてみてください。
心理的な問題のプロに頼むことが、孤独感への対策として重要なことでしょう。

■高齢になると「眠い」という感覚が得られなくなる
年を取ってから孤独感が増す原因には、寝つきが悪くなることも含まれます。
高齢になると、「眠い」という感覚が起こりにくくなります。
あなたがもし、ある程度の年齢の方なら、夜中に目が覚めてトイレに行ったら、その後なかなか寝つけずそのまま朝を迎えてしまった、という経験があるかもしれませんね。
子供のころは、目をつぶれば、ひたすら眠っていました。
遊び疲れたら自然に眠くなるのが普通でした。

ところが年を取ると、脳内で分泌される眠りをコントロールするホルモンの量が減り、「眠い」という感覚が得られなくなっていきます。
体は眠りを欲しているのに、心が眠気を受け付けないせいで、眠れなくなるのです。
「眠れない」という状況を放置しておくと、どんなにメンタルが強い人でも、やがて心が蝕まれていき、孤独感を強く抱くようになってしまいます。
ただでさえ人間関係や健康のことで孤独感が増しているのに、眠れなくなれば、くよくよと将来を憂える時間ばかりが増えます。
すると睡眠不足からうつになるなど、体に悪い影響が出てくることもあるわけです。
ですから、医師は「ハルシオン」などの睡眠導入剤を使うのですが、なかなか効果は現れません。
お酒に頼っても、飲酒はかえって睡眠を浅くしますので、余計に眠りにくい体質が強化されてしまいます。

次に解説する高田流快眠法で「よく眠る」ことが老化を遅らせます。
アルツハイマー型認知症が起こるしくみのところで述べた脳内に生じるゴミのようなタンパク質「アミロイドβ」は、寝ている間に脳から排出されます。
もしも、眠れなくて困っているという場合は、ぜひ、私が編み出した次の快眠法をお試しください。

■体のあちこちが徐々に休息モードになっていく
私も、寝つけない、眠れないという睡眠問題に悩んできた一人ですが、ようやくよい解決法を見出しました。
名づけて「高田流快眠法」です。

実は「眠れない」状況に陥るのは脳の問題だけで、「眠い」という意識や感覚がなくても、体のほう、つまり手や足、胃腸などはひとりでに眠った状態に誘導されていくのです。
だから、ベッドに入ったけれど寝つけない、というときは、目を閉じて、「もう手は眠っているな」「背中は眠っているな」と、体のあちこちが徐々に休息モードになっていくのを感じていくようにします。
するといつのまにか、脳も眠りに落ちていきます。

私はこの方法を編み出してから、毎日、快眠を楽しんでいます。
それまでは、「眠れない、眠れない」と焦るため、逆に意識がはっきりしていっていました。
何時間も坐禅を組んだこともありましたが、これまた余計に頭が冴えてしまい、そのうえふと過去の経験を思い出し、孤独感を蒸し返したりして最悪な心理状態になっていくことがありました。

もし、この入眠法を試しても眠れなければ、逆に起きてしまえばいいでしょう。
朝方にでも眠くなったら眠ればいい。
よくないのは、くよくよ考え続けてしまうことです。

■暇な毎日を繰り返すうちに喪失感と孤独感で頭の中がいっぱいに
孤独に対しても、老後の人生に対しても、男性よりも女性のほうがずっと強い精神を持っています。
一説によると、配偶者が亡くなった場合、妻を失った夫は平均して2年ほどしか生きませんが、夫を失った妻は平均して15年ほど生きるとか。
平均寿命も、2022年の厚生労働省の統計では、男性が81.47歳なのに対し、女性は87.57歳となっています。
ただし、女性のほうがアルツハイマー型認知症になる割合は高いので、必ずしも女性のほうが「老化に強い」ということではありません。

孤独感に関していえば、女性は近所の人などとの付き合いを広げやすく、料理や掃除など、たくさんの「やるべきこと」を見出しやすいようです。
だから決して毎日に退屈はしないし、生活のルーチンも楽しみやすい傾向があります。
男性の場合は、食事にしても出されたものを食べるだけで、自分で作ろうとはしない人が多く、そういう人は、妻が亡くなってからも、自分で献立を考え、料理をすることはほとんどありません。
外食をしたり弁当や惣菜を買ってきて食べるだけ。そして、15分くらいで早々に食べ終わってしまったら、あとはやることがない……。
そんなふうに、献立や調理手順に頭を使うこともなく、暇な毎日を繰り返しているうちに、喪失感と孤独感で頭の中がいっぱいになってしまうわけです。

■会社人間だった人は、家事にどんどん手を出しなさい
このような事実も逆算して孤独感対策に応用するならば、会社人間だった人は、年を取ったら今までやらなかった家事にどんどん手を出すようにしていけばいいのです。
買い物はもちろん、掃除や洗濯、料理に凝るのもいい。
アイロンがけだって裁縫だって、トライしてみればなかなか難しくて、それがまた面白いでしょう。
「家事を究める」も老化を遅らせることにつながるのです。
やってみればあらゆるものは奥深いし、上達することが生きがいにもなってきます。
たとえ自分だけしか食べない食事でも、凝りだせばだんだんと楽しくなります。

それでもどうしても淋しいのであれば、それこそSNSでも発信してみてください。
SNSは、たった数回で誰も反応してくれないとあきらめてはいけません。
もてあましている時間を味方につけて日々のアップ回数を多くし、数週間、数カ月と根気よく発信し続けていれば、やがて誰かが反応してくれるでしょう。

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高田 明和(たかだ・あきかず)
浜松医科大学名誉教授 医学博士
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2023年08月16日

人間爆弾「桜花」と新幹線0系、その数奇な関係

人間爆弾「桜花」と新幹線0系、その数奇な関係
殉職したはずの「発案者」、実は生きていた
神立 尚紀 : 写真家・ノンフィクション作家
2023/08/15 東洋経済オンライン

1945年、日本の敗戦により太平洋(大東亜)戦争が終結し、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)の命でいっさいの軍事活動が禁じられると、それまで陸海軍の研究機関や軍需産業に従事していた多くの技術者が一般の産業分野に流れ込み、戦後日本の復興に大きく貢献した。
その技術移転の範囲はきわめて多岐にわたるが、「世界一優秀」と称される鉄道技術の分野においても、技術者たちが戦時中培った技術や理論を基礎に、重要な役割を果たしている。

特筆すべきは、かつて「夢の超特急」といわれた東海道新幹線の開発に際して生かされた、戦時中の航空技術者たちの研究の成果だろう。
なかでも「人間爆弾」とよばれた特攻兵器桜花を設計した三木忠直は、重い十字架を背負いつつ、平和産業の象徴ともいえる新幹線の車両開発に執念を燃やした。

桜花1.jpg

「桜花」はどのように生まれたのか
海軍航空技術廠長の和田操中将から設計課主任・山名正夫技術中佐のもとへ、「グライダー爆弾の案を持ってきた者がいる。説明するから廠(しょう)長室に来い」との電話が入ったのは、1944年7月のことだった。
海軍航空技術廠(空技廠)は、横須賀市の追浜に本廠、横浜市の金沢八景に支廠を置き、2000人の職員と3万2000人の工員を擁する、海軍の航空機開発、実験をつかさどる組織である。

山名は、新型機の設計を担当する設計課第三班長だった三木忠直技術少佐をともなって、和田中将のもとへ赴いた。
三木は東京帝国大学工学部を卒業後、空技廠に入った技術士官で当時34歳。
双発の陸上爆撃機「銀河」の設計主務者として、急降下爆撃、水平爆撃、雷撃(魚雷攻撃)を一機でこなす流麗かつ高性能な機体を生み出したばかりで、その手腕が高く評価されている。
新型機の研究、開発の仕事に多忙をきわめていた三木は、「どうせまた、すぐには実現困難な案にすぎないだろう」と考え、あまり気乗りしないまま廠長室に向かった。

廠長室には、和田中将と向かい合って大柄な男が座っている。
差し出された名刺には「海軍少尉 大田正一」とあり、右肩のところに「第一〇八一海軍航空隊」とペン書きで添えられていた。
和田中将にうながされて、大田が鉛筆書きの設計図を広げる。
そこにはプロペラも脚もないグライダー爆弾の姿が描かれ、頭部と尾部からのびた引出線の先には、それぞれ「爆薬」「ロケット」と記されていた。
さらに図面の隅には、グライダー爆弾を双発の一式陸上攻撃機(一式陸攻)の機体に吊るした図が添えられている。
一式陸攻で運び、敵地上空で投下するということのようだった。

「それで、誘導装置は?」やや辟易しながら、三木は訊いた。
「人間を乗せます」大田は答えた。
「なんだって?」三木は思わず声を上げた。
大田の説明によれば、一式陸攻で敵艦の近くまでグライダー爆弾を運び、人間が乗り込み、投下する。
あとは滑空しながら搭乗員が操縦し、ロケットを噴かせて敵機の追撃をかわし、敵艦に体当たりする。
つまり、人間が誘導装置になるのだという。

技術は人間を助けるためのものなのに、人間の命を機械の一部品として使うような兵器をつくるのは技術への冒瀆だ、と三木は感じた。
「なにが一発必中だ。そんなものがつくれるか! 冗談じゃない」憤然として首を振る三木に、和田中将が、「技術的な検討だけでもしてあげたらどうか」ととりなす。
三木は大田に、「体当たりというが、いったい、誰を乗せていくつもりだ」と疑問をぶつけた。
「私が乗っていきます、私が」 気迫に満ちた大田の答えに、三木は不意をつかれた思いがしたという。

発案者が自ら操縦し、“殉職”へ
結局、大田の案は採用され、発案者・大田正一の頭文字をとって○大(マルダイ。○のなかに大)と名づけられた「人間が操縦するグライダー爆弾」――のちの桜花――の設計を、三木が担当することになる。
桜花の開発は順調に進み、桜花特攻の部隊として第七二一海軍航空隊(神雷部隊)が編成される。
神雷部隊は1945年3月21日を皮切りに、九州、沖縄にアメリカアメリカ艦隊の攻撃に出撃したが、優勢なアメリカ戦闘機に阻まれてその多くが撃墜され、桜花は海軍が期待したような戦果を挙げることはできなかった。

神雷部隊の戦没者は、桜花搭乗員55名をふくめ829名にのぼる。
終戦3日後の1945年8月18日、桜花を発案した大田正一は、零式練習戦闘機を自ら操縦して茨城県神之池基地を離陸し、空のかなたに消えた。
海軍は、大田を「公務死」(殉職)と認定、その存在を抹消した。

戦争に負けた日本は、占領軍(GHQ)によって航空機産業を禁じられた。
三木は、特攻兵器を設計した自責の念から「二度と戦争に関わらないように」と、軍事に転用される可能性が低いと思われた鉄道技術者になることを決意し、運輸省鉄道技術研究所(1949年、国鉄に移管)に転身する。
このとき、三木とともに鉄道技術研究所に入ったなかには、振動学の権威で、空技廠で零戦や桜花の振動問題を研究、解決した松平精もいた。

松平は当時のことを、私に次のように語っている。
「国立にある研究所に行ってみたらびっくりしましたね。
研究所というからには大きな建物や実験棟があって、と想像してたんですが、そんなもの全然ないんですよ。
森のなかにバラックが3棟ぐらいあるだけで、そのバラックの裏はイモ畑になっていて職員がイモを掘ってる。
私はそれまで海軍空技廠という世界有数の研究所にいたから、こんなところでなにができるんだろう、と思いましたね」

飛行機に限らず物体が高速で動けば、自ら振動を発生する(自励振動)という性質がある。
このことを空技廠で、世界に先駆けて研究したのが松平だった。
しかし、脱線事故の調査に携わった松平が、「高速走行で、列車が自励振動による蛇行動を起こしたための脱線」と事故原因を突き止めても、昔からの鉄道技術者は「レールの曲がりが原因」として、「スピードの出しすぎ」という運転手の人為的な責任を認めようとしない。
車両設計に携わった三木忠直にしても、航空機の経験から、「車体を流線形にして空気抵抗を軽減し、なおかつ車両を軽量化すればスピードは上げられる」と主張したものの、「車体は重いほうが安定して走れる」と頑固に考える鉄道技術者を説得するのは至難のわざだった。

「夢の超特急」誕生のきっかけ
ところが、あることをきっかけに三木や松平の考え方が広く世の注目を集めることとなる。
1957年5月30日、鉄道技術研究所が50周年記念事業として開催した、「超特急列車、東京−大阪間3時間への可能性」と題する講演会である。
当時、7時間半を要した東京−大阪間の所要時間を半分以下に短縮しようというのだ。
これは、三木が生前私に語ったところでは、当時、普及し始めた航空機輸送への対抗策との意味合いもあったという。
この講演会は国電の車内吊広告で告知され、朝日新聞にも予告記事が掲載された。
講演会当日はあいにくの雨だったが、会場となった銀座・山葉ホールには定員の500人をはるかに超える聴衆が詰めかけた。

はじめに鉄道技術研究所長・篠原武司が、広軌(標準軌)で新しい路線をつくれば、「東京−大阪間3時間」は到達可能であることを述べ、次に貨客車研究室長だった三木が「車両について」、軌道研究室長・星野陽一が「線路について」、車両運動研究室長の松平が「乗り心地と安全について」、さらに元陸軍の通信技術者で信号研究室長の川辺一が「信号保安について」のテーマで、それぞれ講演した。
三木が、「車両の空気抵抗を減らし、重量を軽くすれば時速200kmを超えます」と持論を述べたとき、会場にはどよめきが広がったという。
講演会は大きな話題を呼び、国鉄総裁・十河信二は自らの前でもう一度講演を行うよう鉄道技術研究所に要請、総裁や国鉄幹部を前にしての「御前講演」も実現した。

前年の1956年には国鉄本社に島秀雄技師長を委員長とする「東海道幹線輸送増強調査会」が設置されていたが、この講演を機に東海道新幹線建設がにわかに現実味を帯びることとなった。
国鉄は新幹線開発を8つの重点班に組織し、本格的な研究を始めた。

三木は、「美しいものをつくれ」と部下に命じて、空気抵抗の少ない先頭車両のデザインを粘土で作らせては壊すことを繰り返した。
それは、「形の美しいものはすぐれたものである」という、海軍時代からの信念に基づくものだった。
でき上がったデザインは、これまでのどんな鉄道車両にも似ていない、強いて言うなら戦時中、三木が設計した陸上爆撃機「銀河」や特攻機「桜花」の先端部分のイメージに似たものになった。

松平は飛行機の振動研究のノウハウを生かして、高速走行時の振動問題を抑え込むためのエアダンパーを考案した。
元陸軍の川辺一は、緊急時に自動停止するATC(自動列車制御装置)の研究に取り組んだ。

桜花の発案者は生きていた
もちろん、新幹線という国家的プロジェクトが彼らの力だけで完成したわけではない。
車両デザインにしても、国鉄は三木のチームだけでなく、車両メーカーからデザイン案を9案、出させたりもしている。
だが結局、いまでは「0系」と呼ばれる先頭車両の完成形は、三木が手がけたデザインとほとんど変わらないものになった。
車台の振動を吸収するダンパーにいたっては、松平のほかに設計できる技術者はいなかった。
そして1964年10月1日、東海道新幹線は華々しく開業の日を迎えるが、三木はそれを待たず、1962年4月、新幹線車両の走行テストが始まる直前、「自分の力は出し尽くした。絶対に自信がある。あとのことは心配ない」と鉄道技術研究所に辞表を出した。

三木は戦後、キリスト教に入信している。
桜花を設計し、多くの若者がそれで死んだことへの贖罪に後半生を捧げたが、戦後日本の復興と平和の象徴ともいえる新幹線車両を手がけたことが、三木の心のなかでひとつの安らぎとなり、区切りになったのかもしれない。

松平精は2000年8月4日、90歳で、三木忠直は2005年4月20日、95歳で、それぞれ世を去った。
ところで、「桜花」を発案し、終戦直後に死んだこととされた大田正一は、じつは生きていた。
戦後すぐの頃から、職と居場所を転々としながら桜花や空技廠関係者の前に幾度となく姿を見せ、「大田が生きている」ということは、いわば公然の秘密として三木忠直の耳にも入っていたという。
だが大田は、1951年を境に、ふっつりと関係者の前から姿を消した。
「闇屋どうしの争いに巻き込まれて殺されたのだ」という噂が流れたりもしたが、大田は戸籍を失い、「横山道雄」と名を変え、年齢を偽り、新たに築いた家族にさえ長いあいだ自らの正体を明かさずに、1994年まで生きたのだ。

私は、偶然に出会った大田の遺族を通じてその後の大田の数奇な生き方を知り、取材を重ねて今年6月30日、『カミカゼの幽霊』(小学館)という本を上梓した。
大田はなぜ、「死人」となって生き続けなければならなかったのかを、桜花を積極的に採用した海軍上層部の責任とともに解き明かそうとした一冊である。

桜花の発案者と新幹線0系の邂逅 戦後の大田の足取りを追ってみると、ときどき新幹線を利用した形跡がある。
太田はその車両が、空技廠で桜花の採用を談判したときのあの技術者が手がけたものだと知っていただろうか。
もし、戦後どこかで三木と大田が再会していたら、どんな会話が交わされただろうか。

私は、偶然に出会った大田の遺族を通じてその後の大田の数奇な生き方を知り、取材を重ねて今年6月30日、『カミカゼの幽霊』(小学館)という本を上梓した。
大田はなぜ、「死人」となって生き続けなければならなかったのかを、桜花を積極的に採用した海軍上層部の責任とともに解き明かそうとした一冊である。
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2023年08月17日

夏バテになぜなるの?対策は? お盆明けは特に要注意…医師に聞く【みんなのハテナ】

夏バテになぜなるの?対策は? お盆明けは特に要注意…医師に聞く【みんなのハテナ】
8/16(水) KSB瀬戸内海放送  

Park KSBアプリに皆さんから寄せられた疑問をもとにお伝えする「みんなのハテナ」です。
今回は「夏バテ」に関するハテナです。

 お盆休みを自宅や帰省先などでゆっくりと過ごした方も多いのではないのでしょうか?
 気象による体調の変化に詳しい医師は「お盆明けこそ夏バテに注意してほしい」と呼び掛けています。
夏バテの要因やどうすれば防げるかを聞きました。

■「なぜ夏バテになるの?」(高松市 うめにゃん 52歳)
 気象による体調変化に詳しい、せたがや内科・神経内科クリニックの久手堅 司(くでけん・つかさ)院長です。
「夏バテっていうのは高温多湿な状態にいることで、体が疲れを覚えてしまって、胃腸の不調だとか、倦怠感とか、冷え性と、さまざまな症状が出ることを言います」
 久手堅院長によると「夏バテ」は体が夏の高温多湿な環境に対応できずに起こる不調のこと。
倦怠感や食欲が落ちる、寝つきが悪い、頭が痛い……など症状は人によって違います。

 そして、夏バテの要因で気を付けるべきなのが……。 (せたがや内科・神経内科クリニック/久手堅 司 院長)
「高温と多湿、この2つの状況にプラス、暑いだけではなくて、冷えてる環境があるっていうこの3つ目のポイントが大事」  家や職場でエアコンが利いた部屋に長時間いたあと、暑い中、外出する。

久手堅院長は屋内と屋外の急激な気温の変化が「夏バテ」の原因の1つだとしています。
 屋内外の気温差が激しいと、体温を調節する自律神経に過度な負担がかかってしまいます。
これによって自律神経が乱れ、倦怠感や食欲が減るなどの体調不良につながり「夏バテ」になってしまいます。

 このほか、台風の接近で気圧が下がることも自律神経が乱れる要因になるということです。
 給湯器の販売などを行うリンナイの調査によると、夏バテの対処法としては約6割の人が「体を冷やす」と回答しました。
これに対し、久手堅院長は体を冷やすことは「暑さ対策としては有効」だが「夏バテ対策には注意が必要」だとしています。

 また、いつもと違う生活をした「お盆明け」は自律神経が乱れやすく、特に「夏バテ」に注意が必要です。 (せたがや内科・神経内科クリニック/久手堅 司 院長)
「人間の体ってそんなに、いきなりアクセル全開で踏み込んでっていうのができなかったりする。
(お盆は)生活リズムも変わるじゃないですか、旅行とか。どうにか頑張ってくるんだけど、それが明けると一気に疲れとか不調がでてくる方もいる」

■「どうしたら夏バテにならずにすむの?」(笠岡市 8っ4 57歳)
(せたがや内科・神経内科クリニック/久手堅 司 院長)
「夏バテにならないためのポイントとしては、まず体温調整を気を付ける」
 急激な気温の変化が夏バテの要因の一つです。

 屋内と屋外の気温差の影響を和らげるため、屋内では上着を1枚羽織る、1時間に1度は歩いたり、肩を回したりなどの軽い運動をするのがおすすめです。
 汗をかいたらこまめにふき体が冷えないようにする。
また、日頃から30分ぐらいの軽い運動やゆっくりと湯船に浸かるなど、「汗をかける体作り」をすることも大切だということです。
 そして大事なのが……。 (せたがや内科・神経内科クリニック/久手堅 司 院長)
「『脳腸相関』と言われる言葉があって、脳と腸が互いに関係しているってことなんですけど、胃腸の不調が出てくると脳の自律神経の不調が出てくるので」
 久手堅院長によるとヨーグルトや納豆などの発酵食品を定期的にとることで腸の働きが良くなるとのこと。
 腸は冷えると活動がにぶくなるため、冷たい食べ物や飲み物をとりすぎず、バランスの良い食事をとることが重要です。

 「夏バテ対策」をする上で最も重要なのが熱中症対策との兼ね合いです。
(せたがや内科・神経内科クリニック/久手堅 司 院長)
「今ぐらい暑い状態だと、まず熱中症にならないように対策をしていただくことを優先にしたほうがいい」
 夏バテと違い、熱中症は即座に命にかかわる危険があります。
水分や塩分補給は十分に。
エアコンも使用を控えるのではなく、直接、体に風が当たらないように除湿を使うことで夏バテ予防にもつながります。

KSB瀬戸内海放送
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人間爆弾「桜花」とニッポンの戦後の78年

【終戦記念日スペシャル対談:湯川れい子氏×神立尚紀氏】
人間爆弾「桜花」とニッポンの戦後の78年(前編)
2023.08.15  週刊ポスト

 終戦から今年で78年。戦時を知る世代も高齢となり、その数は年々減っている。
後世にどのように戦争と平和を伝えていけばいいのか──軍人の家系に育った音楽評論家・湯川れい子氏(87)と、これまで500人以上の元軍人・遺族にインタビューをしてきたジャーナリスト・神立尚紀氏(60)が、貴重な思い出と証言を交えて語り合った。【前後編の前編】

戦死した兄の口笛

神立:
お兄様の湯野川守正さんには生前何度もお話をお聞かせいただき、大変お世話になりました。
本日はお会いできて、本当に光栄です。

湯川:
私も嬉しいです。
15歳上の次兄・守正は私にとって男性として一番魅力的な存在でした(笑)。

神立:
大変仲がよかったとお聞きしています。

湯川:
私には兄が2人いましたが、長兄と次兄とは、性格がぜんぜん違いましたね。

神立:
一番上のお兄様との思い出が、湯川さんが音楽の道を歩むきっかけになったそうですね。

湯川:
はい。昭和19年4月に海軍大佐だった父が亡くなり、その年の6月には18歳上の長兄に赤紙が届いて。長兄は戦地に行く直前、当時住んでいた家の庭に防空壕を掘っていってくれたんです。
3日間泥まみれになって掘る兄を、幼い私は母と庭にゴザを敷いて見ていました。

神立:
お母様は病弱でいらっしゃったとか。

湯川:
はい。母と私は兄の休憩のたびに手拭いを水で濡らしたり、お茶や梅干しを出したりしていました。
長兄は穴を掘りながら、私を退屈させないためか、童謡『めえめえこやぎ』などを歌ってくれて。
その合間に、すごくきれいな口笛を吹いていたんです。
それで「その曲は何ていう歌ですか」と聞いたら、「僕がつくった歌だよ」って。

神立:
上のお兄様はその後、フィリピン・ルソン島で戦死してしまわれる。

湯川:
そうなんです。ところが終戦後、驚きの体験をします。
中学生になった私が発熱して寝込んでいたとき、母が本ばかり読んでいるとまた熱が出るから音楽を聴いていなさいと、木製の大きなラジオを枕元に置いてくれて。
でも当時は音楽といっても浪曲ばかりで。
仕方なく進駐軍放送を聴いていたら、初めて聴くはずなのに私が一緒に歌っていたんです。
それが長兄の口笛の曲でした。

神立:
どんな曲ですか。

湯川:
調べるとハリー・ジェームス・オーケストラの『Sleepy Lagoon』という曲だとわかって。
アメリカでは1941年から翌年、つまり真珠湾攻撃の頃に流行った曲を、兄は口笛で吹けるほど聴いていたことになるんですね。
その驚きが、私の音楽に対する初めての大きな経験になったんです。

神立:
戦前は日本の若者もアメリカ文化に影響されていたようですよね。

湯川:
長兄が残した日記には、赤紙が届く1か月前まで外国映画を頻繁に観ていたと記録されていて、主演俳優の名前とか、寸評まで書かれていました。
茶封筒に入った洋楽レコードもいくつか残っていました。

神立:
戦争中は敵国の音楽を大っぴらには聴けなかったんでしょうね。

湯川:
思えば私が曲名を訊いたときは母も隣にいましたから、「いまアメリカでヒットしてる曲だよ」なんて言えるわけがない。
母は軍人の妻ですし、そんな敵性音楽を聴いていたら憲兵に逮捕された時代です。
aahhaah/\//肇慶は長兄は、危険を冒してでも聴くほど、アメリカの音楽が好きだったんですね。

神立:
そういえば鹿屋基地から出撃した特攻隊パイロットの辞世の句に「ジャズ恋し/早く平和が/くればいい」と詠んだものがあったそうです。

湯川:
戦争のせいで無惨に死んでいった若者が大勢いたということですね。
「私は泣きわめく女になります」

神立:
お兄様だけでなくお父様もモダンでしたか。

湯川:
はい。ばりばりの軍国少年だった次兄以外は、みんなモダンでしたよ(笑)。
私が3歳くらいの頃、週末の夜になると応接間の蓄音機に長兄や11歳上の姉が針を落として、両親がダンスを踊っていました。

神立:
当時としては、かなり珍しいですね。

湯川:
私は父の足の甲に乗って、太ももに抱きつき、サンドウィッチになってダンスしていました
ワルツとかフォックストロットとか。楽しい思い出です。
それが私の音楽初体験だったと思います。

神立:
両親の出身地である米沢は文武両道の風土だそうですね。

湯川:
はい。特に父は漢詩が好きで、床の間には自作の詩が貼ってありました。父が息子たちに言っていた「千鈞の弩はけい鼠のために機を発せず」という言葉も強く記憶に残っています。
「大きな怒りは弱い者に向けるな」という意味だそうです。

神立:
お父様は連合艦隊司令長官だった山本五十六のご親戚だそうですね。

湯川:
父のいとこが山本五十六の妻にあたります。
海軍大佐だった父は中国の上海や青島で駐在武官を経験した後、軍令部で作戦指揮に携わった。
五十六さんとは海軍同士で、直のいとこのような付き合いだったようです。

神立:
次兄の湯野川守正さんは南方に出陣する際、戦艦武蔵に山本五十六さんを訪ね、挨拶されたとおっしゃっていました。

湯川:
私も五十六さんのお葬式に出ているんです。まだ小さかったから、天皇陛下からの供物の落雁が積まれているのを見て「一つほしいな」と思った記憶が(笑)。甘いものがない時代でした。

神立:
次兄の守正さんは昭和19年8月に特攻隊に志願、10月には神雷部隊に配属されています。
その頃のことは覚えていますか。

湯川:
私と母と姉は米沢の祖母宅に疎開していました。
ある日「今日は大切なラジオを聴きましょう」と言われ座らされました。
耳管にり時間になると次兄の「ただいまからお国のために戦ってまいります」という元気な声が聞こえて、母もそれが息子の最後の声だとわかっていたはずですが、涙ひとつ見せませんでした。

神立:
守正さんは人間爆弾ともいわれた「桜花」の分隊長になられますが、出撃のないまま終戦を迎えています。
しかし、さらに密命がくだり、島根県の温泉津という町で「海軍一等整備兵曹・吉村実」として、潜伏生活を送ったと聞いています。
ご家族からすると、戦争に行ったまま行方不明だったわけですよね。

湯川:
はい。次兄は戦死したものだと思っていました。母は夫が亡くなり、長男は戦死、次男も特攻隊でしたが、一切泣きませんでした。
後年、私が母に泣かなかった理由を聞いたことがあります。
すると「世の中の人たちがみな同じ思いをして戦っているのに、軍人の妻が泣けるわけないでしょう」と。

神立:
軍人の妻だという覚悟を強くお持ちだったんですね。
湯川:だから私は、母に言いました。
「私は泣きわめく女になります。自分の子供が戦争にとられて死んでいくのを、平気な顔をして見ていられる親にはなりたくない」と。それを聞いた母は「そうなれたら本当にいいわよね」と言いながら、初めてぽろぽろと涙をこぼしました。

(後編に続く)

【プロフィール】
湯川れい子(ゆかわ・れいこ)/
1936年、東京都生まれ。1959年、ジャズ専門誌『スイングジャーナル』への投稿が評判を呼び、ジャズ評論家としてデビュー。
早くからエルヴィス・プレスリーやビートルズを日本に広め、現在も独自の視点で国内外の音楽シーンを紹介し続けている。作詞家としても多くのヒット曲を手がけ、訳詞、翻訳家としても活躍。


神立尚紀(こうだち・なおき)/
1963年、大阪府生まれ。1995年、戦後50年を機に戦争体験者の取材を始め、これまでインタビューした旧軍人、遺族は500人を超える。
『祖父たちの零戦』、『特攻の真意 大西瀧治郎はなぜ「特攻」を命じたのか』など著書多数。
NHK朝ドラ『おひさま』の軍事指導など映像作品の考証、監修も手がけている。

※週刊ポスト2023年8月18・25日号
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2023年08月18日

【終戦記念日スペシャル対談:湯川れい子氏×神立尚紀氏】人間爆弾「桜花」とニッポンの戦後の78年(後編)

【終戦記念日スペシャル対談:湯川れい子氏×神立尚紀氏】
人間爆弾「桜花」とニッポンの戦後の78年(後編) 
2023.8.15 週刊ポスト

 終戦から今年で78年。
戦時を知る世代も高齢となり、その数は年々減っている。
後世にどのように戦争と平和を伝えていけばいいのか──軍人の家系に育った音楽評論家・湯川れい子氏(87)と、これまで500人以上の元軍人・遺族にインタビューをしてきたジャーナリスト・神立尚紀氏(60)が、貴重な思い出と証言を交えて語り合った。【前後編の後編】

「桜花」発案者の戦後
桜花2.jpg
神立:
(湯川の次兄・湯野川)守正さんはフィリピン・レイテ島沖で敵艦隊への体当たり攻撃を内示されたものの、桜花輸送中の空母が撃沈され、出撃することはありませんでした。
特攻兵器・桜花を発案したとされる大田正一という人物についてはご存じでしたか。

湯川:
いいえ。神立さんがお書きになった『カミカゼの幽霊』、たいへん興味深く拝読しました。
大田さんについては知りませんでしたが、兄も終戦後、地下に潜るようにとの指令を受けていたこともあり、とても感銘を受けました。

神立:
守正さんとお話ししている中で大田の名前が出たことは?

湯川:
それも一度もありませんでした。

神立:
そうですか。それにしても守正さんが生きて帰ってきたときは驚かれたでしょう。

湯川:
夜、米沢の家で突然顔を見たときは、腰を抜かさんばかりに驚きました。
母はもしかしたら生きているのを知っていたのかも……。

神立:
無事復員し、家族水入らずの平穏な暮らしが戻ったわけですね。

湯川:
そうはいかなかったんです。
兄がしょっちゅう夢にうなされて、夜中に汗だくで飛び起きるんですよ。
「まだ行くな!まだ死ぬな!!」と叫んで。いまでいうPTSDのような状態でした。
特攻に行く部下を見送る夢を見ていたのでしょうね。

神立:
取材者である私にはそういった弱い所は一切見せず、最後まで軍人精神を横溢させていました。
ひとたび出撃すれば搭乗員の命が絶対に助からない桜花についても「いまの日本にこれしかないんだったら、これを有効に使ってアメ公どもを地獄に叩き込んでやろうと思っていた」と話してくれました。

本土決戦の準備で小松基地にいたときも、「もし敵が上陸してきたら、自分の部隊だけで敵の一個師団をやっつけてやるぞ」と非常に戦意旺盛な方でした。

湯川:
いや、それも兄の真実だったと思います。
ただ戦後に妹の私が見た兄は、本当に本当に苦しんでいましたよ。

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【終戦記念日スペシャル対談:湯川れい子氏×神立尚紀氏】

 1945年4月、沖縄本島へ上陸した米軍に未使用状態で鹵獲(ろかく)された桜花 1945年4月、沖縄本島へ上陸した米軍に未使用状態で鹵獲(ろかく)された
  終戦から今年で78年。戦時を知る世代も高齢となり、その数は年々減っている。
後世にどのように戦争と平和を伝えていけばいいのか

神立:
 神立:
無事復員し、家族水入らずの平穏な暮らしが戻ったわけですね。 湯川:そうはいかなかったんです。兄がしょっちゅう夢にうなされて、夜中に汗だくで飛び起きるんですよ。「まだ行くな!まだ死ぬな!!」と叫んで。いまでいうPTSDのような状態でした。特攻に行く部下を見送る夢を見ていたのでしょうね。

神立:
大田正一は戦後、名前や年齢を偽って生きたんですが、そういった思いもあったのかもしれません。

湯川:
大田さんは残虐な兵器の発案者として白眼視されがちですが、戦況を考えると、あのような自爆兵器が開発された現実はわかると兄は言っていました。
自分の乗る機の翼に火がついたら、もう敵機や敵艦にぶち当たっていくしかない。
国やそこに住む家族を守ろうと思って戦っている人間にとって、それは仕方がない必然だったと。それが戦争だと。
特攻は絶対に許されないことですが、大田さんが考えなくても、別の誰かが考えたんじゃないかと思います

「戦争は悪い」の先を書く
神立:
これまで多くの元軍人やご遺族の方にお話を聞いてきましたが、終戦のとき20歳だった人でも、現在は98歳になります。
元零戦パイロットでご存命の106歳の方もいらっしゃいますが、今後新しい取材というのはなかなか難しい。
これまでお聞きしたことをさらに掘り起こす作業に移らねばと思っています。

湯川:
戦争を知る世代が、次々と鬼籍に入っていますからね。

神立:
夫を戦争で亡くした女性が戦後に再婚するケースは多いのですが、戦後60年を経過したくらいから、その再婚相手が亡くなったのを機に慰霊祭に参加する女性も多いんです。
「やっと最初の夫のお参りができます」と。再婚相手の方には気の毒ですが、そういう感情をずっと抱えてきた女性も多いことを知り、感慨深かったです。

湯川:
戦後、次兄が自衛隊に戻るんですが、私と母は大反対しました。
そのとき、次兄は「戦争は戦争の悲惨さ、戦争をすることがいかに間違いかということを体験した人間にしか止められないんだ」と言ったんです。
それは本当にそうだろうと思いますね。

神立:
最前線で何人もの部下を失った人にしか言えない言葉の重みがありますね。
特攻隊員の生き残りの中には、指揮した人間が許せないと言って恨む人もいます。

湯川:
次兄は「傷のないやつ、瑕疵がないやつが組織のトップになるが、それが間違いのもとだ」と言っていました。
失敗の経験がないから、何度も同じ間違いを犯すことになる。
これはいまの日本の政治を見ていても思うことです。

神立:
特攻もそうですが、平和なときなら絶対にありえない愚かな行為に人を駆り立てるのが戦争ですからね。

湯川:
私がいつも思い出すのはジョン・レノンとオノ・ヨーコさんの言葉。
湾岸戦争とか、世界で戦乱が起きるたびにメッセージを出してってお願いをしたのですが、返ってくるのは「War is over, if you want it」だけ。ほかのフレーズを出してって言っても絶対に出てこないんです。
結局、一人ひとりが戦争を終わらせようと考えない限り戦争はなくならない――彼女たちは、あの段階からわかっていたんですよね。

神立:
もはや「戦争は悪い」なんていうのは決まりきったことなので、これからは「こういう人がこういう人生を歩んだんだよ」という描写を通じて、淡々と人の心の奥に訴えていくような、後の世代にも伝わるような本を書いていければと思っています。

湯川:
ありがとうございます。
音楽も平和な場所でしか存在しない。
だからこそ、これからも戦争体験者の志を引き継ぎ、伝え続けていけるよう、私も頑張ろうと思います。
私はちょっと年を取り過ぎちゃったけど(笑)。

(了。前編から読む)
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2023年08月19日

安倍政権でさえ忘れる日本...我々は歴史から学べないのか

安倍政権でさえ忘れる日本...我々は歴史から学べないのか
8/18(金) ニューズウィーク日本版

<忘れられたニュースを問う石戸諭氏のコラムの最終回。安倍元首相死去から1年の区切りでも、メディアは山上容疑者の動向などを追うばかり。賛否が分かれた憲政史上最長の政権を検証する動きはあまりにも乏しい>
安倍晋三元首相が亡くなってから7月で1年を迎えた。
この間、私にとっての驚きは1年の節目が安倍政権とは何だったかという議論よりも、手製の銃で安倍氏を撃った――現段階では厳密に言えば「撃ったとされる」だが――山上徹也被告の近況や、山上被告の母親が入信している旧統一教会の話題がメディア上での主要なトピックになったことだった。

それ以外ではせいぜい自民党の最大派閥で保守色の強い旧安倍派を今後、誰が束ねるのかが話題になっていたぐらいだろう。

今の日本社会において亡くなってしまうということは、存在そのものが過去になってしまうという現実をまざまざと見せつけられた。
安倍氏は日本の憲政史上、最も長く権力の座に就いた政治家だ。
それも正統かつ民主的な選挙を重ねて選ばれてきた。
その功罪の議論が盛り上がらず、過去になっていくのは忍びないものがある。

■政策的にリベラルな面もあった
生前に長時間インタビューを重ねて出版された安倍氏の回顧録は順調に増版し、ベストセラーになってはいる。
だが、それを基にして「アベノミクスの功罪」「集団的自衛権の解釈変更の是非」にまで議論を発展させている論客は限られるし、マスメディアが適切に議題を設定できているとは言い難い。

私個人の見解で言えば、安倍氏がアベノミクスで進めた金融緩和は労働市場にも好影響を与え、明らかに良い効果があった。デフレ脱却という面から見れば、欧米ならリベラル、左派政党が主張するスタンダードな政策だ。
むしろ旧民主党政権がこの方向に舵を切れなかったことが、同政権や下野した旧民主党系勢力への幻滅を生んだ一因になっていると考えている。

だが、税率が5%から8%、10%になった消費増税は金融緩和というアクセルと同時に景気のブレーキを踏むようなものだったし、効果的な財政出動も十分とは言い難かった。
ここは野党が突くべき論点なのに、一部を除き相変わらず漠然とした「アベノミクスか否か」ということばかり議論している。

安倍政権という「歴史」を問う姿勢が必要
また、集団的自衛権を認めるのならば、真正面から改憲を問うのが筋だったのではないかと思う。
東日本大震災からの復興、新型コロナ禍での政治......。
安倍氏に問えることはもっとあったし、安倍氏自身も語りたいことがたくさんあっただろう。

野田佳彦元首相が追悼演説で語ったように「安倍晋三とはいったい、何者であったのか。あなたがこの国に遺したものは何だったのか」を問うことは今でも必要だ。

長期政権から教訓を引き出し、学ぶという意味でも。そして政治家に限らず、人間は暴力によって命を奪われてはいけない。この点を忘れないためにも、私も安倍政権という歴史を問うていきたいと思う。

当コラムはこれが最終回である。インターネット時代のニュースは常に更新の波にさらされる。
だが、本当に必要なのは波に流されず、じっと考える時間だった。
それを理解してくれた読者――と支えてくれた編集部――への御礼で締めたい。
ご愛読ありがとうございました。
また、どこかで。

石戸諭(ノンフィクションライター)
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2023年08月20日

国民がマイナンバーカードを作らないのは制度不信とは関係ない 「だって現状、不便がないから」

国民がマイナンバーカードを作らないのは制度不信とは関係ない 「だって現状、不便がないから」
8/19(土) マネーポストWEB

 マイナンバーカードをめぐって、健康保険証や公金受取口座との紐づけミス、住民票誤交付などのトラブルが続いたことで、野党やメディアからの批判が続いている。
カード返納の動きも出ていると報じられているが、マイナンバーカードを申請しているのは、8月13日時点で約77%(交付されているのは約75%)。
いまだ5人に1人以上は申請していない現状がある。
マイナンバーカードを作ろうとしない人たちは、どのような考えを持っているのか。
ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が考察する。
 * * *  
一定数の人々がマイナンバーカードに反対していますが、テレビと新聞が徹底的に批判し、恐怖を煽っているのも大きいのではないでしょうか。
毎度のことですが大メディアは政権批判に使えるネタであれば、「これは数字が取れる!」として報じ続ける。
 そこで紹介されているのは主に高齢者の不安の声ですが、「紙の保険証が使えなくなるのは困る」「悪用されて銀行口座からカネを下ろされてしまうのでは」「誰かが自分になりすましたらどうしよう」といったものがあります。
 まぁ、別の理由としては「メディアが怖いと言っている」「私の全財産が政府・役所に筒抜けになってしまう」「政府に私の行動を監視されるのはイヤ」「遺産を没収されたら困る」といったところもあるかもしれません。

 2015年、安全保障関連法が成立した時、左派メディア・政党は「戦争法案」と呼ぶなどして殊更に恐怖を煽り「民主主義の危機」を訴えました。
2013年の特定秘密保護法の議論の際は、「居酒屋で上司を殴る相談を2人以上でしたら逮捕される」「政府批判をしたら逮捕される」「原発の情報が隠蔽される」などと、なんでもかんでも共謀罪に結び付けられることを危惧し、これまた危険性と民主主義の崩壊を訴えた。

 マイナンバーカードの問題について東京新聞は、長崎県の医師が女性スタッフに自分のカードを渡したうえでカラープリントした自身の顔写真をお面のようにかぶらせ、カードリーダーを突破できるかの実験を紹介。
「なりすまし」の危険性に言及しました。

申請していない人々の2つの理由
 このようにメディアはことさらにその制度の信頼性について疑義を呈している印象ですが、しかしながらマイナンバーカードを申請しない人は、そこまで恐怖心を持っているわけではないと私は考えています。
申請していない人々に話を聞くと、多かったのは以下2つの理由でした。
【1】申請をするのが面倒くさい
【2】現状、不便がない

【1】については、写真を撮影したり、どこかに保管したマイナンバーを見つけ出さなくてはいけず、さらに申請の手順が面倒と考える。
どれだけ「スマホやPCでできますよ!」と利便性を伝えても「ワシはアナログ人間じゃ!」で終了。
そんなことだから【2】の状態に至り、「別に困ってることはないからな。本当に必要なのであれば、その時に息子にでも頼んでやってもらえばいい」なんて高齢者は考えています。

 マイナンバーカードに肯定的な人は、この手の人々に対して「便利になるのをなぜ拒む?」「新しいものを恐れるのはバカ」「デジタル化に対応できないオワコン野郎」「メディアの恐怖煽りに乗っかる情報弱者」と散々な言いよう。

しかし、申請しない人からすれば「だって不便がないから私の勝手でしょ? 不便な時が来たら作るよ」というのが本音なのです。

 海外に目をやると、アメリカのソーシャルセキュリティナンバーは広く普及(かつて約5年だけ住んでいた私でさえ今も保有しています)していますが、これがないと運転免許証も取れないし、社会保障も受けられない。
申請が面倒だの、不便がないだの言ってる場合ではなく「必要不可欠」なんです。
それでも「なりすまし」による税金の還付詐欺のような事例も発生しており、アメリカ人の中にも懸念を示す人はいます。

マイナポイントに対して「必死だな」
 まぁ、とはいっても申請するとマイナポイントが2万円分もらえる、というのに対しては「必死だな」や「何か裏があるのでは」と私のような天邪鬼は思います。
しかも、マイナポイントがもらえるのは、当初は2023年2月までのキャンペーンだったのに、「第2弾」と題して2023年9月まで実質的な延長を行った。とにかくなんとしても申請させたいわけです。
 もちろん、マイナンバーカードが普及して役所の業務の簡略化を進むのであればそれは素晴らしいことでしょうが、未だに戸籍謄本やら印鑑やらが残っている現実があり、マイナンバーカード推進よりも先に廃止して手続きを簡略化できるものもあるのではないか、と思います。

 思えば、若者へのワクチン接種推進の際、群馬県は県内に工場があるスバルの車一台が抽選で一人に当たるキャンペーンを行いました。
お上が何かを推進したい時は、情弱をエサで釣るのが常套手段。
さらに、ワクチン接種に続きマイナンバーカード普及を拙速に進め過ぎるきらいがある河野氏が担当大臣ということで躊躇している人もいます。
この怪しさを感じている少数の人も「様子見」をしているのではないでしょうか。

【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):
1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。
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2023年08月21日

テレビを売ったときの証明書は捨てないで!NHKを解約するために必要なものと手順を解説

テレビを売ったときの証明書は捨てないで!
NHKを解約するために必要なものと手順を解説
8/20(日) ファイナンシャルプランナー

近年のインターネット普及に伴い、動画配信サービスの需要が高まっています。
そのため、「テレビはいらないのでは?」と、感じる方もいらっしゃるかもしれません。
テレビが不要になって処分する場合には、NHK(日本放送協会)の解約手続きも必要となります。
しかし、NHKを解約するには、テレビを手放したことを証明できるものが必要になることも。

そこで今回は、NHKの解約方法をまとめました。
テレビを処分する予定のある人、NHKの解約を考えている人は、ぜひ参考にしてください。

有料動画配信サービスの利用率は増加傾向
株式会社インプレスの「インプレス総合研究所『動画配信ビジネス調査報告書2023』」によると、2023年の有料動画配信サービスの利用率は38.6%(直近3ヶ月以前の利用者も含む)であり、昨年と比較して、2.3%増加しています。
調査を開始した2016年から、有料動画配信サービス利用率は増加し続けています。

年代別にみてみると、男女問わず10〜30代は、動画共有サービスの利用率が、リアルタイムのテレビ番組の利用率を、上回る結果となりました。

NHKの解約対象とは?
NHKを解約できる条件は、以下の通りです。
(1)受信機を設置した住居にどなたも居住しなくなる場合 ・2つの世帯が1つになる場合※ ・世帯消滅 ・海外転居 など ※ひとり暮らしの解消、単身赴任の解消など、2つの世帯が1つになる場合は、いずれか一方の受信契約が解約の対象となります。
(2)廃棄、故障などにより、受信契約の対象となる受信機がすべてなくなった場合 ・受信機の撤去 ・受信機の故障 ・受信機の譲渡 など 上記にあてはまらない場合は、解約対象外です。
また、「テレビなどの受信機を持っているけれど、見ないから解約したい」などの理由は認められません。

NHKの解約方法
NHKを解約するには、所定の届出書が必要です。
そのため、インターネットでの手続きはできません。
解約の手続きを進めるには、NHKふれあいセンターへ電話しましょう。
NHKふれあいセンターに電話をすると、解約の事由を確認されます。
解約対象に該当する場合は、解約届が送られてきますので、必要事項を記入して提出しましょう。

なお、テレビなどの受信機を処分・売却した場合の証明書や、家電リサイクル券などを手元に取っておくと、解約事由を聞かれたときに、スムーズに答えられるので安心です。

テレビを処分する際は、証明書を残しておくとNHKの解約がスムーズ
「テレビを見る頻度が減った」「NHKを解約したい」などの理由から、テレビを処分する際は、証明書や家電リサイクル券を手元に残しておきましょう。
NHKの解約手続きがスムーズに進みます。
なお、「テレビはあるけれど、見ないからNHKを解約したい」という理由では、解約できませんので、注意しましょう。

出典
株式会社インプレス インプレス総合研究所 『動画配信ビジネス調査報告書2023』
日本放送協会 NHK よくある質問集 受信契約はどのような場合に解約になるのか

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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2023年08月22日

「今日も暑いですね」「そうですね」で沈黙してしまう…雑談が苦手な人にお勧めの必ず盛り上がる質問フレーズ

「今日も暑いですね」「そうですね」で沈黙してしまう…雑談が苦手な人にお勧めの必ず盛り上がる質問フレーズ
2023年08月21日 PRESIDENT Online

雑談が苦手な人でも会話をつなげるいい方法はないか。
精神科医で産業医の井上智介さんは「まずは仕事に関する質問をするところから始めるといい。
あとは『自分の感情を載せる』『質問で話題をふくらませる』など、いくつかのテクニックを使うことで、だんだん雑談に対する苦手意識はなくなっていくはず」という――。

■なぜ「雑談が苦手」と感じてしまうのか
仕事でもプライベートでも、雑談はなかなか避けることができません。
特に職場での雑談は、直接仕事に関係するわけではありませんが、協力関係を築いたり、人間関係を円滑にして、今後仕事の話を進める土台を作るうえでも役立つことがあります。
雑談が苦手だと、こうしたメリットを得られないだけでなく、人と交流するのが憂鬱(ゆううつ)になったりしてしまいます。

「雑談が苦手」と感じる理由は、大きく2つあります。

一つは「人からどう思われているか」が気になってしまうから。
話しているときに、相手の反応が少しでも悪かったり、笑顔がなかったりすると「自分のことが嫌いだからではないか」「何か気に障ることを言ってしまったのではないか」と心配になるのです。
相手の反応に過敏になり、緊張するので疲れてしまい、つい、会話を避けるようになってしまいます。
そのために経験が積めず、余計に苦手意識が強くなってしまうという悪循環に陥ります。

もう一つは「人との交流が苦手」というケースです。
新しい環境の中で人と交流することや、初めて会った人と話すことは、誰でもある程度の苦手意識があるものです。
しかし、その苦手意識が強いと、こちらから交流することができず、話しかけられるのを待つばかりになる。
自分から輪の中に入っていくことができないので、なかなかなじめず、孤立しやすくなります。

■人は自分のことをそれほど見ていない
雑談が苦手な人は、これら二つのいずれかか、両方に当てはまる人が多いと思います。
いずれも「ありきたりなことばかり言う、面白みのない人と思われているんじゃないか」「変な人だと判断されるのではないか」といったプレッシャーやストレスを感じています。

人から判断されることに対する恐怖心があるのです。
ですから、まずお伝えしたいのは、「人はそれほどあなたのことを見てはいない」ということです。
みんな自分のことに精いっぱいで、雑談でほかの人が何をどんなふうに言ったかというところまで、気にしていたり、覚えていたりすることはありません。
そこに気づいてほしいと思います。

試しに、隣の席の同僚が、昨日どんな柄のネクタイをしていたか、何色のズボンやスカートを履いていたか、思い出してみてください。
うろ覚えだったり、全く覚えていない人も多いと思います。そんなものなのです。
それを頭に入れたうえで、雑談に苦手意識がある人への、簡単な雑談のテクニック四つをお伝えしましょう。

1 共通の話題で質問する
まずは、仕事の質問をすることをお勧めします。
雑談は、お互いにとって共通の話題だと、会話が続きやすくなります。
会社で共通の話題といえば、仕事の話ですから、上司や同僚には業務上でわからないことや、気になったことについて、質問するといいでしょう。
仕事の質問をすると、仕事に対する意欲を表すことにもなります。
また、質問された方は、「頼られている」と感じられてうれしい気持ちになるものです。
会話も続き、相手との距離も縮まるはずです。
取引先での雑談も同様です。
たとえば、会社のホームページをあらかじめチェックしておき、「御社は大阪にもあるんですね。当社も大阪に支店があるんですよ。
大阪にはよく行かれるんですか」など、共通点を見つけてそこから質問をしていきます。
質問をすると、自然に会話がキャッチボールになりますし、共通点が起点になっているので、親しみも持ってもらいやすいでしょう。

2 自分の感情を載せて話す
2つ目のポイントは、感情を載せることです。
会話が続かない、盛り上がらないという人は、例えば「いい天気ですね」「そうですね」で話が終わってしまう傾向があります
単なる情報の共有になっていて、自分の感情を載せた言葉が伝えられていないからです。
ただ、「晴れている」「曇っている」という情報を伝え合うだけでなく、それに対して自分がどう感じたのか、どう思ったのかを伝えてみましょう。
自分の気持ちを開示すると、相手が自分に興味を持ってくれるきっかけになります。
最初は、「うれしい」「あまりうれしくない」「好き」「あまり好きではない」などの気持ちを載せるところから始めてみてはどうでしょうか。
「いい天気ですね」と言われたら、「本当にいい天気ですね。僕は釣りが好きなので、こんなに天気がいいと、釣りに行きたくなってしまいます」「そうですね。でも私は汗かきで、すぐあせもができてしまうので、天気がいいと憂鬱になってしまうんです」などと返してみる。
そうすると話題に広がりが生まれ、会話が盛り上がりますし、あなたに対して、より親しみを感じてもらえるようになるはずです。

■雑談上手は話題をどんどんふくらませる

3 「受け止め」⇒「質問」で話題をふくらませる
1や2ができるようになったら、ぜひ、話題をふくらませながら会話をつなげるようにしてみてください。
雑談がうまい人は、相手の話をどんどんふくらませながら会話を展開してくのが上手です。
たとえば「いい天気ですね」と話しかけられた場合、「最近はいい天気が続いていますよね。週末はどこかに行きましたか?」と関連する質問で返してみる。
「友達と釣りに行きました」と言われたら、「気持ちがよさそうですね」などと受け止め、重ねて「よく行かれるんですか?」「何が釣れましたか?」「どのあたりに行ったのですか?」「釣れた魚はご自分で料理されますか?」など、質問を重ねます。

■「自分が話す」よりも「相手に話させる」ことを意識
相手の答えを受け止めるだけだと、そこで会話が終わってしまうので、その都度、質問を追加していきます。
そうすることで、会話のキャッチボールが自然に続きます。
対人緊張が強く、雑談に対して苦手意識がある人は、「自分が話さなくては」「相手を楽しませることを言わなくては」と思い込んでいる人が多いように思います。
しかし実際はそうではなく、雑談のうまい人は、自分が話しているようで、実は相手にうまく話させています。

その割合は、自分:相手=4:6、あるいは3:7ぐらいです。必ずしも「話し上手」になる必要はなく、「話させ上手」「聞き上手」になることを意識するとよいでしょう。
ただ、相手の答えを受け止めることなく、脈絡のない質問を続けていると、質問というよりも尋問になってしまうので注意が必要です。
極端な例を出すと、「出身はどこですか?」と聞いて「○○県です」という答えを聞いたあとすぐに「好きな食べ物は何ですか」「何かスポーツをやっていますか」など、別の質問を重ねたりすると、聞かれた方は不快な印象を持ちます。
特に緊張している時は、相手の話が耳に入らず、こうした尋問調になりやすいので気を付けましょう。

4 仲良くなったら相違点を話題にする
まだあまり打ち解けていない会社の上司や同僚、初対面の取引先などが相手の時は、仕事のことや天気の話題など、共通の話題で雑談をするのがいいでしょう。
でも、会う回数が増えて距離感が近くなってきたら、共通点よりも、相違点を話題にすると話が盛り上がり、より相手との関係を深めることができます。
たとえば「週末に何していました?」と聞いて、相手が「キャンプに行ってきました」と答えたら、「私はインドア派なので、キャンプは行ったことがないんです。
キャンプのどんなところが面白いですか?」と返してみるのです。
お互いの違いを見つけ、「なぜ違うのか」を深めることで、お互い、相手のことをより深く知ることができます。

仕事の話ばかりだと、ビジネスライクになりすぎて、建前ばかりで本音を話すことができるようになりません。
腹の探り合いになり、緊張関係が続いてしまいます。
雑談をはさむことで、一気に人間関係がスムーズになることは多いので、ぜひこれら1から4を試してみてください。

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井上 智介(いのうえ・ともすけ)
   産業医・精神科医
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年08月23日

小銃発射事件にヘリ事故、性被害の「三大問題」に揺れる自衛隊 政府が防衛力の抜本強化を進める中、現場では何が起きているのか

小銃発射事件にヘリ事故、性被害の「三大問題」に揺れる自衛隊 政府が防衛力の抜本強化を進める中、現場では何が起きているのか
8/22(火)  47NEWS

 陸上自衛隊で事件や事故、不祥事が相次いでいる。
今年6月、岐阜市にある射撃場で、新隊員として訓練中だった自衛官候補生の男が小銃を発射し、隊員3人が死傷する事件が起きた。
4月には第8師団長ら10人が死亡するヘリコプター事故が発生。
昨年は女性隊員が訓練中に性被害に遭う事案が発覚し、事件化している。
複雑化する国際情勢を踏まえて政府が抜本的な防衛力強化を図る中、最前線を担う自衛隊で起きた「三大問題」。
組織の足元で何が起きているのか。
現役自衛官はどう受け止めているのか。(共同通信防衛問題取材班)

 ▽若手隊員養成の場で起きた凶行
 6月14日午前9時10分ごろ、岐阜市の陸上自衛隊日野基本射撃場で、訓練中に男性隊員3人が自動小銃で撃たれる事件が起きた。
このうち菊松安親1等陸曹(52)=陸曹長に特別昇任=と八代航佑3等陸曹(25)=2等陸曹に特別昇任=が頭や脇腹に被弾し、病院に運ばれたが死亡。
別の3等陸曹(25)は左脚に3カ月の重傷を負った。
 殺人などの容疑で逮捕されたのは、自衛官候補生の18歳の男だ。
射撃場は屋内型の施設で、この男は準備場所で待機していた際、「89式5・56_小銃」に実弾が入った弾倉を無断で装填。
「動くな!」と絶叫した直後、指導役だった3人に向けて発射した疑いが持たれている。

 任期制の「自衛官候補生」制度は2010年に導入された。
若くて戦力になる自衛官を確保するのが目的で、募集対象は18歳以上33歳未満。
陸上自衛隊の場合、入隊から約3カ月間にわたって基礎的な訓練を受けると2等陸士となり、その後1年9カ月間、自衛官として勤務する。
 岐阜の事件で逮捕された自衛官候補生の男と、死傷した3人は、いずれも名古屋市の守山駐屯地に拠点を置く第35普通科連隊新隊員教育隊に所属。
3人は候補生たちの指導役だった。
射撃場での訓練で、八代さんは射撃前の候補生らの服装や銃のチェックに当たる「交代係」、菊松さんと重傷の3曹は射撃場内の弾薬置き場で候補生らに弾を渡す「弾薬係」として指導に当たっていたという。
 こうした若手隊員養成の現場で起きた凶行の衝撃は大きかった。
防衛省の幹部は一報を聞き「大変なことが起きてしまった」と言葉を失った。
陸上自衛隊トップの森下泰臣陸上幕僚長は発生当日に臨時記者会見を開き、硬い表情で「武器を扱う組織としてあってはならない。非常に重く受け止めている」と謝罪。
約1カ月後の7月13日の記者会見でも「国民の皆さまに、多大なるご迷惑とご心配をおかけし、誠に申し訳ございませんでした」と再び頭を下げた。

 ▽実弾を渡すタイミングに疑問、安全管理に隙?
 陸上自衛隊の内部で銃が使われた殺人事件は前例がある。
1984年2月、山口県の射撃場で隊員が小銃で4人を撃ち、1人が死亡。隊員はトラックで一時逃走した。
 この事件は陸上自衛隊で銃管理を厳格化する大きなきっかけになった。
射撃訓練に際しては射撃場の機能や小銃の性能、安全管理上の規則の確認を徹底するようになった。
さらに、訓練する隊員の心情や健康状態、習熟度の把握にも力を入れてきたという。
それにもかかわらず再び事件が起きてしまった。

東日本の駐屯地で勤務する中堅自衛官は「二度と同じ事件を起こさないよう安全管理に厳しく取り組んできたのだが…」と嘆く。
 陸上自衛隊によると、射撃場では一般的に射手は「射座」と呼ばれる位置で、的に向かって射撃する。
その後方に、順番を待つ「待機線」、準備をする「準備線」がある。
射座には、射手をマンツーマンで指導する「射撃係」が配置される。
一方、待機線や準備線の付近には服装や銃をチェックする交代係がいるが、一人一人の射手とマンツーマンではないという。

 中堅自衛官は「自分の経験では、弾薬係から実弾を受け取るのは射座に来てから、というのが普通だった」と明かす。
だが、今回の岐阜の事件を見ると、自衛官候補生たちはマンツーマンでの指導役がいる射座に着く前の段階で、実弾を受け取っていたとされる。
中堅自衛官はこの点を疑問視し「仮に射座に着いてから受け取っていれば、すぐ近くに射撃係がいるので男は勝手な行動を起こしにくかったはずだ」と指摘。
安全管理に隙があったのではないかといぶかしがる。

 入隊直後の自衛官候補生には、精神的に落ち着かない若者も少なくないという。
中堅自衛官は「感情的な行動につながらないよう、特に射撃場では指導役は冷静に接する必要がある」とも語る。

▽「信頼を損ねる事案を起こしてしまった」と陸上幕僚長
 陸上自衛隊ではトラブルが続出している。
殺人事件の約2カ月前の4月6日には、沖縄県宮古島付近でUH60JAヘリコプターの事故が起きた。
宮古島の地形を偵察するため、第8師団の坂本雄一・前師団長(55)ら隊員10人を乗せて飛行中に消息を絶ち、その後、宮古島の西隣にある伊良部島沖の海中で機体の主要部分などを発見。
収容された前師団長ら6人の死亡を確認し、見つかっていない4人も死亡と判断された。

 当時、前師団長は就任直後で、海洋進出を活発化させる中国に対応して自衛隊が体制強化を進める「南西シフト」の最前線を自ら確認しようとしていた。
UH60JAは、安全面の信頼性が高い装備品と内部で見られていたが、深さ約106bの海底に沈んだ。
 陸上自衛隊が、回収したフライトレコーダー(飛行記録装置)の解析を進めて事故原因を調べているが、南西諸島の防衛体制強化を担う部隊幹部を同時に失う事態が組織に与えた影響は大きい。

 森下陸上幕僚長は、岐阜の小銃発砲事件を謝罪した7月13日の記者会見で、このヘリ事故にも言及。厳しい表情で「航空機事故に続いて今回の発砲があり、皆さまの信頼を損ねる事案を起こしてしまったことを大きく受け止めている」と語る一幕もあった。

 一方、昨年は、福島県の郡山駐屯地に所属していた元自衛官の五ノ井里奈さん(23)が、実名を出して性被害を訴え、自衛隊での性暴力やセクハラの実態が露呈した。
五ノ井さんの部隊では日常的に性的な発言や身体接触がまん延し、被害の相談はなおざりにされていた実態が明らかになり、防衛省が全自衛隊を対象にハラスメントについて調べる「特別防衛監察」を実施する事態に発展した。
 防衛省は五ノ井さんに直接謝罪し、12月に上司だった隊員5人を懲戒免職にした。
さらに今年3月になって福島地検が強制わいせつ罪で、このうち3人を在宅起訴。福島地裁で公判が始まっている。
 防衛省は8月18日、特別防衛監察の結果を公表した。
22年9月から被害申告を受け付け、パワハラやセクハラなど1325件の申し出があり、このうち6割以上が内部の相談員や窓口を活用しなかったと回答。
不利益を受けるとの懸念や相談できる環境にないというのが大きな理由で、被害が起きても訴えにくい自衛隊の風土が露呈した恰好だ。
監察結果を踏まえ、防衛省の有識者会議は、組織風土の改革を求める提言をまとめた。  

▽人員確保に教育の徹底、足元に目を向ける必要性
 これら「三大問題」は一見すると、それぞれ性質が異なるように見える。
だが、防衛省の制服組は「いずれも無関係だとは思わない」と打ち明ける。
100人以上の部隊を率いた自らの経験を振り返った上で「部隊の規律や士気、団結力など何かが欠けたときにトラブルは起きる。
その意味で、三つの問題は共通しているはずだ」と訴える。
 現場レベルで不祥事≠ェ続発する一方で、政府は台湾情勢の緊迫化、北朝鮮の核・ミサイル開発、ロシアによるウクライナ侵攻などを踏まえて「戦後最も厳しく複雑な安全保障環境」をアピール。
防衛力の抜本的強化を進めている。

最大の眼目は、軍事力強化が著しい中国への対抗だ。
 昨年12月には、国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画の安保関連3文書を改定。
「反撃能力」と称する敵基地攻撃能力の保有や防衛費の大幅増額などが盛り込まれた。
陸海空3自衛隊の部隊運用を束ねる組織として「統合司令部」の創設も明記されている。
  ただ、ある自衛隊幹部は防衛力強化が盛んに叫ばれる昨今の状況について「反撃能力や統合司令部といった大きなテーマに関する議論にばかり終始しているように感じる」と漏らす。

一方で、自衛隊が長年悩まされてきた「人手不足」は解決されないまま残っている。
「昔からの課題を棚上げして、新しい分野に取り組んでいては、組織が弱体化しかねない」と危機感をあらわにする。
 防衛省によると、自衛隊が任務を遂行するために必要な人員の「定数」よりも、実際に配置されている人員の「実数」が大きく下回る状況が続いている。
今年3月時点で「約24万7千人」の定数に対し、実数は「約23万3千人」で、不足分は約1万4千人に上る。
少子化の進展で、人員確保は今後ますます困難になることが予想される。

 自衛隊幹部は「どれだけ高額な装備品を買っても、どれだけ組織を改編しても、人がいなければ意味が無い」と指摘する。その上で「現場の部隊など組織の足元に目を向けなければいけない。
人員の確保と適切な配置、徹底した教育訓練ができなければ、また問題は起きるのではないか」と話している。
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人生の選択に迷ったとき、後悔しないたった1つの方法

【精神科医が教える】人生の選択に迷ったとき、後悔しないたった1つの方法
8/23(水) ダイヤモンドオンライン

 誰しも悩みや不安は尽きない。
寝る前にイヤなことを思い出して、眠れなくなるなんてことも……。
そんなときの助けになるのが、『精神科医Tomyが教える 40代を後悔せず生きる言葉』(ダイヤモンド社)だ。

ゲイのカミングアウト、パートナーとの死別、うつ病の発症……苦しんだ末にたどり着いた、自分らしさに裏づけられた説得力ある言葉。
心が落ち込んだとき、そっと優しい言葉を授けてくれる。Voicy「精神科医Tomyきょうのひとこと」の“言葉の精神安定剤”で、気分はスッキリ、今日がラクになる!

● 「選択」と「決断」の連続
 人生は「選択」と「決断」の連続です。
目の前にその都度訪れるさまざまな選択肢から、どの道をチョイスするかを決断する。
そうやって一歩一歩前に進んでいきます。
 しかし、その選択と決断が、つねに正しいわけではありません。
結果として、選択を見誤るケースも多いです。
 選択を見誤っても、そこから反省点を見出せば糧にできますが、単なる失敗の連続に陥る人もいます。
それは、一時の感情で決断しがちな人に多いです。

● “感情優先”の落とし穴
 感情は、ものすごく気まぐれです。
ついさっきまでイライラしていたのに、なにかの拍子に機嫌がよくなったり、逆に機嫌がよかったのに急にイライラし出したりすることもあります。
 その日によって感情の起伏があるというレベルではなく、場合によっては秒単位で変化する。
感情というものは、それほど不安定だということです。
 そんな不安定な感情によって選択と決断をすれば、失敗しがちなのは当たり前。
そのときの感情で決めたことには、反省点も見い出せません。

● あえてすぐ決断しない
 ほんの数秒後に感情が変わったら、選択と決断も違ってくるほど、なんの根拠もないからです。
 とくに感情が高ぶったところで決断を強いられると、見誤ることが多いです。
なので、あえて時間をおく。
そして、自分をクールダウンする。
 何かしようと思っても、あえてすぐに取りかからない。
1分でも3分でもいい。
ちょっとだけ間を空けるだけでも、選択と決断の精度が上がるはずです。  

※本稿は『精神科医Tomyが教える 40代を後悔せず生きる言葉』(ダイヤモンド社)の著者が日々お届けする“心のサプリメント”です。

精神科医 Tomy
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2023年08月24日

「1日1万歩」はやりすぎ? 歩数目標のミステリー 元は日本発キャッチコピー=@最新の研究での見解は

「1日1万歩」はやりすぎ? 歩数目標のミステリー 元は日本発キャッチコピー=@最新の研究での見解は
8/23(水) withnews

「1日1万歩」はやりすぎだった――?
 新たな医学研究によって、そんなことが明らかになっています。
そもそも「1万歩」という目標が設定されたのはなぜなのでしょうか。
最新研究でわかった健康のメリットを得られる歩数の目標とあわせて紹介します。(朝日新聞デジタル企画報道部・朽木誠一郎)

別に歩かなくてもよかった
運動には根性論がついて回りますが、中には科学的根拠の弱い言説もあります。
例えば健康のために「1日1万歩」を目標にして歩くように、というフレーズを聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
しかし、実はこれは“やりすぎ”だったことが、最新の研究により明らかになりつつあります。

長年、国の健康対策のバイブルだった厚生労働省の『健康日本21』(2000)では、健康のために「歩数を確保すること」を勧め、「1日1万歩」を理想としています。
この「1日1万歩」の根拠になっているのは、身体活動量と死亡率との関連を調査した研究結果です。
この研究結果を詳しくみると、「運動などによる身体活動量が多い人ほど死亡リスクが低く、その消費カロリーの目安は週2000kcalだった」というものです。
そう、これは特に歩数が関係するわけではない研究なのです。
では、どこで歩数が登場したのか、このミステリーを振り返ってみます。大元の論文(※1)は、医学の名門誌であるThe New England Journal of Medicineに1986年に掲載されたもの。
健康と運動の関連を調べた古典とも呼ぶべき研究です。

この研究では、35〜74歳の1万6936人を対象に、12〜16年間の追跡調査を行いました。
そして、週あたりの身体活動量が2000kcal以上のグループでは、2000kcal未満のグループに比べて、総死亡率が28%低いという結果になりました。
また、いずれの年齢層でも、身体活動量が多い人ほど、総死亡率が低下することが示されました。
1週間に約2000kcal、つまり、1日約300kcal。運動に換算すると、普通のペースで約1000歩を歩いた場合(約10分)の消費カロリーが、およそ30kcal。
だから1日300kcal消費するのに必要な歩数は約1万歩(約1時間40分)ーーこれが「1日1万歩」が目標とされる根拠の一つです。
ということは、1日300kcalを消費できるなら、別に歩かなくてもいいのです。

面白い比較として、例えば「風呂掃除をする」「掃除機をかける」といった家事は、1回で約30〜40kcalを消費するとされます。
こうした日常的な活動の積み重ねで合計300kcalを達成しても、もちろんOKです。
というよりも、一般的な感覚として、「毎日、約1時間40分ウォーキングせよ」と言われたら、うんざりですよね。
アフターコロナで在宅勤務がある程度は広がった現代社会において、世間ズレしたアドバイスという印象も否めません。
※1. Physical activity, all-cause mortality, and longevity of college alumni - N Engl J Med. 1986 Mar 6;314(10):605-13.

「1日1万歩」はやりすぎ?
ではなぜ、「1日1万歩」が“理想”になったかというと、日本で誕生した健康グッズが影響していたとする説があります。
その健康グッズとは「歩数計」。
この歩数計のことを「万歩計」と呼ぶことがありますが、これは1960年代に歩数計を開発した日本の山佐時計計器株式会社の登録商標です。
同社公式サイトによれば、80年代に「1万歩目安」がメディアに爆発的に取り上げられ、「万歩計」という名称が広く知れ渡ったそう。
この勢いは国内に止まらず、ハーバード大学の人類学者、ダニエル・リーバーマンは、近著『Exercised』で、このコンセプトが健康の基準として、世界中に普及したと説明しています。 しかし、健康目的なら「1日1万歩」の必要はないことも、近年、明らかになってきました。 2019年に発表された高齢女性の約1万7000人を対象としたアメリカの研究(※2)では、あまり歩かない人(1日2700歩以下)に比べて、1日4400歩を歩く人は、その後4年間の死亡率が低いことがわかりました。

そして、死亡リスクの低下は1日約7500歩で最大になり、1日1万歩やそれ以上のウォーキングをしてもさらなるメリットは得られないことも明らかになりました。
同様の研究(※3)が、アメリカ国立がん研究所などの研究者たちにより、2020年にも行われています。
この研究では、1日8000歩から1万2000歩を歩く人は、1日4000歩の人と比べて、がんなどを含むあらゆる原因での死亡リスクが低くなるとわかりました。

これらの研究から考えられるのは二つのことです。
一つは、健康を意識するなら「1日1万歩」を絶対の目標にする必要はないこと、もう一つは1日4000歩くらいから健康上のメリットを得られ、歩くなら8000歩くらいで十分な目標になりそうだということです。
コロナ禍で在宅勤務にシフトした人も多く、この数年間、歩数は減りがちだったのではないでしょうか。
出勤する日は1万歩をクリアできても、外出しない日は1000歩を切る、といったことも起き得て、日々の差が大きくなっています。
それなのに「1日1万歩」を目標に掲げられてしまうと、やる気も萎えてしまうのが正直なところ。
これは主に80年代に広がったスローガンであり、『健康日本21』も20年以上前にスタートした計画です。
コロナのような未曾有の状況を予期せよというのは酷な話なのですが、歩数計がスマートフォンに組み込まれた昨今では、「万歩」から離れることも必要と言えそうです。

※2. Association of Step Volume and Intensity With All-Cause Mortality in Older Women - JAMA Intern Med. 2019 Aug 1;179(8):1105-1112.
※3. Association of Daily Step Count and Step Intensity With Mortality Among US Adults - JAMA. 2020 Mar 24;323(12):1151-1160.

【連載】「健康にいい」の落とし穴 世の中で「健康にいい」と言われていることや、イメージされることは、よく考え直してみたり、正しい知識を持ったりすると、実は“そうでもない”ばかりか、かえって健康から遠のいてしまうことも――。身近なトピックをフカボリします。
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「夏バテ」なぜ起こる? 未然に防ぐ4つのポイント 専門家に聞く

「夏バテ」なぜ起こる? 未然に防ぐ4つのポイント 専門家に聞く
8/23(水) 大分放送

まだまだ暑い日は続く見込みですが、そんな今の時期、気になるのが「夏バテ」。
夏バテ防止のポイントについて専門家に聞きました。

■長時間のスマホ利用に注意
全国的に記録的な暑さとなっている今年は、7月の平均気温が多くの観測値で平年値を上回りました。
暑い日が続く中、街の人は体調管理はどうしているのでしょうか?

街の人:
「日差しが強いときや外で仕事をしているときにクラクラとするので水分をとるようにしています」
「ちょっと夏バテっぽい感じはあります」
「喉が乾くので出かけたら飲み物を買ったりしてます」
「あんまりご飯が食べられなかったりします」

症状を訴える声が聞かれたのが「夏バテ」。
食欲不振や脱水、体のだるさなどに悩んでいる人が多いようです。
暑さはしばらく続きそうで気象庁によると9月中旬まで平年より気温が高くなる見込みです。

大森麻以気象予報士:
「平年は夏の空気と秋の空気を分ける秋雨全線が南下して日本付近が秋の空気に覆われて暑さが落ち着きます。
ただ今年は夏の高気圧の勢力が強いため、秋雨前線の南下が遅れ暑さが続きそうです」

これからも注意が必要な「夏バテ」。そもそも、何が原因なのでしょうか?

岡本医院・岡本将英院長:
「やはり何といっても自律神経の乱れというのが大きいです。
あとは水分不足やミネラルの不足です。
そういったものが原因で起こることが多いと言われています」

暑い屋外と冷房の効いた室内との気温の差「夏特有の寒暖差」が自律神経の乱れにつながる指摘。
また、最近の生活習慣も一因に。

岡本医院・岡本将英院長:
「夜寝る前に長時間スマホを見てしまうと、睡眠の質が落ちてしまって自律神経のバランスが壊れるというのも最近は言われています」

■夏バテ防止の主なポイント4点
岡本医師は夏バテ防止の主なポイントとして以下の4つをあげ、長く続く暑さで疲労の蓄積もあるので特に気をつけてほしいと呼びかけます。

・規則正しい生活
・十分な睡眠
・こまめな水分補給
・バランスのとれた食事

岡本医院・岡本将英院長:
「一旦なってしまうとなかなか治りにくい。そして夏バテで寝苦しくなると、それによって自律神経がさらに悪くなるという悪循環もあるので、規則正しい生活をどこかで始めるとか、病院に行って点滴をしてもらうとかそういったことで改善してもらえればと思います」

一方、予防にとって重要なのが「食事」。
薬膳の料理教室を主催する小倉倫子さんはこうアドバイスします。

薬膳おおいた・小倉倫子さん:
「酸味は汗のかきすぎや、疲れの出過ぎというところを止めてくれますので、カボスや梅干しなどを少し添えることが効果的です」
また、ナシやダイコン、ヤマイモなど粘り気のある食材をはじめ、キュウリなど体の暑さを冷ます食材もおすすめとのことです。

薬膳おおいた・小倉倫子さん:
「夏バテ防止メニューは全体が白っぽく仕上がると思います。
白い食材というのは体に潤いを入れてくれる食材になります。
夏の間にかいた汗や気というものを白い食材で補っていくという食べ方が今の時期にふさわしいです」

大分放送
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2023年08月25日

低所得者に厳しい「鬼の自民党政権」…日本のお粗末すぎる生活保護、機能しない雇用保険、そして人生に絶望する人々が増えた

低所得者に厳しい「鬼の自民党政権」…日本のお粗末すぎる生活保護、機能しない雇用保険、そして人生に絶望する人々が増えた
8/24(木)  集英社オンライン

『日本の絶望 ランキング集』
日本にはいわゆるスラム街のような貧困者ばかりが暮らす地域はほとんどなく、たいていの人が普通に暮らしているように見えている。
だが、生活が立ちいかなくなり、自殺を選択する人もいるのが現状でもある。
社会の中で隠されている、日本の真実とは。
『世界で第何位?-日本の絶望 ランキング集』 (中公新書ラクレ)より、一部抜粋・再構成してお届けする。

低所得者に手厚い欧米諸国
日本の社会保障が貧困なのは、金額だけではない。
その内容も、非常にお粗末である。
たとえば「自由競争の国」とされているアメリカは、貧困者への扶助に日本の10倍を費やしている。
しかもアメリカの扶助は、日本のように生活保護一本やりではない。
バリエーションに富んだメリハリの利いた保護を行っているのだ。
アメリカには勤労所得税額控除(EITC)と呼ばれる補助金がある。
これは収入が一定額以下になった場合、国から補助金がもらえるという制度である。
EITCとはEarned Income Tax Creditの略である。

課税最低限度に達していない家庭は税金を納めるのではなく、逆に還付されるという制度で、1975年に貧困対策として始まった。 年収と子どもの人数にもよるが、年収が1万ドル程度の家庭は、2500ドル程度の補助金がもらえる。
子どものいない家庭への補助は少なく、子どものいる家庭へより手厚い制度となっている。
またひとり親の家庭では、現金給付、食費補助、住宅給付、健康保険給付、給食給付などを受けられる制度もある。

イギリスやフランスにも同様の制度がある。
このように、欧米では貧しく子どものいる家庭は、手厚い公的扶助が受けられる。
豊かな者も貧しい者も子どもがいれば一律に受けられる。
どんなに貧しくても月1万円程度しかもらえない日本の児童手当が、いかに粗末な公的扶助であるか、わかるというものだ。

健常者などに対してはフードスタンプなど食費補助
またアメリカは子どものいない健常者(老人を除く)などに対しては、現金給付ではなく、フードスタンプなど食費補助などの支援が中心となる。
現金給付をすると、勤労意欲を失ってしまうからである。
フードスタンプとは、月100ドル程度の食料品を購入できるスタンプ(金券のようなもの)が支給される制度である。
スーパーやレストランなどで使用でき、酒、タバコなどの嗜好品は購入できない。

1964年に貧困対策として制度化された。
このフードスタンプは、申請すれば比較的簡単に受けられる。日本の生活保護よりは、はるかにハードルが低い。
2010年3月のアメリカ農務省の発表では、4000万人がフードスタンプを受けたという。
実に、国民の8人に1人がその恩恵に預かっているのである。

機能していない日本の雇用保険
日本の社会保障で劣っているのは、生活保護だけではない。
たとえば雇用保険である。
雇用保険というのは、解雇や倒産など、もしものときのピンチを救ってくれる保険である。
この雇用保険が充実したものであれば、少々景気が悪くても、人々は生活にそれほど影響を受けないで済む。
しかし、日本の雇用保険は、ありていに言って「使えない」のである。
支給額や支給期間が、硬直化しており、本当に苦しい人にとっては、役に立たないのだ。

  まず、中高年の支給期間が非常に短い。
20年勤務した40代のサラリーマンが、会社の倒産で失職した場合、雇用保険の失業手当がもらえる期間は、わずか9ヵ月である。
いまの不況で、40代の人の職がそう簡単に見つかるものではない。
なのに、たった1年の保障しか受けられないのだ。

  職業訓練学校に入れば支給期間が若干、延びたりするなどの裏ワザはあるが、その期間内に職が見つからなければ、後は何の保障もない。
日本では失業はそのまま無収入となり、たちまち困窮 だから、日本では失業はそのまま無収入となり、たちまち困窮する、ということにつながるのである。

しかし先進国ではそうではない。
先進諸国は、失業保険だけではなく、さまざまな形で失業者を支援する制度がある。
  その代表的なものが「失業扶助制度」である。
これは、失業保険が切れた人や加入していなかった人の生活費を補助する制度である。
「失業保険」と「生活保護」の中間的なものである。

この制度は、イギリス、フランス、ドイツ、スペイン、スウェーデンなどが採用している。
たとえばドイツでは、失業手当と生活保護が連動しており、失業手当をもらえる期間は最長18ヵ月だけれど、もしそれでも職が見つからなければ、社会扶助(生活保護のようなもの)が受けられるようになっている。

期間が短いうえ期間が終われば経済的にも見てくれない
他の先進諸国でも、失業手当の支給が切れてもなお職が得られない者は、失業手当とは切り離した政府からの給付が受けられるような制度を持っている。
その代わり公共職業安定所が紹介した仕事を拒否すれば、失業保険が受けられなかったり、失業手当を受けるために財産調査をされたり、などといった厳しい制約もある。

日本の場合、失業すれば雇用保険の失業手当は一定期間雇用されていた人ならだれでももらえるけれど、期間が短いうえ期間が終われば経済的には何の面倒も見てくれない。

なぜ日本は自殺大国になったのか?
近年、日本では自殺者が年間2万人を超えている。
表35のように世界的に見ても、日本の自殺率はワースト6位である。
世界で6番目に自殺率が高いということは、世界で6番目に生きる希望がない国と言ってさしつかえないだろう。
しかもこの自殺率の上位国は、時代によって入れ替わりがあるが、日本はここ10年来、ワースト10にランクインしている。 日本は長期間にわたって、自殺が多い国と言える。

しかし日本は昔から自殺率が高かったわけではない。
1995年の時点では先進国の中では普通の水準だった。
フランスなどは、日本よりも高かったのだ。
90年代後半から日本の自殺率は急上昇し、他の先進国を大きく引き離すことになった(表36)
一時的には年間3万人を超えることもあった。
この当時の日本の自殺率を押し上げたのは、中高年男性の自殺の急増である。
90年代後半からリストラが激しくなり、中高年男性の失業が急激に増えたことが背景にある。
その後、中高年の自殺が落ち着くと、今度は若者の自殺が多くなった。

中高年のうち、経済的弱者などが自殺していなくなり、残された若者世代の自殺が多くなったというわけである。
これを見たとき、われわれはこれまで一体何をしてきたのか、疑問を持たざるをえない。
こんな社会をつくるために、一所懸命頑張ってきたのだろうか?

文/大村大次郎
おおむら おおじろう
元国税調査官
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2023年08月26日

"加齢を受け入れる、若づくりで闘う"はどっちがいいか…医師・和田秀樹「老いとの向き合い方」の最終結論

"加齢を受け入れる、若づくりで闘う"はどっちがいいか…医師・和田秀樹「老いとの向き合い方」の最終結論
2023年08月25日 PRESIDENT Online

老いとはどのように向き合うべきか。
医師の和田秀樹さんは「外見を若々しくすることは、気持ちまで明るくし、心の老化のスピードを緩める。
『老いと闘うこと』と『老いを受け入れること』は、対立関係にあるのではなく移行するものだ。
闘える間は闘ったほうがいい」という――。
※本稿は、和田秀樹『65歳から始める和田式心の若返り』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。

■定年退職は自分の居場所も人間関係も失う最悪な制度
「定年後にうつになる人が多いんだよなぁ」 というのは、精神科医なら誰もがする話です。
もともと、セロトニンの分泌量が低下しているところに、定年退職がきっかけとなって老人性うつを発症する人たちは、非常に多く見られます。
それほど定年制とは、心の健康において最悪の制度です。
まるで理にかなっていない、おかしな制度なのです。

まだ能力があって会社に貢献できる人材でも、65歳、もしくは70歳になると、一律に解雇する会社がいまだに多いのは、年齢による差別制度といえます。
こんな前時代的な制度が、日本という国にはまだあるのです。
「人の心を無用に苦しめる制度なんぞ、なくしてしまえ!」 と、精神科医として日々叫んでいますが、残念ながら、社会はどうにも変わっていきません。

ではなぜ、定年が老人性うつのきっかけになりやすいのでしょうか。
それは、長年、仕事で積み上げてきたものを一日で喪失するからです。
古典的な精神分析の考え方では、うつ病の最大の原因は、「対象喪失」とされています。
愛する対象を失ったときに、人間は心理的に不安定になり、うつ状態に陥ります。
その状態が2週間以上続いたとき、「うつ病」と診断されます。

定年後にうつになる人が多いのは、会社を離れることが対象喪失になるからです。
熱い想いを持って長年勤めてきた会社を去ることになるため、居場所も人間関係も一気に失い、それが心に大きなダメージを与えてしまいます。

一方、現代的な精神分析では、「自己愛喪失」が心の健康に最も悪影響を及ぼす、としています。
自己愛喪失とは、自己愛が満たされないこと、あるいは自己愛を満たしてくれる対象を失うことです。
具体的には、自分の働きを認めてくれる人、自分を尊敬してくれる人、自分の心の支えになる人、自分が同じ仲間と思える人などを失うことが、自己愛喪失になります。
定年退職を迎えると、これらを一気に失うことになります。

このように、定年退職は、対象喪失と自己愛喪失がダブルで押し寄せてくる、心の健康において最悪の状況を生み出しやすいのです。

■65歳を過ぎたら「自分がやりたいことをやる」
ところが、定年退職という最悪な制度も、自分の考え方を変えると、最高の制度に見えてきます。
よく考えてみてください。
定年退職は、それまでの束縛から解放されて、「自由を手に入れる」という最良の機会とも考えられます。
65歳は、老いてきてはいるものの、体力・気力は十分にあり、試せることはたくさんあります。
むしろ、時間的な余裕が増えるぶん、できることも増えていくでしょう。
この先、20年も30年も生きることを考えれば、その数は無限大です。

そこで、65歳以降のご自身に対して、1つルールを設けてはいかがでしょうか。
「65歳を過ぎたら、自分がやりたいことをやる」というルールです。
現役時代は、社会のルールに従って生きてきました。
しかし、現役を引退したのちは、あなたを縛るものはもう何もなく、一人の人間としての自由を謳歌できます。
年齢を重ねてまで、嫌なことをする必要はありません。
取り返しがつかなくなるような大バクチ以外のことなら、なんでも気軽に試してみましょう。
そうすることで、新たな刺激を前頭葉に与えられます。

セロトニンの分泌が減っていく65歳以降は、なんでもやりたいことをするようにしないと、人生を楽しむ意欲など湧いてこないのです。

■老いと「闘える間は闘う」で老化のスピードが落ちる
「老いと闘う派」と「老いを受け入れる派」。
このように世間では、老いに対する考え方が二極化しています。

「努力をすれば、老いは遠ざけられる」といって、アンチエイジング(抗加齢)に勤しむ人がいれば、「年を取ったら、老いるのが当たり前。自然なままに生きていく」と、老いていくことを素直に受け入れている人もいます。
どちらも素敵な考え方で、否定するつもりはありません。
ただ、高年者専門の精神科医としてわかることは、「老いと闘うこと」と「老いを受け入れる」ことは、対立関係にあるのではなく、“移行するもの”だということです。
老いと闘える間は、闘ったほうが老化のスピードを緩められます。
60代はまだまだ、十分に闘える時期です。
この時期に老いと闘わずにいると、年齢以上に老け込んでしまいます。

実際、何もしないでいると、60代でもヨロヨロして転びやすくなったり、顔つきが老人そのものになってきたりします。
ただ、どんなに頑張っても、老いることは止められません。
ある時期が来れば、闘うフェーズ(局面)から受け入れるフェーズへと移行していくことになります。
しかし、歩行がおぼつかなくなっても、認知症になっても、寝たきりになっても、人生が終わりかといえば、そんなことはありません。
そのとき、「老いを素直に受け入れられた」ならば、できなくなったことをあきらめるぶん、今できることが愛(いとお)しく感じられるでしょう。
たとえば、歩けなくても絵は描けます。
寝たきりでも俳句は詠(よ)めます。
やってみたかったけれど、やらずにいたことを、そのときが来たら始めてもよいのです。
そう思えば、「寝たきりになったら、どうしよう」という不安が軽くなりませんか。
そんな穏やかな時期が、生きていればやがて訪れます。
ただ、その時期はなるべく遅くできるに越したことはありません。
そのためにも、老いと闘える間は闘って、老化のスピードを緩やかにするとよいと思います。

■外見を通して心が若がえると、免疫の働きもよくなる
老いと闘うことは、老人性うつの予防にもなります。
それなのに、「若づくりは恥ずかしい」「60歳を過ぎて派手な格好はできない」などと考えていないでしょうか。
外見を若々しくすることは、気持ちまで明るくし、心の老化のスピードにも影響します。
臆することなく、どんどんやっていきましょう。

とくに男性は、見た目の若さにあまり気を遣わない傾向があります。
外見が老人らしくなっていくと、その影響を受けて心も老化し、全身の身体機能も老け込みます。
実際、精神神経免疫学という医学の分野では、外見を通して心が若がえると、免疫の働きも高確率で若がえる、という研究が進んでいます。

ですから、「いい歳をして恥ずかしい」などと、自分を抑えないでください。
美容医療の力を借りて、外見の若がえりを図るのもよい方法です。
シミやシワが1つ消えるだけで、こんなにも心が軽くなるのか! と実感されるでしょう。
髪が薄くなったのなら、植毛やウィッグを試されるのも素敵なことです。

■補聴器や紙オムツをどんどん活用しよう
また、体のさまざまな機能が落ちてきたとき、現代には、それを支えてくれるグッズがたくさんあります。
高年者用のグッズを使う勇気を持ちましょう。
耳が遠くなったら補聴器をつける、足腰が弱ったならば杖つえや歩行器を使う、尿もれが気になるのならば紙オムツをはく。 こうして、文明の利器をどんどん活用すれば、老いた部分をカバーしてもらえるぶん、自由度が増します。
外出して日光に当たれば、セロトニンの分泌が促進されて、老人性うつの予防にもなります。
高年者用グッズは、老いた人生を楽しませてくれる、最高の支援者なのです。

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和田 秀樹(わだ・ひでき) 精神科医
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特殊詐欺の犯人はなぜ「固定電話」を狙う? 元刑事が解説する理由と対策法 被害を防ぐ電話機の機能とは?

特殊詐欺の犯人はなぜ「固定電話」を狙う? 元刑事が解説する理由と対策法 被害を防ぐ電話機の機能とは?
8/26(土)  Fav-Log by ITmedia

 オレオレ詐欺や還付金詐欺など、主に高齢者からお金をだまし取る「特殊詐欺」の被害は、2020年までは6年連続で減少を続けていたものの、その後増加に転じています。
離れて住む高齢のご両親がいる方などは、不安に感じているのではないでしょうか。

特殊詐欺は、最初に犯人側から「アポ電」と呼ばれる電話がかかってくることが多く、被害に遭わないためにはアポ電を防ぐことが重要です。
 今回は、固定電話にアポ電がかかってきやすい理由や対策について紹介します。

固定電話にはアポ電がかかってきやすい
 特殊詐欺では、最初に犯人が被害者へアポ電をかけてくることが多くあります。
犯人はアポ電の反応によって犯行を行うかどうかを判断しているのです。
 警察庁が2023年4月にまとめた「特殊詐欺の手口と対策」によると、2022年11〜12月に認知した事件のうち、被害者側の通信手段は97.2%が固定電話だったそうです。
確かに筆者の経験からも、アポ電が携帯電話にいきなりかかってきたという事例はほとんど記憶にありません。

固定電話にアポ電が多い理由
 なぜ固定電話にアポ電がかかってきやすいのでしょうか。
大きく2つの理由が考えられます。

電話番号が名簿として出回りやすい
 固定電話は電話帳が作成されているため、名簿として出回りやすいです。
犯人は「名簿屋」と呼ばれる業者から名簿を入手し、名簿を元にアポ電をかけます。
名簿は電話帳のほかにも、学校の卒業生名簿や通販の高額利用者など、さまざまなリストから作られています。
 筆者も何度か特殊詐欺の捜索を行ったことがありますが、捜索先でアポ電用の名簿をしばしば目にしました。

固定電話を契約している人は高齢者が多い
 固定電話の契約者に高齢者が多いことも理由に挙げられます。
携帯電話に慣れている若い世代にとっては、固定電話の必要性が感じられないため、契約していない方も多いのではないでしょうか。
 しかし、かつては固定電話の契約が社会的信用にもつながっていたことなどから、高齢者世代では現在も固定電話を契約し続けている方も多いでしょう。
 そのため、犯人の立場からすると、固定電話の名簿からアポ電をかければ、ターゲットである高齢者層にヒットする可能性が高いのです。

アポ電を防ぐ対策
 アポ電を防ぐ対策にはどのようなものがあるのでしょうか。
ここでは3つの対策を紹介します。

ナンバーディスプレイ/ナンバーリクエスト
 ナンバーディスプレイはアポ電を防ぐために必須の機能です。
ナンバーディスプレイがなければ固定電話にかかってきた電話をとらざるを得ませんが、ナンバーディスプレイがあれば知らない電話番号からの電話に出ないという選択ができます。
 もう一つ有効な機能として、「ナンバーリクエスト」があります。ナンバーリクエストとは、非通知で電話をかけてきた相手に、番号を通知してかけ直すように自動的にアナウンスされるサービスです。
固定電話の着信音は鳴らないため、非通知でアポ電をかけてきた場合には、自動的にシャットアウトできます。

 NTT東日本とNTT西日本では2023年5月から、70歳以上の契約者、または70歳以上の方と同居している契約者の回線であれば、ナンバーディスプレイ・ナンバーリクエストを無償で利用できるサービスを始めています。
まだ申し込んでいない方は、この機会に申し込むことをおすすめします。

通話を録音する
 通話を録音することも有効な対策です。
犯人はできるだけ自分たちの証拠を残したくないため、音声が録音されることを警戒しています。
しかし、音声を録音できる電話機がない場合も多いでしょう。
 その場合は、電話機を常に留守番電話にしておき、電話にはすぐに出ず、録音された内容を確認してからかけ直すことをおすすめします。

用事がある人であれば留守番電話にメッセージを残すでしょうし、アポ電であればわざわざ留守番電話にメッセージを残すことは考えにくいからです。

電話番号を変更する
 アポ電がすでに何度かかかってきたことがある場合や、かかってくる可能性がある場合は、電話番号の変更も有効です。
変更後は、家族や知人など限られた人にだけ番号を知らせるようにして、名簿として売られないように気を付けましょう。

手軽に特殊詐欺対策ができる固定電話機を紹介
 ここまでアポ電を防ぐための対策について説明してきましたが、そもそも固定電話を置かないことが最も有効な対策です。しかし、さまざまな事情で廃止できない人もいるでしょう。
また、ナンバーディスプレイなどの契約や設定を行うのは、機械の設定に慣れた人でなければ難しいかもしれません。
 そこで、手軽に特殊詐欺対策機能を設定できる電話機を紹介します。

シャープ 「JD-AT95CL」
 シャープの 「JD-AT95CL」は、さまざまな特殊詐欺対策機能を持つ電話機です。
着信すると、着信音が鳴る前に「通話が自動録音されている」などの警告メッセージが流れます。
 また、家族など電話番号を登録した人からの着信は緑色のランプが点灯しますが、登録外の番号からかかってきた場合は赤色ランプが光るため、不審な電話かどうかがすぐに判断できます。
 これらの防犯機能はあらかじめ設定されているため、機械の設定に不慣れな方でも安心して使えるでしょう。

パナソニック 「VE-GD27DL」
 パナソニックの「VE-GD27DL」も、さまざまな特殊詐欺対策機能を持つ電話機です。
先述したシャープの 「JD-AT95CL」のような、自動録音や着信前の警告メッセージもあります。
 そのほか、ボイスチェンジ機能も搭載しています。
女性の場合でも、男性のような声に変えることができ、特殊詐欺だけでなく、しつこいセールス電話などにも有効です。
ショッピングサイトでの販売価格が7000円台とリーズナブルな点も見逃せません。
posted by 小だぬき at 13:11 | 神奈川 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年08月27日

陸上自衛隊の一兵卒だった浅田次郎が防衛官僚の恥知らずな行いに抱いた憤り

陸上自衛隊の一兵卒だった浅田次郎が防衛官僚の恥知らずな行いに抱いた憤り
8/26(土)  おとなの週末

バブル経済崩壊、阪神・淡路大震災、オウム真理教による地下鉄サリン事件など、激動の時代だった1990年代。
そんな時代を、浅田次郎さんがあくまで庶民の目、ローアングルから切り取ったエッセイ「勇気凛凛ルリの色」は、30年近い時を経てもまったく古びていない。
今でもおおいに笑い怒り哀しみ泣くことができる。
また、読めば、あの頃と何が変わり、変わっていないのか明確に浮かび上がってくる。
この平成の名エッセイのベストセレクションをお送りする連載の第73回は「税金泥棒について」

「平和憲法の鬼っ子」に甘んじ、「税金泥棒」の誹りに耐え 陸上自衛隊に入隊したのは、昭和46年の春であった。
顧(かえり)みて思うに、私が在隊したその当時は、自衛隊にとってまことに不遇な時代であったような気がする。
世は高度成長の真只中、昭和元禄と呼ばれた好景気であった。
どの企業も手不足で、健康な若者が職に不自由することはなかった。
大学に進んだ友人たちの多くは学生運動に参加していた。
しかも、海の向こうではベトナム戦争がたけなわであった。
こうした時代に、自ら進んで自衛隊に志願する若者など、どう考えてもいるはずはなかった。
初任給1万5100円。
この金額はいかに衣食住付きとはいえ、世間の5分の1か6分の1であったろう。
むろんその給与も勝手に使えるわけではなかった。
共済費や強制貯金などが天引きされて、手取りは九千円ほど。
その金ですら班長が管理し、必要に応じて少額ずつ与えられた。
外出制限は厳しかった。
6ヵ月の教育期間にほんの数回、それも行先、理由、行動予定、金銭の支出計画等を綿密に書いて許可を得、夜9時半の帰隊時間は、絶対厳守である。
まさに「シンデレラ・リバティ」であった。

連隊長は陸軍士官学校卒、部内幹候の中隊長や古参の陸曹は旧軍からの叩き上げ、当然営内は殺伐とした「真空地帯」で、伝統の体罰主義も日常茶飯事であった。
要するに、駐屯地の中だけ時間の流れが止まっていたのである。
毎日の日課も、旧軍とあまり変わらない戦闘のための訓練に埋めつくされていた。
銃剣術、徒手格闘術、持久走、射撃。白兵思想を基礎とした歩兵の訓練である。
目的は人を殺すことであるから、同じ肉体の鍛練にしても、スポーツや武道のイメージとは程遠い。
体力の劣る者、気力に欠ける者にとっては地獄のような毎日であった。

任期を満了した隊員は毎月除隊して行く。
ということは、毎月おびただしい入隊者を募っていなければ、組織は維持できない。
10名の戦闘班から、小隊、中隊、連隊、師団といったすべての戦闘単位は、定数が充足されて初めて機能するのである。
いったいあのころ、自衛隊はどうやって欠員の補充をしていたのであろう。
一般社会からは監獄のように隔絶し、しかも待遇面においても実生活においても、別世界のような落差のあった自衛隊に若者を導き入れる苦労は、それこそ「戦争」だったのではあるまいか。

消灯の迫る夜更け、外出のできぬ新隊員は十円玉を借り集めて、駐屯地の端にある公衆電話まで走る。
娑婆(しゃば)に残してきた恋人と、ほんの1分か2分の会話をかわすために。
携帯電話機はおろか、テレホンカードも、100円玉の入る電話機もない時代のことで、電話ボックスの前はいつも長蛇の列であった。
そんなときふと、世を捨ててきたつもりが実は、自分が世の中から見捨てられたのだと気付いたものだ。
すき好んで自衛官になった若者などいなかったのだから、彼らはみな定数を充足させるための犠牲者であった。
それでも社会は彼らのことを、「税金泥棒」と呼んだ。

シビリアン・コントロールという言葉は、耳にタコができるほど聞かされていた。
かつての帝国軍隊が犯した過ちをくり返さぬために、自衛隊は文官の力によって統制されているのだ、と。
それはいいことだと思った。
戦争は最大の罪悪なのだから、まちがいや暴走のないように、良識ある文官が自衛隊を統制し統率するのは、理に適(かな)っていると思った。
私たちは戦争を知らなかった。
日々の生活や訓練は、世界各国の軍隊とどこもちがわぬのだから、できれば軍人という名誉な肩書は欲しかったのだが、憲法がそれを許さぬのだから仕方ない。
何だか認知されぬ鬼っ子のような気分であった。
だがそれでも、世間から「税金泥棒」などとは呼ばれたくなかった。

除隊してから四半世紀の時が流れた。
その間、いったい何十万人の若者が「平和憲法の鬼っ子」に甘んじ、「税金泥棒」の譏(そし)りに耐えてきたのであろう。
そうした生き方が男子としていかに屈辱であるか、耐え難いものであるかは、経験者でなければわからない。

しかし、自衛隊は本当に「税金泥棒」をしてしまった。
いや、後輩たちの名誉のために、そういう言い方はやめよう。
一流大学を出て、ネクタイをしめて、夏の暑さも冬の寒さも知らずに指揮官を気取っている役人が、「税金泥棒」をやった。消灯ラッパの淋しさも、物相飯(もっそうめし)の味も、背(はいのう)の重みすら知らぬやつが、である。
こんなシビリアン・コントロールなど、くそくらえだ。

自衛隊を本物の「税金泥棒」にした官僚たち
今もお題目を聞かされている後輩たちのために、多少の蘊蓄(うんちく)をたれることをお許し願いたい。
少なくとも彼らには、知っておいて欲しい。
そもそもシビリアン・コントロールの思想と制度は、清教徒革命と名誉革命を経たイギリス、そして独立革命後のアメリカにおいて生まれたものである。
その精神は尊い。
軍隊の存在は平和な国民生活の脅威となる可能性があるから、これをできうる限り非軍人の統制下に置いて、予算を縮小し、行動を制御しようとした。
すなわち、最高指揮権者を非軍人とし、軍の機能を独立させずに行政府の中に置いた。
この形はいわゆるシビリアン・コントロールの基本である。

しかしこの基本形のまま軍隊を完全に統制しうるのは、軍事技術が未発展であった19世紀までであった。
時代とともに軍隊は巨大化し、破壊力を増す。
国が繁栄すれば、自然とそうなる。
経済規模に比例した防衛力が必要だからである。
こうなると、軍隊を政治的に統制すること自体にさまざまの矛盾が生ずる。
そこで、「実力を抑制する」よりも「強化しつつ管理する」ことが、シビリアン・コントロールの新しいスタイルになった。 ここに重大な問題が生まれた。

管理者としてのシビリアン、すなわちわが国でいうなら、防衛庁の役人や一部の議員に、権益が生じたのである。
現代の軍隊は「産軍複合体」と呼ばれ、軍事関連企業と密接な関係にある。
その複合部分を、高級官僚と一部の議員が支配する結果になる。
法律や予算などで、いかに基本的なシビリアン・コントロールがなされたところで、軍事産業の意思と官僚の意思とで、軍事費を事実上私物化できるのである。
たぶん彼らは、こういう関係をずっと続けてきたのであろう。
だから、ひとつが明るみに出れば、あわてて組織ぐるみの証拠隠滅を計ろうとする。
軍人をなめるな、と私は言いたい。
いや、軍人と自称することもできぬ沈黙の兵士たちになりかわって言う。
私たち自衛官は、かくも長きにわたって「税金泥棒」の譏りに耐えてきたのである。
国家の再興と発展のために、国民の何分の1かの給与と禁欲生活とに甘んじて、まさしく詔勅(しょうちよく)の文面通りに、耐え難きを耐えてきたのである。
その結果が、このザマだ。

シビリアン・コントロールを笠に着た東大出の官僚どもが、自衛隊を本物の「税金泥棒」にしてしまった。
この稿を書いているとき、偶然かつての上官から葉書が届いた。
在隊中の営内班長ドノである。
誠に勝手ながら、その一部分を紹介させていただく。
「この度陸上自衛隊を定年退官致しました。
昭和41年入隊以来、極めて恵まれ且つ充実した勤務ができましたことはひとえに皆様の御厚情の賜(たまもの)であり、厚く御礼申し上げます。
32年の全力投球を終えました」
無能にして無思慮な役人は、この人さえも「税金泥棒」にした。
50年の間いちども戦(いくさ)をせず、災害派遣の泥にまみれた「栄光の軍人」のすべてを、「税金泥棒」にした。
(初出/週刊現代1998年10月10日号)

※注1998年、防衛庁調達実施本部が起こした背任事件が発覚した。
防衛庁調達実施本部の装備品納入をめぐり、本部長と副本部長が結託し、過払い認分の返納額を恣意的に減額した。
その見返りに、職員の天下り先を確保させるなどした癒着が問題視され、本部長と副本部長が東京地方検察庁特別捜査部に逮捕された。
本部長は懲役3年執行猶予5年の有罪判決が確定した。
副本部長は天下り先で得た顧問料が事後収賄罪に認定されて懲役4年追徴金838万5000円の実刑判決が確定した。

浅田次郎
1951年東京生まれ。
1995年『地下鉄(メトロ)に乗って』で第16回吉川英治文学新人賞を受賞。以降、『鉄道員(ぽっぽや)』で1997年に第117回直木賞、2000年『壬生義士伝』で第13回柴田錬三郎賞、2006年『お腹(はら)召しませ』で第1回中央公論文芸賞・第10回司馬遼太郎賞、2008年『中原の虹』で第42回吉川英治文学賞、2010年『終わらざる夏』で第64回毎日出版文化賞、2016年『帰郷』で第43回大佛次郎賞を受賞するなど数々の文学賞に輝く。
また旺盛な執筆活動とその功績により、2015年に紫綬褒章を受章、2019年に第67回菊池寛賞を受賞している。
他に『きんぴか』『プリズンホテル』『天切り松闇がたり』『蒼穹の昴』のシリーズや『日輪の遺産』『憑神』『赤猫異聞』『一路』『神坐す山の物語』『ブラック オア ホワイト』『わが心のジェニファー』『おもかげ』『長く高い壁 The Great Wall』『大名倒産』『流人道中記』『兵諌』『母の待つ里』など多数の著書がある。
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2023年08月28日

お盆過ぎも油断できない『熱中症』 命を守るためには「涼しい場所に避難」「体は水平に」

お盆過ぎも油断できない『熱中症』 命を守るためには「涼しい場所に避難」「体は水平に」
8/27(日)  マネーポストWEB

 連日の酷暑が続いているが、「熱中症はお盆を過ぎてからも危険」と、気象予報士で防災士の広瀬駿さんは警告する。
「体が暑さに慣れる暑熱順化という言葉があるのですが、お盆を過ぎると朝夕は涼しくなり、気温も少し落ち着いてくるので、それに体が慣れてしまいます。
そのため、8月下旬に真夏のような暑さがぶり返すと体がついていかず体調を崩し、熱中症にもかかりやすいんです。

お盆を過ぎても熱中症対策を継続しましょう」(広瀬さん・以下同)
 屋外では日陰を選び、室内では扇風機やエアコンを使用する、通気性のある衣類を着用し、帽子や日傘で暑さを回避する、こまめに水分を補給するなど、よくいわれている熱中症対策も継続しよう。

「朝や夕方など、比較的涼しい時間にウオーキングなどの適度な運動をする、湯船に10分程度つかって汗をかくなど、日頃から汗をかく習慣を身につけておくことも、熱中症予防に効果的です」
 秋以降も、真夏並みに気温が高い日は注意しよう。

涼しい場所に避難させ体位は水平にする
 家族や身近な人が熱中症になったら、できるだけ風通しのいい日陰や冷房が効いている室内に避難させる。
「その場合、体位は原則として水平にしますが、意識がある場合は、本人が楽な体位で寝かせましょう」と言うのは、日本赤十字社事業局救護・福祉部健康安全課の武藤裕美さん。

「厚い衣服を脱がすことで、体からの熱の放散を助けられます。意識があり、吐き気や嘔吐がなければ水分補給を行い、経口補水液、スポーツ飲料、薄い食塩水を飲ませるとよいでしょう」(武藤さん・以下同)

首や両わきなどを冷やすのが効果的
 熱中症の重症者を救命できるかどうかは、いかに早く体温を下げられるかにかかっている。
手のひらやほお、足の裏には体温を調節する血管があり、ここを冷やすことで、体の中心部の体温が下がる効果が期待できる。
冷えたペットボトルを手に握らせることも有効だ。

「胸や腹など体の表面に水をかけたり、濡れたタオルで体を覆うのも体を冷やすのに有効です。
さらに、うちわであおぐ、扇風機で風を送るのもいいですね。
市販のアイスパックなどがあれば、それを首や両わき、足の付け根の股関節部分に当て、皮膚の直下を流れている血液を冷やしましょう」
 また、冷たい水は胃の表面から熱を奪うので、意識がはっきりしているなら冷たい水を飲ませよう。

判断が難しい場合は すぐに119番に通報を
 水などを飲ませても改善が見られない、水分補給ができない、呼びかけても反応がない、または反応が明らかにおかしい、ふだんどおりの呼吸ができない、意識障害、全身のけいれんがある場合など手当ての判断に迷うときは、ただちに119番に通報すること。
「119番通報した後も、救急隊が到着するまで、濡れたタオルで体を覆ったり、市販のアイスパックなどで体を冷やしてください」

 搬送先の医療機関には、発症時の状況を詳しく説明できる人が付き添うこと。

※女性セブン2023年9月7日号
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2023年08月29日

「電車はいろんな状況の人が乗っています…」 修学旅行の児童たちを行儀よく振る舞わせた先生の言葉が胸に響く

「電車はいろんな状況の人が乗っています…」 修学旅行の児童たちを行儀よく振る舞わせた先生の言葉が胸に響く
8/27(日) まいどなニュース

電車で修学旅行や遠足の学生と出くわし、あまりのやかましさに閉口したことがある方は多いと思う。
そんな時、脳裏をよぎるのは「引率の先生は何をしているんだ?」という言葉。
実際は先生もどうにか行儀よく振る舞わせようと四苦八苦しているはずが、たまのイベントに浮かれる子供たちに言って聞かせるのは並大抵のことではないのだろう。
今、SNS上でそんなシーンで大きな効果を発揮しそうな"ある先生の言葉"が大きな注目を集めている。

「今でも覚えているんですが、小学校の修学旅行の時、新幹線に乗ったんですね。
当時の先生がみんなに… 電車というものは、いろんな状況の人が乗ってます。
楽しく旅行に向かう人、これから仕事に行く人…もしかしたら、ご家族が急病で、そこへ駆けつける人…お葬式の帰りの人もいるかもしれません。
君たちは、楽しい旅行ではあるかもしれませんが、そんな人達がいるかもしれない、そんな気持ちを心の片隅に置きながら行動してください。 と言ったんです。
ちょっと荒れた学校だったけど、ギャーギャー騒ぐ生徒は一人も出なかった記憶。 きちんと説明することが大切。」 と自身が小学生の頃のエピソードを紹介したのは鉄道タレントの古谷あつみさん(@railway_atsumin)。

圧をかけるのではなく、学生ひとりひとりの心に訴え、「もし自分の立場だったらどう思うか」を想像させてくれる思慮深い先生の言葉。
この言葉を受け、古谷さんたちは自然と行儀よくふるまうことができ、楽しく旅行できたのだという。

古谷さんの投稿に対し、SNSユーザー達からは 「ただむやみに押さえつけるだけじゃなく、理由をわかるように話すことってホント大事ですね」
「人生において何が大切なのかを教えれる先生は偉大 教科書に書いてあることを読むことなんて誰でもできる」
「同じ場にいても自分のメガネを通してみる景色と相手に見える景色は全く違うことを学べるときっと優しい大人になれると思います。」
「『想像させる』って大事。 そうやってキチンと説明してもらうと、子供だって思いやりの気持ちになるんですね。」 など数々の共感の声、感動の声が寄せられている。

古谷さんにお話を聞いた。

ーー当時の先生のご年代、お人柄についてお聞かせください。

古谷:
当時の年齢で40代後半だったかと思います。隣のクラスの男性教諭でした。
厳しかったのですが、ドラマに出てくるような鬼教師ではなく、何かあった時いつも冷静にみんなを諭すような先生でした。凛としていて、素敵な先生です。

ーー生徒たちから慕われていた先生だったのですね。

古谷:
今回のポストの先生のお言葉にはちょっとした背景もあります。
私たちの修学旅行の行き先は広島でした。テーマは「平和学習」です。
修学旅行に出かける前から、広島や長崎に起きた悲惨な過去を何時間もかけて丁寧に教わりました。
修学旅行は、原爆ドームに行ったり、実際に被爆した方のお話を伺いに行くようなスケジュールで、宮島での観光もありましたが、ほとんどが戦争について学ぶ内容でした。
私は戦争体験者の祖父母に育てられたので、どこか修学旅行は楽しいピクニックに行くような感覚ではなく、日頃学んだことを実際にこの目で体験し勉強しに行く、とても大切なものだという認識がありました。
ですので、より先生の言葉がすんなり入ってきたのかもしれません。

ーー古谷さんたちは先生の言葉をどのように受け止めたのでしょうか?

古谷:
私は当時小学生でしたので、新幹線イコール旅行に行く人が乗るものという認識が少なからずありました。
ビジネスマンだけでなく、先生が言うような状況の人が乗るなんていうところまで、想像力が追い付いていなかったように思います。
私は、祖父母がすぐ近くにいましたし、実家に帰省するなどというイベントもないのです。
子供の世界観はそんなものです。
なので、先生に諭され「そっか!いろんな人がいるよね。それは私たちがうるさくしていたら、きっと嫌な気持ちになるだろうな。」とわかりました。
他の児童たちの気持ちはわかりませんが、車内でトランプをしていた時に、友人がふと大声を出しそうになったけど「はっ」とした顔をして落ち着いたので、きっと私と同じように考えていたと思います。

ーー今振り返り、先生のお話のされ方についてどのように感じますか?

古谷:
私は、独身ですし、子供もいませんので、子育ての大変さはわかりませんし、小学校の教員の大変さもわかりません。
ですが、高校と専門学校の講師をしておりましたので「子供に伝えることの難しさ」は少しわかる気がします。
「こういうふうに伝えたい」と思っても、自分の意図と全然違うふうに伝わってしまうこともあります。
子供を持つ親や、先生方は日々とても苦労されていると思います。
しかし、先生は諦めずに丁寧に説明してくださり、なおかつ「心の片隅に置きながら行動してください」と、私たちの判断に委ねてくださったのです。
これは「どうせ言っても伝わらないだろう」「自分の真意は伝わらないだろう」ではなく、しっかり説明すれば伝わると信じてのことだと思います。
こういう思いは子供は敏感に感じ取ります。
結果、今回お話した修学旅行のような結果につながったのだと思います。

◇ ◇
言葉は使いようで人を傷付けもすれば、逆に励まし、人間的成長をもたらすこともある。
古谷さんの先生のような伝え方は誰にでも真似できるものではないが、相手の心に向かい合って話しようという心構えはぜひ見習いたいものだ。

なお古谷さんは9月3日に横浜市西区のNaked Loft Yokohamaで鉄道トークイベント「てっけん!#3」に出演。また現在、これまでに出演したMONDO TVの鉄道番組「鉄道ひとり旅〜女子鉄編〜」が一挙再放送中なのでご興味なる方はぜひチェックしていただきたい。


古谷あつみ(ふるや・あつみ)さんプロフィール
松竹芸能所属、鉄道タレント

小学生の頃、社会見学で近くにある車両基地へ行ったことを機に、鉄道ファンとなる。
新幹線の車内販売員を経てJR西日本の駅員となった後、芸能界デビュー。
現在はタレント活動のほか、執筆活動もしている。

(まいどなニュース特約・中将 タカノリ)


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「福田村事件」が描く歴史の闇 「自粛警察」に通じる群れ化$l間の恐ろしさ 森達也監督「100年前の話ではない」

「福田村事件」が描く歴史の闇 「自粛警察」に通じる群れ化人間の恐ろしさ 森達也監督「100年前の話ではない」
8/28(月)   ひとシネマ

関東大震災から100年の9月1日、「福田村事件」が公開される。
震災直後にあった日本人虐殺事件を、「A」などのドキュメンタリーを手がけてきた森達也監督が映画化した。
演出を巡って脚本を担当した荒井晴彦らと「いっぱいケンカした」と振り返りながら、「100年前の事件とは絶対に思ってほしくない」と力を込める。

震災直後、行商人9人が殺害
福田村事件は震災5日後の1923年9月6日、千葉県福田村(現野田市)の利根川沿いで発生した。
香川県から訪れていた被差別部落の薬の行商人15人のうち、子どもや妊婦を含む9人が、自警団や村民らによって殺害された。
日本は10年に韓国を併合したが、19年に韓国で独立運動(三・一独立運動)が起こるなど、国内には後ろめたさと警戒心がまん延していた。
震災直後、「井戸に毒を入れた」「朝鮮人が襲ってくる」といったデマによって日本人の自警団や官憲が多数の朝鮮人らを虐殺したことはよく知られている。
しかし、日本人も犠牲となった福田村事件は、その凄惨(せいさん)さと背景の差別意識から、長年タブーとされ広く知られていなかった。

テレビ各局が難色示した歴史のタブー
森監督が事件を知ったのは約20年前。
テレビのドキュメンタリー枠で10〜15分の番組にしようと各局に企画書を書いて持っていったがことごとく断られたという。
「理由を明確に言わない。『それは森ちゃん、難しいよ』って言われるくらいで。
でも、朝鮮人虐殺だけでも難しいのに、被差別部落の問題までとなると余計にハードルが高いのだろうとは、なんとなく察しがつきました」

月日は流れたが、2020年にあった映画賞の授賞式で脚本家の荒井晴彦と知り合ったことで事態は急転する。
互いに事件に関心を寄せて作品化を目指していたことが判明し、タッグを組むことになったのだ。
製作資金は文化庁の助成やクラウドファンディングで集めた。

朝鮮人も中国人も社会主義者も殺された
映画は史実に基づくフィクションだ。
森監督は、地下鉄サリン事件から間もない90年代後半、オウム真理教内での長期取材を行い、その実態に肉薄した映画「A」などのドキュメンタリー作品で知られる。
立教大生の頃に8ミリの自主製作映画を作ったり、テレビ番組としてオムニバス形式の短編を撮ったしりした経験はあったが、本格的なフィクション映画は初めて。
森監督は「ドキュメンタリーでもフィクションでも、映像そのものに大きな違いはない。
ただこれまでは私1人、もしくは数人のスタッフ程度だったのが、エキストラを含めると100人を超えるスケールになった。荒井さんらとやることで僕にはない発想の展開がいくつもあった」と手応えをかみしめる。

例えば震災直後、東京・亀戸署内などで社会主義者ら10人が虐殺された「亀戸事件」をストーリーに入れるのは荒井のアイデアだった。
「震災では朝鮮人が殺されただけではない。中国人も日本人も、社会主義者もいろんな人が殺された。
そういうことが重層的にあったというのは私も描きたかった」

説明セリフ巡り脚本・荒井晴彦と「さんざんケンカ」
井浦新、田中麗奈、永山瑛太、東出昌大といった、多くの映画やドラマで主役を務める人気俳優が顔をそろえ、それぞれのキャラクターを好演した。
一方、当時の時代背景や社会情勢を役者のセリフで語らせる場面が目立ち、説明過多な印象を受ける。
脚本によるところなのか。率直な感想を添えて聞いてみると、「全く同意見です。そこはさんざんケンカしました」と返ってきた。
「だって、教科書じゃないんだし。ドキュメンタリーも劇映画も、欠落が大事。
映像の基本はモンタージュ。
観客は、そのモンタージュの間のカットの割れ目を想像しながら見るわけで。それは映画全般で言えること。『並川市場事件が起きたけど……』とか、あんな(説明的な)セリフ要らないよって散々言ったんだけどダメでした。
でも仕方ない。チームですからね」と振り返った。

リベラルが勝てない情念
物語は、朝鮮で教師をしていた澤田智一(井浦新)が、妻静子(田中麗奈)をつれて古里の福田村に帰ってくるところから始まる。
澤田の旧友で村長の田向龍一(豊原功補)は温かく迎えるが、在郷軍人会の分会長である長谷川秀吉(水道橋博士)とはギクシャクし話がかみ合わない。
前半部分では、小さな村の複雑な人間関係を含め、各家庭の日常が丁寧に描かれる。
そして9月1日に地震が起きると、そんな普通の人々が群れを形成して変貌し、虐殺事件へと向かっていく。
史実を知った上で見る観客にとって、インテリな澤田と田向村長、裕福な家庭で育った静子は差別意識が薄く、一見劇中の良心として映る。
でも彼らはヒーローには決してなれず、無力な人間として描かれている。

「あの時代は大正デモクラシーの頃。
でも結局は『イケイケドンドン』の世相に押されて、日本は軍国主義へかじを切っていくわけですね。
だから、リベラルは不安や恐怖を含む情念には勝てないということです」

インテリで頭でっかちな人間が正論を言ったとしても、切羽詰まった一人一人の感情や極論の前に無力となる――。
そんな瞬間は、現代にも往々にして起こる。

他者への不安と恐怖が生む攻撃性
今の日本社会を思い浮かべずにはいられない。
特に震災直後にデマを根拠に結成された各地の自警団は、2020年以降のコロナ禍で感染対策に消極的な人や店に嫌がらせをした「自粛警察」と重なる。

「作品の解釈を押しつけるようなことはしたくないが、もちろん意識にはあった」と森監督。
「(事件を)100年前のことにしたくなかった。
自衛の意識が、自粛警察や震災後の虐殺にもつながる。
そして、敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有を巡る話だって、『他国に攻められたらどうするのか』という不安と恐怖が根底。つながっている」

「私」から「我々」に 集団心理という宿痾
森監督が常々訴えているのは、人は群れ化、集団化したときに変質し攻撃性が表れるという恐ろしさだ。
人間という生き物は、群れを形成し社会性を身につけたことで繁栄した。
しかし、群れは、同質であることを求め、異物、異質なものを排除する性質を持つ。

そうした問題意識の原点は、オウム真理教の取材にあるという。
「オウムの信者だって、一人一人と会話すれば、優しく温厚な人たち。
でも、集団化し、いざ教祖に指示されたとき(サリンをまくなどの)虐殺行為をするわけです。

虐殺は一人じゃできない。戦争はその最終的な形だけれど、そういう点では人類の宿痾(しゅくあ)と言える。
主語が変わっていくと恐ろしい変質をとげる。
『私』という一人称単数の主語が、『我々』という複数形に主語が変わるときが最も恐ろしい」
そして森監督は、福田村事件や他の虐殺事件と宗教を背景にしたオウムの一連の事件とを「同じように語れない部分がある」としながら、「善良なまま、優しいまま、その人が変わってしまうというところは共通しているかな」と指摘する。

「歴史を直視して、反省しなければ人間も国も成長はない。
映画で描いたのは、100年前の出来事ではない」

          毎日新聞記者 井上知大
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2023年08月30日

デマやフェイクニュースを投稿する前に! 真実かどうか確かめる「ファクトチェック」のやり方教えます

デマやフェイクニュースを投稿する前に! 真実かどうか確かめる「ファクトチェック」のやり方教えます
8/29(火) Web担当者Forum

オーガニック運用・広告配信・危機管理など、企業のSNS活用のポイント、最新情報を、SNSマネージャー養成講座の講師陣「チーフSNSマネージャー」のメンバーが、それぞれの得意分野を中心に解説します。
今回は、チーフSNSマネージャー、上級ウェブ解析士などとして活躍する藤原忍氏が回答します。

最近SNSを見てると本当の情報かどうかわからないことが多いのだけど、なにかできることはありますか?

藤原
SNSを利用していると、自分が得た情報がフェイクニュースやデマだったということが時々ありますね。
最近はAIによる画像生成も多くなっていますので、個人の利用で100%フェイクニュースを見破るのは難しくなっています。そのような中でも、間違った情報を拡散してしまわないために何ができるかを、今回はお伝えします!

 週に一回以上偽情報・誤情報に接する人は4割以上
総務省が2023年5月に発表した「国内外における偽・誤情報に関する意識調査」によると、「直近の1か月の間で偽情報・誤情報だと思う情報をどの程度見かけたか」という質問に対して、4割以上の人が「週に1回以上」と答えています。
そして情報源としては「SNS」が4割以上を占めました。

参照元:総務省「令和4年度 国内外における偽・情報に関する意識調査より」から再構成

ここ数年で、特に話題になったフェイクニュースと言えば、2022年9月の台風15号による静岡県の水害時に、泥水や濁流に水没した家々の画像が投稿されました。
しかしそれはAIで生成された虚偽画像だったということが大きくニュース番組でも取り上げられて話題になりました。
その他ではウクライナ情勢においても、「ウクライナに降り立つロシアのパラシュート部隊」として拡散された動画が、5年以上前に投稿されていた別地域の動画だったりゲームの一場面だったりということがありました。

コロナパンデミックにおいてWHOのマネージャーは「虚偽の情報はウイルスよりも速く拡散している」と述べ、「インフォデミック」という言葉が誕生し広く使われるようになりました。
このように、戦争や災害、新型コロナウイルスやワクチンなどに関して、さまざまなフェイクニュースやデマが多く出回っています。
そのような偽情報を見破ることってできるのでしょうか?

 前述の総務省の令和4年度調査報告によると、「情報が怪しいと思った場合、情報の真偽を確かめたことはありますか?」という問いに対して、「すべて・ほとんど情報の真偽を調べた」「ある程度情報の真偽を調べた」という人は合わせて26%にとどまっています。
これは非常に重要なポイントです。
情報が正しいかどうかを調べないで拡散してしまうと、フェイクニュース・デマに加担してしまうことになってしまいます。誰かが大きく傷ついてしまうこともあります。
ですから、まず情報が正しいかどうかを調べるべきなのです。

  情報を見る前にできること ここでひとつ、興味深い研究があります。
カナダ・レジャイナ大学心理学部のゴードン・ペニークック氏らが行った実験によると、信頼できないニュースをシェアした経験を持つTwitterユーザー5,379人を対象に、「HOW ACCURATE IS THIS HEADLINE?(この見出しはどれだけ正確でしょうか?)」という文言を大きく記したうえでニュースを送信して、見出しの正確性を考えるように促したところ、「シェアするニュースの正確さと質が向上する」という結果が得られたのです。
参照元:Distraction Helps Misinformation Spread. Thinking About Accuracy Can Reduce it. | by Jigsaw | Jigsaw | Medium

人は事前に見聞きしたことによってその後の判断や行動にも影響してしまう傾向があります。
これはいわゆる心理学の「プライミング効果」により、「見出しが正確かどうか」を事前に考えることで、シェアする正確さや質が向上したということになります。
 つまり毎回情報に接する前に「今から読む内容は正確かどうか?」という点を意識することが重要なのです。「とにかく疑ってみる」ことがターニングポイントになるのです。

  情報に接した時にできること つづいて、実際に情報に接した時に何ができるかです。
さまざまな対応がありえますが、今回は代表的な2つの手法について紹介しましょう。

■ (1)徹底的に調べる
まず1つめは、「徹底的に調べること」です。
たとえば見出しだけを読むのではなく記事全体をよく読んであいまいな表現がないだろうかと考えたり、外部リンクがあればリンク先が正しいかどうかを確認します。
筆者が他にどのような投稿をしているのかも確認します。
日付はどうでしょうか? Googleの画像検索で検索してみると、じつは以前に違う内容で投稿された画像だったということが確認できるかもしれません。
ほかのSNSやウェブサイトでも同じようなことが投稿されているでしょうか?

■ (2)冷静な目線で情報を見る
もう1つは、「冷静な目線で情報を見ること」です。
これは総務省の調査での事例ですが、「“フィルターバブル”という用語を知っていますか?」という質問に対して「知らない」という人が8割近く存在しました。
ちなみに「フィルターバブル」とは「まるで泡(バブル)の中に包まれたように、自分が見たい情報しか見えなくなること」とWikipediaでは説明されています。
人は、自分の信条や偏見を補強するものを信じてしまう傾向があります。
ですから、情報やニュースを目にする時には、まず冷静になってから、「自分が読んでいる記事はニュースなのか?それとも意見なのか?」という点を考えながら読むことで、感情のフィルタを外しながら確認するべきです。

参照元:総務省|令和元年版 情報通信白書|

インターネット上での情報流通の特徴と言われているもの 結論疑ってみる、調べてみる
フェイクニュースやデマに振り回されて不確かな情報を拡散してしまわないようにするためには、まず読む前から「これはフェイクニュースではないだろうか」と疑ってみましょう。
そして、冷静になってしっかりと情報の出どころを調べてみましょう。
それでも、もし情報が確かかどうかわからない、はっきりしない時は、投稿しないようにしましょう。
確定してから発信するので大丈夫です。
そうすることで、100%フェイクニュースかどうかを「見破る」ことは難しいとしても、「誤った情報を拡散」してしまうということは避けられるはずです。
良いSNS運用ライフをお楽しみください。 
posted by 小だぬき at 00:18 | 神奈川 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年08月31日

養老孟司「現在の日常が“当たり前”と思わないで」戦争、災害…平和への思いを語る

養老孟司「現在の日常が“当たり前”と思わないで」
戦争、災害…平和への思いを語る
8/30(水) TOKYO FM+

フリーアナウンサーの住吉美紀がパーソナリティをつとめるTOKYO FMの生ワイド番組「Blue Ocean」(毎週月曜〜金曜9:00〜11:00)。
「終戦の日」である8月15日(火)の放送のコーナー「Blue Ocean Professional」のゲストに、医学者・解剖学者の養老孟司さんが登場。
自身が経験した戦争の記憶や平和への思いを伺いました。

1937年生まれ、神奈川県鎌倉市出身の養老さん。
東京大学医学部卒。1995年に同大学医学部教授を退官し名誉教授に。
2003年に出版した「バカの壁」(新潮社)で450万部を超えるベストセラーを記録。
サントリー学芸賞受賞した「からだの見方」(筑摩書房)など多数の著書を手がけています。

今年5月には、養老さんと精神科医・名越康文さんによる「ニホンという病」(講談社)を出版。
夕刊紙「日刊ゲンダイ」での連載をまとめたもので、対談テーマは新型コロナウイルスやロシアによるウクライナ軍事侵攻、南海トラフ地震、脳科学、宗教観、多様性、死と再生など多岐にわたります。
そんな養老さんが終戦の日である8月15日に、日常の大切さや、命を脅かす脅威に対する心構えなどについて語ってくれました。

◆戦時中は常に“飢え”の苦しさがあった

住吉:
養老さんは小学2年生のときに鎌倉で終戦を迎えられたとお聞きしました。
戦後の体験が人生を決定する原体験になっていると語られている記事を読んだことがあります。
具体的な体験で、一番繰り返したくないと思うことは何ですか?

養老:
私の場合、直接戦争に参加したわけではないのですが、戦時下の今のウクライナの人たちのような感じですよね。
一番印象に残っているのは、日常が非常に不自由だったということ。
具体的な話だと食べ物ですね。
戦争でやられることの1つは流通。
戦前は、車はあまり使われていなくて鉄道だったので、流通が一番止めやすいんです。
鉄道なら線路を壊せばそれっきりですので。
海上だと石油の輸送船ですね。
流通は基本的に人口の多い東京に向かって集中していき、東京近郊の都市は、いわゆる東京の余りものがくる感じになっていたんだと思います。
ただでさえ足りないものが、さらに足りなくなっている状況です。
残っている記憶といえば、「飢えた記憶」です。
今考えると信じられないと思いますが、まず、当時は調味料がまったくない。
砂糖がない、醤油がない。お米でも何でも、国が統制して配っていたわけです。
日本の戦争の場合、軍隊自体が増えていましたから、戦死者と呼ばれた人たちのほとんどが飢え死にだって言われています。

◆日常を壊すのは戦争だけではない

住吉:
戦争を体験したことのない世代が増えていますが、戦争の脅威は変わらないと感じています。
そのようななかで伝えたいことは何ですか?

養老:
何でもない日常ですね。
朝起きてご飯を食べる、その日常が壊れることがあり得るということです。
そして、それは戦争に限りません。
日本の場合は天災がありますから、いつ地震が起きるかわかりません。
さきほど申し上げた流通に影響しますので、物があっても届かない状況になります。
現在の日常が「当たり前」と思わないでほしいです。

住吉:
養老さんは今年5月に、精神科医の名越康文さんとの対談本「ニホンという病」(講談社)を出版されました。
ウクライナ侵攻、少子化など、さまざまなテーマで語られているなかで、養老さんはまさに今おっしゃっていた天災・南海トラフ地震と、さらに先のことについてお話をされています。
こちらについて、養老さんは強い思いをお持ちだそうですね?

養老:
今年でちょうど関東大震災から100年です。
日本の歴史を振り返ると、大きな政治の変化は天災と一緒に起こっています。
たとえば、平安時代の貴族政治が終わったあの頃は天災続きの時代でした。
都のものは全て田舎から来ているのに、それが止まってしまう。
都には人がたくさんいますから、たちまち飢え死にする人が出てくるわけです。
世の中が荒れると山賊や海賊が横行し、それを抑える力が武家。
それで貴族政治ができなくなり、武家政権が成立する。
それが江戸幕府の終わりまで続き、嘉永6年に黒船来航があり、翌年に安政南海地震が発生しています。

住吉:
今後も地震に備えて国、個人レベルでも備えることが大事になっていくわけですね。

養老:
どういう災害が来るかわからないので、大事なことはそれぞれの人の日常生活が、どうやって確保できるかということです。今の社会は個人的に日常生活を確保できるようにはなっていなくて、すべて流通に頼っているわけです。
そのシステムが壊れると、どうしたらいいかわからないって人が大量に出てくるはずです。

住吉:
自治体レベルではそうなる可能性を想定して備える必要があると。

養老:
場所によってはやっているところもありますね。

◆自立心と創造力を養い窮地に備える

住吉:
個人レベルでできることは何でしょうか?

養老:
「人に頼らない」ということですね。
政府が悪いとか、自治体が何とかしてくれるとかではダメなんで。
そもそも、そういう所が機能していない可能性がある。
戦争の話でいうと、僕の大学の同級生には満州からの引揚者が3人いました。
満州帝国が崩壊して、そこにソ連軍が入ってきて、そのあとは蔣介石の軍隊が入り、そして毛沢東の軍が入る。
どんどん政府が変わるなか、命からがら帰ってきた人たちが引揚者です。

住吉:
自力で頼れる人がいないなかで、どのように帰ってくるかが問題だったわけですね。

養老:
そうです。帰るという目的はあるけれど、そこまでにどうやって生きるか。
(引揚者は)国に対する感覚が全然違うわけです。
国家というのは脆くて儚いもので、自分たちが何とか助けてやらなきゃ国は続かないよっていう。
これは理屈ではなくて感覚ですよね。
そういう感覚を持った人たちが随分といたんです。
日本だと戦後の学生運動のように国家権力を敵対視していましたが、敵対視するほど国家は強いものではないということを知っていたのは、政府が次々と変わっていくところを通ってきた人たちですね。

住吉:
つまり、自立心と創造力、応用力を持って生きていくということでしょうか?

養老:
そうですね。

住吉:
一朝一夕では身につかないと思うのですが、具体的にはどんなことをすればいいのでしょうか?

養老:
やはり日常のなかで、そういったものを育てていくことが大切です。
たとえば地震が起こったときの話なら、どこをトイレにするのか。
穴を掘るとか、水をどうするかとか、具体的な問題に直面するわけです。

住吉:
裸の生き物に戻って、自分で自分の命をつないでいく意識を持つということですね。
一見便利な世の中ですが、そのようなことを忘れないことが大切ですね。そのためにも、養老さんのようなお方の話を聞くのが大事だと、今回お話を伺って改めて思いました。ありがとうございました。

(TOKYO FM「Blue Ocean」8月15日(火)放送より)
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