2023年08月20日

国民がマイナンバーカードを作らないのは制度不信とは関係ない 「だって現状、不便がないから」

国民がマイナンバーカードを作らないのは制度不信とは関係ない 「だって現状、不便がないから」
8/19(土) マネーポストWEB

 マイナンバーカードをめぐって、健康保険証や公金受取口座との紐づけミス、住民票誤交付などのトラブルが続いたことで、野党やメディアからの批判が続いている。
カード返納の動きも出ていると報じられているが、マイナンバーカードを申請しているのは、8月13日時点で約77%(交付されているのは約75%)。
いまだ5人に1人以上は申請していない現状がある。
マイナンバーカードを作ろうとしない人たちは、どのような考えを持っているのか。
ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が考察する。
 * * *  
一定数の人々がマイナンバーカードに反対していますが、テレビと新聞が徹底的に批判し、恐怖を煽っているのも大きいのではないでしょうか。
毎度のことですが大メディアは政権批判に使えるネタであれば、「これは数字が取れる!」として報じ続ける。
 そこで紹介されているのは主に高齢者の不安の声ですが、「紙の保険証が使えなくなるのは困る」「悪用されて銀行口座からカネを下ろされてしまうのでは」「誰かが自分になりすましたらどうしよう」といったものがあります。
 まぁ、別の理由としては「メディアが怖いと言っている」「私の全財産が政府・役所に筒抜けになってしまう」「政府に私の行動を監視されるのはイヤ」「遺産を没収されたら困る」といったところもあるかもしれません。

 2015年、安全保障関連法が成立した時、左派メディア・政党は「戦争法案」と呼ぶなどして殊更に恐怖を煽り「民主主義の危機」を訴えました。
2013年の特定秘密保護法の議論の際は、「居酒屋で上司を殴る相談を2人以上でしたら逮捕される」「政府批判をしたら逮捕される」「原発の情報が隠蔽される」などと、なんでもかんでも共謀罪に結び付けられることを危惧し、これまた危険性と民主主義の崩壊を訴えた。

 マイナンバーカードの問題について東京新聞は、長崎県の医師が女性スタッフに自分のカードを渡したうえでカラープリントした自身の顔写真をお面のようにかぶらせ、カードリーダーを突破できるかの実験を紹介。
「なりすまし」の危険性に言及しました。

申請していない人々の2つの理由
 このようにメディアはことさらにその制度の信頼性について疑義を呈している印象ですが、しかしながらマイナンバーカードを申請しない人は、そこまで恐怖心を持っているわけではないと私は考えています。
申請していない人々に話を聞くと、多かったのは以下2つの理由でした。
【1】申請をするのが面倒くさい
【2】現状、不便がない

【1】については、写真を撮影したり、どこかに保管したマイナンバーを見つけ出さなくてはいけず、さらに申請の手順が面倒と考える。
どれだけ「スマホやPCでできますよ!」と利便性を伝えても「ワシはアナログ人間じゃ!」で終了。
そんなことだから【2】の状態に至り、「別に困ってることはないからな。本当に必要なのであれば、その時に息子にでも頼んでやってもらえばいい」なんて高齢者は考えています。

 マイナンバーカードに肯定的な人は、この手の人々に対して「便利になるのをなぜ拒む?」「新しいものを恐れるのはバカ」「デジタル化に対応できないオワコン野郎」「メディアの恐怖煽りに乗っかる情報弱者」と散々な言いよう。

しかし、申請しない人からすれば「だって不便がないから私の勝手でしょ? 不便な時が来たら作るよ」というのが本音なのです。

 海外に目をやると、アメリカのソーシャルセキュリティナンバーは広く普及(かつて約5年だけ住んでいた私でさえ今も保有しています)していますが、これがないと運転免許証も取れないし、社会保障も受けられない。
申請が面倒だの、不便がないだの言ってる場合ではなく「必要不可欠」なんです。
それでも「なりすまし」による税金の還付詐欺のような事例も発生しており、アメリカ人の中にも懸念を示す人はいます。

マイナポイントに対して「必死だな」
 まぁ、とはいっても申請するとマイナポイントが2万円分もらえる、というのに対しては「必死だな」や「何か裏があるのでは」と私のような天邪鬼は思います。
しかも、マイナポイントがもらえるのは、当初は2023年2月までのキャンペーンだったのに、「第2弾」と題して2023年9月まで実質的な延長を行った。とにかくなんとしても申請させたいわけです。
 もちろん、マイナンバーカードが普及して役所の業務の簡略化を進むのであればそれは素晴らしいことでしょうが、未だに戸籍謄本やら印鑑やらが残っている現実があり、マイナンバーカード推進よりも先に廃止して手続きを簡略化できるものもあるのではないか、と思います。

 思えば、若者へのワクチン接種推進の際、群馬県は県内に工場があるスバルの車一台が抽選で一人に当たるキャンペーンを行いました。
お上が何かを推進したい時は、情弱をエサで釣るのが常套手段。
さらに、ワクチン接種に続きマイナンバーカード普及を拙速に進め過ぎるきらいがある河野氏が担当大臣ということで躊躇している人もいます。
この怪しさを感じている少数の人も「様子見」をしているのではないでしょうか。

【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):
1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする