2023年08月09日

高い"夏の旅行"安く抑える技

高い"夏の旅行"安く抑える技
アパホテルでさえ1泊3万円…高すぎる「夏の旅行」を安くおさえる“裏ワザ”6選
2023年08月09日 SPA!

今年の夏こそ旅行を楽しみたい!と、意気込んで宿を予約しようとしたら金額に啞然。
格安ホテルの宿泊料金が高級旅館並みに暴騰している。
その背景には、一言では語れないホテル業界の事情があった――。

◆サラリーマンの懐に追い打ちをかける“宿泊料金の高騰”  
ビジネスホテルの宿泊料金の高騰は、インフレにあえぐサラリーマンの懐に追い打ちをかけている。
 東京都内の食品会社に勤める40代のA氏が嘆息する。
「8月上旬に札幌市内で開かれる大事な取引先の社長の勇退パーティに招かれたのですが、平日なのに宿泊代が軒並み1万5000円以上でのけぞりました。
 うちの会社は、出張宿泊費の支給上限が1万2000円で足が出た分は自腹を切ることになるので、断念。ゲストハウスに泊まるのも考えましたが……」

◆ホテル業界を豹変させた「コロナ禍のトラウマ」
 お盆休みになれば、さらに厳しい金額になる。
 食事なしの素泊まり1名で、アパホテル・札幌すすきの駅前ではダブル3万2900円。ホテルリブマックスBUDGET那覇ではシングル2万1250円など、価格高騰は全国的な傾向にある(楽天トラベル7月27日現在)。
 その背景について、トラベルジャーナリストの橋賀秀紀氏が解説する。
「コロナが明けて、国内や海外観光客による旅行需要は高まっていますが、その半面、コロナ禍で従業員を削減したホテルが多く、フル稼働はできない。
 そのため受け入れられる客数が減り、供給がまったく追いついていません。
 加えて、コロナ禍の全国旅行支援などの施策により、それまで業界内でキープされてきた価格相場が崩れて競争が激化。  需要や相場に合わせて価格が随時変動する『ダイナミックプライシング』のシステムによって、価格がどんどんつり上がっている状況です」

◆「高騰の先行き」専門家も意見が割れる
 また、ホテル業界のコンサルに携わるPwCコンサルティング執行役員パートナーの澤田竜次氏も次のように語る。
「現状のホテル業界は高値で設定してもお客さんを取れる自信がある。
円安やウクライナ紛争で海外航空券が高いことも、国内需要を後押ししている」 高騰の波の先行きは不透明だ。

 澤田氏は「コロナで旅行を控えていた日本人の“リベンジ需要”は年内を区切りに収束しそう」と予想するが、橋賀氏は「国民の旅行にブレーキをかけている中国が全面開放すれば、ますますインバウンド需要が増えるはず。
来年以降も高値が続くのでは」と意見は割れた。

◆お値打ちホテルを見つけるカギは「地域性」
 ただでさえインフレ状態のホテル業界。
かき入れ時のお盆シーズンを控え、お値打ちのホテルを見つけることはできるのか。
 そこで、澤田氏は地域性に着目する。
「例えば、北海道のニセコのようにスキーで有名なエリアは夏に泊まれば比較的お得です。
 また、東北や四国はビジネス需要が少なく、他の地域に比べて相対的に安い。
特に、秋田県は7月の豪雨の影響もあり、価格が上がりにくいのでは。
 ほかにも、長野県の上高地のように、利用客が増えていても値段を上げない昔ながらのポリシーにこだわるエリアも残っています」

◆旅をコスパ良く満喫するための「工夫と努力」
 自由が利く単身旅行なら、あえて予約をせず、当日直接申し込みの賭けに出るのも手。 「ホテル側は空室を寝かせておくのがもったいないので価格交渉に応じやすい。
チェックイン手続きが一段落して、決定権のある支配人の手が空く午後6時以降が狙い目ですね」(澤田氏)
 また、予約サイトに載らないような宿にこそ宝が眠っている可能性もある。
「ダイナミックプライシングを導入せず、相場に関係なく独自の値段設定をしているような老舗の旅館は、お盆でもさほど値段を上げていないことがあります。
 泊まりたいエリアをグーグルマップで調べ、表示された宿に直接電話を入れてみたり、地元の観光協会や観光案内所に電話で相談すれば、紹介してもらえることもあります」(橋賀氏)

 物価高に宿泊費高の今、旅をコスパ良く満喫するには創意工夫と努力でカバーしたい。

◆お得な宿泊法6選

@予約サイトに載らない宿
 個人経営の零細な宿の中には、予約サイトに掲載せず、ハイシーズンでも価格変動をさせずに営業する“独立系”がある。
「ネットに疎いタイプであるため、ホームページさえないこともありますが、旅行愛好家のブログやグーグルの口コミを参考にしたい」(橋賀氏)

A会社契約の宿
「会社や健康保険組合が、福利厚生でホテルと年間契約を結ぶケースがあります。
価格は前年に決めるため、’22年の相場に基づいており、現状の価格の半額程度で泊まれるケースもある。
大抵の会社では、出張以外での利用も認めています」(澤田氏)

B当日直接申し込み
「稼働率が100%の宿というのは実は多くなく、空室はあります。  
本音では安く売りきってしまいたいのですが、ネットに格安の当日価格を出すわけにはいかないので、直接来たお客さんに限ってお値打ち価格を提示することもあります」(澤田氏)

Cラブホテル
 “独立系”旅館同様に予約サイトに登録されていないケースが大半なので、相場や時期の影響を受けず、固定価格を維持する傾向が強い。
「ラブホテルの価格比較サイトがありますが、利用する人は多くないですし、狙い目と言えます」(橋賀氏)
ホテルロータス池袋は、8月はお盆期間を除けば9月と同一の価格設定。
「ラブホテルは休憩サービスでも収益を図れるので相場に引きずられにくいです」(運営会社広報)

D2〜3駅離れた宿
利便性の高い繁華街から遠ざかれば、おのずとホテルの価格は下がる。
「泊まりたいエリアをグーグルマップで表示して『ホテル』と検索すれば、ホテルの場所に価格が表示されます。
レンジを広げれば、掘り出し物が見つかる可能性があります」(橋賀氏)

Eホテルサブスク  
サブスクブームはホテル業界にも広がり、現在20社以上のサービスがある。
「行きたいエリアに拠点があるか、同伴者の不可、ホテルの種類などの条件を必ず確認。
特にハイシーズンであれば、実勢価格よりも安く泊まれる可能性が高くなります」(橋賀氏)
「HafH(ハフ)」では、月会費9800円から毎月300コインが付与され、コイン数に応じて提携先の宿に泊まることができる。
人気の星野リゾートに実質半額で泊まれることも。


【トラベルジャーナリスト・橋賀秀紀氏】
 Yahoo!ニュース・エキスパート。
世界126か国を訪問。モットーは「宿泊代は1万円まで」。
共著に『エアライン戦争』(宝島社)など。


【ホテルコンサルタント・澤田竜次氏】
 PwCコンサルティング執行役員。
ワシントン大学でMBAを取得。
ホテル・観光・不動産業界でアドバイザリーサービスを提供している。


取材・文/週刊SPA!編集部
posted by 小だぬき at 12:22 | 神奈川 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

冷えすぎに要注意...夏バテの原因「自律神経の疲れ」が和らぐ8つの習慣

冷えすぎに要注意...夏バテの原因「自律神経の疲れ」が和らぐ8つの習慣
8/8(火)  PHPオンライン衆知

暑さで食欲がわかず、取れない疲れにグッタリ...。
そんな夏バテの原因には「自律神経の乱れ」が潜んでいます。
正しい対策をとって夏の不調を予防・改善しましょう!
医師の川嶋朗さんが見直すべき習慣について解説します。

【川嶋朗(かわしま・あきら)】
医学博士。1957年生まれ。
北海道大学医学部医学科卒業。
2022年より統合医療SDMクリニック院長。人の自然治癒力を高めることを重視し、近代西洋医学と補完・代替医療を統合した医療の教育を日本の医療系大学で実践中。
『毎日の冷えとり漢方』(河出書房新社)など著書多数。
※本稿は、月刊誌『PHP』2023年8月号より、内容を一部抜粋・編集したものです。

夏バテに共通する原因 だるい、食欲がない、胃腸の調子が悪い、疲れがとれない...。
夏バテの症状は人それぞれですが、これらに共通する原因として「自律神経の疲れ」が考えられます。
ヒトには外界の変化にかかわらず、体内環境を一定に保つ恒常性(ホメオスタシス)という機能があります。
たとえば暑いときは、血管を拡張させて血液量を増やし、体の表面から熱を逃がして体温を下げようとします。
逆に寒いときは、血管を収縮させて血液量を減らして、熱が外に逃げないようにします。
そのように自律神経は血管を拡張したり、収縮したりして、体温調節をしてくれているのです。

そのおかげで、私たちは体温を一定に保つことができます。

激しい寒暖差が負担をかける
ところが、夏は冷房を使うために室内外の温度差が大きくなります。
私たちが暑い場所と涼しい場所を行ったり来たりすると、自律神経は体温を一定に保つために一生懸命働かなければなりません。
夏のあいだずっと、このような体温調節を繰り返していると、自律神経は疲弊してしまい、機能が低下してくるのです。
自律神経は体温だけでなく、全身の血管や内臓の働きなど、体中の器官をコントロールしているため、自律神経の働きが乱れると、さまざまな不調が起こります。

夏を元気に乗り切り、秋に不調を持ち越こさないためには、自律神経を疲れさせないこと、また多少の温度変化があっても自律神経が乱れない体づくりが大切です。

交感神経と副交感神経
夏バテ予防と改善のかなめとなる自律神経の働きを確認しておきましょう。
自律神経は呼吸や心臓の働き、体温などを意思とは関係なく調整し、さまざまな生命活動をコントロールしています。
自律神経には心臓の動きを速くしたり、血圧を上げたりすることで積極的な活動を支える「交感神経」と、心臓の動きをゆっくりにするなど体をリラックスさせる「副交感神経」の二種類があります。

基本的には、体を動かす日中は交感神経が活発に働き、体を休める夜には副交感神経が優位になりますが、この2つの神経がシーソーのようにバランスをとりながら、すべての臓器をコントロールしているのです。
私たちが健康でいるためには、交感神経と副交感神経がバランスよく働いていることが重要です。

夏も「冷え」にはご用心
体を冷やしすぎると自律神経を酷使してしまいます。
暑い日が続いて、冷房で冷えきった部屋でずっと過ごす、入浴せずにシャワーですませる、冷たい食べ物や飲み物をとりすぎる、肌の露出が増える...などが重なると、体は内臓まで冷えてしまいがちです。

体が冷えると体温を上げるために交感神経が優位な状態が続き、血管が収縮します。
すると全身の血流が悪くなり、ますます冷えるという悪循環におちいります。
自律神経は乱れるいっぽうになるのです。
副交感神経の働きを高め、自律神経を整えるために必要なのが、夏でも体を冷やさないことと体温を上げることです。
そうすれば好循環が生じて、夏バテ知らずの体になります。
下記で紹介する自律神経を整える生活習慣をぜひ実践してみましょう。
2週間ほど続ければ、効果が実感できるはずです。

自律神経を整える8つの習慣
日常生活にひと工夫プラスするだけ。自律神経が整って体も心も健康になる方法を紹介します。

1. 常温以上のものをとる
夏は冷たい食べ物がほしくなりますが、冷たいものは体内の温度を下げ、内臓の冷えを招きます。
どうしても食べたければ、冷たいものの前後に温かいものをとるようにしましょう。
こまめに水分をとって脱水を予防することも大切です。
1日1〜1.5Lを目安に。水分のとりすぎは体を冷やすので注意しましょう。

2. よく嚙んで食べる
一口30回を目安によく噛かみましょう。
嚙むことによって、口のまわりの咬筋から脳に刺激が伝わり、コルチゾールやノルアドレナリンなどのストレス系のホルモンの分泌が抑えられ、リラックスできます。
また、熱をつくり出すヒスタミンが産生されて体温が上昇。
満腹中枢が刺激されて過食を防止する効果もあります。

3. 日常生活に軽い運動を取り入れる
体の熱の多くは筋肉によってつくられています。
筋肉を鍛えて体を温める力を強化しましょう。
激しい運動は活性酸素を増やして細胞を傷つけるのでむしろ逆効果。
洗濯物を1枚干すたびに1回しゃがむ、かかとを上げ下げしながら食器を洗う、電車やバスでは座らない、できるだけ階段を使うなど、生活の中で"少々面倒できつい"と思う動きを習慣にするのがおすすめです。

4. 普段より速いスピードで歩く
いつもの1.5倍程度のスピードで歩きましょう。
夏は汗をかきすぎないように、比較的気温が低い朝や夕方以降に歩くとよいでしょう。
忙しくてウォーキングの時間がとれない人は、通勤時に1駅分歩く、少し遠い場所にあるスーパーに歩いて買い物に行く、店内をぐるぐる歩きまわるなどでもOKです。
楽をするのはやめて、なるべく歩くようにしましょう。

5. 衣類で温度差を防ぐ工夫を
温度差をできるだけ少なくするためには、服装によるコントロールが必須です。
ショールや薄手のカーディガンなどを手元に置いて、電車の中など冷房がきいている場所での冷えすぎを予防しましょう。
夏だからといってノースリーブや素足はNGです。
必ず袖のあるものを着用するほか、靴下をはく、レッグウォーマーをつけるなど、意識して足元を温めましょう。

6. 冷房の温度設定は28℃を目安に
外気温と室温の差が大きいと自律神経が疲弊します。
しかし、熱中症対策として冷房は必要です。
自律神経を休ませるため、冷房の設定温度は少し汗ばむくらいの28℃を目安にしましょう。
暑く感じたら、直接風に当たらない位置に扇風機を置いて、冷気を循環させると効果的。
寝不足も自律神経を乱します。
夜間寝苦しいときは、我慢せずに冷房を使いましょう。

7. ぬるめのお湯に10分つかる
シャワーだけだと体が温まりません。
とはいえ、42℃くらいの熱いお湯につかると、交感神経が刺激されて寝つきが悪くなります。
おすすめは39〜40℃くらいのお湯に10分程度、首までつかること。副交感神経が優位になってリラックスできます。
入浴後はそのまま寝てしまいましょう。
微温浴で血流がよくなり、寝つきもよくなっているはずです。

8. いつもの2倍の時間をかけて息を吐く
意識的にコントロールできる呼吸を整えて自律神経の乱れを改善しましょう。
体が冷えているときや緊張が続いているときは、おなかをふくらませて鼻から深く息を吸い込み、吐くときはおなかをへこませながら、いつもの2 倍の時間をかけてゆっくりと吐きましょう。
10回繰り返すと、副交感神経が作動してリラックスでき、体が温かくなってきます。

  川嶋朗(医学博士)
posted by 小だぬき at 02:00 | 神奈川 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

家のカギをかけたのか何度も確認してしまう…ジワジワと増えている「大人の発達障害」の典型的症状

家のカギをかけたのか何度も確認してしまう…ジワジワと増えている「大人の発達障害」の典型的症状
2023年08月06日 PRESIDENT Online
(初公開日:2023年2月20日)
ジワジワと増えている「大人の発達障害」とは、どんな症状があるのか。認知神経科学者の井手正和さんは、不安を振り払うために同じ行動を無意識に繰り返し、エスカレートさせてしまう傾向があると指摘する。
井手さんの著書『発達障害の人には世界がどう見えているのか』(SB新書)からお届けする――。
※本稿は、井手正和『発達障害の人には世界がどう見えるのか』(SB新書)の一部を再編集したものです。

■最新研究で見えてきた発達障害と不安障害の密接な関係
――大学生のJさん。ゼミの授業で研究発表することになり、迎えた当日。
教授:「では、次はJさん。お願いします」
Jさん:「はい……」
教授:「顔色がすぐれないようですが、大丈夫ですか?」
Jさん:「あ、はい……大丈夫です……」
教授:「では、始めてください」
Jさん:「……(無言)」(どうしよう……全員が私のこと見てる)
教授:「ん? どうしましたか?」
Jさん:「……(無言)」(みんな「お前なんかがうまく発表できるわけないだろ」って思ってるんじゃないかな……)
教授:「Jさん? Jさん?」(初めての体験でガチガチに緊張しているのかな? まあいい経験だよね)
Jさん:「……(無言)」(そうだよね……今までうまくいったことないしね。そんな私がみんなのようにうまくできるわけがない。どうせ今回も失敗するよね……)

――大学からいったん帰宅。
アルバイト先に向かうため、駅へと急ぐJさん。
Jさん:(あれ、そういえば家のカギって掛けたっけ?)
〜家に戻って確認する〜 Jさん:(掛けてたか……よかった。汗かいたから顔を洗ってから出かけよう)
〜再度出発するが〜
Jさん:(あ、そういえば顔を洗った後に蛇口は締めたかな? 家のカギもちゃんと掛けたかな? また心配になってきた) 〜再び家に戻る〜
Jさん:(掛けてるよね……)
〜駅に向かって出発する。
そのとき携帯電話が鳴る〜
Jさん:「店長すみません! あと15分で着きます。本当に、本当にすみません!」(いくら確認しても少し時間が経つと不安が襲ってくる……いったいどうすれば私は安心できるの?)

■ASD者5人のうち1〜2人は不安障害を併発
ASD者(自閉スペクトラム症)の中には不安障害に悩まされている人も多くいます。
不安障害は、社会不安性障害(周囲の注目が自分に集まるような状況で強い不安や恐怖、緊張を感じる)と強迫性障害(強迫観念が強迫行為を引き起こし、日常生活に影響が出てしまう)に大別できます。
この両方を併発している人も、一定数います。

ここでは、ASD者が抱える不安障害の実情と、それらを少しでも和らげるために周囲の人々ができることについて、解説していきます。
「ASD者は社会不安性障害や強迫性障害を併発しやすい」という研究結果があります。
2019年に発表された、デンマークの約3万人を対象とした人口統計データを用いた調査では、約20%の不安障害の併発率を示しています。
アメリカのケネディクリンガー研究所の准教授であるVasaたちが2014年に報告した調査なども考慮に入れると、約20〜40%、つまり「ASD者5人のうち1〜2人は不安障害を併発している可能性がある」ということです。
イギリスのブリストル大学の名誉アカデミッククリニカルフェローであるNimmo-Smithたちが2020年に報告した調査では、不安障害の中でも社会不安性障害や強迫性障害の発症割合が、定型発達者と比べて特に高いことが報告されています。

■同級生の輪から排除されてしまうのではないか…
1つめの社会不安性障害は、社会不安障害、社交不安障害とも呼ばれます。
周囲の注目が自分に集まるような状況で「何か失敗して恥をかくのではないか?」という強い不安や恐怖、緊張を感じることを指しています。

社会不安性障害のある1人の当事者の方に、ご自身がどんな場面で不安を感じるのかを尋ねました。
この方は、幼少期に海外に住んでいた経験があり、小学生の時に日本の学校に転校しました。
集団の中での協調性を重んじる文化の日本の学校の中で、自分だけ外れた行動をしないように大変な苦労を経験したことを語ってくれました。
最初は、同じクラスの人たちは、なにかしらコミュニケーションの訓練を受けているんだと思い、自分もそれを身につけるために、テレビを見て、人がどんな時に相槌を打ち、笑い、振り向くのかといったことを勉強したといいます。
そうして少しずつ自分をカモフラージュしていったそうです。
そうした行動は、自分が人と違う行動をとることで、同級生の輪から排除されてしまうのではないかという不安からとった行動だったといいます。
特に苦手としているのは、いわゆるスモールトークだと教えてくれました。
仕事などの具体的な内容について話すのは緊張しないものの、目的のないちょっとした会話をすることに大きな不安を感じてしまうそうです。

■嫌われることへの不安に敏感になる
当事者 例えば同世代の人と食事をする場面では、会話の輪に入っている空気を出さないといけない、目を見なければいけないなどといったたくさんの不安を抱えます。 こうした会話の場面では、自分が暗黙に想定している定型発達者の期待する返しを自分ができているかが気になり、あたかも狭い橋から落ちてしまわないようにバランスをとっているような感覚でいることを教えてくれました。
ずれた言動をして相手を怒らせてしまうのではないか、相手に不快感を与えてしまうのではないか、そんなたくさんの不安を抱えながら、何とか定型の集団から浮いた存在にならないように努力してきた様子を、この方との会話から深く理解しました。

「ASD者は社会的な情報に対して無関心」というイメージが根強いからでしょうか、社会不安性障害の高い割合を意外に感じる方もいるかもしれません。
しかし実際にはASD者は社会的な情報に鈍感なわけではなく、受け取った情報に対する反応の様式が定型発達者と異なることから来る失敗の経験の蓄積により、定型発達者よりも社会的な情報にナーバスになり、強い不安を持っている場合が多いと考えられます。

■日常生活に大きな影響を及ぼす強迫性障害
2つめの強迫性障害は、意志に反して頭に浮かんでしまった考えが頭から離れず(強迫観念)、その強迫観念で生まれた不安を振り払おうと何度も同じ行動を繰り返してしまう(強迫行為)ことで、日常生活に影響が出てしまう状態を指しています。

例えば、 「不潔に思い(強迫観念)、過剰に手を洗う(強迫行為)」
「戸締まりがしっかりできているか不安に思い(強迫観念)、何度も確認する(強迫行為)」
「手順どおりに物事を行わないと不吉なことが起きるという不安から(強迫観念)、常に同じ方法で仕事や家事をする(強迫行為)」
「同じ状態になっていないと不安という思いから(強迫観念)、物の配置・レイアウトにこだわる(強迫行為)」
などが挙げられます。

「不安を生じる事態を抑えられる」と学習した行動(=強迫行動)を無意識に繰り返すようになり、その行動が安定した日常生活を阻害するほどエスカレートしてしまうわけです。

■闘争か、逃走か、フリージングか
そもそも不安とは、危険が迫ったときに適切に緊張状態を高め、身を守るために起こる、生体としてはごく自然な反応です。 こうした場面では、自律神経の調節機能が働き、心拍数や脈拍や発汗の増進などが生じ、「闘争か逃走か(Fight or Flight)」と呼ばれる、自己防衛反応、つまり「危険となる対象に立ち向かうか、それとも逃げるか」のいずれかの行動をとりやすい状態がつくられます。
なお、「闘争か逃走か」の反応の他に、第三の反応として「フリージング(凍結する、固まる)」という反応も挙げられます。
これは危険に対して自己防衛反応をとることができない状態を意味します。
恐怖場面にさらされて何かしらの行動をとったものの、その行動が事態を好転させることに結びつかない経験を繰り返すと、「何をしても状況は変わらない」ことを学習することになります。

■恐怖や不安の表情が、不安をさらに高める
闘争、逃走、フリージング……不安への反応はさまざまですが、ASD者の中には不安障害を抱えている人が多くいます。
では、ASD者が不安を高めてしまうのは、どんな状況なのでしょうか?

1つは、恐怖や不安の表情を目にしたときです。
例えば、恐怖の表情を浮かべた顔画像を提示すると、ASD者にさまざまな変化(縞模様のコントラストへの感度が上がる、わずかな角度のズレも認識できるようになるなど)が生じます。
このときfMRIで脳の活動を計測すると、恐怖や不安といったマイナスの情動に深く関わる脳の扁桃体(へんとうたい)の神経活動が強くなることが報告されています。
また、私たちの研究チームの研究では、視覚刺激の時間分解能も上がることがわかりました。
つまり、恐怖や不安の表情を目にすると、ASD者は刺激に対してさらに敏感な状態になるのです。

■しっかりと言葉で伝えることが重要
もう1つは、ストレスのかかる環境にいるときや、体調がすぐれないときです。
私たちのチームでは、恐怖の表情を浮かべた顔画像を提示したときに「時間分解能の向上の効果」と「不安の強さとの関係」について質問紙(状態・特性不安検査/STAI:State-Trait Anxiety Inventory)を用いて検討しました。

その結果、状態不安(注:この場合は実験場面での不安の高さを意味します)が高いASD者ほど、嫌悪顔画像の提示による時間分解能の向上の程度が大きい傾向が見られました。
ASD者から感覚過敏についてのさまざまな話を聞かせてもらいますが、 「会社や学校で人前に立って発表する前に感覚過敏が強まった」
「体調が悪いなあと感じていたときに感覚過敏が強まった」 という声が多いのです。

ですから、周囲にいる人たちがASD者の不安を高めないようにできることは、「不必要に表情を用いて相手への怒りや嫌悪を表さないようにすること」ではないかと思います。

ASD者は感情的な顔に対して不安を高めやすい一方で、表情の読み取りが苦手な傾向があるということも報告されています。感情的な表情によって漠然とした不安を高めているのかもしれません。
ASDの方に対して自分の意思を伝えなければならない状況では、しっかりと言葉で伝えた方が、余計な不安感を与えることがないかもしれません。
また、ストレスや体調不良によって感覚が鋭敏になることを考慮すると、「ストレスのかかった環境をヒアリングし、できる
だけストレス要因を取り除いておく」「体調をくずしやすい状況を把握できるように促し、その場合は無理をさせない」……といったことも重要ではないでしょうか。

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井手 正和(いで・まさかず)
認知神経科学者
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする