2023年11月23日

「南海トラフ巨大地震」が発生する日…命を守るために知っておきたい「最悪の被害想定」

「南海トラフ巨大地震」が発生する日…命を守るために知っておきたい「最悪の被害想定」
東京都知事政務担当特別秘書 宮地 美陽子
2023.08.15 現代ビジネス

首都直下地震、南海トラフ巨大地震、富士山大噴火……過去にも一度起きた「恐怖の大連動」は、東京・日本をどう壊すのか? 命を守るために、いま何をやるべきか? 東京都知事政務担当特別秘書・宮地美陽子氏による新刊『首都防衛』では、知らなかったでは絶対にすまされない「最悪の被害想定」が描かれている。
その衝撃の内容とは?

南海トラフ巨大地震が発生する日
地震の4年後、再起に向けてタクシー運転手を続けた浜田幸男(仮名)はアパートで幸子と暮らしていた。
医療保険や生命保険(死亡保険)には加入していたものの、地震保険には未加入だった。
自宅再建への国の支援金は最大300万円で、借金をしなければ建て直したり、中古物件を購入したりするだけの余力もない。土地の売却で老後資金をひとまず確保し、夫婦二人で静かに暮らす道を選んだ。
「さすがに、老後くらいは安心して暮らせるようになりたいな」。浜田は自らに言い聞かせるようにつぶやく。

だが、浜田の「不運」はなおも続いた。
4歳になる娘とともに、夫・直也の転勤先である大阪に引っ越していた香織には、首都直下地震で経験した恐怖から解放されたいとの思いもあった。
もちろん、政府の地震調査委員会が2022年1月、南海トラフで今後40年以内にM8〜9級の巨大地震が発生する確率を引き上げたことは知っている。
前年の「80〜90%」から「90%程度」とさらに高確率になったことに不安がないと言えばウソになる。
ただ、暮らし慣れた首都の悲惨な状況や友人の死というショックから早く立ち直りたいと、大阪異動の内示を受けた直也について行くことにした。

浜田のさらなる「不運」とは、南海トラフ巨大地震の発生を意味する。
1995年の阪神・淡路大震災の傷を癒やそうと上京した浜田は、タクシー運転手になった直後に幸子と結ばれ、溺愛する娘・香織を授かった。
たしかに東京で首都直下地震に遭遇することになったものの、出逢いは何物にも代えがたい。
加えて、高確率で起きると予想されていた南海トラフ巨大地震を東京で回避したいとの思いも強かった。
まさか夫の転勤先となった大阪で娘が被災するなんて思いもしなかったことだ。

大地震が首都を襲った4年後、静岡県から宮崎県にかけて最大震度7の南海トラフ巨大地震が発生した。
最大クラスの地震により周辺地域でも震度6強の揺れが起き、太平洋沿岸は九州地方にかけて10メートルを超える大津波が襲来。猛烈な強い揺れや火災、津波によって238万棟超が全壊・焼失し、死者は32万人を超えた。

被害は近畿や東海、四国など広範囲に及び、関西圏を中心にダメージは深刻だ。
ライフラインは2710万軒が停電し、上水道は3440万人が断水、都市ガスも約180万戸で供給がストップした。
道路の沈下や損傷は4万ヵ所以上で見られ、中部国際空港や関西国際空港のほか大分や宮崎、高知の空港で津波浸水が発生する。
帰宅困難者は中京都市圏で約110万人、京阪神都市圏では約270万人に達し、食料や飲料水が不足。住宅やオフィスではエレベーター内に閉じ込められる人が続出した。
被災地の経済被害は160兆円以上で、まさに史上最大級の巨大地震であることを物語る。

4年前の首都直下地震による傷が癒えない中での災禍は、国の想定を上回る大打撃になるのは間違いなかった。
連絡が思うようにとれない不安に駆られながら、自宅の居間で西方に向かって両手を合わせる浜田は「よりによって香織までが……。こんなことになるくらいなら自分が代わりになりたかった」と娘たち家族の生存をただ祈る。

つづく「じつは起こり得る…南海トラフ巨大地震と首都直下地震の『連動』がやってくるかもしれない」では、首都直下地震や南海トラフ巨大地震が単体では「最悪」ではないことについて書く。
posted by 小だぬき at 03:00 | 神奈川 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「本当に地獄みたいだ」二つの大地震が一度に東京を襲い、「日本経済が壊滅的被害」を受ける未来

「本当に地獄みたいだ」二つの大地震が一度に東京を襲い、「日本経済が壊滅的被害」を受ける未来
宮地 美陽子 東京都知事政務担当特別秘書
2023.08.19 現代ビジネス

首都直下地震、南海トラフ巨大地震、富士山大噴火……過去にも一度起きた「恐怖の大連動」は、東京・日本をどう壊すのか?
命を守るために、いま何をやるべきか?
東京都知事政務担当特別秘書・宮地美陽子氏による新刊『首都防衛』では、知らなかったでは絶対にすまされない「最悪の被害想定」が描かれている。
その衝撃の内容とは?

「大連動」という恐ろしい未来
娘・香織の安全を確認したタクシー運転手の浜田幸男は「なんで映画みたいなことが俺の生きているときに起きるんだよ。本当に地獄みたいだ」と怒りと悲しみに暮れていた。
日本経済を牽引してきた企業の多くは二つの大地震で中枢機能が低下し、海外法人は撤退。
東西間の交通寸断に伴う機会損失も大きく、人々の消費マインドは一気に低下した。
株価は下落を続け、金利変動に伴い資金調達を困難とした企業は債務残高が増大。
日本の国際競争力は急降下し、雇用状況は悪化する一方だ。

さらに事態は悪化する。
香織を襲った南海トラフ巨大地震の発生から約50日後、今度は静岡県と山梨県にまたがる日本最高峰の富士山が噴火した。
噴火後2時間で東京にも降灰が始まり、交通や物流などがストップ。
慌てた浜田がニュースを見ると、首都圏の約1250万人に呼吸器系の健康被害を生じるおそれがあると報じていた。
「おいおい、マジかよ」。

火山灰は直接死傷する可能性はほとんどないものの、わずかでも堆積があれば交通機関は麻痺し、出勤はおろか移動することも困難になる。

2023年3月に関係自治体や国などでつくる「富士山火山防災対策協議会」がまとめた避難基本計画によれば、微塵でも降灰が始まると鉄道は早い段階で運行に支障が生じ、大部分が運行をストップ。
その余波で道路交通量は激増することになるが、路面にわずか0.5センチの降灰があるだけでスリップする車が続出する。
雨天時に3センチも積もれば二輪駆動車の走行は困難となり、四輪駆動車であっても10センチ以上で通行は難しい。
物流は停滞し、緊急車両の走行も困難になる。

電力は、降灰中は火力発電所の発電量が低下し、6センチ以上で停止。
10センチ以上の降灰に雨が降れば倒木で電線が切断されて停電が発生する。

通信は噴火直後からの大量アクセスで電話がつながりにくく、携帯電話のアンテナに火山灰が付着すれば通信障害が生じる。

下水道は堆積の厚さにかかわらず断水や使用制限が起きる。

首都直下地震、南海トラフ巨大地震、そして富士山の噴火。
320年ほどの時を経て再び発生した3つの巨大災害が重なるという「大連動」に、もはや浜田は空を見上げるしかなかった。「なんてこった。ハリウッド映画でも見たことがない光景だ」。
アパートの窓から見える降灰は、天からの涙のように映った。

つづく「巨大地震で『経済被害が東日本大震災の10倍超に』…東京都の『被害想定』が問うもの」では、東京が2022年5月に10年ぶりに見直した被害想定について紹介する。
posted by 小だぬき at 02:00 | 神奈川 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「まさか死んでないよな…」ある日突然、日本人を襲う大災害「最悪のシミュレーション」

「まさか死んでないよな…」ある日突然、日本人を襲う大災害「最悪のシミュレーション」
宮地 美陽子 東京都知事政務担当特別秘書
2023.11.22 :現代ビジネス

首都直下地震、南海トラフ巨大地震、富士山大噴火……過去にも一度起きた「恐怖の大連動」は、東京・日本をどう壊すのか? 命を守るために、いま何をやるべきか? 東京都知事政務担当特別秘書・宮地美陽子氏による新刊『首都防衛』では、知らなかったでは絶対にすまされない「最悪の被害想定」が描かれている。

その具体的なシミュレーションとは?
ある日突然、やってくる
20××年の冬、それは現実のものとして襲いかかった。
経験したことのない、突き上げるような強烈な揺れは人々の動きを瞬く間に封じ、激しい動揺と恐怖が心をへし折る。
毎年の防災訓練で何度も備えてきたはずだったが、その衝撃は想定をはるかに超えていた。
室内に置かれていたテレビやパソコンは床に倒れ、食器棚からはコーヒーカップや皿が勢いよく飛び出す。
窓ガラスは飛散し、タンスや本棚は不思議な動きを見せながら傾いていった。
使い慣れたスマホは通信障害で機能せず、助けを呼ぶことも、家族や友人の安否を確認することもできない。
テレビのニュースで情報を得ようにも停電が阻む。
できることは暗闇の中で静かに待つだけだった。

すぐ近くの住宅の窓から真っ赤な炎が猛烈な勢いで吹き出し、悲鳴と怒号が響き渡る。
隣家から隣家へ延焼していくのは時間の問題で、商品棚がドミノ倒しになったコンビニから逃げまどう人々の表情はこの世の終わりを感じさせる。
日本の首都を襲った大地震の規模は、M7.3。ヒト・モノ・情報が集まる東京には、地球外生命体に強襲されたような信じられない光景が広がった。

江東区や江戸川区など11の区は震度7を記録し、人口の多い23区の約6割は震度6以上の揺れが起きる。
6000人以上が死亡、負傷者は9万3000人を超え、ライフラインは次々とダメージを受けた。
ビル崩壊、大渋滞、「助けて」の声……
この日、タクシー運転手の浜田幸男(仮名)は夜の街を流していた。
休憩に入ろうとした矢先、常連客からの電話が鳴り「湾岸エリアまで来て、乗せてよ」と頼まれた。
「OK!10分ほどで着くから待ってて」と普段と変わらない応答でアクセルを踏み込んだとき、車が持ち上がるような激しい衝撃を感じる。
「ドッ、ドーン!」。追突されたときのものではない、地鳴りのような音が響く。
それは腹底を揺さぶられるような強いものだった。

都会の喧騒を上回る大音量の緊急地震速報がスマホから鳴り響き、必死でハンドルにしがみつくしかない。
「車がひっくり返る、もうダメだ」と身を屈めるのがやっとだった。
最初の激しい揺れは10秒ほどだったが、1分以上に長く感じた。
顔を上げたときには周囲の信号機は倒れ、道路沿いの建物は崩れている。
ビルや看板の灯りは消え、歩道には瓦礫やガラスが飛び散り、呆然と立ち尽くす若者たちの姿は映画のワンシーンを見ているようだ。
やや揺れが小さくなったことを感じた浜田は、汗で湿る手で強く握りしめたスマホから家族への電話を繰り返した。
だが、一向につながらない。

「まさか死んでないよな……」と不安ばかりが募る。
ベテランの域に達した運転手でも見たことがない大渋滞が行く手を遮り、やむなくタクシーを路肩に放置することにした。
真っ暗な道を月明かりだけを頼りに急ぎ足で自宅に向かう途中、不気味に静まり返った街では、どこからともなく「助けて」というわずかな声が風に木霊し、耳に残った。

関西出身の浜田は、1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災で母を失った。
日本で初めての大都市を直下とする地震で、最大震度7を記録。兵庫県を中心に6434人(災害関連死含む)が死亡、3人が行方不明、4万3792人が負傷した大地震だ
テレビやスマホからの情報が遮断される中、浜田はかつて経験した地震と似たような揺れを感じた。
路地を曲がれば自宅という場所にたどり着いたとき、浜田は顔見知りの消防団員に制止される。
「立ち入り禁止になっているんです。もう行かない方がいい」。
見慣れた道の先には見るも無残な状況が広がっていた。
飼い犬の散歩で知り合った近所のシニア夫婦が住む一軒家は倒壊し、あちらこちらに炎が見える。
高いビルからは煙が空高く立ち上り、住み慣れた木造二階建ての自宅は隣家に助けを求めるように傾いていた。
「妻が家にいるんだよ、とにかく行かせてくれよ!」。
何度も勢いよく飛び出そうとしたが、必死に制止された。

不安と苛立ちが充満したとき、浜田は妻・幸子との“約束”を思い出す。
「俺は阪神・淡路大震災で母親を亡くした。今度は南海トラフ巨大地震が起きるというではないか。
だから、東京に出てきたんだ。
いいか、幸子。何かあったら必ず逃げてくれ。俺も逃げるから後で絶対に合流しよう」

大地震で親を失った浜田は、いざというときの対応を妻と話し合っていた。
その“約束”を信じ、浜田は避難所に指定されていた小学校に向かった。

避難所に帰宅困難者殺到、避難者同士のトラブルも
娘の香織がかつて通った校舎の一角は、ラジオから流れる声を聞き漏らすまいとする人々で溢れていた。
最新の被害状況を伝え続けるアナウンサーによれば、耐震性の低い住宅は全壊し、古いビルやマンションも崩れている。
木造住宅の密集地域では火災が相次ぎ、いたるところで道路は寸断され、鉄道も運行停止。
広範囲で停電や断水が発生しているという悲惨な状況だった。
「あなた!」。聞き慣れた声に振り向くと、避難所の端で両手を振る幸子が目に涙を一杯にためていた。
妊娠中の香織は入院先で無事が確認され、一家の心は少しだけ和らぐ。
ただ、自宅を失った一家はしばらく避難所での生活を余儀なくされる。

この後さらなる悲劇に襲われることになるとはそのときは知るよしもなかった。
首都直下地震の発生翌日、職場や外出先から自宅への帰還が困難になった帰宅困難者が一時滞在施設の場所がわからず、避難所にも殺到した。
収容力を超える事態だ。
通信の途絶に加え、スマホのバッテリーは切れ、家族らとの連絡が困難になった人々がイライラを募らせる。
備蓄の飲用水や食料は限定的で、仮設トイレは衛生環境が悪化。感染症が蔓延することへの不安も広がった。
さらに自宅での避難生活を送っていた人も家庭内の備蓄が枯渇し、避難所に次々と訪れる。
支援物資やボランティアの供給には地域でバラツキがみられ、人々のストレスも増すばかりだ。
高齢者や既往症を持つ人は慣れない環境での生活に症状が悪化し、避難者同士のトラブルも続発する。
つづく「首都直下地震は「日本危機」である…「死者3500人」「経済被害21兆円」知られざる想定の実態」では、多くの人が知らない首都直下地震の被害想定を具体的なデータを元に詳述する。
posted by 小だぬき at 01:00 | 神奈川 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

一瞬で多くの命を奪う…自然災害大国ニッポンをこれから襲う「一番深刻な災害」本当の恐怖

一瞬で多くの命を奪う…自然災害大国ニッポンをこれから襲う「一番深刻な災害」本当の恐怖
11/22(水)  現代ビジネス

 首都直下地震、南海トラフ巨大地震、富士山噴火……過去にも起きた「恐怖の大連動」は、東京・日本をどう壊すのか。

前代未聞の大災害
 今から320年ほど前、前代未聞の大災害は起きたことをご存知だろうか。  
〈1703年の真冬、激しい揺れが深夜の東京都、千葉県、神奈川県(いずれも現在)を襲う。
江戸時代、現在の関東地方を急襲した「元禄地震」だ。
 被害の詳細はいまだ確定されていないものの、最大震度7に相当する強い揺れが起き、死者は1万人を超えたと伝えられる。10メートル超の津波は沿岸に住む人々に襲いかかり、一瞬にして多くの命を奪った。

 2008年3月に千葉県が発行した防災誌には、古文書や供養碑などをもとに当時の被害がこのように記されている。
 「房総半島南部では4メートル以上も土地が隆起、また沈降したために、農業や漁業を営んでいた当時の人々の生活に大きな影響をおよぼしました。
大きな地震動と同時に、目の前にあった山が沈み、または今までなかった浜が出現したのです。
これらの現象がどれだけ当時の人たちを驚かせたことでしょう」
 巨大地震は強い揺れや津波とともに、大きな地殻変動も生じさせている。〉(『首都防衛』より)

 過去に日本を何度も襲った巨大地震。本当に怖いのは、地震だけではない……。

「恐怖の大連動」にどう備えるか
 元禄地震から始まり、いくつかの自然災害が「連動」したことがある。  
〈4年後の1707年10月、今度は駿河湾から四国沖の広い範囲で大きな揺れが発生した。
マグニチュード(M)8.6と推定される「宝永地震」は南海トラフの巨大地震で、最大震度7に達したとみられる。
海岸部では最大で津波高約15メートルの大津波が発生し、現在の大阪を中心に死者は2万人以上と伝えられている。

 内閣府の「災害教訓の継承に関する専門調査会報告書」(2014年3月)によれば、宝永地震のような南海トラフの大規模地震が発生した後には周辺の地殻に加わる力に大きな変化をもたらす。
 発生後に地震や火山活動が活発になる場所が現れ、宝永地震発生の翌日早朝にはM6.5程度の地震が富士山の東麓で発生。
そして、49日後には富士山の噴火活動が始まる。〉(『首都防衛』より)

 首都直下地震、南海トラフ巨大地震、富士山大噴火という、過去にも一度起きた「恐怖の大連動」にどう備えるか。
 最新データや数々の専門家の知見から明らかになった、知らなかったでは絶対にすまされない「最悪の被害想定」とは――。
 つづく「『まさか死んでないよな…』ある日突然、日本人を襲う大災害『最悪のシミュレーション』」では、日本でかなりの確率で起こり得る「恐怖の大連動」の全容を具体的なケース・シミュレーションで描き出している。 現代新書編集部
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする